(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20221118BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221118BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20221118BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
(21)【出願番号】P 2021517669
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2019013805
(87)【国際公開番号】W WO2020085731
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129161
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン・ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・ク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ギ・ボム・ハン
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061654(WO,A1)
【文献】特表2010-535699(JP,A)
【文献】国際公開第2018/048085(WO,A1)
【文献】特表2018-502421(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0089059(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0063415(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含
み、下記化学式1で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であり、
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Zr、Al、
V及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパント、及びTi、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントを含み、
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、結晶子サイズが170から300nmで
あり、
[化学式1]
Li
p
Ni
1-(x1+y1+z1+w1)
Co
x1
Mn
y1
M
a
z1
M
b
w1
O
2+δ
前記化学式1において、M
a
は、Zr、Al、V及びMgからなる群から選択された2種以上の元素であり、M
b
は、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の元素であり、1≦p≦1.5、0<x1≦0.5、0<y1≦0.5、0<z1≦0.025、0<w1≦0.015、-0.1≦δ≦1である、二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、集束イオンビーム(FIB)装置を用いて断面にエッチングした後、走査電子顕微鏡(FE‐SEM)を用いて20個以上の2次粒子の断面を観察したとき、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記第1ドーパントは、総含量が2,000から6,000ppmで含有されている、請求項1又は2に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記第2ドーパントは、総含量が500から3,000ppmで含有されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、比表面積が0.2から0.7m
2/gである、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が10個以下である、請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム(Li)を除いた金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム(Li)を除いた金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項9】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体と、リチウム原料物質及びZr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパントの原料物質を混合して1次焼成を行う段階、及び
前記1次焼成の後、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントの原料物質を混合して2次焼成を行う段階を含み、
前記1次焼成及び前記2次焼成を介して、結晶子サイズが170から300nmであるリチウム複合遷移金属酸化物の粒子を形成する、二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記正極活物質前駆体が金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である場合、前記1次焼成は800から1,000℃で行われる、請求項9に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記正極活物質前駆体が金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である場合、前記1次焼成は900から1,100℃で行われる、請求項9に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記正極活物質前駆体が金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である場合、前記2次焼成は600から950℃で行われる、請求項9又は10に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記正極活物質前駆体が金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である場合、前記2次焼成は700から1,050℃で行われる、請求項9又は11に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記1次焼成及び2次焼成を介して形成されたリチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、集束イオンビーム(FIB)装置を用いて断面にエッチングした後、走査電子顕微鏡(FE‐SEM)を用いて20個以上の2次粒子の断面を観察したとき、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下である、請求項9から13のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記第1ドーパントの原料物質は、正極活物質全体の重量に対して前記第1ドーパントの総含量が2,000から6,000ppmで含有されるように混合される、請求項9から14のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記第2ドーパントの原料物質は、正極活物質全体の重量に対して前記第2ドーパントの総含量が500から3,000ppmで含有されるように混合される、請求項9から15のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質を含む二次電池用正極。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年10月26日付韓国特許出願第10-2018-0129161号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車などの、電池を用いる電子器具の急速な普及に伴い、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は、軽量で高エネルギー密度を有しているので、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これにより、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究と開発の努力が活発に進められている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極の間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させた状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される際の酸化と還元の反応によって電気エネルギーが生産される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO4)などが用いられた。この中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)は、作動電圧が高く、容量特性に優れるという長所があるので、広く用いられており、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の価格上昇及び供給不安定のため電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界があるので、これを代替できる正極活物質の開発の必要性が台頭した。
【0006】
これにより、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、簡単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」という)が開発された。しかし、従来開発されたNCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、一般的に1次粒子が凝集された2次粒子形態であり、比表面積が大きく、粒子の強度が低く、リチウム副産物の含量が高いためセル駆動時のガスの発生量が多く、安定性が落ちるという問題があった。特に、高容量の確保のために、ニッケル(Ni)の含量を増加させた高含量ニッケル(High‐Ni)のNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、構造的及び化学的安定性がさらに低下し、熱安定性の確保がさらに難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質において、安定性が改善された正極活物質の提供を図るものである。特に、高容量の具現のために、ニッケル(Ni)を60モル%以上含有した高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質において、安定性が改善された正極活物質の提供を図るものである。
【0008】
具体的に、比表面積を減少させ、粒子の強度を改善して圧延時の粒子割れを抑制し、リチウム副産物の含量を減少させて電解液との副反応を減少させ、抵抗の増加を抑制したNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質の提供を図る。また、セル駆動時のガスの発生量を減少させることができ、熱安定性が確保されたNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物であり、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Zr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパント、及びTi、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントを含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は結晶子サイズ(Crystallite size)が170から300nmである二次電池用正極活物質を提供する。
【0010】
また、本発明は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体と、リチウム原料物質及びZr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパントの原料物質とを混合して1次焼成を行う段階;及び、前記1次焼成の後、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントの原料物質を混合して2次焼成を行う段階;を含み、前記1次焼成及び2次焼成を介して、結晶子サイズ(Crystallite size)が170から300nmであるリチウム複合遷移金属酸化物の粒子を形成する二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記正極活物質を含む正極及びリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、NCM系正極活物質の比表面積を減少させ、粒子の強度を改善し、リチウム副産物の含量を減少させて電解液との副反応を減少させることができる。したがって、本発明のNCM系正極活物質を用いたリチウム二次電池は、セル駆動時のガスの発生量が減少し、抵抗の増加を抑制し、熱安定性が確保され得る。特に、高容量の具現のため、ニッケル(Ni)を60モル%以上で含有した高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質においても安定性が改善され得る。このような本発明のNCM系正極活物質は、優れた安定性を確保することができるので、高電圧リチウム二次電池への適用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。ここで、本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0014】
<正極活物質>
本発明の二次電池用正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物であり、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Zr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパント、及びTi、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントを含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は結晶子サイズ(Crystallite size)が170から300nmである。
【0015】
本発明の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むNCM系リチウム複合遷移金属酸化物である。前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム(Li)を除いた金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であってよい。より好ましくは、ニッケル(Ni)の含量が65モル%以上であってよく、さらに好ましくは70モル%以上であってよい。前記リチウム複合遷移金属酸化物のリチウム(Li)を除いた金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上を満たすことにより、さらに高容量の確保が可能であり得る。または、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム(Li)を除いた金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(Low‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0016】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Zr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパント、及びTi、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントを含む。より好ましくは、Al、Zrを含む第1ドーパント及びSr、Tiを含む第2ドーパントを含んでよい。前記Al、Zrなどの2種以上の元素を含む第1ドーパント及びSr、Tiなどの2種以上の元素を含む第2ドーパントを用いることで、正極活物質の合成時にリチウム原料物質及び正極活物質表面の残余リチウムと反応してリチウムソースの反応性及び粒界の成長を促進させ、NCM系正極活物質の2次粒子界面を最小化し、比表面積を減少させるのに効果的であり、電解液との副反応を減少させるためセル駆動時のガスの発生量を減少させ、抵抗の増加を抑制し、熱安定性を向上させることができる。
【0017】
前記第1ドーパントは、総含量が2,000から6,000ppmで含有されてよい。より好ましくは2500から5500ppm、さらに好ましくは3000から5000ppmで含有されてよい。前記第1ドーパントが前記含量範囲内に含有されることにより、リチウム拡散抵抗の減少及び正極活物質内部構造の安定化による構造安定性の確保及び寿命改善などの効果がある。
【0018】
前記第2ドーパントは、総含量が500から3,000ppmで含有されてよい。より好ましくは700から2700ppm、さらに好ましくは1000から2500ppmで含有されてよい。前記第1ドーパントが前記含量範囲内に含有されることにより、正極活物質表面上の改質による反応性の減少により電解液との副反応を減らすことになるので、ガス発生が低減されるという効果がある。
【0019】
より具体的に、本発明の一実施形態によるNCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0020】
[化学式1]
LipNi1-(x1+y1+z1+w1)Cox1Mny1Ma
z1Mb
w1O2+δ
【0021】
前記式において、Maは、Zr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された一つ以上の元素であり、Mbは、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された一つ以上の元素であり、1≦p≦1.5、0<x1≦0.5、0<y1≦0.5、0<z1≦0.025、0<w1≦0.015、-0.1≦δ≦1である。
【0022】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Liはpに該当する含量、すなわち1≦p≦1.5で含まれてよい。pが1未満であれば容量が低下する虞があり、1.3を超過すれば焼成した正極活物質の強度が高くなるため粉砕が困難となり、Li副産物の増加によりガス発生量の増加が発生し得る。Li含量の制御による正極活物質の容量特性改善効果及び活物質製造時の焼結性バランスを考慮するとき、前記Liは、より好ましくは1.0≦p≦1.3の含量で含まれてよい。
【0023】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Niは1-(x1+y1+z1+w1)に該当する含量、例えば、0<1-(x1+y1+z1+w1)≦0.9で含まれてよい。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のNiの含量が0.6以上の組成になれば、充放電に寄与するのに十分なNi量が確保され、高容量化を図ることができる。より好ましくは、Niは、0.6≦1-(x1+y1+z1+w1)≦0.99で含まれてよい。
【0024】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Coはx1に該当する含量、すなわち0<x1≦0.5で含まれてよい。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のCoの含量が0.5を超過する場合、費用増加の虞がある。Co包含による容量特性改善の効果の著しさを考慮するとき、前記Coは、より具体的に0.05≦x1≦0.3の含量で含まれてよい。
【0025】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mnはy1に該当する含量、すなわち0<y1≦0.5で含まれてよい。Mnは、正極活物質の安定性を向上させ、結果として電池の安定性を改善させることができる。前記Mnは、より具体的に0.05≦y1≦0.3の含量で含まれてよい。
【0026】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Maはリチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれた第1ドーパント元素であってよく、Maはz1に該当する含量、すなわち0<z1≦0.025で含まれてよい。
【0027】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mbはリチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれた第2ドーパント元素であってよく、Mbはw1に該当する含量、すなわち0<w1≦0.015で含まれてよい。
【0028】
本発明の前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmである。より好ましくは180nmから280nm、さらに好ましくは190nmから260nmであってよい。本発明の一実施形態による前記結晶子サイズ(Crystallite size)を満たす正極活物質は、圧延による粒子割れを抑制することができ、寿命特性及び安定性が向上され得る。
【0029】
本発明において、「粒子」はマイクロメートル単位の顆粒を指称し、「1次粒子」とは、粒子間の境界が区分される最小単位の顆粒を意味する。「2次粒子」とは、この1次粒子等が凝集して形成された凝集体を意味する。「1次粒子」をさらに拡大すれば、原子が一定の方向の格子構造をなす形態の区分された領域を確認することができ、これを「結晶子(crystallite)」といい、XRD(Bruker D4 Endeavor)で観測する粒子の大きさは、結晶子(Crystallite)の大きさに定義される。結晶子サイズ(Crystallite size)を測定する方法は、XRDデータのピーク広がり(peak broadening)を用いて結晶子サイズ(Crystallite size)を測ることができ、シェラーの式(Scherrer equation)を介して定量的に計算することができる。
【0030】
NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmを満たすように形成するためには、既存の一般的なNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の焼成温度よりも約100℃ほど温度を高めて過焼成することができる。例えば、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、一般的な焼成温度が約800~900℃程度であるが、これより約100~150℃ほど温度を高めて過焼成することにより、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)を増加させることができる。ニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(Low‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、一般的な焼成温度が約850~950℃程度であるが、同様にこれより約100~150℃ほど温度を高めて過焼成することにより、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)を増加させることができる。一方、正極活物質の性能改善または安定化のために一部のドーパントをドーピングする場合、ドーパントがない場合よりも粒子成長に妨害要素として作用し得るので、より高い温度での過焼成が必要となり得る。しかし、このように焼成温度を約100~150℃ほど高めて過焼成することになれば、過焼成によってリチウム(Li)の揮発及び正極活物質の表面に過度な岩塩(Rocksalt)相が形成されて容量が過度に低下するという問題があり、正極活物質の表面抵抗もやはり増加することになるという問題点がある。
【0031】
よって、本発明では、前記Al、Zrなどの2種以上の元素を含む第1ドーパント及びSr、Tiなどの2種以上の元素を含む第2ドーパントを共に含有するように製造することで、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmを満たすように形成するための過焼成温度を下げられるようにした。よって、本発明に係る正極活物質は、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmが満たすことになり、ガス発生量の減少及び抵抗増加の抑制など安定性が確保されながらも、過焼成による容量低下及び抵抗増加の問題を解決した。
【0032】
また、本発明の一実施形態による前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、FIB(Focused Ion Beam,集束イオンビーム)装置を用いて断面にエッチングした後、走査電子顕微鏡(FE‐SEM)を用いて20個以上の2次粒子の断面を観察したとき、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下である。より好ましくは、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が10個以下であってよく、さらに好ましくは1から5個であってよい。
【0033】
本発明において、「1次粒子」は単一粒子の1次構造体を意味し、「2次粒子」は2次粒子を構成する1次粒子に対する意図的な凝集または組立工程がなくても、1次粒子間の物理的または化学的結合によって、1次粒子同士が凝集された凝集体、すなわち2次構造体を意味する。
【0034】
本発明において、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数は、正極活物質試料をFIB(Focused Ion Beam,集束イオンビーム)装置を用いて断面にエッチングした後、断面試料を走査電子顕微鏡(FE‐SEM)で20個以上の2次粒子の断面を観察したとき、全2次粒子の個数に比べての全1次粒子の個数を数値化したものである。
1次粒子の平均個数=1次粒子全体の個数/2次粒子全体の個数
【0035】
NCM系正極活物質の断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下を満たすように形成するためには、既存の一般的なNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の焼成温度よりも約100℃ほど温度を高めて過焼成することができる。一方、正極活物質の性能の改善または安定化のために一部のドーパントをドーピングする場合、ドーパントがない場合よりも粒子成長に妨害要素として作用し得るので、より高い温度での過焼成が必要となり得る。
【0036】
しかし、このように焼成温度を約100~150℃ほど高めて過焼成することになれば、過焼成によりリチウム(Li)の揮発及び正極活物質の表面に過度な岩塩(Rocksalt)相が形成されて容量が過度に低下するという問題があり、正極活物質の表面抵抗もやはり増加することになるという問題点がある。
【0037】
よって、本発明では、前記Al、Zrなどの2種以上の元素を含む第1ドーパント及びSr、Tiなどの2種以上の元素を含む第2ドーパントを共に含有するように製造することで、NCM系正極活物質の断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下を満たすように形成するための過焼成温度を下げられるようにした。
【0038】
本発明に係る正極活物質は、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下を満たすことにより、2次粒子の界面を最小化して比表面積を減少させることができ、粒子の強度を改善して圧延時の粒子割れを抑制することができる。また、電解液との副反応を減少させるためセル駆動時にガスの発生量を減少させ、抵抗の増加を抑制し、熱安定性を向上させることができる。
【0039】
また、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子は、比表面積が0.2から0.7m2/gであってよい。より好ましくは0.25m2/gから0.7m2/g、さらに好ましくは0.3m2/gから0.7m2/gであってよい。前記比表面積を満たすことにより、セル駆動時にガスの発生量を減少させることができ、高電圧下でも優れた安定性が確保され、高電圧リチウム二次電池への適用が可能である。
【0040】
<正極活物質の製造方法>
次に、本発明の正極活物質の製造方法を説明する。
【0041】
本発明の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体と、リチウム原料物質及びZr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパントの原料物質とを混合して1次焼成する段階;及び前記1次焼成後、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントの原料物質を混合して2次焼成する段階;を含み、前記1次焼成及び2次焼成を介して、結晶子サイズ(Crystallite size)が170から300nmであるリチウム複合遷移金属酸化物の粒子を形成するように製造する。
【0042】
前記正極活物質の製造方法を段階別に具体的に説明する。
【0043】
先ず、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体を用意する。
【0044】
前記正極活物質前駆体は、市販の正極活物質前駆体を購入して使用するか、当該技術分野によく知られた正極活物質前駆体の製造方法によって製造されてよい。
【0045】
例えば、前記前駆体は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液にアンモニウム陽イオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加し、共沈反応させて製造されるものであってよい。
【0046】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってよく、具体的には、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記コバルト含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってよく、具体的にはCo(OH)2、CoOOH、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4、Co(SO4)2・7H2Oまたはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであってよく、具体的にはMn2O3、MnO2、Mn3O4などのようなマンガン酸化物;MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガンまたはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記遷移金属溶液は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合され得る有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、またはニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであってよい。
【0050】
前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は、例えば、NH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4、NH4CO3またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されるものではない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は、水溶液の形態で使用されてもよく、ここで溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が使用されてよい。
【0051】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)2などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせであってよい。前記塩基性化合物もまた水溶液の形態で使用されてよく、ここで溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が使用されてよい。
【0052】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであって、金属溶液のpHが11から13になる量で添加されてよい。
【0053】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの非活性雰囲気下で、40℃から70℃の温度で行われてよい。
【0054】
前記のような工程によって、ニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈澱される。ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質の濃度を調節し、金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である前駆体を製造することができる。沈澱されたニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物粒子を通常の方法により分離させ、乾燥させてニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体を得ることができる。前記前駆体は、1次粒子が凝集されて形成された2次粒子であってよい。
【0055】
次に、前記前駆体と、リチウム原料物質及びZr、Al、V、Co及びMgからなる群から選択された2種以上の第1ドーパントの原料物質を混合して1次焼成する。
【0056】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などが使用されてよく、水に溶解され得る限り、特に限定されない。具体的に、前記リチウム原料物質は、Li2CO3、LiNO3、LiNO2、LiOH、LiOH・H2O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH3COOLi、Li2O、Li2SO4、CH3COOLi、またはLi3C6H5O7などであってよく、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。
【0057】
前記第1ドーパントの原料物質は、第1ドーパント元素含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などが用いられてよい。前記第1ドーパントの原料物質は、正極活物質全体の重量に対して前記第1ドーパントの総含量が2,000から6,000ppmで含有されるように混合してよく、より好ましくは2,500から5,500ppm、さらに好ましくは3,000から5,000ppmで含有されるように混合してよい。
【0058】
前記1次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、800から1,000℃で焼成してよく、より好ましくは830から980℃、さらに好ましくは850から950℃で焼成してよい。ニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(Low‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、1次焼成は900から1,100℃で焼成してよく、より好ましくは930から1,070℃、さらに好ましくは950から1,050℃で焼成してよい。
【0059】
前記1次焼成は、空気または酸素雰囲気下で進めてよく、15から35時間行ってよい。
【0060】
次に、前記1次焼成後、Ti、Y、Sr、Nb、Ba及びCaからなる群から選択された2種以上の第2ドーパントの原料物質を混合して2次焼成する。
【0061】
前記第2ドーパントの原料物質は、第2ドーパント元素含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などが用いられてよい。前記第2ドーパントの原料物質は、正極活物質全体の重量に対して前記第2ドーパントの総含量が500から3,000ppmで含有されるように混合してよく、より好ましくは700から2,700ppm、さらに好ましくは1,000から2、500ppmで含有されるように混合してよい。
【0062】
前記2次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、600から950℃で焼成してよく、より好ましくは650から930℃、さらに好ましくは700から900℃で焼成してよい。ニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(Low‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、2次焼成は700から1,050℃で焼成してよく、より好ましくは750から1,000℃、さらに好ましくは800から950℃で焼成してよい。
【0063】
前記2次焼成は、空気または酸素雰囲気下で進めてよく、15から35時間行ってよい。
【0064】
前記1次焼成及び2次焼成を介して結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmになるようにリチウム複合遷移金属酸化物の粒子を形成する。より好ましくは180nmから280nm、さらに好ましくは190nmから260nmになるように焼成を行ってよい。
【0065】
また、前記1次焼成及び2次焼成を介して断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下の正極活物質を形成することができる。より好ましくは断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が10個以下、さらに好ましくは1から5個である正極活物質を製造してよい。
【0066】
本発明は、前記1次焼成時にAl、Zrなどの2種以上の元素を含む第1ドーパントをドーピングし、前記2次焼成時にSr、Tiなどの2種以上の元素を含む第2ドーパントをドーピングすることにより、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmになるようにし、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数を20個以下に形成するための過焼成温度を下げることができる。したがって、本発明によって製造される正極活物質は、NCM系正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が170nmから300nmとなり、さらに、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下を満たすことにより、ガス発生量の減少及び抵抗増加の抑制など安定性が確保されながらも、過焼成による容量低下及び正極活物質表面の抵抗増加の問題を解決した。
【0067】
<正極及び二次電池>
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0068】
具体的に、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0069】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3から500μmの厚さを有してよく、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0070】
また、前記正極活物質層は、前記で説明した正極活物質とともに、導電材及びバインダを含んでよい。
【0071】
ここで、前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0072】
また、前記バインダは、正極活物質の粒子間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を担う。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0073】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては、通常の正極の製造方法によって製造されてよい。具体的に、前記正極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されてよい。ここで、前記正極活物質、バインダ、導電材の種類及び含量は、前記で説明した通りである。
【0074】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダを溶解または分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0075】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0076】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的に電池またはキャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0077】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は前記で説明した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでよい。
【0078】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0079】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3から500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0080】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてよい。
【0081】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがいずれも使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0082】
また、前記バインダ及び導電材は、前記正極で説明したところと同一のものであってよい。
【0083】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池でセパレータとして用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてよく、選択的に単層または多層構造で使用されてよい。
【0084】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0085】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0086】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(RはC2からC20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1から約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて表れ得る。
【0087】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0Mの範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0088】
前記電解質には、前記電解質構成成分等の他にも電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。ここで、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1から5重量%で含まれてよい。
【0089】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。
【0090】
これによって、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びそれを含む電池パックが提供される。
【0091】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられてよい。
【0092】
以下、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0093】
実施例1
60℃に設定された回分式バッチ(batch)型5L反応器で、NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が60:20:20となるようにする量で水中で混合し、2.4M濃度の前駆体形成溶液を準備した。
【0094】
共沈反応器(容量5L)に脱イオン水1リットルを入れた後、窒素ガスを反応器に2リットル/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に造成した。その後、25%濃度のNaOH水溶液10mlを投入した後、60℃温度で1200rpmの撹拌速度で撹拌し、pH12.0を維持するようにした。
【0095】
その後、前記前駆体形成溶液を180ml/hrの速度でそれぞれ投入し、NaOH水溶液及びNH4OH水溶液を共に投入しながら18時間共沈反応させ、ニッケル‐コバルト‐マンガン含有水酸化物(Ni0.60Co0.20Mn0.20(OH)2)の粒子を形成した。前記水酸化物粒子を分離して洗浄した後、120℃のオーブンで乾燥して正極活物質前駆体を製造した。このように製造された正極活物質前駆体は、1次粒子が凝集された2次粒子形態であった。
【0096】
このように製造された正極活物質前駆体及びリチウム原料物質LiOHを最終のLi/M(Ni、Co、Mn)モル比が1.02となるようにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、第1ドーパント原料物質Al(OH)2、ZrO2を最終の第1ドーパント元素全体の含量が3500ppmとなるように投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mm大きさのアルミナるつぼに入れて、酸素(O2)雰囲気下930℃で15時間1次焼成した。
【0097】
その後、第2ドーパント原料物質SrCO3、TiO2を最終の第2ドーパント元素全体の含量が2000ppmとなるように1次焼成された焼成物とともにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mm大きさのアルミナるつぼに入れて、酸素(O2)雰囲気下830℃で15時間2次焼成してリチウム複合遷移金属酸化物を形成した。
【0098】
このように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物300gを超純水300mLに入れ、30分間撹拌して水洗し、20分間フィルタリングを行った。フィルタリングされたリチウム複合遷移金属酸化物を真空オーブンで130℃で10時間乾燥させた後、ふるい分け(seiving)を行って正極活物質を製造した。
【0099】
実施例2
60℃に設定された回分式バッチ(batch)型5L反応器で、NiSO4、CoSO4、MnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が50:30:20となるようにする量で水中で混合し、2.4M濃度の前駆体形成溶液を準備した。
【0100】
共沈反応器(容量5L)に脱イオン水1リットルを入れた後、窒素ガスを反応器に2リットル/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に造成した。その後、25%濃度のNaOH水溶液10mlを投入した後、60℃温度で1200rpmの撹拌速度で撹拌し、pH12.0を維持するようにした。
【0101】
その後、前記前駆体形成溶液を180ml/hrの速度でそれぞれ投入し、NaOH水溶液及びNH4OH水溶液を共に投入しながら18時間共沈反応させ、ニッケル‐コバルト‐マンガン含有水酸化物(Ni0.50Co0.30Mn0.20(OH)2)の粒子を形成した。前記水酸化物粒子を分離して洗浄した後、120℃のオーブンで乾燥して正極活物質前駆体を製造した。このように製造された正極活物質前駆体は、1次粒子が凝集された2次粒子形態であった。
【0102】
このように製造された正極活物質前駆体及びリチウム原料物質LiOHを最終のLi/M(Ni、Co、Mn)モル比が1.02となるようにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、第1ドーパント原料物質Al(OH)2、ZrO2を最終の第1ドーパント元素全体の含量が3500ppmとなるように投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mm大きさのアルミナるつぼに入れて、酸素(O2)雰囲気下970℃で15時間1次焼成した。
【0103】
その後、第2ドーパント原料物質SrCO3、TiO2を最終の第2ドーパント元素全体の含量が2000ppmとなるように1次焼成された焼成物とともにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mm大きさのアルミナるつぼに入れて、酸素(O2)雰囲気下870℃で15時間2次焼成してリチウム複合遷移金属酸化物を形成した。
【0104】
このように製造されたリチウム複合遷移金属酸化物を真空オーブンで130℃で10時間乾燥させた後、ふるい分け(seiving)を行って正極活物質を製造した。
【0105】
実施例3
第1ドーパント原料物質としてCo(OH)2、MgOを最終の第1ドーパント元素全体の含量が5000ppmとなるように混合し、第2ドーパント原料物質としてNb2O5、Y2O3を最終の第2ドーパント元素全体の含量が1500ppmとなるように混合したことを除き、実施例1と同様に行って正極活物質を製造した。
【0106】
実施例4
第1ドーパント原料物質としてCo(OH)2、MgOを最終の第1ドーパント元素全体の含量が5000ppmとなるように混合し、第2ドーパント原料物質としてNb2O5、Y2O3を最終の第2ドーパント元素全体の含量が1500ppmとなるように混合したことを除き、実施例2と同様に行って正極活物質を製造した。
【0107】
実施例5
1次焼成温度を890℃にし、2次焼成温度を800℃にしたことを除き、実施例1と同様に行って正極活物質を製造した。
【0108】
実施例6
1次焼成温度を930℃にし、2次焼成温度を850℃にしたことを除き、実施例2と同様に行って正極活物質を製造した。
【0109】
比較例1
第1ドーパント原料物質及び第2ドーパント原料物質を混合しないことを除き、実施例1と同様に行って正極活物質を製造した。
【0110】
比較例2
第1ドーパント原料物質及び第2ドーパント原料物質を混合しないことを除き、実施例2と同様に行って正極活物質を製造した。
【0111】
比較例3
第1ドーパント原料物質としてZrO2を最終の第1ドーパント元素の含量が3500ppmとなるように混合し、第2ドーパント原料物質としてSrCO3を最終の第2ドーパント元素の含量が2000ppmとなるように混合したことを除き、実施例1と同様に行って正極活物質を製造した。
【0112】
比較例4
第1ドーパント原料物質としてZrO2を最終の第1ドーパント元素の含量が3500ppmとなるように混合し、第2ドーパント原料物質としてSrCO3を最終の第2ドーパント元素の含量が2000ppmとなるように混合したことを除き、実施例2と同様に行って正極活物質を製造した。
【0113】
[実験例1:正極活物質の比表面積及び結晶子サイズ]
前記実施例1~6、比較例1~4で製造された正極活物質の比表面積及び結晶子サイズを測定した。比表面積は、気体吸着分析機(BELSORP mini II)を用いて測定しており、結晶子サイズ(Crystallite size)は、XRD(Bruker D4 Endeavor)を測定してその値を計算した。
【0114】
【0115】
前記表1を参照すれば、実施例1~6で製造された正極活物質は比表面積が0.7m2/g以下で、比較例3~4の正極活物質よりも比表面積が減少した。また、実施例1~6の正極活物質は結晶子サイズが170nmから300nmで、比較例3~4の正極活物質よりも結晶子サイズが増加した。一方、第1及び第2ドーパントを全くドーピングしていない比較例1~2の場合、ドーパントが存在する実施例1~2に比べてドーパントマイグレーション(dopant migration)に必要なエネルギーの消耗がなく、結晶子成長の駆動力がさらに大きくなったため、結晶子サイズが300nmを超過するものと現われた。
【0116】
[実験例2:正極活物質の観察]
前記実施例1~6及び比較例1~4で製造された正極活物質をFIB(Focused Ion Beam,集束イオンビーム)装置を用いて断面にエッチングした後、走査電子顕微鏡(FE‐SEM)を用いて20個以上の2次粒子の断面を観察した。このとき、2次粒子全体の個数に比べての1次粒子全体の個数を下記のように計算して断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数を確認した。その結果を表2に示した。
【0117】
【0118】
前記表2を参照すれば、本発明の実施例1~6で製造された正極活物質は、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以であるが、それぞれ1種のドーパント元素のみをドーピングした比較例3~4の場合、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個を超過した。実施例1~6のように製造された正極活物質は、それぞれ特定の2種以上の第1及び第2ドーパントが1次焼成及び2次焼成時にドーピングされることにより、過焼成温度を下げたにもかかわらず、断面上における2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下となるように形成されたことが確認できる。一方、第1及び第2ドーパントを全くドーピングしていない比較例1~2の場合、ドーパントを入れた場合に比べて1次粒子の成長に妨害となる要素がないため、実施例1~2程度の水準である2次粒子内の1次粒子の平均個数が20個以下と現われたものとみられる。
【0119】
[実験例3:熱安定性の評価]
前記実施例1~2、5及び比較例3で製造された正極活物質の熱安定性を評価するため、示差走査熱量測定器(SETARAM社製SENSYS Evo)を用いて温度による熱流量(Heat Flow)を測定した。具体的に、実施例1~2、5及び比較例3の正極活物質を用いて製造例のように製造されたリチウム二次電池をSOC100%充電状態で分解してDSC測定用セルに正極と新しい電解液を投入し、毎分10℃ずつ常温から400℃まで昇温させながら測定を行った。その結果を表3に示した。
【0120】
【0121】
前記表3を参照すれば、本発明の実施例1~2、5の場合、熱流量が最大であるメインピークが相対的に高温である299℃以上で現われており、比較例3に比べて最大熱流量が顕著に減少したことが確認できる。これを介して、本発明の実施例の場合、熱安定性が顕著に向上したことが分かる。
【0122】
[実験例4:高温貯蔵特性の評価]
前記実施例1~6、比較例1~3で製造されたそれぞれの正極活物質、カーボンブラック導電材及びPVDFバインダをN‐メチルピロリドン溶媒中で重量比96:2:2の比率で混合して正極合材(粘度:5000mPa・s)を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥し、圧延して正極を製造した。
【0123】
負極は、リチウムメタルを用いた。
【0124】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際の電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート(EC/EMC/DECの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させて製造した。
【0125】
前記のように製造されたリチウム二次電池ハーフセル(Half cell)に対し、CCCV(定電流定電圧)モードで0.5C、4.4Vになるまで充電(終了電流1/20C)した。このように充電された正極2枚とポリエチレンセパレータ2枚をコインセルの下板に交互に積層させた。その後、電解液を注入した後、ガスケットで覆って製造されたコインセルをアルミニウムパウチに入れて真空でシーリングした。その後、2週間60℃で貯蔵して発生したガスをGC‐MS(gas chromatograph‐mass spectrometer,ガスクロマトグラフ質量分析)を用いて測定した。その結果を下記表4に示した。
【0126】
【0127】
前記表4を参照すれば、実施例1~6で製造された正極活物質は、比較例1~4で製造された正極活物質に比べて高温貯蔵ガスの発生量が顕著に減少した。第1及び第2ドーパントを全くドーピングしていない比較例1~2の場合、表面及び構造安定化の役割を担うドーパントがないため、ガスの発生量が顕著に高く現われており、それぞれ1種のドーパントのみをドーピングした比較例3~4の場合、実施例1~6に比べて十分な過焼成化がなされていないためBETが相対的に高く、これによる反応表面積の増加によりガスの発生量が顕著に高く現われた。
【0128】
[実験例5:常温抵抗特性の評価]
実施例1~6及び比較例1~4の正極活物質を用いて実験例4のように製造されたリチウム二次電池を25℃、SOC10%で1.0Cで10秒間定電流放電を行い、測定された電圧降下を用いて抵抗を計算して比較し、その結果を下記表5に示した。
【0129】
【0130】
前記表5を参照すれば、本発明の実施例1~6の場合、比較例1~4に比べて常温抵抗が改善された。特に、第1及び第2ドーパントを全くドーピングしていない比較例1~2に比べて実施例1~6の常温抵抗特性が顕著に改善されたが、これは、比較例1~2の場合、ドーパントの添加によるリチウムイオン拡散抵抗の改善の効果を有することができないためであるものと考えられる。