(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ノイズ除去システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
G10K11/178 120
(21)【出願番号】P 2021548545
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 US2019058777
(87)【国際公開番号】W WO2020092510
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・ヘイン
(72)【発明者】
【氏名】シアマク・ファラバクシュ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・バーンスタイン
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-186985(JP,A)
【文献】特開平09-218687(JP,A)
【文献】特表2016-535871(JP,A)
【文献】特開平07-261774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路ノイズ除去システムであって、
車室内に配設されたアクチュエータと、
プロセッサ及び不揮発性メモリを備えるコントローラとを備え、前記コントローラは、
第1の複数の係数を含むノイズ除去フィルタを用いてノイズ除去信号を生成することであって、前記ノイズ除去信号が前記第1の複数の係数に基づき、前記ノイズ除去信号が前記アクチュエータによって変換されて、前記ノイズ除去信号に基づいてノイズ除去オーディオ信号が生成され、前記ノイズ除去オーディオ信号が、ノイズ除去ゾーン内の望ましくないノイズと破壊的に干渉する、生成することと、
前記ノイズ除去フィルタの前記第1の複数の係数を、1つ以上の入力信号に基づいて調整して、第2の複数の係数を提供することと、
間隔の終わりに、前記第2の複数の係数を前記不揮発性メモリに記憶すること
であって、前記間隔の長さが、道路条件に従って判定される、ことと、
(i)起動後、又は(ii)第2の調整によって提供される第3の複数の係数が発散しているか若しくは不安定であると判定した後、不揮発性メモリから前記ノイズ除去フィルタに前記第2の複数の係数を復元することと、を行うようにプログラムされている、道路ノイズ除去システム。
【請求項2】
前記第2の複数の係数を復元する
ことが、前記第2の複数の係数を不揮発性メモリから揮発性メモリにロードすることを含む、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項3】
前記間隔が周期的である、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項4】
前記第2の複数の係数は、前記第2の複数の係数が安定であると判定されるときにのみ記憶される、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項5】
前記コントローラは、シャットダウンシーケンス中に前記第2の複数の係数を前記不揮発性メモリに記憶することを行うようにさらにプログラムされ、前記シャットダウンシーケンスは、ユーザがキーを回転させることによって始動され、その後所定の期間にわたって持続する、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項6】
前記第1の複数の係数が、適応処理モジュールに従って調整される、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項7】
前記1つ以上の入力信号が、ノイズセンサからのノイズセンサ信号、及びエラーセンサからのエラーセンサ信号である、請求項1に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項8】
前記
第1の複数の係数が、前記エラーセンサ信号を少なくとも部分的に最小化するように調整される、請求項
7に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項9】
前記エラーセンサが、前記車室内に配設されたマイクロフォンである、請求項
7に記載の道路ノイズ除去システム。
【請求項10】
道路ノイズ除去システムの最後の状態を持続的に記憶するための方法であって、
第1の複数の係数を含むノイズ除去フィルタを用いてノイズ除去信号を生成する工程であって、前記ノイズ除去信号が前記第1の複数の係数に基づき、前記ノイズ除去信号がアクチュエータによって変換されて、前記ノイズ除去信号に基づいてノイズ除去オーディオ信号が生成され、前記ノイズ除去オーディオ信号が、ノイズ除去ゾーン内の望ましくないノイズと破壊的に干渉する、生成する工程と、
前記ノイズ除去フィルタの前記第1の複数の係数を、1つ以上の入力信号に基づいて調整して、第2の複数の係数を提供する工程と、
間隔の終わりに、前記第2の複数の係数
を不揮発性メモリに記憶する工程
であって、前記間隔の長さが、道路条件に従って判定される、工程と、
(i)起動後、又は(ii)第2の調整によって提供される第3の複数の係数が発散しているか若しくは不安定であると判定した後、前記不揮発性メモリから前記ノイズ除去フィルタに前記第2の複数の係数を復元する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記第2の複数の係数を復元する前記工程が、前記第2の複数
の係数を不揮発性メモリから揮発性メモリにロードすることを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記間隔が周期的である、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の複数の係数は、前記第2の複数の係数が安定であると判定されるときにのみ記憶される、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
シャットダウンシーケンス中に前記第2の複数の係数を前記不揮発性メモリに記憶する工程をさらに含み、前記シャットダウンシーケンスは、ユーザがキーを回転させることによって始動され、その後所定の期間にわたって持続する、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の複数の係数が、適応処理モジュールに従って調整される、請求項
10に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の入力信号が、ノイズセンサからのノイズセンサ信号、及びエラーセンサからのエラーセンサ信号である、請求項
10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の複数の係数が、前記エラーセンサ信号を少なくとも部分的に最小化するように調整される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記エラーセンサが、車室内に配設されたマイクロフォンである、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズ除去システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ除去システム及び方法が知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
下記で言及される全ての例及び特徴は、技術的に可能な任意の方式で組み合わせることができる。
【0004】
一態様によれば、道路ノイズ除去システムは、車室内に配設されたアクチュエータと、プロセッサ及び不揮発性メモリを備えるコントローラとを含み、コントローラは、第1の複数の係数を含むノイズ除去フィルタを用いてノイズ除去信号を生成することであって、ノイズ除去信号が第1の複数の係数に基づき、ノイズ除去信号がアクチュエータによって変換されて、ノイズ除去信号に基づいてノイズ除去オーディオ信号が生成され、ノイズ除去オーディオ信号が、ノイズ除去ゾーン内の望ましくないノイズと破壊的に干渉する、生成することと、ノイズ除去フィルタの第1の複数の係数を、1つ以上の入力信号に基づいて調整して、第2の複数の係数を提供することと、シャットダウンシーケンス中に又は間隔の終わりに、第2の複数の係数を不揮発性メモリに記憶することと、(i)起動後、又は(ii)第2の調整によって提供される第3の複数の係数が発散しているか若しくは不安定であると判定した後、不揮発性メモリからノイズ除去フィルタに第2の複数の係数を復元することと、を行うようにプログラムされている。
【0005】
一実施形態によれば、第2の複数の係数を復元する工程は、第2の複数の係数を不揮発性メモリから揮発性メモリにロードすることを含む。
【0006】
一実施形態によれば、間隔は周期的である。
【0007】
一実施形態によれば、間隔の長さは、道路条件に従って判定される。
【0008】
一実施形態によれば、第2の複数の係数は、第2の複数の係数が安定であると判定されるときにのみ記憶される。
【0009】
一実施形態によれば、シャットダウンシーケンスは、ユーザがキーを回転させることによって始動され、その後所定の期間にわたって持続する。
【0010】
一実施形態によれば、第1の複数の係数は、適応処理モジュールに従って調整される。
【0011】
一実施形態によれば、1つ以上の入力信号は、ノイズセンサからのノイズセンサ信号、及びエラーセンサからのエラーセンサ信号である。
【0012】
一実施形態によれば、係数は、エラーセンサ信号を少なくとも部分的に最小化するように調整される。
【0013】
一実施形態によれば、エラーセンサは、車室内に配設されたマイクロフォンである。
【0014】
別の態様によれば、道路ノイズ除去システムの最後の状態を持続的に記憶するための方法は、第1の複数の係数を含むノイズ除去フィルタを用いてノイズ除去信号を生成する工程であって、ノイズ除去信号が第1の複数の係数に基づき、ノイズ除去信号がアクチュエータによって変換されて、ノイズ除去信号に基づいてノイズ除去オーディオ信号が生成され、ノイズ除去オーディオ信号が、ノイズ除去ゾーン内の望ましくないノイズと破壊的に干渉する、生成する工程と、ノイズ除去フィルタの第1の複数の係数を、1つ以上の入力信号に基づいて調整して、第2の複数の係数を提供する工程と、シャットダウンシーケンス中に又は間隔の終わりに、第2の複数の係数を不揮発性メモリに記憶する工程と、(i)起動後、又は(ii)第2の調整によって提供される第3の複数の係数が発散しているか若しくは不安定であると判定した後、不揮発性メモリからノイズ除去フィルタに第2の複数の係数を復元する工程と、を含む。
【0015】
一実施形態によれば、第2の複数係数を復元する工程は、第2の複数の係数を不揮発性メモリから揮発性メモリにロードすることを含む。
【0016】
一実施形態によれば、間隔は周期的である。
【0017】
一実施形態によれば、間隔の長さは、道路条件に従って判定される。
【0018】
一実施形態によれば、第2の複数の係数は、第2の複数の係数が安定であると判定されるときにのみ記憶される。
【0019】
一実施形態によれば、シャットダウンシーケンスは、ユーザがキーを回転させることによって始動され、その後所定の期間にわたって持続する。
【0020】
一実施形態によれば、第1の複数の係数は、適応処理モジュールに従って調整される。
【0021】
一実施形態によれば、1つ以上の入力信号は、ノイズセンサからのノイズセンサ信号、及びエラーセンサからのエラーセンサ信号である。
【0022】
一実施形態によれば、第1の複数の係数は、エラーセンサ信号を少なくとも部分的に最小化するように調整される。
【0023】
一実施形態によれば、エラーセンサは、車室内に配設されたマイクロフォンである。
【0024】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態によるノイズ除去システムの概略図である。
【
図2】一実施形態によるノイズ除去システムの概略図である。
【
図3】一実施形態によるノイズ除去方法の最後の状態を持続的に記憶するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
道路ノイズ除去方法は、典型的には、道路入力に対する非線形車両応答の変化する挙動に従ってノイズ除去フィルタの係数を調整する適応アルゴリズムを採用する。したがって、適応アルゴリズムは、車両の変化する応答とより良好に一致するようにノイズ除去フィルタ係数を調整し、ノイズ除去が改善される。
【0027】
しかしながら、これらの係数は、車両のシャットダウン(ひいては、道路ノイズ除去を実装するコントローラのシャットダウン)時に失われる。その結果、車両はデフォルト設定で再開し、車両が道路表面上を走行するに従い、デフォルト設定から車両の挙動に再調整するのに時間を必要とするため、ピーク性能までの時間が長くなる。
【0028】
同様に、ノイズ除去フィルタの係数により、ノイズ除去フィルタが不安定になるか又は発散する場合、係数をデフォルト設定に復元するために長時間の適応時間が必要となる。
【0029】
本明細書に開示される様々な実施形態は、電力サイクルを通してノイズ除去フィルタの係数の最後の状態を持続的に記憶するためのシステム及び方法を対象とする。これは、ノイズ除去フィルタを実装するコントローラのシャットダウンの前に係数の最後の状態を不揮発性メモリに記憶することによって、かつコントローラの起動後に係数の最後の状態を復元することによって達成され得る。
【0030】
図1は、車室などの既定の体積104内の少なくとも1つの除去ゾーン102内の望ましくない音と破壊的に干渉するように構成されているノイズ除去システム100の概略図である。高レベルで、ノイズ除去システム100の一実施形態は、ノイズセンサ106、エラーセンサ108、アクチュエータ110、及びコントローラ112を含み得る。
【0031】
一実施形態では、ノイズセンサ106は、既定の体積104内の、望ましくない音、又は望ましくない音のソースを表すノイズ信号(複数可)114を生成するように構成される。例えば、
図1に示すように、ノイズセンサ106は、車両構造116を介して伝達される振動を検出するように装着及び構成された加速度計であってもよい。車両構造116を介して伝達される振動は、この構造によって(道路ノイズとして知覚される)車室内の望ましくない音に変換されるので、構造に装着された加速度計は、望ましくない音を表す信号を提供する。
【0032】
アクチュエータ110は、例えば、既定の容積の周辺部の周りの別個の位置に分散されたスピーカであってもよい。一例では、4つ以上のスピーカが車室内に配設されてもよく、4つのスピーカの各々は、車両のそれぞれのドア内に配置され、音を車室内に投射するように構成される。代替的な実施形態では、スピーカは、ヘッドレスト内、又は車室内の他の場所に配置されてもよい。
【0033】
ノイズ除去信号118は、コントローラ112によって生成され、既定の体積内の1つ以上のスピーカに提供されてもよく、これはノイズ除去信号118を音響エネルギー(即ち、音波)に変換する。ノイズ除去信号118の結果として生成される音響エネルギーは、除去ゾーン102内の望ましくない音から位相が約180°ずれており、したがって、望ましくない音と破壊的に干渉する。ノイズ除去信号118から生成された音波と既定の体積内の望ましくないノイズとの組み合わせは、除去ゾーン内のリスナによって知覚されるように、望ましくないノイズの除去をもたらす。
【0034】
ノイズ除去が既定の体積全体にわたって等しいことが可能ではないため、ノイズ除去システム100は、既定の体積を有する1つ以上の既定除去ゾーン102内で最大のノイズ除去を生成するように構成される。除去ゾーン内のノイズ除去は、望ましくない音の低減を約3dB以上だけ実現することができる(ただし様々な実施形態では、異なる量のノイズ除去が発生し得る)。更に、ノイズ除去は、約350Hz未満の周波数など、周波数の範囲内の音を除去することができる(ただし他の範囲が可能である)。
【0035】
既定の体積内に配設されたエラーセンサ108は、ノイズ除去信号118から生成された音波と除去ゾーン内の望ましくない音との組み合わせから生じる残留ノイズの検出に基づいて、エラーセンサ信号120を生成する。エラーセンサ信号120は、フィードバックとしてコントローラ112に提供され、エラーセンサ信号120は、ノイズ除去信号によって除去されない残留ノイズを表す。エラーセンサ108は、例えば、車室内に(例えば、ルーフ、ヘッドレスト、ピラー、又は室内の他の場所に)装着された少なくとも1つのマイクロフォンであってもよい。
【0036】
除去ゾーン(複数可)は、エラーセンサ108から遠隔に位置付けられてもよいことに留意されたい。この場合、エラーセンサ信号120は、除去ゾーン(複数可)内の残留ノイズの推定値を表すようにフィルタリングされてもよい。いずれの場合も、エラー信号は、除去ゾーン内の望ましくない残留ノイズを表すと理解される。
【0037】
一実施形態では、コントローラ112は、非一時的記憶媒体122及びプロセッサ124を備えてもよい。一実施形態では、非一時的記憶媒体122は、プロセッサ124によって実行されたときに、
図2~
図3に関連して説明される様々なフィルタ及びアルゴリズムを実装するプログラムコードを記憶し得る。非一時的記憶媒体122は、ソリッドステートドライブ又はハードディスクなどの不揮発性メモリで構成されてもよい。一実施形態では、動作中、プログラムコード及び他の記憶された情報が、不揮発性メモリから揮発性メモリにロードされてもよく、これにより、ノイズ除去に必要な演算及び計算を実行するためのより速い速度が提供される。しかしながら、後に開発される不揮発性メモリの形態は、揮発性メモリへのデータのロードを不要にするのに十分な速度を提供することができ、その場合、不揮発性メモリのみが実装されてもよいことを理解されたい。コントローラ112は、ハードウェア及び/又はソフトウェア内に実装されてもよい。例えば、コントローラは、DSP、FPGA、ASIC、又は他の好適なハードウェアによって実装されてもよい。
【0038】
図1では、非一時的記憶媒体122がコントローラ112内に配設されて示されているが、非一時的記憶媒体122は、プログラムコードをロードし、かつ
図2~
図3に関連して図示及び説明されるシステム及び方法に必要な係数値を記憶するのに十分な方法でコントローラ112と通信している限り、コントローラ112の外側に配置されてもよいことを理解されたい。不揮発性メモリは、異なる値を記憶し、かつ異なる機能を実行するために異なるメモリが使用され得る程度まで、非一時的記憶媒体122から分離されてもよいことも理解されたい。非一時的記憶媒体122は、単に、フィルタ係数の最後の状態を記憶するために使用され得る不揮発性メモリの一例として提供される。
【0039】
図2を参照すると、コントローラ112(
図1)によって実装される複数のフィルタを含むノイズ除去システム100の一実施形態のブロック図が示されている。図示のように、コントローラは、W
adaptフィルタ126、適応処理モジュール128、及び発散検出器132を含む制御システムを定義し得る。
【0040】
Wadaptフィルタ126は、ノイズセンサ106からノイズ信号114を受信し、ノイズ除去信号118を生成するように構成される。上述のノイズ除去信号118は、アクチュエータ110に入力され、アクチュエータ110において、それは、既定の除去ゾーン102内の望ましくない音と破壊的に干渉するノイズ除去オーディオ信号に変換される。Wadaptフィルタ126は、多入力多出力(multi-input multi-output、MIMO)有限インパルス応答(finite impulse response、FIR)フィルタなどの任意の好適な線形フィルタとして実装されてもよい。Wadaptフィルタ126は、ノイズ除去信号118を定義する係数のセットを採用し、これは、道路入力に対する(又は非車両ノイズ除去コンテキストにおける他の入力に対する)非線形車両応答の変化する挙動に適合するように調整され得る。Wadaptフィルタ126のフィルタ係数は、開始時に、製造中に設定されたデフォルト係数(すなわち、工場設定)であっても、あるいは何らかの後の時間に(例えば、更新中に)設定されたデフォルト係数であってもよい。しかし、車両が駆動されるについて、係数は、デフォルト係数から、望ましくないノイズをより良好に相殺するノイズ除去信号を生成する係数に調整される。
【0041】
係数に対する調整は、エラーセンサ信号120及びノイズ信号114を入力として受信し、それらの入力を使用してフィルタ更新信号130を生成する適応処理モジュール128によって実行されてもよい。フィルタ更新信号130は、Wadaptフィルタ126内に実装されるフィルタ係数に対する更新である。更新されたWadaptフィルタ126によって生成されるノイズ除去信号118は、エラー信号120を最小化し、その結果、除去ゾーン内の望ましくないノイズを最小化する。
【0042】
コントローラ112はまた、係数が発散しているか又は不安定であるかを判定するために、Wadaptフィルタ126の係数に対して定性的分析を実行するように構成された発散検出器132を含んでもよい。不安定性又は発散を判定するための様々な方法及びアルゴリズムが当該技術分野において既知であり、発散検出器132によって実装されて、係数の品質を判定することができる。発散検出器132は、Wadaptフィルタ126と通信しているように示されているが、発散検出器132は、代替的に、適応処理モジュール128と通信していてもよく、(現在実装されている係数ではなく)係数への更新が発散しているか又は不安定であるかどうかを判定してもよいことを理解されたい。
【0043】
車両のシャットダウン時(例えば、ユーザがキーを回転させたとき)、車両は、とりわけ、コントローラ112への電力を切断することを典型的に伴うシャットダウンシーケンスを開始する。(例えば、キーが回転された10秒後など、特定の規定期間中に生じる)このシャットダウン手順の間、コントローラ112は、係数の最後の状態を非一時的記憶媒体122などの不揮発性メモリに記憶し、起動後に係数をWadaptフィルタ126に復元するように構成されてもよい。道路条件、及びそれらの条件に対する車両応答は、シャットダウンと起動との間で変化しない(又は少なくとも非常に類似している)可能性が高いため、復元された係数は、所与のデフォルト係数の設定よりも望ましくないノイズをより良好に相殺するノイズ除去信号を生成するように機能する可能性が高い。
【0044】
上述のノイズ除去システムは単に一例として提供されること、及び任意のノイズ除去システム(例えば、フィードフォワード又はフィードバックシステム)が適応フィルタを採用し、フィルタの最後の状態を表す係数が使用され得ることを理解されたい。
【0045】
図3に示す方法300は、例示的な最後の状態の持続的記憶シーケンスを示す。方法300は、
図1及び
図2に関連して説明されたノイズ除去システムなどのノイズ除去システムを使用して実装されてもよい。
【0046】
工程302において、W
adaptフィルタ126など、第1の複数の係数を含む適応フィルタによってノイズ除去信号が生成される。ノイズ除去信号は、適応フィルタの係数に基づく。適応フィルタは、非一時的記憶媒体122(
図1)などの不揮発性メモリを含むコントローラ112(
図1)などのコントローラによって実装されてもよい。
【0047】
図示のように、工程304において、1つ以上の入力信号に従って適応フィルタ係数(すなわち、第1の複数のフィルタ係数)が調整される。入力信号は、例えば、ノイズセンサ106などのノイズセンサから来ていてもよく、このノイズセンサは、既定の体積104内の、望ましくない音、又は望ましくない音のソースを表すノイズ信号(複数可)114を生成するように構成される。例えば、
図1に示すように、ノイズセンサ106は、車両構造116を介して伝達される振動を検出するように装着及び構成された加速度計であってもよい。入力信号はまた、車室内に配設されたマイクロフォンとして実装され得るエラーセンサ108などのエラーセンサから来ていてもよい。エラーセンサは、ノイズ除去信号によって除去されない残留ノイズを表すエラー信号を生成することができる。適応フィルタ係数は、エラー信号を少なくとも部分的に最小化するように調整されてもよい。
【0048】
工程306において、更新された係数(すなわち、第2の複数のフィルタ係数)が不揮発性メモリに記憶される。更新された係数は、間隔の終わりに不揮発性メモリに記憶されてもよい。間隔の長さは、任意の好適な長さの時間(例えば、10秒毎、20秒毎など)であってもよい。より短い間隔は、現在の道路条件をより正確に反映する係数を記憶する可能性が高いが、より長い間隔は、より少ない処理リソースを必要とする。
【0049】
更に、一実施形態では、間隔は周期的であってもよいが、代替実施形態では、間隔の長さは、利用可能な処理リソースに従って変更されてもよい(例えば、更新された係数は、コントローラ112上でより低い処理要求が行われるときにより頻繁に記憶され得る)か、又は道路条件によってノイズ除去システム100に対して発される要求に従って変更されてもよい。後者の例では、頻繁に変化する道路条件は、復元されたときの係数が、直近の道路条件から導出された係数を正確に反映することを確実にするために、係数をより頻繁に記憶することを必要とする場合があり、一方、より一定の道路条件(ハイウェイ運転)は、係数のあまり頻繁でない記憶しか必要としない場合がある。時間間隔の長さは、例えば、更新同士の係数の大きさの平均差に基づいてもよい。
【0050】
間隔の長さにかかわらず、更新された係数は、例えば、更新された係数が十分に安定かつ収束している場合にのみ記憶されてもよい。更新された係数の安定性又は収束は、当該技術分野において既知の様々な方法に従って発散検出器(発散検出器132などの)によって判定されてもよい。したがって、更新された係数が安定していると発散検出器が判定した場合、更新された係数は不揮発性メモリに記憶されて、不揮発性メモリからの任意の復元された係数が安定していてかつ収束することを確実にする。更新された係数が安定しているかどうかは、発散検出器の出力が特定の閾値を超えるか又は下回るかどうかによって判定され得る。閾値は、発散検出器の出力が、更新された係数が安定しているという高い信頼度を反映するときにのみ、更新された係数が不揮発性メモリに記憶されることを確実にするように調整されてもよい。したがって、一実施形態では、発散検出器の出力が、更新された係数が安定しているという低い信頼度を反映するか、あるいは更新された係数が発散していることを反映する場合(係数が発散しているかどうかは、例えば、異なる閾値を発散検出器の出力に適用することによって判定され得る)、更新された係数は、間隔の終わりに記憶されない場合がある。
【0051】
発散検出器が、更新された係数が不安定であるか又は発散していることを検出した場合、コントローラは、直近に記憶された安定及び収束している係数を不揮発性メモリから復元することを含むエラー回復状態に入ってもよい。ここでも、更新された係数が不安定であるか、又は発散しているかは、発散検出器の出力を閾値と比較することによって判定されてもよい。閾値は、例えば、係数が発散しているという高い信頼度を反映するように調整されてもよい。
【0052】
要約すると、更新された係数が安定しているという高い信頼度を表す第1の閾値、及び更新された係数が発散しているという高い信頼度を表す第2の閾値という、2つの閾値が発散検出器の出力に適用されてもよい。第1の閾値と第2の閾値との間の出力値は、安定性又は発散のいずれかの低い信頼度を表し得る。したがって、第1及び第2の閾値に対して発散検出器の出力を比較することによって、更新された係数は、高い信頼度で安定しているか、低い信頼度で安定又は発散しているか、あるいは高い信頼度で発散していると判定され得る。コントローラは、工程308において、出力値が安定性の高い信頼度を反映したときにのみ、更新された係数を記憶するように構成され、(以下に論じられる)工程310において、出力値が発散の高い信頼度を反映したとき、エラー回復状態に入るように構成され、かつ低い信頼度の出力の場合、記憶することもエラー回復に入ることも行わないように構成されてもよい。代替実施形態では、第1及び第2の閾値は等しく設定されてもよく、このようにして、低い信頼度の状態を排除して、更新された係数を記憶するか、あるいは発散検出器の出力に応じてエラー回復に入る、2状態システムがもたらされる。
【0053】
しかしながら、発散検出器の出力値を閾値処理する必要が必ずしもない、安定性又は収束を判定するための様々な方法が存在することも理解されたい。
【0054】
更に、コントローラは、代替的に、コントローラが適切に機能するのを妨げる予期せぬ電力サイクル又は他のエラーが発生した場合、エラー回復状態に入ってもよい。
【0055】
代替実施形態では、エラー回復は必ずしもサイクルされる電力を必要としない場合があるため、更新された係数を、(周期的な又は他の方法の)間隔の終わりに不揮発性メモリに記憶する代わりに、更新された係数を揮発性メモリに記憶してもよい。したがって、コントローラは、収束及び安定している更新された係数を揮発性メモリに一時的に記憶して、エラー回復の場合に将来の係数を置き換えることができる。
【0056】
工程308において、ユーザによって、又は車両をシャットダウンさせる安全シーケンスなどの何らかの他の場合によって、シャットダウンシーケンスが始動される。コントローラが電源切断される前に、コントローラは、係数の最後の状態の値が電力サイクルを通して持続するように、適応フィルタ係数値の最後の状態を不揮発性メモリに記憶する。工程306と同様に、コントローラは、一実施形態では、工程308において、発散検出器の出力が、係数が安定しているという高い信頼度を反映した場合にのみ、更新された係数を記憶してもよい。これは、閾値に対して発散検出器の出力を比較することによって達成され得るが、他の方法が企図される。
【0057】
工程306及び308は、それらが代替実施形態において又は同じシステム内に実装され得るため、
図3では破線で示されている。更に、工程308は、コントローラが、介在するシャットダウンシーケンスなしで生じる可能性が高いエラー回復状態に入るときに省略されてもよい。
【0058】
工程310において、車両が再開され、コントローラが電源オンされた後に、又はエラー回復中に、コントローラは、不揮発性メモリから適応フィルタに第2の複数のフィルタ係数を復元し、適応フィルタは、次いで、ノイズ除去信号の生成を再び開始するために使用される。代替実施形態では、コントローラは、デフォルト係数を用いて適応フィルタを開始し、それらを不揮発性メモリからロードされた係数と置き換えてもよい。いずれの場合も、不揮発性メモリの速度に応じて、工程308は、不揮発性メモリから揮発性メモリに係数をロードすることを必要とし得るか、又は揮発性メモリにロードせずに不揮発性メモリ内のメモリロケーションを参照することで十分であり得る。
【0059】
記憶された更新係数を使用した結果、適応フィルタのピーク性能までの時間が短縮される。適応フィルタは、本来なら、デフォルト係数から、道路表面上を走行するときの車両の挙動に適応する時間を必要とし得るので、係数を記憶することにより、起動時又はエラー回復時に適応する可能性が低減され、より速やかに高い性能が提供される。開示されたシステム及び方法は、ノイズ除去システムの改善された性能(例えば、起動後に適応するためのより速い時間)を可能にするため、これらのシステム及び方法は、コンピュータの機能の改善を表す。
【0060】
本明細書に記載される機能又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/若しくはプログラム可能論理構成要素、による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体又は記憶デバイスなどの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0061】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つのサイトにおける複数のコンピュータ上で実行されるように配備されるか、又は複数のサイトにわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0062】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(application-specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)として実装され得る。
【0063】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしてはまた、例として、一般的及び特殊目的マイクロプロセッサの両方、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はそれらの両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0064】
本明細書において、いくつかの発明実施形態について記述し説明してきたが、当業者であれば、様々な他の手段、及び/又は、機能を実施し及び/若しくは結果を得るための構造、及び/又は、本明細書に記載の1つ以上の利点を容易に思いつくことができ、並びに、こうした変更形態及び/又は変形形態の各々は、本明細書に記載の発明実施形態の範囲内にあると見なすことができる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載のパラメータ、寸法、材料、及び構成の全てが例示的であること、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、特定のアプリケーション又は本発明の教示が使用されるアプリケーションに依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、わずかなありふれた実験を行うだけで、本発明に記載されている特定の発明実施形態に相当する多くの等価物を認識又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示されたものであり、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、明確に記載され特許請求された以外の別のやり方で発明実施形態を実践することができるということを理解されたい。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法を対象とする。更に、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法のいかなる組む合わせも、こうした特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法が相互に矛盾することのない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
100 道路ノイズ除去システム
102 除去ゾーン
102 ノイズ除去ゾーン
104 車室
106 ノイズセンサ
108 エラーセンサ
110 アクチュエータ
112 コントローラ
114 ノイズ信号
116 車両構造
118 ノイズ除去信号
120 エラーセンサ信号
122 不揮発性メモリ
124 プロセッサ
126 Wadaptフィルタ
128 適応処理モジュール
130 フィルタ更新信号
132 発散検出器