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特許7179196二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20221118BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20221118BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221118BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/1393
H01M4/587
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021554402
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2020088458
(87)【国際公開番号】W WO2021217635
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(74)【代理人】
【識別番号】100222106
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】康蒙
(72)【発明者】
【氏名】王家政
(72)【発明者】
【氏名】董▲曉▼斌
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511389(JP,A)
【文献】特開2009-064574(JP,A)
【文献】特開2004-087251(JP,A)
【文献】特開2015-064975(JP,A)
【文献】特表2020-537324(JP,A)
【文献】特表2021-529417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/1393
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
負極シートを含み、
前記負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、
前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、
前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛のうちの一種又は複数種を含み、且つ、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.4~0.6であり、
前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である、二次電池。
【請求項2】
前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.45~0.6である
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.5~0.57である、
請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.3~0.4である
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.32~0.38である、
請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)と前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)との比は、1.05~1.9である
請求項1乃至のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)と前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)との比は、1.2~1.6である、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第2の負極活性材料は二次粒子を含み、前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の個数の割合は、≧30%である
請求項1乃至のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の個数の割合は、≧50%である、
請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、≧80%である
請求項1乃至のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、90%~100%である、
請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10より小さい、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1の負極活性材料のタップ密度は、前記第2の負極活性材料のタップ密度より大きい、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第1の負極活性材料は、下記(1)~(6)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、4.8μm~8.0μmであること、
(2)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50は、13.7μm~20.7μmであること、
(3)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D99は、42μm~66μmであること、
(4)前記第1の負極活性材料の粒度分布(D90~D10)/D50は、1.2~2.4であること、
(5)前記第1の負極活性材料のタップ密度は、0.88g/cm~1.28g/cmあること、
(6)30000N圧力での前記第1の負極活性材料の粉体圧密度は、1.77g/cm~1.97g/cmあること、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第1の負極活性材料は、下記(1)~(6)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D 10は、5.3μm~7.3μmであること、
(2)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D 50は、14.7μm~18.7μmであること、
(3)前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D 99は、48μm~60μmであること、
(4)前記第1の負極活性材料の粒度分布(D 90~D 10)/D 50は、1.5~2.1であること、
(5)前記第1の負極活性材料のタップ密度は、0.98g/cm ~1.18g/cm であること、
(6)30000N圧力での前記第1の負極活性材料の粉体圧密度は、1.82g/cm ~1.92g/cm であること、
請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記第2の負極活性材料は、下記(1)~(6)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10は、6.0μm~9.5μmであること、
(2)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D50は、10μm~18μmであること、
(3)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D99は、25μm~45μmであること、
(4)前記第2の負極活性材料の粒度分布(D90~D10)/D50は、0.9~1.5であること、
(5)前記第2の負極活性材料のタップ密度は、0.7g/cm~1.4g/cmあること、
(6)30000N圧力での前記第2の負極活性材料の粉体圧密度は、1.65g/cm~1.85g/cmあること、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項17】
前記第2の負極活性材料は、下記(1)~(6)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D 10は、8μm~9μmであること、
(2)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D 50は、12μm~16μmであること、
(3)前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D 99は、30μm~40μmであること、
(4)前記第2の負極活性材料の粒度分布(D 90~D 10)/D 50は、1.1~1.3であること、
(5)前記第2の負極活性材料のタップ密度は、0.8g/cm ~1.2g/cm であること、
(6)30000N圧力での前記第2の負極活性材料の粉体圧密度は、1.71g/cm ~1.80g/cm であること、
請求項16に記載の二次電池。
【請求項18】
前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛を含み、且つ前記第1の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、≧50%である
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項19】
前記第1の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、60%~100%である、
請求項18に記載の二次電池。
【請求項20】
前記負極膜層は、下記(1)~(3)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記負極膜層の面密度は、90g/m~136g/mあること、
(2)前記負極膜層の圧密度は、1.5g/cm~1.75g/cmあること、
(3)前記負極膜層の厚さは、≧60μmであること、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項21】
前記負極膜層は、下記(1)~(3)のうちの一つ又は複数をさらに満たす、
(1)前記負極膜層の面密度は、104g/m ~117g/m であること、
(2)前記負極膜層の圧密度は、1.6g/cm ~1.7g/cm であること、
(3)前記負極膜層の厚さは、65μm~80μmであること、
請求項20に記載の二次電池。
【請求項22】
二次電池の製造方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極膜層を形成する工程と、
2)前記第1の負極膜層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極膜層を形成する工程と
によって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、
前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛のうちの一種又は複数種を含み、且つ、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.4~0.6であり、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である、
二次電池の製造方法。
【請求項23】
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の二次電池を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学の技術分野に属し、より具体的には、二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、重量が軽く、汚染がなく、メモリ効果がないなどの顕著な特徴を有するため、各種の消費類電子製品及び電動車両に広く応用される。
【0003】
新エネルギー自動車の発展に伴い、人々は自動車の航続距離に対してより重要な要求を提出している。そのため、エネルギー源としての二次電池には、より高いエネルギー密度が求められている。同時に、新エネルギー自動車の充電速度もその急速な普及を制限する主な障害である。しかしながら、二次電池の高エネルギー密度及び急速充電性能は常に衝突している。高いエネルギー密度設計は、常に、電池の急速充電性能に悪影響を与える。したがって、どのように高いエネルギー密度の前提で、急速充電性能を改善するかは、電池設計分野の重要な課題である。
【0004】
これに鑑みて、上記問題を解決でき、高いエネルギー密度及び良好な急速充電性能などの特徴を兼ね備えた二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
背景技術に存在する技術的課題に鑑み、本願は、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、良好な急速充電性能及びサイクル性能を同時に両立させることを目的として、二次電池及びそれを備える装置を提供する。
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池を提供し、当該二次電池は、負極シートを含み、前記負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第1の負極活性材料は黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.4~0.6であり、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である。
【0007】
本願の第2の態様は、二次電池の製造方法を提供し、当該製造方法は、1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極膜層を形成する工程と、2)前記第1の負極膜層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極膜層を形成する工程とによって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、前記第1の負極活性材料は黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.4~0.6であり、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である。
【0008】
本願の第3の態様において、本願は、本願の第1の態様に記載の二次電池又は本願の第2の態様に記載の方法で製造された二次電池を備える装置に関する。
【0009】
本願は、従来技術に対して、少なくとも以下の有益な効果を含む。本願の二次電池は、負極シートが第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、且つ設計時に各負極膜層における負極活性材料の異なる組成を制御することにより、二次電池が高いエネルギー密度を有した上で、良好な急速充電性能及びサイクル性能を同時に両立させる。本願の装置は前記二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】本願の二次電池における負極シートの一実施形態の模式図である。
図3】本願の二次電池における負極シートの他の実施形態の模式図である。
図4】本願の二次電池の一実施形態の分解模式図である。
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図6】電池パックの一実施形態の模式図である。
図7図6の分解図である。
図8】本願の二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。理解されるように、これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものに過ぎず、本願の範囲を限定するものではない。
【0012】
簡潔にするために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示した。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、各単独で開示された点又は単一の数値自体は下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0013】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は二種類及び二種類以上である。
【0014】
特に説明しない限り、本願に使用される用語は当業者に一般的に理解される周知の意味を有する。特に説明しない限り、本願に言及された各パラメータの数値は本分野の一般的な様々な測定方法で測定することができる(例えば、本願の実施例に示された方法に応じて測定することができる)。
二次電池
【0015】
本開示の第1の様態は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シート、負極シート及び電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間に往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0016】
[負極シート]
二次電池において、電池のエネルギー密度を増加させるために、膜層の面密度及び圧密度を増加させる傾向があるが、面密度及び圧密度の増加は電池の急速充電性能の悪化を引き起こす。これは、面密度の増加により活性イオンの移動経路が増加し、圧密度の増加により負極孔経路構造が悪くなるため、その中での活性イオンの液相伝導に影響を与えるからである。また、負極活性材料はサイクル過程において膨張が存在するため、活性材料と基材との間の接着力が低下し、さらに脱膜が発生してしまい、面密度が増加した場合、このような現象はより深刻である。したがって、どのように電池が高いエネルギー密度を有した上で、良好な急速充電性能及びサイクル性能を兼ね備えるかは、技術的に大きな課題である。
【0017】
発明者らは大量の実験により、負極シートの製造プロセスを調整することにより本願の技術目標を実現することができることを見出した。具体的には、本願の二次電池における負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第1の負極活性材料は黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性は(uniformity)0.4~0.6であり、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である。
【0018】
本願において、負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は本分野で周知の意味を有し、負極活性材料における全ての粒子の粒径が体積分布粒径Dv50からずれた離散程度を特徴付けることができ、負極活性材料の粒径分布の均一性を反映することができる。
【0019】
具体的には、本願の負極シートは第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、上下層はいずれも特定の負極活性材料を含み、且つ上下層の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)には明らかな差異が存在し、第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.4~0.6の範囲内にあり、且つ第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.25~0.45の範囲内にある場合、二次電池が高いエネルギー密度を有した上で、良好な急速充電性能及びサイクル性能を同時に兼ね備えることができる。発明者らは、研究により、第1の負極活性材料と第2の負極活性材料との粒度の均等性(uniformity)が同時に所定の範囲内にある場合、第1の負極膜層及び第2の負極膜層における活性イオン輸送経路が最適なマッチングを得て、活性イオンの液相伝導における抵抗を効果的に低減し、各領域における活性イオンは、液相伝導を迅速に完了し且つ負極活性材料に挿入されることができ、電池の急速充電性能を効果的に改善すると同時に、上下層の負極活性材料が特定の範囲の粒度の均等性を有する場合、二次電池を製造した後の各層の負極活性材料の間、負極膜層と負極集電体の間、及び第1の負極膜層と第2の負極膜層の間に、いずれも適切な接触面を有し、負極膜層の脱膜のリスクを低減させるため、電池のサイクル性能を効果的に改善することを見出した。
【0020】
前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.43~0.58、0.47~0.6、0.47~0.55、0.51~0.58などであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.45~0.6であってもよく、より好ましくは、0.5~0.57である。
【0021】
前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.25~0.38、0.26~0.45、0.27~0.43、0.3~0.42などであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.3~0.4であってもよく、より好ましくは、0.32~0.38である。
【0022】
本発明者らは鋭意研究により、本願の負極シートが上記設計を満たした上で、さらに下記設計のうちの一つ又は複数を選択的に満たす場合、二次電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)と前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)との比は、1.05~1.9であり、より好ましくは、1.2~1.6である。上下層の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)の比が当該範囲を満たす場合、各層における負極活性材料がさらに最適化され、負極シートを製造した後、上下層の負極活性材料の間が互いに移動し充填され、負極活性材料の間の密着堆積に役立ち、各層の負極膜層がいずれも高い圧密度を有するため、電池の体積エネルギー密度をさらに向上させ、したがって、同じ設計で、そのグループマージンがより優位性を有し、これにより、電池のサイクル性能をさらに向上させる。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、≧80%であり、より好ましくは、90%~100%である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料は二次粒子を含む。発明者らは、研究により、第2の負極膜層が位置する領域の活性イオン濃度が高く、第2の負極膜層における活性材料が一定の含有量の二次粒子を含む場合、それが提供できる挿入・脱離する活性イオンのチャネルが多くなり、ちょうど当該領域の活性イオンの実際の分布とマッチングし、電池の急速充電性能及びサイクル性能をさらに改善することができることを見出した。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の個数の割合Bは、≧30%である。より好ましくは、第2の負極活性材料における前記二次粒子の個数の割合Bは、≧50%である。例えば、Bの範囲は、30%≦B≦100%、40%≦B≦85%、45%≦B≦98%、50%≦B≦100%、55%≦B≦95%、60%≦B≦98%、80%≦B≦100%、50%≦B≦90%などであってもよい。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10より小さい。上下層の負極活性材料が当該設計条件をさらに満たす場合、第2の負極膜層の孔経路が直線型になる傾向があり、充電初期の低SOC状態(State of Charge、荷電状態)での活性イオンの液相伝導に役立つと同時に、第2の負極膜層内の小さな粒子の活物質が多く且つ粒度が小さく、充電末期の高SOC状態での活性イオンの電荷交換に役立ち、これにより、電池の急速充電性能をさらに向上させる。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、4.8μm~8.0μmであり、より好ましくは、5.3μm~7.3μmである。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10は、6.0μm~9.5μmであり、より好ましくは、8μm~9μmである。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料のタップ密度は、前記第2の負極活性材料のタップ密度より大きい。タップ密度は、膜層における活物質の充填密度を反映させることができ、第1の負極活性材料のタップ密度が前記第2の負極活性材料のタップ密度より大きい場合、第1の負極膜層の充填がより緻密であり、電池がより高い体積エネルギー密度を備えることを保証することができ、第2の負極膜層の充填が疎であり、孔隙がより発達し、電池がより優れた急速充電性能を備えることを保証することができる。したがって、当該電池は、高い体積エネルギー密度と良好な急速充電性能を同時に兼ね備える。体積エネルギー密度が高いため、同じ設計で、そのグループマージンがより優位性を有し、これにより、電池のサイクル性能をさらに向上させる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料のタップ密度は、0.88g/cm~1.28g/cmであり、より好ましくは、0.98g/cm~1.18g/cmである。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料のタップ密度は、0.7g/cm~1.4g/cmであり、より好ましくは、0.8g/cm~1.2g/cmである。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の粒度分布(D90~D10)/D50は、1.2~2.4であり、より好ましくは、1.5~2.1である。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の粒度分布(D90~D10)/D50は、0.9~1.5であり、より好ましくは、1.1~1.3である。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50は、13.7μm~20.7μmであり、より好ましくは、14.7μm~18.7μmである。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D50は、10μm~18μmであり、より好ましくは、12μm~16μmである。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D99は、42μm~66μmであり、より好ましくは、48μm~60μmである。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D99は、25μm~45μmであり、より好ましくは、30μm~40μmである。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、30000N圧力での前記第1の負極活性材料の粉体圧密度は、1.77g/cm~1.97g/cmであり、より好ましくは、1.82g/cm~1.92g/cmである。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、30000Nの圧力での前記第2の負極活性材料の粉体圧密度は、1.65g/cm~1.85g/cmであり、より好ましくは、1.71g/cm~1.80g/cmである。
【0041】
本願において、前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛を含む。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量割合は、≧50%であり、より好ましくは、60%~100%である。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、前記負極膜層の厚さは、≧60μmであり、より好ましくは、65μm~80μmである。なお、前記負極膜層の厚さは、第1の負極膜層と第2の負極膜層の厚さの合計である。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極膜層と前記第1の負極膜層との厚さの比は、1:1~3:2である。第1の負極膜層と第2の負極膜層との厚さの比が所定の範囲にある場合、上下層に勾配孔隙分布を形成することに役立ち、正極から脱離された活性イオンの負極膜層表面での液相伝導抵抗を減少させ、イオンが表層に堆積してリチウム析出を引き起こすという問題を引き起こさず、同時に活性イオンの膜層での均一な拡散は分極を減少させることに役立ち、電池の急速充電性能及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、前記負極膜層の面密度は、90g/m~136g/mであり、好ましくは、104g/m~117g/mである。なお、前記負極膜層の面密度は、負極膜層全体の面密度(即ち、第1の負極膜層と第2の負極膜層の面密度の合計)を指す。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、前記負極膜層の圧密度は、1.5g/cm~1.75g/cmであり、好ましくは、1.6g/cm~1.7g/cmである。なお、前記負極膜層の圧密度は、負極膜層全体の圧密度(即ち負極膜層の面密度と厚さとの比)を指す。負極膜層の圧密度が所定の範囲内にあると、負極シートが高い可逆容量を有すると同時に、良好な低サイクル膨張性能及び動力性能を有するようにし、これにより、電池のエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能をさらに改善することができる。
【0048】
本願において、負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は本分野の周知の意味を有し、本分野の既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T 19077.1-2016を参照して、レーザー回折粒度分布測定機(例えばMalvernmastersizer 3000)で直接測定して得ることができる。
【0049】
本願において、二次粒子は、本分野で周知の意味を有し、二つ又は二つ以上の一次粒子が凝集して形成された凝集状態の粒子を指す。
【0050】
負極活性材料における二次粒子の個数の割合は本分野の周知の装置及び方法で測定することができる。例えば、負極活性材料を導電性接着剤に敷設して接着し、長さ×幅=6cm×1.1cmの測定対象サンプルを製造し、走査型電子顕微鏡(例えばZEISSsigma 300)を用いて粒子形態を測定する。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、測定対象サンプルから複数(例えば20個)の異なる領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば1000倍)で、各領域における二次粒子の個数が全粒子の個数を占める百分率を計算すると、当該領域における二次粒子の個数の割合である。上記複数の測定領域の測定結果の平均値を負極活性材料における二次粒子の個数の割合とする。
【0051】
本願において、負極活性材料のD10、D50、Dv90、Dv99はいずれも本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば標準GB/T 19077.1-2016を参照して、レーザー回折粒度分布測定機(例えばMalvern mastersizer 3000)で直接測定して得ることができる。ここで、Dv10は負極活性材料の累積体積百分率が10%に達する場合に対応する粒径を指し、Dv50は負極活性材料の累積体積百分率が50%に達する場合に対応する粒径を指し、Dv90は負極活性材料の累積体積百分率が90%に達する時に対応する粒径を指し、Dv99は負極活性材料の累積体積百分率が99%に達する場合に対応する粒径を指す。
【0052】
本願において、負極活性材料のタップ密度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T 5162-2006を参照して、粉体タップ密度測定機(例えば、中国タン東百特社のBT-301)を使用して測定することができる。
【0053】
本願において、材料の粉体圧密度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えばGB/T 24533-2009を参照して、電子圧力測定機(例えばUTM7305)を用いて測定することができる。一定量の粉末を圧密専用金型に置き、異なる圧力を設定し、機器で異なる圧力での粉末の厚さを読み出すことができ、異なる圧力での圧密度を算出することができる。本願において、圧力を30000Nに設定する。
【0054】
本願において、負極活性材料の黒鉛化度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、X線回折計(例えばBrukerD8 Discover)を用いて測定する。測定は、JISK0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、d002の大きさを測定し、次に、公式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて黒鉛化度を算出し、ここでd002は、nmで計算された黒鉛結晶構造における層間隔である。X線回折分析測定において、CuKα射線を放射源とし、射線の波長がλ=1.5418Åであり、走査2θ角範囲が20°~80°であり、走査速度が4°/minであってもよい。
【0055】
本願において、材料の形態は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、材料を導電性接着剤に貼り付け、走査型電子顕微鏡(例えばZEISSsigma 300)を用いて、粒子の形態を測定する。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。
【0056】
なお、上記負極活性材料に対する様々なパラメータ測定は、塗布前にサンプリングして測定してもよく、冷間プレス後の負極膜層からサンプリングして測定してもよい。
【0057】
上記測定サンプルが冷間プレスされた後の負極膜層からサンプリングされる場合、例として、以下のステップに従ってサンプリングすることができる。
【0058】
(1)まず、冷間プレス後の負極膜層を任意に選択し、第2の負極活性材料をサンプリングし(スクレーパで粉をこすり落としてサンプリングしてもよい)、スクレーパの深さが第1の負極膜層と第2の負極膜層との境界領域を超えない。
【0059】
(2)次に、第1の負極活性材料をサンプリングする。負極膜層の冷間プレス過程において、第1の負極膜層と第2の負極膜層との間の境界領域に相互溶融層が存在する可能性があり(即ち、相互溶融層に第1の活性材料及び第2の活性材料が同時に存在する)、測定の正確性のために、第1の負極活性材料をサンプリングする時に、まず相互溶融層をこすり落として、次に、第1の負極活性材料の粉末をこすり落としてサンプリングすることができる。
【0060】
(3)上記収集された第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料をそれぞれ脱イオン水に入れ、且つ第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料を吸引濾過し、乾燥し、さらに乾燥した後の各負極活性材料を一定の温度及び時間で焼結し(例えば400℃、2h)、接着剤及び導電性炭素を除去すれば、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の測定サンプルが得られる。
【0061】
上記サンプリング過程において、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で第1の負極膜層と第2の負極膜層との間の境界領域の位置を補助的に判断することができる。
【0062】
本願に用いられる負極活性材料は、いずれも商業的に入手可能なものである。
【0063】
本願において、負極膜層の総厚さはマイクロメータで測定して得ることができ、例えば型番がMitutoyo 293-100であり、精度が0.1μmであるマイクロメータで測定して得ることができる。
【0064】
本願において、第1の負極膜層及び第2の負極膜層の厚さは、走査型電子顕微鏡(例えばZEISSsigma 300)を用いて測定することができる。サンプルの製造は以下の通りである。まず、負極シートを一定のサイズの測定対象サンプル(例えば2cm×2cm)に切断し、パラフィンにより負極シートをサンプル台に固定する。次に、サンプル台をサンプル棚に入れてロックして固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えばIB-19500CP)の電源及び真空排気(例えば10-4Pa)をオンにし、アルゴンガス流量(例えば0.15mPa)及び電圧(例えば8KV)と研磨時間(例えば2時間)とを設定し、サンプル台を揺動モードに調整して研磨を開始する。サンプル測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、測定対象サンプルから複数(例えば10個)の異なる領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば500倍)で、スケール測定領域における第1の負極膜層及び第2の負極膜層のそれぞれの厚さを読み取り、複数の測定領域の測定結果の平均値を第1の負極膜層及び第2の負極膜層の厚さの平均値とする。
【0065】
本願において、負極膜層の面密度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、片面が塗布され且つ冷間プレスされた負極シート(両面が塗布された負極シートであれば、まずそのうちの一面の負極膜層を拭いてもよい)を取り、面積がS1の小さなウェハに打ち抜き、その重量を秤量し、M1と記録する。次に上記秤量後の負極シートの負極膜層を拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、M0と記録し、負極膜層面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1である。測定結果の正確性を確保するために、複数群(例えば10群)の測定対象サンプルを測定し、且つ平均値を計算して測定結果としてもよい。
【0066】
負極膜層の圧密度は本分野の周知の意味を有し、本分野の既知の方法で測定することができる。例えば、まず、上記測定方法に応じて負極膜層の面密度及び厚さを得ると、負極膜層の圧密度=負極膜層の面密度/負極膜層の厚さである。
【0067】
本願の二次電池において、前記第1の負極膜層及び/又は前記第2の負極膜層は、一般的に、負極活性材料と、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤と、を含み、一般的に、負極膜層スラリーを塗布して乾燥させて形成される。負極膜層スラリーの塗布は、一般的に、負極活性材料と選択可能な導電剤及び接着剤などとを溶媒に分散させ且つ均一に撹拌して形成され、溶媒は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。他の任意の助剤は、例えば増粘及び分散剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などであってもよい。
【0068】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0069】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acryliCresin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0070】
本願の二次電池において、前記第1の負極活性材料及び/又は前記第2の負極活性材料は、本願の上記特定の負極活性材料を含む以外にも、さらに、一定量の他の一般的な負極活性材料を選択的に含み、例えば、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの一種又は複数種である。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン合金のうちの一種又は複数種から選択することができる。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金のうちの一種又は複数種から選択することができる。これらの材料の製造方法は周知であり、且つ商業的に取得することができる。当業者は実際の使用環境に応じて適切に選択することができる。
【0071】
本願の二次電池において、前記負極集電体は、一般的な金属箔又は複合集電体(金属材料を高分子基材に設置して複合集電体を形成してもよい)を使用することができる。例として、負極集電体は銅箔を使用することができる。
【0072】
理解できるように、負極集電体は自身の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層設置されてもよい。
【0073】
図2は、本願の負極シート10の一実施形態の模式図を示す。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の両面にそれぞれ設けられた第1の負極膜層103と、第1の負極膜層103上に設けられた第2の負極膜層102とから構成されている。
【0074】
図3は、本願の負極シート10の別の実施形態の模式図を示す。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の一つの表面に設けられた第1の負極膜層103と、第1の負極膜層103上に設けられた第2の負極膜層102とから構成されている。
【0075】
なお、願に係る各負極膜層パラメータ(例えば、負極膜層の厚さ、面密度、圧密度など)は、いずれも片面の膜層のパラメータ範囲を指す。負極膜層が負極集電体の二つの表面上に設置される場合、そのうちのいずれか一つの表面上の膜層パラメータが本願を満たすと、本願の保護範囲内にあると考えられる。且つ、本願に記載の膜層の厚さ、面密度、圧縮密度などの範囲は、いずれも冷間圧密により圧密された後に電池を組み立てるための膜層パラメータを指す。
【0076】
また、本願の二次電池において、負極シートは、負極膜層以外の他の付加的な機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施形態において、本願の前記負極シートは、集電体と第1の膜層との間に挟まれ、集電体の表面に設置された導電性アンダーコート層(例えば導電剤及び接着剤で構成される)をさらに含む。他のいくつかの実施形態において、本願の前記負極シートは、第2の膜層の表面に被覆された被覆保護層をさらに含む。
[正極シート]
【0077】
本願の二次電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ正極活性材料を含む正極膜層と、を含む。
【0078】
理解できるように、正極集電体は、自身の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層設置されてもよい。
【0079】
本願の二次電池において、前記正極集電体は、一般的な金属箔又は複合集電体(金属材料を高分子基材に設置して複合集電体を形成してもよい)を使用することができる。例として、正極集電体はアルミニウム箔を使用することができる。
【0080】
本願の二次電池において、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれぞれの改質化合物のうちの一種又は複数種を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びそれらの改質化合物のうちの一種又は複数種を含むがこれらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、例えば、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むがこれらに限定されない。本願はこれらの材料に限定されず、さらに他の二次電池正極活性材料として使用可能な従来の周知の材料を使用することができる。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態において、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むことができ、
LiNiCo(式1)
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちの一種又は複数種から選択され、Aは、N、F、S及びClのうちの一種又は複数種から選択される。
【0082】
本願において、上記各材料の改質化合物は、材料にドーピング改質及び/又は表面被覆改質を行うことができる。
【0083】
本願の二次電池において、前記正極膜層は、接着剤及び/又は導電剤をさらに選択的に含む。
【0084】
例として、正極膜層に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0085】
例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種又は複数種を含むことができる。
[電解質]
【0086】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも一種から選択されることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、電解質は電解液を使用する。電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一種又は複数種から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態において、電解液は、添加剤をさらに選択的に含むことができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
[セパレータ]
【0091】
電解液を使用する二次電池、及び固体電解質を使用するいくつかの二次電池において、セパレータをさらに含む。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。本願はセパレータの種類を特に限定せず、任意の周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種又は複数種から選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを製造することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を密封するのに用いられる。
【0094】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質ケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、例えば袋式ソフトパックであるのようなソフトパックであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一種又は複数種であってもよい。
【0095】
本願は、前記二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図1には、一例として四角形構造の二次電池5が示されている。
【0096】
いくつかの実施形態において、図4に示すように、外装は、ケース51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室に連通された開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーすることで、前記収容室を密封する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入される。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は、一つ又は複数であってよく、実際の需要に応じて調節することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの適用及び容量によって調節することができる。
【0098】
図5は、一例としての電池モジュール4である。図5に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列して設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することもできる。さらに、この複数の二次電池5を締結具で固定してもよい。
【0099】
好ましくは、電池モジュール4は、さらに、収容空間を有するハウジングを含むことができ、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに電池パックとして組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの適応及び容量に応じて調整することができる。
【0101】
図6及び図7は、一例としての電池パック1である。図6及び図7を参照すると、電池パック1は、電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス本体2及び下部ボックス本体3を含み、上部ボックス本体2は下部ボックス本体3をカバーすることができ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケース内に配置されてもよい。
二次電池の製造方法
【0102】
本願の第2の態様において、二次電池の製造方法を提供し、当該製造方法は、
1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極膜層を形成する工程と、
2)前記第1の負極膜層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極膜層を形成する工程と
によって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、
前記第1の負極活性材料は黒鉛を含み、且つ前記第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.4~0.6であり、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ前記第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は0.25~0.45である。
【0103】
本願の二次電池の製造方法において、第1の負極膜層及び第2の負極膜層は、一回で同時に塗布されてもよく、二回に分けて塗布されてもよい。
【0104】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極膜層と第2の負極膜層を一回で同時に塗布する。一回で同時に塗布することにより第1の負極膜層と第2の負極膜層との間の接着性をよりよくすることができ、電池のサイクル性能をさらに改善することに役立つ。
【0105】
本願の負極シートの製造方法以外にも、本願の二次電池の他の構造及び製造方法自体は周知である。例えば、本願の正極シートは、以下の製造方法に応じて製造することができる。正極活性材料と選択可能な導電剤(例えばカーボンブラックなどの炭素材料)、接着剤(例えばPVDF)などとを混合した後に溶媒(例えばNMP)で分散させ、均一に撹拌した後に正極集電体に塗布し、乾燥させた後に正極シートが得られる。正極集電体として、アルミニウム箔などの金属箔又は多孔質金属板などの材料を用いることができる。正極シートを製造する時に、正極集電体の未塗布領域で、打ち抜き又はレーザダイカットなどの方式で正極タブを得ることができる。
最後に、正極シート、セパレータ、負極シートを順次積層して、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して隔離の役割を果たし、次に巻回(又は積層)プロセスにより電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得る。本願の二次電池において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセスにより巻回構造の電極アセンブリに製造されてもよく、積層プロセスにより積層構造の電極アセンブリに製造されてもよい。
装置
【0106】
本願の第3の態様は、装置を提供する。この装置は、本願の第1の態様に係る二次電池又は本願の第2の態様に係る方法により製造された二次電池を含む。前記二次電池は、装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。本願の装置は、本願に係る二次電池を使用するため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【0107】
前記装置は、携帯機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0108】
前記装置は、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0109】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該装置は、二次電池に対する高倍率及び高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0110】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、一般的に薄型化を要求するため、二次電池を電源として使用することができる。
【0111】
以下、実施例を参照しながら本願の有益な効果をさらに説明する。
実施例
【0112】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例と組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、理解すべきこととして、本願の実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではなく、且つ本願の実施例は明細書に示された実施例に限定されるものではない。実施例において具体的な実験条件又は操作条件が記載されていない場合、一般的な条件に応じて製造されるか、又は材料供給業者が推薦する条件に応じて製造される。
一.二次電池の製造
実施例1
1)正極シートの製造
【0113】
リチウムニッケルコバルトマンガン三元活物質 LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)と導電剤 カーボンブラック(Super-P)と接着剤 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを重量比94:3:3に応じてN-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で十分に撹拌して均一に混合した後、スラリーをアルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストリップ分割、切断どの工程を経て、正極シートを取得し、また、正極集電体の未塗布領域に正極タブを打ち抜く。正極膜層の面密度は17.3mg/cmであり、圧密度は3.5g/cmである。
2)負極シートの製造
【0114】
第1のステップにおいて、負極スラリー1を製造する。第1の負極活性材料(詳細は、表1を参照)と接着剤 SBRと増粘剤 カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と導電剤 カーボンブラック(Super-P)とを96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに添加して混合し、負極スラリー1を製造し、ここで、第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.43である。
【0115】
第2のステップにおいて、負極スラリー2を製造する。第2の負極活性材料(詳細は、表1を参照)と接着剤 SBRと増粘剤 カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と導電剤 カーボンブラック(Super-P)とを96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに添加して混合し、負極スラリー2を製造する。第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、0.35であり、第2の負極活性材料における二次粒子の個数の割合は、95%である。
【0116】
第3のステップにおいて、ダブルキャビティ塗布装置により、負極スラリー1と負極スラリー2とを同時に押し出す。負極スラリー1を銅箔集電体に塗布して第1の負極膜層を形成し、負極スラリー2を第1の負極膜層に塗布して、第2の負極膜層を形成する。負極膜層の面密度は、11.0mg/cmである。
【0117】
第4のステップにおいて、塗布された湿潤フィルムをオーブンで異なる温度範囲で焼成して乾燥シートを取得し、さらに冷間プレスして必要な負極膜層を得るが、ここで、負極膜層の圧密度は、1.65g/cmである。さらに、ストリップ分割、切断などの工程を経て、負極シートを取得し、また、負極集電体の未塗布領域で負極タブを打ち抜く。
3)セパレータ
【0118】
セパレータとして、PE(ポリエチレン)フィルムを選択する。
4)電解液の調製
【0119】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合し、次に十分に乾燥したリチウム塩 LiPFを1mol/Lの比率で混合有機溶媒に溶解して、電解液を調製する。
5)電池の製造
【0120】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次積層し、且つセパレータと負極シートとの間に参照電極(参照電極は電池サンプルの性能検出に用いられ、リチウムシート、リチウムワイヤなどを選択することができ、且つ参照電極はセパレータにより分離され、正負極の任意の一側との接触を防止すべきである)を追加し、巻回した後に電極アセンブリを得て、電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を注入して、封止、静置、化成、老化などの工程を経た後、二次電池を得る。
【0121】
実施例2~19及び比較例1~6の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と類似しているが、負極シートの構成及び製品パラメータを調整しており、異なる製品パラメータの詳細は表1及び表2を参照することができる。
二.性能パラメータの測定方法
1.急速充電性能測定
【0122】
25℃で、上記各実施例及び比較例で製造された二次電池を1C(即ち、1h内に理論容量を完全に放出する電流値)の電流で一回目の充電及び放電を行い、具体的には、電池を1C倍率で充電カットオフ電圧V1まで定電流充電し、その後に、電流が≦0.05Cになるまで定電圧充電し、5min静置し、さらに、0.33C倍率で放電カットオフ電圧V2まで定電流放電し、その実際の容量をCとして記録することを含む。
【0123】
次に、電池を0.5C、1C、1.5C、2C、2.5C、3C、3.5C、4C、4.5Cで全電池充電カットオフ電圧V1又は0V負極カットオフ電位(先に達したものを基準とする)まで順次定電流充電し、毎回充電が完了した後に、1Cで全電池放電カットオフ電圧V2まで放電する必要があり、異なる充電倍率で10%、20%、30%、……、80%SOC(State ofCharge、荷電状態)まで充電する場合に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での充電倍率-負極電位グラフを描き、線形フィッティングした後に異なるSOC状態での負極電位が0Vである場合に対応する充電倍率を得て、当該充電倍率を当該SOC状態での充電ウィンドウとし、それぞれ、C10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記録し、公式(60/C10%SOC+60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づいて、当該電池が10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間Tを算出し、単位はminである。当該時間が短いほど、電池の急速充電性能が優れている。
(2)サイクル特性の測定
【0124】
25℃で、上記各実施例及び比較例で製造された二次電池を1C(即ち、1h内に理論容量を完全に放出する電流値)の電流で一回目の充電及び放電を行い、充電は定電流定電圧充電であり、終了電圧は4.2Vであり、カットオフ電流は0.05Cであり、放電終了電圧は2.8Vであり、電池の初回サイクル時の放電容量Cbを記録する。次に、1C/1Cサイクル測定を行い、電池の放電容量Ceを随時記録し、CeとCbの比がサイクル容量保持率であり、サイクル容量保持率が80%に等しい時に測定を停止し、サイクル数を記録する。
三.各実施例、比較例の測定結果
【0125】
上記方法に応じて各実施例及び比較例の電池をそれぞれ製造し、各性能パラメータを測定し、結果は以下の表1及び表2に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
まず、実施例1~13及び比較例1~6のデータから分かるように、第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.4より小さいか又は0.6より大きいか、或いは第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.25より小さいか又は0.45より大きい場合、電池は、いずれも、急速充電性能及びサイクル性能を同時に両立することができず、特に、サイクル性能が非常に低い。第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.4~0.6であり且つ第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.25~0.45である場合、電池の急速充電性能及びサイクル性能はいずれも良好である。電池の急速充電性能及びサイクル性のバランスを考慮すると、第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、好ましくは、0.45~0.6であり、より好ましくは、0.5~0.57である。第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)は、好ましくは、0.3~0.4であり、より好ましくは、0.32~0.38である。
【0129】
また、実施例1~13及び比較例1~6のデータは、さらに、前記第1の負極活性材料の粒度の均等性と前記第2の負極活性材料の粒度の均等性との比には好ましい範囲が存在し、当該比が1.05~1.9であり、より好ましくは、1.2~1.6である場合、電池の総合性能がより良好であることを反映している。
【0130】
また、実施例14~19の比較から分かるように、第1の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.4~0.6であると同時に、第2の負極活性材料の粒度の均等性(uniformity)が0.25~0.45である前提で、第2の負極活性材料における二次粒子の個数の割合も電池性能に一定の影響を与える。特に、第2の負極活性材料における二次粒子の個数の割合Bは、≧30%である場合、電池の急速充電性能及びサイクル性能が大幅に改善される。
【0131】
さらに補足説明すべきことは、上記明細書の開示及び指導に基づいて、本願が属する分野の当業者はさらに上記実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は、以上に開示され説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願に対するいくつかの修正及び変更も本願の請求項の保護範囲内に含まれる。また、本明細書においていくつかの特定の用語を使用するが、これらの用語は説明を容易にするためのものであり、本願を何ら限定するものではない。
【符号の説明】
【0132】
1 電池パック、2 上部ボックス本体、3 下部ボックス本体、4 電池モジュール、5 二次電池、51 ケース、52 電極アセンブリ、53 カバープレート、10 負極シート、101 負極集電体、102 第2の負極膜層、103 第1の負極膜層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8