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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】宇宙航行体
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/66 20060101AFI20221118BHJP
   B64G 1/22 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B64G1/66 C
B64G1/22 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021554436
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2019043256
(87)【国際公開番号】W WO2021090361
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506097081
【氏名又は名称】株式会社QPS研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】八坂 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】久能 和夫
(72)【発明者】
【氏名】上津原 正彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-082900(JP,A)
【文献】特公昭49-034356(JP,B1)
【文献】特開平02-176489(JP,A)
【文献】特開平07-050521(JP,A)
【文献】特開平09-270621(JP,A)
【文献】実開昭60-149500(JP,U)
【文献】国際公開第2016/079945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/66
B64G 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子機器を収容するための収容空間を有する本体と、
所定の周波数帯域の周波数を含む電波を出力するように構成された発振器と、
宇宙空間に暴露されるように前記本体の外装に配置され、前記発振器によって出力された前記電波の電力を増幅するように構成された増幅器と、
前記本体の外装に配置され、前記増幅器によって増幅された電力で前記電波を外部に放射するためのアンテナと、
を含み、
前記増幅器及び前記アンテナが、前記本体の同一面側において該アンテナの中心軸に沿って並ぶように固定される、宇宙航行体。
【請求項2】
前記所定の周波数帯域はマイクロ波帯域である、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項3】
前記所定の周波数帯域は8GHz~12GHz帯域である、請求項1又は請求項2に記載の宇宙航行体。
【請求項4】
前記増幅器は500W~5,000Wの電力になるように前記電波の電力を増幅する、請求項1から請求項3のいずれか記載の宇宙航行体。
【請求項5】
前記アンテナは、前記アンテナから放射され観測対象物に反射された電波を受信するように構成された、請求項1から請求項4のいずれか記載の宇宙航行体。
【請求項6】
前記増幅器は複数の増幅器を組み合わせて構成され、
前記宇宙航行体は、前記複数の増幅器から出力された電波を合成する合成器さらに含む請求項1から請求項5のいずれか記載の宇宙航行体。
【請求項7】
前記本体は多面体状に形成され、
前記アンテナは、前記本体を形成する少なくとも一面に配置され、
前記増幅器は、前記アンテナが配置される前記一面に配置される、請求項1から請求項6のいずれか記載の宇宙航行体。
【請求項8】
前記アンテナは、前記増幅器によって増幅された電力で前記電波を放射するための輻射器と、前記外部に前記電波を放射する主リフレクタと、前記輻射器から放射された前記電波を前記主リフレクタに向けて反射させる副リフレクタと、を含み、
前記増幅器は、前記輻射器と前記副リフレクタとを結ぶ線上に配置される、
請求項1から請求項7のいずれか記載の宇宙航行体。
【請求項9】
前記本体において前記副リフレクタ側の面に配置され、断面が円形状、楕円形状又は多角形状に形成され、前記主リフレクタを構成するリブを接続するように構成されたハブと、を含み、
前記増幅器は、前記ハブの略中心に位置するように配置される、
請求項8に記載の宇宙航行体。
【請求項10】
前記増幅器は少なくとも一部が銀蒸着テフロン、アルミ蒸着テフロン、インジウム酸化物、インジウム鈴酸化物、白色塗料、黒色塗料コート又はそれらの組み合わせで被覆される、請求項1から請求項9のいずれか記載の宇宙航行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定の周波数帯域の周波数を含む電波を外部に放射することができる宇宙航行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工衛星等の宇宙航行体において、電波が外部に放射され、地上局との通信やデータ観測の用途に用いられてきた。特許文献1は、生成されたマイクロ波信号が入力するアンテナホーンと、地上へ放射するアンテナとを備える衛星搭載用マイクロ波送信装置を含む衛星が記載されている。このような衛星においては、高出力電力を実現するために、アンテナホーンに入力する前に生成されたマイクロは信号を増幅するための高出力電力増幅器が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-207981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、様々な実施形態により、より効果的な増幅器の配置をした宇宙航行体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「内部に電子機器を収容するための収容空間を有する本体と、所定の周波数帯域の周波数を含む電波を出力するように構成された発振器と、宇宙空間に暴露されるように前記本体の外装に配置され、前記発振器によって出力された前記電波の電力を増幅するように構成された増幅器と、前記本体の外装に配置され、前記増幅器によって増幅された電力で前記電波を外部に放射するためのアンテナと、を含む宇宙航行体。」が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の様々な実施形態によれば、より効果的な増幅器の配置をした宇宙航行体を提供することができる。
【0007】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、または上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本開示の第1実施形態に係る送信器110の構成を示すブロック図である。
図4図4は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す側面図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す上面図である。
図6図6は、本開示の第1実施形態に係る増幅器112の構成の概要を示す側面図である。
図7図7は、本開示の第1実施形態に係る増幅器112の構成の概要を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0010】
<第1実施形態>
1.宇宙航行体1の構成
図1は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す図である。図1によると、宇宙航行体1は、宇宙空間において宇宙航行体1そのものの航行の制御や宇宙航行体1の動作や姿勢の制御を行う制御ユニットなどの機器が搭載された本体300と、宇宙空間において制御ユニットや通信ユニット100を含む様々な構成要素を駆動するための電力を供給する電源ユニット200と、宇宙航行体1と地上や他の宇宙航行体などが存在する外部の宇宙空間に向けて電波を放射するとともに、宇宙空間から電波を受信するための通信ユニット100とを含む。
【0011】
本実施形態においては、宇宙航行体1は、一例としてはSAR(合成開口レーダー)を搭載するための小型SAR衛星として利用することができる。このような小型SAR衛星は、マイクロ波、ミリ波、又はサブミリ波帯域の電波を観測対象物に放射し、その観測対象物からの反射波を受信することで、観測対象物の観測・分析等を行うために用いることが可能である。ここで、観測対象物からの反射波を受信するSARレーダーでは、高出力の電力が要求されるため電力の増幅器を搭載する必要がある。この増幅器は、高出力の電力を生成するがために非常に重大な熱源となりうる。したがって、特に、小型SAR衛星として宇宙航行体1を利用する場合には、増幅器からの熱をいかに効率よく放熱するかが非常に重要である。他方、小型SAR衛星においては、増幅器を含む電子部品を限られた収納スペースに配置する必要があるため、放熱効果を考慮したうえで効率よく電子部品を配置することがさらに重要である。
【0012】
なお、以下においては、図1に示す宇宙航行体1を小型SAR衛星として利用する場合について説明する。しかし、本実施形態は、小型SAR衛星として利用する場合に限らず、他の用途、他の形態(大型衛星)などにも適用可能である。
【0013】
本体300は、内部に様々な電子機器や機構部品を収納するための収容空間(図示しない)を備える。本体300は、一例としては、上面視で六角形形状を有する八面体によって形成され、収容空間をその内部に構成するために、中空状に形成される。ただし、その形状は、その内部に収容空間を形成可能でさえあればよく、他の多面体及び球体などのいずれの形状であってもよい。なお、以下においては、上面視で六角形形状を有する八面体状に本体300が形成される場合について説明する。
【0014】
本体300の内部に形成された収容空間には、コンピュータ301、センサ330、アクチュエータ340、電源制御回路201、バッテリ220、通信制御回路170等の様々な電子部品やそれらを電気的に連結するための配線類が収容される。
【0015】
電源ユニット200としては、本実施形態においては、ソーラーパネル230を含む。当該ソーラーパネル230は、一例としては本体300の外面を被覆するように、本体300の壁面に配置される。このように配置することで、本体300の壁面を有効活用することが可能となる。
【0016】
通信ユニット100は、送信器110に加えて、輻射器120と、輻射器120に対して所定の角度をもって対向するように配置され、輻射器120から放射される電波を主リフレクタ132に反射するための副リフレクタ(副反射鏡)131と、副リフレクタ131の鏡面に対向するように配置され、副リフレクタ131により反射された電波をさらに反射して外部へ電波を放射する主反射鏡である主リフレクタ132と、副リフレクタ131を支持するための支持ロッド135と、を含む。
【0017】
主リフレクタ132は、ハブ139、複数のリブ136、面状体137等を含む。主リフレクタ132は、上記のとおり主反射鏡として機能するために、その反射面がパラボラ(放物)形状に形成されている。
【0018】
ハブ139は、主リフレクタ132の中心部のアンテナ軸X(ハブ139の中心軸Xともいう)上であって、本体300の副リフレクタ131が配置される側に設けられる。ハブ139は、一例としては、プラスチック等の誘電体や、チタン、ステンレス等の金属により略円柱状に形成される。ハブ139は、中心軸Xを中心とし、その外周面上に、複数のリブ136が所定の間隔で放射状に配設される。すなわち、ハブ139の断面形状(上記中心軸Xに沿う方向から見た場合の断面形状)は円形状をしているが、当該形状は楕円形状または多角形状のいずれに形成されてもよい。
【0019】
リブ136は、複数のリブを含む。各リブ136は、ハブ139を中心として所定の間隔で、ハブ139の外周に放射状に配設される。各リブ136の反射鏡面となる側の上面はパラボラ形状に形成される。そして、パラボラ形状に形成された上面上に面状体137が架設される。リブ136は、一例としては、ステンレスバネ鋼や、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料により形成されるバネ材であり、弾性を有する。
【0020】
なお、リブ136は、本実施形態においては、全部で24本のリブにより構成されている。しかし、リブ136は、展開アンテナの展開時の面積、用いるリブの材質・強度等に応じて、偶数や奇数に関係なくその本数を変更することが可能である。また、本実施形態においては、リブ136は所定の間隔で配設したが、当該間隔は、すべてのリブ136において一定の間隔としてもよいし、一部のみ間隔を密にしてもよいし、非規則的であってもよい。
【0021】
リブ136とともに主リフレクタ132を構成する面状体137は、互いに隣接する一対のリブ136間に架設される。面状体137は、電波を反射可能な材料により、全体としてパラボラ形状になるように形成される。面状体137は、一例としては、モリブデン、金、又はそれらの組み合わせにより形成される金属の網状体(金属メッシュ)により形成される。本実施形態においては、面状体137は略三角形状の金属メッシュをリブ136の数に応じて用意し、各金属メッシュを縫合し、リブ136のパラボラ形状に形成された上面に架設される。
【0022】
副リフレクタ131は、主リフレクタ132に対向して配置され、その下面側(主リフレクタ132に対応する側)が、支持ロッド135によって支持される。副リフレクタ131は、支持ロッド135によって、その中心軸Xの線上に配置される輻射器120から所定距離だけ離隔して配置される。副リフレクタ131は、主リフレクタ132の面状体137と同様に、電波を反射可能な材料により、全体として主リフレクタ132の面に向かって二次曲面形状を有する。そして、副リフレクタ131は、輻射器120から輻射された電波を主リフレクタ132に向けて反射する。したがって、副リフレクタ131は、輻射器120及び主リフレクタ132から、所定の距離だけ離隔して配置される。
【0023】
支持ロッド135は、輻射器120及び主リフレクタ132から副リフレクタ131を所定距離だけ離して配置するために配置される。支持ロッド135は、一端が副リフレクタ131に他端がジョイント138に接続された第1支持ロッド133と、一端がジョイント138に接続され他端が本体に接続された第2支持ロッド134とを含む。第1支持ロッド133及び第2支持ロッド134によって、第1支持ロッド133の一端に接続された副リフレクタ131を支持する。支持ロッド135は、副リフレクタ131を支持するために、1又は複数のロッドから構成される。図1の例においては、3対の支持ロッド135(1個は背面に被覆されており図示していない)が等間隔に配置されている。なお、図1の例では、第1支持ロッド133及び第2支持ロッド134が一対のペアとなるように説明した。しかし、これに限らず、第1支持ロッド133に対して第2支持ロッド134の本数を少なくしてもよいし、多くしてもよい。
【0024】
なお、本実施形態においては、宇宙航行体1として、主リフレクタ132がパラボラ形状に形成されたカセグレンアンテナを有する小型SAR衛星の場合について説明する。しかし、これに限らず、グレゴリアンアンテナなどの他のパラボラアンテナや、平面アンテナを有するものであってもよい。
【0025】
図2は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成を示すブロック図である。宇宙航行体1は、図2に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、宇宙航行体1は、複数の電源ユニット200及び/又は複数の通信ユニット100を搭載することも可能である。
【0026】
図2によると、宇宙航行体1は、メモリ310、プロセッサ320及びセンサ330を含む制御ユニットと、電源制御回路210、バッテリ220及びソーラーパネル230を含む電源ユニット200と、通信制御回路170、送信器110、受信器140、輻射器120、反射器130を含む通信ユニット100とを含む。これらの各構成要素は、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。
【0027】
メモリ310は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ310は、本実施形態に係る宇宙航行体1の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。メモリ310は、一例として、カメラ(図示しない)で撮像された宇宙航行体1の外部の画像、通信ユニット100をレーダーとして用いて得られた観測値、地上局から通信ユニット100を介して受信した情報又は地上局へ通信ユニット100を介して送信する情報、宇宙航行体1の姿勢・進行制御のために必要なセンサ330等の検出情報などが適宜記憶される。
【0028】
プロセッサ320は、メモリ310に記憶されたプログラムに基づいて宇宙航行体1の制御を行う制御部として機能する。具体的には、メモリ310に記憶されたプログラムに基づいて、電源ユニット200、通信ユニット100、センサ330等の制御を行う。一例としては、通信ユニット100を介して地上局や他の宇宙航行体に送信するための情報の生成、通信ユニット100をレーダーとして用いて観測対象に電波を放射しその反射波を受信することによって行う観測に係る制御などを行う。
【0029】
センサ330は、一例として、宇宙航行体1の進行や姿勢の制御に必要なジャイロセンサ、加速度センサ、位置センサ、速度センサ、恒星センサ等、宇宙航行体1の外部環境を観測するための温度センサ、照度センサ、赤外線センサ等、宇宙航行体1の内部環境を計測するための温度センサ、照度センサ等を含みうる。検出された情報・データは適宜メモリ310に記憶され、プロセッサ320による制御に用いられたり、通信ユニット100を介して地上の基地に送信される。
【0030】
アクチュエータ340は、一例として、磁気トルカ、リアクションホイール、CMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)等を含みうる。アクチュエータ340は、プロセッサ320からの指示命令を受けて、宇宙航行体1の姿勢制御するためのトルクや推力を得るために利用され、推進部として機能する。
【0031】
電源ユニット200は、電源制御回路210、バッテリ220、及びソーラーパネル230を含み、電源部として機能する。電源制御回路210は、バッテリ220に接続されバッテリ220からの電力の充放電を制御する。バッテリ220は、電源制御回路210からの制御を受けて、ソーラーパネル230で生成された電力を充電するとともに、本体300内のコンピュータ301、通信ユニット100等の各駆動系に対して供給する電力を蓄積する。
【0032】
通信ユニット100は、通信制御回路170、送信器110、受信器140、輻射器120及び反射器130を含み、通信部として機能する。通信制御回路170は、接続された輻射器120を介して、地上局や他の宇宙航行体に対して情報を送受信するために、情報・信号の符号化・復号化などの処理を行う。送信器110は、発振器や増幅器等を含み、発振器で生成された所定の周波数帯域の周波数を有する電波を増幅器で増幅する。増幅された電波は、輻射器120を介して反射器130の反射面に放射される。本実施形態においては、観測対象に電波を放射してその反射波を用いて観測するために通信ユニット100は用いられる。したがって、輻射器120から放射された電波は反射器130を構成する副リフレクタ131で一旦反射され、主リフレクタ132によって外部へ放射される。一方、外部から受信した反射波は、逆の経路を通じて受信器140で受信される。
【0033】
本実施形態においては、通信ユニット100として、一対の副リフレクタ131及び主リフレクタ132を有するもののみを記載する。当該通信ユニット100は、8GHz以下の周波数帯域、8GHz~12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)、12GHz~18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)などのマイクロ波帯域、30GHz以上のミリ波帯域、300GHz以上のサブミリ波帯域など周波数を含むように、所望に応じて調整することが可能である。
【0034】
図3は、本開示の第1実施形態に係る送信器110の構成を示すブロック図である。具体的には、図3は、図2で示された送信器110の内部の構成を機能的に示す図である。図3によると、送信器110は、発振器111と、増幅器112と、合成器113と、ローパスフィルタ114とを含む。
【0035】
発振器111は、一例としては、図1において本体300の内部に配置される。発振器111は、信号等を搬送するための電波となる高周波信号を出力する。本実施形態においては、発振器111は、8GHz以下の周波数帯域、8GHz~12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)、12GHz~18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)などのマイクロ波帯域、30GHz以上のミリ波帯域、300GHz以上のサブミリ波帯域の周波数の少なくともいずれか、好ましくは8GHz以下の周波数帯域、8GHz~12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)、12GHz~18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)などのマイクロ波帯域の周波数の少なくともいずれか、より好ましくは8GHz~12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)の周波数の少なくともいずれかを含む電波を出力する。
【0036】
増幅器112は、発振器111と電気的に接続され、発振器111から出力された電波の電力を増幅する。本実施形態においては、一例として、外部の観測対象に向けて電波を放射し、その観測対象に反射した反射波を受信することによって、観測対象のデータの観測を行う。したがって、非常に高い送信電力が必要とされる。本実施形態においては、増幅器112は、500W~5,000Wの電力、好ましくは700W~2,500W、さらに好ましくは1,000W~1,500Wの送信電力になるように増幅する。増幅器112は、その出力に応じて1又は複数の増幅器を組み合わせて構成することができる。その増幅器112の具体的な構成については後述する。なお、増幅器の出力はあくまで一例である。例えば、各範囲の上限及び下限は、現時点で必要とされる電力を規定しているにすぎず、その上限を超える出力であっても、下限を下回る出力であっても、当然に本実施形態に係る構成を適用することで、放熱効果等の所望の効果を得ることが可能である。
【0037】
合成器113は、複数の増幅器を組み合わせて増幅器112を構成した場合に、増幅器112に電気的に接続され、各増幅器から出力される電波を一つの搬送波に合成する。ローパスフィルタ114は、合成器113に電気的に接続され、合成器113から出力される電波から低周波成分のみを取り出して、これを除去するために用いられる。これは、例えば電波法などによってその使用が制限される周波数帯域の電波を除去するためである。ローパスフィルタ114を通過した電波は、図2に示す輻射器120に出力され、輻射器120を介して外部へ放射される。
【0038】
ここで、送信器110に含まれる増幅器112は、上記のとおり、高出力電力増幅器が用いられる。したがって、増幅器112は、動作することによって放熱し、周囲の電子機器に対して悪影響を及ぼす。さらに、増幅器112が高温になると、増幅器112を構成する素子そのものも故障等のリスクが高まる。そこで、本実施形態においては、増幅器112は、本体300の外装部分に配置して、宇宙空間に暴露させる。このようにすることで、プロセッサ320等の本体300の内部の収容空間に収容される他の電子機器から隔離でき、他の電子機器に対する悪影響を軽減することが可能となる。また、宇宙航行体1が衛星軌道上を周回しているような場合、宇宙空間に増幅器112を暴露することによって効率的に冷却することも可能となる。
【0039】
図4は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す側面図である。具体的には、図4は、増幅器112の配置位置を示すために、主リフレクタ132の一部の構成を省略した図である。また、図5は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す上面図である。具体的には、図5は、増幅器112の配置位置を示すために、副リフレクタ131の一部の構成を省略した図である。
【0040】
まず、図4によると、上面及び底面が六角形を有する八面体で構成された本体300の上面に、略円柱状に形成され、主リフレクタ132を構成するリブ136がその外周に等間隔で放射状に配置されたハブ139が配置される。ハブ139は、中心軸Xに沿う方向から見た断面は、一例としては略円形状になっている。増幅器112は、円形状に形成されたハブ139の略中心位置であって、ハブ139が配置された本体300と同じ面(つまり、上面)に配置される。したがって、増幅器112は、本体300の内部の収容空間に収容されるのではなく、宇宙空間に暴露される面上に配置されることとなる。
【0041】
また、本実施形態においては、輻射器120は、当然この形態に限定するものではないが、一例としてホーン型輻射器によって構成されている。また、副リフレクタ131は、第1支持ロッド133、第2支持ロッド134及びジョイント138から構成される支持ロッド135によって、当該ホーン型の輻射器120から所定の間隔、離隔して配置されている。本実施形態では、輻射器120と副リフレクタ131とを結ぶ線上(すなわち、中心軸Xの線上)であって、輻射器120に近接する位置に、増幅器112を配置する。なお、増幅器112及び輻射器120の配置位置はあくまで一例であって、当然に中心軸Xの線上に配置されていなくてもよい。
【0042】
一般に、増幅器112で増幅された電波は、電気的に接続された様々な電子部品を介して、輻射器120に到達されるまで、同軸ケーブル及び/又は導波管等を介して電気的に搬送される。この搬送過程において、各電子部品の通過、及び同軸ケーブルの通過の際に電力の損失を受け、その送信効率が低下する。したがって、本実施形態のように、輻射器120と副リフレクタ131とを結ぶ線上(すなわち、中心軸Xの線上)であって、輻射器120に近接する位置に、増幅器112を配置することによって、同軸ケーブル及び/又は導波管等による配線距離を最小にし、その電力損失を軽減することが可能となる。
【0043】
次に、図5によると、ハブ139は、上面視で略円形状に形成され、六角形に形成された本体300の上面に配置される。また、そのハブ139の中心は、中心軸Xを通るように配置される。ハブ139の外周面上には、主リフレクタ132を構成する複数のリブ136が等間隔に配置される。本実施形態においては、図5において図示していないものの、当該ハブ139の中心軸X上に副リフレクタ131の中心が位置するように、副リフレクタ131が配置される。したがって、副リフレクタ131に電波を放射する輻射器120も、ハブ139の中心軸上に配置される。
【0044】
また、本実施形態においては、増幅器112は、六角形に形成された本体300の上面であって、輻射器120との配線距離を短くする目的で、輻射器120の直下に配置される。したがって、増幅器112は、ハブ139の略中心に位置するように配置される。
【0045】
2.増幅器の構成
図5は、本開示の第1実施形態に係る宇宙航行体1の構成の概要を示す上面図である。また、図6は、本開示の第1実施形態に係る増幅器112の構成の概要を示す側面図である。図5及び図6によると、増幅器112は、4個の増幅器112-1a~112-1dによって構成されている。図5及び図6の例においては、4個の増幅器112-1a~112-1dは、互いに直方体の側面を形成するように配置されている。そして、これら増幅器112-1a~112-1dは、それらを連結するように配置されるフレーム112-2によって支持される。すなわち、図5及び図6において図示しないが、増幅器112-1a~112-1dは、本体300の上面に当該フレーム112-2を介して固定される。なお、図5及び図6の例では、4個の増幅器を直方体の側面を形成するように配置したが、使用する増幅器の数は1個であってもよいし、4個以外の複数であってもよい。所望の電力に応じて適宜調整することが可能である。
【0046】
図5及び図6の例において、増幅器112の少なくとも一部、具体的には宇宙空間に暴露される側の外面112-3a~112-3dは、より放熱効果を高めるために、銀蒸着テフロン、アルミ蒸着テフロン、インジウム酸化物、インジウム鈴酸化物、白色塗料、黒色塗料又はそれらの組み合わせ、好ましくは銀蒸着テフロン又はアルミ蒸着テフロンによって被覆される。なお、この被覆は、シート状に形成したコート材を張り付けたり、液状に形成されたコート剤を吹き付けたり、所望に応じていずれの方法で形成することができる。また、図5及び図6の例では宇宙空間に暴露される側の面のみ被覆したが、これに限らず、上面や内面を被覆するようにしてもよい。
【0047】
4個の増幅器112-1a~112-1dは、一端が各増幅器112-1a~112-1dに接続され、他端が合成器113に接続された同軸ケーブル及び/又は導波管(図示しない)によって、合成器113に接続される。そして、各増幅器112-1a~112-1dで電力増幅された電波は、合成器113によって合成される。ここで、図5及び図6の例では、直方体の側面を形成するように配置される各増幅器112-1a~112-1dの中心となる中心軸X上に、ホーン型の輻射器120が配置される。合成器113及び輻射器120は、各増幅器112-1a~112-1dとともに、フレーム112-2によって本体300の上面側に配置される。
【0048】
また、本実施形態においては、輻射器120に隣接して、他の通信ユニット180もフレーム112-2に固定される。当該通信ユニット180は、ホーン型の輻射器を有し、一例としては、例えば宇宙航行体1から地上局へデータの送信に用いられる12GHz~18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)の周波数帯域(いわゆるKuバンド帯域)の通信に利用される。この場合、観測用で観測対象からの反射波を受信する必要がある通信ユニット100とは異なり、地上局にまで電波が届けばよいため、通信ユニット100ほど高出力の増幅器は必要とされない。したがって、通信ユニット180は、例えば低出力の増幅器のみを含む。
【0049】
以上、本実施形態においては、増幅器112を本体300の宇宙空間に暴露される面に配置した。これによって、増幅器112によって発生する熱の放熱効果を高めるだけでなく、熱源となる増幅器112を他の電子機器から隔離することができるため、その悪影響を軽減することが可能となる。また、増幅器112からの放熱効果を高めることによって、増幅器112を構成する素子そのものも故障等のリスクも軽減することができる。さらに、特に小型SAR衛星においては、本体300の限られた収容空間を有効活用することが可能となる。
【0050】
<他の実施形態>
第1実施形態では、増幅器112を本体300のアンテナ配置面側に配置するようにした。しかし、これに限らず、本体300の他の面に配置することも可能である。例えば、本体300の下面であって、宇宙空間に暴露される面上に配置することによって、第1実施形態と同様に増幅器112の放熱効果を高めることが可能となる。
【0051】
第1実施形態においては、主リフレクタ132に加えて副リフレクタ131を有するいわゆるカセグレン形式のアンテナを有する通信ユニット100について説明した。しかし、当該通信ユニット100に限らず、グレゴリアン形式の通信ユニットであってもよいし、リフレクタ121の前面から電波を放射するパラボラ形状を有する通信ユニットであってもよいし、平面アンテナを有する通信ユニットであってもよい。
【0052】
各実施形態で説明した各要素を適宜組み合わせるか、それらを置き換えて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 宇宙航行体
100 通信ユニット
200 電源ユニット
300 本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7