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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】トンネル内消火栓設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20221118BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022002756
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2020203262の分割
【原出願日】2016-12-07
(65)【公開番号】P2022058567
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】森 智彦
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278894(JP,A)
【文献】特開平5-123411(JP,A)
【文献】特開2001-009053(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0114389(KR,A)
【文献】特表2006-518816(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0385180(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
前記ホース収納部の下方に設けられ可動構造によって前記ホース収納部を前記監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水を前記ホース収納部の前記ホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
前記放水制御機構は、上端が前記ホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいても前記ホース収納部の最下部よりも下側に位置するように固定された連結配管と、
一端が前記連結配管の前記上端側に連結され他端が前記ホース収納部の最下部から前記ホース収納部内の前記ホースに連結された可撓性の連結ホースと、
を介して、前記消火用水を前記ホースへ供給することを特徴とするトンネル内消火栓設備。
【請求項2】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
前記ホース収納部の下方に設けられ可動構造によって前記ホース収納部を前記監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水を前記ホース収納部の前記ホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
前記放水制御機構は、上端が前記ホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいても前記ホース収納部の最下部よりも下側に位置し、前記上端と反対側である下端とを結ぶ方向軸の前記監視員通路の路面に対する傾斜角度が前記ホース収納部の上昇及び下降に応じて変化可能に固定された連結配管と、
一端が前記連結配管の前記上端側に連結され他端が前記ホース収納部の最下部から前記ホース収納部内の前記ホースに連結された可撓性の連結ホースと、
を介して、前記消火用水を前記ホースへ供給することを特徴とするトンネル内消火栓設備。
【請求項3】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
前記ホース収納部の下方に設けられ可動構造によって前記ホース収納部を前記監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水を前記ホース収納部の前記ホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
前記放水制御機構は、上端が前記ホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいても前記ホース収納部の最下部よりも下側に位置し、前記上端と反対側である下端とを結ぶ方向軸の前記監視員通路の路面に対する傾斜角度が前記ホース収納部の上昇及び下降に応じて変化可能に固定された複数の連結配管と、
一端が前記ホース収納部に最も近い前記連結配管の前記上端側に連結され他端が前記ホース収納部の最下部から前記ホース収納部内の前記ホースに連結された可撓性の連結ホースと、
前記複数の連結配管が前記ホース収納部からの距離に応じた順番で連結されるように、一端が対応する一方の連結配管の下端側に連結され他端が対応する他方の連結配管の上端側に連結された1又は複数の可撓性の連結ホースと、
を介して、前記消火用水を前記ホースへ供給することを特徴とするトンネル内消火栓設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース収納部を上昇させてホース取出しを可能とするトンネル内消火栓設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類が収納され、また、開閉自在な消火器扉を備えた消火器収納部に例えば2本の消火器が収納されている。
【0003】
このような消火栓装置は、トンネル内に設けた監視員通路に面した側壁に沿って例えば50メートル間隔で設置されている。監視員通路は路面に対し1メートル程度高くした側壁通路として設けられ、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火栓装置を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0004】
火災を伴う車両事故が発生した場合には、事故車両の運転者等の利用者は、消火栓装置の消火栓扉を開いてノズル付きのホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを操作することで消火ポンプ設備を起動して放水することにより消火作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-055024号公報
【文献】特開2009-285126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のトンネル内に設置した消火栓装置にあっては、監視員通路に面したトンネル側壁に沿って設置していたため、車両事故による火災の発生時に利用者は、路面から監視員通路を超えたトンネル側壁に設置している消火栓装置に手を伸ばして消火栓扉を開き、ホースを引き出して消火作業を行う必要があり、消火栓装置が路面から離れた高い位置に設置されているため、人によっては手が届かずに監視員通路に上がって操作しなければならない場合もあり、また、監視員通路によっては手摺りを設けており、手摺りが消火作業の邪魔になり、扱いづらい場合があった。
【0007】
この問題を解決するため、本願出願人は、道路側及び監視員通路側から簡単且つ容易に取り扱うことができる昇降型の消火栓設備を提案している。昇降型の消火栓設備は、ノズル付きのホースが収納されたホース収納部が監視員通路内に昇降機構により昇降自在に配置されており、トンネル内で火災を伴う車両事故の発生時には、所定の操作を行うと、昇降機構の作動によりホース収納部が監視員通路上の露出位置に上昇して保持され、消火栓扉の開放操作を必要とすることなく、監視員通路上に露出したホース収納部から簡単且つ容易にノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。
【0008】
ところで、このような昇降型の消火栓設備にあっては、監視員通路内に設けられたホース収納部は昇降機構により移動することから、固定側となる給水配管との接続について、ホース収納部が移動しても消火用水を供給可能とする構造が必要であり、固定側の給水配管と移動側のホース収納部との間を可撓性のホースにより連結している。
【0009】
しかしながら、固定側の給水配管と移動側のホース収納部との間を連結する可撓性のホースは、ホース収納部の移動が可能となる十分なホース長が必要であり、連結ホースが長くなることでホース収納部を監視員通路内に収納させた定常状態で連結ホースが大きく撓み、このためホースの撓みを妨げることのないスペースを確保する必要があり、設備が大型化する問題がある。
【0010】
本発明は、昇降機構による移動されるホース収納部と固定側配管を最短距離で接続して設置スペースの低減と小型化を可能とするトンネル内消火栓設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(トンネル内消火栓設備1)
本発明は、
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
ホース収納部の下方に設けられ可動構造によってホース収納部を監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水をホース収納部のホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
放水制御機構は、上端がホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいてもホース収納部の最下部よりも下側に位置するように固定された連結配管と、
一端が連結配管の上端側に連結され他端がホース収納部の最下部からホース収納部内のホースに連結された可撓性の連結ホースと、
を介して、消火用水をホースへ供給することを特徴とする。
【0012】
(トンネル内消火栓設備2)
本発明の別の形態にあっては、
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
ホース収納部の下方に設けられ可動構造によってホース収納部を監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水をホース収納部のホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
放水制御機構は、上端がホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいてもホース収納部の最下部よりも下側に位置し、上端と反対側である下端とを結ぶ方向軸の監視員通路の路面に対する傾斜角度がホース収納部の上昇及び下降に応じて変化可能に固定された連結配管と、
一端が連結配管の上端側に連結され他端がホース収納部の最下部からホース収納部内のホースに連結された可撓性の連結ホースと、
を介して、消火用水をホースへ供給することを特徴とする。
【0013】
(トンネル内消火栓設備3)
本発明の別の形態にあっては、
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、
ホース収納部の下方に設けられ可動構造によってホース収納部を監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、
消火用水をホース収納部のホースに供給する放水制御機構と、
を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、
放水制御機構は、上端がホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいてもホース収納部の最下部よりも下側に位置し、上端と反対側である下端とを結ぶ方向軸の監視員通路の路面に対する傾斜角度がホース収納部の上昇及び下降に応じて変化可能に固定された複数の連結配管と、
一端がホース収納部に最も近い連結配管の上端側に連結され他端がホース収納部の最下部からホース収納部内のホースに連結された可撓性の連結ホースと、
複数の連結配管がホース収納部からの距離に応じた順番で連結されるように、一端が対応する一方の連結配管の下端側に連結され他端が対応する他方の連結配管の上端側に連結された1又は複数の可撓性の連結ホースと、
を介して、消火用水をホースへ供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(トンネル内消火栓設備1の効果)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面下に設置され、利用者が引き出して使用するホースが収納されたホース収納部と、ホース収納部の下方に設けられ可動構造によってホース収納部を監視員通路の路面上の所定の露出位置に上昇させる昇降機構と、消火用水をホース収納部のホースに供給する放水制御機構と、を備えたトンネル内消火栓設備に於いて、放水制御機構は、上端がホース収納部の上昇時及び非上昇時の何れにおいてもホース収納部の最下部よりも下側に位置するように固定された連結配管と、一端が連結配管の上端側に連結され他端がホース収納部の最下部からホース収納部内のホースに連結された可撓性の連結ホースと、を介して、消火用水をホースへ供給するため、従来の監視員通路内に立ち上げられた給水配管とホース収納部を連結ホースにより接続する場合に比べ、連結ホースの長さを短くすることができ、連結ホースが短くなることで、監視員通路内にホース収納部を収納した状態での連結ホースの撓みが少なくなり、監視員通路内に必要な連結ホースの配置スペースを低減して消火栓設備の小型化を可能とする。
【0015】
また、トンネル内消火栓設備2及びトンネル内消火栓設備3についても、同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シールドトンネル内に設置した消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
図2】ホースを収納する消火栓収納箱を正面、平面及び側面から示した説明図
図3】ピストンシリンダ昇降機構に連結配管が固定された実施形態を道路側から見た断面で示した説明図
図4図3のホース収納部を昇降機構により上昇して監視員通路上に露出させた状態を路面側から見た断面で示した説明図
図5】パンタグラフ昇降機構に連結配管が固定された実施形態を道路側から見た断面で示した説明図
図6図5のホース収納部を昇降機構により上昇して監視員通路上に露出させた状態を路面側から見た断面で示した説明図
図7】パンタグラフ昇降機構に連結配管が固定された他の実施形態を道路側から見た断面で示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0018】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。
【0019】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0020】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16の消火栓装置はホースが収納された消火栓収納箱25と制御機構収納部45に分離して設置されている。
【0021】
消火栓収納箱25は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。制御機構収納部45は、消火栓収納箱25の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐管が引き込まれ、また、消火栓収納箱25に消火用水を供給する給水配管が立ち上げられている。
【0022】
消火栓設備16の消火栓収納箱25にはノズル付きホースが収納されたホース収納部とその昇降機構が設けられており、所定の上昇操作を行うと、昇降機構により監視員通路14上の露出位置にホース収納部が上昇されて露出状態となり、ノズル付きホースの引き出しによる消火作業を可能とする。
【0023】
[消火栓設備]
図2はホースを収納する消火栓収納箱を正面、平面及び側面から示した説明図ある。図2に示すように、消火栓設備16の消火栓収納箱25は、監視員通路14の床面下の内部空間に埋込み設置されている。消火栓収納箱25の中には、昇降機構の水圧シリンダにより昇降されるホース収納部が配置されている。
【0024】
消火栓収納箱25は、筐体の前面に開口部27を形成しており、開口部27には点検扉26と通報装置パネル28が設けられ、点検時にビスを外して取り外すことができる。
【0025】
通報装置パネル28には、赤色表示灯30、発信機32及び応答ランプ34が設けられている。赤色表示灯30は常時点灯し、消火栓設備16の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機32を押して押し釦スイッチをオンすると、火災通報信号が監視室の防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、応答ランプ34が点灯されると共に赤色表示灯30が点滅される。
【0026】
また、通報装置パネル28には、監視員通路14内に配置している消火栓設備16のホース収納部を昇降操作するための上昇スイッチ36aと下降スイッチ36bが設けられている。
【0027】
更に、消火栓設備16を設置している監視員通路14の部分には手摺り40を設けておらず、監視員通路14の路面上に内部から上昇して露出するホース収納部に対する操作の邪魔にならないようしている。
【0028】
[ピストンシリンダ昇降機構を用いた消火栓設備]
図3はピストンシリンダ昇降機構に連結配管が固定された実施形態を道路側から見た断面で示した説明図、図4図3のホース収納部を昇降機構により上昇して監視員通路上に露出させた状態を路面側から見た断面で示した説明図である。
【0029】
図3に示すように、監視員通路に設置された消火栓収納箱25の路面側の位置には、矩形の消火栓昇降口42が開口されている。消火栓昇降口42に対してはその下側にホース収納部44が昇降自在に配置される。ホース収納部44は、前面及び背面に開口した箱型の筐体48を備え、筐体48の前面及び背面の開口に4本のフレームパイプ52を配置して間にホース取出口55が形成されている。
【0030】
ホース収納部44の内部には、先端にノズル56を装着したホース54が内巻きした状態で収納され、内巻したホース54の中央部分にホース先端に装着したノズル56が配置され、筐体48の前面及び背面の何れからもノズル56の取出しができるようにしている。
【0031】
また、ホース収納部44内には、管理用通路20内に配置している制御機構収納部45に設けられた放水制御機構を操作して電動弁を開放させる放水スイッチ38aと電動弁を閉鎖させる放水停止スイッチ38bが設けられている。
【0032】
ホース収納部44の昇降機構としては、ピストンシリンダ昇降機構46aが設けられる。ピストンシリンダ昇降機構46aは、ホース収納部44の矩形底部の中央に水圧シリンダ60が起立して配置され、水圧シリンダ60はシリンダ内に摺動自在に設けたピストン61に連結されたピストンロッド63が上方に取出され、ピストンロッド63の先端がホース収納部44の底部に固定されている。
【0033】
消火栓収納箱25の下側となる管理用通路20には制御機構収納部45が配置され、制御機構収納部45には、ホース収納部44のホース54に消火用水を供給して放水させるバルブ類を備えた放水制御機構と、ピストンシリンダ昇降機構46aを昇降駆動させるバルブ類を備えた昇降制御機構が設けられている。
【0034】
制御機構収納部45に対しては水圧源として機能する給水本管24から分岐した分岐配管24aが連結され、消火ポンプ設備から給水本管24に供給されている消火用水を導入している。
【0035】
制御機構収納部45に内蔵した放水制御機構から消火栓収納箱25の内部に立ち上げられた給水配管58は、配管80を介して水圧シリンダ60の外側の上下方向に固定部材82により固定された連結配管64に接続される。
【0036】
水圧シリンダ60に固定された連結配管64の上端側には配管86を介して自在継手90が設けられ、ホース収納部44のホース接続口に設けられた自在継手92との間を、可撓性の連結ホース88により接続している。
【0037】
連結ホース88は、ピストンシリンダ昇降機構46aによりホース収納部44を露出位置に移動させるのに必要な所定のホース長としており、これにより固定側となる連結配管64に対しホース収納部44が昇降作動しても、連結ホース88が抜けることなくホース収納部44が動けるようにしている。
【0038】
また、消火栓収納箱25の中に立ち上げられた給水配管58に連結ホース88が直接接続されず、給水配管58が配管80を介してシリンダ60の外側に固定された連結配管64に接続され、連結配管64の上端側に連結ホース88が接続されることで、ホース収納部44を露出位置に移動させるに必要な所定のホース長を最短のホース長としている。
【0039】
また、昇降作動で生ずる連結ホース88の横方向の動きは自在継手90,92の動きで吸収され、連結ホース88の極端な曲げが抑制され、また、ホース収納部44の昇降作動を妨げないようにしている。
【0040】
ピストンシリンダ昇降機構46aの水圧シリンダ60に対しては、制御機構収納部45に内蔵した昇降制御機構から消火用水の供給と排水を行うための配管59が接続されている。
【0041】
ここで、ピストンシリンダ昇降機構46aに設けられる水圧シリンダ60の数は必要に応じて適宜の数とすることができ、例えば、ホース収納部44の底部のコーナー部に4本の水圧シリンダを配置しても良い。
【0042】
なお、ピストンシリンダ昇降機構46aは水圧駆動としているが、これに限定されず、油圧駆動としても良い。
【0043】
[ピストンシリンダ昇降機構消火栓設備の動作]
(通常監視時)
図1に示すトンネル10の道路を車両が通行している通常監視時にあっては、図3に示すように、消火栓収納箱25のホース収納部44は、制御機構収納部45に設けられた放水制御機構からの消火用水の供給が停止されていることで、ピストンシリンダ昇降機構46aの水圧シリンダ60はピストン61を最下点に位置させ、これによりピストンシリンダ昇降機構46aはホース収納部44を消火栓収納箱25の中に収納し、筐体48の上面の路面板50により消火栓昇降口42を閉鎖しており、監視員通路14内に消火栓設備16を設置していても、監視員通路14を通る人の通行を妨げたり、危険を及ぼすことはない。
【0044】
(火災発生時)
一方、トンネル10内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、利用者は火災発生場所に近い消火栓設備16に出向き、通報装置パネル28の発信機32を押して監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信し、防災受信盤から確認応答信号を受信して応答ランプ34が点灯されると共に赤色表示灯30が点滅され、監視センター側への通報完了を確認する。
【0045】
続いて、消火作業を行うため、通報装置パネル28に設けている上昇スイッチ36aを押してオンすると、制御機構収納部45からピストンシリンダ昇降機構46aの水圧シリンダ60に消火用水が送られ、シリンダ内に供給された消火用水によりピストン61が上昇し、ピストンロッド63を介して支持しているホース収納部44を押し上げる。
【0046】
このため消火栓収納箱25の消火栓昇降口42を閉鎖している路面板50が持ち上がり、内部に収納していたホース収納部44が路面からゆっくり表れ、図4に示す露出位置まで上昇して停止し、この露出位置を保持する。
【0047】
このときホース収納部44の上昇に伴い連結ホース88が接続されているシリンダ60の外側に固定された連結配管64との距離が長くなるが、連結ホース88は露出位置に保持されたホース収納部44の下面から連結配管64の上端までの距離以上となる所定のホース長を持つため、若干の弛みをもった連結状態となり、連結配管64とホース54の連結が確実に保たれる。
【0048】
このように監視員通路14の上に露出状態にホース収納部44が保持されると、利用者は道路側から筐体48の前面開口を介してノズル56を取出すことで、簡単且つ容易にホース54を引き出すことができる。
【0049】
続いて、利用者は、露出したホース収納部44に設けている放水スイッチ38aを押してオンすると、制御機構収納部45の放水制御機構に放水開始信号が出力され、消火用水が給水配管58及び連結ホース88を介してホース54に供給され、ノズル56からの放水により消火作業を行うことができる。
【0050】
一方、監視員通路14側から利用者が消火作業を行う場合には、監視員通路14上に露出保持されたホース収納部44における筐体48の背面開口からノズル56を取出すことで、簡単且つ容易にホース54を引き出して消火作業を行うことができる。
【0051】
火災が鎮火して消火作業が終了した場合には、ホース収納部44に設けている放水停止スイッチ38bを押してオンすると、制御機構収納部45の放水制御機構に放水停止信号が出力され、ノズル56からの放水が停止される。
【0052】
また、消火作業が終了した後の復旧作業では、ホース54の水抜きを行った後に、監視員通路14上に露出保持されているホース収納部44の中に内巻き状態にホース54を収納する。続いて、通報装置パネル28に設けられている下降スイッチ36bをオン操作することで、ピストンシリンダ昇降機構46aによりホース収納部44が下降され、路面板50が消火栓昇降口42を閉鎖する位置まで下降して停止し、ホース収納部44が消火栓収納箱25の中に収納された状態となる。
【0053】
[パンタグラフ昇降機構を用いた消火栓設備]
図5はパンタグラフ昇降機構に連結配管が固定された実施形態を道路側から見た断面で示した説明図、図6図5のホース収納部を昇降機構により上昇して監視員通路上に露出させた状態を路面側から見た断面で示した説明図である。
【0054】
図5に示すように、本実施形態にあっては、昇降機構としてパンタグラフ昇降機構46bを設けている。
【0055】
パンタグラフ昇降機構46bは、4本のリンクアーム74a~74dで構成される。なお、リンクアーム74a~74dは模式的に示している。
【0056】
リンクアーム74aは左端が支点76aにより基台75aに回動自在に支持され、またリンクアーム74bは右端がスライダ78bにより基台75aに沿って摺動自在に支持され、リンクアーム74a,74bを中央で交差させて支点76cで回動自在に連結させている。
【0057】
リンクアーム74aの右端にはリンクアーム74cの左端が支点76cにより回動自在に連結され、また、リンクアーム74bの左端にはリンクアーム74dの右端が支点76cにより回動自在に連結され、リンクアーム74c,74dを中央で交差させて支点76cで回動自在に連結させている。
【0058】
更に、リンクアーム74cの右端は取付台75bにスライダ78aにより摺動自在に連結され、リンクアーム74dの左端は支点76bにより取付台75bに沿って回動自在に支持されている。
【0059】
パンタグラフ昇降機構46bの駆動機構としては、ピストンシリンダ機構が設けられ、シリンダ60の下端がリンクアーム74bに支点82aにより回動自在に連結され、シリンダ60内に摺動自在に設けられたピストン61に連結されたピストンロッド63の先端がリンクアーム74cに支点82bにより回動自在に連結されている。
【0060】
このようなパンタグラフ昇降機構46bに対し、リンクアーム74aに沿って分割された連結配管64aが固定され、また、リンクアーム74cに沿って分割された連結配管64bが固定される。
【0061】
制御機構収納部45から立ち上げられた給水配管58は、可撓性の連結ホース66により下端のリンクアームに固定された連結配管64aの左端に接続される。また、連結配管64aの右端と連結配管64bの右端の間も可撓性の連結ホース68により連結される。更に、連結配管64bの左端には、ホース収納部44に収納されたホース54が接続されている。
【0062】
このように本実施形態にあっては、パンタグラフ昇降機構46bのリンクアーム74a,74dに分割して固定された連結配管64a,64bの入口の接続と連結部の接続に可撓性の連結ホース66,68が使用されているだけであり、連結ホース66,68の接続間隔は、パンタグラフ昇降機構46bの動きに対し殆ど変化せず、使用する連結ホース66,68は最短化できる。
【0063】
それ以外の構成及び機能は図3の実施形態と同じになることから、その説明は省略する。
【0064】
[パンタグラフ昇降機構を用いた消火栓設備の動作]
(通常監視時)
図1に示すトンネル10の道路を車両が通行している通常監視時にあっては、図5に示すように、消火栓設備16のホース収納部44は、制御機構収納部45に設けられた放水制御機構からの消火用水の供給が停止されていることで、パンタグラフ昇降機構46bの水圧シリンダ60はピストン61を最下点に位置させ、これによりパンタグラフ昇降機構46bはリンクアーム74a~74dを折り畳んだ下降位置にあり、ホース収納部44を監視員通路14の内部空間に収納し、筐体48の上面の路面板50により消火栓昇降口42を閉鎖しており、監視員通路14内に消火栓設備16を設置していても、監視員通路14を通る人の通行を妨げたり、危険を及ぼすことはない。
【0065】
(火災発生時)
一方、トンネル10内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、監視センター側への火災通報操作を行った後に、消火作業を行うため、通報装置パネル28に設けている上昇スイッチ36aを押してオンすると、制御機構収納部45からパンタグラフ昇降機構46bの水圧シリンダ60に消火用水が送られ、シリンダ内に供給された消火用水によりピストン61が上昇し、ピストンロッド63を介してリンクアーム74bとリンクアーム74cの間隔が押し広げられる。
【0066】
リンクアーム74b,74cの間隔が押し広げられると、支点76cを中心にリンクアーム74b,74cの角度が広がり、これに連動して支点76dを中心にリンクアーム74a,74dの角度も広がり、リンクアーム74b,74cの左端のスライダ78b,78aが左側に摺動し、取付台75bに取付けられたホース収納部44が押し上げられる。
【0067】
このため監視員通路14の消火栓昇降口42を閉鎖している路面板50が持ち上がり、内部に収納していたホース収納部44が路面からゆっくり表れ、図6に示す露出位置まで上昇して停止し、この露出位置を保持する。
【0068】
このようなパンタグラフ昇降機構46bによるホース収納部44の上昇駆動に伴い、リンクアーム74a,74dに固定されている連結配管64a,64bも、給水配管58とホース収納部44との接続を維持したまま移動される。
【0069】
監視員通路14の上に露出状態にホース収納部44が保持されると、利用者は道路側から筐体48の前面開口を介してノズル56を取出すことで、簡単且つ容易にホース54を引き出して消火作業を行うことができる。
【0070】
火災が鎮火して消火作業が終了した後の復旧作業では、ホース54の水抜きを行った後に、監視員通路14上に露出保持されているホース収納部44の中に内巻き状態にホース54を収納する。続いて、通報装置パネル28に設けられている下降スイッチ36bをオン操作することで、パンタグラフ昇降機構46bによりホース収納部44が下降され、路面板50が消火栓昇降口42を閉鎖する位置まで下降して停止し、ホース収納部44が監視員通路14の内部空間に収納された状態となる。
【0071】
[パンタグラフ昇降機構を用いた消火栓設備の他の実施形態]
図7はパンタグラフ昇降機構に連結配管が固定された他の実施形態を道路側から見た断面で示した説明図である。
【0072】
図7に示すように、本実施形態にあっては、パンタグラフ昇降機構46bの下端側のリンクアーム74aから上端側のリンクアーム74cにかけて連結配管64が固定され、制御機構収納部45から立ち上げられた給水配管58は、可撓性の連結ホース66により下端のリンクアーム74aに固定された連結配管64の左端に接続される。更に、連結配管64の右端には、ホース収納部44に収納されたホース54が接続されている。
【0073】
このように本実施形態にあっては、パンタグラフ昇降機構46bのリンクアーム74aに固定された連結配管64の入口の接続に可撓性の連結ホース66が使用されているだけであり、連結ホース66の接続間隔は、パンタグラフ昇降機構46bの動きに対し殆ど変化せず、使用する連結ホース66は最短化できる。
【0074】
それ以外の構成及び機能は図5の実施形態と同じになることから、その説明は省略する。
【0075】
[本発明の変形例]
(駆動機構)
上記の実施形態は、パンタグラフ昇降機構46bの駆動機構として、水圧又は油圧で駆動される液圧シリンダを使用しているが、これに限定されない。例えば、モータにより回転されるネジシャフトを、リンクアーム74bの右端に設けたスライダ78bを連結する部材にネジ穴を設けて螺合し、ネジシャフトの回転によりスライダ78bを左側に摺動させることでパンタグラフ昇降機構46bを上に伸ばすように駆動し、また、ネジシャフトの逆回転によりスライダ78bを右側に摺動させることでパンタグラフ昇降機構46bを下に縮めるように駆動しても良い。
【0076】
(消火栓設備)
上記の実施形態で示した消火栓設備のホース類や消火栓弁等のバルブ類、通報装置の構成及び配置、その他の構成については任意であり、適宜の構成を採用して良い。
【0077】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0078】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐配管
25:消火栓収納箱
26:点検扉
30:赤色表示灯
32:発信機
34:応答ランプ
36a:上昇スイッチ
36b:下降スイッチ
42:消火栓昇降口
44:ホース収納部
45:制御機構収納部
46a:ピストンシリンダ昇降機構
46b:パンタグラフ昇降機構
48:筐体
50:路面板
54:ホース
55:ホース取出口
56:ノズル
60:水圧シリンダ
66,68,88:連結ホース
64,64a,64b:連結配管
74a~74d:リンクアーム
75a:基台
75b:取付台
76a~76c,82a,82b:支点
78a,78b:スライダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7