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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】リドカイン含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20221118BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/32
A61P25/04
A61P29/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022075744
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2022-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和3年12月22日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス(URL) https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=9507f727-c49f-4de4-9d64-b6d977d568ab
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】鶴島 圭一郎
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191187(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/075094(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112438963(CN,A)
【文献】国際公開第2020/250144(WO,A2)
【文献】国際公開第2020/262057(WO,A1)
【文献】特表2011-521975(JP,A)
【文献】特開平10-147521(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029325(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046335(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/153396(WO,A1)
【文献】LABEL: SALONPAS PAIN RELIEVING LIDOCAINE 4% FLEX- lidocaine patch,DailyMed,2021年12月22日,<URL: https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=9507f727-c49f-4de4-9d64-b6d977d568ab>,retrieved on 4 August 2022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩、プロピレングリコール、ゴム系粘着基剤及びテルペン系樹脂を含有し、
前記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、前記粘着剤層の総質量を基準としてリドカインのフリー体換算で2質量%~6質量%であり、
前記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比がリドカインのフリー体換算で1:0.6~1:1.8であり、
前記粘着剤層中のテルペン系樹脂の含有量が、前記粘着剤層の総質量を基準として5質量%~18質量%である、
貼付剤。
【請求項2】
前記粘着剤層中のプロピレングリコールの含有量が、前記粘着剤層の総質量を基準として1.2質量%~7質量%である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記粘着剤層中のテルペン系樹脂の含有量が、前記粘着剤層の総質量を基準として9質量%~14質量%である、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リドカイン含有貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
局所麻酔作用を有するリドカインは、低用量で投与すると鎮痛効果が得られるため、術後疼痛及び神経障害による痛みの治療に有効であることが知られており、筋肉内注射、静脈内注射、点滴、ゲル、貼付剤等による投与が行われている。この中でも、貼付剤による経皮投与方法は、投与の容易さや、コンプライアンスの向上、効果が持続的であるという利点から、有用な投与方法である。
【0003】
リドカインを含有する貼付剤に関し、例えば、特許文献1には、リドカインを溶解状態で配合しておくための溶解剤として、有機酸、多価アルコール類又は界面活性剤を使用したリドカイン含有非水性貼付剤が開示されている。また、特許文献2には、有機酸及びポリアルコールの混合物からなる溶解剤を含有する非水性貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/046335号
【文献】特開2018-525419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、リドカインを含有する貼付剤について検討を行ったところ、リドカインの溶解剤として多価アルコールを用いた場合、多価アルコールの種類によっては、製造中又は製造直後の貼付剤において結晶が析出することを見出した。薬物の結晶が析出した貼付剤は、薬物の皮膚透過性が低下し、十分な薬効が得られないことがしばしば問題となる。
【0006】
また、多価アルコールの含有量が多い貼付剤では、粘着力が低下する傾向がある一方で、貼付面同士が強く粘着し引き剥がし難くなる傾向、いわゆる自着性が強くなる傾向、があることを本発明者らは見出した。自着性が強い貼付剤は、貼付剤を貼付する際に誤って貼付面同士を接触させると引き剥がすことが困難となり、適切に貼付できないという問題が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、結晶析出が抑えられ、かつ、自着性が抑えられる、リドカインを含有する貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究を進めたところ、粘着剤層中に、所定量のプロピレングリコール及び所定量のテルペン系樹脂を含む貼付剤は、結晶析出が抑えられ、かつ、自着性が抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の貼付剤は支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩、プロピレングリコール、ゴム系粘着基剤及びテルペン系樹脂を含有し、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として2質量%~6質量%であり、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比が1:0.6~1:1.8であり、上記粘着剤層中のテルペン系樹脂の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として5質量%~18質量%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結晶析出が抑えられ、自着性が抑えられ、かつ粘着力に優れる、リドカインを含有する貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を示して、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る貼付剤は、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩、プロピレングリコール、ゴム系粘着基剤及びテルペン系樹脂を含有し、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として2質量%~6質量%であり、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比が1:0.6~1:1.8であり、上記粘着剤層中のテルペン系樹脂の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として5質量%~18質量%である。
【0013】
支持体は、貼付剤、特に粘着剤層の形状を維持し得るものであればよい。支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタン等の合成樹脂が挙げられる。支持体の性状は、例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布、不織布等の布、及びこれらの積層体等である。支持体の厚みは、特に制限されないが、通常、2μm~3000μm程度であることが好ましい。支持体の目付けは、例えば、30g/m~200g/mである。本明細書において、支持体の厚み及び目付けは、JIS L 1906:2000の規格に準じて測定される。
【0014】
粘着剤層は、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩と、プロピレングリコールと、ゴム系粘着基剤と、テルペン系樹脂と、後述する任意成分と、を混和して得られる粘着剤組成物から形成される。粘着剤層の単位面積当たりの質量は、特に制限されず、15g/m~400g/mとすることができ、50g/m~300g/m、100g/m~200g/m、又は130g/m~170g/mであってもよい。粘着剤層の単位面積当たりの質量が400g/mを超えると、被服の着脱時等に貼付剤が脱落しやすくなる。粘着剤層の単位面積当たりの質量が15g/m未満であると貼付剤の粘着力が低下しやすくなる。
【0015】
リドカインの薬学的に許容可能な塩は、リドカインの酸付加塩のうち、医薬として利用可能なものを意味する。有機酸として、例えば、ギ酸、酢酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。無機酸として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。リドカインの薬学的に許容可能な塩は、好ましくは塩酸リドカインである。リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0016】
リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、2質量%~6質量%であり、3質量%~5質量%であってもよい。なお、上記質量%は、粘着剤層中にリドカインの薬学的に許容可能な塩が含まれる貼付剤である場合、リドカインのフリー体換算の質量%を意味する。
【0017】
プロピレングリコールは、製造中又は製造直後の貼付剤に結晶が析出することを抑制する。粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比は、1:0.6~1:1.8であり、1:0.75~1:1.75であってもよい。リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比が上記範囲内の貼付剤は、結晶析出が抑えられ、かつ、自着性が抑えられる。プロピレングリコールの含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、1.2質量%~7質量%とすることができ、1.8質量%~7質量%であってもよく、3質量%~7質量%であってもよい。
【0018】
ゴム系粘着基剤は、粘着剤層に粘着性を付与する。ゴム系粘着基剤としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、天然ゴム、アルキルビニルエーテル(共)重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態に係るゴム系粘着基剤としては、粘着剤層のより十分な粘着力を発揮することができる傾向にあるという観点から、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合及びポリイソブチレンを含むことがより好ましい。
【0020】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の具体例としては、Quintac(登録商標)3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、SIS5229、SIS5505(商品名、JSR株式会社製)、SIBSTAR(登録商標)T102(商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられ、また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、具体例としては、Oppanol(登録商標)N50、N80、N100、N150、B11、B12、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSR(登録商標)Butyl065、268、365(商品名、JSR株式会社製)、X_Butyl(登録商標)RB100、101-3、301、402(商品名、ARLANXEO社製)、Exxon(登録商標)Butyl065、065S、068、068S、268、268S、365、365S(商品名、Exxon Mobile社製)等が挙げられる。
【0021】
ゴム系粘着基剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、10質量%~80質量%とすることができ、15質量%~60質量%、15質量%~40質量%であってもよい。
【0022】
粘着剤層は、ゴム系粘着基剤に加えて、アクリル系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される1種以上を含むことができる。粘着基剤の総含有量は、粘着剤層の総質量を基準として10質量%~95質量%とすることができ、20質量%~90質量%であってもよい。
【0023】
アクリル系粘着基剤は、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの(共)重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」との用語は、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか一方又は両方を意味し、類似の表現についても同様に定義される。
【0024】
アクリル系粘着基剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(主モノマー)とコモノマーから形成される共重合体であってもよい。主モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。コモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合できる成分であればよい。コモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アミドなどが挙げられる。コモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0025】
アクリル系粘着基剤の具体例としては、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子等が挙げられる。このようなアクリル系粘着基剤としては、具体例としては、DURO-TAK(登録商標)387-2510、DURO-TAK(登録商標)87-2510、DURO-TAK(登録商標)387-2287、DURO-TAK(登録商標)87-2287、DURO-TAK(登録商標)87-4287、DURO-TAK(登録商標)387-2516、DURO-TAK(登録商標)87-2516、DURO-TAK(登録商標)87-2074、DURO-TAK(登録商標)87-900A、DURO-TAK(登録商標)87-901A、DURO-TAK(登録商標)87-9301、DURO-TAK(登録商標)87-4098等のDURO-TAKシリーズ(Henkel社製);GELVA(登録商標)GMS 788、GELVA(登録商標)GMS 3083、GELVA(登録商標)GMS 3253等のGELVAシリーズ(Henkel社製);MAS811(商品名)、MAS683(商品名)等のMASシリーズ(コスメディ製薬株式会社製);Eudragit(登録商標)シリーズ(エボニック社製)、ニカゾール(登録商標)シリーズ(日本カーバイド工業株式会社製)、ウルトラゾール(登録商標)シリーズ(アイカ工業株式会社製)が挙げられる。
【0026】
アクリル系粘着基剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、10質量%~50質量%とすることができ、10質量%~20質量%であってもよい。
【0027】
シリコーン系粘着基剤は、オルガノポリシロキサン骨格を有する化合物である。シリコーン系粘着基剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。具体的なシリコーン系粘着基剤としては、例えば、MD7-4502 Silicone Adhesive、MD7-4602 Silicone Adhesive等のMDシリーズ(デュポン・東レ・スペシャリティ・マテリアル株式会社製);BIO-PSA(登録商標) 7-4301 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4302 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4201 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4202 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4101 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4102 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4601 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4602 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4501 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4502 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4401 Silicone Adhesive、BIO-PSA(登録商標) 7-4402 Silicone Adhesive等のBIO-PSAシリーズ(デュポン・東レ・スペシャリティ・マテリアル株式会社製)、Dow Corning(登録商標) 7-9800A、Dow Corning(登録商標) 7-9800B、Dow Corning(登録商標) 7-9700A、Dow Corning(登録商標) 7-9700Bが挙げられる。
【0028】
シリコーン系粘着基剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、10質量%~50質量%とすることができ、10質量%~20質量%であってもよい。
【0029】
テルペン系樹脂は、粘着付与樹脂として機能する。テルペン系樹脂の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、5質量%~18質量%であり、9質量%~14質量%であってもよい。テルペン系樹脂の含有量が上記範囲内の貼付剤は、十分な粘着力を発揮しつつも自着性が抑えられる。
【0030】
テルペン系樹脂としては、例えば、ピネン重合体(α-ピネン重合体、β-ピネン重合体等)、テルペン重合体、ジペンテン重合体、テルペン-フェノール重合体、芳香族変性テルペン重合体、ピネン-フェノール共重合体が挙げられ、より具体的には、YSレジン(YSレジンPXN(1150N、300N)、YSレジンPX1000、YSレジンTO125、YSレジンTO105等)、クリアロンP105、クリアロンM115、クリアロンK100(以上、商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)、タマノル901(商品名、荒川化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0031】
粘着剤層は、任意に、その他の添加剤をさらに含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、テルペン系樹脂以外の粘着付与樹脂、可塑剤、吸収促進剤、プロピレングリコール以外の溶解剤、安定化剤、充填剤、香料等が挙げられる。
【0032】
粘着付与樹脂は、粘着剤層の粘着性を調整する成分である。粘着剤層は、テルペン系樹脂に加えて、例えば、石油系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂等の粘着付与樹脂を含有してもよい。石油系樹脂としては、例えば、脂環族系石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂等)、脂肪族系石油樹脂(脂肪族炭化水素樹脂等)、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、より具体的には、アルコンP-70、アルコンP-85、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125、アルコンM-70、アルコンM-85、アルコンM-90、アルコンM-100、アルコンM-115、アルコンM-125(以上、商品名、荒川化学工業株式会社製)、エスコレッツ8000(商品名、エッソ石油化学株式会社製)等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、水素添加ロジングリセリンエステル、超淡色ロジン、超淡色ロジンエステル、酸変性超淡色ロジンが挙げられ、より具体的には、パインクリスタル(KE-311、PE-590、KE-359、KE-100等)(商品名、荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。テルペン系樹脂に加えて、これらの粘着付与樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層がテルペン系樹脂以外の粘着付与樹脂も含有する場合、粘着付与樹脂の含有量(テルペン系樹脂を除いた含有量)は、粘着剤層の総質量を基準として、5質量%~50質量%とすることができ、10質量%~40質量%であってもよい。
【0033】
可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、植物油類(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油、スペアミント油、ユーカリ油、ホホバ油、樟脳白油、ヒマワリ油、オレンジ油等)、油脂類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、及び液状ゴム(液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層が可塑剤を含有する場合、その含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、例えば、3質量%~50質量%、10質量%~50質量%、又は20質量%~50質量%である。
【0034】
吸収促進剤は、従来、経皮吸収促進作用を有することが知られている化合物であればよい。吸収促進剤としては、例えば、有機酸エステル(例えば、脂肪酸エステル、ケイ皮酸エステル)、有機酸アミド(例えば、脂肪酸アミド)、脂肪族アルコール、多価アルコール、エーテル(例えば、脂肪族エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)等が挙げられる。これらの吸収促進剤は、不飽和結合を有していてもよく、環状、直鎖状又は分枝状の化学構造であってもよい。また、吸収促進剤は、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、及び植物油(例えば、オリーブ油)であってもよい。これらの吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
有機酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸メチル、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチルが挙げられる。脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であってもよい。脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、Span40、Span60、Span80、Span120(商品名、クローダジャパン株式会社製)、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)21、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)80、NIKKOL(登録商標)HCO-60(商品名、日光ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
【0036】
有機酸アミドとしては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、ヘキサヒドロ-1-ドデシル-2H-アゼピン-2-オン(Azoneともいう。)及びその誘導体、ピロチオデカンが挙げられる。
【0037】
脂肪族アルコールとは、炭素原子数6~20の脂肪族アルコールを意味する。脂肪族アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコールが挙げられる。
【0038】
脂肪族エーテルとは、炭素原子数6~20の脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基)を有するエーテルを意味する。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0039】
モノテルペン系化合物としては、例えば、ゲラニオール、チモール、テルピネオール、l-メントール、ボルネオール、d-リモネン、イソボルネオール、ネロール、dl-カンフルが挙げられる。モノテルペン系化合物として、ハッカ油を使用してもよい。
【0040】
粘着剤層が吸収促進剤を含有する場合、吸収促進剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、0.5質量%~20質量%とすることができる。
【0041】
溶解剤は、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩を粘着剤組成物中に溶解させやすくする成分である。粘着剤層は、プロピレングリコールに加えて、例えば、脂肪酸多価アルコールエステル(例えば、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン)、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、脂肪族アルコール(例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール)、多価アルコール(例えば、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ピロリドン誘導体(例えば、N-メチル-2-ピロリドン)等の溶解剤を含有してもよい。プロピレングリコールに加えて、これらの溶解剤のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層がプロピレングリコール以外の溶解剤を含有する場合、溶解剤の含有量(プロピレングリコールを除いた含有量)は、粘着剤層の総質量を基準として、2質量%~10質量%とすることができる。
【0042】
安定化剤は、紫外線等の光線、熱又は活性化学種の作用により発生するフリーラジカルの生成及びその連鎖反応の進行を抑制できるものであればよい。安定化剤としては、例えば、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、2,6-ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層が安定化剤を含有する場合、安定化剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、0.05質量%~3質量%とすることができ、0.05質量%~1質量%、0.05質量%~0.25質量%又は0.1質量%~0.25質量%であってもよい。
【0043】
充填剤としては、例えば、金属化合物(酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム等)、セラミクス(タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロキシアパタイト、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)又は有機化合物(セルロース粉末、ステアリン酸塩等)の、粉末又はこれらを含む樹脂の短繊維が挙げられる。充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層が充填剤を含有する場合、充填剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、0.1質量%~20質量%とすることができる。
【0044】
貼付剤は、さらに剥離ライナーを備えていてもよい。剥離ライナーは、粘着剤層に対して、支持体と反対側の面に積層される。剥離ライナーを備えていると、保管時において、粘着剤層へのゴミ等の付着を低減することができる傾向がある。剥離ライナーの粘着剤層と接する面は、シリコーン又はフッ素化ポリオレフィン等により離型処理されていることが好ましい。
【0045】
剥離ライナーの素材としては、特に限定されず、当業者に一般的に知られているライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、例えば、紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、アルミニウム等のフィルムが挙げられる。剥離ライナーは、上質紙とポリオレフィンとのラミネートフィルムであってもよい。剥離ライナーの材質としては、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート製のフィルムが好ましい。
【0046】
貼付剤は、例えば、次の方法により製造することができるが、これに限定されず、公知の方法を使用することができる。まず、粘着剤層を構成する各成分を所定の割合で混合して均一な溶解物(粘着剤組成物)を得る。次に、剥離可能なフィルム(剥離ライナー)上に粘着剤組成物を所定の厚みで展延して粘着剤層を形成する。さらに、粘着剤層が剥離ライナーと支持体とに挟まれるように、粘着剤層に支持体を圧着する。最後に、所望の形状及び寸法に裁断することにより、貼付剤を得ることができる。この場合、剥離ライナーは、貼付剤の適用時に除去される。貼付剤の面積は、5cm~200cmであってよく、50cm~150cmであってよい。貼付剤の形状及び寸法は、例えば、短辺が2cm~10cmかつ長辺が3cm~15cmの矩形、又は直径が1cm~8cmの円形であってもよい。
【実施例
【0047】
1.貼付剤の調製
表1~3に従って、各成分を混合し粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を剥離ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に、単位面積当たりの質量が150g/mになるように展延し、粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の上記反対の面上に支持体層(ポリエチレンテレフタレート製編布、厚み550μm、目付110g/m)を積層し、支持体層/粘着剤層/剥離ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0048】
2.評価方法
得られた貼付剤を、以下の評価方法にしたがって評価した。
(a)結晶析出
なし:製造中又は製造直後の貼付剤において結晶析出が確認されなかった。
あり:製造中又は製造直後の貼付剤において結晶析出が確認された。
(b)自着性
製造した貼付剤を20mm×70mmのサイズに裁断し、引張試験機にチャック間距離30mmとなるように貼付剤をセットした後、チャック間距離を5mmとして粘着面同士を付着させた。その後、50mm/分の速さで貼付剤を引っ張り、0mm~25mmの積分平均荷重(N)の3回の平均値を各貼付剤の粘着面を剥離するのに要する力として測定した。粘着面を剥離するのに要する力が1.3N以下の貼付剤は、貼付面同士が粘着しても容易に引き剥がすことが可能である。
(c)粘着力
傾斜式ボールタック試験法(第十八改正日本薬局方、一般試験法6.12粘着力試験法)により、No.30(直径15/16インチ)以下のボールを傾斜板の上端より転がした際に、停止した最大のボールナンバーを各貼付剤の粘着力として評価した。停止した最大のボールナンバーが大きい製剤は粘着力に優れることを意味する。
【0049】
【表1】
【0050】
多価アルコールとしてプロピレングリコールを含有する貼付剤(実施例1)では、結晶が析出しなかったのに対し、多価アルコールとしてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はグリセリンを含有する貼付剤(比較例1~3)では結晶が析出した。なお、比較例1~3の貼付剤は結晶が析出したため、自着性の評価を行わなかった。
【0051】
【表2】
【0052】
リドカインとプロピレングリコールの質量比が1:0.6~1:1.8の範囲内の貼付剤(実施例1~2)は、結晶が析出せず、自着性が抑えられ、かつ粘着力に優れていた。
プロピレングリコールを含まない貼付剤(比較例4)は結晶が析出したため、粘着力の評価を行わなかった。比較例7の貼付剤は、プロピレングリコールの量が多いため、いわゆるブリード(粘着剤層表面への液状成分の浸み出し)が生じたため製剤として不適であった。そのため、比較例7の貼付剤の粘着力の評価を行わなかった。リドカインとプロピレングリコールの質量比が1:0.5の貼付剤(比較例5)は、結晶が析出した。リドカインとプロピレングリコールの質量比が1:2の貼付剤(比較例6)は、自着性が強く、また粘着力が劣っていた。
【0053】
【表3】
【0054】
テルペン系樹脂の含有量が5質量%~18質量%である貼付剤(実施例1~3)は、結晶が析出せず、自着性が抑えられ、かつ粘着力に優れていた。テルペン系樹脂の代わりに水素添加ロジングリセリンエステルを含有する貼付剤(比較例8)は、粘着力が顕著に劣っていた。テルペン系樹脂の含有量が4質量%である貼付剤(比較例9)は、粘着力が劣っていた。テルペン系樹脂の含有量が19質量%~24質量%である貼付剤(比較例10~11)は、自着性が強かった。

【要約】
【課題】結晶析出が抑えられ、かつ、自着性が抑えられる、リドカインを含有する貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、上記粘着剤層が、リドカイン又はその薬学的に許容可能な塩、プロピレングリコール、ゴム系粘着基剤及びテルペン系樹脂を含有し、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として2質量%~6質量%であり、上記粘着剤層中のリドカイン又はその薬学的に許容可能な塩とプロピレングリコールの質量比が1:0.6~1:1.8であり、上記粘着剤層中のテルペン系樹脂の含有量が、上記粘着剤層の総質量を基準として5質量%~18質量%である、貼付剤。
【選択図】なし