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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】航空機用ラバトリーユニット
(51)【国際特許分類】
   B64D 11/02 20060101AFI20221118BHJP
   B60R 15/04 20060101ALN20221118BHJP
   B61D 35/00 20060101ALN20221118BHJP
   E04H 1/12 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
B64D11/02
B60R15/04
B61D35/00 A
E04H1/12 301
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022510321
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013994
(87)【国際公開番号】W WO2021192217
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000132013
【氏名又は名称】株式会社ジャムコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 久也
(72)【発明者】
【氏名】福冨 祥子
(72)【発明者】
【氏名】中本 ロバート圭一
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0227034(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108185730(CN,A)
【文献】米国特許第10356192(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に収容された収容状態と、前記壁面から引き出された引出状態とを選択的にとることができる、乳幼児を載置可能な可動台と、
前記引出状態にある前記可動台に対向して配置され、静止画または動画を表示するディスプレイと、を有し、
前記ディスプレイは、前記可動台が前記引出状態になったことに応じて、乳幼児向けのコンテンツの静止画または動画を表示する、
ことを特徴とする航空機用ラバトリーユニット。
【請求項2】
壁面に収容された収容状態と、前記壁面から引き出された引出状態とを選択的にとることができる、乳幼児を載置可能な可動台と、
前記引出状態にある前記可動台に対向して配置され、静止画または動画を表示するディスプレイと、を有し、
前記可動台は、第1板と、前記第1板に対して回動可能な第2板とを有し、前記収容状態では前記第1板と前記第2板とが折りたたまれ、前記引出状態では前記第1板と前記第2板とが展開状態となり、
前記第2板は、幅広部と、幅狭部と、幅広部と幅狭部との間に配置された遷移部とを連設してなる、
ことを特徴とする航空機用ラバトリーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ラバトリーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機を利用する乳幼児連れの乗客から、他の乗客に迷惑をかけずに、おむつなどの交換を行いたいという要望がある。かかる要望に応じるべく、おむつ交換台を備えたラバトリーを有する航空機がすでに就航している。おむつ交換台を備えたラバトリーの一例が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
一般的な航空機用ラバトリーは、航空機内のスペースを有効活用するために、比較的狭い内部空間を有する。したがって、おむつ交換台は、便器を使用する乗客の邪魔にならないよう通常はラバトリーの壁などに収容され、必要に応じて引き出されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許公開第2014/033786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、航空機に搭乗した乳幼児は、減圧された機内や慣れない環境に不快感を覚え、機嫌が悪くなることもある。そのため、狭いラバトリー内でおむつ替えをする際に乳幼児がむずかって、スムーズにおむつ替えを行えない恐れがある。一方、例えば乳幼児がリラックスできるような広い空間を、ラバトリー内に設けることは困難である。
【0006】
そこで本発明は、ラバトリー利用者の快適性を確保しつつ、おむつ替えを容易に行うことができる航空機用ラバトリーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明による航空機用ラバトリーユニットは、
壁面に収容された収容状態と、前記壁面から引き出された引出状態とを選択的にとることができる、乳幼児を載置可能な可動台と、
前記引出状態にある前記可動台に対向して配置され、静止画または動画を表示するディスプレイと、を有し、
前記ディスプレイは、前記可動台が前記引出状態になったことに応じて、乳幼児向けのコンテンツの静止画または動画を表示する、ことを特徴とする。
又、本発明による航空機用ラバトリーユニットは、
壁面に収容された収容状態と、前記壁面から引き出された引出状態とを選択的にとることができる、乳幼児を載置可能な可動台と、
前記引出状態にある前記可動台に対向して配置され、静止画または動画を表示するディスプレイと、を有し、
前記可動台は、第1板と、前記第1板に対して回動可能な第2板とを有し、前記収容状態では前記第1板と前記第2板とが折りたたまれ、前記引出状態では前記第1板と前記第2板とが展開状態となり、
前記第2板は、幅広部と、幅狭部と、幅広部と幅狭部との間に配置された遷移部とを連設してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラバトリー利用者の快適性を確保しつつ、おむつ替えを容易に行うことができる航空機用ラバトリーユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットで使用されるおむつ交換台の斜視図である。
図2図2は、本実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットを、おむつ交換台を収納した状態で示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットを、おむつ交換台を一段引き出した状態で示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットを、おむつ交換台を完全に引き出した状態で示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットの使用前の状態を示す斜視図である。
図6図6は、本実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットにおいて、おむつ交換台を使用する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる航空機用ラバトリーユニットで使用されるおむつ交換台の斜視図である。図1で、上下方向をZ方向とし、Z方向に直交する方向をX方向およびY方向とする。
【0011】
おむつ交換台(可動台)10は、第1樹脂板11と第2樹脂板12とから構成される。第1樹脂板11は、Y方向に細長い矩形板状を有する。第2樹脂板12は、第1樹脂板11と略等しいY方向寸法および厚さを有し、幅広部12aと、遷移部12cと、幅狭部12bとを連設してなる。幅狭部12bは、X方向の幅が幅広部12aより狭くなっており、遷移部12cは、幅広部12aと幅狭部12bとを接続している。遷移部12cのX方向の幅は、幅狭部12bから幅広部12aに向かうに従って漸次拡大するようになっている。
【0012】
第2樹脂板12における第1樹脂板11側の縁はストレート形状であるが、第1樹脂板11とは反対側の縁は段付き形状となっており、特に遷移部12cの縁には、円弧状に形成された円弧縁12dが形成されている。
【0013】
第1樹脂板11と第2樹脂板12とは、第1ヒンジ13により軸線O1回りに互いに回動可能に連結されている。第2樹脂板12の幅広部12aおよび遷移部12cの上面から、第1樹脂板11の上面にわたって、略5角形状のレザー14が張り付けられている。レザー14と、第1樹脂板11および第2樹脂板12の間には、ウレタンフォームなどクッション性に優れた素材が配置されており、レザー14上に乳幼児を寝かせたときに、不快感を与えないようになっている。また、レザー14は防水性に優れており、その上に液体をこぼした場合でも、ふき取りが容易となっている。
【0014】
第1樹脂板11上において、レザー14に隣接して、荷物置き場15が設けられている。荷物置き場15は、例えばおむつ交換台10を使用する乗客が荷物を置く場所として利用できる。
【0015】
第2樹脂板12の幅狭部12bの上面から、第1樹脂板11とは反対側の縁にわたって、半円弧状の凹部12eが形成され、また凹部12eの中央に突起12fが形成されている。突起12fには、おむつ交換台10を使用する乗客のバッグの持ち手を引っ掛けることができる。
【0016】
第1樹脂板11は、第2樹脂板12から反対側の縁近傍に第2ヒンジ16を内蔵しており、これにより軸線O2回りに回動可能となっている。
【0017】
図2~4は、本実施形態の航空機用ラバトリーユニット20の内部を示す斜視図であるが、内部構成を把握できるよう、扉を設けた壁を削除して示している。航空機用ラバトリーユニット20は、床面または側壁面に設置された便器21と、便器21の背後に設置された水洗用バルブユニット22と、壁面に接するように配置された洗面台23とを有する。
【0018】
水洗用バルブユニット22は、三角柱状のカバー構造体22aにより覆われている。カバー構造体22aの上部は壁面に強固に接続されている。床面からカバー構造体22aの上面までの高さは、床面から洗面台23の上面までの高さと等しくなっている。おむつ交換台10の第1樹脂板11の第2ヒンジ16が、カバー構造体22aの近傍及び洗面台23の近傍にて壁面に連結されている。
【0019】
また、航空機用ラバトリーユニット(以下、ラバトリーユニットという)20の洗面台23に対向する壁面には、床面から天井面にかけて第1ディスプレイ24が配置され、第1ディスプレイ24に隣接する天井面には第2ディスプレイ25が配置されている。第2ディスプレイ25に隣接する天井面には、非常時に使用する酸素マスクなどを格納したパッセンジャーサービスユニット(PSU)26が配置されている。第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25は、不図示のドライバを介して、静止画または動画を表示可能となっている。
【0020】
図3、4に示すように、カバー構造体22aの上方の収容壁面27には、接点式スイッチ28が配置されている。接点式スイッチ28は、不図示のドライバに接続されて、電気信号を送信可能となっている。なお、接点式スイッチ28の位置は、以上に限られない。また、接点式スイッチに限らず、例えば赤外線センサなどを利用したスイッチを設けてもよい。
【0021】
おむつ交換台10は、第1ヒンジ13回りに第1樹脂板11と第2樹脂板12とを相対回動させることで、双方に張り付けられた第1レザー14が図1に点線で示す位置で二つ折りされように折りたたむことができる。図2は、折りたたんだ第1樹脂板11と第2樹脂板12とを、収容壁面27に当接させるようにした収納状態を示す。かかる収納状態では、不図示のラッチがおむつ交換台10に係合することで、第1樹脂板11と第2樹脂板12とが不用意に倒れないようになっている。また、収容状態で第2樹脂板12の背面が接点式スイッチ28を押圧することで、オフ信号が出力される。
【0022】
図2に示す状態から、不図示のラッチを解除することで、おむつ交換台10を第2ヒンジ16回りに回動させ、図3に示す中間引出状態へと引き出すことができる。かかる中間引出状態では、第1樹脂板11と第2樹脂板12とが重なっており、第1樹脂板11の両端は、カバー構造体22aと洗面台23の上面により支持されている。
【0023】
図3に示す状態から、さらに第2樹脂板12を第1ヒンジ13回りに回動させ、図4に示す完全引出状態へと引き出すことができる。かかる完全引出状態では、第1樹脂板11と第2樹脂板12の上面が同じ高さとなり、第1樹脂板11および第2樹脂板12の両端は、カバー構造体22aと洗面台23の上面により支持されている。中間引出状態および完全引出状態では、第2樹脂板12の背面が接点式スイッチ28から離間することで、オン信号が出力される。完全引出状態では、平面視で円弧縁12dが便器21の外側に配置される。
【0024】
本実施形態によれば、第1樹脂板11と第2樹脂板12とを折りたたんだ状態で、おむつ交換台10を収容することで、コンパクトな収容を実現する。これにより、便器21を使用する乗客を邪魔することがない。また、完全引出状態では第1樹脂板11と第2樹脂板12とを展開することで、乳幼児のおむつ替えに十分な載置面積を提供することができる。
【0025】
次に、ラバトリーユニット20の使用態様について説明する。乗客がラバトリーユニット20を使用しないときは、図5に示すように、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25には、森林や海辺などの癒し効果が期待される静止画または動画が表示される。このため、ラバトリー利用者である乗客が、ラバトリーユニット20のドアを開けて中に入ったときに、直ちに第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25の静止画及び動画が目に入り、ラバトリー使用時の快適性が向上する。なお、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25に表示される静止画または動画は、森林や海辺などを撮影したものに限られない。
【0026】
このように本実施形態では、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25には、静止画または動画を常時表示するようにしている。ただし、例えばドアロックセンサがドアロックを検出する前まで、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25を非表示とし、ドアロック検出に応じて静止画または動画を表示するようにしてもよい。
【0027】
また、ラバトリーユニット20内に指向性の高いスピーカーを設置し、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25の静止画及び動画に対応して、便器21を使用する乗客の耳に聞こえるように、小鳥のさえずりや波の音などを流すようにしてもよい。
【0028】
ラバトリーユニット20内で、乳幼児のおむつ替えをしたい乗客は、ラバトリー内に進入した後に、第1樹脂板11と第2樹脂板12とを把持して図2~4に示すように展開し、おむつ交換台10を完全引出状態にする。このとき、おむつ交換台10は、乗客が片手で乳幼児を抱いた状態でも、空いた残りの片手で引き出せるようになっている。
【0029】
おむつ交換台10を完全引出状態にすると、接点式スイッチ28よりオン信号が出力されるため、これを入力した不図示のドライバは、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25により、乳幼児向けコンテンツである静止画または動画を表示する。乳幼児向けコンテンツとは、例えば動物やアニメなどに関する静止画または動画である。なお、第2ディスプレイ25のみを、乳幼児向けコンテンツの静止画または動画に切り替えてもよい。
【0030】
さらに乗客は、抱いていた乳幼児を第1樹脂板11と第2樹脂板12上の第1レザー14上に載置する。このとき、第1レザー14の広い面積を有効に使用すべく、乳幼児の頭部が奥側(円弧縁12dから最も離れた側)に向くようにすると好ましい。さらに、乗客は、図6に示すように、自身の体が円弧縁12dに対面する位置に立つことで、ラバトリーユニット20内が狭くてもスペースを有効利用できるから、乳幼児の足元方向から容易におむつ替えなどの作業を行うことができる。
【0031】
おむつ替えの最中に、おむつ交換台10の上であおむけになった乳幼児は、その視線の先にある天井面の第2ディスプレイ25に表示された乳幼児向けコンテンツの静止画または動画に注意を奪われ、おとなしくなることが期待される。これにより、乗客はおむつ替えを容易に行える。
【0032】
また、ラバトリーユニット20内に指向性の高いスピーカーを設置し、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25の静止画及び動画に対応して、乳幼児の耳に聞こえるように、動物の鳴き声やアニメの音声などを流すようにしてもよい。
【0033】
おむつ替えを終えた乗客は、おむつ交換台10から再び乳幼児を抱き上げて、片手で図2~4に示す順序とは逆に、おむつ交換台10を折りたたんで収容することができる。
【0034】
以上、本実施形態による航空機用ラバトリーユニットを説明したが、本発明は上記の具体例に限定されるものではなく、種々の改変を施すことができる。例えば、第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25は、不図示のスイッチを操作することにより、ミラーとして機能させることもできる。さらに第1ディスプレイ24および第2ディスプレイ25をミラーとして機能させた場合、タイマーを作動させて一定時間経過後に、所定の静止画または動画の表示に戻すようにしてもよい。また、おむつ交換台10は、おむつ交換に限られず、例えば乳幼児の着替えを行ったり、乳幼児の肌に薬を塗るなどのために用いることもできる。また、ディスプレイ24.25は、それぞれ複数個のディスプレイを連結して構成することもでき、また1つの連続したディスプレイとすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
10 おむつ交換台、11 第1樹脂板、12 第2樹脂板、13 第1ヒンジ、14 レザー、15 荷物置き場、16 第2ヒンジ、20 航空機用ラバトリーユニット、21 便器、22 水洗用バルブユニット、23 洗面台、24 第1ディスプレイ、25 第2ディスプレイ、26 PSU 27 収容壁面、28 接点式スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6