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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ニコチンの蒸発及び吸入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/06 20060101AFI20221121BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221121BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20221121BHJP
   A61M 11/04 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 31/465 20060101ALN20221121BHJP
   A61K 9/72 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
A61M15/06 C
A61P25/34
A61K47/04
A24F40/42
A61M11/04 300A
A61M11/04 320
A61K31/465
A61K9/72
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018545441
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 GB2017050533
(87)【国際公開番号】W WO2017149288
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】1603463.9
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1702805.1
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522351365
【氏名又は名称】アンプリコン アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エンクヴィスト ハカン
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/146174(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0220314(US,A1)
【文献】特表2014-534814(JP,A)
【文献】特表2013-536875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/06
A61P 25/34
A61K 47/04
A24F 40/42
A61M 11/04
A61K 31/465
A61K 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達可能な薬剤をエアロゾルまたは蒸気の形態で使用者に送達するための装置であって、少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料と、前記担体材料の気孔内に位置するニコチンまたはその塩である送達可能な薬剤と、を含み、前記装置が、前記担体材料を加熱し、それにより前記送達可能な薬剤を気化するように動作可能であり、前記担体材料は、1つ以上の化学結合されたセラミック材料、または1つ以上のジオポリマー材料をベースにしており、前記装置は、使用前に前記担体材料から分離した送達可能な薬剤のリザーバを備えず、前記担体材料及び前記送達可能な薬剤が、交換可能なカートリッジ内で共に提供される、装置。
【請求項2】
前記固体多孔質の担体材料が、約20%~約70%の気孔率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記担体材料中の平均気孔サイズが、約0.1μm~約500μmである、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記担体材料中の平均気孔サイズが、約0.2μm~約200μmである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記送達可能な薬剤が、主に前記担体材料の前記気孔内に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記担体材料が、
(i)アルミノケイ酸塩前駆体材料を水性アルカリ性液体と反応させるプロセスによって得ることができるジオポリマー材料と、
(ii)リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、またはケイ酸アルミニウム、またはそれらの組み合わせから得られる化学結合されたセラミック材料と、からなる群より選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記担体材料が、(i)硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質から得られる化学結合されたセラミック材料か、または(ii)カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライト、脱ヒドロキシル化ゼオライト、脱ヒドロキシル化ハロイサイト及びメタカオリンからなる群より選択されるアルミノケイ酸塩前駆体材料を水性アルカリ性液体と反応させるプロセスによって得ることができるジオポリマー材料か、または(iii)カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライト、脱ヒドロキシル化ゼオライト、脱ヒドロキシル化ハロイサイト及びメタカオリンからなる群より選択されるアルミノケイ酸塩前駆体材料を水性アルカリ性液体と、シリカ源の存在下で、反応させるプロセスによって得ることができるジオポリマー材料である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記送達可能な薬剤が、ニコチン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記交換可能なカートリッジが、基本的に以下からなる、請求項に記載の装置:
(a)前記担体材料および前記送達可能な薬剤;
(b)前記担体材料、前記送達可能な薬剤および導電性材料の粒子;
(c)前記担体材料、前記送達可能な薬剤、および、蒸発促進剤と、香料と、味増強剤とからなる群より選択される1つ以上の物質;あるいは、
(d)前記担体材料、前記送達可能な薬剤、導電性材料の粒子、並びに、蒸発促進剤と、香料と、味増強剤とからなる群より選択される1つ以上の物質。
【請求項10】
前記担体材料を加熱するように動作可能な加熱素子をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記加熱素子が、前記担体材料の近位に位置する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
吸入装置で使用するための交換可能なカートリッジまたは単位用量製品であって、前記カートリッジまたは単位用量製品が、
(i)請求項1~7のいずれか一項に定義される1つ以上の化学結合されたセラミック材料または1つ以上のジオポリマー材料をベースにした、少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料と、
(ii)前記担体材料の前記気孔内に位置する、請求項1または8のいずれか一項に定義される送達可能な薬剤と、を含有する、カートリッジまたは単位用量製品。
【請求項13】
導電性材料の粒子をさらに含有する、請求項12に記載のカートリッジまたは単位用量製品。
【請求項14】
送達可能な薬剤を蒸気またはエアロゾルの形態で製造する方法であって、
(a)
(i)請求項1~7のいずれか一項に定義される少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料と、
(ii)請求項1または8に定義される送達可能な薬剤と、を備え、前記送達可能な薬剤が前記担体材料の前記気孔内に位置する装置を提供することと、
(b)前記担体材料を加熱して、前記送達可能な薬剤を気化することと、を含み、
前記装置は、使用前に前記担体材料から分離した送達可能な薬剤のリザーバを備えず、前記固体多孔質の担体材料及び前記送達可能な薬剤が、交換可能なカートリッジ内で共に提供される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送達可能な薬剤、特にニコチンを、エアロゾルまたは蒸気の形態で、多孔質担体材料の使用によって使用者に送達することを可能にする新規吸入装置に関する。この装置は、制御された量の送達可能な薬剤の使用者への送達を達成するのに有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
本明細書内における、明らかに以前に公開された文献の列挙または考察は、その文献が先端技術の一部であるか、または技術常識であるという認識として必ずしも取られるべきではない。
【0003】
活性薬剤は、使用中に活性薬剤を蒸発させ、蒸発した活性薬剤を吸入させる吸入装置を使用することにより、受容者に送達され得る。このようなシステムは、気化したニコチンを使用者に送達するために電子タバコの形態で使用される頻度が高くなっている。例えば、国際公開99/44448号、米国特許出願公開第2014/0202477号明細書、米国特許出願公開第第2014/0014126号明細書及びCallahan-Lyon P. Tob Control; 2014;23:ii36-ii40を参照されたい。
【0004】
蒸発装置は、典型的には、液体を気化させるための加熱装置と共に、溶解または液状のニコチンを含有するチャンバを備える。加熱素子の場合もある加熱装置は、ニコチンの一部を含有する蒸発担体を直接加熱することができるように、一般的に、ニコチンのリザーバではなく吸入装置内に配置されている。蒸発担体は、リザーバ内に部分的に沈められ、当該リザーバから、吸入のために液体を気化させる加熱素子に向かって、ウィッキング(毛管作用)により液体を吸い込む。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0209530号明細書は、送達される物質(活性医薬成分またはニコチンのいずれか)が担体材料上にコーティングされて乾燥させる前はペーストの形態で提供される吸入装置を記載している。次いで、乾燥されたペースト及び担体材料を装置内で加熱して、活性医薬成分またはニコチンを蒸発させ、それを使用者に吸入させる。また、米国特許第4,303,083号明細書は、液状の化合物を加熱することによって揮発性化合物を気化させるための装置を開示している。
【0006】
いわゆる電子タバコ(electronic cigarette)(「電子タバコ(e-cigarette)」)装置を含む既知の吸入装置は、装置が乾燥した状態で(すなわち、揮発性薬剤が使い果たされたとき)加熱された場合に不快な味を使用者に与えることを含むいくつかの問題を抱えていることが多い。さらに、吸入装置内で使用される液体に含まれる添加剤の多くは有害であり、健康上の問題を引き起こす可能性がある。例えば、プロピレングリコール、植物性グリセリン、及びポリエチレングリコールは、特定の条件下でホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドなどの化合物を生成することが知られており、このような残留物は加熱プロセスの結果として吸入され得る。投与量の制御を達成することも困難であり、これが過剰または不正確な投与量を使用者にもたらす可能性がある。
【0007】
大量の純粋または濃縮ニコチンを取り扱うことは、特に末端使用者に、様々な実際上の困難をもたらす。液体リザーバを含むか、または外部リザーバへの接続部を介して充填しなければならない、電子タバコを含む装置は、使用中及び/又は充填中に液体の漏れ及びこぼれに関する問題を被ることもある。したがって、このような困難を最小限に抑えた装置を提供する必要がある。
【0008】
セラミックは、特に体液の腐食作用に対して十分に耐久性があり、安定しているという事実の観点から、医療界にとってますます有用になってきている。
【0009】
セラミックは、徐放性医薬製剤中の充填剤または担体として潜在的に有用であることも知られている。例えば、EP947489A、US5,318,779、WO2008/118096、Lasserre and Bajpai,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,15,1(1998)、Byrne and Deasy,Journal of Microencapsulation,22,423(2005)、及びLevis and Deasy,Int. J.Pharm.,253,145(2003)を参照されたい。
【0010】
特に、Rimoli et al,J.Biomed.Mater.Res.,87A,156(2008)、米国特許出願公開第2006/0165787号明細書、国際公開第2006/096544号、国際公開第2006/017336号、及び国際公開第2008/142572号の全ては、活性成分の制御された放出のための様々なセラミック物質を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様により、固体多孔質の担体材料と、担体材料の気孔内に位置する送達可能な薬剤とを含む、送達可能な薬剤をエアロゾルまたは蒸気の形態で使用者に送達するための装置が提供される。担体材料の気孔率は、少なくとも10%であるべきである。装置はさらに、担体材料を加熱し、それにより送達可能な薬剤を気化するように動作可能であるように構成されている。
【0012】
そのような特徴を含む装置は、以後、まとめて「本発明の装置」と称される。それらはまた、本明細書において「吸入装置」とも呼ばれる場合がある。
【0013】
我々は、本発明の装置が、制御可能な量の送達可能な薬剤を吸入を介して対象に受け取らせるように、エアロゾルまたは蒸気(すなわち、気体)の形態で送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)の放出を提供することを有利に見出した。送達可能な薬剤は、快楽効果を提供するために個体に送達され得る物質(または物質の混合物)である。本発明の実施形態では、送達可能な薬剤は、典型的には、刺激薬(例えば、ニコチン)である。
【0014】
担体材料中の気孔のサイズは、担体材料が、周囲条件下において、最小の損失で長期間にわたり十分な量の送達可能な薬剤を効果的に貯蔵できるように選択されるべきである。これは、典型的には、少なくとも10%の気孔率を有する担体材料を使用して達成することができる。
【0015】
典型的には、本発明の吸入装置に使用される担体材料には高い気孔率が要求される。本発明で使用される担体材料には、約10体積%の最小気孔率が好ましい。特定の実施形態では、担体材料は約10%~約90%、例えば約20%~約70%(より好ましくは約30%~約60%)の気孔率を有する。より強い材料は、より高い気孔率を有するのに好適であり得る。例えば、約10%~約90%、好ましくは約30%~約80%の範囲の気孔率を有する金属は、使用に特に好適であり得る。担体材料がセラミック材料またはジオポリマー材料をベースにしている実施形態では、気孔率は、約10%~約90%、好ましくは約30%~約70%、より好ましくは約30%~約60%であり得る。担体材料の気孔率の制御は、これが、送達可能な薬剤の使用者への制御された送達が達成され得ることを確実にするため、重要である。
【0016】
担体材料中の気孔サイズの制御は、本発明の装置の制御された放出特性を向上するためにも望ましい。担体材料の気孔サイズ(例えば、平均内部寸法)は、担体材料を弱くしすぎないように十分に小さく、気孔が送達可能な薬剤を受容できることを確実にするように十分に大きくあるべきである。一実施形態では、平均気孔サイズは約500μm以下であり、好ましくは約200μm未満である。平均気孔サイズは、0.5nmと小さくてもよい(the Science of Concrete(http://iti.northwestern.edu/cement/monograph/Monograph7_2.html)に記載されている、いわゆる「マイクロ孔」の場合)。より小さい寸法の空隙は、一般的に、層間空間として分類される。硬化セメントの典型的な気孔サイズ分布は、0.5nm(またはできる限りそれ以下)の小さなものから直径約10μmまで広がる広い範囲を包含する。10nm~10μmの範囲のより大きな気孔は、セメント粒間の未充填の残留空間であり、毛管孔隙として定義することもできる。最も細密な気孔は、約0.5nm~10nmの範囲である。これらは、(例えば)ケイ酸カルシウム水和物ゲル相の内部気孔率を構成するため、しばしばゲル空隙と呼ばれる。一実施形態では、最小平均気孔サイズは約0.5nmであり得るが、約10nmであり得、好ましくは約0.1μmである。しかし、いくつかの実施形態では、最小気孔サイズは約0.2μm、例えば約0.25μmであり得る。したがって、好ましい実施形態では、固体多孔質の材料中の平均気孔サイズは、約0.1μm~約500μm、またはより好ましくは約0.2μm~約200μmである。平均気孔サイズは、当業者に既知の方法、例えば水銀圧入法、BET(Brunauer,Emmet,and Teller)法、及びN吸着法によって測定することができる。
【0017】
担体材料が多孔質構造全体にわたって空気を送ることができる必要はない。好ましい実施形態では、担体材料の気孔率及び/又は担体材料中の平均気孔サイズは、使用者が吸入中に担体材料の気孔を通して大量の空気を吸い込むことができないようなものである。
【0018】
同様に、特定の実施形態では、気孔サイズは、担体材料の気孔内の気流が大きく減少するようなものであってもよい。送達可能な薬剤は、薬剤を蒸発させ、担体材料の内側領域から周囲の空気中に拡散させることによって担体材料から放出される。周囲の空気は、担体材料の外面上に吸い込まれ、その上で気化された送達可能な薬剤と混合され、使用者に運ばれる。この文脈における用語「外面」の使用は、固体材料の最外面、例えば担体材料のペレット、ブロック、または円盤の外面を指す。そのような輸送メカニズムは、約100μm以下(例えば、約25μm以下)のような小さな平均気孔サイズを有する担体材料にとって特に重要である。
【0019】
好ましい実施形態では、担体材料は、約10%~約90%(例えば、約10%~約70%)の気孔率を有し、担体材料の平均気孔サイズは、約0.1μm~約500μmである。さらに好ましい実施形態では、担体材料は約20%~約70%の気孔率を有し、担体材料の平均気孔サイズは約0.2μm~約200μmである。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、担体材料は、高い機械的強度(例えば、圧縮強度)を有する。この点に関して、「高い機械的強度」の材料によって、約1重量キログラム毎平方センチメートル(0.098MPa)、例えば約5重量キログラム毎平方センチメートル(0.49MPa)、例えば約7.5重量キログラム毎平方センチメートル、例えば約10.0重量キログラム毎平方センチメートル、好ましくは約15重量キログラム毎平方センチメートル、より好ましくは約20重量キログラム毎平方センチメートル、例えば約50重量キログラム毎平方センチメートル、特に約100重量キログラム毎平方センチメートル、またはさらに約125重量キログラム毎平方センチメートル(12.25 MPa)の力が、当業者に既知の所定の機械的強度試験技術を使用して(例えば、Instronによって製造されたものなどの好適な器具を用いる、いわゆる「圧縮試験」または「圧裂引張試験」(試料を圧縮し、様々な荷重での変形を記録し、圧縮応力及びひずみを計算し、弾性限度、比例限度、降伏点、降伏強度、及び(いくつかの素材にとっては)圧縮強度の判定に使用される応力-ひずみ図としてプロットする「Instron試験」)を使用して)適用されるとき、我々は担体材料の気孔ネットワーク構造がその全体的な統合性(例えば、形状、サイズ、気孔率など)を維持することも含める。また、非常に高い機械的強度を有する材料は、適切な量の送達可能な薬剤をその中に組み込むことができるには不十分な気孔率を有することがあるので、機械的強度は、典型的には、約2040重量キログラム毎平方センチメートル(200MPa)以下である。したがって、実施形態では、機械的強度は約200MPa未満、好ましくは約100MPa未満である。
【0021】
特に好ましい担体材料は、担体材料の気孔を通る著しい量の空気の伝達が使用者による吸入によって達成され得ないような、気孔のサイズ及び相互接続性があるものである。これにより、健常な成人は、約20秒の期間中に平均的な人の吸息能力(例えば、約3リットル)に対応する量を担体材料を通して吸入することができないことを意味する。このような担体材料は、典型的には、50%以下の気孔率及び/又は約100μmを超えない平均気孔サイズを有するが、そのような材料は、平均気孔サイズがより小さい場合にはより高い気孔率を有することができ、逆もまた同様である。したがって、特定の実施形態では、担体材料は、最大50%(例えば、約10%~約50%)の気孔率及び最大約100μm(例えば、約0.1μm~約100μm)の平均気孔サイズを有する。さらなる実施形態では、担体材料は、最大50%(例えば、約10%~約50%)の気孔率及び最大約50μm(例えば、約0.1μm~約50μm)の平均気孔サイズを有する。本明細書に記載の全ての実施形態において、気孔は、好ましくは、送達可能な薬剤を担体材料の内側領域(すなわち、担体材料の外面から遠位に位置する領域)から放出させるように相互連結される。しかし、担体材料は、送達可能な薬剤の十分な量(例えば、喫煙者が単一のタバコから受け取るものと同等の量のニコチン)を使用前にそれらの気孔に含有させることができるように、少なくとも外部領域において十分な気孔率を有するべきである。
【0022】
本発明の一実施形態では、送達可能な薬剤は、主に担体材料の気孔内に位置する。「主に担体材料の気孔内」という語句の使用により、少なくとも50重量%の装置中の送達可能な薬剤が担体材料の気孔内に位置することが意図される。本発明の特定の実施形態では、少なくとも75重量%(または気体については少なくとも75体積%)の装置中の送達可能な薬剤が担体材料の気孔内に位置する。好ましい実施形態では、少なくとも90重量%(または少なくとも90体積%)の装置中の送達可能な薬剤が担体材料の気孔内に位置する。送達可能な薬剤を担体材料の気孔内に主としてまたは本質的に完全に位置付けることにより、使用中に気化されて使用者に送達される送達可能な薬剤の量に対してより大きな制御を達成することができる。特定の実施形態では、装置は、担体材料から分離した、送達可能な薬剤の別個のリザーバを備えない。すなわち、基本的に全ての送達可能な薬剤が担体材料に関連して位置付けられるか、または好ましくは基本的に全ての送達可能な薬剤が担体材料の気孔内に位置付けられる。
【0023】
また、本発明の装置に使用される担体材料は、装置が送達可能な薬剤の追加のリザーバを含む必要がないように、使用中に十分な量の送達可能な薬剤を貯蔵及び放出できることが好ましい。すなわち、好ましい実施形態では、装置は、使用前に担体材料に付随する(すなわち、その気孔内に主に位置付けられる)以外の送達可能な薬剤の貯蔵部を含まない。
【0024】
多孔質担体材料は、典型的には、開気孔及び閉気孔の両方を含有する。用語「開気孔」は、外部環境に対して開いている気孔(例えば、材料内の空隙)を指し、これらの気孔が空であるような場合には、環境中の気体がこれらの気孔に出入りすることができる。そのような気孔は、一般的に、個々の担体材料粒子の表面またはその近傍に位置する。用語「閉気孔」は、外部表面から離れた担体材料の粒子内に位置し、外部環境と自由に交換することができない材料(例えば、気体)を含有し得る気孔を指す。
【0025】
本発明の一実施形態では、多孔質担体材料の気孔は、送達可能な薬剤で飽和されている。送達可能な薬剤が、本明細書の他の箇所で記述された1つ以上の追加物質(例えば、蒸発促進剤、香料、味増強剤など)を含有する混合物の一部として存在する装置では、多孔質担体材料の気孔は、上記混合物で飽和され得る。この文脈において、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)で飽和される気孔は、少なくとも開気孔を含む。担体材料中に存在する閉気孔は、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)を含んでも含まなくてもよい。閉気孔が送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)で飽和される必要はない。用語「飽和される」を使用することにより、気孔(例えば、少なくとも開気孔)は、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)で主に充填され(例えば、実質的に完全に充填され)、好ましくは送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)のみを主に含有することが意図される。これらの気孔は、最小限の量の空き空間(例えば、大気気体または送達可能な薬剤以外の材料によって占有される空間)を含有するべきである。疑義を避けるために、本発明の装置は、複数の送達可能な薬剤を含有することができ、基本的に送達可能な薬剤のみを含有する気孔に対する本明細書における言及は、基本的に複数の送達可能な薬剤のみを含有する気孔も指す。
【0026】
好ましい実施形態では、多孔質担体材料の開気孔の空洞体積の少なくとも約70%が、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)で満たされる。さらなる実施形態では、多孔質担体材料の開気孔の体積の少なくとも約90%(例えば、少なくとも約95%)が、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)で満たされる。
【0027】
本発明の装置は、少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料を含み、送達可能な薬剤の少なくとも一部が上記担体材料の気孔内に位置する。装置はさらに、担体材料を加熱し、それにより送達可能な薬剤を気化するように動作可能であるように構成されている。本明細書に記載の担体材料及び送達可能な薬剤は、1以上の物質をエアロゾルまたは蒸気(すなわち、気体)の形態で使用者に送達するように構成された任意の従来の吸入装置に使用することができる。このような装置は、当業者には既知であり、例えば、US2014/0014126に記載されているような「e-Cigs」として知られている電子タバコや、例えば、US4,303,083に記載されているような他の吸入装置を含む。
【0028】
吸入装置はまた、本明細書に記載の担体材料及び送達可能な薬剤と共にのみ使用することができるように構築することもできる。これにはいくつかの方法があり、例えば、担体材料を装置によって加熱するために、特定の3次元形状を必要とする交換可能なカートリッジ(本明細書の他の箇所に記載されたものなど)を確保することによって、または導電性材料(例えば鉄粒子)を誘導加熱の目的のために担体材料内に組み込むことによって、達成され得る。追加の方法は当業者に既知であろう。このような装置は、使用者が他の装置でこれらの担体材料を使用することが非常に困難であり、そのようにする場合、吸入される送達可能な薬剤の量に対していくらかの制御を失うので、特に有用である。
【0029】
本発明の一実施形態では、吸入される物質(すなわち、送達可能な薬剤)を含有する担体材料は、装置の外面に位置する開口部(例えば、マウスピース)と気体連絡して装置内に位置する。使用時に、担体材料内の送達可能な薬剤が気化され、その後、蒸気は開口部に流れ、使用者によって(例えば、マウスピースを介して)受け取られる。
【0030】
装置内の蒸気の移動は、典型的には、使用者がマウスピースで吸入し、それによって吸入装置から気体を吸い込むことによって達成される。装置はまた、送達可能な薬剤を含有する担体材料と上記第1の開口部(例えば、マウスピース)との両方に気体連絡している第2の開口部を含有し得る。この構成は、使用者に吸入装置の内部領域を通して空気を吸い込ませ、それにより、装置内で発生した後に気化された材料の使用者への送達を容易にする。
【0031】
本発明の装置において、吸入される物質(すなわち、送達可能な薬剤)は、典型的には、周囲条件下で固体、液体、または気体である。純粋なニコチンは、典型的には周囲条件下で液体である。吸入装置は、吸入される物質(例えば、固体もしくは液体の形態、または溶解もしくは懸濁した気体)の供給源と、上記物質が揮発され得る手段とを共に含む。好適な手段は、同じく存在する送達可能な薬剤を気化するために、担体材料に熱エネルギーを直接送達することができる任意の熱源を含む。それにより、送達可能な薬剤は、エアロゾルまたは気体(すなわち、蒸気)の形態で放出される。気化された材料は、次いで、典型的には使用者が前述の蒸気を吸入することによって、使用者に送達される。担体材料を加熱するために使用され得る好適な加熱機器は、当業者に既知であろう。
【0032】
一実施形態では、担体材料を炎によって直接加熱することができる。そのような実施形態では、装置は、担体材料を加熱するために点火することができる可燃性気体の供給源を含む。
【0033】
好ましい実施形態では、装置は、担体材料を加熱し、それにより担体材料の気孔内に位置する送達可能な薬剤の少なくとも一部を気化するように動作可能な加熱素子(例えば、電気加熱素子)を備える。例えば、加熱素子は、電流が流れるときに有効量の熱を放出する抵抗加熱器(例えば、導線または加熱プレートの形態)であってもよい。誘導加熱によって加熱することもできる。これは、電磁石を用いた誘導によって、同様に、加熱され得る加熱素子(例えば、金属物体または他の導電性構造)に担体材料を近接して位置することによって達成され得る。
【0034】
さらなる実施形態では、加熱素子は、担体材料の近位に(すなわち、近接して、または好ましくは直接隣接して)位置する。これにより、加熱素子が担体材料に十分に接近して配置され、加熱素子が担体材料を直接加熱して送達可能な薬剤を気化させることを意味する。加熱素子は、担体材料と直接接触していてもよく、さらに、担体材料の中に緊密に混合されていてもよい。このような加熱素子の例は、加熱素子が加熱コイルである加熱素子である。上記コイルは、担体材料のブロックまたはペレットの外壁の周りに巻かれてもよく、または担体材料の塊内に埋め込まれてもよい。埋め込みは、典型的には、本明細書の他の箇所に記載されているように、加熱素子を担体材料前駆体物質の混合物に組み込み、その混合物を硬化(curing)またはハードニングする(hardening)ことによって達成される。本発明の装置に使用される担体材料は、劣化することなく、かつ使用者に不快な味を生じさせることなく、直接(すなわち、加熱素子に由来する高温気体流によってではなく)加熱することができる。別の実施形態では、加熱素子は担体材料に混合されず、担体材料に隣接して、または遠位に位置する。このような実施形態では、加熱素子は空気を加熱するために使用され得て、次いで、空気は、送達可能な薬剤を含有する担体材料の上及び/又は中を流すことができ、担体材料の気孔内に位置する送達可能な薬剤の少なくとも一部を気化する。
【0035】
誘導加熱を用いて担体材料及び送達可能な薬剤を加熱するシステムでは、典型的には、金属物体または他の導電性構造が、担体材料及び送達可能な薬剤と密接に関連する加熱素子として存在することが必要である。好適な導電性材料(例えば、鉄または銅)の離散粒子(例えば、球または顆粒)を、加熱プロセスを助けるために担体材料全体にわたって分散させることができる。このようなシステムの使用は、装置に担体材料の全体積を迅速かつ均一に非常に素早く加熱させ、それにより放出される送達可能な薬剤の量がより良好に制御され、予測可能であることを確実にする。好適な導電性材料は、他の好適な形状及び幾何学的形状で提供されてもよく、例えば、一連の棒、円盤、もしくはプレートとして、または担体材料及び送達可能な薬剤がその中に位置し得るメッシュもしくは3次元ネットワークとして提供され得る。導電性材料が、担体(例えば、小粒子、棒、またはメッシュなど)全体にわたって分散している場合、典型的には、存在する導電性材料の量は、担体材料が全体にわたって迅速かつ完全に加熱され得ることを確実にするのに十分であり、セラミック担体及びその内容物の有効性への妨害を避けるために、量は十分に少なくなければならない。典型的には、担体材料中に存在する導電性材料(すなわち、加熱素子)の量は、硬化セメントの機械的特性を著しく減少させることなく、導電性材料及び担体材料の全重量に対して40重量%と多くてもよい。好ましくは、担体材料中に存在する導電性材料の量は、導電性材料及び担体材料の全重量に対して20重量%以下であろう。担体材料が、少数(例えば、5未満、好ましくは1つ)のより大きな導電性塊に接触して形成される場合、加熱素子として存在する導電性材料の相対量ははるかにより多くあり得、導電性材料及び担体材料の全重量に対して潜在的に最大70重量%(例えば、最大50重量%)である。この点に関して、本明細書の他の箇所に記載されている3D印刷または発泡金属形成を含む、当業者に既知である任意の従来の方法によって、3次元ネットワークを得ることができる。
【0036】
導電性材料は、鉄のような強磁性(またはフェリ磁性)材料を含むか、またはそれからなることもできる。このような磁性材料の存在は、磁性材料内の磁気ヒステリシス損失により追加の熱が発生するため、誘導加熱を用いて達成される加熱効果をさらに増強することができる。誘導加熱は、従来の電子タバコに使用される抵抗加熱器と比較して、一般的に、担体材料のより速い加熱を提供することができる。
【0037】
誘導加熱を意図していないシステムであっても、(例えば、粒子の形態の)導電性材料を担体材料と混合することもできる。担体材料が加熱される方法にかかわらず、導電性材料は、担体材料全体にわたる熱伝導の速度及び均質性を増加させるのに役立ち、それにより、送達可能な薬剤の蒸発速度及び予測可能性を向上させる。
【0038】
担体材料は、吸入装置内に位置する外部ケーシング内に収容することができる。例えば、担体材料は、装置が使用されていないときに担体材料及び送達可能な薬剤を貯蔵することができる熱伝導性材料(例えば、アルミニウムまたは鋼などの金属)で形成されたケーシング内に収容されてもよい。そのような実施形態では、加熱素子は、ケーシングの外面と直接熱接触していてもよい。
【0039】
あるいは、ケーシングは、例えば以下に定義するようなセラミックまたはジオポリマー材料であってもよい。好ましくは、ケーシングは、その気孔内にいずれの送達可能な薬剤も含有しないセラミック材料(本明細書に記載のセラミック担体と同じか、または異なる)である。そのようなセラミックケーシングは、担体材料及びその中に含有される送達可能な薬剤に断熱性を提供する。セラミックケーシングは、誘導加熱を用いて担体材料を加熱する本発明の装置において特に有用である。これらのシステムでは、ケーシングは、加熱素子(例えば、導電性材料の粒子)を含有する担体材料の貯蔵部として作用し、交流磁場源(例えば、導電性コイル)及び高温に敏感であり得る吸入装置の他の構成要素から加熱素子を分離する。
【0040】
さらなる実施形態では、加熱素子の一部は、担体材料の内部に位置してもよい。例えば、加熱素子の一部または全部は、担体材料によって少なくとも部分的に取り囲まれていてもよい。そのような装置では、担体材料は、加熱素子の形状と相補的に成形される。すなわち、担体材料の形状は、加熱素子と担体材料との間の密接な関連を容易にするために、加熱素子の形状に適合する。これは、加熱素子と担体材料との間に比較的高い関連領域が存在することを確実にする。このように装置を構築することにより、加熱素子から担体材料へのより迅速かつ効率的な熱伝達が可能になり、送達可能な薬剤の放出を制御することをさらに助ける。「放出の制御」は、使用中の装置からの送達可能な薬剤の放出総量及び/又は放出速度の制御を指し得る。
【0041】
担体材料は、担体材料が加熱素子の形状と相補的に成形されることを確実にするために、その場で、すなわち加熱素子の存在下で製造することができる。このような担体材料の形成は、担体材料がペーストから形成される場合に達成され得る。上記ペーストは、加熱素子(例えば、コイル、グリッド、または直線状ワイヤに成形されてもよい)に適用され、次に硬化されることが可能である。あるいは、担体材料は、特定の加熱素子の設計に適合するように予め形成された固体として提供されてもよい。例えば、担体材料は、吸入装置が組み立てられると加熱素子が位置し得る1つ以上の空洞(例えば、円筒形のボア)を任意で含有する材料のブロックとして提供され得る。あるいは、担体材料は、後日に吸入装置内に組み込まれることができるように、型に適用され、硬化されることが可能で、次いで型から取り外されるペーストから形成され得る。型は、担体材料が特定の加熱素子の設計を補完する形態(すなわち、形状)で凝固するように成形される。担体材料が、交換可能なカートリッジ(以下に記載)の構成要素として提供される実施形態では、標準化された形状を有する、担体材料の予め形成された単位を、それらのカートリッジに使用することができる。化学結合されたセラミック及びジオポリマーのような比較的低温(例えば、400℃未満)で形成され得る担体材料は、未硬化の担体材料混合物の成形可能な特性のために、予め形成された単位の製造に特に適している。
【0042】
化学結合されたセラミック及びジオポリマーのような比較的低温(例えば、400℃未満)で形成され得る担体材料は、また、誘導加熱システムでの使用に特に適している。導電性材料(それが離散粒子または他の構造(複数可)の形態のどちらか)は、担体材料が硬化(hardened)または硬化(cured)する前に導電性材料を導入することによって、担体材料及び送達可能な薬剤の混合物全体にわたって散在することができる。担体材料(またはその前駆体)、送達可能な薬剤、及び導電性材料を含む複合混合物は、典型的には、導電性材料を添加した後に任意の所望の形状にかたどることができるペーストである。次いで、複合物は、導電性材料を溶融する可能性のある高温を使用することなく硬化させることができる。逆に、従来の焼結プロセスは、1000℃を超える温度を伴い、多くの金属を溶融させる可能性がある。
【0043】
あるいは、導電性材料は、3D印刷を含む方法によって得ることができる金属の3Dネットワークであり得る。担体材料(またはその前駆体)、送達可能な薬剤、及び導電性材料を含む複合混合物は、最初に金属の3Dネットワークを調製し、次いで、セラミック担体前駆体(複数可)及び送達可能な薬剤の両方を含有する型込可能なセラミック担体前駆体ペーストを組み込むことによって、得ることができる。
【0044】
ある実施形態では、装置は再充填可能である。一例では、使用後、すなわち装置内の送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)の貯蔵が部分的にまたは完全に枯渇したとき、装置を補充するために、送達可能な薬剤のさらなる供給を担体材料の気孔に組み込むことができる。これは、完全にまたは部分的に使い尽くされた担体材料を、定められた期間、送達可能な薬剤を含有する外部リザーバに流体接触させることによって達成され得る。そのような外部リザーバは、好ましくは、各再充填の間に装置とは別個に貯蔵される送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含む材料)の備蓄として提供される。
【0045】
あるいは、担体材料及び送達可能な薬剤は、交換可能なカートリッジ内で共に提供されてもよい。そのようなカートリッジは、本明細書に記載の本発明の吸入装置での使用に好適であるべきである。そのようなシステムでは、装置内の送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)の貯蔵は、吸入装置から使用済みカートリッジを取り外し、それを満杯のカートリッジ(すなわち、所望量の送達可能薬剤を含有するカートリッジ)で交換することによって、容易に補充することができる。送達可能な薬剤を含有するカートリッジの交換を可能にする吸入装置も、再充填可能な装置である。
【0046】
したがって、本発明の第2の態様によれば、本明細書に記載の吸入装置での使用に好適なカートリッジが提供され、カートリッジは、
(i)少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料と、
(ii)担体材料の気孔内に位置する、上記に定義された送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)と、を備える。
【0047】
本発明の装置はニコチンの送達に使用することが意図されているので、ニコチンを含有し、これらの装置と共に使用するのに好適である、(例えば、前述の交換可能なカートリッジの形態の、または後述のブロック、ペレット、錠剤、円盤もしくはスティックの形態の)個々の単位が、末端使用者に提供され得る。したがって、これらの個々の単位は、本発明の第2の態様である「カートリッジ」の実施形態を表す。
【0048】
個々の単位自体は、吸入装置とは別個に、または吸入装置と共に、末端使用者に供給されてもよい。各個々の単位は、所望の回数の用量を使用者に提供するのに十分な量のニコチンを含有し、したがって、「単位用量製品」または「制御用量製品」として記載され得る。ニコチンは、本発明の装置に使用される場合に、各単位(すなわち、各ペレット、錠剤など)が、複数の用量(例えば、少なくとも5、少なくとも20、または少なくとも100用量)を提供するのに十分な量のニコチンを含有する、制御用量製品で供給されることができる。複数の用量を含有する制御用量製品については、これらの単位は、使用者によって時間の経過とともに装置内で複数回加熱され、各加熱は、別個の用量のニコチンを使用者に送達することを容易にする。ニコチンの単一の「用量」は、例えば、喫煙者が単一の従来のタバコから受け取るニコチンの量と同等のニコチンの量、またはそれらの一部(例えば、約10分の1または約5分の1)に対応し得る。
【0049】
さらなる実施形態では、ユニット製品(例えば、交換可能なカートリッジ、単位用量製品、または制御用量製品)が提供され、
(i)少なくとも10%の気孔率を有する固体多孔質の担体材料と、
(ii)担体材料の気孔内に位置する、上記に定義された送達可能な薬剤と、
(iii)担体材料全体にわたって分布された導電性材料(例えば、金属)の粒子と、を備える。
【0050】
そのような実施形態では、ユニット製品は、本明細書に記載されている吸入装置内の使用済みカートリッジの交換として使用することができる。担体材料、送達可能な薬剤、及び導電性材料は、各々、本明細書の他の箇所に記載されているものであってもよい。そのようなユニット製品は、定められた量の送達可能な薬剤、例えば、十分な量の送達可能な薬剤を、制御用量(例えば、約1単位用量以下)が、そのユニット製品が効果的に使い尽くされる前に、吸入により受容者に送達されるのを可能にするため、各々含有し得る。
【0051】
担体材料及び送達可能な薬剤が、交換可能なカートリッジ、単位用量製品、制御用量製品などと共に提供される実施形態では、ユニット製品は、交換用ユニット製品(例えば、補充カートリッジまたは単位用量製品もしくは制御用量製品)がその場所に導入されるために、使用者によって装置から容易に取り外され得るように構築され得る。
【0052】
一実施形態では、交換用カートリッジ、単位用量製品、制御用量製品などは、担体及び送達可能な薬剤が、カートリッジの挿入後に装置内の加熱素子に近接して配置されるように構成されてもよく、同時に、使用者が装置の起動前のいずれの時点でも送達可能な薬剤と物理的に接触することができないように構成されている。これは、装置を補充するときに、送達可能な薬剤への使用者の意図しない曝露リスクを減少するのに役立ち得る。あるいは、またはさらに、交換用カートリッジ、単位用量製品、制御用量製品などは、複合担体材料、すなわち、担体材料(例えば、化学結合されたセラミックまたはジオポリマー材料)、送達可能な薬剤、及び導電性材料の粒子を含む素材を含有し得る。
【0053】
交換用カートリッジは、送達可能な薬剤への使用者の意図しない曝露を減少するため、または装置への貯蔵中または挿入中の送達可能な薬剤の意図しない損失を最小限に抑えるため、以前に記載したケーシング(例えば、担体材料とは異なる材料、好ましくは金属、合金、セラミック、またはジオポリマーでできたシェル)内に、担体材料と送達可能な薬剤とを共に含有し得る。
【0054】
代替的な実施形態では、ユニット製品(例えば、カートリッジ)は、基本的に担体材料及び送達可能な薬剤から構成され得、任意で導電性材料の粒子及び/又は本明細書の他の箇所で記述された、存在し得る1つ以上の追加物質(例えば、当業者に既知の蒸発促進剤、香料、味増強剤、充填剤など)と共に、構成され得る。例えば、カートリッジは、装置の機能に必要とされるいずれの他の素子(担体材料及び送達可能な薬剤の他に)を含有していなくてもよい。
【0055】
吸入装置は、使用後に、使用者が、使用済み担体材料を装置から取り外し、送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)の満杯の供給を含有する担体材料の交換用単位を挿入することが、単に必要であるように構成されてもよい。そのような交換用単位は、送達可能な薬剤を含有する担体材料のブロック、円盤、錠剤、スティック、またはペレットとして提供され得る。そのような交換用単位は、各単位を真空包装し、密封し、それぞれに取り外して装置に挿入することができる「ブリスターパック」として商業的に知られている、一般的に使用されている包装で提供され得る。そのような交換用単位の提供は、無駄を最小限に抑え、かつ予備のカートリッジが小さく、使用者が便利に貯蔵できることを確実にする。
【0056】
カートリッジシステムの使用は、使用者に送達される送達可能な薬剤の量のより大きな制御を可能にすることができる。例えば、各カートリッジは、送達可能な薬剤の定められた量(例えば、喫煙者が単一の従来のタバコから受け取る量、またはそれらの一部(例えば、約10分の1または約5分の1)以下)を使用者に提供するのに十分な量の送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)を含有し得る。
【0057】
有利なことに、本発明の吸入装置は、2つ以上の担体材料又は異なる領域が異なる平均気孔サイズを有する担体材料を含有することができる。これにより、1つ以上の送達可能な薬剤を複数の速度で放出するように吸入装置を構成することが可能になる。例えば、そのような装置は、制御された量のニコチンの初期の迅速な放出に続き、制御された量のそれらのより遅い持続した放出を、使用者の必要に応じて提供することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、担体材料は、1つ以上のセラミック材料、1つ以上のジオポリマー材料、または1つ以上の金属をベースにしている。担体材料は、1つ以上の化学結合されたセラミック材料または1つ以上のジオポリマー材料をベースにしていることが特に好ましい。
【0059】
例えば、担体材料は、1つ以上の焼結セラミック材料をベースにすることができる。
【0060】
用語「セラミック」は、しばしば加熱作用を含む何らかの形態の硬化プロセスによって形成される及び/又は加工可能である、金属元素と非金属元素との間に形成される化合物、しばしば酸化物、窒化物、及び炭化物を含むと理解されるであろう。この点に関して、粘土材料、セメント、及びガラスは、セラミックの定義に含まれる(Callister,“Material Science and Engineering,An Introduction”John Wiley & Sons,7th edition(2007))。
【0061】
セラミックは、焼結セラミック(例えば、カオリン、メタカオリン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物)を含むことができる。
【0062】
用いられるセラミック材料は、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム)をベースにすることが好ましく、または金属(または半金属もしくは非金属)の酸化物をベースにするセラミックは、それらがさらなる酸化を受けることができないので高温で良好な安定性を呈するため、特に有用である。
【0063】
セラミック材料は、また、スカンジウム、セリウム、イットリウム、ホウ素、または好ましくは、ケイ素、アルミニウム、炭素、チタン、ジルコニウムもしくはタンタル、またはそれらの組み合わせのいずれかの元素の酸化物及び/若しくは複酸化物、並びに/又は窒化物及び/若しくは炭化物であり得る。
【0064】
好ましい実施形態では、セラミック材料は、ケイ素、アルミニウム、炭素、チタン、ジルコニウムもしくはタンタル、またはそれらの組み合わせのいずれかの元素の酸化物、窒化物、及び/又は炭化物である。記述され得る特定の材料としては、酸化アルミニウム、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
焼結セラミック(酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、及び/又は窒化ケイ素から形成される材料を含む)は、当業者に周知である。そのような焼結セラミックは、送達可能な薬剤がニコチンである吸入装置の担体材料として特に有用である。
【0066】
焼結が行われ、セラミックが形成された後、焼結セラミックに送達可能な薬剤が装填されてもよい。装填は、典型的には、送達可能な薬剤を含有する液体中に担体材料を浸漬することによって達成される。浸漬に関連する装填効率は、真空装填技術を用いて向上することができる。毛管力を介して送達可能な薬剤を担体材料の気孔内に吸い込むことを容易にする他の方法も使用することができる。例えば、送達可能な薬剤は、噴霧、はけ塗り、ローラ塗り、ディップコーティング、粉体塗装、ミスティングによってセラミックに付加されてもよい。
【0067】
担体材料中の気孔サイズは、当業者に既知の様々な技術によって制御することができる。セラミック(及びジオポリマー)の場合、気孔のサイズの制御は、典型的には、担体材料のネットワーク構造を製造するプロセス中に達成される。多孔質足場の製造について知られている方法の例は、Subia B. et al.(2010)Biomaterial Scaffold Fabrication Techniques for Potential Tissue Engineering Applications,Tissue Engineering,Daniel Eberli(Ed.)に開示されている。
【0068】
本発明で使用されるセラミック担体材料と共に使用するのに好適な特定の方法は、担体材料の形成中に犠牲相の使用を伴うポロゲン浸出法である。気孔形成材料は、最終的な担体材料のネットワーク内の気孔の形成を助けるために、担体材料の形成中に反応混合物の一部として含まれてもよい。気孔形成材料は、例えば、油、液体(例えば、水)、糖、マンニトールなどを含む。気孔形成材料は、その後、例えば、担体材料が硬化または焼結プロセス中に加熱されたときにそれを燃焼し切ることによって、または適切な溶媒、例えば水を用いてそれを溶解し切ることによって、担体材料から除去することができる。
【0069】
典型的には焼結プロセスによって製造されるセラミック材料では、焼結プロセスが部分的にしか完了しないことを確実にすることによって、最終的な気孔率を制御することもできる。焼結は、互いに接触している粗い粒子の塊を加熱により高密度の塊へと固化することとして広く定義される。これは、比表面積及び気孔率の減少ならびに密度の増加をもたらす。一般的に、焼結は3段階で起こる。初期段階の間に、接触焼結及び緻密化焼結によって個々の粒子間の接触領域が形成される。中間段階では、隣接する粒子間の接触領域が成長し、多数の小さな粒子がより少数の大きな粒に交換される。開気孔の激しい収縮が粒界の間で起こり、これは気孔の幾何学的形状の変化と関連している。焼結の最終段階では、粒界及び格子拡散が支配的な物質輸送メカニズムである。緻密化が進むにつれてサイズが収縮し、隔離された閉気孔が形成される。
【0070】
所望のレベルの気孔率を達成するために、焼結セラミックの前駆体は、通常の焼結プロセス中の典型的な場合よりも低い温度で、より低い圧力で、またはより短い時間加熱することができ、それにより、はるかに大きなサイズの気孔を保持することを可能にする。最終的な製品の気孔率を制御するための別の方法は、特定の初期気孔率を有する未焼成体(すなわち、焼結される材料)を提供することを伴う。さらなる方法は、焼結プロセスの間に失われる、制御された量の犠牲材料を添加することを伴う。焼結セラミックの気孔率を制御するための好適な方法は、Journal of the European Ceramic Society,Vol.29,No.13,2009,2867-2872に開示されている。
【0071】
あるいは、担体材料は、1つ以上の化学結合されたセラミック材料をベースにすることができる。これらの一方または両方は、顆粒の形態で提供されてもよい。
【0072】
好適な化学結合されたセラミックとしては、非水和、部分的に水和、もしくは完全に水和されたセラミック、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
化学結合されたセラミックシステムの非限定的な例としては、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい化学組成物には、化学結合されたセラミックをベースにするものが含まれ、1つ以上の適切な前駆体物質の水和後、制御された量の水を消費してネットワークを形成する。
【0074】
利用可能な他の特定のシステムは、両方とも大量の水を消費する、アルミン酸塩及びケイ酸塩をベースにするものである。容易に入手可能な、結晶または非晶質状態のCA2、CA、CA3、及びC12A7、ならびにC2S及びC3Sなどの相(一般的なセメント用語により、C=CaO、A=Al、SiO=S)を使用することができる。アルミン酸カルシウム及び/又はケイ酸カルシウム相は、別個の相または相の混合物として使用することができる。非水和形態の上記の相は全て、水和されたときに担体材料中の結合相(セメント)として作用する。液体(水)対セメントの重量比は、典型的には0.2~0.5の範囲内、好ましくは0.3~0.4の範囲内である。
【0075】
この点に関して記述することができるさらなる材料としては、ケイ酸アルミニウム及び/又はケイ酸アルミニウム水和物(結晶または非晶質)などの粘土鉱物が挙げられる。非限定的な例としては、カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、セオライト、イライト、またはそれらの組み合わせ、好ましくはハロイサイトが挙げられる。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、多孔質固体は、自己硬化性セラミックから形成されるセラミック材料をベースにしている。自己硬化性セラミックの非限定的な例としては、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、及びアルミン酸カルシウムをベースにした材料が挙げられる。この点に関して記述することができる特定のセラミックとしては、アルファ-リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、CaOAl、CaO(SiO、CaO(SiOなどが挙げられる。
【0077】
用いられ得る他のセラミック材料としては、硫酸カルシウムなどの硫酸塩またはリン酸カルシウムなどのリン酸塩をベースにするものが挙げられる。このような物質の特定の例としては、アルファまたはベータ相硫酸カルシウム半水和物(最終生成物硫酸カルシウム二水和物)、アルカリ性または中性リン酸カルシウム(アパタイト)、及び酸性リン酸カルシウム(ブルシャイト)が含まれる。焼結されたセラミックと同様に、化学結合されたセラミックは、送達可能な薬剤を含有する液体にセラミック材料を浸漬することによって、または送達可能な薬剤を毛管力を介してセラミック材料の気孔内に吸い込むことを容易にする任意の他の方法(噴霧、はけ塗り、ローラ塗り、ディップコーティング、粉体塗装、ミスティングを含む)によって、装填され得る。
【0078】
体積平均モードでのレーザー回折(例えば、Malvern master size)によって測定した際、セラミック材料(例えば、ケイ酸アルミニウム)の粒径は、約500μm未満、好ましくは約100μm未満、より好ましくは約50μm未満、特に約20μm未満であり得る。より大きな粒径を有するセラミック材料の使用は、セメントのより良い取り扱いを可能にし得るが、より最適ではない硬化及び最終的な固体の強度の減少をもたらし得る。粒は、いずれの形状(例えば、球形、丸い形、針状、プレート状など)であってもよい。1μm未満の粒径を有する担体材料を本発明の装置に使用することができるが、(湿ったときに非常に粘稠なペーストが形成されるのを避けて)製造を助けるために好ましい粒径は少なくとも1μmであり、好ましくは約10μmの範囲にある。これらの粒径は、限定するものではないが、本明細書に記載の焼結及び化学結合されたセラミックの両方を含む、本発明の装置の文脈における全てのセラミックに適切である。粒は、いずれの形状(例えば、球形、丸い形、針状、プレート状など)であってもよい。疑義を避けるために、担体材料がジオポリマーから形成される場合、材料の粒径は、同様に約100μm未満、より好ましくは約50μm未満、特に約20μm未満であり得る。
【0079】
任意のセラミック前駆体粉末粒子の平均粒径は、約500μm未満、例えば約100μm未満、好ましくは約1μm~約30μmであり得る。これは水和を増強するためである。そのような前駆体材料は、水和中にナノサイズの微細構造に変換されてもよい。この反応は、前駆体材料の溶解と、繰り返されるその後の水(溶液)中でのナノサイズ水和物の析出と、それに際する非水和前駆体材料の残存とを伴う。この反応は、前駆体材料が変換されるまで、並びに/又は、液体及び/若しくは湿気中のHOはもちろん、時間及び温度を使用した部分的な水和によって決定された予め選択された気孔率が測定されるまで、順調に続く。
【0080】
化学結合されたセラミックは、ニコチンの担体材料としての使用に特に好適である。これらの担体材料は、比較的安価であり、製造が容易であり、熱を加えると揮発性の送達可能な薬剤の適切な放出を提供する。
【0081】
疑義を避けるために、多孔質固体材料は、例えば、焼結されたセラミックと化学的に結合されたセラミックの混合物を含む、複数のセラミック材料を含むことができる。
【0082】
化学結合されたセラミックの気孔サイズは、担体材料のネットワーク構造を製造するプロセス中に様々な技術によって制御することができる。本発明で使用される化学結合されたセラミック担体材料と共に使用するのに好適な特定の方法は、担体材料の形成中に犠牲相の使用を伴うポロゲン浸出法である。気孔形成材料は、最終的な担体材料のネットワーク内の気孔の形成を助けるために、担体材料の形成中に反応混合物の一部として含まれてもよい。気孔形成材料は、例えば、油、液体(例えば、水)、糖、マンニトールなどを含む。気孔形成材料は、その後、例えば、担体材料が硬化プロセス中に加熱されたときにそれを燃焼し切ることによって、または適切な溶媒を用いてそれを溶解し切ることによって、担体材料から除去することができる。溶解は、通常、装置の働きまたは使用者への悪影響に有害な影響を有し得る物質の残留量を残すことを避けるために水で達成される。
【0083】
発泡方法は、また、本明細書に記述の他の担体材料に並んで化学結合されたセラミックの気孔サイズを増加させるために使用されてもよい。このような方法は当業者には既知であり、より大きな気孔サイズを有する担体材料を形成するために特に有用である。
【0084】
あるいは、担体材料は、1つ以上のジオポリマー材料をベースにすることができる。
【0085】
用語「ジオポリマー」は、(好ましくは粉末の形態の)アルミノケイ酸塩前駆体材料が、水性アルカリ性液体(例えば、溶液)と好ましくはシリカ源の存在下で反応することによって形成され得る、合成または天然のアルミノケイ酸塩材料の種類から選択される任意の材料を含むかまたは意味すると当業者には理解されるであろう。
【0086】
用語「シリカ源」は、ケイ酸塩を含むSiOのような酸化ケイ素の任意の形態を含むと理解されるであろう。シリカは、ガラス、結晶、ゲル、エーロゲル、ヒュームドシリカ(または熱分解法シリカ)、及びコロイダルシリカ(例えば、Aerosil)を含むいくつかの形態で製造することができることを当業者は理解するだろう。
【0087】
好適なアルミノケイ酸塩前駆体材料は、典型的に(しかし必然ではなく)その特質において結晶であり、カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライト、好ましくは脱ヒドロキシル化ゼオライト、ハロイサイトまたはカオリン、より好ましくはメタカオリン(すなわち脱ヒドロキシル化カオリン)を含む。(例えば、カオリンの)脱ヒドロキシル化は、好ましくは、ヒドロキシル化アルミノケイ酸塩を400℃を超える温度で焼成(すなわち、加熱)することによって実施される。例えば、メタカオリンは、Stevenson and Sagoe-Crentsil in J.Mater.Sci.,40,2023(2005)及びZoulgami et al in Eur.Phys J.AP,19,173(2002)によって記載されたように、並びに/又は以下に記載されるように、調製され得る。脱ヒドロキシル化アルミノケイ酸塩は、シリカ源と、アルミナ源(例えば、Al)を含む蒸気との縮合によって製造することもできる。
【0088】
したがって、さらなる実施形態において、担体材料は、カオリン、ディッカイト、ハロイサイト、ナクライト、ゼオライト、イライト、脱ヒドロキシル化ゼオライト、脱ヒドロキシル化ハロイサイト及びメタカオリンからなる群より選択される材料などのアルミノケイ酸塩前駆体材料を水性アルカリ性液体と、任意でシリカ源の存在下で、反応させるプロセスによって得ることができる材料であり得る。
【0089】
前駆体物質は、また、Zheng et al in J.Materials Science,44,3991-3996(2009)に記載されている、アルミノケイ酸塩のナノメートルサイズの非晶質粉末(または部分的に結晶質)前駆体を典型的にもたらす、ゾル-ゲル法を用いて製造することができる。これは、硬化材料のより細密な微細構造をもたらす。(ゾル-ゲルルートのようなものも、また、上記に記載した化学結合されたセラミック材料のための前駆体物質の製造に使用することができる。)
【0090】
粉末の形態で提供される場合、アルミノケイ酸塩前駆体粒子の平均粒径は、約500μm未満、好ましくは約100μm未満、より好ましくは約30μm未満である。
【0091】
ジオポリマー材料の形成において、このような前駆体物質は、例えば、pH値が少なくとも約12、例えば少なくとも約13の値を有する水性アルカリ性液体に溶解され得る。水酸化物イオンの好適な源としては、アルカリまたはアルカリ土類金属(例えば、Ba、Mg、またはより好ましくはCa、または特にNaもしくはK、またはそれらの組み合わせ)水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)などの強無機塩基が挙げられる。水に対する金属カチオンのモル比は、約1:100~約10:1、好ましくは約1:20~約1:2で変化し得る。
【0092】
シリカ源(例えば、SiOのようなケイ酸塩)は、好ましくは、いくつかの手段によって反応混合物に添加される。例えば、水性アルカリ性液体は、しばしば水ガラスと呼ばれるもの、すなわちケイ酸ナトリウム溶液を形成するSiOを含むことができる。そのような場合、液体中の水に対するSiOの量は、好ましくは最大約2:1、より好ましくは最大約1:1、最も好ましくは最大約1:2である。水性液体は、また、任意でアルミン酸ナトリウムを含有してもよい。
【0093】
あるいは、ケイ酸塩(及び/又はアルミナ)を、任意で粉末状のアルミノケイ酸塩前駆体、好ましくはヒュームドシリカ(マイクロシリカ、AEROSIL(登録商標)シリカ)などに添加してもよい。添加され得る量は、好ましくは最大約30重量%、より好ましくは最大約5重量%のアルミノケイ酸塩前駆体である。
【0094】
この中間のアルカリ性混合物中に遊離水酸化物イオンが存在すると、源材料(複数可)からのアルミニウム原子及びケイ素原子の溶解が引き起こされる。ジオポリマー材料は、次いで、得られた混合物を硬化(set)(硬化(cure)または硬化(harden))させることで形成され得て、そのプロセスの間、源材料からのアルミニウム原子及びケイ素原子が再配向して硬質(及び少なくとも大部分は)非晶質のジオポリマー材料を形成する。硬化は、室温、高温、または減少された温度で、例えば周囲温度付近またはそのすぐ上(例えば、約20℃~約90℃、例えば約40℃)で実施することができる。硬化は、また、任意の雰囲気、湿度、または圧力(例えば、真空下またはその他の条件下)で実施することができる。得られた無機ポリマーネットワークは、一般的に、四面体Al3+サイト上の負電荷がアルカリ金属カチオンによって電荷均衡された高配位3次元アルミノケイ酸塩ゲルである。
【0095】
この点に関して、ジオポリマーをベースにした担体材料は、アルミノケイ酸塩前駆体を含む粉末と、水、上記に記載した水酸化物イオン源、及びシリカ源(例えば、ケイ酸塩)を含む水性液体(例えば、溶液)とを混合してペーストを形成することによって、形成され得る。液体対粉末の比は、好ましくは約0.2~約20(w/w)、より好ましくは約0.3~約10(w/w)である。ケイ酸カルシウム及びアルミン酸カルシウムも、アルミノケイ酸塩前駆体構成要素に添加することができる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、送達可能な薬剤は、担体材料ネットワーク内の気孔に共形成されて散在している。これは、担体材料を形成するためにどのようなプロセスが用いられても、送達可能な薬剤が散在している気孔も必ず形成しなければならないことを意味する。1つ以上の化学結合されたセラミック材料または1つ以上のジオポリマー材料をベースにしている担体材料は、焼結セラミックと対照的に、担体材料及びその気孔ネットワークを形成するプロセスが、非常に高い温度を必要としないような実施形態での使用に特に適している。
【0097】
したがって、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)は、例えばゾル-ゲルプロセスによる導入などの様々な技術によって、適切な液体(例えば、水性または有機溶媒)の存在下で、担体材料もしくはそれらの前駆体(複数可)の溶液としての、または例えば、粒子、顆粒、もしくはペレットのスラリー、ペースト、もしくはパテとしての、担体材料(例えば、セラミック、ジオポリマー、または金属)またはそれらの前駆体(複数可)と混合され得る。これには、送達可能な薬剤が残留する前述の気孔を含む持続した放出組成物を形成するための何らかの「硬化」プロセスが続く。このように形成される担体材料は、送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)が予め装填されていると言うことができる。
【0098】
そのような気孔は、それ自体、送達可能な薬剤(例えば、その粒子)を含有する固体ネットワーク内のチャネルまたは空隙の3次元ネットワークである。
【0099】
したがって、そのような気孔は、化学的相互作用(例えば、「結合」)によって、セラミックまたはジオポリマーのような、(それ自体が多孔質であってもよい(すなわち、「一次」気孔を含む)担体材料の一次粒子の表面間で形成される「二次気孔」で基本的にあり得る。そのような気孔は、例えば、物理的及び/又は化学的変換(部分的な溶解など)を引き起こす1つ以上の化学試薬へのそのような材料の曝露から、かつ、その気孔/空隙を誘発するそれらの表面(例えば乾燥、硬化などのいくつかの他の物理化学プロセスの結果としてそれ自体生じ得る)のその後の物理及び/又は化学結合の両方から、生じ得る。
【0100】
そのような場合、そのような化学試薬は、担体物質の調製中に、送達可能な薬剤(または送達可能な薬剤を含有する混合物)と共に混合され得る。しかし、そのような二次気孔は必ずしもこのように形成されず、担体材料の一次粒子の接合も物理的及び/又は機械的であり得るか、または、送達可能な薬剤の存在下で以前に記載した3次元の化学結合されたセラミックネットワークの製造の間に形成され得る。
【0101】
したがって、エアロゾルまたは蒸気の形態の送達可能な薬剤を使用者に送達するための装置が提供され、これは担体材料を含み、この担体材料は、セラミック材料の粒子を含む固体の連続的な3次元ネットワークであり、その粒子は共に結合されて二次気孔または空隙を形成し、送達可能な薬剤はその二次気孔または空隙内に存在する。
【0102】
あるいは、ネットワークが化学反応(例えば、重合、またはジオポリマーについて上記に記載したように)によって形成される場合、送達可能な薬剤は、関連する反応物を含む前駆混合物と共混合され、その後、3次元担体材料ネットワーク自体の形成の間に形成される気孔または空隙内に位置し得る。
【0103】
セラミック材料は、化学的に結合されたセラミックまたはジオポリマーをベースとするものであることが特に好ましく、これらの材料は、気孔ネットワークが担体中に形成される前にニコチンの装填を促進するのに特に適している。これは、同様に、製造中に担体に装填されるニコチンの量を容易に制御する効果的な方法を提案する。
【0104】
ジオポリマーの場合、気孔のサイズの制御は、典型的には、担体材料のネットワーク構造を製造するプロセス中に達成される。多孔質足場の製造について知られている方法の例は、Subia B. et al.(2010)Biomaterial Scaffold Fabrication Techniques for Potential Tissue Engineering Applications,Tissue Engineering,Daniel Eberli(Ed.)に開示されている。
【0105】
本発明で使用されるジオポリマー担体材料と共に使用するのに好適な特定の方法は、セラミック担体材料に関する上述のポロゲン浸出法である。多孔質ジオポリマー材料の形成に使用され得る気孔形成材料としては、例えば、油、液体(例えば、水)、糖、マンニトールなどが挙げられる。
【0106】
さらなる代案において、担体材料は、1つ以上の金属をベースとすることができる。
【0107】
用語「金属」の使用により、純金属及び合金(すなわち、混合物または2つ以上の金属)の両方が含まれる。担体材料として使用され得る好適な金属としては、本発明の装置に使用される加熱温度まで及びそれ以上で、例えば400℃以上、または好ましくは500℃以上で固体のままであるものが挙げられる。特定の金属担体材料としては、チタン、ニッケル、クロム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、モリブデン、白金、及びこれらの金属を含有する合金をベースにするものが挙げられる。いわゆる耐火金属も、耐熱性及び耐摩耗性の観点から使用することができる。
【0108】
この文脈において使用され得る具体的な純金属及び合金としては、真鍮、マンガン、モリブデン、ニッケル、白金、亜鉛が挙げられ、特に、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム合金、銅-ニッケル合金、鉄、鋼(例えば、ステンレス鋼)、アルミニウム、鉄-クロム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0109】
金属担体材料中の気孔サイズは、当業者に既知の様々な技術によって制御することができる。必要とされる気孔率を有する金属基材を形成するために使用され得る好適な方法の例としては、3次元印刷及び穿孔が挙げられる。多孔質固体の3D印刷は、所定の3D印刷機器を使用して達成することができ、この製造技術を使用して10μmと小さな気孔サイズを達成することができる。材料に気孔性を導入するためまたは材料の気孔率のレベルを増加するための穿孔方法は、当業者には既知である。このような方法は、材料の気孔サイズ及び全体的な気孔率レベルに対するより高い制御の度合いを提供するため、特に有利であり得る。そのような穿孔方法は、約100μmと小さく、潜在的により小さい平均サイズを有する気孔を形成するために使用されてもよい。
【0110】
また、内部気孔率は、熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing, HIP)に基づく気体膨張(または発泡)プロセスによって、金属構造(特に、金属構造が誘導加熱システムの導電性部分として存在する場合)において展開することもできる。典型的には20~40%の隔離された気孔率を有する多孔質体がこれらのプロセスによって得られる。気孔率は、例えば自己伝播型高温合成(SHS)を経るような反応性の高い多構成要素の粉末システムにおいて発泡が生じる場合に、はるかにより迅速に展開させることができる。コンパクト化された粉末混合物を反応点火温度まで局所的にまたは全体的に加熱することによって開始される高発熱反応は、粉末表面上の水和酸化物の気化及び粉末に溶解した気体の放出をもたらす。反応する粉末混合物は急速に熱くなり(大部分は水素)気泡を含有する液体を形成し、反応が完了すると、急速に冷え、気体を閉じ込めて発泡体を形成する。気体形成及び発泡膨張は、共に反応して反応温度を増加し、発泡体を安定化する微粒子を生成する、炭素(空気中で燃焼してCOを生成する)または発泡剤などの蒸気形成相の添加によって増大することができる。当業者に既知の他の好適な方法は、Andrew Kennedy(2012)Porous Metals and Metal Foams Made from Powders,Powder Metallurgy,Dr. Katsuyoshi Kondoh(Ed.)に開示されている。
【0111】
本明細書に記載の担体材料はいずれも、本発明の装置に使用することができる。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、セラミック材料が、
(i)ケイ素、アルミニウム、炭素、チタン、ジルコニウムもしくはタンタル、及びそれらの組み合わせのいずれかの元素の酸化物、窒化物、及び/又は炭化物と、
(ii)アルミノケイ酸塩前駆体材料を水性アルカリ性液体と反応させるプロセスによって得ることができる材料と、
(iii)リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、及びそれらの組み合わせと、
(iv)真鍮、マンガン、モリブデン、ニッケル、白金、亜鉛、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム合金、銅-ニッケル合金、鉄、鋼、アルミニウム、及び鉄-クロム-アルミニウム合金と、からなる群より選択される、上記に記載の装置に関する。
【0112】
上の(ii)及び(iii)に列挙される材料が特に好ましい。
【0113】
我々は、本発明の装置が、送達可能な薬剤が吸入を介して使用者に投与され得るように、エアロゾルまたは蒸気の形態で送達可能な薬剤の放出を提供することを有利に見出した。使用時に、吸入装置は送達可能な薬剤を、典型的には娯楽用に、使用者に吸入させる。
【0114】
送達可能な薬剤は、1つ以上の追加の構成要素を含む混合物の一部として装置内に提供されてもよい。担体材料が加熱されたときに送達可能な薬剤の揮発を促進するために、1つ以上の前述の追加の構成要素が存在してもよい。本発明の吸入装置では、担体材料は定められた気孔率を有し、これは使用者が受け取る送達可能な薬剤の送達量及び/又は送達速度の制御を助ける。
【0115】
したがって、送達可能な薬剤は、1つ以上の蒸発促進剤、すなわち送達可能な薬剤の蒸気の蒸気形成を増強する薬剤を含有する混合物として提供されてもよい。好適な蒸発促進剤としては、グリセリン、植物性グリセリン(VG)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0116】
しかし、本発明の装置は、潜在的に有毒であり得るか、または加熱プロセスの間に劣化して有毒な副生成物を形成し得る、上のような蒸発促進剤を必要とすることなく、送達可能な薬剤を使用者に送達する方法を有利に提供することができる。したがって、好ましい実施形態では、送達可能な薬剤は、単独で、または上記の蒸発促進剤のいずれも含有しない混合物のいずれかで(担体材料内で)提供される。
【0117】
別の実施形態では、送達可能な薬剤は、使用者にいずれの治療上の利益を提供することも意図しない1つ以上の追加物質を含有する混合物で提供されてもよい。一例として、上記追加物質は、製品の製造を助けるため、供給可能な薬剤の蒸発を助けるため、または使用者の経験を向上するために存在してもよい。
【0118】
使用者に送達されるエアロゾルまたは蒸気は、空気、送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)より基本的に構成され、潜在的に、送達可能な薬剤を有する混合物に存在し得る1つ以上の任意の追加物質(例えば、蒸発促進剤)を含んでいてもよい。例えば、エアロゾルまたは蒸気は、また、任意の所望の香料(例えば、本明細書に記載の香料または甘味料)または不活性添加剤を、エアロゾルまたは蒸気の味、粘稠度、もしくは質感を向上し、それにより吸入を使用者(すなわち、喫煙者)にとってより美味にするために含有し得る。
【0119】
一実施形態において、送達可能な薬剤はニコチンである。典型的に、ニコチンを含有する吸入装置は、タバコ、葉巻、及びパイプに対する燃焼のない代替物として喫煙者によって使用され、それによりそれらのタバコ製品に見られる潜在的に有毒な構成要素の多くに対する曝露を減少させる。そのような燃焼のない装置は、一般的に、「電子タバコ(electronic cigarette)」、「無煙タバコ」、「電子タバコ(e-cigarette)」、または「電子タバコ(e-cig)」と呼ばれる。送達可能な薬剤がニコチンである場合、ニコチンが装置内の唯一の送達可能な薬剤であることが好ましい。ニコチンは、典型的にはタバコ製品、例えばタバコ油及び他の抽出物から得られ、通常は酒石酸ニコチンなどの製品中に存在する。ニコチン及び酒石酸ニコチンの両方は、本明細書に記載されている吸入装置に使用することができる。
【0120】
ニコチンを含有する本発明の吸入装置を使用して、使用者に快楽効果を生成することができる。
【0121】
装置の使用を監視し、できる限り使用者によって使用を制限することができる機器を含む吸入装置も特に有利であり得る。そのような装置は、使用者が自分の使用パターンを記録し、それにより時間と共にその使用をより正確に制御するのを助けることができる。
【0122】
送達可能な薬剤は、熱安定性医薬物質、好ましくは少なくとも約400℃まで、より好ましくは少なくとも約600℃までの温度で安定的なものでなければならない。用語「熱安定性」の使用によって、送達可能な薬剤がその温度で十分に安定的で、使用中に著しい化学的変質を受けないことを確実にすることを意味し、例えば、送達可能な薬剤が熱安定性医薬物質である場合、「熱安定性」は200℃まで30秒間加熱したときに5%以下の劣化を示す医薬物質を指す。
【0123】
ニコチンは、塩の形態で、または、例えば、それらの錯体もしくは溶媒和物などの任意の他の好適な形態で、あるいは、任意の物理的形態で、例えば、非晶質状態で、結晶もしくは部分的結晶材料として、共結晶として、または、様々な形の形態などで、あるいは上の任意の組み合わせで、さらに用いられ得る。
【0124】
記述され得るニコチンの薬学的に許容される塩には、酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。このような塩は、従来の手段により、例えば、ニコチンの遊離塩基形態と、1当量以上の適切な酸とを、任意の溶媒中で、または塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで、標準的技法を用いて(例えば、真空中、凍結乾燥または濾過によって)、上記溶媒または上記媒体を除去することにより、形成されてもよい。
【0125】
薬学的に許容される付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸などの鉱酸から、コハク酸、及び特に酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸などの有機酸から、及び、ナトリウム、マグネシウム、もしくは好ましくは、カリウム及びカルシウムなどの金属から、誘導される塩が含まれる。送達可能な薬剤がニコチンである実施形態では、記述され得る特定の塩は、酒石酸ニコチンである。本明細書における「ニコチン」への言及は、他に特定されない限り、薬学的に許容されるニコチン塩、例えば、酒石酸ニコチンへの言及を含む。
【0126】
本発明の装置はまた、使用者が定められていない期間にわたって装置の使用を監視及び/又は記録することを可能にするように構成されてもよい。これは、使用者及び医療従事者が、送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)が使用者に投与された量及び頻度を正確に記録する助けとなり得る。
【0127】
さらなる実施形態では、本発明の装置は、定められた期間にわたり装置の使用履歴を記録するための機器を備えることができる。そのような機器は、例えば、装置の総使用回数、装置が再充填された回数(例えば、カートリッジが交換された回数)、装置が使用または再充填された回数、使用者に送達された送達可能な薬剤の量などの関連する事象を記録する電子機器を備え得る。そのようなデータは、使用者または医療従事者によって別個のデータ処理装置にダウンロードされることができるように、装置に保存されてもよく、または、装置はデータが視覚的に表示することができるように表示装置をさらに備えてもよい。
【0128】
さらなる実施形態では、装置は、別個の分析のために記録されたデータを装置から抽出することを可能にするインターフェースまたはデータ送信端末装置を備えることができる。好適なインターフェースは、ユニバーサルシリアルバス(USB)またはデータ転送に好適な電気的接続を可能にする別の同様の構成要素を含む。データ送信端末装置を含有する装置では、上記データは、例えば、ブルートゥース(登録商標)または同様のものを介して、装置によって、別個の装置に送信されてもよい。各々の場合、別個の装置は、吸入装置から受信したデータを処理するための好適なソフトウェア(例えば、アプリケーション)を含む電子データ処理装置であってもよい。
【0129】
さらに別の実施形態では、装置は、使用者による使用を監視し、任意で、送達可能な薬剤が使用者に投与される程度を制御するように構成されてもよい。例えば、装置は、特定の期間に使用され得る回数が制限されるように構成されてもよい。これは、使用者が所持している期間にわたって大量の送達可能な薬剤を受け取ることができることが奨励されない場合に特に有用である。したがって、そのような装置は、使用者に投与されている送達可能な薬剤の量の計量を可能にすることができる。
【0130】
保護コーティングはまた、本明細書に開示された装置の担体材料と組み合わせて使用されてもよい。
【0131】
保護コーティングは、使用中に送達可能な薬剤の気化速度を制御するのを助けるために使用され得る。1つ以上のコーティングを担体材料の外面に適用することができる。使用中に担体材料を加熱する場合、コーティングは蒸発が起こる温度を制御するのに役立ち得る。これは、同様に、例えば、使用者が短時間で気化した材料を受け取ることを確実にし、それによって意図された用量全体を受け取り終わる前に使用者が吸入を中止し得る可能性を減少することによって、送達可能な薬剤の送達を制御することをさらに助けることができる。
【0132】
保護コーティングはまた、装置内の送達可能な薬剤の安定性を向上するのに有用であり得る。例えば、コーティングは、1つ以上の送達可能な薬剤を外部環境から遮蔽し得て、または送達可能な薬剤間の障壁として作用し、それによりそれらが互いと混合し、化学的に相互作用し得る程度を減少してもよい。
【0133】
本発明の装置に使用される担体材料は、以下の方法で不活性であるように設計することができる。
(a)約マイナス80~約プラス50℃(好ましくは約0~約40℃、より好ましくは室温、例えば約15~約30℃)の温度、約0.1~約2バール(好ましくは気圧)の圧力、約5~約95%(好ましくは約10~約75%)の相対湿度、及び/又は約460ルクスのUV/可視光線への曝露を含む、長期間の(例えば、6ヶ月以上)通常の貯蔵条件下での一般的な物理化学的安定性。そのような条件下では、本明細書に記載された担体材料ネットワークは、上のように約5%未満、例えば約1%未満が化学的に劣化/分解されていることが見出され得る。
(b)ニコチン(c)の生体外(ex vivo)における故意の抽出の可能性を避ける、約15%未満の変質が生じ得る、室温及び/又は高温(例えば、最大約200℃)条件下における、酸性、アルカリ性及び/又はアルコール性(例えば、エタノール性)条件での一般的な物理化学的安定性。
【0134】
この点に関して、ネットワークは、マイクロ構造及びナノ構造レベルで、約1MPaを超える、約5MPaより大きい、例えば、約10MPaなどの圧縮強度を呈し、すなわち、圧縮強度が約200μm未満の微細構造レベルで材料の破壊を耐えるのに十分なほど高いことが好ましい。
【0135】
送達可能な薬剤を含有するセラミック材料は、様々な所定の技術によって、かつ送達可能な薬剤と担体材料またはその前駆体とを共に混合することを含む、当業者に既知の標準的な設備を使用して、調製することができる。
【0136】
本発明の組成物の構成要素を共に混合するために、標準的な混合設備を使用することができる。混合時間は、使用される設備によって変化する可能性が高く、当業者は、所与の成分(複数可)の組み合わせに対して好適な混合時間を所定の実験によって判定することが困難ではない。
【0137】
送達可能な薬剤(例えば、ニコチン)は、様々な技術によって、例えばゾル-ゲルプロセスによる導入によって、溶液、スラリー、ペースト、またはパテとしての、担体材料(例えば、セラミック)と混合され得る。送達可能な薬剤及び担体材料(またはその前駆体(複数可))を含む混合物の導入の後に、ある種の「硬化」を行って、送達可能な薬剤が存在する気孔を形成してもよい。多孔質担体材料ネットワークが形成されるのは、このプロセスの間である。
【0138】
本発明の装置で使用するための担体材料の形成の好ましいプロセスは、担体材料(例えば、セラミック材料またはその前駆体(複数可))と送達可能な薬剤とを共に混合し、次いで水性溶媒(例えば、水)などの液体を添加し、そのようにして湿った顆粒を提供することを伴う。
【0139】
本発明の装置で使用するための担体材料の形成の別の好ましいプロセスは、この混合物と担体材料(例えば、セラミック材料またはその前駆体(複数可))とを組み合わせる前に、送達可能な薬剤と水性溶媒(例えば、水)とを共に混合することを伴う。
【0140】
湿式造粒技術は当業者に周知であり、任意でペレット化補助材料の存在下で、水のような揮発性不活性溶媒を含む造粒用流体を用いて、乾燥一次粉末粒子の混合物の塊状化を伴う任意の技術を含む。
【0141】
上記のプロセスによって得られた製品は、
(I)顆粒の押出(顆粒化が行われる場合)、
(II)球形化(湿った塊をふるいに通してペレットを生成すること)、
(III)乾燥、及び/又は
(IV)(必要であれば)加熱による硬化によって、
全ての場合において所定の技術を使用して、さらに適応され得る。
【0142】
本発明の装置で使用するためのジオポリマーを含む担体材料の形成プロセスにおいて、予め形成されたジオポリマーは、好ましくは(上記に記載した)シリカ源の存在下で、また、上記に記載した送達可能な薬剤の存在下で、さらなるアルミノケイ酸前駆体及び水性アルカリ性液体(例えば、溶液)と共に反応させられ得る。ジオポリマーを含む本発明の組成物の場合、得られた混合物を任意の所与の形状、例えば、ブロック、ペレット、顆粒、または粉末に硬化させることで、硬化は実施され得る。この点に関して、混合物を型に移し、ペレット/顆粒として固められることができ、あるいは(例えば、好ましくは)適切な押出-球形化技術を用いてペレット/顆粒を製造することができる。ここで、形成されたペースト(粉末及び液体混合物)は、オリフィスを通して押出されてもよい。オリフィスのサイズは、約10μm~約30mmまで、好ましくは約100μm~約1mmまでであり得る。より大きなペレット/顆粒が必要な場合、オリフィスのサイズは、例えば約1mm~約30mm、または好ましくは約1mm~約10mmと、より大きくてもよい。次いで、形成された押出物を、典型的には、内部に配置された水平回転ディスクを有する垂直中空円筒である球形化装置内に置くことができる。ディスクが回転される場合、押出物は均一な長さに砕かれ、徐々に球形のペレットに成形され、その後、上記に記載したように硬化される。
【0143】
上記に記載されたプロセスにおいて、送達可能な薬剤の一次粒子は、造粒の前に、粉砕、乾式粉砕、湿式粉砕、沈殿などの技術によって処理することができる。
【0144】
全ての場合において、好適なペレット/顆粒サイズは、約0.05mm~約3.0mm(例えば約2.0mm、例えば約1.7mm)、好ましくは約0.1mm(例えば約0.2mm)~約1.6mm(例えば約1.5mm)の範囲内、例えば約1.0mmである。
【0145】
本発明の装置において使用するための担体材料は、1つ以上のさらに一般的に用いられる医薬賦形剤をさらに含むことができる。好適な賦形剤としては、薬物中の活性医薬成分のための担体として典型的に使用される不活性物質が挙げられる。好適な賦形剤としては、便利で正確な投与量を可能にするために、非常に強力な活性医薬成分を用いる医薬組成物をかさ増しするために医薬分野で用いられるものも挙げられる。あるいは、賦形剤は、関連する活性医薬成分の取り扱いを助けるために、本発明の組成物の製造プロセスにおいて用いることもできる。
【0146】
この点に関して、医薬的に許容される賦形剤には充填剤粒子が含まれ、それによって、本発明の装置に使用される担体材料が形成されるプロセスにおいて化学的に関与しない材料の粒子が含まれる。そのような充填剤粒子は、バラストとして添加することができ、及び/又は組成物に機能性を提供することができる。非限定的な例としては、本発明の装置に使用される担体材料のより小さな粒子(例えば、粉砕されたもの)に添加され得る、放射線不透過性を増加するための二酸化ジルコニウム及び硫酸バリウムが挙げられる。添加された充填剤粒子の量は、担体材料の重量の最大約80重量%、好ましくは最大約40重量%であり得る。好ましくは、充填剤の総体積は、担体材料が十分な機械的強度を保持することを確実にするために、比較的小さい(例えば、担体材料構造全体の約50体積%未満(気孔を含む))。
【0147】
追加の医薬的に許容される賦形剤としては、塩化ナトリウムなどの炭水化物及び無機塩、リン酸カルシウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0148】
あるいは、担体材料が、好ましくは約100μm未満、より好ましくは約20μm未満の粉末粒径を有する細密な粉末に粉砕され得る。1μm未満の粒径を有する担体材料を本発明の装置に使用することができるが、好ましい粒径は約10μmの範囲にある。粉砕は、任意で、ボールミル粉砕、遊星ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、またはそれらの組み合わせを用いて実施される。
【0149】
上記実施形態において、担体材料は、ペレット化補助材料をさらに含んでもよい。ペレット化補助材料は、ペレット化中に湿った粉末の塊を通る造粒液体の分布を制御し、混合物中のレオロジー特性を改変することができる材料として定義され得る。好適なペレット化補助材料としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、及び好ましくは微結晶セルロースが挙げられる。存在する場合、ペレット化補助材料は、好ましくは、錠剤の全重量に基づいて0.5~50重量%の量で用いられる。好ましい範囲は、1~20重量%、例えば約2.0~約12重量%(例えば、約10重量%)である。
【0150】
本発明の装置で使用される担体材料は、また、任意で、レオロジー及び気孔率を制御するために、増量剤、ポロゲン、分散剤、またはゲル化剤を含有することができる。そのような賦形剤の総量は、存在し得る任意の他の構成要素(例えば、ニコチン、増量剤など)を含む担体材料(すなわち、セラミックまたはジオポリマー材料)の全重量の約20重量%に制限される。そのような賦形剤の非限定的な例としては、ポリカルボン酸、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、ニトリロ三酢酸(NTA)、ポリアクリル酸、PEG、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、(植物油(オリーブ油、トウモロコシ油(maize oil)、トウモロコシ油(corn oil)、落花生油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム油、ヒマシ油、大豆油など)、精油(例えば、マツヨイグサ油)、オメガ3油(例えば、魚油)、パラフィン油、動物の排出物から誘導された脂質油、シリコン油などを含む)医薬的に許容される油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0151】
担体材料はまた、1つ以上の結合剤を含んでもよい。結合剤は、担体材料への送達可能な薬剤の組み込みを容易にする結合形成増強剤として作用することができる材料として定義され得る。好適な結合剤としては、セルロースガム及び微結晶セルロースが挙げられる。存在する場合、結合剤は、好ましくは、担体材料及びその中に含有される材料の全重量に基づいて0.5~20重量%の量で用いられる。好ましい範囲は、1~15重量%、例えば約2.0~約12重量%(例えば、約10重量%)である。
【0152】
担体材料はまた、1つ以上の味マスキング剤、香料(例えば、レモン、ペパーミント粉末、または、好ましくは、メントール)、または甘味料(例えば、ネオヘスペリジン、アセスルファムK、または、好ましくは、スクラロース)を含んでもよい。
【0153】
担体材料はまた、1つ以上の着色剤(例えば、赤色の酸化鉄、青色のコバルト、白色の酸化チタンなど)を含んでもよい。これらの着色剤は、典型的には、送達可能な薬剤を貯蔵し、加熱により放出する担体材料の能力に著しい影響を与えることなく色により可視化できるように、上記着色材料は粒状で適切なサイズを有して提供される。上記で考察された全ての添加剤と同様に、着色剤の粒子は、その混合物が硬化(cured)または硬化(hardened)する前に、セラミック前駆体材料の混合物に添加されてもよい。
【0154】
本発明の装置は、1つ以上の送達可能な薬剤を使用者に送達するために使用され得る。したがって、本発明の第3の態様において、送達可能な薬剤を蒸気またはエアロゾルの形態で使用者に送達する方法が提供され、その方法は、
(i)少なくとも10%の気孔率を有する、本明細書に定義される固体多孔質の担体材料と、
(ii)担体材料の気孔内に位置する、本明細書に定義される送達可能な薬剤と、を備える、物品を提供することと、
担体物質を加熱して、送達可能な薬剤を気化することと、を含む。
【0155】
一実施形態では、物品は、本明細書で定義される吸入装置である。別の実施形態では、物品は、本明細書で定義される吸入装置での使用に好適なカートリッジまたはユニット製品である。したがって、本発明の第4の態様において、本明細書で定義される物品が提供される。物品が、加熱素子を含有する本明細書で定義される吸入装置での使用に好適なカートリッジである実施形態では、カートリッジが加熱素子に適合するように成形されることが好ましい。
【0156】
さらなる実施形態では、送達可能な薬剤を蒸気またはエアロゾルの形態で使用者に送達する際に、上に定義した物品の使用が提供される。同様に、その使用は、送達可能な薬剤を蒸発させて使用者に吸入させるために担体材料を加熱するステップを伴う。
【0157】
特定の実施形態では、上記に定義された方法及び使用は、非治療目的(例えば、快楽(すなわち、娯楽使用))のために、送達可能な薬剤を使用者に投与することを伴うことができる。そのような方法または使用の特定の例は、送達可能な薬剤がニコチンであるものである。
【0158】
本発明の第3の態様の他の特定の実施形態では、特に、装置が使用者による装置の使用を監視し、送達可能な薬剤が使用者に投与され得る程度を任意で制御するように構成される実施形態では、方法は、制御された投薬量の送達可能な薬剤を使用者に投与することを伴い得る。
【0159】
送達可能な薬剤がニコチンである実施形態では、好適な1日の投薬量は、約1~約100mg/日であり得る。従来のタバコは、典型的に約8~20mgのニコチンを含有する。本明細書で開示される装置及びカートリッジは、少なくとも1つのタバコと同等の量のニコチンを含有することが好ましい。ニコチンが交換可能なカートリッジ(例えば、錠剤、ペレット、またはスティック)の形態で使用者に供給される場合、各カートリッジは約8mg~約20mgのニコチンを含有し得る。装置は、担体材料内に保持された実質的に全てのニコチンを使用者に送達することができるので、単一のタバコを喫煙するときに吸入される量にほぼ等しい量のニコチンを使用者に送達することがさらにできる一方で、各カートリッジまたは装置は、より少量のニコチン(例えば、約100μg~約5mg、または好ましくは約1mg~約3mg)を有利に含有することができる。より多い量のニコチンは、単一の装置またはカートリッジに、例えば、最大100mg、最大500mg、または最大1gで保持されることもできる。そのような装置及びカートリッジは、装置を再充填する必要があるか、またはカートリッジを再充填または交換する必要が生じる前に、1日または数日間にわたって複数回使用することを意図している。
【0160】
上記投薬量は、平均の場合の例であり、当然のことながら、より多いまたはより少ない投薬量範囲が妥当である個々の場合があり得、それらも本発明の範囲内である。
【0161】
本発明の装置は、担体材料がマイクロレベル材料で高い圧縮強度レベルを有することにより、例えば、粉砕、乳棒及び乳鉢、ハンマー打撃などの伝統的な方法などによる、担体材料の意図的な機械的破壊に対する保護を提供することができる。
【0162】
本発明の装置、特にその中で使用される担体材料は、確立された医薬処理方法を用いて調製され得、食品もしくは医薬品における、または同様の規制状態の使用が承認された材料を用いることができるという利点も有することができる。
【0163】
本発明の装置で使用される担体材料は、先行技術において既知の医薬組成物よりも、より有効であり、より毒性が低く、より早く作用し、より強力であり、より少ない副作用を生成し、より容易に吸収され、ならびに/またはより優れた薬物動態プロファイルを有し、及び/もしくは他の有用な薬理学的、物理的、または化学的特性を有し得る、という利点を有してもよい。これは、本発明の装置または担体材料(例えば、交換可能なカートリッジの場合)がプロピレングリコール、グリセリン、またはポリエチレングリコールのような伝統的な蒸発促進剤を含まない実施形態の場合に特に当てはまる。
【0164】
本明細書に記載の担体材料(特に化学結合されたセラミック及びジオポリマー)の使用は、加熱下での送達可能な薬剤の許容レベルの放出を達成するために加熱装置と共に使用される取外し可能及び交換可能な単位を提供することを可能にし、一方で、例えば漏出による、貯蔵された材料への曝露のリスクを最小限に抑える。担体材料は、また、加熱プロセスを助けるために、高温焼結を必要とせずに容易に製造されるので、それゆえ導体及び磁石のような追加素子を担体材料に組み込むことができる。担体材料構造が形成されるときに、送達可能な薬剤を担体材料に組み込む能力はまた、存在する送達可能な薬剤の量に対するより大きな制御を可能にする。
【0165】
寸法(例えば、値、温度、圧力(作用力)、相対湿度、サイズ及び重量、粒子サイズまたは粒径、気孔サイズ、時間枠など)、量(例えば、粒子、組成物中の個々の構成要素、または組成物中の構成要素の相対量(例えば、数または百分率)及び絶対量、例えばニコチンの用量、粒子の数など)、偏差(定数からの変質の度合いなど)の文脈で、本明細書で単語「約」が用いられる場合、そのような変数は近似値であり、つまり本明細書に特定された数から±10%まで、例えば±5%まで、好ましくは±2%まで(例えば、±1%)変化し得ることが理解されよう。
【0166】
本発明を以下の実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
図1】熱処理前(対照)及び熱処理後(AH、n=1)のセラミック円盤中のイブプロフェンの量を示す。エラーバーは最大値と最小値を示す。
図2】熱処理前(対照、n=1)及び熱処理後(AH、n=2)のセラミック円盤中のニコチンの量を示す。エラーバーは最大値と最小値を示す。
図3】オーブン熱処理前後の酸化アルミニウム棒中のニコチン量を示す(n=3)。
図4】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム棒中のニコチン量を示す(n=3)。
図5】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中のニコチン量を示す(n=3)。
図6】オーブン熱処理前後のジオポリマー硬貨中のニコチン量を示す(n=3)。
図7】電子タバコ装置の実験機構を示す。
図8】電子タバコ装置における熱処理前後の硫酸カルシウム棒中のニコチン量を示す(n=3)。
図9】電子タバコ装置における熱処理前後の酸化アルミニウム棒中のニコチン量を示す(n=3)。
図10】誘導誘導試験の実験機構を示す。
図11】誘導加熱を使用する熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中のニコチン量を示す(n=3)。
図12】余熱されたプレート上での誘導加熱を使用する熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中のニコチン量を示す(n=3)。
図13】オーブン加熱を使用する熱処理前後のAl棒中のスマトリプタンコハク酸塩量を示す。
図14】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中の塩酸クロニジン量を示す(n=2)。
図15】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中の塩酸クロニジン量を示す(n=2)。
図16】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中のニコチン量を示す(n=2)。
図17】オーブン熱処理前後の硫酸カルシウム硬貨中のスマトリプタンコハク酸塩量を示す(n=2)。
【実施例
【0168】
実施例1-オーブン加熱
イブプロフェン(IOL Chemicals and Pharmaceuticals Ltd、インド)を含むセラミック円盤を、以下のように酸化アルミニウム(Al、Keranova、スウェーデン)を用いて調製した。
【0169】
異なる気孔サイズ(0.25、1、6、15、及び30μm)を有するセラミック円盤(Al)を、(i)直径63mm及び厚さ6.3mm(気孔サイズ0.25、1、及び6μm)ならびに(ii)直径48mm及び厚さ6.3mm(気孔サイズ15及び30μm)の2つのサイズで調製した。製品仕様書によると、全ての円盤について、気孔率は約40体積%であり、密度は3.75g/cmであった。
【0170】
円盤(気孔サイズ0.25、1、6、15、及び30μm)を、408.5μg/mlのイブプロフェン濃度でpH7.4を有する400mlのリン酸塩緩衝液(1つのリン酸塩緩衝液生理食塩水錠剤(Sigma-Aldrich、米国)を200mlの脱イオン水中に溶解した)内に24時間浸漬した。円盤を室温で24時間乾燥した。円盤をオーブン中で250℃で15分間加熱し、対照円盤は加熱しなかった。全ての円盤を、pH7.4、37℃での400mlのリン酸塩緩衝液中のイブプロフェン濃度のために測定し(USPパドル法(パドル速度50rpm)、VanKel7025、Varian Inc、米国)、イブプロフェン濃度を220nmの波長でUV分光光度計Shimadzu1800、日本を用いて測定し、セラミック円盤中のイブプロフェン量を判定した。対照円盤中のイブプロフェンの量は、15時間後(すなわち、最大薬物放出後)かつ熱処理ディスクにおいて1.5時間後(すなわち、最大量の薬物がこの時点で放出された)測定した。
【0171】
熱処理後に残ったイブプロフェンの量は、全ての試料についてゼロであった。他の波長での吸光度の著しい変化は検出されず、イブプロフェンの著しい変質は起こらなかったことを示した。
【0172】
実施例2-オーブン加熱
ニコチン(ニコチン溶液(24mg/ml)、Ritch Group Ltd、英国)を含むセラミック円盤を、以下のように酸化アルミニウム(Al、Keranova、スウェーデン)を用いて調製した。
【0173】
異なる気孔サイズ(0.25、1、6、15、及び30μm)を有するセラミック円盤(Al)を、(i)直径63mm及び厚さ6.3mm(気孔サイズ0.25、1、及び6μm)ならびに(ii)直径48mm及び厚さ6.3mm(気孔サイズ15及び30μm)の2つのサイズで調製した。製品仕様書によると、全ての円盤について、気孔率は約40体積%であり、密度は3.75g/cmであった。
【0174】
ニコチン溶液(0.25ml、ニコチン6mgに相当)をセラミック円盤(気孔サイズ0.25、6、15、及び30μm)の表面上に分注した。円盤を室温で24時間乾燥した。円盤をオーブン中で188℃で15分間加熱し、対照円盤を加熱しなかった。全ての円盤を、pH7.4、37℃での400mlのリン酸塩緩衝液中のニコチン量のために測定し(USPパドル法(パドル速度50rpm)、VanKel7025、Varian Inc、米国)、ニコチン濃度を252.8nmの波長でUV分光光度計Shimadzu1800、日本を用いて測定し、セラミック円盤中のニコチン量を判定した。対照円盤中のニコチンの量は、15時間後(すなわち、最大ニコチン放出後)かつ熱処理ディスクにおいて1.5時間後(すなわち、最大量のニコチンがこの時点で放出された)測定した。
【0175】
熱処理後に残ったニコチンの量は、余熱処理対象試料と比較して、全ての試料について非常に著しく減少した。他の波長での吸光度の著しい変化は検出されず、ニコチンの著しい変質は起こらなかったことを示した。
【0176】
実施例3-オーブン加熱
酸化アルミニウム棒
酸化アルミニウムセラミック棒はCeramtech(スウェーデン)から得た、0.8mmの直径を有する4つのボアホール(軸方向に配向された)を含有する直径3mm及び長さ10mmのAl円筒形の棒。
【0177】
硫酸カルシウム棒及び硫酸カルシウム硬貨
硫酸カルシウムアルファ半水和物(CaS)棒は、Bo Ehrlander AB(スウェーデン)から得た。成形されたシリコンゴムは、棒(直径6mm、長さ12mm)と硬貨(直径12mm、厚さ2mm)の両方の型として使用した。硫酸カルシウムを脱イオン水(0.4(w/w)の液体/粉末比)と混合して均質なペーストを形成し、ゴム型に充填した。ペーストを適用したとき、型を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0178】
ジオポリマー硬貨
試薬グレードのカオリナイト、ヒュームドシリカ(粒子サイズ7nm)、及び試薬グレードの水酸化ナトリウムは、Sigma-Aldrich(スウェーデン)から得た。ケイ酸ナトリウム溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)及びヒュームドシリカ(SiO)を脱イオン水に溶解することによって製造した。カオリナイトを800℃で2時間加熱してメタカオリンを形成した。
【0179】
ジオポリマーは、均一なペーストが形成されるまで、乳鉢と乳棒を用いてケイ酸ナトリウム溶液とメタカオリンを混合することによって合成された。ジオポリマーの組成物は、以下のモル比を得た。Si/Al=1.94、HO/Al=12.24、及びNa/Al=1.23。ペーストを硬貨型シリコンゴム型に充填し、周囲圧力、37℃、100%の湿度で48時間硬化した。硬化後、ジオポリマーを周囲温度及び湿度で24時間乾燥した。
【0180】
ニコチン
純粋なニコチンUSP/EPは、BGP Healthcare pvt. Ltd.(インド)から得た。E-ジュース(LIQUA)18mg/ml及び24mg/mlを、Cigoteket(スウェーデン)から得た。E-ジュースは、プロピレングリコール中に溶解したニコチンの溶液である。18mg/ml未満の濃度は、適切な量の脱イオン水をe-ジュースに添加することによって達成した。
【0181】
ニコチンの適用
ニコチンの適用は、セラミック棒/硬貨の表面上にニコチンまたはニコチン溶液を一定範囲の濃度で浸漬または分注することによって達成された。
【0182】
(i)ニコチンの分注
純粋なニコチン(液状)、純粋なE-ジュース、または水で希釈したE-ジュースを、棒または硬貨の表面上に分注した。ニコチンの適用後、試料を熱処理及び/又は分析の前に室温で24時間乾燥した。
【0183】
(ii)ニコチンの浸漬
棒を純粋なニコチンまたはニコチン溶液に浸漬した(正確な体積は測定しなかったが、棒は液体約100μlでちょうど覆った)。試料を室温で24時間浸漬し、その後、試料を熱処理及び/又は分析の前に24時間乾燥した。
【0184】
加熱方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa、(ノルウェー)から得た。温度は約200℃に設定した。温度はMastechからのIR-温度計を用いて測定した。
【0185】
ニコチン放出の検出
全てのニコチン放出試験は、同じ分析方法に従って実施した。試料を50mlの脱イオン水を含有するビーカー内に浸した。24時間後、試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、UV分光光度計によって219nmの波長で特徴付けられた。次に、試料中のニコチン量を計算した。参照試料と熱処理した試料における量の差は蒸発したと推定された。
【0186】
参照試料は、熱処理前に装填されたニコチン量を表す。熱処理した試料と参照試料中に検出したニコチン量の差は、熱処理中に蒸発したニコチン量を表す。
【0187】
結果-酸化アルミニウム
酸化アルミニウム棒を、6mg/mlのニコチン溶液(希釈したe-ジュース)中に24時間浸漬した。熱処理前後に棒に残っているニコチン量を測定し、図3に示す。
【0188】
熱処理後の試料中に残っているニコチン量が少ないため、加熱した場合、ニコチンのほとんど全てが最初の5~10分内で放出された。棒は、棒当たり約135μgのニコチンを吸収することができた。
【0189】
結果-硫酸カルシウム
硫酸カルシウム棒を純粋なニコチン中に24時間浸漬した。棒は、棒当たり約20mgのニコチンを吸収することができた。熱処理前後に棒に残っているニコチン量を測定し、図4に示す。
【0190】
ほとんどのニコチンは加熱中に放出された。1分の加熱と比較して、5分の加熱の間により多い量が放出されることを観察した。
【0191】
純粋なニコチン(20mg)を硫酸カルシウム硬貨に分注した。熱処理前後に硬貨に残っているニコチン量を測定し、図5に示す。
【0192】
ニコチンは揮発性物質であり、したがって、参照試料中で検出されたニコチン量は、20mgよりも少なかった。この場合にも、加熱後にニコチンのより少ない放出を検出した。
【0193】
結果-ジオポリマー
純粋なニコチン(20mg)をジオポリマー硬貨に分注した。熱処理前後に硬貨に残っているニコチン量を測定し、図6に示す。
【0194】
ニコチンは揮発性物質であり、したがって、参照試料(約16mg)中で検出されたニコチン量は、当初適用された量よりも少なかった。この場合にも、加熱後にニコチンのより少ない放出を検出した。
【0195】
実施例4-電子タバコ装置を用いた熱処理
材料
実施例3に記載したようにして、酸化アルミニウムセラミック棒及び硫酸カルシウム棒を得た。ニコチン及びニコチン溶液を供給して適用し、実施例3に記載したようにニコチンレベルを検出した。
【0196】
加熱機器
試料は、Devex Mekatronik AB(スウェーデン)から得た試作電子タバコ装置(X-Cube II、Smoke)を用いて加熱した。この装置は、市販の電子タバコX-Cubeから派生している。
【0197】
方法
装置内の試料は、試料の周りに巻かれたコイルによって加熱した。電子タバコの設定は下の表に列挙している。
電子タバコ装置の設定
【表1】
【0198】
装置の端部を、シリコンホースを介してバイアルに接続した。バイアルは1mlの脱イオン水を含有していた。喫煙をシミュレートするために、棒を装置に入れ、吹き出しを行った。吹き出しは、各10秒間の5回の吹き出しの連続を伴う。吹き出し後、ホースを取り外し、水で洗い流した。水のニコチン濃度を分析した。
【0199】
結果-硫酸カルシウム
硫酸カルシウム棒を純粋なニコチン中に24時間浸漬し、電子タバコ装置で加熱(5×10秒)した。熱処理前後に棒に残っているニコチン量を測定し、図8に示す。
【0200】
結果は、装置内の熱処理がニコチン放出をもたらすことを示す。
【0201】
結果-酸化アルミニウム
酸化アルミニウム(Al)棒をニコチン溶液(18mg/ml)中に24時間浸漬し、装置で加熱(5×10秒)した。熱処理前後に棒に残っているニコチン量を測定し、図9に示す。
【0202】
実施例5-誘導加熱を用いた熱処理
材料
実施例3に記載したようにして、硫酸カルシウム硬貨を得た。間接誘導試験のために、磁石を硬貨にかたどった。ニコチン及びニコチン溶液を供給して適用し、実施例3に記載したようにニコチンレベルを検出した。
【0203】
加熱機器
電磁調理器用の金属プレートは、Hanestroem(スウェーデン)から得た。電磁調理器Wilfa ICP-2000は、Media Markt(スウェーデン)から得た。マグネット(10×1mm、サマリウムコバルト磁石、0.4kg引力)はfirst4magnets(英国)から得た。IR-温度計(MS6520A)はMastech(米国)から得た。
【0204】
加熱方法
間接誘導による熱処理は、電磁調理器に金属プレートを載せて実施した。磁石を含有するセラミック硬貨を金属プレートに適用し、最大限の効果で加熱した(正確な温度は測定しなかった、図10を参照されたい)。
【0205】
結果-非加熱プレート
ニコチン溶液(50μl、18mg/ml)を硫酸カルシウム硬貨上に分注し、誘導プレート上で約1分間または約5分間加熱した。熱処理前後に硬貨に残っているニコチン量を測定し、図11に示す。ほとんどのニコチンは最初の1分内に放出された。
【0206】
結果-余熱されたプレート
ニコチン溶液(50μl、18mg/ml)を硫酸カルシウム硬貨上に分注した。高温(少なくとも150℃)を得るために、プレートを約10秒間予熱した。取り出す前に、硬貨をプレート上で5秒間加熱した。抽出槽に入れる前に、硬貨を約15分間冷却して固めた。熱処理前後に硬貨に残っているニコチン量を測定し、図12に示す。
【0207】
この測定は、熱処理の結果として相当量のニコチンが放出されたことを示す。
【0208】
実施例6-スマトリプタンコハク酸塩
材料
酸化アルミニウムセラミック棒はCeramtech(スウェーデン)から得た、0.8mmの直径を有する4つのボアホール(軸方向に配向された)を含有する直径3mm及び長さ10mmのAl円筒形の棒。スマトリプタンコハク酸塩をSMS Pharmaceuticals Limited、インドから得た。
【0209】
スマトリプタンコハク酸塩の適用
スマトリプタンコハク酸塩の適用は、20mg/mlの濃度を有するコハク酸スマトリプタン溶液中にAl棒を浸漬することによって達成した。溶液の体積は約100μlであったが、正確には測定されなかった。体積は棒を完全に浸すのに十分であった。試料を室温で24時間浸漬し、その後、試料を熱処理及び/又は分析の前に24時間乾燥した。
【0210】
加熱機器及び方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa、(ノルウェー)から得た。温度は約300℃に設定した。温度はMastech、米国からのIR-温度計を用いて測定した。棒をオーブン中で、0~15分の期間の間、加熱した。
【0211】
スマトリプタンコハク酸塩の検出
全てのスマトリプタン放出試験は、同じ分析方法に従って実施した。棒を50mlの脱イオン水を含有するビーカーに浸した。24時間後、水の試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、282nmの波長でUV分光光度測定によって特徴付けられた。次に、試料中のスマトリプタンコハク酸塩量を計算した。参照試料は、熱処理前に装填されたスマトリプタンコハク酸塩量を表す。熱処理した試料と参照試料中に検出したスマトリプタンコハク酸塩量の差は、熱処理中に蒸発したスマトリプタンコハク酸塩量を表す。
【0212】
結果
熱処理前後に棒中に残っているスマトリプタンコハク酸塩の量を測定し、図13に示す。
【0213】
熱処理後の試料中に残っているスマトリプタンコハク酸塩量が少ないため、加熱した場合、スマトリプタンコハク酸塩のほとんど全てが最初の5~15分内で放出された。棒は、棒当たり約1mgのスマトリプタンコハク酸塩を吸収することができた。
【0214】
実施例7-塩酸クロニジンを予め装填した硫酸カルシウム硬貨の加熱
試料調製
硫酸カルシウムアルファ半水和物(CaS)は、Bo Ehrlander AB(スウェーデン)から得た。塩酸クロニジンは、PCAS(フィンランド)から得た。成形されたシリコンゴムは、硬貨(直径12mm、厚さ2mm)の型として使用した。硫酸カルシウムを塩酸クロニジン(0.07gの塩酸クロニジン/gの硫酸カルシウム)の粉末及び脱イオン水(0.4(w/w)の液体/粉末比)と混合して均質なペーストを形成し、ゴム型に充填するために使用した。ペーストを適用したら、型を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0215】
加熱方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa(ノルウェー)から得た。オーブン温度は約250℃に設定した。温度はMastech(米国)からのIR-温度計を用いて測定した。硬貨をオーブン中で、0~15分の期間の間、加熱した。
【0216】
塩酸クロニジン放出の検出
各硬貨を秤量し、200mlの脱イオン水を含有するビーカーに浸した。24時間後、液体の試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、アセトニトリル/リン酸の移動相、pH3(11/89)を有するGenesis C18分析カラム4μm(100×2.1mm i.d.)を有するShimadzu LC-2030(ドイツ)HPLCシステムによって特徴付けられた。波長は220nmに設定した。
【0217】
参照試料は、熱処理前に装填された塩酸クロニジンmg/g硫酸カルシウム量を表す。熱処理した試料と参照試料中に検出した塩酸クロニジン量の差は、熱処理中に蒸発した塩酸クロニジン量を表す。
【0218】
結果-硫酸カルシウム
塩酸クロニジンを硫酸カルシウム(0.07g塩酸クロニジン/g硫酸カルシウム)と共に混合して硬貨を形成した。硬貨は約17mgの塩酸クロニジン(1硬貨は約0.3gの重さであった)を含有していた。硬貨は、上で記載されたように加熱した(または参照試料の場合には加熱されなかった)。熱処理前後に硬貨中に残っている塩酸クロニジンの量を測定し、図14に示す。熱処理後の試料中に残っている塩酸クロニジン量が少ないため、加熱した場合、塩酸クロニジンのほとんど全てが最初の15分内で放出された。
【0219】
実施例8-塩酸クロニジンを装填した硫酸カルシウム硬貨の加熱
試料調製
硫酸カルシウムアルファ半水和物(CaS)は、Bo Ehrlander AB(スウェーデン)から得た。塩酸クロニジンは、PCAS(フィンランド)から得た。成形されたシリコンゴムは、硬貨(直径12mm、厚さ2mm)の型として使用した。硫酸カルシウムを脱イオン水(0.4(w/w)の液体/粉末比)と混合して均質なペーストを形成し、ゴム型を充填するために使用した。ペーストを適用したとき、型を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0220】
塩酸クロニジン溶液(50μl、5mg/ml)を硫酸カルシウム硬貨上に分注した。溶液を適用したとき、硬貨を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0221】
加熱方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa、(ノルウェー)から得た。温度は約250℃に設定した。温度はMastech、(米国)からのIR-温度計を用いて測定した。硬貨をオーブン中で、0~15分の期間の間、加熱した。
【0222】
塩酸クロニジン放出の検出
各硬貨を秤量し、200mlの脱イオン水を含有するビーカーに浸した。24時間後、水の試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、アセトニトリル/リン酸の移動相、pH3(11/89)を有するGenesis C18分析カラム4μm(100×2.1mm i.d.)を有するShimadzu LC-2030(ドイツ)HPLCシステムによって特徴付けられた。波長は220nmに設定した。
【0223】
参照試料は、熱処理前に装填された塩酸クロニジン量を表す。熱処理した試料と参照試料中に検出した塩酸クロニジン量の差は、熱処理中に蒸発した塩酸クロニジン量を表す。
【0224】
結果-硫酸カルシウム
塩酸クロニジン溶液(50μl、5mg/ml)を硫酸カルシウム硬貨上に分注した。硬貨は、上で記載されたように加熱した(または参照試料の場合には加熱されなかった)。熱処理前後に硬貨中に残っている塩酸クロニジンの量を測定し、図15に示す。加熱中、硬貨中に存在する塩酸クロニジン量は、経時的に著しく減少した。
【0225】
実施例9-ニコチンを予め装填した硫酸カルシウム硬貨の加熱
試料調製
硫酸カルシウムアルファ半水和物(CaS)は、Bo Ehrlander AB(スウェーデン)から得た。成形されたシリコンゴムは、硬貨(直径12mm、厚さ2mm)の型として使用した。硫酸カルシウムを、ニコチンの5または20mg/mlの濃度を有するニコチン溶液(0.4(w/w)の液体/粉末比)と混合して均質なペーストを形成し、ゴム型に充填した。ペーストを適用したら、型を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0226】
加熱方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa、(ノルウェー)から得た。温度は約200℃に設定した。温度はMastech、(米国)からのIR-温度計を用いて測定した。硬貨をオーブン中で、0~15分の期間の間、加熱した。
【0227】
ニコチン放出の検出
各コインを50mlの脱イオン水を含有するビーカー内に浸した。24時間後、試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、UV分光光度計によって219nmの波長で特徴付けられた。次に、試料中のニコチン量を計算した。参照試料と熱処理した試料中の量の差は、熱処理中に蒸発したニコチン量を表す。
【0228】
参照試料は、熱処理前に装填されたニコチンμg/g硫酸カルシウム量を表す。熱処理した試料及び参照試料中に検出したニコチン量の差は、熱処理中に蒸発したニコチン量を表す。
【0229】
結果
2つの異なるニコチン溶液を使用して硬貨を作製した。5mg/ml及び20mg/mlである。両方のバッチで0.4(w/w)の同じ液体/粉末比を使用した。硬貨は約180μg(5mg/mlのニコチン溶液と混合した硬貨の場合)及び390μg(20mg/mlのニコチン溶液と混合した硬貨の場合)を含有していた。熱処理前後に硬貨中に残っているニコチン量を測定し、図16に示す。
【0230】
実施例10-スマトリプタンコハク酸塩を予め装填した硫酸カルシウム硬貨の加熱
試料調製
硫酸カルシウムアルファ半水和物(CaS)は、Bo Ehrlander AB(スウェーデン)から得た。スマトリプタンコハク酸塩は、SMS Pharmaceuticals Limited、インドから得た。成形されたシリコンゴムは、硬貨(直径12mm、厚さ2mm)の型として使用した。硫酸カルシウムをスマトリプタンコハク酸塩(0.07gスマトリプタンコハク酸塩/g硫酸カルシウム)及び脱イオン水(0.4(w/w)の液体/粉末比)と混合して均質なペーストを形成し、ゴム型に充填した。ペーストを適用したとき、型を周囲条件下で少なくとも12時間固めて乾燥した。
【0231】
加熱方法
オーブンWilfa EMK 218は、Wilfa、(ノルウェー)から得た。温度は約250℃に設定した。温度はMastech、(米国)からのIR-温度計を用いて測定した。硬貨をオーブン中で、0~15分の期間の間、加熱した。
【0232】
スマトリプタンコハク酸塩の検出
硬貨を50mlの脱イオン水を含有するビーカーに浸した。24時間後、水の試料を取り出し、濾過した(気孔サイズ:0.2μm)。試料は、282nmの波長でUV分光光度測定によって特徴付けられた。次に、試料中のスマトリプタンコハク酸塩量を計算した。
【0233】
参照試料は、熱処理前に装填されたスマトリプタンコハク酸塩量を表す。熱処理した試料と参照試料中に検出したスマトリプタンコハク酸塩量の差は、熱処理中に蒸発したスマトリプタンコハク酸塩量を表す。
【0234】
結果
熱処理前後に硬貨中に残っているスマトリプタンコハク酸塩の量を測定し、図17に示す。熱処理後の試料中に残っているスマトリプタンコハク酸塩量が少ないため、加熱した場合、スマトリプタンコハク酸塩のほとんど全てが最初の15分内で放出された。
図1
図2
図3
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図10
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図12
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