(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】まな板の構造
(51)【国際特許分類】
A47J 47/00 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A47J47/00 A
(21)【出願番号】P 2019075382
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596061373
【氏名又は名称】岩谷マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 善秀
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-049740(JP,U)
【文献】特開平10-155669(JP,A)
【文献】登録実用新案第3163394(JP,U)
【文献】特開平10-243884(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0125052(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0084952(US,A1)
【文献】中国実用新案第204207634(CN,U)
【文献】登録実用新案第3012785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記中芯は、前記両表皮層との対向面の少なくとも一方をハニカム構造に形成され、
前記中芯と前記各表皮層とは、それぞれの外周縁の溶着により接合され、
前記ハニカム構造は、ハニカムセグメント群により構成されている一方、
前記各表皮層の前記ハニカム構造との対向面には、前記接合時に前記ハニカムセグメントに嵌入する嵌入部が形成され、
前記ハニカムセグメントを隔成する隔壁の上面は、前記接合時に前記対向面に弾接することを特徴とするまな板の構造。
【請求項2】
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記中芯は、前記両表皮層との対向面の少なくとも一方をハニカム構造に形成され、
前記中芯と前記各表皮層とは、それぞれの外周縁の溶着により接合され、
前記ハニカム構造は、ハニカムセグメント群により構成されている一方、
前記各表皮層の前記ハニカム構造との対向面には、前記接合時に前記ハニカムセグメントに嵌入する嵌入部が形成され、
前記ハニカムセグメントを隔成する隔壁の上面に突起部を形成し、
前記突起部は、前記接合時に前記対向面に弾接することを特徴とするまな板の構造。
【請求項3】
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記中芯は、前記両表皮層との対向面の少なくとも一方をハニカム構造に形成され、
前記中芯と前記各表皮層とは、それぞれの外周縁の溶着により接合され、
前記ハニカム構造は、ハニカムセグメント群により構成されている一方、
前記各表皮層の前記ハニカム構造との対向面には、前記接合時に前記ハニカムセグメントに嵌入する嵌入部が形成され、
前記ハニカムセグメントを隔成する隔壁には複数の切欠部が形成され、
前記切欠部間の切欠片の上面は、前記接合時に前記対向面に弾接することを特徴とするまな板の構造。
【請求項4】
前記隔壁は、多角形状に周設され、
前記突起部または前記切欠部は、前記隔壁のコーナー部に形成されていることを特徴とする請求項
2または3記載のまな板の構造。
【請求項5】
前記ハニカムセグメント群は、孔部が形成されたハニカムセグメントを備える一方、
前記嵌入部は、前記孔部に嵌入することを特徴とする請求項
1~4のいずれか記載のまな板の構造。
【請求項6】
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記両表皮層の少なくとも一方は、前記中芯との対向面をハニカム構造に形成されていることを特徴とするまな板の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用のまな板の構造であって、特に多層構造のまな板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
調理用のまな板としては、木製または合成樹脂製の単板構造のタイプが広く用いられている。ところが木製の単板構造は、包丁の刃当たりが良い反面、毛細管現象により水分が浸み込んで細菌が発生するなど衛生上の問題があった。また、浸み込んだ水分で全体重量が増加し、使い勝手が悪化するおそれもあった。
【0003】
一方、合成樹脂製の単板構造は、乾燥性が良く衛生上優れているものの、重量が重いなどの不具合があった。そこで、現在、特許文献1~3に示す多層構造のまな板が提案されている。
【0004】
特許文献1のまな板は、木板の上部表皮層と、合成樹脂板の下部表皮層と、両表皮層間に貼付された芯材(中間層)とを備えている。この芯材は、木目方向の異なる複数の板材により構成されている。
【0005】
特許文献2のまな板は、熱可塑性樹脂板の上部表皮層および下部表皮層と、両表皮層間に貼付された木板の芯材とを備えている。特許文献3のまな板は、合成樹脂板の上部表皮層および下部表皮層と、両表皮層間に貼付された木板の芯材と、該芯材に嵌め込まれた型枠とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-45227
【文献】特開平3-221017
【文献】特開平4-44726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のまな板は、木製または合成樹脂製の単板構造の欠点を補うために三層構造を採用しているものの、以下の問題が生じるおそれがある。
【0008】
(1)特許文献1のまな板は、木目方向の異なる板材で芯材を構成することで芯材の反り返り防止を図っている。
【0009】
しかしながら、木製の上部表皮層の反り返りについては対策が施されていなく、該上部表皮層が反り返って剥離するおそれがある。また、上部表皮層および芯材に水分が浸み込むことにより、木製単板構造と同様に衛生上の問題や重量増加の問題を生じるおそれがある。
【0010】
(2)特許文献2のまな板は、上部表皮層および下部表皮層に合成樹脂板を採用しているものの、木製の芯材を採用しているため、該芯材の外周から水分が浸み込んでしまう。
【0011】
そこで、特許文献3のように芯材の外周に型枠を嵌め込む手段が提案されているが、芯材と型枠の隙間から水分が侵入し、特許文献2と同様に芯材に水分が浸み込むおそれがある。
【0012】
(3)特許文献2,3のまな板は、木板の芯材を採用しているため、経年により反り返るおそれがある。この場合に上部表皮層と下部表皮層とは、芯材に接着されているにすぎず、芯材の反り返りを抑えることができない。このため、両表皮層が芯材から剥離するおそれがある。
【0013】
本発明は、このような従来の多層構造まな板の問題を解決するためになされ、包丁の刃当たりが木製単板構造に近い合成樹脂板の多層構造まな板を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の一態様は、
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記中芯は、前記両表皮層との対向面の少なくとも一方をハニカム構造に形成されていることを特徴としている。
【0015】
(2)本発明の他の態様は、
上下一対の合成樹脂板の表皮層と、
前記両表表皮層間に介装された合成樹脂板の中芯と、
を備え、
前記両表皮層の少なくとも一方は、前記中芯との対向面をハニカム構造に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、包丁の刃当たりが木材単板構造に近い合成樹脂板の多層構造まな板が提供される。したがって、多層構造まな板に木板を用いる必要が無く、この点で衛生的なまな板を提供でき、まな板の反り返りや重量増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】(a)は
図2のC-D部分拡大図、(b)は同C´-D´部分拡大図。
【
図7】(a)は実施例2のC-D部分拡大図、(b)は同C´-D´部分拡大図。
【
図9】(a)は実施例3のC-D部分断面図、(b)は同C´-D´部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係るまな板の構造を説明する。このまな板は、合成樹脂板の三層構造で構成されている。実施例1~3に基づき前記まな板の構造を説明する。
【0019】
≪実施例1≫
図1~
図6に基づき実施例1の前記まな板を説明する。
図1中の1は、前記まな板を示している。ここでは前記まな板1は、長方形状に形成され、四隅に浮き防止用の脚部14が設けられ、一般的な木製単板(無垢材)構造のまな板と同等の容積比重量に形成されている。
【0020】
また、前記まな板1は、
図2に示すように、上下一対の表皮層2,3と、両表皮層2,3間に介装された中芯(中間層)4とを備えている。この表皮層2,3および中芯4は、それぞれが略同寸法の長方形状に構成され、中芯4の上下面4a,4bと表皮層2,3の上下面2a,3aとを対向させた状態で接合されている。
【0021】
(1)中芯4
中芯4は、PP(ポリプロピレン)を主原料とする樹脂板により構成され、
図2に示すように、表皮層2,3と対向する上下面4a,4bの外周縁に周設された環状壁6および環状突起6aと、環状壁6内に形成されたハニカム構造5とを備えている。なお、
図2および
図3には中芯4の上面4aのみが表されているが、下面4bも同様に構成されているものとする。
【0022】
ハニカム構造5は、ハニカムセグメント(
図3中の多角形セグメント7および貫通孔8)群により構成されている。具体的には中芯4の幅方向L1の両端P,Qには略五角形状の多角形セグメント7を主体とするR1列が配列され、R1列間にはR2列とR3列とが交互に配列されている。このR2列は、略六角形状の多角形セグメント7および貫通孔8を主体に構成されている。一方、R3列は、略六角形状の多角形セグメント7を主体に構成されている。
【0023】
多角形セグメント7は、
図3および
図4に示すように、中芯4の基材となる底壁7aと、底壁7a上に略多角形状に周設された薄肉状の隔壁(リブ)7bとを備えている。一方、貫通孔8は、底壁7aに貫通形成され、「7列×7行」に形成されている。
【0024】
貫通孔8は、R2列の長手方向L2に沿って2行置きに形成されており、R2列の2行目と5行目と8行目と11行目と14行目と17行目と20行目とに形成されている。このときR2列とR3列とが交互に配列されているため、貫通孔8は幅方向L1および長手方向L2に等間隔に形成されている。ここでは二種類の貫通孔8a,8bが形成されている。
【0025】
貫通孔8aは、
図3中のQ側から2列目・4列目・5列目(2行目・5行目・11行目・17行目・20行目)に形成され、上下面4a,4bを貫通形成されている。なお、貫通孔8aの周囲には周壁7cが形成され、周壁7cは隣接する各多角形セグメント7の隔壁7bに略多角形状に囲繞され、周壁7cの内周面には環状溝7dが周設されている。
【0026】
貫通孔8bは、前記Q側から6列目および10列目(8行目・14行目)に形成されている。この各貫通孔8aの周囲には隔壁9,10が周設され、内周側の隔壁10に一対の切欠部10aが形成されている一方、外周側の隔壁9に隣接する多角形セグメントの隔壁7bが連続形成されている。
【0027】
隔壁7b,9は同等な高さに形成されている一方、隔壁10は隔壁7b,9よりも低く形成されている(
図5参照)。また、隔壁7b,9,10のそれぞれは、多角形セグメント7・貫通孔8b毎に周設され、隣接する多角形セグメント7の隔壁7bとの間に隙間Vが設けられている。
【0028】
(2)表皮層2,3
表皮層2,3は、PP(ポリプロピレン)および熱可塑性エラストマーを主原料とする合成樹脂板により構成されている。ここでは
図2に示すように、表皮層2の下面2aが中芯4の上面4aに対向する一方、表皮層3の上面3aが中芯4の下面4bに対向している。
【0029】
表皮層2,3の上下面2a,3aには、それぞれ外周縁に外周壁11が周設されている。この外周壁11内には、貫通孔8aに嵌入する嵌入部12aと、貫通孔8bに嵌入する嵌入部12bが形成されている。
【0030】
この嵌入部12a,12b群は、貫通孔8a,8b群と同じく「7列×7行」に配列され、嵌入部12aが貫通孔8aに応じた位置に形成されている一方、嵌入部12bが貫通孔8bに応じた位置に形成されている。なお、
図2中には表皮層3の上面3aのみが表されているが、表皮層2の下面2aも同様に構成されているものとする。
【0031】
具体的には
図4(b)に示すように、嵌入部12aは円環状に形成され、外径が貫通孔8aの内径と略同等に形成され、外周には環状溝7dに嵌合する環状突起12cが形成されている。一方、嵌入部12bは略環状に形成され、外径が貫通孔8bの内径と略同等に形成され、環状隔壁10に応じて一対の切欠部12dが形成されている。
【0032】
(3)中芯4と表皮層2,3との接合
表皮層2,3を中芯4に接合する際には、まず
図2に示すように、中芯4の上面4aに表皮層2の下面2aを対向させ、中芯4の下面4bに表皮層3の上面3aを対向させる。
【0033】
つぎに表皮層2,3の各嵌入部12a,12bを、
図5に示すように、それぞれの対応する中芯4の貫通孔8a,8bに位置決めして嵌入させる。これにより嵌入部12aの環状突起12cが、周壁7cの環状溝7dに嵌合する。
【0034】
また、中芯4の上下の環状突起6aをそれぞれ表皮層2,3の外周壁11に当接させるとともに、中芯4の上下の環状壁6をそれぞれ表皮層2,3の上下面2a,3aに当接させる。この状態の外周部Gに図示省略の振動溶着装置を用いて溶着を実行する。
【0035】
例えば外周部Gに対して「周波数=約200Hz~250Hz,振幅=約0.5mm~2.0mm」で横振動を発生させ、同時に圧力を加えて溶融させ、中芯4と表皮層2,3の外周部G同士を溶着させる。
【0036】
したがって、中芯4と表皮層2,3とが接着剤ではなく、振動溶着により接合される。このような前記まな板1の構造によれば、次の(A)~(E)の効果が得られる。
【0037】
(A)中芯4のハニカム構造5によれば、
図6に示すように、中芯4の両面4a,4bに形成された各隔壁7bの上端面が、それぞれ表皮層2,3の上下面2a,3aに弾接する。したがって、表皮層2,3の上下面2b,3bに応力が加われば、隔壁7bが弾性変形し、その応力の衝撃を吸収する。
【0038】
その結果、前記まな板1によれば、合成樹脂板の三層構造であるものの、表皮層2,3の上下面2b,3bに対する包丁の当たりが柔らかく、木製単板構造に近い刃当たりが得られる。
【0039】
これにより刃当たりが木製単板構造に近似した合成樹脂板の多層構造まな板を提供することが可能となる。なお、前記まな板1は、各多角形セグメント7内に空気層が形成されるため、弾性変形時に該空気層が圧縮し、隔壁7bの復元力を向上させている。
【0040】
(B)中芯4のハニカム構造5によれば、貫通孔8(8a,8b)群が形成されているため、前記まな板1の重量を軽減することができる。また、多角形セグメント7内が中空構造なため、さらに重量が軽減される。
【0041】
したがって、前記まな板1の重量を木材単板構造と同等な重量にすることができ、この点で軽量な合成樹脂製のまな板を提供することが可能となる。なお、多角形セグメント7および貫通孔8の個数は、前記まな板1の必要重量に応じて可変とする。
【0042】
(C)中芯4は合成樹脂板なため、特許文献1~3のように木製の芯材を使用されていない。したがって、前記まな板1は、特許文献1~3のように木製の芯材に水分が浸み込んで重量が増加するおそれがなく、また水分が浸み込んで細菌の温床となることもなく、衛生面でも問題は生じない。
【0043】
(D)ハニカム構造5によれば、多角形セグメント7群の各隔壁7b,9により中芯4の強度が向上する。したがって、前記まな板1は、木材単板構造に発生していた熱による収縮変形などが少なく、この点で中芯4の反り返りが防止されている。
【0044】
(E)前記まな板1の3層(中芯4,表皮層2,3)は振動溶着により接合されるため、接着剤は用いられていなく、安全面にも配慮されている。また、3層は共に合成樹脂板なため、抗菌材を含有させることができ、衛生面がさらに向上する。
【0045】
(F)前記まな板1は、表皮層2,3と中芯4とを硬度の異なる合成樹脂板で構成可能であり、表皮層2,3の硬度を低めにする一方、中芯4の硬度を高めにすることができる。これにより調理用食材の当たる部分を柔らかくしつつ、全体剛性を高めることができる。
【0046】
(G)表皮層2,3に付加価値を追加する添加剤を含有させる場合、該添加剤をまな板1全体ではなく、表皮層2,3のみの含有で済むため、コストを抑えることができる。
【0047】
(E)表皮層2,3に模様(例えば水切れを向上させる模様など)、デザイン(例えばキャラクター,食材のデザインなど)を追加する場合、表皮層2,3のみの加工で済むため、この点でもコストを抑制できる。
【0048】
例えば前記まな板1毎に肉用・野菜用・魚用などの使用目的に応じた表皮層2,3のデザインを付加する場合も表皮層2,3のみの加工でよい。
【0049】
≪実施例2≫
図7および
図8に基づき前記まな板1の実施例2を説明する。この実施例2では、実施例1の隔壁7bに代わって厚肉の隔壁17が周設されている。
【0050】
(1)隔壁17は、
図7(a)に示すように、多角形セグメント7に毎に別個独立に形成されているものではなく、隣接する多角形セグメント7同士間の境界壁として形成されている。
【0051】
また、隔壁17は、隔壁7bと同等の高さに形成されている一方、隔壁7bの約2倍の肉厚に形成され、隙間Vを廃止されている。言い換えれば隔壁17は、隙間Vを埋設して隣接する隔壁7b同士を合体させた形態を呈し、隔壁17の各コーナー部の上端面には縦断面半円状の突起部18が形成されている。
【0052】
なお、貫通孔8aに隣接する多角形セグメント7では、隔壁7bと周壁7cとの代わりに隔壁17が多角形セグメント7と貫通孔8aとの境界壁として形成されている。
【0053】
(2)このような実施例2の前記まな板1によれば、表皮層2,3と中芯4とを接合させたときには、
図8に示すように、突起部18が表皮層2,3の上下面2a,3aに弾接する。ここでは隔壁7bが肉厚に形成されているものの、表皮層2,3の上下面2b,3bに応力が加われば、突起部18が弾性変形し、その応力の衝撃を吸収する。
【0054】
したがって、実施例2の前記まな板1によれば、実施例1と同じく表皮層2,3の上下面2b,3bに対する包丁の当たりが柔らかく、木製単板構造に近い刃当たりとなり、この点で前記作用効果(A)が得られる。なお、実施例2の前記まな板1は、他の構成を実施例1と同じくするため、前記作用効果(B)~(E)も得られる。
【0055】
≪実施例3≫
図9および
図10に基づき前記まな板1の実施例3を説明する。この実施例3では、実施例2の隔壁17に代わって隔壁27が周設されている。
【0056】
この隔壁27は、隔壁17と略同等の高さに形成されている。ただし、隔壁27の各コーナー部では、突起部18が廃止され、凹状の切欠部27aが形成されている。この各切欠部27a間、即ち多角形の辺の部分には略長方形状の切欠片27bが形成されている。
【0057】
したがって、表皮層2,3を中芯4に接合させたときには、
図10に示すように、切欠片27bの上端面が表皮層2,3の上下面2a,3aに弾接する。このとき隔壁27の肉厚は隔壁7bよりも厚いものの、切欠部27aにより切欠片27bの弾性変形が容易となっている。
【0058】
これにより表皮層2,3の上下面2b,3bに応力が加われば、切欠片27bが弾性変形し、その応力の衝撃を吸収する。その結果、実施例3の前記まな板1は、実施例1,2と同じく表皮層2,3の上下面2b,3bに対する包丁の当たりが柔らかく、木製単板構造に近い刃当たりとなり、前記作用効果(A)が得られる。
【0059】
なお、実施例3の前記まな板1は、他の構成を実施例2と同じとするため、前記作用効果(B)~(E)も得られる。
【0060】
≪その他・他例≫
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。以下に一例を説明する。
【0061】
(1)例えば実施例2の突起部18を隔壁17のコーナー部ではなく、コーナー部間(多角形の辺の部分)に形成してもよく、また多角形セグメント7を円形のセグメントとして形成してもよい。
【0062】
(2)また、ハニカム構造5は、必ずしも中芯4の上下面2a,3aの双方に形成する必要なく、上下面2a,3aのいずれか一方に形成してもよいものとする。この場合にも実施例1~3の構成によれば、表皮層2,3の上下面2b,3bに対する包丁の当たりを柔らかくでき、木製単板構造に近い刃当たりが得られる。
【0063】
(3)さらに中芯4と表皮層2,3とを逆の構成とすることもできる。例えば表皮層2,3の上下面2a,3aにハニカム構造5を形成する一方、中芯4の上下面4a,4bに嵌入部12群を形成してもよい。
【0064】
この場合、表皮層2,3の上下面2a,3aの一方にハニカム構造5を形成し、ハニカム構造5に対向する中芯4の上下面4a,4bの一方に嵌入部12群を形成することもできる。ただし、水分の侵入防止の観点から表皮層2,3については、ハニカム構造5の貫通孔8を廃止し、嵌入部12が嵌入可能な凹部などに変形するなどの対策を施すことが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1…まな板
2,3…表皮層
4…中芯
5…ハニカム構造
6…環状壁(外周縁)
6a…環状突部(外周縁)
7…多角形セグメント
7b,9,17,27…隔壁(リブ)
8a,8b…貫通孔(孔部)
11…外周壁(外周縁)
12a,12b…嵌入部
18…突起部
27a…切欠部
27b…切欠片