(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】野縁の取付け構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20221121BHJP
E04B 9/20 20060101ALI20221121BHJP
E04B 9/16 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
E04B9/18 Q
E04B9/20 C
E04B9/18 M
E04B9/16 B
(21)【出願番号】P 2018202802
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3077974(JP,U)
【文献】実開昭51-102906(JP,U)
【文献】特開2017-203281(JP,A)
【文献】特開2017-226989(JP,A)
【文献】特開平10-102670(JP,A)
【文献】特開2009-179439(JP,A)
【文献】実開昭52-078309(JP,U)
【文献】特開2020-023796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/16-9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体天井部から所定の間隔を存して垂下される複数の吊りボルトと、該吊りボルトの下部側に野縁取付金具を介して取付けられる複数の野縁と、該野縁にビス固定される天井パネルを含む天井下地において、
前記野縁は、その開口側となる両野縁側面の上端が、内方に逆L字状又はU字状に折曲された野縁折曲片を有して形成され、
前記野縁取付金具は、野縁の開口側を覆う上面被嵌片と、該上面被嵌片の両側から両野縁側面に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片と有して下向きコ字状に形成せしめた野縁被嵌部材と、該野縁被嵌部材の下面域に配設されて、前記両野縁折曲片に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部材とを組として備え、
前記野縁被嵌部材と野縁支持受け部材とを、それぞれに穿設したボルト挿通孔に吊りボルトを挿通させて、吊りボルトの先端部に抜け止め支持させた状態で連結組付け可能に構成せしめ、
当該吊りボルトに組付けした状態で、前記野縁支持受け部材を、野縁の長手方向を向く縦姿勢で、野縁内部へ配置させ、かつ、回転操作による横姿勢で前記野縁折曲片を支持受けさせると共に、前記野縁被嵌部材を野縁に被嵌セットし、
前記野縁被嵌部材の上側となる吊りボルトに設けたナットの締め付け操作で、前記野縁折曲片を、前記上面被嵌片に上動圧接させて、前記野縁支持受け部材の上側両端部との間で挟持固定することで、野縁を吊りボルトの下端部に取り付けせしめたことを特徴とする野縁の取付け構造。
【請求項2】
請求項1において、前記野縁被嵌部材と野縁支持受け部材とを、前記ボルト挿通孔を介して
前記吊りボルトによらず抜け止め支持するに、該ボルト挿通孔に締結ボルト
を挿通させて抜け止め支持させた状態で組付けする一方、前記野縁被嵌部材には、前記上面被嵌片に背反して立ち上がる逆L字状に折曲する吊りボルト固定部を形成し、該吊りボルト固定部に穿設した吊りボルト挿通孔を介して、その上下面を挟んで吊りボルトの先端部にナット固定し、前記締結ボルトの締め付け操作で、前記野縁折曲片を、前記上面被嵌片に上動圧接させて、前記野縁支持受け部材の上側両端部との間で挟持固定することで、野縁を吊りボルトの下端部に取り付けせしめたことを特徴とする野縁の取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2において、前記野縁支持受け部材は、上面片を介して下向きコ字状に折曲された垂下折曲片と、その両端部に、前記側面被嵌片に対向し、野縁側面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片とを備えて形成すると共に、該廻り止め当接片を、回転操作による横姿勢で両野縁側面に対面当接させて、前記側面被嵌片との間で前記野縁側面を挟んでビス固定可能に構成してあることを特徴とする野縁の取付け構造。
【請求項4】
請求項3において、前記廻り止め当接片は、その上端部が前記野縁折曲片を支持受けする支持受け片に兼用されていることを特徴とする野縁の取付け構造。
【請求項5】
請求項
3または4において、前記垂下折曲片には、その中央下部に、ボルトまたはナットを廻り止めセット可能なボルト保持部が形成されている野縁の取付け構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、前記野縁支持受け部
材の上側両端部には、前記野縁折曲片が逆U字状溝である場合に、該逆U字状溝内に挿入して野縁を支持受けするよう切欠きされた野縁支持受け溝が形成されていることを特徴とする野縁の取付け構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかにおいて、前記吊りボルトが、躯体天井部を構成するC型鋼に取着される吊りボルト取付金具を介して垂下固定される天井下地において、
前記吊りボルト取付金具を、C型鋼の開口側となるリップ片に面当てされてビス固定される正面固定片と、該正面固定片の両側がL字状に折曲形成されて、そのコーナー部にリップ片への掛止溝が切欠き形成された側面係止片と、正面固定片の上下に前記側面係止片に背反して折曲形成され、その中央部に穿設された吊りボルト挿入孔を介して、吊りボルトを垂下固定する吊りボルト垂下固定部とを備えて構成し、
前記吊りボルト垂下固定部に、その上下面を挟んで吊りボルトの上端部をナット固定した状態から、当該ナットの緊緩操作による吊りボルトの上下位置変更により、前記吊りボルトの下端部に取り付けられた野縁の上下位置を、前記吊りボルト取付金具側で調整可能としたことを特徴とする野縁の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体天井部(天井スラブやC型鋼など)と天井パネルとの間に形成される天井スペース(ふところ)の狭い天井下地に好適な野縁の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、在来天井は、所定の間隔を存して躯体天井部を構成する天井スラブ、垂木用や母屋用のC型鋼(C字状のリップ溝型材)などに垂下される複数の吊りボルトと、これら吊りボルト間の下端部に野縁受けハンガーや吊金具を介して支持されるチャンネル状の野縁受け(天井下地材)と、上方に開口する両側面部の上端内方に逆U字状溝を有し、野縁取付金具を介して野縁受けに取り付けされる複数のチャンネル状の野縁(天井下地材)と、野縁にビス止めされる天井パネルとから構成される。
【0003】
ところで従来、かかる天井下地に採用される野縁受けハンガーは、垂下する吊りボルトの下端部に、ナット止め調整により上下位置調整可能に連結される側面視逆L字状の吊りボルト固定部と、野縁受けを上方から落とし込んで支持するようU字状の野縁受け支持部とが縦設して一体形成され、吊りボルトに対する野縁受けハンガーのナットの緊緩操作による位置変更によって、上下位置が調整されるようにした縦設タイプのものが知られている(特許文献1の
図4参照)。
【0004】
しかしながら、この様な縦設タイプの野縁受けハンガーは、野縁受けの高さ幅となる全体を野縁受け支持部に落とし込み支持する必要があり、野縁受けの高さ幅よりも長い深さを有して形成しなければならず、従って、吊りボルト固定部は、必然的に当該野縁受け支持部よりも上側に設けて、全体を側面視し字状の縦長に形成しなければならないという制作上の制約がある。このため、躯体天井部と天井パネルとの間に形成される天井スペースが狭い天井下地構造である場合に、例えば、そもそも野縁受けハンガーを取り付けするためのスペースが無かったり、或いは、吊りボルトに野縁受けハンガーをナット固定した状態で、野縁受けを野縁受け支持部へ落とし込むという作業が行なえなくなるため、採用することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献2に開示した如く、側面視コ字状の野縁受け嵌装固定部(61)と、その背反側に、吊りボルト(2)の下端部側をナット固定されるL字状に折曲した吊りボルト固定部(62)とを備えて一体形成し、野縁受け固定金具(6)の高さ幅を短く形成して、上側ナット(21)を野縁受け(3)の上面から突出しない状態で配設できるようにし、天井スペースの狭い天井下地構造であっても、新設、既設を問わず吊りボルトの下端部に野縁受け(3)を固定することができるようにして、コンパクト化と耐震補強が図られた野縁受け固定金具(6)を提案した。
【0006】
しかしながら、天井スペースの広狭にかかわらず、野縁受け固定金具(6)と野縁受け、野縁取付金具と野縁、天井パネルといった天井下地全体の荷重が吊りボルト固定片(621)に集中して加わる天井構造であることに何ら変わりがなく、地震等の揺れを受けると、その応力負荷が最も集中し、
図7に示す野縁受けハンガー(31)の逆L字状の吊りボルト固定片に比し、吊りボルト固定片(621)が、く字状に延びる拡開変形を減少規制できるものの、野縁(5)と野縁受け(51)との間にガタツキが生じ、野縁固定金具(5a)などが位置ズレを生じる危惧がある一方、天井スペースの狭い天井下地における吊りボルトは、通常の高さスペースを有するものに比し、極めて短尺であるため耐震性に対する揺れの影響が小さく、かかる野縁受け固定金具(6)と野縁受けを配設した天井構造では過剰品質となって、耐震に対する短尺な吊りボルトの優位性を生かし切れておらず、従来の天井構造によらない新たな野縁の取付け構造の実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-121370号公報
【文献】特開2017-218804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、野縁受けハンガーの吊りボルト固定片に対して天井下地全体の負荷荷重が集中して加わる天井構造を廃し、野縁を野縁取付金具を介して吊りボルトに直接取り付けできるようにして、天井下地の軽量化を図るだけでなく、野縁被嵌部材と野縁支持受け部材の2部材を、吊りボルトに対して、天井荷重を分散させた状態で野縁折曲片を強固に圧接挟持固定し、かつ側面被嵌片に野縁側面をビス固定できるようにして、野縁と野縁取付金具との三位一体となった固定構造により組付け剛性強度を高め、しかも、野縁折曲片に対する挟持機能に加え、野縁受けハンガーを取り付けするための天井スペースの無い、或いは、狭い天井下地構造であっても、耐震に対する短尺な吊りボルトの優位性を生かして、吊りボルトの下端部に吊持固定される野縁取付金具へ加わる天井下地全体の振動負荷を軽減することで、容易かつ好適に採用することのできる野縁の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の野縁の取付け構造は、躯体天井部から所定の間隔を存して垂下される複数の吊りボルトと、該吊りボルトの下部側に野縁取付金具を介して取り付けられる複数の野縁と、該野縁にビス固定される天井パネルを含む天井下地において、前記野縁は、その開口側となる両野縁側面の上端が、内方に逆L字状又はU字状に折曲された野縁折曲片を有して形成され、前記野縁取付金具は、野縁の開口側を覆う上面被嵌片と、該上面被嵌片の両側から両野縁側面に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片と有して下向きコ字状に形成せしめた野縁被嵌部材と、該野縁被嵌部材の下面域に配設されて、前記両野縁折曲片に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部材とを組として備え、前記野縁被嵌部材と野縁支持受け部材とを、それぞれに穿設したボルト挿通孔に吊りボルトを挿通させて、吊りボルトの先端部に抜け止め支持させた状態で連結組付け可能に構成せしめ、当該吊りボルトに組付けした状態で、前記野縁支持受け部材を、野縁の長手方向を向く縦姿勢で、野縁内部へ配置させ、かつ、回転操作による横姿勢で前記野縁折曲片を支持受けさせると共に、前記野縁被嵌部材を野縁に被嵌セットし、前記野縁被嵌部材の上側となる吊りボルトに設けたナットの締め付け操作で、前記野縁折曲片を、前記上面被嵌片に上動圧接させて、前記野縁支持受け部材の上側両端部との間で挟持固定することで、野縁を吊りボルトの下端部に取り付けせしめたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のように構成したことにより、野縁受けハンガーの逆L字状の吊りボルト固定片に対して天井下地全体の負荷荷重が集中して加わる天井構造を廃し、野縁を野縁取付金具を介して吊りボルトに直接取り付けでき、天井下地の軽量化を図るだけでなく、野縁被嵌部材と野縁支持受け部材の2部材を、吊りボルトの下端部に対して、その上面側と下面側間における長さ幅域を存して、ボルト挿通孔を介した中心位置で直接抜け止め支持し得るので、吊りボルトの先端に加わる吊持荷重を、均等に分散させた状態で組付けできるだけでなく、野縁被嵌部材の上側となる吊りボルトに設けたナットの締め付け操作によって、野縁折曲片を強固に圧接挟持固定し、かつ側面被嵌片に野縁側面をビス固定することができると共に、野縁と野縁取付金具との三位一体となった固定構造により、野縁自体の外周が補強された状態でねじれや湾曲変形に対する組付け剛性強度を高めることができる。その結果、地震等により上下方向やねじれ方向等の揺れを受けた際に、吊りボルトの先端に加わる振動負荷が、一方向に片寄らずに野縁取付金具を中心にバランス良く分散され、共振作用による揺れの増幅などが抑止されると共に、野縁支持受け部材に天井自重による負荷が加わっても、湾曲変形を生じることなく、両野縁折曲片と両野縁側面との3面を確りと補強して一体化された状態が維持され、野縁とのガタツキや位置ズレを防止することができる。殊に、耐震組付け強度を向上させた状態で取り付けでき、野縁受けハンガーを取り付けするための天井スペースの無い、或いは、狭い天井下地構造に容易に採用することができ、耐震に対する短尺な吊りボルトの優位性を生かして、吊りボルトの下端部に吊持固定される野縁取付金具へ加わる荷重は野縁と天井パネルだけとなり、天井下地全体の軽量化に伴って、その振動負荷の軽減が図られ、耐震強度や耐震性能を飛躍的に向上させることができ、吊りボルトの垂下姿勢を長期に亘って好適に維持し、良好な吊持状態を恒久的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る野縁の取付け構造に用いられる野縁取付金具によって、吊りボルト取付金具に垂下固定された吊りボルトに野縁を取り付けした状態を示す説明図であって、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る野縁の取付け構造に用いられる他の野縁取付金具によって、天井スラブに垂下固定された吊りボルトに野縁を取り付けした状態を示す説明図であって、(A)はその正面図、(B)は側面図である。
【
図3】本発明の吊りボルト取付金具に垂下固定される吊りボルトに野縁被嵌部材と野縁支持受け部材を組付けした状態を示す野縁取付金具であって、(A)はその正面図、(B)は側面図である。
【
図4】本発明かかる野縁被嵌部材の他の実施例を示す野縁取付金具であって、(A)はその正面図、(B)は側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る野縁の取付け構造において、(A)はC型鋼に取り付けられる吊りボルト取付金具の斜視図、(B)は野縁取付金具の野縁被嵌部材を示す斜視図、(C)は野縁被嵌部材の他の実施例を示す斜視図、(D)は野縁取付金具の野縁支持受け部材を示す上面側と底面側の斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に用いる野縁取付金具であって、(A)は吊りボルト取付金具に吊りボルトと共に組付けした状態を示す説明図、(B)は天井スラブに垂下固定された吊りボルトにナットを用いて抜け止め組付けした状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に用いる野縁取付金具を吊りボルト又は締結ボルトに組付けした状態で、野縁を取り付けする手順を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する野縁取付金具を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に用いられる野縁取付金具によって、吊りボルト取付金具に垂下固定された吊りボルトに野縁を取り付けした状態を示す説明図野説明図であって、この図に示すC型鋼1(C字状のリップ溝型材)は、垂木用や母屋用として施工されて躯体天井部を構成するものであり、吊りボルト2には、ボルト頭2a付きのものが用いられ、吊りボルト取付金具3を介して垂下固定された天井下地を示している。
図2は、同じく天井スラブに垂下固定された吊りボルトに野縁を取り付けした状態を示す説明図であり、この図に示す天井スラブ1aには、ボルト頭2aを有しない吊りボルト2が用いられた天井下地を示している。
かかる天井下地には、躯体天井部から所定の間隔を存して垂下される複数の吊りボルト2と、これら吊りボルト2の下端部に野縁取付金具5を介して取り付けられる野縁4(天井下地材)と、野縁4にネジ固定される天井パネルが含まれている。
【0013】
そして、本実施形態に示す野縁4の取付け構造は、躯体天井部(C型鋼1や天井スラブ1aなど)と天井パネルとの間に形成される天井スペース(ふところ)の狭い天井下地構造に野縁4を取り付けた場合に採用される施工例を示しているが、天井スペースの広さに応じて、躯体天井部と野縁取付金具5との間で吊りボルト2に固定される振れ止め固定金具を介して水平状に振れ止め(天井下地材)が架設される。
【0014】
野縁4としては、その板厚規格が約1.2mmまたは1.6mmの厚板材によって、開口側を上方に向けてその両野縁側面42、42の上端が内方に折曲形成された逆L字状の野縁折曲片41、41を有するもの、又は、約0.5mmの薄板材によって、開口側両側部の上端が内方に折曲形成された逆U字溝状の野縁折曲片41を有するものがあり、また、幅寸法が異なるダブル野縁やシングル野縁、および、それぞれに高さ幅の異なる19形(19mm)と25形(25mm)とがあり、本実施形態においては、この逆U字溝状の野縁折曲片41を有するダブル野縁の19形のものを例示している。また、野縁4は、
図1に示す天井構造においてはC型鋼1と直交して配置される。
【0015】
次に、本発明の実施態様に係る野縁の取付け構造に用いる野縁取付金具について、
図3~5を参照して
図1、2の取付け態様と共に説明する。
図3の(A)は野縁取付金具の正面図、(B)は側面図、
図4は、野縁取付金具の他の実施例を示し(A)は正面図、(B)は側面図である。
図5の(A)はC型鋼に取り付けられる吊りボルト取付金具の斜視図、(B)は野縁取付金具の野縁被嵌部材を示す斜視図、(C)は野縁被嵌部材の他の実施例を示す斜視図、(D)は野縁取付金具の野縁支持受け部材を示す上面側と底面側の斜視図である。
【0016】
これらの図に示すように、吊りボルト取付金具3は、C型鋼1の開口側となるリップ片11に面当てされてビス固定される正面固定片31と、この正面固定片31の両側がL字状に折曲形成されて、そのコーナー部にリップ片11への掛止溝33、33が切欠き形成された側面係止片32、32と、正面固定片31の上下に側面係止片32に背反して折曲形成され、その中央部にそれぞれ穿設された吊りボルト挿入孔34a、34bを介して、吊りボルト2を垂下固定する一対の上側垂下片341と下側垂下片342とからなる吊りボルト垂下固定部34とを備えて、板厚が2.3mmの厚板材にて全体がプレスにより一体成型されている。吊りボルト2には、吊りボルト挿入孔34bに挿通後、上側垂下片341と下側垂下片342との間にナット2bを配設させておき、吊りボルト挿入孔34aに挿通後にナット2bを螺入させて、上側垂下片341に抜け止め組付けした状態で、野縁取付金具5をセットするようになっている。なお、正面固定片31の所定個所にビス孔31a、31aが穿設されている。
【0017】
野縁取付金具5は、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52(52’)との2部材を組として構成され、吊りボルト2または締結ボルト21に組付けされる。野縁被嵌部材51は、野縁4の開口側を覆う上面被嵌片511と、該上面被嵌片511の両側から両野縁側面42、42の外周側に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片512、512と有して下向きコ字状に形成せしめて、板厚が2mmの厚板材によって、全体をプレスにより一体成型される。上面被嵌片511の中央部位には、吊りボルト2または締結ボルト21を挿通するためのボルト挿通孔51aが穿設されており、後述する廻り止め当接片523と対向する個所にビス孔51bがそれぞれ穿設されている。
【0018】
野縁支持受け部材52は、上面片521を介して下向きコ字状に折曲された垂下折曲片522、522と、その両端部に、側面被嵌片512、512に対向し、両野縁側面42、42の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片523、523とを有し、その中央部位となる上面片521に吊りボルト2または締結ボルト21のボルト挿通孔52aが穿設され、両垂下折曲片522、522に、吊りボルト2のボルト頭2aまたはナット2bを廻り止めセット可能な溝状のボルト保持部52bとを有して、全体が板厚が1.6mmの野縁被嵌部材51よりも薄板材にてプレスにより一体成型される。野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52は、吊りボルト2または締結ボルト21を介して上面被嵌片511の下面域(野縁被嵌部材51のコ字状内面域)に回転及び上下移動可能に連結された仮組付け状態で工場出荷される。
【0019】
ボルト保持部52bはコ字状に切欠きされた溝状に形成され、その溝幅は、吊りボルト2のボルト頭2aまたはナット2bの一辺の寸法幅よりも広幅でかつ回り止め保持できる溝幅を有しており、その切欠き溝の開口側から吊りボルト2を配設セットできるようになっている。上面片521の両端部には、野縁折曲片41、41の逆U字状溝内に挿入して野縁4を支持受けするよう略V字状に切欠きして、それぞれの垂下折曲片522…の4個所に形成された野縁支持受け溝52c…と、両垂下折曲片522、522の両端部に、野縁支持受け部材52を縦姿勢から横姿勢へ回転操作して姿勢変姿した際に、廻り止め当接片523、523が側面被嵌片512に対向して、両野縁側面42、42の内面に対面当接するようになっている。なお、ボルト保持部52bと野縁支持受け溝52cは、野縁支持受け部材52を上下逆にして形成させても良い。
【0020】
つまり、この廻り止め当接片523、523は、縦姿勢から横姿勢へ時計回りに一方向回転操作によって姿勢変姿が行えるように、両垂下折曲片522、522の対角側となる両端部の同方向に折曲形成されており、その上端面が野縁支持受け溝52c…の上端面と面一となるように延出折曲され、野縁折曲片41、41の逆U字状溝内に野縁支持受け溝52c…と共に挿入されて野縁4を支持受けする機能と、側面被嵌片512、512との間で両野縁側面42、42をドリルビスにてビス固定することで圧接挟持する機能を兼ね備えている。なお、ナット2bをボルト保持部52bにセットさせた状態でも吊りボルト2または締結ボルト21を回転操作すれば、野縁支持受け部材52を縦姿勢から横姿勢へ回動できるが、スムーズに回動されない場合は指押し操作すれば良い。なお、廻り止め当接片523は必要において形成すれば良く、また、その折曲形態は任意であり、要は、野縁側面42の内面に当接または対向配置されビス固定可能なものであれば良い。
【0021】
図2および
図5(A)は、野縁取付金具5の他の実施例を示し、これら図に示す野縁被嵌部材51’は、野縁被嵌部材51の上面被嵌片511から上方へ折曲形成させた逆L字状の吊りボルト固定部513を設けたものであり、吊りボルト固定部513の上面中央には吊りボルト挿通孔51cが穿設されており、その余の構成は同じであるため詳細な説明は省略する。この野縁被嵌部材51’を用いる場合は、野縁被嵌部材51’と野縁支持受け部材52とを締結ボルト21(ボルト21aとナット2b)を介して上面被嵌片511の下面域に回転及び上下移動可能に連結された仮組付けさせておき、主に天井スラブ1aに垂下固定された吊りボルト2に取り付けする場合において、野縁取付金具5の上下位置の調整幅が大きくなる場合に、野縁被嵌部材51と混在して用いても良く、或いは、単独で使用でも良い。また、締結ボルト21を用いずに吊りボルト2の先端にナット2bを用いて、ボルト保持部52bで廻り止めセットした状態で抜け止め支持させても良い。
【0022】
次に、本発明の実施態様に係るの野縁4の取り付け手順について、
図6の(A)、(B)、
図7の(A)~(D)を参照して説明する。これらの図に示すように、先ず、施工現場の躯体天井部が
図6(A)に示すC型鋼1である場合は、
図3に示すように吊りボルト2に組付けされた野縁取付金具5を用い、吊りボルト取付金具3を組み付ける。この組み付けにあたっては、吊りボルト2の先端を吊りボルト挿入孔34aに挿通後にナット2bを螺入させて、更に吊りボルト挿入孔34bに挿通させてナット2bを螺入することで、吊りボルト垂下固定部34に抜け止め状態で仮組付けする。この組付け状態で、側面係止片32、32の掛止溝313を、C型鋼1の開口側からリップ片11に挿入して吊りボルト取付金具3を掛止セットし、野縁取付金具5に野縁4を組付け固定作業が完了した後に、正面固定片311をビス孔31aを介してリップ片11にビス固定すれば取り付け作業が完了する。その際、野縁取付金具5の上下位置調整は、上側垂下片341の上面に螺入したナット2bの緊緩操作により行い、上側垂下片341と下側垂下片342との間のナット2bの締め付け操作で位置固定する。
【0023】
この様に、吊りボルト2は、下側垂下片342側に挿通させた状態で、上側垂下片341側でナット固定され、所定間隔を存した長さ幅域をもって、吊りボルト挿入孔34aと34bとによって2点支持させているので、地震等による振動を受けた際に、振動負荷が一点集中することがなく、天井パネル側からの振動を吊りボルト挿入孔34b側で僅かに大きい挿通孔径内において、僅かな振動を許容することで、ナット固定された上側垂下片341への振動伝達を減衰させ、分散支持受けすることができ、吊りボルト2の湾曲変形を防止することができる。
【0024】
一方、躯体天井部が
図6(B)に示すように、吊りボルト2が予め垂下固定された天井スラブ1a等である場合には、吊りボルト2に対して、上側のナット2b、野縁被嵌部材51、野縁支持受け部材52、下側のナット2bの順で組付けセットする。この状態で、下側のナット2bを緊緩操作することで、野縁4を取り付けする前工程で野縁取付金具5の上下位置調整を行う。つまり、天井スラブ1aに垂下固定された吊りボルト2…は、その先端部の誤差が小さく、本実施形態における野縁4に、高さ幅が19mmの浅底の19型が使用されていても、野縁支持受け部材52と野縁4の底面との間に5mm程度の調整幅が存在するので、高さ位置合わせが可能であり、25形(25mm)である場合には充分な調整幅が得られる。また、野縁被嵌部材51に替えて締結ボルト21と共に野縁被嵌部材51’を用いる場合には、従来の野縁受けハンガーと同様にナット固定による高さ位置調整が行われが、その天井荷重をナット固定された吊りボルト2と背反する側で野縁受けを支持受けする構造と異なり、上面被嵌片511と吊りボルト固定部513が野縁4の長手方向に振り分け配置されているため、天井荷重も同方向(同軸線上)で支持受けする構造となり、天井全体の軽量化と相まって、耐震性能を飛躍的に向上させることができる。
【0025】
次いで、この様に吊りボルト2に野縁取付金具5を仮組付けしたセット後に、野縁4を野縁取付金具5に取り付けする手順について、
図7の(A)~(D)を参照して説明する。先ず、このセット状態で、野縁4を開口側から野縁支持受け部材52を飲み込む形でその底面に当接させ(図(A)参照)、吊りボルト2又は締結ボルト21を回転操作し、または、
図6(B)に示すナット2bで野縁支持受け部材52を支持受けした場合を含め、指押し操作することにより、野縁支持受け部材52を、野縁側面42の内面に廻り止め当接片523を対面当接させた状態で横姿勢にセットした後、野縁4をその自重により降下させることで、野縁折曲片41の逆U字状溝が野縁支持受け溝52cの傾斜に沿った挿入がなされた吊持状態でセットされる(図(B)参照)。
【0026】
このセット状態から、吊りボルト2(締結ボルト21)のナット2bを締め付け操作することで、野縁支持受け部材52と共に野縁4を上動させて野縁折曲片41を、上面被嵌片511と野縁支持受け部材52の両端部(野縁支持受け溝52cと廻り止め当接片523の上端面)との間で強固に圧接した状態で挟み込み挟持する(図(C)参照)。この操作時において、野縁支持受け部材52は、縦姿勢から横姿勢への回転を許容するため、廻り止め当接片523と両野縁側面42、42との間に所定の隙間を有して、回転操作範囲が図(D)に示す90度+1、2度程度の許容範囲をもって設定されて組付けられており、ナット2bの締め付け操作に追随して、廻り止め当接片523の先端が傾斜した状態で野縁側面42の内面に当接され、その当接状態が維持されたまま、野縁被嵌部材51の上面被嵌片511と野縁支持受け部材52の上面片521との間に隙間を保持した、所謂スナップを効かせた状態で、野縁折曲片41を強固に圧接させて挟持固定することができ、締め付け過ぎや振動により野縁支持受け部材52に挫屈等の変形を生じることが無く、この挟持状態を維持したまま側面被嵌片512と廻り止め当接片523との間で、両野縁側面42、42がビス止めにより確りと挟み込み固定され、野縁4自体の外周3面が補強された状態で組付け剛性強度を強固なものとすることができる。
【0027】
しかも、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52の2部材を、吊りボルト2の下端部に対して、その上面と下面間(ボルト頭2aと上側ナット2b間)の長さ幅域を存して、ボルト挿通孔51aと52aを介した中心位置で直接抜け止め支持することができるので、吊りボルト2の先端(ボルト頭2a)に加わる吊持荷重を、野縁支持受け部材52の垂下折曲片522、522により変形が防止された状態で確りと支持受けして組付けすることができ、地震等の振動を受けても、吊りボルト2の先端に加わる振動負荷を、均等に分散させることができ、野縁4とのガタツキや位置ズレが防止されて、その挟持状態を好適に維持することができ、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52に変形を生じることもなく、耐震組付け強度の向上を図ることができ、耐震に対する短尺な吊りボルトの優位性を生かして、吊りボルト2の下端部に吊持固定される野縁取付金具5へ加わる荷重は野縁4と天井パネルだけとなり、天井下地全体の軽量化に伴って、その振動負荷を軽減することができる。
【0028】
しかる後、側面被嵌片512と廻り止め当接片523との間で両野縁側面42、42をビス止めにより挟み込み固定すれば取り付け作業が完了する。この挟み込み固定にあたっては、下野縁支持受け部材52は、野縁被嵌部材51よりも薄板厚材にて、全体が下向きコ字状にて成型してあるので、使用されるものが波板状に形成された板材である場合に比して強度があり、吊りボルト2(締結ボルト21)をナット2bにより強固に締め付け操作しても、両垂下折曲片522、522を介して固定されるので、両者間に挫屈等の変形を生じることが防止され、しかも、側面被嵌片512に穿設されたビス孔51bはドリルビスの外径と略同径に設定されているので、廻り止め当接片523が両野縁側面42、42に当接しない状態でビス固定しても、ドリルビスがビス孔51bを介して傾斜状に螺入されて廻り止め当接片523が引き寄せられて、両野縁側面42、42の内面に当接させた状態で挟み込み固定することができるようになっている。
【0029】
つまり、この様に両野縁側面42、42を、側面被嵌片512と廻り止め当接片523との間で挟持固定することにより、従来の側面被嵌片512と野縁側面42とを直接ビス固定したものに比べて、ビス止め部分に振動負荷が集中的に加わった際に、ビスとの水平方向等への衝突作用を受けて変形や亀裂を生じ、或いは、ネジ止め機能が損なわれ、甚だしくは野縁4自体がビス止め部分で折れ曲がったり、割裂を招来する危惧があり、その様な欠点が払拭され、ドリルビスとの衝突作用によって亀裂等の損傷を生じることが無く、耐震組付け強度を向上することができ、野縁4の4面における締め付け挟持状態を長期に渡って保持することができる。
【0030】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、天井下地の施工において、躯体天井部から所定の間隔を存して垂下される吊りボルト2の下部側に、野縁取付金具5を介して野縁4を取り付けるのであるが、本発明にかかる野縁4の取付け構造は、野縁取付金具5を、野縁4の開口側を覆う上面被嵌片511と、該上面被嵌片511の両側から両野縁側面42、42に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片512と有して下向きコ字状に形成せしめた野縁被嵌部材51と、該野縁被嵌部材51の下面域に配設されて、両野縁折曲片41、41に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部材52とを組として備え、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52とを、それぞれに連通して穿設したボルト挿通孔51aと52aに吊りボルト2の先端部を挿通させて、吊りボルト2の先端部に抜け止め支持させた状態で連結組付け可能に構成せしめ、当該吊りボルト2に組付けした状態で、野縁支持受け部材52を、野縁4の長手方向を向く縦姿勢で、野縁4の内部へ配置させ、かつ、回転操作による横姿勢で野縁折曲片41、41を支持受けさせると共に野縁被嵌部材51を野縁4に被嵌セットし、野縁被嵌部材51の上側となる吊りボルト2に設けたナット2bの締め付け操作で、野縁折曲片41、41を、上面被嵌片511に上動圧接させて、野縁支持受け部材52の上側両端部との間で挟持固定することで、野縁4を吊りボルト2の下端部に取り付けせしめている。
【0031】
この様に構成すると、野縁受けハンガーの逆L字状の吊りボルト固定片に対して天井下地全体の負荷荷重が集中して加わる天井構造を廃し、野縁4を野縁取付金具5を介して吊りボルト2に直接取り付けでき、天井下地の軽量化を図るだけでなく、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52の2部材を、吊りボルト2の下端部に対して、その上面側と下面側間における長さ幅域を存して、ボルト挿通孔51aと52aを介した中心位置で直接抜け止め支持し得るので、吊りボルト2の先端に加わる吊持荷重を、均等に分散させた状態で組付けできるだけでなく、野縁被嵌部材51の上側となる吊りボルト2に設けたナット2bの締め付け操作によって、野縁折曲片41、41を強固に圧接挟持固定し、かつ側面被嵌片512に野縁側面42をビス固定することができると共に、野縁4と野縁取付金具5との三位一体となった固定構造により、野縁4自体の外周が補強された状態でねじれや湾曲変形に対する組付け剛性強度を高めることができ、両野縁側面42、42を挟み込みするビス固定作業も容易に行うことができる。
【0032】
その結果、地震等により上下方向やねじれ方向等の揺れを受けた際に、吊りボルトの先端に加わる振動負荷が、一方向に片寄らずに野縁取付金具5を中心にバランス良く分散され、共振作用による揺れの増幅などが抑止されると共に、野縁支持受け部材52に天井自重による負荷が加わっても、湾曲変形を生じることなく、両野縁折曲片41、41と両野縁側面42、42との3面を確りと補強して一体化された状態が維持され、野縁4とのガタツキや位置ズレを防止することができる。殊に、耐震組付け強度を向上させた状態で取り付けでき、野縁受けハンガーを取り付けするための天井スペースの無い、或いは、狭い天井下地構造であっても、耐震に対する短尺な吊りボルト2の優位性を生かして、吊りボルト2の下端部に吊持固定される野縁取付金具5へ加わる荷重は野縁4と天井パネルだけとなり、天井下地全体の軽量化に伴って、その振動負荷の軽減が図られ、耐震強度や耐震性能を飛躍的に向上させることができ、吊りボルト2の垂下姿勢を長期に亘って好適に維持し、良好な吊持状態を恒久的に保持することができる。
【0033】
また、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52とを、ボルト挿通孔51aと52aを介して吊りボルト2によらず抜け止め支持するに、該ボルト挿通孔52aと52bに締結ボルト21を挿通させて抜け止め支持させた状態で組付けする一方、野縁被嵌部材51には、上面被嵌片511に背反して立ち上がる逆L字状に折曲する吊りボルト固定部513を形成し、該吊りボルト固定部513に穿設した吊りボルト挿通孔51cを介して、その上下面を挟んで吊りボルト2の先端部にナット固定し、締結ボルト21の締め付け操作で、野縁折曲片41、41を、上面被嵌片511に上動圧接させて、野縁支持受け部材52の上側両端部との間で挟持固定することで、野縁4を吊りボルト2の下端部に取り付けせしめるよう構成してある。
【0034】
この様に構成すると、野縁被嵌部材51に替えて締結ボルト21と共に野縁被嵌部材51’を用いる場合には、従来の野縁受けハンガーと同様にナット固定による高さ位置調整を行うことができるだけでなく、野縁被嵌部材51と共に必要個所にのみ採用する補助的な部材として適用することができ、しかも、野縁受けハンガーの如く、天井荷重をナット固定された吊りボルト2と背反する側で野縁受けを支持受けする構造と異なり、上面被嵌片511と吊りボルト固定部513が野縁4の長手方向に振り分け配置されているため、天井荷重も同方向(同軸線上)で支持受けする構造となり、天井全体の軽量化と相まって、耐震性能を飛躍的に向上させることができる。
【0035】
また、野縁支持受け部材52は、上面片521を介して下向きコ字状に折曲された垂下折曲片522と、その両端部に、側面被嵌片512に対向し、野縁側面42に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片523とを備えて形成すると共に、該廻り止め当接片523、523を、回転操作による横姿勢で両野縁側面42,42に対面当接させて、側面被嵌片512、512との間で、野縁側面42、42を挟んでビス固定可能に構成してあるので、上面被嵌片511と上面片521との間に隙間を保持したスナップの効いた状態で、両野縁折曲片41、41を含む外周3面が野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52とによって、確りと圧接挟持された状態で組付け固定することができ、野縁4自体の外周面が補強された組付け剛性強度をもって両者が一体化され、上下方向やねじれ方向等の振動負荷を受けても、野縁4とのガタツキや位置ズレが防止されて、その挟持状態を好適に維持することができる。殊に、薄板材にて形成された野縁4を使用した際に、側面被嵌片512と野縁側面42とを直接ビス固定したものに比し、ビス止め部分に亀裂等の損傷を生じる危惧が回避され、野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52の変形が生じることもなく、耐震組付け強度の向上を図ることができる。
【0036】
また、廻り止め当接片523、523は、その上端部が野縁折曲片41を支持受けする支持受け片に兼用されているので、野縁支持受け部材52の上動操作に伴って、野縁折曲片41、41の逆U字状溝内に野縁支持受け溝52cと共に入り込み野縁4を支持受けすることができ、ナット2bの締め付け操作により広幅な面域をもって支持受けした状態で挟持固定することができ、野縁4の長手方向に対する振動を受けても、野縁被嵌部材51とその縦幅と同幅域をもって共同に支持受け挟持することができ、吊りボルト2(締結ボルト21)を中心としてその振動負荷を分散支持することができる。その結果、長手方向への振動負荷に対しても耐震性に対する組付け剛性強度を高める補強ができ、野縁4の長手方向や傾斜方向に対する耐震機能が高められ、野縁4の位置ズレ規制がなされた密着状態が維持され、野縁4への挟持機能が損なわれることなく、ねじれや傾動を受け止めて、両者間にガタツキの発生が防止された耐震構造を得ることができる
【0037】
また、垂下折曲片522、522には、その中央下部に、ボルト頭2aまたはナット2bを廻り止めセット可能なボルト保持部52bが形成されているので、ボルト頭2aやナット2bがボルト保持部52bに回り止め規制された状態で保持されているので、上側のナット2bを締め付け操作すれば、野縁支持受け部材52を野縁被嵌部材51に対して強制的に引き寄せ上動させて圧着させ、野縁折曲片41を両者間で強固に圧着挟持させた状態で一体化固定することができる。
【0038】
また、野縁支持受け部材52の上側両端部には、野縁折曲片41、41が逆U字状溝である場合に、該逆U字状溝内に挿入して野縁4を支持受けするよう略V字状に切欠きされた野縁支持受け溝52c…が形成されているので、野縁支持受け部材52を横姿勢にセットした状態で、野縁4の自重により降下させることで、野縁支持受け溝52cの傾斜に沿って逆U字状溝内に挿入させることができ、当該挿入動作に追随して廻り止め当接片523を野縁側面42の内面に対面当接させた吊持状態でセットすることができる。
【0039】
また、吊りボルト2が、躯体天井部や天井下地を構成するC型鋼1に取着される吊りボルト取付金具3を介して垂下固定される天井下地において、吊りボルト取付金具3を、C型鋼1の開口側となるリップ片11に面当てされてビス固定される正面固定片31と、該正面固定片31の両側がL字状に折曲形成されて、そのコーナー部にリップ片11への掛止溝33、33が切欠き形成された側面係止片32、32と、正面固定片31の上下に側面係止片32に背反して折曲形成され、その中央部に穿設された吊りボルト挿入孔34a、34bを介して、吊りボルト2を垂下固定する吊りボルト垂下固定部34とを備えて構成し、吊りボルト垂下固定部34に、その上下面を挟んで吊りボルト2の上端部をナット固定した状態から、当該ナットの緊緩操作による吊りボルトの上下位置変更により、吊りボルト2の下端部に取り付けられた野縁4の上下位置を、吊りボルト取付金具3側で調整可能となっている。
【0040】
この様に構成すると、ボルト頭2a付きの吊りボルト2を用いることができ、この吊りボルト2に予め野縁被嵌部材51と野縁支持受け部材52とを仮組付けした状態で工場出荷することができ、特に、天井スペース(ふところ)の狭い天井下地構造に適用する場合には、取り扱いを容易に行うことができるだけでなく、野縁取付金具5に野縁4を組付けする固定作業中や固定完了後に、上側垂下片341上のナット2b緊緩操作により野縁取付金具5の上下位置調整を行うことができると共に、リップ片11に対してスライド操作して位置決め調整を行うことができる。しかも、吊りボルト2は、下側垂下片342側に挿通させた状態で、上側垂下片341側でナット固定され、所定間隔を存した長さ幅域をもって、吊りボルト挿入孔34aと34bとによって2点支持させているので、地震等による振動を受けた際に、振動負荷が一点集中することがなく、天井パネル側からの振動を吊りボルト挿入孔34b側で僅かに大きい挿通孔径内において、僅かな振動を許容することで、ナット固定された上側垂下片341への振動伝達を減衰させ、分散支持受けすることができ、吊りボルト2の湾曲変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 C型鋼
11 リップ片
1a 天井スラブ
2 吊りボルト
2a ボルト頭
2b ナット
21 締結ボルト
21a ボルト
3 吊りボルト取付金具
31 正面固定片
31a ビス孔
311 正面固定片
313 掛止溝
32 側面係止片
33 掛止溝
34 吊りボルト垂下固定部
341 上側垂下片
342 下側垂下片
34a 吊りボルト挿入孔
34b 吊りボルト挿入孔
4 野縁
41 野縁折曲片
42 野縁側面
5 野縁取付金具
51 野縁被嵌部材
511 上面被嵌片
512 側面被嵌片
513 吊りボルト固定部
51a ボルト挿通孔
51b ビス孔
51c 吊りボルト挿通孔
52 野縁支持受け部材
521 上面片
522 垂下折曲片
523 当接片
52a ボルト挿通孔
52b ボルト保持部
52c 野縁支持受け溝