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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】溶存酸素濃度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20221121BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G01N27/416 381
G01N27/26 371A
G01N27/26 371E
G01N27/26 381B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019026224
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020134258
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浅井 靖史
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛之
(72)【発明者】
【氏名】窪田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智秀
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168560(JP,A)
【文献】特開2018-12086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 33/18
H01M 8/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、所定の水深に配置される第1カソード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、前記第1カソード電極とは異なる水深に配置される第2カソード電極と、
前記アノード電極と前記第1カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する第1検出部と、
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する第2検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水深に配置された前記第2カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記第1カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電がなされるように構成されており、
前記第2カソード電極が配置された水深の既知の溶存酸素濃度と、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値とに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする溶存酸素濃度計測装置。
【請求項2】
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値との比率に基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項1に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項3】
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記第1検出部及び/又は前記第2検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第1検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項4】
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、所望する水深に配置されるカソード電極と、
前記カソード電極を所望する水深に移動させる移動手段と、
前記アノード電極と前記カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知であり基準とした水深に配置された前記カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電がなされるように構成されており、
前記基準とした水深における既知の溶存酸素濃度と、前記基準とした水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値と、前記所定の水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値とに基づき、前記所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする溶存酸素濃度計測装置。
【請求項5】
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記基準とした水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値と、所定の水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値との比率に基づき、前記所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項4に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項6】
前記カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項4又は5に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項7】
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
所定の水深に配置される第1カソード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されているとともに、前記第1カソード電極に電気的に接続されており、前記第1カソード電極とは異なる水深に配置される第2カソード電極と、
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差の値を検出する第1検出部と、
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差の値を検出する第2検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水深に配置された前記第2カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記第1カソード電極において前記発電に伴って前記アノード電極及び前記第2カソード電極との電位差が生じるように構成されており、
前記第2カソード電極が配置された水深の既知の溶存酸素濃度と、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値とに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする溶存酸素濃度計測装置。
【請求項8】
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値との比率に基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項7に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項9】
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記第1検出部及び/又は前記第2検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第1検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項10】
当該溶存酸素濃度計測装置において発電された電気の少なくとも一部が充電される蓄電部を備えたことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【請求項11】
前記溶存酸素濃度算出手段が算出した溶存酸素濃度のデータを所定の機器に向けて送信する通信部を備えたことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の溶存酸素濃度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶存酸素濃度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガルバニ電池式酸素センサーは、酸素の電気化学的還元に有効な金属を含む正極と、鉛(Pb)からなる負極を、電解液を満たした容器内に配して、ガス透過性の隔膜で外部と遮断してなる電池で構成されており、正極と負極との間に一定の抵抗を接続し、正極における酸素の還元反応と負極における鉛の酸化反応によって流れる正負極間のガルバニ電流を検知し、このガルバニ電流と酸素濃度との間に直線関係があることを利用して酸素濃度を検出するものである(例えば、特許文献1参照。)。
このガルバニ電池式酸素センサーは、水中に溶解している酸素濃度を測定する用途にも用いられ、例えば、河川や湖沼での水質管理の分野などで利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-177163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガルバニ電池式酸素センサーを用いる場合、電解液の蒸発や鉛の溶解に伴う電極(負極)の消耗などがあるため、測定精度を維持するには頻繁に校正やメンテナンスを行う必要がある。
そのため、遠方の山間部の湖沼などにガルバニ電池式酸素センサーを常置して長期間の自動連続測定を行う場合には、定期的に測定者が現地に赴いて、そのメンテナンスを行わなければならないので煩わしいという問題があった。
また、ガルバニ電池式酸素センサーは常置せずに定期的に測定者が現地に赴いて、その都度湖沼などの酸素濃度を測定しなければならないので、煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、より好適に長期間の自動連続測定に用いることができる溶存酸素濃度計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、溶存酸素濃度計測装置であって、
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、所定の水深に配置される第1カソード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、前記第1カソード電極とは異なる水深に配置される第2カソード電極と、
前記アノード電極と前記第1カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する第1検出部と、
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する第2検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水深に配置された前記第2カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記第1カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電がなされるように構成されており、
前記第2カソード電極が配置された水深の既知の溶存酸素濃度と、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値とに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値との比率に基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記第1検出部及び/又は前記第2検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第1検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、溶存酸素濃度計測装置であって、
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されており、所望する水深に配置されるカソード電極と、
前記カソード電極を所望する水深に移動させる移動手段と、
前記アノード電極と前記カソード電極の間に生じる電位差または電流の値を検出する検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知であり基準とした水深に配置された前記カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電がなされるように構成されており、
前記基準とした水深における既知の溶存酸素濃度と、前記基準とした水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値と、前記所定の水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値とに基づき、前記所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記基準とした水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値と、所定の水深に前記カソード電極が配置されている際に前記検出部によって検出された値との比率に基づき、前記所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、溶存酸素濃度計測装置であって、
底質に少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極と、
所定の水深に配置される第1カソード電極と、
前記アノード電極に電気的に接続されているとともに、前記第1カソード電極に電気的に接続されており、前記第1カソード電極とは異なる水深に配置される第2カソード電極と、
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差の値を検出する第1検出部と、
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に生じる電位差の値を検出する第2検出部と、
を備え、
前記底質中の微生物が有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水深に配置された前記第2カソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された前記第1カソード電極において前記発電に伴って前記アノード電極及び前記第2カソード電極との電位差が生じるように構成されており、
前記第2カソード電極が配置された水深の既知の溶存酸素濃度と、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値とに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出する溶存酸素濃度算出手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第2検出部によって検出された値と、前記第1検出部によって検出された値との比率に基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記第1カソード電極と前記第2カソード電極が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、前記第1検出部及び/又は前記第2検出部によって検出される値との相関に関する検量線データが予め記憶されている記憶部を備え、
前記溶存酸素濃度算出手段は、前記第1検出部によって検出された値と、前記検量線データとに基づき、前記第1カソード電極が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
当該溶存酸素濃度計測装置において発電された電気の少なくとも一部が充電される蓄電部を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載の溶存酸素濃度計測装置において、
前記溶存酸素濃度算出手段が算出した溶存酸素濃度のデータを所定の機器に向けて送信する通信部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より好適に長期間の自動連続測定に用いることができる溶存酸素濃度計測装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の溶存酸素濃度計測装置を示す概略図である。
図2】溶存酸素濃度計測装置の測定原理に関する説明図である。
図3】溶存酸素濃度計測装置の検量線データの一例を示す説明図である。
図4】溶存酸素濃度計測装置の変形例を示す概略図である。
図5】他の実施形態の溶存酸素濃度計測装置を示す概略図である。
図6】他の実施形態の溶存酸素濃度計測装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る溶存酸素濃度計測装置の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態の溶存酸素濃度計測装置は、湖沼などの底質中に配置されるアノード電極と水中に配置されるカソード電極を備えて構成されている微生物燃料電池式の溶存酸素濃度計測装置である。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態の溶存酸素濃度計測装置100は、例えば、図1に示すように、底質Bに少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極10と、アノード電極10に電気的に接続されており、所定の水深に配置される第1カソード電極11と、アノード電極10に電気的に接続されており、第1カソード電極11とは異なる水深に配置される第2カソード電極12と、アノード電極10と第1カソード電極11の間に生じる電位差または電流の値を検出する第1検出部21と、アノード電極10と第2カソード電極12の間に生じる電位差または電流の値を検出する第2検出部22等を備えている。
アノード電極10と第1カソード電極11は電線1によって接続されており、その電線1に第1検出部21が接続されている。
また、アノード電極10と第2カソード電極12は電線2によって接続されており、その電線2に外部抵抗3と第2検出部22が接続されている。なお、第1カソード電極11に接続されている電線1にも同様の外部抵抗が接続されていてもよい。
【0021】
アノード電極10は、底質B中に存在する微生物による有機物の分解で生じる電子と水素イオンのうち、電子を受け取るための電極である。
つまり、アノード電極10の材質は、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子を受け取ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、アノード電極10の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。特に、このアノード電極10が耐久性を有するように、破損し難い形状(例えば、尖端部分や肉薄部分がない形状)に形成されている。
【0022】
第1カソード電極11と第2カソード電極12は、アノード電極10から電線(1,2)を通じて移動してきた電子と、水中を移動してきた水素イオンを、その電極周辺の酸素と反応させて、酸素を還元するための電極である。
つまり、カソード電極11,12の材質は、アノード電極10からの電子と水素イオンとにより酸素を還元することができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、カソード電極11,12の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。特に、このカソード電極11,12が耐久性を有するように、破損し難い形状(例えば、尖端部分や肉薄部分がない形状)に形成されている。
なお、第1カソード電極11と第2カソード電極12の性能を揃えるために、第1カソード電極11と第2カソード電極12は同じ電極(材質やサイズが同じ電極)を用いることが好ましい。本実施形態では同じ電極を用いている。
【0023】
第1カソード電極11は、当該装置100によって溶存酸素濃度を測定する所定の水深に配置されており、例えば、水底近傍の底層に配置されている。
第2カソード電極12は、水面寄りの水深に配置されている。水面近くの表層では溶存酸素が飽和していると見なすことができるので、この第2カソード電極12は、溶存酸素濃度が既知の飽和濃度である表層に配置されているものとする。
【0024】
第1検出部21は、アノード電極10と第1カソード電極11の間の電位差または電流の値を検出し、その検出した値(データ)を後述する制御部90に送出する。
第2検出部22は、アノード電極10と第2カソード電極12の間の電位差または電流の値を検出し、その検出した値(データ)を後述する制御部90に送出する。
【0025】
ここで、本発明者らが検証した溶存酸素濃度計測装置100の測定原理について説明する。
本発明者らは、微生物燃料電池式の溶存酸素濃度計測装置100の開発を目的として、ラボスケールサイズの実験装置を作製した。
その実験装置は2Lのメスシリンダーに、底質としての500mLの東京湾の汚泥と、1500mLの人工海水を入れ、電線で接続しているアノード電極を汚泥中に埋め、カソード電極を人工海水に水没させた構造に形成した。カソード電極は人工海水中の溶存酸素以外から酸素供給がなされないように完全に水没させた。なお、アノード電極にはカーボンプレート、カソード電極にはPt付きのカーボンクロスを用いた。
そして、アノード電極とカソード電極を接続している電線に100Ωの外部抵抗を配設して実験装置(微生物燃料電池)の運転を行い、アノード電極とカソード電極の間の電位差(電圧値)を測定した。具体的には、人工海水の溶存酸素濃度を調整し、溶存酸素濃度ごとにその電位差(電圧値)を測定した。
【0026】
その結果、図2に示すように、溶存酸素濃度0.8~5.19[mg/L]の範囲で、明確な電位差(電圧値)の変化が観察された。
図2に示すように、この実験装置(微生物燃料電池)の発電による電位差(電圧値)と溶存酸素濃度には良好な直線関係(R=0.981)の相関があり、人工海水の溶存酸素濃度を高めるほど、高い電位差(電圧値)が測定されることが確認された。
このことから、アノード電極とカソード電極の間の電位差(電圧値)からカソード電極周辺の溶存酸素濃度を予測することが可能であることが示された。
つまり、溶存酸素濃度が既知(D)の水深にカソード電極を配置して、アノード電極とカソード電極の間の電位差(V)を測定できれば、溶存酸素濃度が未知(D)の水深にカソード電極を配置して、アノード電極とカソード電極の間の電位差(V)を測定することで、下記の式(1)または式(2)または式(3)に基づき、未知の溶存酸素濃度(D)を求めることができる。なお、式(2)、式(3)のα,βは係数である。

/V=D/D ・・・(1)
/V=α・(D/D) ・・・(2)
/V=α・(D/D)+β ・・・(3)

そして、本発明者らは、溶存酸素濃度を測定する所定の水深に第1カソード電極11を配置するとともに、溶存酸素濃度が既知(飽和濃度)である水深に第2カソード電極12を配置するという、溶存酸素濃度計測装置100を開発するに至った。
なお、図2に示した検量線データは一例であり、各種条件等で変わるので、溶存酸素濃度計測装置100を設置する場所毎に定めるようにする。
【0027】
具体的には、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水面寄りの水深に配置された第2カソード電極12においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その既知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差(電圧値)としてアノード電極10と第2カソード電極12の間の電位差(V)を、第2検出部22によって測定するようにする。
それにあわせて、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された第1カソード電極11においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その未知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差(電圧値)としてアノード電極10と第1カソード電極11の間の電位差(V)を、第1検出部21によって測定するようにする。
なお、カソード電極11,12においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電の説明において、ここではアノード電極側で生じた水素イオンの移動については割愛している。
【0028】
このような構成の溶存酸素濃度計測装置100によれば、前述した微生物燃料電池式装置の発電による電位差(電圧値)と溶存酸素濃度との相関(例えば、式(1)、式(2)、式(3)など)に基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深の溶存酸素濃度(D)を求めることができる。
具体的には、第2カソード電極12が配置された水深の既知の溶存酸素濃度(D)と、第2検出部22によって検出された電位差(V)と、第1検出部21によって検出された電位差(V)とに基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を求めることができる。
例えば、第2カソード電極12が配置された水深の溶存酸素濃度が既知(溶存酸素濃度(D)であるので、第2検出部22によって検出された電位差(V)と、第1検出部21によって検出された電位差(V)との比率に基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を求めることができる。
【0029】
ところで、第2カソード電極12は、溶存酸素濃度が飽和濃度である水深に配置されているので、第2カソード電極12における酸素の還元による発電は好適に行われ、その発電した電気は後述する蓄電部50に充電されるようになっている。
一方、第1カソード電極11は、溶存酸素濃度が低い水深(底層)に配置されているので、第1カソード電極11における酸素の還元による発電は、その水深(底層)の溶存酸素濃度に対応する電位差(電圧値)を得るために行われているものであり、その発電した電気は後述する蓄電部50に充電されることは殆どない。
【0030】
また、この溶存酸素濃度計測装置100は、例えば、図1に示すように、蓄電部50、通信部60、表示部70、記憶部80、制御部90等を備えている。
【0031】
蓄電部50は、所謂充電式電池であり、当該装置100によって発電された電気が充電されるとともに、当該装置100の各部を駆動するための電源として機能する。
なお、蓄電部50は、図示しない充電用の回路を介して電線1や電線2と接続されている。
【0032】
通信部60は、例えば、アンテナや通信回路を有しており、制御部90による制御の下で、測定者が保有しているパソコンやそのパソコンからアクセス可能なクラウドサーバーなどに、当該装置100が測定したデータ(例えば、第1検出部21や第2検出部22によって測定された電位差(電圧値)のデータ)や、当該装置100が算出したデータ(例えば、所定の水深における溶存酸素濃度(D)のデータ)を送信する。
【0033】
表示部70は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いたFPD(Flat Panel Display)などであり、操作入力部(タッチパネル)と一体的に形成されている。
この表示部60には、当該装置100が測定したデータや算出したデータが表示される。
【0034】
記憶部80は、例えば、RAM、ROM、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブなどにより構成され、制御部90により実行される各種制御プログラムや、各種処理に必要なデータ等を記憶している。
例えば、この記憶部80は、第1カソード電極11が配置されている所定の水深の溶存酸素濃度(D)を求めるためのデータであり、カソード電極(11,12)が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、カソード電極(11,12)における酸素の還元による発電で生じる電位差(電圧値)の相関を示す検量線データ(例えば、式(1)、式(2)、式(3)など)を記憶している。
換言すれば、この記憶部80は、カソード電極(11,12)が浸漬されている水中の溶存酸素濃度と、第1検出部21又は第2検出部22によって検出される値(電位差、電圧値)との相関に関する検量線データ(例えば、式(1)、式(2)、式(3)など)を記憶している。
例えば、溶存酸素濃度計測装置100の検量線データは、前述した実験装置の場合、
溶存酸素濃度(D)=0.036V-1.54(図2参照)である。
また、記憶部80には、当該装置100が測定したデータや算出したデータが記憶される。
【0035】
制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部80に格納されている制御プログラムに従って各種の処理を実行する。この制御部90が装置各部を統括制御している。
例えば、制御部90は、第2カソード電極12が配置された水深の既知の溶存酸素濃度(D)と、第2検出部22によって検出された値(V)と、第1検出部21によって検出された値(V)とに基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を算出する溶存酸素濃度算出手段として機能する。
また、この制御部90は、第1検出部21によって検出された値(V)と、記憶部80に記憶されている検量線データ(例えば、式(1)、式(2)、式(3)など)とに基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を算出する溶存酸素濃度算出手段として機能する。
【0036】
なお、検量線データに関する式は、上記した式(1)、式(2)、式(3)に限られるものではない。
例えば、図3(a)(b)(c)に示すように、検量線データに関する式は、
x(V/V)とy(D/D)とが関係付けられた、下記の式などであってもよい。
1次式 y=2.5x-1.9;図3(a)参照
2次式 y=-6.1x+15.5x-8.8;図3(b)参照
3次式 y=11.0x-10.5x+3.8x+0.1;図3(c)参照
上述したように、検量線データは各種条件等で変わるので、検量線データに関する式もこの限りではない。
【0037】
このように、本実施形態の溶存酸素濃度計測装置100は、アノード電極10を湖沼などの底質B中に配置するとともに、第1カソード電極11と第2カソード電極12を湖沼などの水中に配置するといった比較的簡易な構成で、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
具体的には、溶存酸素濃度計測装置100は、第2カソード電極12が配置された水深の既知の溶存酸素濃度(D)と、第2検出部22によって検出された電位差(V)と、第1検出部21によって検出された電位差(V)とに基づき、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
特に、アノード電極10、第1カソード電極11、第2カソード電極12は、金属材料や炭素材料からなる耐久性を有する電極であるので、溶存酸素濃度計測装置100を湖沼などに設置したまま長期間使用することができる。
つまり、この溶存酸素濃度計測装置100であれば、より好適に長期間に亘って溶存酸素濃度(D)を測定する自動連続測定に用いることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4に示すように、制御部90による制御の下で電線1,2の接続を切り替える切替スイッチ40を備えた溶存酸素濃度計測装置100であってもよい。
例えば、切替スイッチ40は通常、アノード電極10と第2カソード電極12を電気的に接続するように切り替えられており、第2カソード電極12における酸素の還元によって発電した電気が蓄電部50に充電されるようになっている。このとき、アノード電極10と第2カソード電極12の間に生じる電位差(電圧値)を第2検出部22によって検出している。
そして、切替スイッチ40は、溶存酸素濃度を測定するタイミングにアノード電極10と第1カソード電極11を電気的に接続するように切り替えられ、アノード電極10と第1カソード電極11の間に生じる電位差(電圧値)を第1検出部21によって検出する。
このような溶存酸素濃度計測装置100であっても、より好適に長期間の自動連続測定に用いることができ、第1カソード電極11が配置されている所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
【0039】
また、切替スイッチ40を備えた溶存酸素濃度計測装置100であれば、溶存酸素濃度を測定するタイミング以外において、アノード電極10と第2カソード電極12を電気的に接続するように切り替えておくことで、より好適な発電を行うことができ、発電した電気を蓄電部50に充電することができる。
なお、セレクタスイッチ等で、第1回路「アノード電極10と第2カソード電極12の接続」と、第2回路「アノード電極10と第1カソード電極11の接続」と、第3回路「アノード電極10と両方のカソード電極(第2カソード電極12および第1カソード電極11)の接続」の、3つの回路の切り替えを行うようにし、その切り替え制御をこの装置100の制御部90が実行するようにしてもよい。
【0040】
(実施形態2)
次に、本発明に係る溶存酸素濃度計測装置の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
溶存酸素濃度計測装置100は、例えば、図5に示すように、底質Bに少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極10と、アノード電極10に電気的に接続されており、所望する水深に配置されるカソード電極13と、カソード電極13を所望する水深に移動させる移動手段30と、アノード電極10とカソード電極13の間に生じる電位差または電流の値を検出する検出部23等を備えている。
アノード電極10とカソード電極13は電線4によって接続されており、その電線4に外部抵抗3と検出部23が接続されている。
【0042】
検出部23は、アノード電極10とカソード電極13の間の電位差または電流の値を検出し、その検出した値(データ)を制御部90に送出する。
【0043】
移動手段30は、例えば、水中ドローンと称させる機器であり、制御部90による制御の下で遠隔操作がなされ、カソード電極13を所望する水深に移動させて配置させることができる。
【0044】
通常、移動手段30は、溶存酸素が飽和していると見なすことができる水面寄りの水深にカソード電極13を配置させている。ここでは、溶存酸素が飽和しており、溶存酸素濃度が既知である水深を基準の水深としている。
このとき、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水面寄りの水深(基準とした水深)に配置されたカソード電極13においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その既知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差(電圧値)としてアノード電極10とカソード電極13の間の電位差(V)を、検出部23によって測定する。
【0045】
また、移動手段30は、溶存酸素濃度を測定するタイミングに、当該装置100によって溶存酸素濃度を測定する水底寄りの水深にカソード電極13を移動させて配置する。
このとき、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が未知である所定の水深(水底寄りの水深)に配置されたカソード電極13においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その未知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差(電圧値)としてアノード電極10とカソード電極13の間の電位差(V)を、検出部23によって測定する。
【0046】
そして、溶存酸素濃度算出手段としての制御部90が、基準とした水深における既知の溶存酸素濃度(D)と、基準とした水深にカソード電極13が配置されている際に検出部23によって検出された値(電位差V)と、所定の水深にカソード電極13が配置されている際に検出部23によって検出された値(電位差V)とに基づき、所定の水深における溶存酸素濃度(D)を算出する処理を実行する。
【0047】
このような溶存酸素濃度計測装置100であっても、より好適に長期間の自動連続測定に用いることができ、カソード電極13が配置された所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
【0048】
(実施形態3)
次に、本発明に係る溶存酸素濃度計測装置の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
溶存酸素濃度計測装置100は、例えば、図6に示すように、底質Bに少なくとも一部が埋め込まれているアノード電極10と、所定の水深に配置される第1カソード電極11と、アノード電極10に電気的に接続されているとともに第1カソード電極11に電気的に接続されており、第1カソード電極11とは異なる水深に配置される第2カソード電極12と、第1カソード電極11と第2カソード電極12の間に生じる電位差の値を検出する第1検出部24と、アノード電極10と第2カソード電極12の間に生じる電位差の値を検出する第2検出部22等を備えている。
【0050】
第1カソード電極11と第2カソード電極12とは電線5によって接続されており、その電線5に第1検出部24が接続されている。
また、第2カソード電極12と第1カソード電極11は直列に接続されている。
そして、第2カソード電極12に電気的に接続されている第1カソード電極11は、電線5と第2カソード電極12と電線2を介して、アノード電極10に電気的に接続されている。
【0051】
第1検出部24は、第1カソード電極11と第2カソード電極12の間の電位差の値を検出し、その検出した値(データ)を制御部90に送出する。換言すれば、第1検出部24は、第1カソード電極11と、第2カソード電極12に電気的に接続されているアノード電極10との間の電位差の値を検出し、その検出した値(データ)を後述する制御部90に送出する。
第2検出部22は、アノード電極10と第2カソード電極12の間の電位差の値を検出し、その検出した値(データ)を制御部90に送出する。
【0052】
具体的には、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が既知である水面寄りの水深に配置された第2カソード電極12においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その既知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差としてアノード電極10と第2カソード電極12の間の電位差(V)を、第2検出部22によって測定する。
それにあわせて、第1カソード電極11と第2カソード電極12の間の電位差(V)を、第1検出部24によって測定する。換言すれば、底質B中の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極10が受け取り、溶存酸素濃度が未知である所定の水深に配置された第1カソード電極11においてアノード電極10からの電子により酸素を還元することによる発電がなされる際に、その未知の溶存酸素濃度(D)に対応する電位差として第1カソード電極11と第2カソード電極12の間の電位差(V)を、第1検出部24によって測定する。
そして、溶存酸素濃度算出手段としての制御部90が、水面寄りの水深における既知の溶存酸素濃度(D)と、第2検出部22によって検出された値(電位差V)と、第1検出部24によって検出された値(電位差V)とに基づき、所定の水深における溶存酸素濃度(D)を算出する処理を実行する。
【0053】
このような溶存酸素濃度計測装置100であっても、より好適に長期間の自動連続測定に用いることができ、カソード電極11が配置された所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
【0054】
以上の実施の形態(実施形態1と実施形態2)においては、第1検出部21、第2検出部22、検出部23にてアノード電極とカソード電極の間の電位差(電圧値)を検出し測定する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アノード電極とカソード電極の間に生じる電流の値を検出することによっても、カソード電極が配置された所定の水深における溶存酸素濃度(D)を測定することができる。
なお、実施形態3の装置100では、検出部にて電極間の電位差(電圧値)を検出して溶存酸素濃度の測定を行うものとする。
【0055】
また、以上の実施の形態においては、溶存酸素濃度算出手段としての制御部90が、カソード電極が配置された所定の水深における溶存酸素濃度(D)を算出する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、測定者が保有しているパソコンなどを溶存酸素濃度算出手段として機能させ、通信部60を介して得たデータ(各検出部によって測定された電位差(電圧値)のデータ)などに基づいて溶存酸素濃度(D)を算出するようにしてもよい。
【0056】
また、カソード電極が配置されている水深における水圧や水温を検出するセンサーを備え、そのセンサーが検出した水圧や水温に応じて溶存酸素濃度算出手段としての制御部90が、溶存酸素濃度を補正する処理を行うようにしてもよい。
【0057】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 電線
2 電線
3 外部抵抗
4 電線
5 電線
10 アノード電極
11 第1カソード電極
12 第2カソード電極
13 カソード電極
21 第1検出部
22 第2検出部
23 検出部
24 第1検出部
30 移動手段
40 切替スイッチ
50 蓄電部
60 通信部
70 表示部
80 記憶部
90 制御部(溶存酸素濃度算出手段)
100 溶存酸素濃度計測装置
B 底質
図1
図2
図3
図4
図5
図6