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  • 特許-金属部材の切断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】金属部材の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 11/00 20060101AFI20221121BHJP
   B23P 17/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B23P11/00
B23P17/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021032230
(22)【出願日】2021-03-02
(62)【分割の表示】P 2016163984の分割
【原出願日】2016-08-24
(65)【公開番号】P2021079544
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505466642
【氏名又は名称】株式会社東洋ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】若山 真則
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良平
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-093739(JP,A)
【文献】国際公開第2007/138696(WO,A1)
【文献】特開平10-319188(JP,A)
【文献】特開平09-242348(JP,A)
【文献】特開昭64-020940(JP,A)
【文献】特開昭58-050257(JP,A)
【文献】特開昭52-091299(JP,A)
【文献】特開2006-183304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 11/00
B23P 17/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材をドリルで削孔して当該金属部材に注入孔を形成する削孔作業と、
前記注入孔に冷却剤を流し込む冷却作業と、
前記金属部材に衝撃を与えて破断させる破断作業と、を備える金属部材の切断方法であって、
前記金属部材は、ボルト、リベットまたは鉄筋であ
前記削孔作業では、前記金属部材の上方から前記金属部材の軸方向と交差する方向に前記金属部材の外径よりも小さい内径の前記注入孔を形成することを特徴とする、金属部材の切断方法。
【請求項2】
金属部材をドリルで削孔して当該金属部材に注入孔を形成する削孔作業と、
前記注入孔に冷却剤を流し込む冷却作業と、
前記金属部材に衝撃を与えて破断させる破断作業と、を備える金属部材の切断方法であって、
前記金属部材は、重ねられた2枚の鋼板のボルト孔を貫通した状態で2枚の前記鋼板を接合するボルトであ
前記削孔作業では、前記鋼板の上端から前記金属部材の軸部に到達する深さの注入孔を形成することを特徴とする、金属部材の切断方法。
【請求項3】
金属部材をドリルで削孔して当該金属部材に注入孔を形成する削孔作業と、
前記注入孔に冷却剤を流し込む冷却作業と、
前記金属部材に衝撃を与えて破断させる破断作業と、を備える金属部材の切断方法であって、
前記金属部材は、重ねられた2枚の鋼板のボルト孔を貫通した状態で2枚の前記鋼板を接合するボルトであ
前記削孔作業では、前記鋼板同士の突き合せ面の上端から前記金属部材の軸部に到達する深さの注入孔を形成することを特徴とする、金属部材の切断方法。
【請求項4】
前記破断作業では、前記注入孔の上端に衝撃を与えることを特徴とする、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の金属部材の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物の解体工事や補修工事では、部材同士を連結するボルトを取り外すことで、部材同士を分離しながら作業を進めるのが一般的である。ところが、ボルトのネジ山に摩耗やつぶれ等が生じている場合や、ボルトの頭部に破損や変形が生じている場合には、ボルトを撤去することができなくなる。また、既設構造物の部材同士がリベットを介して接合されている場合や、鉄筋コンクリート部材を分割する場合等には、リベットや鉄筋等の金属部材を切断する必要がある。金属部材(ボルト、リベット、鉄筋等)を切断する方法としては、ガス切断、プラズマ切断、ランス切断等の火気を利用する方法が多く用いられている。また、カッターやサンダーを利用した切断装置により金属部材を切断する方法(例えば、特許文献1参照)が採用される場合がある。また、特許文献2には、特殊な締め付け用ソケットにより変形したボルトの頭部やナットを把持して回転させることで、ボルトの切断あるいは撤去を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-262814号公報
【文献】特開2005-066784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス切断等の火気を利用する切断方法は、引火物等が近くにある場所や、危険物等を取り扱う施設内等においては使用することができない。
特許文献1等の切断装置は、カッター等が届く範囲でしか切断することができないため、適用箇所(対象となる部材)が限定されていた。また、金属部材の切断時に火花が発生するため、火気を利用する場合と同様に、引火物等が近くにある場所や、危険物等を取り扱う施設内等においては使用することができない。
特許文献2の締め付け用ソケットは、ボルトの頭部やナットが露出している場合だけにしか採用することができない。そのため、コンクリート等に埋め込まれたボルトを切断する場合には、ボルトの頭部またはナットを露出させる必要があり、手間がかかる。また、リベットや鉄筋等の切断には使用することができない。
このような観点から、本発明は、周辺環境や施工対象物に限定されることなく採用することが可能な金属部材の切断方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の金属部材の切断方法は、金属部材をドリルで削孔して当該金属部材に注入孔を形成する作業と、前記注入孔に冷却剤を流し込む作業と、前記金属部材に衝撃を与えて破断させる作業とを備えることを特徴としている。
かかる金属部材の切断方法は、冷却剤により脆性化させた金属部材に衝撃を加えることで、火気を使用することなく金属部材を切断する方法である。そのため、火気を使用することができない場所においても金属部材を切断することができる。また、例えば鉄筋等のように、金属部材がコンクリート等に埋め込まれている場合であっても、金属部材の全体を露出させる必要がないため、施工性に優れている。
前記金属部材が、ボルト、リベットまたは鉄筋である場合には、前記削孔作業において、前記金属部材の上方から前記金属部材の軸方向と交差する方向に前記金属部材の外径よりも小さい内径の前記注入孔を形成する。
また、前記金属部材は、重ねられた2枚の鋼板のボルト孔を貫通した状態で2枚の前記鋼板を接合するボルトである場合には、前記削孔作業において、前記鋼板の上端から前記金属部材の軸部に到達する深さの注入孔を形成する。
さらに、前記金属部材は、重ねられた2枚の鋼板のボルト孔を貫通した状態で2枚の前記鋼板を接合するボルトである場合には、前記削孔作業では、前記鋼板同士の突き合せ面の上端から前記金属部材の軸部に到達する深さの注入孔を形成する。
なお、前記破断作業では、前記注入孔の上端に衝撃を与えればよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属部材の切断方法によれば、周辺環境や施工対象物に限定されることなく、ボルト、リベット、鉄筋等の金属部材を切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の金属部材の切断方法に切断する金属部材を示す断面図である。
図2】金属部材の切断方法の削孔作業を示す断面図である。
図3】(a)は同冷却作業を示す断面図、(b)は同破断作業を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態では、既設構造物の解体工事において、高力ボルト(金属部材)1を切断する場合について説明する。
高力ボルト1は、並設された2枚の鋼板2,2を接合しており、軸部11と頭部12とを備えている。高力ボルト1は、一方の鋼板2の一部(フランジ21)に係止された頭部12と他方の鋼板2の一部(フランジ21)に係止されたナット3とにより両鋼板2,2(フランジ21,21)を把持することにより、鋼板2,2を接合している。
【0009】
図1に示すように、鋼板2,2の端部には、接合部を構成するためのフランジ21がそれぞれ立設されている。フランジ21には、高力ボルト1の軸部11を挿通するためのボルト孔22が形成されている。隣り合う鋼板2,2は、互いのフランジ21同士を突き合わせた状態で、両フランジ21,21のボルト孔22,22を貫通した高力ボルト1にナット3を螺合することにより接合されている。
【0010】
本実施形態では、高力ボルト1の軸部11を切断することで、連結された鋼板2,2を分割する。本実施形態の高力ボルト1の切断方法は、削孔作業と、冷却作業と、破断作業とを備えている。
削孔作業では、図2に示すように、高力ボルト1に注入孔4を形成する。注入孔4は、ドリル5を利用して、高力ボルト1の軸部11(棒状部分)に形成する。なお、ドリル5は、軸部11の外径よりも小さな直径を有している。
注入孔4は、フランジ21,21のボルト孔22,22よりも上の部分を貫通し、底面が高力ボルト1の軸部11の中心付近に到達する深さとなるように形成する。また、注入孔4は、高力ボルト1の軸部11の軸方向と直交するように形成する。なお、注入孔4の深さは、高力ボルト1の軸部11に到達していれば限定されるものではなく、例えば、軸部11を貫通していてもよい。また、注入孔4は、必ずしも軸部11の軸方向と直交している必要はないが、軸部11の軸方向と交差するように形成するのが望ましい。
【0011】
冷却作業では、図3(a)に示すように、注入孔4に冷却剤を流し込む。
本実施形態では、冷却剤として液体窒素を使用する。冷却剤は、注入管6を利用して注入孔4に注入する。注入孔4に冷却材が注入されることで、高力ボルト1の注入孔4の周辺は凍結する。また、液体窒素による急冷で注入孔4の周辺が脆性化される(伸びにくくなる)。なお、冷却剤に使用する材料は、高力ボルト1を脆性化させることが可能であれば液体窒素に限定されるものではない。なお、本実施形態では、高力ボルト1を脆性化させるために効果的な冷却温度を-100℃以下程度とする。冷却剤は、所望の冷却温度(例えば-100℃以下)にするために、必要に応じて複数回注入してもよい。
【0012】
破断作業では、図3(b)に示すように、高力ボルト1に衝撃を与えて破断させる。
本実施形態では、鋼製のチゼル7により注入孔4の上端に衝撃を与える。チゼル7は、菱形断面で、かつ、先端に行くほど薄くなる形状を有している。本実施形態では、チゼル7により高力ボルト1の軸部11に対して交差する向き(望ましくは直角)から衝撃を与える。本実施形態では、エアハンマー71にチゼル7を設置して、チゼル7の先端で高力ボルト1の軸部を打撃する。なお、高力ボルト1へ衝撃を与える方法は限定されるものではなく、例えば、高力ボルト1にチゼル7の先端を当接させた状態で、チゼル7の後端(上端)を打撃してもよい。また、高力ボルト1に衝撃を与える際には、必ずしもチゼルを使用する必要はない。さらにチゼル7の形状等は限定されるものではない。
【0013】
本実施形態の金属部材の切断方法によれば、冷却剤による冷却で高力ボルト1を脆性化させるため、高力ボルト1が伸びにくくなり、その結果、破断しやすくなる。この状態で、チゼル7により高力ボルト1に衝撃または注入孔を押し広げる力を与えると、火気を使用することなく高力ボルト1を切断することができる。そのため、火気を使用することができない場所においても金属部材(高力ボルト1)を切断することができる。
【0014】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ボルトを切断する場合について説明したが、本発明の金属部材の切断方法により切断される部材はボルトに限定されるものではない。例えば、鉄筋の切断やリベットの切断等に使用してもよい。また、鋼板を切断する場合において、複数の注入孔を鋼板の切断箇所に沿って形成し、この注入孔に冷却剤を注入してもよい。
前記実施形態では、棒状の金属部材(軸部11)の軸方向と交差する方向に注入孔を形成し、この注入孔に冷却材を注入する場合について説明したが、注入孔は金属部材の軸方向に沿うように形成してもよい。
【0015】
また、本発明の金属部材の切断方法は、コンクリートやモルタル等の被覆体により被覆された金属部材を切断する場合に適用してもよい。例えば、モルタルにより被覆された高力ボルト1を切断する場合には、被覆体(モルタル)を貫通して高力ボルト1に到達する注入孔4を形成し、この注入孔4に冷却剤を注入することで高力ボルト1を冷却する。このとき、高力ボルト1の強度は変化しない。この状態で、チゼル7により注入孔4を押し広げるように高力ボルト1に衝撃を与えると、高力ボルト1の締め付け時の軸力Pの反対向きの引張力Tが作用する。この引張力Tが軸力Pよりも大きければ、引張力Tから軸力Pを減じた力(T-P)が高力ボルト1および被覆体(モルタル)に作用し、高力ボルト1および被覆体がせん断破壊する。その結果、高力ボルト(金属部材)1がモルタルやコンクリート等に埋め込まれている場合であっても、高力ボルト1の全体を露出させることなく高力ボルト1を切断することができるため、施工性に優れている。
【符号の説明】
【0016】
1 高力ボルト(金属部材)
11 軸部
12 頭部
2 鋼板
21 フランジ
22 ボルト孔
3 ナット
4 注入孔
5 ドリル
6 注入管
7 チゼル
71 エアハンマー
図1
図2
図3