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特許7179287倒木防止具の連結構造体および倒木防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】倒木防止具の連結構造体および倒木防止方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 17/14 20060101AFI20221121BHJP
   A01G 23/04 20060101ALI20221121BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A01G17/14
A01G23/04 503Z
A01G13/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018217834
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020080688
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】517185883
【氏名又は名称】山形開発工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500540969
【氏名又は名称】株式会社グリーンエルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】山形 隆三
(72)【発明者】
【氏名】西野 文貴
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138480(JP,A)
【文献】特開平09-217354(JP,A)
【文献】特開平11-206251(JP,A)
【文献】特開平08-009799(JP,A)
【文献】特開平03-168032(JP,A)
【文献】特開平11-264129(JP,A)
【文献】特開2005-188187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202074(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0208645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 17/14
A01G 23/04
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽した樹木の生長により根が絡むように土壌内に埋設される複数の倒木防止具の連結構造体であって、
前記各倒木防止具は、互いに平行に延びる3つ以上の支持部と、前記支持部に支持される環状の保持体とを備え、前記保持体は、複数が前記支持部に沿って間隔をあけて固定されており、
複数の前記倒木防止具が、螺旋状の連結部材により連結され
複数の前記倒木防止具が、互いに近接して配置された前記各保持体の同方向に延びる部分の周りに前記連結部材が装着されて連結された 倒木防止具の連結構造体。
【請求項2】
植栽した樹木の生長により根が絡むように土壌内に埋設される複数の倒木防止具を用いた倒木防止方法であって、
前記各倒木防止具は、互いに平行に延びる3つ以上の支持部と、前記支持部に支持される環状の保持体とを備え、前記保持体は、複数が前記支持部に沿って間隔をあけて固定されており、
複数の前記倒木防止具を地面に近接配置して、螺旋状の連結部材により連結する連結ステップと、
連結された前記倒木防止具を杭部材により地面に固定する固定ステップと、
固定された前記倒木防止具を土壌内に埋設した後、前記倒木防止具の近傍に樹木を植栽する植栽ステップとを備え
前記連結ステップは、複数の前記倒木防止具のいずれかの前記保持体同士を互いに近接させて配置し、前記連結部材を回転させながら前記各保持体の同方向に延びる部分に沿って進出させることにより、前記保持体の周りに前記連結部材を装着する 倒木防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒木防止具の連結構造体および倒木防止方法に関し、より詳しくは、植栽した樹木の生長により根が絡むように土壌内に埋設される倒木防止具の連結構造体、および、これを用いた倒木防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌内に埋設して樹木を地面に固定するための構造体が、特許文献1に開示されている。この構造体は、支持脚を有する複数のモジュラー要素からなり、隣接するモジュラー要素の支持脚同士が管状体によって連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国公開公報第2013/0139433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造体は、樹木の根がモジュラー要素内に進入することで樹木を支持することができるが、隣接するモジュラー要素同士が管状体によって強固に連結されるため、地震等の地盤変位によりモジュラー要素が大きな土圧を受けると、モジュラー要素が土圧を十分吸収できずに変形や損傷を生じるおそれがあり、良好な倒木防止効果が得られないという問題があった。
【0005】
一方、津波・台風等の天災あるいは人災によって生じる宅地・農地等の被害を軽減するため、樹木が持つ防災機能の重要性が近年改めて認識されつつあり、樹木の根付きを向上させることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、樹木を植栽する地盤を強化すると共に、樹木の倒木を確実に防止することができる倒木防止具の連結構造体および倒木防止方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、植栽した樹木の生長により根が絡むように土壌内に埋設される複数の倒木防止具の連結構造体であって、前記各倒木防止具は、互いに平行に延びる3つ以上の支持部と、前記支持部に支持される環状の保持体とを備え、前記保持体は、複数が前記支持部に沿って間隔をあけて固定されており、複数の前記倒木防止具が、螺旋状の連結部材により連結され、複数の前記倒木防止具が、互いに近接して配置された前記各保持体の同方向に延びる部分の周りに前記連結部材が装着されて連結された倒木防止具の連結構造体により達成される。
【0009】
また、本発明の前記目的は、植栽した樹木の生長により根が絡むように土壌内に埋設される複数の倒木防止具を用いた倒木防止方法であって、前記各倒木防止具は、互いに平行に延びる3つ以上の支持部と、前記支持部に支持される環状の保持体とを備え、前記保持体は、複数が前記支持部に沿って間隔をあけて固定されており、複数の前記倒木防止具を地面に近接配置して、螺旋状の連結部材により連結する連結ステップと、連結された前記倒木防止具を杭部材により地面に固定する固定ステップと、固定された前記倒木防止具を土壌内に埋設した後、前記倒木防止具の近傍に樹木を植栽する植栽ステップとを備え、前記連結ステップは、複数の前記倒木防止具のいずれかの前記保持体同士を互いに近接させて配置し、前記連結部材を回転させながら前記各保持体の同方向に延びる部分に沿って進出させることにより、前記保持体の周りに前記連結部材を装着する倒木防止方法により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹木を植栽する地盤を強化すると共に、樹木の倒木を確実に防止することができる倒木防止具の連結構造体および倒木防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る倒木防止具の連結構造体に使用する倒木防止具の側面図である。
図2図1に示す倒木防止具の平面図である。
図3図1に示す倒木防止具の連結構造体を示す側面図である。
図4図3に示す倒木防止具の連結構造体の平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る倒木防止方法の概略工程図である。
図6図5に示す倒木防止方法により支持された樹木の模式図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る倒木防止具の連結構造体を示す側面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態に係る倒木防止具の連結構造体を示す平面図である。
図9】倒木防止具の変形例を示す側面図である。
図10図9に示す倒木防止具の平面図である。
図11】倒木防止具の他の変形例を示す側面図である。
図12】倒木防止具の更に他の変形例を示す側面図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る倒木防止方法を説明するための模式図である。
図14】本発明の更に他の実施形態に係る倒木防止方法を説明するための模式図である。
図15】本発明の更に他の実施形態に係る倒木防止具の連結構造体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る倒木防止具の連結構造体に使用する倒木防止具の側面図であり、図2は、図1に示す倒木防止具の平面図である。図1および図2に示すように、倒木防止具1は、4つの縦材2と、縦材2に支持される2つの保持体4とを備えており、全体として立方体状に形成されている。
【0014】
縦材2は、金属や樹脂等からなる中実棒状または中空筒状の部材であり、本実施形態においては直棒状の鉄筋からなる。各縦材2は、互いに平行に延びるように平面視矩形状の各角部に配置されており、長手方向全体が保持体4を支持する支持部を構成する。縦材2の表面には、鉄筋のリブや節などのように凹凸を有することが好ましく、これによって、表面積を増加させて埋設時の土壌との密着力を高めることができる。
【0015】
保持体4は、金属や樹脂等からなる環状の部材であり、本実施形態においては、各縦材2と直交する平面に沿って各縦材2を取り囲むように鉄筋を矩形枠状に折り曲げて形成され、両端のフック部4a,4bが縦材2に係止されている。保持体4の表面についても、縦材2と同様に凹凸が形成されていることが好ましい。
【0016】
2つの保持体4,4は、縦材2に沿って間隔をあけて互いに平行に配置されており、それぞれ金属線等の結束具6により縦材2に固定されている。縦材2に対する保持体4の固定方法は特に限定されるものではなく、例えば、クランプによる挟持、金属パイプのかしめ、溶接等により行ってもよい。
【0017】
図3および図4は、それぞれ図1に示す倒木防止具1の連結構造体を示す側面図および平面図である。図3および図4に示すように、倒木防止具1の連結構造体100は、近接配置された複数の倒木防止具1,1を、複数の連結部材8,8により連結して構成されている。連結部材8は、棒材を螺旋状に巻回させた形状を有しており、例えば、スパイラル筋を好適に使用することができる。
【0018】
倒木防止具1,1は、互いに近接する保持体4,4の一辺の両側で、縦材2,2;2,2同士がそれぞれ平行に延びるように配置され、各連結部材8は、これら縦材2,2同士の周りを取り囲むように装着される。支持部材2,2と連結部材8との間には、若干(例えば、0.5~3cm程度)の隙間が生じることが好ましく、例えば、支持体2,2同士の外周間の最大距離が10cmである場合に、連結部材8の螺旋の内径を12cmにすることが好ましい。連結構造体100をこのように構成することで、土壌への埋設後に地盤変位が生じた場合でも、倒木防止具1,1間の任意の方向への位置ずれを、支持部材2,2と連結部材8との隙間によって吸収することができるので、倒木防止具1,1の結合状態を確実に維持しつつ、地盤変位に柔軟に対応することができる。但し、連結部材8は弾性変形可能であるため、連結部材8が支持体2,2同士の双方に接触する構成であってもよい。連結部材8の螺旋ピッチは、上下の保持体4,4と同時に干渉しないように、上下の保持体4,4の間隔に応じて適宜設定すればよい。
【0019】
図5は、本発明の一実施形態に係る植栽樹木の倒木防止方法を説明するための概略工程図である。防災林を植栽する場合のように広い植栽エリアに多数の樹木を植栽する場合、まず、図5(a)に示すように、植栽エリアの地面10を掘削して大きな植栽穴12を形成した後、植栽穴12の底部に、縦材2が鉛直方向となるように倒木防止具1を複数近接させて配置する。各倒木防止具1の大きさは特に限定されないが、例えば、各辺が1m程度の立方体状とすることができる。ついで、各倒木防止具1,1の互いに近接して平行に延びる縦材2,2に沿って、連結部材8を回転させながら矢示方向に進出させ、縦材2,2同士の周りに連結部材8を装着することにより、各倒木防止具1,1を連結する(連結ステップ)。
【0020】
次に、図5(b)に示すように、上記連結ステップで得られた倒木防止具1の連結構造体100を地面に固定する(固定ステップ)。すなわち、上部にフック状の係止部22を有する杭部材20を、植栽穴12の底部に矢示のように複数打ち込んで、それぞれの係止部22を各倒木防止具1の保持体4に係止させることにより、倒木防止具1を植栽穴12の底部の地面に固定する。杭部材20は、例えば鉄筋等からなり、倒木防止具1を確実に固定できるように、植栽穴12の底部から例えば0.5~2.5m程度の深さで土壌内に打ち込むことが好ましい。本実施形態においては、杭部材20を連結部材8の外部に打ち込んでいるが、連結部材8の内部に螺旋軸に沿って杭部材20を打ち込んでもよい。連結部材8の内部には後述するように土が入り込むため、連結部材8の内部に杭部材20を配置することで、杭部材20を周囲から保持することができ、連結構造体100を確実に固定することができる。必ずしもフック状の係止部22を備える必要はなく、例えば直筋等を使用することも可能であり、埋設土を介して倒木防止具1を固定することができる。
【0021】
そして、図5(c)に示すように、連結構造体100を掘削土や改良土等の土24で埋設した後、連結構造体100の上方に樹木30の苗木を複数植栽する(植栽ステップ)。植栽した樹木30は、生長に伴い根32が水分や養分を求めて土壌内に拡がるように伸びるため、図6に示すように、倒木防止具1の保持体4の内部や上下の保持体4,4の間に樹木30の根32を通過させて、保持体4に絡ませることができる。樹木30の根は、直下に配置された倒木防止具1に係合するだけでなく、これと隣接する倒木防止具1や、螺旋状の連結部材8にも係合するため、これによって倒木防止効果がより高められる。樹木30の植栽は、各倒木防止具1の直上であることが好ましいが、倒木防止具1の近傍であればよく、倒木防止具1の斜め上方や左右に樹木30を植栽してもよい。
【0022】
上記の倒木防止方法によれば、倒木防止具1の連結構造体100を、苗木の根の生長に伴い係合するように土壌に埋設することにより、地盤を強化できると共に、樹木30の根系の主として先端側を倒木防止具1に絡ませることができるので、生長あるいは分岐した多数の根(例えば、水平根や垂下根等)を、倒木防止具1により保持して樹木30を強固に支持して、倒木を確実に防止することができる。また、土砂災害や河川の浸食等が生じた場合でも、倒木防止具1の内部に土壌が保持され易いために地盤強化の役割を果たすため、これによっても倒木の防止を図ることができる。
【0023】
更に、倒木防止具1の連結構造体100は、複数の倒木防止具1の連結が、螺旋状の連結部材8により行われるため、地震等により地盤変位が生じた場合でも、各倒木防止具1間の位置ずれを連結部材8によって吸収することができ、各倒木防止具1の損傷を防止しつつ良好な連結状態を維持することができる。この結果、多数の倒木防止具1を用いた広範囲の地盤強化および倒木予防を、容易且つ確実に行うことができる。
【0024】
地面10から倒木防止具1の上側の保持体4までの深さは、大きすぎると、地表に沿って伸びる水平根が保持体4に係合し難くなる一方、小さすぎると、土壌表面の浸食等により倒木防止具1が露出し易くなることから、例えば30cm程度であることが好ましく、倒木防止具1の大部分が30~130cm程度の深さに配置されることが好ましい。植栽する樹木30の種類は、特に限定されないが、根32の強度および深さ方向への広がりが大きい樹木30であることが好ましく、例えば、シラカシ、スダジイ、タブノキ、ヤブツバキ、マサキのような広葉樹等を挙げることができ、倒木防止具1を、防風林や防潮林等の防災林(防風林、防潮林、防砂林、防火林等)の倒木防止に好適に使用することができる。複数の樹木30を植栽する場合、同種の樹木30であってもよいが、根系の異なる複数種類の樹木30であることが好ましい。樹木30が単体であっても、倒木防止具1による良好な補強効果を得ることができるが、複数の樹木30を連結して使用することで、防災林としての機能をより確実に発揮させることができる。植栽する樹木30は、その土地本来に生息する在来種であることが好ましい。植栽する樹木30の種類は、スギ・ヒノキ・カラマツのような針葉樹であってもよく、倒木防止具1を、例えば、同種の植栽が多い人工林に使用することもできる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態の連結構造体100は、隣接配置された倒木防止具1,1を、複数の連結部材8により連結しているが、単一の連結部材8により連結した構成であってもよい。また、3つ以上の倒木防止具1を単一の連結部材8により連結することも可能であり、例えば、倒木防止具1をマトリクス状に配置して、マトリクスの交点に対応する4つの縦材2の周りに連結部材8を装着することができる。
【0026】
また、本実施形態の連結部材8は、複数の倒木防止具1,1における縦材2,2同士の周りに装着しているが、それぞれの保持体4,4の同方向に延びる部分の周りに装着してもよい。例えば、図7に側面図で示すように、複数の倒木防止具1,1を、保持体4,4の一辺が同じ直線に沿って延びるように配置し、螺旋軸がこの直線に沿うように連結部材8を保持体4,4の周りに装着することができる。あるいは、図8に平面図で示すように、複数の倒木防止具1,1を、保持体4,4の一辺が近接して互いに平行になるように配置し、この平行な部分の周りに連結部材8を装着することができる。
【0027】
また、倒木防止具1についても、本実施形態の構成の他、種々の構成にすることができる。例えば、本実施形態においては、倒木防止具1を全体として立方体状に形成しているが、その形状は特に限定されるものではなく、樹木を列状に植栽する場合には、列方向に長い直方体状としてもよい。
【0028】
また、本実施形態の倒木防止具1は、保持体4を支持する支持部を構成する縦材2の数をそれぞれ4つとしているが、環状の保持体4を支持できるように3つ以上であればよい。例えば、保持体4が三角形以上の多角形状である場合には、多角形状の各頂部にそれぞれ縦材2を配置することが好ましい。また、保持体4が円形状や楕円状の場合には、保持体4の周方向に沿って等間隔に適宜の数の縦材2を配置することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態においては、2つの保持体4を縦材2に沿って間隔をあけて配置することで、両者の間に樹木30の根32を通過させることができ、それぞれの保持体4が異なる深さ位置に延びる根と係合するため、樹木30を確実に支持することができる。保持体4の数は3つ以上であってもよく、植栽する樹木30の根32の太さや、根32が生長する深さ等を考慮して、保持体4の数や間隔を適宜設定することが好ましい。
【0030】
また、倒木防止具1において保持体4を支持する支持部は、本実施形態のように直棒状の縦材2以外によって形成することも可能である。例えば、図9および図10にそれぞれ側面図および平面図で示すように、U字状の湾曲部材40の両側で互いに平行に延びる両側部をそれぞれ支持部42,42として、倒木防止具1を構成することもできる。図9および図10に示す倒木防止具1は、4つの湾曲部材40を互いに平行に等間隔で配置すると共に、これらと直交するように他の4つの湾曲部材40を互いに平行に等間隔で配置することにより、8つの湾曲部材40から16個の支持部42が構成されている。このように、支持部42を、複数のU字状湾曲部材40の両側部により構成することで、倒木防止具1の強度を確保して、樹木をより確実に支持することができる。湾曲部材40は、枠状に形成された部材の一部であってもよい。
【0031】
各支持部42には、平面視正方形状の環状体からなる保持体4が3つ支持されている。各保持体4の上部には、それぞれ補助体50が支持されている。補助体50は、平面視長方形状の環状体からなり、保持体4の内側に配置されるように(すなわち、平面視において保持体4の外方にはみ出さないように)、補助体50の環状内部の開口面積が、保持体4の環状内部の開口面積よりも小さく形成されている。補助体50は、図1等に示す構成と同様に結束具(図9および図10においては図示せず)を用いて、支持部42および保持体4の双方に固定されている。
【0032】
図9および図10に示す倒木防止具1によれば、保持体4の他に補助体50を備えることによって、生長した樹木の根が倒木防止具1に絡み易くなるため、樹木をより確実に支持することができる。各補助体50は、上下に隣接するもの同士で平面視における長方形の向きが互いに相違しており、これによって、樹木の根を上下の補助体50で支持し易くすることができる。倒木防止具1が大型化するにつれて、保持体4の上下に配置する補助体50の数を更に増やしてもよく、倒木防止具1の高密度化を図ると共に土壌との接触面積を増加させて、地盤強化および倒木防止の効果を高めることができる。補助体は、環状のもの以外にスパイラル状のものであってもよく、図11に示すように、環状の補助体50およびスパイラル状の補助体52を、保持体4の内側に(すなわち、平面視において全体またはその主要部が保持体4の外方にはみ出さないように)配置して、倒木防止具1を構成することもできる。
【0033】
倒木防止具1の連結構造体100の設置個所は、図5に示すような植栽穴12の底部の地面に限定されるものではなく、地盤面(GLライン)等であってもよく、例えば、地盤の嵩上工事、河川の護岸工事、生育地盤造成工事等を行う際に、連結構造体100を使用することができる。
【0034】
本発明の倒木防止具の連結構造体を、盛土の法面に埋設する場合、図12に示す構成の倒木防止具1’を好適に使用することができる。この倒木防止具1’は、互いに大きさが相違する矩形枠状の2つの保持体4a,4bが、上下に間隔をあけて平行に配置されており、2つの保持体4a,4bは、これと直交する3つの枠状部材40a,40b,40cの支持部42a,42b,42cによって支持されている。更に、2つの保持体4a,4bには、内側から支持するように三角環状の補助体44および矩形環状の補助体46が挿通されている。三角環状の補助体44は、直角三角形状に形成されて、保持体4a,4bおよび枠状部材40a,40b,40cの双方と直交するように配置されている。また、矩形環状の補助体46は、保持体4a,4bに対して傾斜するように配置されている。三角環状の補助体44は、下方に突出する挿入部44aを備えており、倒木防止具1’を地面に固定する際に、挿入部44aを地面に挿入して倒木防止具1’の姿勢を安定させることにより、その後の杭部材20の打ち付けによる固定を容易に行うことができる。
【0035】
図12に示す倒木防止具1’は、図13に示すように、小さい方の保持体4aが上方となる姿勢で、螺旋状の連結部材8により複数を連結して連結構造体100’を構成した後、杭部材20により地表面(地面)10に固定することができる。倒木防止具1’は、盛土26で埋設する際に、大きさが互いに相違する各保持体4a,4bを、盛土26の法面26a,26bの傾斜に沿うようにそれぞれ配置することができるので、盛土26の地盤強化を図ると共に、法面26a,26bに植栽した樹木30の倒木を確実に防止することができる。倒木防止具1’が備える保持体4a,4bは、本実施形態では2つとしているが、3つ以上の保持体を大きさが段階的に変化するように配置してもよい。傾斜する法面26a,26bに針葉樹を植栽する場合、法面26a,26bの下方に常緑広葉樹を植栽することが好ましい。図12に示す倒木防止具1’は、図1等に示す倒木防止具1と組み合わせて螺旋状の連結部材8で連結することにより、例えば、図14に示す連結構造体100’にすることもできる。
【0036】
また、図15に示すように、倒木防止具1,1’を複数積み上げて、それぞれを連結部材8で連結することにより、連結構造体100’を構成することも可能である。図15に示す連結部材8は、互いに近接して上下に延びるように平行に配置された縦材(支持部)の周りに装着されているが、図7図8に示すように、連結部材8を保持体4の同方向に延びる部分の周りに装着してもよく、あるいは、これらを併用してもよい。
【0037】
図15に示す連結構造体100’は、最下段の1段目の倒木防止具1,1’が、杭部材20により地面10に固定される。杭部材20の上端部は、2段目の倒木防止具1,1’の内部に入り込むように構成されている。2段目の倒木防止具1,1’については、係合される杭部材20’の下端部が、1段目の倒木防止具1,1’の内部に入り込むように構成されている。杭部材20,20’の上端部または下端部が倒木防止具1,1’の内部に入り込む長さは、倒木防止具1,1’の高さの2/3以上であることが好ましい。杭部材20,20’は、直筋状のものを使用することができるが、上端部が外部に露出するおそれがある杭部材20,20’については、上端部を湾曲させることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 倒木防止具
2 縦材(支持部)
4 保持体
8 連結部材
20 杭部材
30 樹木
32 根
40 湾曲部材
42 支持部
44,46 補助体
50,52 補助体
100 倒木防止具の連結構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図15