(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】カテーテル操作支援装置及びその作動方法、プログラム、並びにX線医療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/12 20060101AFI20221121BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2018221329
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-10-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業 臨床現場の医師の暗黙知を利用する医療機器開発システム ~「メディカル・デジタル・ヘッド」の構築~」「脳血管内治療における暗黙知の可視化とデジタル画像処理に基づいたカテーテル治療支援システムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】502094572
【氏名又は名称】株式会社アールテック
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597128004
【氏名又は名称】国立医薬品食品衛生研究所長
(73)【特許権者】
【識別番号】509260916
【氏名又は名称】地方独立行政法人神戸市民病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】小杉 隆司
(72)【発明者】
【氏名】太田 信
(72)【発明者】
【氏名】冨永 悌二
(72)【発明者】
【氏名】新妻 邦泰
(72)【発明者】
【氏名】庄島 正明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】坂井 信幸
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-522841(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021179(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0135707(US,A1)
【文献】特表2008-512171(JP,A)
【文献】米国特許第05209730(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0165450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61M 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影装置、及び、第1のマーカーと、挿入方向においてこれよりも後方に位置する第2のマーカーとを有するカテーテルと、当該カテーテルの内部を軸方向に移動可能で、第3のマーカーを有するワイヤーとを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置であって、
前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得手段と、
前記X線画像情報を用いて、前記カテーテルの前記第2のマーカーと前記ワイヤーの前記第3のマーカーとの位置関係に応じて、アラートを行うアラート手段と、
を有
し、
前記アラート手段は、前記第2のマーカーに対して前記第3のマーカーを近づけるべく前記ワイヤーを操作する間、前記第2のマーカーの目標位置に対して前記第3のマーカーの進行方向における先端が到達するまでの期間において前記先端と前記目標位置との位置関係を検知する第1のモード、前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記第3のマーカーの前記進行方向における中心が到達するまでの期間において前記中心と前記目標位置との位置関係を検知する第2のモード、及び、前記中心が前記目標位置に到達した後の期間において前記第3のマーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知する第3のモードにおける3つのモードにおいて、互いに異なる前記アラートを行う
ことを特徴とするカテーテル操作支援装置。
【請求項2】
前記アラート手段は、前記第1のモードの場合に、前記先端と前記目標位置との間の距離に応じて、異なる複数の前記アラートを行うことを特徴とする請求項
1に記載のカテーテル操作支援装置。
【請求項3】
前記アラート手段は、前記第2のモードの場合に、前記中心と前記目標位置との間の距離に応じて、異なる複数の前記アラートを行うことを特徴とする請求項
1又は
2に記載のカテーテル操作支援装置。
【請求項4】
前記アラート手段は、前記第3のモードの場合に、前記後端と前記目標位置との間の距離に応じて、異なる複数の前記アラートを行うことを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載のカテーテル操作支援装置。
【請求項5】
X線撮影装置、及び、その進行方向において所定の長さで形成されたマーカーを有するワイヤーを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置であって、
前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得手段と、
前記X線画像情報を用いて、目標位置に対する前記マーカーの位置関係を検知する検知手段と、
を有し、
前記検知手段は、
前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における先端が到達するまでは、前記先端と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における中心が到達するまでは、前記中心と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記中心が前記目標位置に到達した後は、前記マーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知することを特徴とするカテーテル操作支援装置。
【請求項6】
前記アラート手段は、前記アラートとして、アラート視覚表示信号を出力することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載のカテーテル操作支援装置。
【請求項7】
前記アラート手段は、前記アラートとして、アラート音声信号を出力することを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載のカテーテル操作支援装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のカテーテル操作支援装置と、
前記X線撮影装置と、
前記カテーテル器具と、
を有することを特徴とするX線医療システム。
【請求項9】
X線撮影装置、及び、第1のマーカーと、挿入方向においてこれよりも後方に位置する第2のマーカーとを有するカテーテルと、当該カテーテルの内部を軸方向に移動可能で、第3のマーカーを有するワイヤーとを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置の作動方法であって、
前記カテーテル操作支援装置が、前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得ステップと、
前記カテーテル操作支援装置が、前記X線画像情報を用いて、前記カテーテルの前記第2のマーカーと前記ワイヤーの前記第3のマーカーとの位置関係に応じて、アラートを行うアラートステップと、
を有し、
前記アラートステップは、前記第2のマーカーに対して前記第3のマーカーを近づけるべく前記ワイヤーを操作する間、前記第2のマーカーの目標位置に対して前記第3のマーカーの進行方向における先端が到達するまでの期間において前記先端と前記目標位置との位置関係を検知する第1のモード、前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記第3のマーカーの前記進行方向における中心が到達するまでの期間において前記中心と前記目標位置との位置関係を検知する第2のモード、及び、前記中心が前記目標位置に到達した後の期間において前記第3のマーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知する第3のモードにおける3つのモードにおいて、互いに異なる前記アラートを行うことを特徴とするカテーテル操作支援
装置の作動方法。
【請求項10】
X線撮影装置、及び、その進行方向において所定の長さで形成されたマーカーを有するワイヤーを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置の作動方法であって、
前記カテーテル操作支援装置が、前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得ステップと、
前記カテーテル操作支援装置が、前記X線画像情報を用いて、目標位置に対する前記マーカーの位置関係を検知する検知ステップと、
を有し、
前記検知ステップは、
前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における先端が到達するまでは、前記先端と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における中心が到達するまでは、前記中心と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記中心が前記目標位置に到達した後は、前記マーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知することを特徴とするカテーテル操作支援
装置の作動方法。
【請求項11】
X線撮影装置、及び、第1のマーカーと、挿入方向においてこれよりも後方に位置する第2のマーカーとを有するカテーテルと、当該カテーテルの内部を軸方向に移動可能で、第3のマーカーを有するワイヤーとを含むカテーテル器具の使用に対し、
前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得機能と、
前記X線画像情報を用いて、前記カテーテルの前記第2のマーカーと前記ワイヤーの前記第3のマーカーとの位置関係に応じて、アラートを行うアラート機能と、
をコンピュータに実現させ
、
前記アラート機能は、前記第2のマーカーに対して前記第3のマーカーを近づけるべく前記ワイヤーを操作する間、前記第2のマーカーの目標位置に対して前記第3のマーカーの進行方向における先端が到達するまでの期間において前記先端と前記目標位置との位置関係を検知する第1のモード、前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記第3のマーカーの前記進行方向における中心が到達するまでの期間において前記中心と前記目標位置との位置関係を検知する第2のモード、及び、前記中心が前記目標位置に到達した後の期間において前記第3のマーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知する第3のモードにおける3つのモードにおいて、互いに異なる前記アラートを行うことを特徴とする
プログラム。
【請求項12】
X線撮影装置、及び、その進行方向において所定の長さで形成されたマーカーを有するワイヤーを含むカテーテル器具の使用に対し、
前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得機能と、
前記X線画像情報を用いて、目標位置に対する前記マーカーの位置関係を検知する検知機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記検知機能は、
前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における先端が到達するまでは、前記先端と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における中心が到達するまでは、前記中心と前記目標位置との位置関係を検知し、
前記中心が前記目標位置に到達した後は、前記マーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術者によるカテーテル操作を支援するためのカテーテル操作支援装置及びその作動方法、プログラム、並びにX線医療システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の患部をX線撮影して得られたX線画像を見ながら、カテーテル操作を行うX線医療システムが提案されている。例えば、特許文献1には、効率的にカテーテル操作を行えるようにするために、画像においてカテーテル器具の視認性を向上させるための技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、不整脈の治療を目的としたカテーテルアブレーションにおいて、参照データ収集モードにおいて心筋電位計測用カテーテルの先端部を治療対象部位に位置させた状態でX線撮影を行うことにより当該計測用カテーテルの先端部の位置情報を収
集し、次いで支援データ生成モードにおいて治療対象部位の焼灼のための治療用カテーテルの先端部を治療対象部位近傍に位置させた状態でX線撮影を行って、このときの治療用
カテーテル先端部のX線画像に、先に収集した計測用カテーテルの先端部の位置情報を重
畳することにより支援データを生成して、治療用カテーテルの先端部を治療対象部位に正確に位置させるための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-211914号公報
【文献】特開2013-46750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、カテーテル器具の操作を行う術者に対して、患者の体内におけるカテーテル器具の状態についてフィードバックを行うものではないため、術者がカテーテル操作を安全かつ正確に行うという観点では不十分なものであった。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、治療用カテーテルの先端部が、目標位置、即ち、治療対象部位からずれた場合に警告を行うもので、治療対象部位への接近の程度を報知するものではないため、術者がカテーテル操作を安全かつ正確に行うという観点では不十分なものであった。
【0007】
例えば、脳動脈瘤の治療法として用いられているコイル塞栓術では、先端に、動脈瘤内に留置するコイルが取り付けられているデリバリーワイヤーと、これを案内するためのマイクロカテーテルと、更にこれらを動脈内の所定位置まで案内するためのガイディングカテーテルを含むカテーテル器具を用いて、動脈内の或る位置までガイディングカテーテルを挿入した後、マイクロカテーテルをガイディングカテーテルに挿入してその先端を動脈瘤の開口付近に位置させ、その後、デリバリーワイヤーをマイクロカテーテルに挿入して所定量送り込むことで予定した量のコイルを動脈瘤内に留置するものである。そして、このときのガイディングカテーテル、マイクロカテーテル、デリバリーワイヤーの送り込み量の調節は、それぞれに設けられたX線不透過マーカーを、X線画像モニターに映し出さ
れる患者のX線画像(X線動画像)から、術者が目視で確認しながら行うものであるが、かかるカテーテル操作の支援として特許文献1又は2の技術を適用したとしても、動脈瘤に対するカテーテル先端部の接近の程度を逐次報知するものではないため、術者の負担(疲労)を軽減するものではなく、カテーテル操作の安全性、確実性という観点では極めて不十分である。
【0008】
また、瘤の内部形状やコイルの挿入方向によってはコイルを押し出す際の反力でデリバリーワイヤー、マイクロカテーテル、或いはガイディングカテーテルに位置ずれを生じ、コイルを正常に瘤内部に留置できないといった事態が発生することがあるが、このような事態についても操作情報をきちんと術者にフィードバックして直ちにコイルの挿入をやり直すことを促すような支援システムが望まれていた。
【0009】
このように、X線画像モニターにおいてカテーテルの挙動を注視しながら施術を行うことは術者の経験と技量に大きく左右され、また熟練した術者にとっても大変な疲労を招くものであり、また熟練していない術者にとっては手術の失敗という重大な事態を招きかねないものであったが、従来の技術ではこれらの課題を解決できていなかった。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、カテーテル操作の際の術者の負荷を軽減させることができると共に、術者の経験と技量に大きく左右されることなくカテーテル操作の安全性と正確性を向上させることができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカテーテル操作支援装置は、X線撮影装置、及び、第1のマーカーと、挿入方向においてこれよりも後方に位置する第2のマーカーとを有するカテーテルと、当該カテーテルの内部を軸方向に移動可能で、第3のマーカーを有するワイヤーとを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置であって、前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得手段と、前記X線画像情報を用いて、前記カテーテルの前記第2のマーカーと前記ワイヤーの前記第3のマーカーとの位置関係に応じて、アラートを行うアラート手段と、を有し、前記アラート手段は、前記第2のマーカーに対して前記第3のマーカーを近づけるべく前記ワイヤーを操作する間、前記第2のマーカーの目標位置に対して前記第3のマーカーの進行方向における先端が到達するまでの期間において前記先端と前記目標位置との位置関係を検知する第1のモード、前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記第3のマーカーの前記進行方向における中心が到達するまでの期間において前記中心と前記目標位置との位置関係を検知する第2のモード、及び、前記中心が前記目標位置に到達した後の期間において前記第3のマーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知する第3のモードにおける3つのモードにおいて、互いに異なる前記アラートを行う。
本発明の好ましい一実施態様によれば、上述した所定領域は、上述したカテーテルの第2のマーカー及びワイヤーの第3のマーカーのX線画像でのそれぞれの大きさに応じて、それらよりもやや大きめの領域にそれぞれ設定される。
【0012】
本発明の他のカテーテル操作支援装置は、X線撮影装置、及び、その進行方向において所定の長さで形成されたマーカーを有するカテーテルを含むカテーテル器具と共に使用されるカテーテル操作支援装置であって、前記X線撮影装置から、所定領域のX線画像情報を取得する取得手段と、前記X線画像情報を用いて、目標位置に対する前記マーカーの位置関係を検知する検知手段と、を有し、前記検知手段は、前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における先端が到達するまでは、前記先端と前記目標位置との位置関係を検知し、前記先端が前記目標位置に到達した後であって前記目標位置に対して前記マーカーの前記進行方向における中心が到達するまでは、前記中心と前記目標位置との位置関係を検知し、前記中心が前記目標位置に到達した後は、前記マーカーの前記進行方向における後端と前記目標位置との位置関係を検知する。
本発明の好ましい一実施態様によれば、上述した所定領域は、上述したマーカーのX線
画像での大きさに応じて、それよりもやや大きめの領域に設定される。
【0014】
アラートは、ビープ等のサウンドや音声アナウンスのような音によるアラート、或いは、X線撮影装置のモニター(ディスプレイ)画面でのマークの明滅、画面の一部又は全体の赤や黄色等の注意喚起色への変化のような視覚表示によるアラートが好適である。
また、本発明は、カテーテル操作支援方法、及びこれを実行するためのプログラム、並びに上述したカテーテル操作支援装置とX線撮影装置とカテーテル器具とを有するX線医療システムを含む。
特に、本発明のカテーテル操作支援装置は、X線撮影装置に適宜取り付け可能なオプションユニットとして構成することもでき、既存のX線撮影装置を、安全性の高いX線医療システムに簡単にグレードアップさせることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、術者によるカテーテル操作の安全性と正確性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るカテーテル操作支援装置を組み込んだX線医療システムの一例の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示すカテーテル器具の一例に含まれる部材の構成を示す模式図である。
【
図3】
図1に示すディスプレイ装置の表示部により表示されるX線画像の一例を示す模式図である。
【
図4】
図1に示すカテーテル操作支援装置の実施例1の構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に示すカテーテル操作支援装置のセカンドマーカーの認識・追跡動作を説明するためのフロー図である。
【
図6】
図4に示すカテーテル操作支援装置のアライメントマーカーの認識・追跡動作を説明するためのフロー図である。
【
図7】
図2に示すマイクロカテーテルとコイルデリバリーワイヤーの位置関係の一例を示す模式図である。
【
図8】
図7に示すマイクロカテーテルのセカンドマーカーとコイルデリバリーワイヤーのアライメントマーカーの位置関係とアラートレベルの関係を説明するための模式図である。
【
図9】
図4に示すカテーテル操作支援装置の画像表示部により表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図10】
図1に示すカテーテル操作支援装置の実施例2の構成を示す模式図である。
【
図11】
図10に示すカテーテル操作支援装置の動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0018】
図1に示すように、X線医療システム100は、カテーテル器具110、X線撮影装置120、ディスプレイ装置130、制御装置140、入力装置150、及び、カテーテル操作支援装置160を有して構成されている。
【0019】
カテーテル器具110は、術者210によって患者220の患部を目標に挿入される、カテーテル治療に用いる器具である。ここで、本実施形態においては、患者220の患部として脳動脈瘤を選び、これにコイル塞栓術を行う場合に適用した例について説明を行う。
【0020】
図2に示すように、カテーテル器具110は、
図2(a)に示すガイディングカテーテル111、
図2(b)に示すマイクロカテーテル112、
図2(c)に示すコイル機構113、及び
図2(d)に示すガイドワイヤー114を含み構成されている。
図2(a)~(d)に示す部材は組み合わされて使用されるものではあるが、予め組み立てられているものではない。ここでは、
図2(a)~(d)に示す部材の集合体をカテーテル器具110と称する。なお、
図2において、紙面の左から右に向かう方向が、カテーテル器具110の各部材を挿入する際の進行方向となる。
【0021】
図2(a)において、ガイディングカテーテル111は、進行方向における先端部111aに、X線不透過性の材質からなる先端マーカー111bが設けられているカテーテルである。
【0022】
図2(b)において、マイクロカテーテル112は、
図2(a)に示すガイディングカテーテル111の内径よりも小さい外径を有するカテーテルで、ガイディングカテーテル111の内部を軸方向(進行方向及びその逆方向)に移動可能である。このマイクロカテーテル112は、進行方向における先端部112aにX線不透過性の材質からなるファーストマーカー112bが設けられているとともに、先端部112aから所定の距離手前の位置に、内側のエッジ(進行方向における後端)112dを有するX線不透過性の材質からなるセカンドマーカー112cが設けられている。本実施形態では、マイクロカテーテル112の先端部112aからセカンドマーカー112cの進行方向における中心までの距離は、例えば3cmである。
【0023】
図2(c)において、コイル機構113は、
図2(b)に示すマイクロカテーテル112の内径よりも小さい外径を有するコイルデリバリーワイヤーで、マイクロカテーテル112の内部を軸方向(進行方向及びその逆方向)に移動可能である。このコイル機構113は、デリバリーワイヤー113a、コイル113b、及び図示しないコイル切り離し機構を含み構成されている。デリバリーワイヤー113aは、進行方向において先端部113cから所定の距離後方の位置にX線不透過性の材質からなるアライメントマーカー113dが設けられている。ここに示す例では、アライメントマーカー113dは、進行方向において所定の長さ(本実施形態では、例えば2mm)を有して、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cよりも、進行方向において幅広に形成されている。また、
図2(c)には、アライメントマーカー113dの進行方向における先端113fと、アライメントマーカー113dの進行方向における後端113eを図示している。本実施形態では、デリバリーワイヤー113aの先端部113cからアライメントマーカー113dの後端113eまでの距離は、例えば4cmである。コイル113bは、デリバリーワイヤー113aの先端部113cに着脱可能に取り付けられている柔らかなコイルであり、これが動脈瘤内に留置される。
【0024】
図2(d)において、ガイドワイヤー114は、先端部114aを有し、
図2(a)に示すガイディングカテーテル111の内径よりも小さい外径を有するカテーテルで、ガイディングカテーテル111の内部を軸方向(進行方向及びその逆方向)に移動可能である。
【0025】
次に、このカテーテル器具110を用いた動脈瘤に対するコイル塞栓術について
図3により説明する。
【0026】
図3(a)~
図3(e)には、術者210がカテーテル器具110を用いてコイル塞栓術を行う場合の各場面におけるX線画像を模式的に示している。なお、これらの画像は、
図1に示すディスプレイ装置130の画像取込部11によって取込まれ、画像処理部12によって処理された後、表示部14で表示されるX線動画像のうちの各場面の画像である。
【0027】
図3(a)は、術者210が、ガイディングカテーテル111を患者220の頚部動脈血管内に挿入・留置した場面を示している。ここで、X線画像では、患者220の血管は白っぽく映り、ガイディングカテーテル111の先端マーカー111bはX線不透過性の材質から形成されているために黒っぽく映る。なお、ガイディングカテーテル111は、ガイドワイヤー114に誘導されてこの位置まで挿入され、この位置で留置される。
【0028】
続いて、
図3(b)は、緊急対応に備えて、術者210が、ガイドワイヤー114を、更にその先端部114aが動脈瘤301の位置を通過して脳血管300の所定の位置に達するまで送り込んで、ガイドワイヤー114を脳血管300内に留置した場面を示している。ここで、ガイドワイヤー114は金属で形成されているためにX線画像では黒っぽく映る。
【0029】
続いて、
図3(c)は、術者210が、マイクロカテーテル112を、ガイディングカテーテル111に挿入し、そのファーストマーカー112bが動脈瘤301の開口部近傍でコイル113bを送り出し易い位置(動脈瘤301の開口部上部から僅かに瘤内部に入った位置)に達するまで送り込んだ場面を示している。ここで、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112b及びセカンドマーカー112cはX線不透過性の材質から形成されているためにX線画像では黒っぽく映る。なお、マイクロカテーテル112は、ここでは図示を省略した第2のガイドワイヤーに誘導されてこの位置まで挿入され、この位置で留置される。
【0030】
続いて、
図3(d)は、術者210が、マイクロカテーテル112を誘導した第2のガイドワイヤーを抜去した後、デリバリーワイヤー113aをマイクロカテーテル112に挿入している場面を示している。この
図3(d)の場面では、デリバリーワイヤー113aは、その先端部113cがマイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cに到達する位置までしか挿入されておらず、このときそのアライメントマーカー113dは、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cより大分手前の位置にある。なお、この操作により、マイクロカテーテル112の先端部112a、即ち、ファーストマーカー112bの位置から動脈瘤301の内部に、デリバリーワイヤー113aの先端部113cに設けられたコイル113bの一部が挿入される。ここで、X線画像では、患者220の血管(動脈瘤301を含む)は白っぽく映り、デリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dはX線不透過性の材質から形成されており、また、コイル113bは金属で形成されているため、黒っぽく映る。
【0031】
続いて、
図3(e)は、術者210が、デリバリーワイヤー113aを更に送り込んだ場面を示している。この操作の際、術者210は、デリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dの後端113eがマイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cの中心と重なる所定の状態(後に詳述する)となるまで、デリバリーワイヤー113aを送り込む。これにより、動脈瘤301の内部に、予定した量のコイル113bが充填される。その後、術者210は、デリバリーワイヤー113aからコイル113bを切り離し、動脈瘤301の内部にコイル113bを留置する。そして、デリバリーワイヤー113a、マイクロカテーテル112、ガイドワイヤー114、そしてガイディングカテーテル111を抜去して施術を終了する。
【0032】
図1に戻って、X線撮影装置120は、X線122aを用いて患者220の患部を含む領域の撮影を行うための装置であり、
図1に示すように、天板121、X線発生部122、X線検出部123、及び、Cアーム124を有して構成されている。
【0033】
天板121は、患者220を載置するための部材であり、X線122aを透過させる材質で形成されている。
【0034】
X線発生部122は、制御装置140の制御に基づいて、患者220の患部を含む領域に対してX線122aを照射する。
【0035】
X線検出部123は、制御装置140の制御に基づいて、X線発生部122から円錐状に出射され患者220を透過したX線122aを検出し、X線122aの分布パターンに応じた信号を生成する。ここで、本実施形態においては、X線検出部123は、例えば、被検体を透過したX線122aを受容する蛍光板とCCDカメラとを含んで成るラジオグラフィックカメラ(Radio Graphic Camera)であり、所定の時間間隔(フレームレート)で連続した画像であるX線動画像を表す出力信号を生成する。本実施形態では、X線検出部123で生成されるX線動画像は、本発明の「X線画像情報」の一例に相当するものである。
【0036】
Cアーム124は、一方の端にX線発生部122を固定し、他方の端にX線検出部123を固定して、患者220を間に挟んでX線発生部122とX線検出部123とを対向させて配置するための支持部材である。このCアーム124は、例えば制御装置140の制御によって、移動可能に構成されている。
【0037】
ディスプレイ装置130は、X線検出部123の出力信号を取り込む画像取込部11、
画像取込部11により取り込まれたX線検出部123の出力信号に対し輪郭強調、濃淡補
正、及びディジタル化等の処理を施してディジタル画像信号を生成する画像処理部12、画像処理部12の出力信号に、制御装置140を通じて入力される付加情報を付加するための情報付加部13、情報付加部13の出力及びカテーテル操作支援装置160の出力を表示する表示部14を含み構成されている。さらに、ディスプレイ装置130は、画像処理部12の出力を記憶するための記憶部15、及び表示部14による表示情報を、情報付加部13の出力と記憶部15の出力との間で切り替えるための切替部16を含み構成されており、これらはいずれも制御装置140により制御される。また、表示部14は、例えば、フラットパネル等の画像表示機器である。
【0038】
このディスプレイ装置130にあっては、X線撮影装置120で撮影されたX線画像を
、制御装置140を通じて適宜入力される付加情報を情報付加部13で付加しつつ表示部14により表示可能であるほか、記憶部15に記憶された或る時点でのX線画像を、切替
部16で切り替えることにより表示可能である。
【0039】
制御装置140を通じて情報付加部13に入力される情報は、例えば、患者220の生体情報、年齢・性別等の個人情報、治療対象病変部位を含む領域の指定など、術者210にとって役に立つ種々の情報である。
【0040】
(実施例1)
図1に示すカテーテル操作支援装置160の実施例1の構成は、例えば、
図4に示すような構成である。
図4に示すカテーテル操作支援装置160-1において、探索領域指定部21は、操作者が、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cを検出するためのセカンドマーカー検出部23及びデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dを検出するためのアライメントマーカー検出部26に対してマーカー探索領域を設定するためのものである。画像受信部22は、
図1の画像処理部12からのディジタル画像信号を入力し、これをセカンドマーカー検出部23、アライメントマーカー検出部26、及び画像データ記憶部28に出力する。本実施例では、探索領域指定部21及び画像受信部22は、本発明の「取得手段」の一例に相当する構成である。
【0041】
テンプレート格納部30は、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cのX線ディジタル画像に相当するテンプレートデータを格納している。セカンドマーカー検
出部23は、画像受信部22の出力信号のうち探索領域指定部21を通じて指定された探索領域に相当する出力信号から、テンプレート格納部30に格納されているテンプレートデータに相当する信号部分を検出し、結果的に探索領域におけるセカンドマーカー112cに相当する画像をその位置と共に検出する。セカンドマーカー検出部23の出力である画像データは、セカンドマーカー記憶部24に、セカンドマーカー112cの画像の中心の、座標上の位置に関する情報と共に、記憶される。本実施例では、テンプレート格納部30及びセカンドマーカー検出部23は、セカンドマーカー検出手段を構成する。
【0042】
アライメントマーカー検出部26は、画像受信部22の出力信号と画像処理部29を通じて供給される画像データ記憶部28の出力を基に、デリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dに相当する画像をその位置と共に検出する。アライメントマーカー113dは、二次元画像で長方形という特徴のある形状をしている。このため、アライメントマーカー検出部26は、セカンドマーカー検出部23のようにテンプレートデータを用いず、今回の画像受信部22の出力信号を、前に画像データ記憶部28に記憶された画像信号と比較することで、その特異な形状を検出したときにアライメントマーカー113dとして検出する。なお、画像データ記憶部28は、画像受信部22の動画像出力を逐次記憶するものである。アライメントマーカー検出部26の出力である画像データは、アライメントマーカー記憶部27に、アライメントマーカー113dの画像の先端、中心、又は後端の、座標上の位置(画像の中心点、長さ、角度でも良い)に関する情報と共に、記憶される。本実施例では、アライメントマーカー検出部26、画像データ記憶部28及び画像処理部29は、アライメントマーカー検出手段を構成する。
【0043】
セカンドマーカー抽出部25は、セカンドマーカー記憶部24に記憶されたセカンドマーカー112cの画像データを逐次監視し、セカンドマーカー記憶部24に記憶されている画像データの(テンプレートデータに対する)信頼度が低下したとき、新たにセカンドマーカー検出部23の出力を記憶しなおすよう、セカンドマーカー記憶部24に指示する。
【0044】
距離判定部31は、セカンドマーカー記憶部24の出力とアライメントマーカー記憶部27の出力に基づき、二次元座標におけるセカンドマーカー112cの中心とアライメントマーカー113dの先端、中心、又は後端との間の距離を演算し、これをその内部に格納されている予め設定された距離データ(プラス、マイナスの異なる複数のデータ)と比較し、両マーカー112c及び113dの離間状況を判定する。本実施例では、距離判定部31は、目標位置であるセカンドマーカー112cの中心に対するアライメントマーカー113dの位置関係を検知する検知手段を構成する。
【0045】
ここで、距離判定部31は、以下のように3つのモードで動作するものである。
(第1のモード)セカンドマーカー記憶部24に記憶されている目標位置であるセカンドマーカー112cの中心に対してアライメントマーカー113dの先端113fが到達するまでの期間:当該先端113fとセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。
(第2のモード)当該先端113fがセカンドマーカー112cの中心に到達した後であって目標位置であるセカンドマーカー112cの中心に対してアライメントマーカー113dの進行方向における中心が到達するまでの期間:当該アライメントマーカー113dの中心とセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。
(第3のモード)当該アライメントマーカー113dの中心がセカンドマーカー112cの中心に到達した後の期間:当該アライメントマーカー113dの後端113eとセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。
【0046】
距離判定部31の出力は、アラート信号発生部32に供給される。アラート信号発生部32は、距離判定部31の出力に応じて、術者210にアラートを行うべく、アラート視覚表示信号及びアラート音声信号を画像表示部33に出力する。この場合、本実施例では、画像表示部33は、アラート視覚表示信号に基づく視覚表示機能に加えて、アラート音声信号に基づく音声出力機能を具備する形態を採りうる。そして、画像表示部33は、アラート信号発生部32からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づく視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づく音声出力処理を行う。本実施例では、距離判定部31、アラート信号発生部32及び画像表示部33は、本発明の「アラート手段」の一例に相当する構成である。
また、画像表示部33に出力されたアラート視覚表示信号及びアラート音声信号は、
図1のディスプレイ装置130の表示部14に供給される。この場合、本実施例では、表示部14は、アラート視覚表示信号に基づく視覚表示機能に加えて、アラート音声信号に基づく音声出力機能を具備する形態を採りうる。そして、表示部14は、画像表示部33からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づく視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づく音声出力処理を行う形態を採りうる。
【0047】
次に、
図4に示すカテーテル操作支援装置160-1の動作について、
図5及び
図6を参照して説明する。先ず
図5を参照してセカンドマーカー112cの認識・追跡動作について説明する。セカンドマーカー112cの認識・追跡動作は、
図3(c)に示すように、術者210が、マイクロカテーテル112を送り込んで、そのファーストマーカー112bを、動脈瘤301の開口部近傍でコイル113bを送り出し易い位置(動脈瘤301の開口部上部から僅かに瘤内部に入った位置)に位置させた状態で開始される。
【0048】
先ず、
図5のステップS101において、術者210は探索領域指定部21を通じて、セカンドマーカー112cを含む小さな探索領域を指定する。このとき探索領域指定部21を通じて指定される探索領域は、本発明の「所定領域」を画定する。
次に、ステップS102において、セカンドマーカー検出部23は、ステップS101で指定された探索領域の画像信号に対し、テンプレート格納部30に格納されている初期テンプレートデータ(画像データ)T0を使ってテンプレートマッチング検出を行う。テンプレートマッチング検出では、探索領域内のすべての類似画像について、テンプレート画像T0と同サイズの小領域の画像T毎に適合値が算出される。このときセカンドマーカー記憶部24には、テンプレート画像T0に対するより高い適合値を有する画像Tのデータがその中心の情報と共に記憶されるが、これはテンプレート画像T0に対するより高い適合値を有するものに都度、更新される。
次に、ステップS103において、セカンドマーカー抽出部25は、この時点でセカンドマーカー記憶部24に記憶されている、ステップS102で最大の適合値を持つ小領域の画像Tを、セカンドマーカー112cの画像であると認識する。
次に、ステップS104において、セカンドマーカー抽出部25は、ステップS103で決定した最大適合値を有する画像Tのテンプレート適合値を算出する。このテンプレート適合値に、定数β(0.95<β<1.0)を乗じた値を適合判定閾値とする。これは、適合判定閾値そのものを固定値にせず、実際の画像の初期探知結果を加味した適合基準とするためである。この適合判定閾値は、後述するステップS107において使用される。
セカンドマーカー112cの位置追跡は、画像を読み込む度に行われる。なお、前回のステップS107(後述)における適合判定の結果がLostである場合には、次のステップS105ではなく、その次のステップS106から開始する。
【0049】
次に、ステップS105において、セカンドマーカー検出部23は、マーカー画像Tの中心位置から一定範囲内の正方形領域を探索領域とする。
次に、ステップS106において、セカンドマーカー検出部23は、探索領域内全域に対しセカンドマーカー112cの画像Tに相当する小領域についてテンプレートマッチング検出し、これにより、先のステップ102及び103と同様、セカンドマーカー記憶部24には、より高い適合値を有する画像Tのデータがその中心の情報と共に記憶される。このようにして最大適合値を有する小領域画像Tの中心がセカンドマーカー中心位置候補とされる。
次に、ステップS107において、セカンドマーカー抽出部25は、ステップS105で求めた適合判定基準値とステップS106で求めた最大適合値とを比較する。最大適合値の方が小さい場合には、マーカーを見失った(Lost)とみなし、この回の処理を終了する。この場合、次回の処理は、ステップS106から開始する。それ以外の場合には、続けてステップS108の処理を行う。
ステップS108において、セカンドマーカー記憶部24は、セカンドマーカー112cの画像Tの中心をステップS106で求めた中心位置候補に更新する。
以上のステップS101からS108は、制御部34に組み込まれたプログラムにより制御されるものである。
【0050】
次に、
図6を参照してアライメントマーカー113dの認識・追跡動作につき説明する。アライメントマーカー113dの認識・追跡動作は、
図3(d)に示すように、術者210がデリバリーワイヤー113aを送り込んで、そのアライメントマーカー113dがガイディングカテーテル111の先端マーカー111bを僅かに過ぎた位置に達した状態で開始される。
先ず、
図6のステップS201において、術者210は探索領域指定部21を通じて、初期探索領域を指定する。ここで、アライメントマーカー113dは、ディジタル画像では画素値が低い小さな小長方形となる。このとき探索領域指定部21を通じて指定される初期探索領域は、本発明の「所定領域」を画定する。
よって、ステップS202において、アライメントマーカー検出部26は、画像からエッジを抽出した後、全連結成分のうち、直径が一定値以下のものを次のステップS203の適合判定対象とする。
ステップS203において、アライメントマーカー検出部26は、判定対象の連結成分を囲む長方形(向きは任意)を検出する。この時、アライメントマーカー検出部26は、長方形内の画素値の平均値が一定値以上のものを排除し、すべての連結成分が排除されたらLostとみなす。そして、アライメントマーカー検出部26は、排除されなかった連結成分のうち、前回位置に最も近いものをアライメントマーカー113dの画像と認識して検出する。このときアライメントマーカー記憶部27には、アライメントマーカー検出部26の出力である画像データが、その先端、中心、及び後端の、座標上の位置情報と共に記憶されるが、これはより確度の高いアライメントマーカー画像に都度、更新される。
【0051】
次に、ステップS204においては、ステップS203でアライメントマーカー113dの画像として検出された連結成分を囲む長方形(ステップS203で見つけたもの)の特徴が、アライメントマーカー113dを模擬する長方形とみなされ、その先端、中心、及び後端の位置がアライメントマーカー位置とされる。アライメントマーカー記憶部27にはかかるアライメントマーカー113dを模擬する長方形画像のデータとその先端、中心、及び後端の位置データが残される。
次に、ステップS205において、アライメントマーカー検出部26は、アライメントマーカー113dの動きが速い(大きい)場合があるため、追跡のための次回の探索領域をセカンドマーカー112cの場合よりも大きくとる。また、アライメントマーカー検出部26は、長方形の長い辺方向にも拡げて、次回探索領域とする。
以上の動作により、アライメントマーカー113dの画像の特徴データと先端、中心、及び後端の位置データがアライメントマーカー記憶部27に記憶される。
【0052】
ここで、アライメントマーカー113dは、上述したようにデリバリーワイヤー113aの先端部113cから約4cm離れた部分に設けられたX線不透過部分であり、施術時は、デリバリーワイヤー113aの先端部113cが通った経路に沿ってアライメントマーカー113dが動く。
従って、アライメントマーカー113dの検出に際しては、過去数フレームの累積画像と現画像との差分を取って動きのある部分を抽出し(
図6のステップS211)、オープニング処理により、動きのある主要部分以外を排除した後、膨張処理し、現フレームでのコイル通過経路を抽出し(
図6のステップS212)、このステップS211の画像を累積することでコイル通過経路全体画像Mを抽出し(
図6ステップS213)、先のステップS202でこのMを画像処理マスクとして使用することで、デリバリーワイヤー113aの先端部113cが通った経路付近だけを探索対象とすることができる。
以上のステップS201からS205及びS211からS213は、制御部34に組み込まれたプログラムにより制御されるものである。
【0053】
次に、
図4における距離判定部31、アラート信号発生部32、及び画像表示部33の動作について、
図7、
図8、及び
図9を参照して説明する。
図7において、紙面の左から右に向かう方向が、カテーテル器具110を挿入する際の進行方向である。
【0054】
まず、
図7(a)に示す場面では、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cに対してデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dの先端113fが手前にあり、このときコイル113bは未だ動脈瘤301に挿入されていないか、或いは一部のみが挿入された状態にある。
【0055】
図7(b)に示す場面は、アライメントマーカー113dの先端113fがセカンドマーカー112cの中心に到達した状態ではあるが、このときコイル113bは未だその所定量が動脈瘤301に挿入され終わった状態にはない。
ここで、
図7(b)の状態に達するまでは、距離判定部31は、アライメントマーカー記憶部27の出力を基に、アライメントマーカー113dの先端113fと、セカンドマーカー記憶部24に記憶されているセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。この
図7(b)の状態はステージ「T」と称される。
【0056】
図7(c)に示す場面は、アライメントマーカー113dの中心がセカンドマーカー112cの中心と実質的に一致した状態ではあるが、このときコイル113bは未だその所定量が動脈瘤301に挿入され終わった状態にはない。
ここで、
図7(b)の状態に達した後から
図7(c)の状態に達するまでは、距離判定部31は、アライメントマーカー記憶部27の出力を基に、アライメントマーカー113dの中心と、セカンドマーカー記憶部24に記憶されているセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。この
図7(c)の状態はステージ「Cross」と称される。
【0057】
図7(d)に示す場面は、アライメントマーカー113dの後端113eがセカンドマーカー112cの中心に到達した状態を示している。このときコイル113bはその所定量が動脈瘤301に挿入された状態となる。従って、術者は、この
図7(d)に示す状態でデリバリーワイヤー113aの更なる送り込みを止め、コイル113bをデリバリーワイヤー113aの先端113cにおいて切り離さなければならない。
ここで、
図7(c)の状態に達した後から
図7(d)の状態に達するまでは(更に、デリバリーワイヤー113aが進行方向に進む場合も含む)、距離判定部31は、アライメントマーカー記憶部27の出力を基に、アライメントマーカー113dの後端113eと、セカンドマーカー記憶部24に記憶されているセカンドマーカー112cの中心との位置関係を検知する。この
図7(d)の状態はステージ「逆T」と称される。
なお、この
図7(d)の状態を過ぎると、所謂オーバーシュート(OS)状態となり、デリバリーワイヤー113aの先端部113c、或いは送り込み過ぎたコイル113bで患者220の動脈瘤301等を傷つける恐れがある危険な状態となる。
【0058】
術者によるマイクロカテーテル112及びデリバリーワイヤー113aの操作の間、
図4の距離判定部31は、セカンドマーカー記憶部24の出力とアライメントマーカー記憶部27の出力を基に、セカンドマーカー112cの中心とアライメントマーカー113dの、先端、中心、又は後端との間の距離を判定し、
図7(a)~(d)のそれぞれを弁別できる判定信号を出力する。
【0059】
これについて
図8を参照して説明する。
図8は、アラートレベル1~8及びOSのそれぞれにおけるセカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの先端113f、中心113d1、及び後端113eとの位置関係の一例を示すものである。具体的に、
図8では、アラートレベル表示領域810にアラートレベル1~8及びOSを示し、位置関係表示領域820にアラートレベル1~8及びOSのそれぞれにおけるセカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの先端113f、中心113d1、及び後端113eとの位置関係を示している。
図8では、アラートレベル3が、セカンドマーカー112cの中心112c1に対してアライメントマーカー113dの先端113fが到達したステージ「T」に相当し、アラートレベル5が、セカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの中心113d1とが位置的に実質的に一致したステージ「Cross」に相当し、そしてアラートレベル8が、セカンドマーカー112cの中心112c1に対してアライメントマーカー113dの後端113eが到達したステージ「逆T」に相当する。なお、アラートレベルOSは、アライメントマーカー113dの後端113eがセカンドマーカー112cの中心112c1を進行方向に通り越したオーバーシュート状態に相当する。
【0060】
図8において、距離判定部31は、目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1に対してアライメントマーカー113dの先端113fが到達するまでの期間である第1のモード811においては、アライメントマーカー113dの先端113fとセカンドマーカー112cの中心112c1との位置関係を検知する。また、距離判定部31は、アライメントマーカー113dの先端113fがセカンドマーカー112cの中心112c1に到達した後であって当該中心112c1に対してアライメントマーカー113dの中心113d1が到達するまでの期間である第2のモード812においては、アライメントマーカー113dの中心113d1とセカンドマーカー112cの中心112c1との位置関係を検知する。また、距離判定部31は、アライメントマーカー113dの中心113d1がセカンドマーカー112cの中心112c1に到達した後の期間である第3のモード813においては、アライメントマーカー113dの後端113eとセカンドマーカー112cの中心112c1との位置関係を検知する。
ここで、距離判定部31は、目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1に対して、第1のモード811ではアライメントマーカー113dの先端113fとの位置関係を検知し、第2のモード812ではアライメントマーカー113dの中心113d1との位置関係を検知し、第3のモード813ではアライメントマーカー113dの後端113eとの位置関係を検知しているが、これは、術者が、目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1に対してアライメントマーカー113dを近づけるべくデリバリーワイヤー113aを操作する際に注視する位置関係に則したものである。このため、距離判定部31による上述した検知処理は、カテーテル操作の安全性と正確性を更に向上させ得る技術である。
【0061】
セカンドマーカー記憶部24には、セカンドマーカー112cの中心(
図8の112c1)の、座標上の位置情報が記憶されており、また、アライメントマーカー記憶部27には、アライメントマーカー113dの先端113f、中心(
図8の113d1)、及び後端113eの、座標上の位置情報が記憶されている。そして、上述したように、距離判定部31は、このセカンドマーカー記憶部24及びアライメントマーカー記憶部27に記憶されている情報を基に、両マーカーの位置関係に応じて、上述した3つのモード811~813で、即ち、目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1に対し、ステージ「T」に達するまでの第1のモード811ではアライメントマーカー113dの先端113fの位置乃至距離を、ステージ「T」到達後であってステージ「Cross」に達するまでの第2のモード812では中心113d1の位置乃至距離を、そしてステージ「Cross」到達後の第3のモード813では後端113eの位置乃至距離を判定し、判定位置乃至離間距離に応じた判定信号をアラート信号発生部32に出力する。
【0062】
ここで、
図7と
図8の相関については、例えば、
図7(a)に示す場面が
図8に示すアラートレベル2に、
図7(b)に示す場面が
図8に示すアラートレベル3に、
図7(c)に示す場面が
図8に示すアラートレベル5に、そして
図7(d)に示す場面が
図8に示すアラートレベル8に、それぞれ対応する。
【0063】
距離判定部31は、セカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの先端113f、中心113d1、又は後端113eとの距離に応じて、
図8に示すアラートレベル1~8,OSのそれぞれを弁別・判定し、判定したアラートレベルに係る判定信号をアラート信号発生部32に出力する。
【0064】
アラート信号発生部32は、距離判定部31の出力に基づき、アラートレベル1~8,OSの各アラートレベルについて、それぞれ異なるアラート視覚表示信号及びアラート音声信号からなるアラート信号を画像表示部33に出力する。
【0065】
画像表示部33は、アラート信号発生部32からのアラート信号に基づき、例えば、
図9に示すような表示を行う。
図9において、X線画像410は、画像データ記憶部28の出力によるX線画像を示している。このX線画像410に重畳してアラート表示オブジェクト420が表示される。このアラート表示オブジェクト420には、X線画像410の画像領域411を拡大した拡大画像421と、拡大画像421中のマイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cを丸の指標441として表現し、拡大画像421中のデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dを長方形の指標442として表現する指標設定表示部422と、セカンドマーカー112cとアライメントマーカー113dとの位置関係に基づくアラートレベル情報を示すアラートレベル情報表示部423と、アラートレベル情報表示部423に示されたアラートレベル情報に基づく色やハッチングを付した背景表示部424を有している。
【0066】
また、
図9に示す表示画面において、X線画像410の右側の表示領域450には、
図8に示すアラートレベル1~8及びOSのそれぞれに対応する表示セグメント431~438を有するアラートレベル表示部430が設けられている。そして、表示領域450内のアラートレベル表示部430の左側には、指標設定表示部422に示された、拡大画像421中のマイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cを示す指標441と、拡大画像421中のデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dを示す指標442とが示されており、セカンドマーカー112cとアライメントマーカー113dとの位置関係が一見して分かるようになっている。この際、アラートレベル表示部430は、デリバリーワイヤー113a等の進行方向を下から上に向かう方向にとっており、このため、術者210がデリバリーワイヤー113aを進行方向に操作すると、アライメントマーカー113dを示す指標442は下から上に向かう方向に移動することになる。ここで、本実施例では、表示セグメント431~438に対しアライメントマーカー113dを示す指標442の上端がどの位置にあるかで、マイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cとデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dとの位置関係を認識できるように構成されている。また本実施例では、指標442、即ち、アライメントマーカー113dが指標441、即ち、セカンドマーカー112cに近づくにつれてより細かなアラートを発するべく、表示セグメント431~437のマーカー進行方向における長さLは、L431=L432=L441×1/2、L433=L434=L441×1/4、L435=L436=L437=L441×1/6としてある。L438は適宜である。またここでは画像表示部33は、アライメントマーカー113dを示す指標442の上端と表示セグメント431~438のそれぞれとの位置関係がアラートレベル1~8及びOSのそれぞれに対応させるように構成されている。なお、画像表示部33は、セカンドマーカー112cを示す指標441を常に表示セグメント432と表示セグメント433の境界位置に位置させるための信号を出力する。
【0067】
この
図9に示す状態は、デリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dを示す指標442の上端が表示セグメント436(
図8のアラートレベル6)の位置にあるため、アラート表示オブジェクト420のアラートレベル情報表示部423には、アラートレベル6を示す「6」が表示され、また、背景表示部424には、表示セグメント436に割り振られたパターンと同様のパターンが表示される。なお、
図9に示すアラートレベル表示部430では、図示の都合上、異なるパターンを付することにより、表示セグメント431~438を識別表示しているが、アラートレベルに応じて異なる色を付する態様も勿論可能である。さらに、本実施例では、この
図9に示すアラート表示に加えて、画像表示部33において、それぞれの表示セグメント431(
図8のアラートレベル1)~表示セグメント438(
図8のアラートレベルOS)ごとに、異なるアラート音出力を行う形態を採りうる。なお、画像表示部33の出力を
図1に示すディスプレイ装置130の表示部14に供給し、表示部14により、
図9に示すものと同様のアラート表示と、上述したアラート音出力を行うようにしても良い。
【0068】
以上に説明した装置各部の動作は、制御部34によって制御されるものであり、特にマーカー検出の各ステップについてはこれらを制御するようプログラムが組まれている。制御部34は、
図1の制御装置140と連携し、カテーテル操作支援装置160-1を制御している。
【0069】
このように、本実施例のカテーテル操作支援装置160-1によれば、動脈瘤301の内部にコイル113bを充填するに当たり、デリバリーワイヤー113aの先端部113cの動脈瘤301に対する位置決め及びコイル113bの留置に際し、術者210の視覚に訴えるアラート表示と聴覚に訴えるアラート音出力がなされるので、術者210による施術の安全性ならびに正確性を各段に向上させることが可能になる。
【0070】
また本実施例のカテーテル操作支援装置160-1では、
図8のレベル1~8について異なる複数のアラートを行うようにしている。具体的に、
図8のレベル1~8の場合に、
図9のアラートレベル表示部430に示す表示セグメント431~438による異なる複数のアラートを行うようにしている。
より詳細に、本実施例において、距離判定部31、アラート信号発生部32及び画像表示部33を含み構成されるアラート手段は、
図8及び
図9に示すように、表示セグメント431及び432を含む第1のモード811、表示セグメント433及び434を含む第2のモード812、及び、表示セグメント435~438を含む第3のモード813における3つのモードにおいて、互いに異なるアラートを行うようにしている。かかる構成によれば、術者210に対して、現在行っている施術が如何なるモードであるかを報知することができる。
さらに、アラート手段は、第1のモード811の場合に、アライメントマーカー113dの先端113fと目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1との間の距離に応じて、表示セグメント431及び432のように異なる複数のアラートを行うようにしている。また、アラート手段は、第2のモード812の場合に、アライメントマーカー113dの中心113d1と目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1との間の距離に応じて、表示セグメント433及び434のように異なる複数のアラートを行うようにしている。また、アラート手段は、第3のモード813の場合に、アライメントマーカー113dの後端113eと目標位置であるセカンドマーカー112cの中心112c1との間の距離に応じて、表示セグメント435~438のように異なる複数のアラートを行うようにしている。かかる構成によれば、術者210に対して、3つのモード811~813における各モードごとに、当該各モードにおけるより詳細な状況を報知することができる。
【0071】
即ち、本実施例においては、コイル113bの挿入量をデリバリーワイヤー113aのアライメントマーカー113dとマイクロカテーテル112のセカンドマーカー112cとの相対位置関係で把握するものである。これはマイクロカテーテル112の設定位置が適切であれば、コイル113bの設置位置や切断位置も狙い通りになるとの想定である。従って、如何に
図8のアラートレベル8に設置するかがキーポイントになる。コイル挿入のアプローチとして、術者は、
図8において、アラートレベル1付近から留意しながらアラートレベル3まで持って行くが、そこからアラートレベル5まで行く行程はアラートレベル3までよりも慎重になり、アラートレベル5を超えてアラートレベル8まで行く行程は、更に慎重にすべきである。このような考えから上述のように、
図9の表示セグメント431~437の長さLについては、L431とL432はL441の1/2、L433とL434はL441の1/4、L435とL436とL437はL441の1/6としたものである。
【0072】
なお、本実施例のカテーテル操作支援装置160-1では、セカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの後端113eとが位置的に一致したときを以って
図8のレベル8と判定しているが、点と点との一致というのは不安定であり、一定の許容幅を持たせた方が現実的なことがある。その一例として、
図9において、表示セグメント437と表示セグメント438の境界部に一定幅の許容領域437aを設け、アライメントマーカー113dを示す指標442の上端がこの許容領域437a内にあるうちは、セカンドマーカー112cの中心112c1とアライメントマーカー113dの後端113eとが位置的に、実質的に一致しているとするようにしても良い。かかる構成によれば、術者210に対して、コイル留置施術の安定性を向上させることができる。
表示セグメント431~438の更なる変形例として、上述のモード1~3に合わせて、表示セグメント431及び432を合体して第1のモード811用の表示セグメントとし、表示セグメント433及び434を合体して第2のモード812用の表示セグメントとし、そして第3のモード813用の表示セグメントとしては、コイル留意完了間近を意味するものとして表示セグメント435~437を合体したもの、コイル留置完了を報知するための許容領域437a、及びオーバーシュートを警告するための表示セグメント438から構成するようにしても良い。
【0073】
本実施例のカテーテル操作支援装置160-1では、マイクロカテーテル112の、先端部112bから3cmのところにあるセカンドマーカー112cと、デリバリーワイヤー113の、同じく、先端部113cから4cmのところにあるアライメントマーカー113dを監視対象としているが、これは、例えば、マイクロカテーテル112の先端部112bやデリバリーワイヤー113の先端部113cを監視対象にした場合、動脈瘤301にコイル113bが送り込まれるにつれてコイル113bの一部がファーストマーカー112bや先端部113cに重なり、ファーストマーカー112bや先端部113cの追跡が困難になる場合があるためである。
【0074】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。
図1に示すカテーテル操作支援装置160の実施例2の構成は、例えば、
図10に示すような構成である。
【0075】
図10に示すカテーテル操作支援装置160-2では、例えば、動脈瘤301の内部にコイル113bを充填するに際し(
図3(c)から
図3(e)の場面)、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112bに着目し、コイル充填操作中のこのファーストマーカー112bの位置変化に基づきアラート表示等のアラートを行うようにしたものである。
【0076】
即ち、動脈瘤301の内部形状やコイル113bの挿入方向によっては、コイル113bを押し出す際の反力でデリバリーワイヤー113a、マイクロカテーテル112、或いはガイディングカテーテル111が押し戻され、コイル113bを正常に瘤内部に留置できないといった事態が発生することがある。従って、本実施例に係るカテーテル操作支援装置160-2は、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112bが予定した到達位置から一定量以上変位したときにアラート表示等のアラートを行うようにしたものである。
【0077】
図10において、
図4におけるのと同等若しくは類似の機能を持つ構成には、
図4に示す符号と同じ符号を付している。テンプレート格納部30は、ここではマイクロカテーテル112のファーストマーカー112bを特定するためにX線画像におけるファーストマーカー112bの形状や特徴に対応したテンプレートデータを格納している。なお、実施例2においても、探索領域指定部21及び画像受信部22は、本発明の「取得手段」の一例に相当する構成であり、また、これらの構成は、上述した実施例1と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0078】
マーカー検出部231は、テンプレート格納部30からのテンプレートデータを基に、探索領域指定部21を通じて術者210によって指定された探索領域全域について、画像受信部22の出力に対しテンプレートマッチング検出を行うことで、ファーストマーカー112bの検出を行う。マーカー検出部231は、ファーストマーカー112bに相当する画像の中心の、二次元座標上での位置情報を出力する。なお、実施例2においても、探索領域指定部21を通じて指定される探索領域は、本発明の「所定領域」を画定するものである。
【0079】
マーカー記憶部241は、マーカー検出部231の出力であるファーストマーカー112bに相当する画像の中心の、二次元座標上での位置情報を記憶する。本実施例では、マーカー記憶部241は、本発明の「記憶手段」の一例に相当する構成である。
【0080】
距離判定部311は、マーカー記憶部241の出力に対し、その後のマーカー検出部231の出力を比較することで、位置記憶後のファーストマーカー112bに相当する画像の中心の変位の有無と変位した場合の距離を判定する。この際、距離判定部311は、予め格納された距離の許容範囲と比較して、これを超えた場合にアラートのための判定信号を出力する。
アラート信号発生部321は、距離判定部311の出力を基に、ファーストマーカー112bが、患者220の体内で予定した特定の位置に達した後であって、記憶した当該特定の到達位置からの位置ずれが予め定められた許容範囲を超えたとして、アラート視覚表示信号及びアラート音声信号を画像表示部331に出力する。
画像表示部331は、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示機能に加えて、アラート音声信号に基づくアラート音出力機能を具備する形態を採りうる。そして、画像表示部331は、アラート信号発生部321からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づくアラート音出力処理を行う。
本実施例では、距離判定部311、アラート信号発生部321及び画像表示部331は、本発明の「アラート手段」の一例に相当する構成である。
【0081】
また、画像表示部331に出力されたアラート視覚表示信号及びアラート音声信号は、
図1のディスプレイ装置130の表示部14に供給される。この場合、本実施例では、表示部14は、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示機能に加えて、アラート音声信号に基づくアラート音出力機能を具備する形態を採りうる。そして、表示部14は、画像表示部331からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づくアラート音出力処理を行う形態を採りうる。
また、制御部341は、
図1の制御装置140と連携し、カテーテル操作支援装置160-2を制御する。
【0082】
次に、本実施例に係るカテーテル操作支援装置160-2の動作について、
図3及び
図11を参照しながら説明する。
【0083】
術者210は、ディスプレイ装置130の表示部14を観察しながら、
図3(a)のガイディングカテーテル111の頚部動脈への挿入から始まる一連の作業を進行させる。
【0084】
そして、
図3(c)に示す、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112bが動脈瘤301の入り口に達した場面において、ユーザーの操作指示があると、
図11のステップS301において、探索領域指定部21は、ユーザーの操作指示に基づいて、探索領域を設定する。
次いで、この状態で、ステップS302において操作部242が操作されると、続いて、ステップS303において、マーカー記憶部241は、このときのマーカー検出部231の出力であるファーストマーカー112bに相当する画像の中心の位置情報を記憶する。
【0085】
この後、術者210は、デリバリーワイヤー113aを操作してその先端に取り付けられたコイル113bの動脈瘤301内への送り込みを開始する(
図3(d))。このとき、ステップS304において、距離判定部311は、マーカー検出部231からの時々刻々(例えばフレームレート)の出力、即ちファーストマーカー112bの位置情報と、マーカー記憶部241に記憶されているファーストマーカー112bの位置情報に基づき、両者の差、即ち、位置ずれ量を検出する。
次いで、ステップS305において、距離判定部311は、ステップS304で検出した位置ずれ量が予め定められた許容範囲に係る許容値δを超えたか否かを判断する。この判断の結果、ステップS304で検出した位置ずれ量が許容値δを超えていない場合には(S305/NO)、ステップS304に戻り、ステップS304における位置ずれ量の検出を継続して行う。
【0086】
一方、ステップS305の判断の結果、ステップS304で検出した位置ずれ量が許容値δを超えた場合には(S305/YES)、ステップS306に進む。例えば、コイル113bの送り込み量の増大、引っ掛かり等が原因でデリバリーワイヤー113aに反力が加わるなどしてマイクロカテーテル112が押し戻され、その結果、ステップS304で検出した位置ずれ量が許容値δを超える場合が考えられる。
ステップS306に進むと、アラート信号発生部321は、術者210にアラートを行うべく、アラート視覚表示信号及びアラート音声信号を画像表示部331に出力する。その後、画像表示部331は、アラート信号発生部321からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づくアラート音出力処理を行う。
【0087】
また、画像表示部331に出力されたアラート視覚表示信号及びアラート音声信号は、
図1のディスプレイ装置130の表示部14にも供給される。そして、表示部14は、画像表示部331からアラート視覚表示信号及びアラート音声信号が出力されると、アラート視覚表示信号に基づくアラート視覚表示処理、及び、アラート音声信号に基づくアラート音出力処理を行う形態を採りうる。例えば、アラートマークの出現、明滅、画面全体の明滅、着色等の手段により、視覚及び聴覚によるアラートがなされる。
【0088】
アラートが発せられた場合は、術者210は、必要に応じてデリバリーワイヤー113aの押し込みを止めて少し引き戻す等してコイル113bの状態を変え、その後、再度、マイクロカテーテル112を押し込んで、そのファーストマーカー112bがステップS303の記憶位置に戻るようにする。
ファーストマーカー112bに相当する画像の中心位置がステップS303の記憶位置に戻されれば、位置ずれ量は許容値δ以下となり、アラートは消えるので、コイル113bの押し込みを再開する。
【0089】
その後、術者210が全てのコイル113bを動脈瘤301に送り込み終えるまでに上述のようなアラートが発せられなければコイル113bの留置は安全に終了したということであるから、術者210は、コイル113bの留置終了後、コイル113bをデリバリーワイヤー113aから切り離した後、カテーテル操作支援装置160-2をOFFにし、デリバリーワイヤー113a、マイクロカテーテル112、ガイドワイヤー114、及びガイディングカテーテル111を全て患者の血管から抜去し、施術を終える。
【0090】
以上のように、本実施例にあっては、動脈瘤301へのコイル113bの挿入に際し、何らかの理由でマイクロカテーテル112の位置が変わり、コイル113bを正しく挿入できなくなる危険性が生ずると、アラートが発せられることになる。それにより、術者210は、修正を与えつつコイル113bの挿入を行うことで、より安全なコイル栓塞を施術することが可能になる。
なお、
図11のステップS301からS306は、制御部341に組み込まれたプログラムにより制御されるものである。
【0091】
本実施例にあっては、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112bの動きを監視するようにしたが、本発明においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、
図3(e)に示すように、動脈瘤301にコイル113bが送り込まれるにつれてコイル113bの一部がファーストマーカー112bに重なり、ファーストマーカー112bの追跡が困難になる場合がある。そのような危惧がある場合は、ファーストマーカー112bに代えてセカンドマーカー112cを移動監視の対象にすると良い。
【0092】
また、本実施例の他の態様として、マイクロカテーテル112のファーストマーカー112bとセカンドマーカー112cの双方を移動監視の対象にするようにしても良い。この場合、
図10に示すマーカー検出部231、マーカー記憶部241、及び距離判定部311の組が、各マーカー112b、112cに対応してそれぞれ設けられる。
【0093】
また、本実施例の更に他の態様として、移動監視対象であるマイクロカテーテル112のファーストマーカー112bやセカンドマーカー112cを、X線不透過部材ではなく、X線122aに感応する発光部材を用いて形成するようにしても良い。例えば、応力発光体として、緑色に発光するユーロピウムをドープし構造制御したアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4:Eu)が最も発光輝度が高いことが知られており、工業的にも製造されている。ほかの色としては、遷移金属や希土類をドープした硫化亜鉛(ZnS:Mn)やチタン酸バリウム・カルシウム((Ba,Ca)TiO3:Pr)、アルミン酸カルシウム・イットリウム(CaYAl3O7:Ce)もそれぞれ黄橙色、赤色、青色に発光する。これ等着色発光体を用いることにより、モノクロームX線画像内で移動監視対象の信号レベルを大きくすることが期待できるため、検出制度の向上に繋がる。
【0094】
また、本実施例の更に他の態様として、移動監視対象をマイクロカテーテル112のマーカーではなく、
図2(a)のガイディングカテーテル111や
図2(d)のガイドワイヤー114の一部としても良い。具体的には、それらの先端部111a及び114a、若しくは他の適当な位置にX線不透過若しくは上述の発光部材を塗布等して検出用のマーカーを形成し、このガイディングカテーテル111のマーカー又はガイドワイヤー114のマーカーを監視することでマイクロカテーテル112及びコイル機構113の変位を検出し、アラートを発するようにしても良い。
また、例えば、本実施例の更に他の態様として、アラート信号発生部321及び画像表示部331は、カテーテル器具110に包含される各カテーテル(
図2に示す111,112,113,114)に付された各マーカーにおける位置ずれ量が、それぞれに対して設定された許容値δを超えた場合のうち、2つ以上の複数の場合について、上述したアラートを行う態様を採りうる。かかる構成によれば、例えば、術者210が注視している領域以外の領域において、カテーテル操作の安全性と正確性を損なう事態が生じた場合でも、術者210にその旨をアラートすることができるため、術者210によるカテーテル操作の安全性と正確性の更なる向上を実現することが可能となる。
【0095】
以上に説明した本発明の実施形態では、患者220の患部として、脳血管300に適用した形態を説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。本発明においては、カテーテル治療を行える患者220の部位であれば脳血管300以外の他の部位を適用可能である。例えば、脳血管300以外の他の部位としては、心臓血管や、リンパ管、門脈、尿管等が挙げられる。また、治療目的ばかりでなく診断の目的でカテーテル器具110を用いる場合にも、本発明は適用可能である。
【0096】
また、本発明は、上述した実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。そして、このプログラムは、本発明に含まれるものである。
【0097】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0098】
100:X線医療システム、110:カテーテル器具、111:ガイディングカテーテル、112:マイクロカテーテル、112b:ファーストマーカー、112c:セカンドマーカー、113:コイル機構、113a:デリバリーワイヤー、113b:コイル、113d:アライメントマーカー、120:X線撮影装置、130:ディスプレイ装置、160:カテーテル操作支援装置、14:表示部、23,26,231:マーカー検出部、24,27,241:マーカー記憶部、31,311:距離判定部、32,321:アラート信号発生部、33,331:画像表示部、140:制御装置、150:入力装置、210:術者、220:患者