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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 3/14 20060101AFI20221121BHJP
   G07D 3/00 20060101ALI20221121BHJP
   G07D 5/08 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G07D3/14
G07D3/00 C
G07D5/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019046928
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020149415
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】藤井 皓太
(72)【発明者】
【氏名】岡橋 成人
(72)【発明者】
【氏名】浜田 伸男
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182273(JP,A)
【文献】特開2018-005656(JP,A)
【文献】特開2001-043424(JP,A)
【文献】特開2009-087296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-5/10
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨に上側において接触し正転して硬貨を入口側通路部から出口側通路部に向け搬送するフィードベルトと、
正転時に前記フィードベルトを正転させる搬送モータと、
通過時に硬貨を検知する検知部と、
正転する前記搬送モータを、前記検知部の検知に基づいて、通常正転状態 から前記通常正転状態より低速となる第1スロー正転状態へ切り替えると共に、前記第1スロー正転状態から前記第1スロー正転状態より低速となる第2スロー正転状態へ切り替えて回転させる制御部と、
を有し、
前記制御部は、
予め設定された金種の硬貨を予め設定されたバッチ枚数だけ出金させるバッチ処理を行う際に、
バッチ対象となる最後の硬貨の前記検知部の検知に基づいて、前記搬送モータを前記通常正転状態から前記第1スロー正転状態へ切り替えて回転させ、
更に、バッチ処理の最後の硬貨の次に、バッチ処理対象ではなく停止対象となる硬貨が搬送された場合には、
前記停止対象となる硬貨の前記検知部の検知に基づいて、前記搬送モータを前記第1スロー正転状態から前記第2スロー正転状態へ切り替えて回転させる
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受け入れ不能硬貨を検出したときに、これを硬貨回収口の下流側に設けられた第1ストッパ手段および第2ストッパ手段の間に保持して、受け入れ不能硬貨に後続する硬貨をすべて硬貨プール部の回転円盤上に戻した後、ガイド板の間隔を処理すべき最大径の硬貨の径よりも大きくなるように設定し、受け入れ不能硬貨を、第1ストッパ手段および第2ストッパ手段による保持解除後、搬送上流側すなわち硬貨プール部の回転円盤側へ逆搬送して、ガイド板間の硬貨回収口内に落下させて回収する受け入れ不能硬貨除去装置を有する硬貨処理機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02-193287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に開示される装置では、硬貨が通過する搬送ガイドの左右の側面部から、それぞれソレノイドの駆動により、突出部を搬送路上内部へ進入させることにより、硬貨をストップさせる仕組みとなっている。この方式の他、搬送路の上側または下側からピン形状の突出部をソレノイドの駆動により搬送路内へ突出させ、搬送硬貨に当接させて、停止させる方式も知られている。
【0005】
硬貨搬送路上で、受け入れ不能硬貨などのターゲット硬貨が所定位置より下流側へ搬送されることを防ぐため、ストッパ手段を備えている従来の硬貨処理装置では、ソレノイド(プランジャソレノイド、ロータリーソレノイド)などの駆動源(電気部品)と突出部(メカ部材)とで構成されるストッパ機構を具備する必要がある。このため、コスト高になるとともに、ストッパ機構を組み込むための占有スペースが必要で装置内レイアウトに制約が生じてしまう。また、高速で搬送されている硬貨に突出部を当接させることになるため、硬貨と突出部との衝突の際に、衝突音が発生し、また、これらが衝突したり擦れたりして粉塵を発生させてしまう。
【0006】
本発明は、コスト低減、装置内レイアウトの自由度向上、低騒音化および粉塵抑制を図ることができる硬貨処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、硬貨に上側において接触し正転して硬貨を入口側通路部から出口側通路部に向け搬送するフィードベルトと、正転時に前記フィードベルトを正転させる搬送モータと、通過時に硬貨を検知する検知部と、正転する前記搬送モータを、前記検知部の検知に基づいて、通常正転状態から前記通常正転状態より低速となる第1スロー正転状態へ切り替えると共に、前記第1スロー正転状態から前記第1スロー正転状態より低速となる第2スロー正転状態へ切り替えて回転させる制御部と、を有し、前記制御部は、予め設定された金種の硬貨を予め設定されたバッチ枚数だけ出金させるバッチ処理を行う際に、バッチ対象となる最後の硬貨の前記検知部の検知に基づいて、前記搬送モータを前記通常正転状態から前記第1スロー正転状態へ切り替えて回転させ、更に、バッチ処理の最後の硬貨の次に、バッチ処理対象ではなく停止対象となる硬貨が搬送された場合には、前記停止対象となる硬貨の前記検知部の検知に基づいて、前記搬送モータを前記第1スロー正転状態から前記第2スロー正転状態へ切り替えて回転させることを特徴とする。
【0008】
上記第1の態様によれば、制御部が、正転する搬送モータを検知部の検知に基づいて第1回転状態から第1回転状態より低速となる第2回転状態へ切り替えて回転させることにより、停止対象となる硬貨の搬送速度を低速に切り替えてから停止させることになり、停止対象となる硬貨を正確に停止させることができる。よって、ストッパ機構が不要となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コスト低減、装置内レイアウトの自由度向上、低騒音化および粉塵抑制を図ることができる硬貨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置を示す斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置のフィード部カバーを開いた状態を示す部分斜視図である。
図3】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置の要部を示す一部を断面とした平面図である。
図5】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置が実行するバッチ処理の一部を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置が実行するバッチ処理の一部を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置が実行するバッチ処理の一部を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置が実行するバッチ処理の一部を示すフローチャートである。
図9】本発明に係る実施形態の硬貨処理装置が実行するバッチ処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施形態の硬貨処理装置を図面を参照して以下に説明する。
【0022】
本実施形態の硬貨処理装置11は、指定された一の計数対象金種の硬貨を計数するものである。具体的に、硬貨処理装置11は、計数対象金種の硬貨として選択設定可能な処理対象硬貨が、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨の6金種となっており、これらの中から選択された計数対象金種の硬貨を計数する。
【0023】
硬貨処理装置11は、図1に示すように、その上部に、上方に開口し投入された硬貨をプールする硬貨プール部としてのホッパ12と、ホッパ12の上部開口を開閉するホッパカバー13とを有している。図2に示すように、ホッパ12の下部は回転円板14で構成されており、回転円板14は、図3に示す制御部15によって制御される繰出モータ16で駆動されて鉛直軸回りに回転する。ホッパ12には、ホッパ12内に残留する硬貨を検知する残留検知センサ17が設けられており、残留検知センサ17は検知結果を制御部15に出力する。
【0024】
図1に示すように、硬貨処理装置11は、ホッパ12よりも下側に、ホッパ12よりも前方(操作者側)に突出する本体部18を有している。本体部18は、その前部に、下方に突出するシュート19と、電源スイッチ20とを有している。シュート19は、計数後の計数対象金種の硬貨を外部に放出するシュート本体21と、シュート本体21に図示略の収納袋を係止する係止リング22とを有している。
【0025】
本体部18には、側部に、計数対象金種以外の異金種硬貨を硬貨処理装置11の外へ放出する放出口25と、放出口25から放出された硬貨を受け入れて収容する上方開口の排除ボックス26とが設けられている。
【0026】
本体部18は、ホッパ12よりも前側部分の上面に、操作者による押圧操作を受け付けると共に操作者に向けて表示を行う操作表示部30と、操作者により回動操作されるコース幅調整ノブ31と、図1に示すように閉状態とされると本体部18の内部を覆う一方、図2に示すように開状態とされると本体部18の内部を一部開放するフィード部カバー32と、を有している。処理対象硬貨の中から計数対象金種の硬貨を選択する際に、コース幅調整ノブ31が対応する回動位置とされる。
【0027】
図2に示すように、本体部18の内部には、フィード部カバー32で開放される位置に、回転円板14から繰り出される硬貨を一枚ずつに分離する分別環34と、回転円板14から分別環34で一枚ずつに分離されて繰り出された硬貨を搬送する搬送駆動部35および図4に示す搬送通路60と、搬送駆動部35および搬送通路60で搬送中の硬貨Cを、通過時に検知し、その識別および計数を行う磁気センサからなる識別計数部37(検知部)とが設けられている。識別計数部37は、検出結果である磁気データを図3に示す制御部15に出力する。
【0028】
図4に示すように、搬送駆動部35は、回転円板14の外周側の上部に配置される取込プーリ52と、回転円板14から離れた位置に取込プーリ52と軸方向の位置および高さを合わせて平行に配置される駆動プーリ53と、これら取込プーリ52および駆動プーリ53に掛けられる無端状のフィードベルト54と、これらを駆動する図3に示す搬送モータ57とを有している。搬送モータ57は、その回転状態が制御部15によって制御される。
【0029】
図4に示すように、取込プーリ52および駆動プーリ53は、フィードベルト54を両端で支持している。なお、取込プーリ52および駆動プーリ53に加えて、フィードベルト54を中間位置で支持する中間プーリを1つまたは複数設けても良い。搬送駆動部35は、その駆動プーリ53が、図3に示す搬送モータ57で駆動されて回転する。図4に示す取込プーリ52は、駆動プーリ53によってフィードベルト54を介して駆動されることになり、駆動プーリ53に対し従動する従動プーリである。搬送モータ57は、ステッピングモータであり、図3に示す制御部15によって制御されて回転することにより、駆動プーリ53、フィードベルト54および取込プーリ52を回転させる。
【0030】
図2に示す本体部18の内部には、図4に示すように、フィードベルト54の下側に、硬貨Cを搬送する搬送通路60がフィードベルト54に沿って延在するように設けられている。搬送通路60は、取込プーリ52の位置の下側に配置される入口側通路部61と、フィードベルト54を挟んで両側に配置されて、入口側通路部61の上面62から鉛直に立ち上がる一対の壁部63および壁部64とを有している。入口側通路部61は、その上面62が水平に配置されており、回転円板14から繰り出された硬貨Cの下面を、この上面62で下側から支持する。
【0031】
搬送駆動部35は、そのフィードベルト54が、回転円板14から図2に示す分別環34で一枚ずつに分離されて、図4に示す入口側通路部61の上面62上に繰り出された硬貨Cに上側において接触して、この硬貨Cを一対の壁部63,64の間に向けて搬送する。
【0032】
一方の壁部63は、最も回転円板14側が、鉛直軸回りに回転可能に支持された入口ローラ71で構成されている。壁部63は、回転円板14から離れるようにフィードベルト54に沿って延びる壁面72を壁部64側に有する位置固定の固定壁73を備えている。固定壁73は、入口側通路部61よりも回転円板14とは反対側まで延びている。固定壁73は、その壁面72が入口側通路部61の上面62から鉛直に立ち上がっている。
【0033】
他方の壁部64は、最も回転円板14側が、回転円板14の外周面に沿って湾曲する円弧状のガイド壁81で構成されている。壁部64は、ガイド壁81の取込プーリ52側の端部近傍からフィードベルト54に沿って延びる壁面82を壁部63側に有する可動壁83を備えている。可動壁83は、入口側通路部61よりも回転円板14とは反対側まで延びている。可動壁83は、壁面82が入口側通路部61の上面62から鉛直に立ち上がっている。
【0034】
可動壁83の壁面82と、固定壁73の壁面72とは、平行で高さ位置を合わせて相互に対向しており、可動壁83は、その壁面82を固定壁73の壁面72と平行させた状態のまま、固定壁73との延在方向の位置関係は維持しながら、固定壁73に対し近接および離間するように水平移動する。
【0035】
ガイド壁81は、一端が可動壁83に、鉛直に沿う連結ピン85で連結されており、連結ピン85を中心に回動可能となっている。また、ガイド壁81には、他端にその長さ方向に延びる長穴86が形成されており、この長穴86内には、鉛直に沿う位置固定のピン87が配置されている。可動壁83が移動する際に、ガイド壁81は、長穴86をピン87に対し移動させながら、連結ピン85を中心に可動壁83に対し回動して、可動壁83の移動に追従する。
【0036】
一対の壁部63,64の回転円板14側の入口91は、入口ローラ71とガイド壁81の連結ピン85側の端部とで形成されている。この入口91の幅は、可動壁83の壁面82と固定壁73の壁面72との間隔と等しく設定されている。湾曲形状のガイド壁81は、ホッパ12の回転円板14から一対の壁部63,64間に向かう硬貨Cを案内する。ガイド壁81の入口91側の端は、連結ピン85を介して可動壁83と連結されており、可動壁83と連動して可動するように構成されている。
【0037】
搬送通路60は、固定壁73の下側に、壁面72よりも可動壁83側に突出する位置固定の支持部101を有している。支持部101は、その上面102が入口側通路部61の上面62と同一平面に配置されて、入口側通路部61から回転円板14とは反対側に延出している。
【0038】
搬送通路60は、可動壁83の下側に、壁面82よりも固定壁73側に突出する支持部103を有している。支持部103は、その上面104が入口側通路部61の上面62と同一平面に配置されて、入口側通路部61から回転円板14とは反対側に延出している。支持部103は、可動壁83に固定されており、可動壁83と一体に移動する。
【0039】
搬送通路60は、一対の支持部101,103よりも入口側通路部61とは反対側に、上面111が上面62,102,104と同一平面に配置される出口側通路部112を有している。ここで、入口側通路部61と一対の支持部101,103と出口側通路部112とで囲まれた部分がリジェクト孔115となっている。よって、一対の支持部101,103は、相互間にリジェクト孔115を形成している。このリジェクト孔115が図1に示す放出口25に繋がっており、リジェクト孔115に落下した硬貨Cが、図示略のリジェクトシュートを介して放出口25から放出され排除ボックス26に収容される。一対の壁部63,64は、入口側通路部61と出口側通路部112との間で硬貨Cの外周面を案内する。
【0040】
一対の支持部101,103は、入口側通路部61と出口側通路部112との間で硬貨Cの下面の外周側を支持する中間通路部121を構成している。入口側通路部61の上面62と、中間通路部121の支持部101の上面102および支持部103の上面104と、出口側通路部112の上面111とが、搬送通路60の上面である搬送面125を構成している。
【0041】
出口側通路部112は、出口側通路部112上を移動する硬貨Cを検知し、その金種を識別しつつ計数する磁気センサからなる識別計数部37を有している。搬送通路60には、出口側通路部112の中間通路部121とは反対側に、出口側通路部112の識別計数部37で識別計数された硬貨Cを搬送通路60から落下させる落下孔141(落下部)が設けられている。言い換えれば、出口側通路部112の入口側通路部61とは反対側に、出口側通路部112から硬貨Cを落下させる落下孔141が設けられている。落下孔141から落下した硬貨Cは、図示略の内部シュートを介して図1に示すシュート19のシュート本体21から硬貨処理装置11の外部に放出される。
【0042】
図4に示すように、搬送駆動部35は、そのフィードベルト54が、回転円板14から図2に示す分別環34で一枚ずつ分離されて図4に示す入口側通路部61上に繰り出された硬貨Cに上側において接触して、この硬貨Cを一対の壁部63,64の入口91側からリジェクト孔115に向け搬送し、リジェクト孔115で落下しなければ、さらに出口側通路部112に向け搬送して、最終的に落下孔141に落下させる。
【0043】
搬送通路60には、回転円板14から硬貨Cが、一枚ずつ、入口側通路部61の上面62上に、一対の壁部63,64の固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との間に向けて繰り出されることになる。搬送駆動部35は、そのフィードベルト54が、入口側通路部61の上面62上に繰り出された硬貨Cに上側から接触して、搬送通路60に沿って移動させる。その際に、硬貨Cは、その外周面が一対の壁部63,64で案内されながら、その下面が、入口側通路部61の上面62上から一対の支持部101,103の上面102,104上、さらには出口側通路部112の上面111上を移動する。その際に、一対の支持部101,103は硬貨Cの下面の外周側を上面102,104で支持する。
【0044】
このようにして、搬送駆動部35および搬送通路60は、硬貨Cを、入口側通路部61側から落下孔141に向けて搬送することになる。言い換えれば、硬貨Cは、入口側通路部61、一対の支持部101,103および出口側通路部112で支持されて、搬送駆動部35の駆動により移動する。その際に、一対の壁部63,64は、硬貨Cの外周面を案内し、一対の支持部101,103は、硬貨Cの下面の外周側を支持する。搬送駆動部35と搬送通路60とが、硬貨Cを上下から挟持して搬送する硬貨搬送部128を構成しており、搬送駆動部35は硬貨搬送部128の駆動部分かつ上側部分を構成し、搬送通路60は硬貨搬送部128の下側部分を構成している。
【0045】
出口側通路部112は、識別計数部37と落下孔141との間に配置される所定長さの出口側通路端部151を有している。出口側通路端部151の上面152は、入口側通路部61の上面62および一対の支持部101,103の上面102,104と同一平面に配置されており、出口側通路部112の上面111の一部を構成している。
【0046】
出口側通路端部151は、処理対象硬貨の中で最小径となる硬貨、すなわち1円硬貨が、フィードベルト54で上側から押さえられた状態で、その上面152上に、1枚は残留可であり、且つ、2枚は残留不可となっている。言い換えれば、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種について、フィードベルト54で上側から押さえられた状態の硬貨を1枚のみ載置可能な大きさとなっている。さらに言い換えれば、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨について、フィードベルト54で上側から押さえられた状態で、2枚は直列に並べることはできず、直列の2枚のうちの落下孔141側の1枚は落下孔141に落とす大きさとなっている。識別計数部37の中心から出口側通路端部151の落下孔141側の端部までの長さは、例えば14mmに設定されている。
【0047】
可動壁83および支持部103は、図3に示す間隔変更機構106で移動位置が調整される。図1図2に示すコース幅調整ノブ31には、その回動位置を検知する図3に示す回動位置センサ107が設けられており、間隔変更機構106は、回動位置センサ107で検知されるコース幅調整ノブ31の回動位置に応じて、一対の壁部63,64間の距離および一対の支持部101,103間の距離を変更する。
【0048】
固定壁73および支持部101が固定側コースガイド壁131を構成しており、可動壁83および支持部103が可動側コースガイド壁132を構成していて、これら固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132が、指定された計数対象金種よりも小径の硬貨Cをリジェクト孔115から排除する小径貨排除方式の選別コース133を構成している。
【0049】
また、指定された計数対象金種よりも大径の硬貨Cについては、図4に二点鎖線で示すように、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とがこれに当接して、搬送通路60の入口側通路部61よりも回転円板14とは反対側への移動を規制する。入口側通路部61には、壁部63の入口ローラ71の近傍に、一対の壁部63,64の入口91側で移動が規制されて滞留する硬貨Cを検知して、その信号を制御部15に出力する滞留貨検知センサ126が設けられている。
【0050】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての500円硬貨の位置とされると、制御部15は、間隔変更機構106によって、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の対向する先端面間の距離とを、500円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し10円硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の500円硬貨計数距離とする。このとき、壁面72,82間の距離は、500円硬貨の直径よりも若干大きくなる。すると、壁面72,82間の距離と等しい入口91の幅も計数対象金種の硬貨である500円硬貨の直径よりも若干大きくなる。
【0051】
これにより、計数対象金種の硬貨である500円硬貨を一対の支持部101,103で支持する一方、これより小径の10円硬貨、100円硬貨、5円硬貨、50円硬貨、1円硬貨等をリジェクト孔115に落下させる。すなわち、このとき、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、500円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、500円硬貨の計数に対応した所定の500円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、500円硬貨よりも大径の硬貨については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とがこれに当接して回転円板14から離れる方向への移動、言い換えれば、固定側コースガイド壁131と可動側コースガイド壁132と間への入り込みを規制する。
【0052】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての10円硬貨の位置とされると、制御部15は、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の先端面間の距離とを、10円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し100円硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の10円硬貨計数距離とする。すなわち、このとき、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、10円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、10円硬貨の計数に対応した所定の10円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、10円硬貨よりも大径の500円硬貨等については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とがこれに当接して回転円板14から離れる方向への移動を規制する。
【0053】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての100円硬貨の位置とされると、制御部15は、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の先端面間の距離とを、100円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し5円硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の100円硬貨計数距離とする。すなわち、このとき、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、100円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、100円硬貨の計数に対応した所定の100円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、100円硬貨よりも大径の500円硬貨、10円硬貨等については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とが当接して回転円板14から離れる方向への移動を規制する。
【0054】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての5円硬貨の位置とされると、制御部15は、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の先端面間の距離とを、5円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し50円硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の5円硬貨計数距離とする。すなわち、このとき、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、5円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、5円硬貨の計数に対応した所定の5円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、5円硬貨よりも大径の500円硬貨、10円硬貨、100円硬貨等については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とが当接して回転円板14から離れる方向への移動を規制する。
【0055】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての50円硬貨の位置とされると、制御部15は、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の先端面間の距離とを、50円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し1円硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の50円硬貨計数距離とする。すなわち、このとき、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、50円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、50円硬貨の計数に対応した所定の50円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、50円硬貨よりも大径の500円硬貨、10円硬貨、100円硬貨、5円硬貨等については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とが当接して回転円板14から離れる方向への移動を規制する。
【0056】
コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種の硬貨としての1円硬貨の位置とされると、制御部15は、固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との距離と、一対の支持部101,103の先端面間の距離とを、1円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく一対の支持部101,103で支持し1円硬貨よりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる所定の1円硬貨計数距離とする。すなわち、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132の間隔は、1円硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる、1円硬貨の計数に対応した所定の1円硬貨計数間隔となる。なお、この状態で、1円硬貨よりも大径の500円硬貨、10円硬貨、100円硬貨、5円硬貨、50円硬貨等については、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とが当接して回転円板14から離れる方向への移動を規制する。
【0057】
図3に示すように、繰出モータ16、操作表示部30、識別計数部37、搬送モータ57、残留検知センサ17、間隔変更機構106、回動位置センサ107および滞留貨検知センサ126は、制御部15に通信可能に接続されている。
【0058】
ここで、図4に示すように、本実施形態の硬貨処理装置11においては、出口側通路端部151を含む出口側通路部112には、硬貨Cの落下孔141に向けた搬送時の搬送方向前方から硬貨Cに当接することにより、その落下孔141へ落下を規制して出口側通路部112上に留まらせるストッパ機構は設けられていない。また、出口側通路部112には、硬貨Cの回転円板14に向けた搬送時の搬送方向前方から硬貨Cに当接することにより、その回転円板14側への移動を規制して出口側通路部112上に留まらせるストッパ機構も設けられていない。そして、本実施形態の硬貨処理装置11においては、硬貨搬送部128によって搬送する硬貨Cを停止させる方法として、ステッピングモータである搬送モータ57の速度制御により行う方法を採用している。
【0059】
上記したフィードベルト54を含む搬送駆動部35は、回転円板14から分別環34で一枚ずつ分離されて入口側通路部61上に繰り出された硬貨Cに上側において接触して、この硬貨Cを一対の壁部63,64の入口91側からリジェクト孔115に向け搬送通路60上で搬送し、リジェクト孔115で落下しなければ、さらに出口側通路部112に向け搬送し、最終的に落下孔141まで搬送する。
【0060】
フィードベルト54およびこれを駆動する搬送モータ57において、このように硬貨Cを、搬送通路60上で入口側通路部61から出口側通路部112、言い換えれば回転円板14側から落下孔141側に向けて搬送する回転方向を正転とし、これとは逆方向であって硬貨Cを、搬送通路60上で出口側通路部112から入口側通路部61に向けて搬送する回転方向を逆転とする。よって、フィードベルト54は、硬貨Cに上側において接触し正転して硬貨Cを入口側通路部61から出口側通路部112に向けて搬送することになり、搬送モータ57は、正転時にフィードベルト54を正転させる。また、フィードベルト54は、硬貨Cに上側において接触し逆転して硬貨Cを出口側通路部112から入口側通路部61に向けて搬送することになり、搬送モータ57は、逆転時にフィードベルト54を逆転させる。フィードベルト54の正転時の搬送方向上流側を正転時上流側とし、フィードベルト54の正転時の搬送方向下流側を正転時下流側とする。よって、入口側通路部61は出口側通路部112よりも正転時上流側に配置され、逆に、出口側通路部112は入口側通路部61よりも正転時下流側に配置されている。
【0061】
回転円板14およびこれを駆動する繰出モータ16においては、硬貨Cを回転円板14から入口側通路部61に向けて繰り出す回転方向を正転とし、これとは逆方向であって入口側通路部61から戻される硬貨Cを回転円板14内に受け入れる回転方向を逆転とする。
【0062】
次に、硬貨処理装置11の処理について図5図9に示すフローチャートに沿って説明する。ここでは、ホッパ12に投入された硬貨Cの中から、予め設定された金種の硬貨Cを、予め設定されたバッチ枚数だけシュート19から放出して、例えばシュート19に装着された図示略の収納袋に収納するバッチ処理について説明する。
【0063】
操作表示部30に計数対象金種(例えば500円硬貨)が選択され、操作表示部30にバッチ枚数(例えば100枚)が入力されて、コース幅調整ノブ31の回動位置が計数対象金種(例えば500円硬貨)の位置とされると、制御部15は、間隔変更機構106を制御して、固定側コースガイド壁131および可動側コースガイド壁132を、計数対象金種の硬貨をリジェクト孔115に落下させることなく、これよりも小径の硬貨をリジェクト孔115に落下させる間隔(例えば500円硬貨計数間隔)とする。それとともに、制御部15は、ホッパ12への計数対象金種の硬貨Cの投入を促す表示を操作表示部30に表示させる。
【0064】
ホッパ12への硬貨Cの投入を残留検知センサ17が検知すると、制御部15は、操作表示部30にスタート操作を促す表示を表示させ、操作表示部30にスタート操作が入力されると、繰出モータ16および搬送モータ57に、通常速度での正転を指示する指示信号を出力するとともに、後続硬貨到着待ち時間の計時を開始する(ステップS101)。これにより、回転円板14およびフィードベルト54がそれぞれ通常速度で正転する通常正転状態となる。
【0065】
すると、ホッパ12内の硬貨が、通常速度で正転する回転円板14の遠心力によって、分別環34で一枚ずつに分離されながら搬送通路60の入口側通路部61の上面62上に、一対の壁部63,64の固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82との間に向けて繰り出されることになる。
【0066】
そして、通常速度で正転するフィードベルト54が、入口側通路部61の上面62上に繰り出された硬貨Cに上側から接触して、搬送通路60に沿って移動させる。その際に、計数対象金種の硬貨Cより大径の硬貨Cは、入口91を構成する入口ローラ71とガイド壁81とに当接して正転時下流側への移動が規制される。また、計数対象金種の硬貨Cおよびこれとほぼ同径の偽硬貨Cは、その外周面が、一対の壁部63,64の固定壁73の壁面72と可動壁83の壁面82とで案内されながら、その下面が、入口側通路部61の上面62上から一対の支持部101,103の上面102,104上、さらには出口側通路部112の上面111上を正転時下流側に移動する。すると、計数対象金種の硬貨Cおよびこれとほぼ同径の偽硬貨Cは、通常速度で正転するフィードベルト54の下辺部と一体に通常速度で正転時下流側に、搬送通路60上を移動する。また、計数対象金種の硬貨Cよりも小径の硬貨Cは、リジェクト孔115から落下して、図示略のリジェクトシュートを介して放出口25から放出され排除ボックス26に収容される。
【0067】
このようにして、フィードベルト54および搬送通路60は、計数対象金種の硬貨Cおよびこれとほぼ同径の偽硬貨Cを、入口側通路部61側から出口側通路部112側に向けて搬送することになる。言い換えれば、計数対象金種の硬貨Cおよびこれとほぼ同径の偽硬貨Cは、搬送通路60の入口側通路部61、一対の支持部101,103および出口側通路部112で支持されて、フィードベルト54の駆動により移動する。その際に、一対の壁部63,64は、硬貨Cの外周面を案内し、一対の支持部101,103は、硬貨Cの下面の外周側を支持する。
【0068】
計数対象金種の硬貨Cおよびこれとほぼ同径の偽硬貨Cは、上記したように通常速度で正転する通常正転状態にあるフィードベルト54で搬送されて通常速度で出口側通路部112の上面111上を正転時下流側に移動することになるが、この最中に、出口側通路部112に設けられた磁気センサである識別計数部37を通過することになる。ここで、識別計数部37は、磁気データのピーク値を検知したか否かを判定しており(ステップS102)、磁気データのピーク値を検知すると(ステップS102:YES)、制御部15は、識別計数部37が硬貨Cを検知したと判定する。この判定時点で、この硬貨Cは、識別計数部37に対して搬送方向に重なり合う所定の位置に位置する。
【0069】
ステップS102において、磁気データのピーク値を検知すると、制御部15は、このピーク値をマスタデータと比較して、この硬貨Cが、計数対象金種の硬貨であるか否かを識別する(ステップS103)。
【0070】
[硬貨が計数対象金種の硬貨である場合]
ステップS102で磁気データのピーク値が検知された硬貨Cを、計数対象金種の硬貨であると識別した場合(ステップS103:YES)、制御部15は、この硬貨Cの計数として、今回のバッチ処理の計数カウンタを1つ加算するとともに、後続硬貨到着待ち時間を0から計時し直す(ステップS104)。そして、計数カウンタの枚数と、設定されたバッチ枚数(例えば100枚)との差がない状態であるか否か、すなわち残りバッチ枚数が0の状態であるか否かを判定するとともに、操作表示部30にストップ操作が入力されたか否かを判定する(ステップS105)。残りバッチ枚数が0の状態でなく、かつ、
操作表示部30にストップ操作が入力されていなければ(ステップS105:NO)、ステップS102に戻る。ここで、ステップS103で計数対象金種であると識別された硬貨Cは、通常速度で正転するフィードベルト54で搬送されて出口側通路端部151を移動し、落下孔141から落下して、図示略の内部シュートを介してシュート19から放出される。
【0071】
ステップS102~S105を繰り返すことで、計数対象金種の硬貨Cを順次落下孔141に落下させることになる。
【0072】
なお、ステップS102の判定で、識別計数部37が磁気データのピーク値を検知しなければ、言い換えれば識別計数部37が硬貨Cを検知しなければ(ステップS102:NO)、ステップS101で計時を開始し、またはステップS104で計時をやり直した後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過したか否かを判定する(ステップS401)。後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過していなければ(ステップS401:NO)、ステップS102に戻る。後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過すると(ステップS401:YES)、制御部15は、繰出モータ16および搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS402)。これにより、回転円板14およびフィードベルト54が停止する。そして、バッチ処理を終了する。つまり、バッチ処理中に、計数する硬貨Cがなくなった場合には、落下孔141に落下させた硬貨Cがバッチ枚数に達しなくても、バッチ処理を終了して回転円板14およびフィードベルト54を停止させる。
【0073】
上記のようにステップS102~S105を繰り返すことで、計数対象金種の硬貨Cを順次落下孔141に落下させることになるが、ステップS102でピーク値が検知され、ステップS103で計数対象金種であると識別されて、ステップS104で計数カウンタを1つ加算した硬貨Cによって、計数カウンタがバッチ枚数となり、残りバッチ枚数が0の状態になると(ステップS105:YES)、この硬貨Cは、バッチ処理の最後の硬貨C(例えば100枚目の硬貨)となる。
【0074】
残りバッチ枚数が0の状態になると(ステップS105:YES)、制御部15は、搬送モータ57に、通常速度よりも低速の第1スロー速度での正転を指示する指示信号を出力するとともに、繰出モータ16に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS106)。なお、ステップS105において、操作表示部30にストップ操作が入力されたと判定した場合も、制御部15は、残りバッチ枚数が0の状態になった場合と同様の制御を行う。
【0075】
ステップS106において、制御部15が繰出モータ16に停止を指示する指示信号を出力することにより、回転円板14が停止するとともに、搬送モータ57は、通常速度で正転する通常正転状態から、第1スロー速度で正転する第1スロー正転状態に切り替わって、フィードベルト54がそれまでの通常速度よりも低速の第1スロー速度で正転する。すると、ステップS105で残りバッチ枚数を0の状態にしたバッチ枚数の最後の硬貨Cは、通常速度よりも低速の第1スロー速度で出口側通路端部151を正転時下流側に移動して落下孔141に落下する。
【0076】
具体的に、通常速度は、操作者による計数速度選択により、高速モードと低速モードの2種類が用意されており、高速モードの設計値は、1318mm/s、低速モードの設計値は、1040mm/sとなっている。これらの通常速度に対して、第1スロー速度は、より低速となる安全マージンを考慮した速度とされ、設計値は、452mm/sとなっている。すなわち、質量の大きな大径貨(具体的には、500円硬貨)では、通常速度で搬送している状態にあると、識別計数部37の検出をトリガーにして停止動作を行っても、慣性により硬貨Cの停止位置が伸び、結果として出口側通路端部151上に留めることができず、下流側にある落下孔141に誤落下する可能性が生じてしまう。これを解消するため、搬送モータ57の減速制御を開始させる必要があり、その第1段階として、上記のように、フィードベルト54を通常速度よりも低速の第1スロー速度で正転させる制御を行う。
【0077】
識別計数部37は、バッチ処理の最後の硬貨Cの検知の後も磁気データのピーク値を検知したか否かを判定している(ステップS107)。
【0078】
{バッチ処理の最後の硬貨の正転時上流側に後続硬貨がある場合}
ステップS107の判定で、磁気データのピーク値を検知すると(ステップS107:YES)、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨C(例えば100枚目の硬貨)に後続する、停止対象となる硬貨C(例えば101枚目の硬貨)を、識別計数部37が検知したと判定する。この判定時点で、この停止対象となる硬貨Cは、識別計数部37に対して搬送方向に重なり合う所定の位置に位置する。
【0079】
停止対象となる硬貨Cの磁気データのピーク値を検知すると(ステップS107:YES)、制御部15は、搬送モータ57に、第1スロー速度よりも低速の第2スロー速度での正転を指示する指示信号を出力する(ステップS108)。
【0080】
これにより、搬送モータ57は、第1スロー速度で正転する第1スロー正転状態から、これよりも低速の第2スロー速度で正転する第2スロー正転状態に切り替わって、フィードベルト54が第1スロー速度よりも低速の第2スロー速度で正転する。このとき、回転円板14は停止状態を維持している。フィードベルト54が第2スロー速度で回転すると、バッチ処理の最後の硬貨Cに隣り合って後続する、停止対象となる硬貨Cは、第1スロー速度よりも低速の第2スロー速度で出口側通路端部151を正転時下流側に移動する。このように、制御部15は、正転する搬送モータ57を識別計数部37の検知に基づいて第1スロー正転状態から第1スロー正転状態より低速となる第2スロー正転状態へ切り替えて回転させる。
【0081】
ここで、搬送モータ57の第2スロー速度は、その後、停止を指示する指示信号を受けると直ちに硬貨Cを停止可能な速度であり、設計値として、例えば339mm/sが設定されている。
【0082】
搬送モータ57に第2スロー速度での正転の指示信号を出力した後、制御部15は、識別計数部37で、バッチ処理の最後の硬貨Cに隣り合って後続する、停止対象となる硬貨Cを検知しているか否かを、その磁気データを検知しているか否かで判定している(ステップS109)。この判定で、識別計数部37が所定値以上のレベルで磁気データを検知していて停止対象となる硬貨Cを検知している検知状態にあると(ステップS109:YES)、制御部15は、識別計数部37で検知している磁気データが所定値未満のレベルとなって停止対象となる硬貨Cを検知していない非検知状態となるまで、ステップS109を繰り返して待機する。
【0083】
識別計数部37で、停止対象となる硬貨Cの磁気データを所定値以上のレベルで検知しなくなって、この硬貨Cを検知していない非検知状態になると(ステップS109:NO)、この停止対象となる硬貨Cは、識別計数部37を通過して抜け切る。言い換えれば、停止対象となる硬貨Cが検知状態から非検知状態になった時点で、この停止対象となる硬貨Cは、識別計数部37に対して搬送方向に重なり合わず、落下孔141に落下もしない、出口側通路端部151上の所定の位置に位置する。
【0084】
上記のように停止対象となる硬貨Cを識別計数部37で検知しなくなると(ステップS109:NO)、制御部15は、搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS110)。これにより、それまで第2スロー速度で正転していたフィードベルト54が即座に停止する。このときも、回転円板14は停止状態を維持している。フィードベルト54が停止すると、ステップS107で検知された、停止対象となる硬貨Cは、出口側通路端部151上で停止する。フィードベルト54が停止すると、バッチ処理の最後の硬貨Cに隣り合って後続する、停止対象となる1枚の硬貨Cのみが、出口側通路端部151上に位置することになる。
【0085】
言い換えれば、搬送モータ57の第2スロー速度での正転時に、識別計数部37で検知される硬貨Cの磁気データのレベルが所定値以上の検知状態から、この磁気データのレベルがこの所定値以上ではなくなる非検知状態になった時点で、制御部15が搬送モータ57に停止の指示信号を出力する。すると、フィードベルト54とともに停止する硬貨Cは、1枚が落下孔141に落下せずに出口側通路端部151に残留し、この硬貨Cよりも落下孔141側に先行して搬送されていた硬貨Cは、正常であればすべて落下孔141に落下する。出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨Cについて、このような作動を満足させる寸法関係に設定されている。なお、このようにフィードベルト54の停止時に出口側通路端部151に残留する硬貨Cよりも正転時上流側に隣り合って後続する硬貨Cがあっても、この後続する硬貨Cの磁気データのピーク値を識別計数部37が検知することはない。
【0086】
さらに言い換えれば、搬送モータ57の第2スロー速度は、停止対象となる硬貨Cが識別計数部37で検知された後、識別計数部37の下流側となる出口側通路部112上に停止可能な速度である。
【0087】
以上のステップS101~S106の流れにおいて、制御部15は、停止対象となる1枚の硬貨Cよりも1枚、正転時下流側にあるバッチ処理の最後の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を、第1スロー速度で回転する第1スロー正転状態(第1回転状態)よりも高速の通常正転状態(第3回転状態)から、第1スロー正転状態に切り替える。
【0088】
また、以上のステップS107~S110の流れにおいて、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を第1スロー速度で回転する第1スロー正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えた後、この停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知状態から非検知状態への変化に基づいて、搬送モータ57を停止させる停止制御を行う。
【0089】
この停止制御により、出口側通路部112における識別計数部37よりも正転時下流側となる出口側通路端部151上に、停止対象となる1枚の硬貨Cのみを停止させることになる。ここで、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨Cが、1枚は残留可であり、且つ、2枚は残留不可となっているため、この停止制御では、停止対象となる1枚の硬貨Cの正転時下流側に隣り合うバッチ枚数の最後の硬貨Cおよびその前の全硬貨Cを落下孔141に落下させることになる。
【0090】
ステップS106で通常正転状態から切り替えられた第1スロー正転状態は、その後、ステップS108で第2スロー正転状態に切り替えられるまでの間は、そのまま継続される。また、ステップS108で第1スロー正転状態から切り替えられた第2スロー正転状態は、その後、ステップS110で停止状態に切り替えられるまでの間は、そのまま継続される。
【0091】
ステップS110において、搬送モータ57に停止を指示する指示信号を出力した後、制御部15は、停止枚数カウンタに1を書き込む(ステップS111)。ここで、停止枚数カウンタは、これから行う逆転搬送時に、識別計数部37を通過するはずの硬貨Cの枚数、すなわち1枚がセットされることになる。
【0092】
次に、制御部15は、繰出モータ16および搬送モータ57に逆転を指示する指示信号を出力するとともに、戻し時間の計時を開始する(ステップS112)。すると、回転円板14およびフィードベルト54がともに逆転する逆転状態となる。
【0093】
その後、制御部15は、停止枚数カウンタが1であるか否かを判定し(ステップS113)、停止枚数カウンタが1である場合(ステップS113:YES)、すなわち、バッチ処理で、バッチ枚数の最後の硬貨Cに後続する硬貨Cがある場合、識別計数部37で、磁気データのピーク値を検知したか否かを判定する(ステップS114)。ステップS114の判定で、磁気データのピーク値を検知しなければ(ステップS114:NO)、ステップS114を繰り返して待機する。ここで、ステップS114によりピーク値が検知される硬貨Cは、正常であれば、上記のように、出口側通路端部151上に残留していた、停止対象となった1枚の硬貨Cのみとなる。
【0094】
ステップS114の判定で、磁気データのピーク値を検知すると(ステップS114:YES)、制御部15は、再び、識別計数部37で、磁気データのピーク値を検知したか否かを判定する(ステップS115)。識別計数部37は、通常、上記のように停止対象となった1枚の硬貨Cの磁気データのピーク値のみを検知することになるため、ステップS115では、磁気データのピーク値を検知しないことになる。すなわち、ステップS114,S115は、1枚の硬貨Cのみが識別計数部37を通過したことを確認する処理である。
【0095】
なお、ステップS114の判断を磁気データのピーク値ではなく、識別計数部37が所定値以上のレベルで磁気データを検知していて硬貨Cを検知している検知状態から、識別計数部37で検知している磁気データが所定値未満のレベルとなって硬貨Cを検知していない非検知状態となると、停止対象となった1枚の硬貨Cの、逆転搬送時の識別計数部37の通過を判断しても良い。また、ステップS115の判断も同様である。
【0096】
ステップS115で磁気データのピーク値を検知しなければ(ステップS115:NO)、ステップS112で計時を開始した戻し時間が、搬送通路60上に残っていた硬貨Cをすべて回転円板14に戻すのに必要な所定の逆転駆動時間経過したか否か判定する(ステップS116)。逆転駆動時間は、例えば、設計値が200msに設定されている。
【0097】
戻し時間が逆転駆動時間経過していなければ(ステップS116:NO)、ステップS115に戻り、戻し時間が逆転駆動時間経過するまで、ステップS115,S116を繰り返す。戻し時間が逆転駆動時間経過すると(ステップS116:YES)、制御部15は、繰出モータ16および搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力して(ステップS118)、バッチ処理を終了する。
【0098】
これにより、回転円板14が停止するとともにフィードベルト54が停止する。このように、戻し時間が逆転駆動時間経過するまで、回転円板14およびフィードベルト54を逆転状態とすることによって、計数対象金種の硬貨Cをバッチ枚数だけシュート19に放出するステップS101~S110の処理にともなって、バッチ枚数よりも多く回転円板14から搬送通路60に繰り出された硬貨Cを、全て回転円板14に戻すことができる。上記のように、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となった1枚の硬貨Cは、最後に回転円板14に戻る。
【0099】
上記のように、停止制御後の逆転搬送によって、最終的には、搬送通路60上にある硬貨Cは全てホッパ12側へ戻されることになるが、この間に、識別計数部37が検出する硬貨枚数は、101枚目の硬貨Cのみの1枚となる。すなわち、これは、識別計数部37を抜けて出口側通路端部151(例えば全長14mm)上で一時停止した後、搬送モータ57の逆転によりスイッチバックして再度識別計数部37を通過する硬貨Cの枚数は、出口側通路端部151上に留まることが可能な1枚のみであることによる。当該硬貨(101枚目)のこの動きに伴い、制御部15は、100枚目までの硬貨Cは、全て出口側通路端部151より正転時下流側に位置する落下孔141に落下し図示略の内部シュートを通ってシュート19へ搬送されたものと判断する。
【0100】
なお、ステップS115の判定で、本来検知するはずのない磁気データのピーク値を検知すると(ステップS115:YES)、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨Cが出口側通路部112に戻ってきたと判定して、繰出モータ16および搬送モータ57を停止させて、操作表示部30に、バッチ処理の最後の硬貨Cが戻ってきた旨のエラー表示を行う逆転時エラー処理を行って(ステップS117)、バッチ処理を終了する。
【0101】
すなわち、逆転搬送時に、万が一、識別計数部37が2枚またはそれ以上の枚数の硬貨を検出した場合は、不測の事態であり、落下孔141へ落下したはずのバッチ枚数の最後の硬貨Cが搬送通路60上に戻ってきたという状況となる。原因としては、例えば、バッチ処理の最後の硬貨である100枚目の硬貨Cと、停止対象となった101枚目の硬貨Cとがテープなどで連鎖していた状態が想定される。このときは、制御部15は、操作表示部30にエラー発生を表示させるとともにブザーなどでも報知を行い、操作者へ、確認および当該硬貨の除去を行うようにエラー処理を促すことになる。
【0102】
以上のステップS111~S118の流れにおいて、制御部15は、上記した停止制御を行った後、搬送モータ57を逆転させて、正転時下流側とは逆の正転時上流側へ向けての硬貨Cの搬送に切り替え、その後、停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知状態を確認する。停止対象となる1枚の硬貨Cのみが、識別計数部37により検知されると、停止対象となる1枚の硬貨Cより先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての硬貨Cは、出口側通路部112上には残留していなかったことを判断することができ、エラーにはしない。
【0103】
{バッチ処理の最後の硬貨の正転時上流側に後続硬貨がない場合}
ステップS107の判定で、磁気データのピーク値を検知しないと(ステップS107:NO)、バッチ処理の最後の硬貨CのステップS102における検知に基づいてステップS104で計時し直した後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過したか否かを判定する(ステップS201)。ここで、例えば、この所定の待ち時間には、設計値として500msが設定されている。後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過していなければ、ステップS107に戻り、ステップS107,S201を繰り返す。後続硬貨到着待ち時間が、所定の待ち時間経過すると(ステップS201:YES、)、制御部15は、搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS202)。これにより、フィードベルト54が停止する。このときも、回転円板14は停止状態を維持している。
【0104】
なお、搬送モータ57の制御に関しては繰出モータ16の制御と同様に、停止動作に伴う時間が短いこと(例えば、0ms)が望ましいが、搬送モータ57にステッピングモータが使われている性質上、脱調させないための減速制御を行う必要があり、即停止はできないため、停止すべきと判断してから停止を指示する指示信号を出力するまでに所定時間を設けるのが良い。
【0105】
ステップS202において、搬送モータ57に停止を指示する指示信号を出力した後、制御部15は、停止枚数カウンタに0を書き込む(ステップS203)。そして、ステップS113に進む。ステップS113では、停止枚数カウンタが0であって、1ではないため(ステップS113:NO)、バッチ処理を終了する。
【0106】
[硬貨が計数対象金種の硬貨でない異金種硬貨の場合]
【0107】
ステップS102で磁気データのピーク値が検知された硬貨Cを、計数対象金種の硬貨Cでない異金種硬貨であると識別した場合(ステップS103:NO)、言い換えれば、落下部141に落下させる落下対象以外の硬貨Cであると識別した場合、制御部15は、図8図9に示す異金種停止制御を行う。
【0108】
すなわち、制御部15は、搬送モータ57に、それまでの通常速度よりも低速の第2スロー速度での正転を指示する指示信号を出力するとともに、繰出モータ16に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS301)。つまり、制御部15は、搬送モータ57の速度を、通常速度から、これよりも低速の第1スロー速度よりもさらに低速の第2スロー速度に一気に低下させる。
【0109】
ステップS301により、回転円板14が停止するとともに、搬送モータ57が、通常速度で正転する通常正転状態から、第2スロー速度で正転する第2スロー正転状態に切り替わって、フィードベルト54が通常速度よりも低速の第2スロー速度で回転する。フィードベルト54が第2スロー速度で回転すると、ステップS103で計数対象金種の硬貨Cでないと識別された、停止対象となる異金種硬貨Cは、通常速度よりも低速の第2スロー速度で出口側通路端部151を正転時下流側に移動する。このように、制御部15は、正転する搬送モータ57を識別計数部37の検知に基づいて通常正転状態から通常正転状態より低速となる第2スロー正転状態へ切り替えて回転させる。
【0110】
搬送モータ57に第2スロー速度での正転の指示信号を出力した後、制御部15は、識別計数部37で、停止対象となる異金種硬貨Cの磁気データを検知しているか否かを判定しており(ステップS302)、この判定で、識別計数部37が磁気データを所定値以上のレベルで検知していて異金種硬貨Cを検知している検知状態にあると(ステップS302:YES)、制御部15は、識別計数部37の磁気データのレベルが所定値未満となって異金種硬貨Cを検知していない非検知状態になるまで、ステップS302を繰り返して待機する。
【0111】
識別計数部37で、停止対象となる異金種硬貨Cの磁気データを所定値以上のレベルで検知しなくなる非検知状態になると(ステップS302:NO)、異金種硬貨Cは、識別計数部37を通過する。言い換えれば、停止対象となる異金種硬貨Cが識別計数部37で検知されない非検知状態になると、この停止対象となる異金種硬貨Cは、識別計数部37に対して搬送方向に重なり合わず、落下孔141に落下もしない、出口側通路端部151上の所定の位置に位置する。
【0112】
識別計数部37で、停止対象となる異金種硬貨Cを検知しない非検知状態になると(ステップS302:NO)、制御部15は、搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS303)。これにより、フィードベルト54が即座に停止する。このときも、回転円板14は停止状態を維持している。フィードベルト54が停止すると、ステップS103で検知された停止対象となる異金種硬貨Cは、出口側通路端部151上で停止する。フィードベルト54が停止すると、上記のように停止対象となる1枚の異金種硬貨Cのみが、出口側通路端部151上に位置することになるが、この異金種硬貨Cよりも正転時上流側に硬貨Cがあっても、その硬貨Cの磁気データのピーク値を識別計数部37が検知してしまっていることはない。
【0113】
以上のステップS103,S301~S303の流れにおいて、制御部15は、識別計数部37の検知に基づき、計数対象金種の硬貨以外の異金種硬貨C、すなわち落下部141に落下させる落下対象以外の硬貨Cを検知すると、この異金種硬貨を停止対象となる1枚の硬貨Cとし、この停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を通常速度で回転する通常正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えた後、この停止対象となる1枚の異金種硬貨Cの識別計数部37による検知状態から非検知状態への変化に基づいて、搬送モータ57を停止させる停止制御を行う。
【0114】
この停止制御により、出口側通路部112における識別計数部37よりも正転時下流側となる出口側通路端部151上に、停止対象となる1枚の異金種硬貨を停止させることになる。ここで、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨が、1枚は残留可であり、且つ、2枚は残留不可となっているため、正規硬貨と同等の外径の異金種硬貨も同様であり、この停止制御では、停止対象となる1枚の異金種硬貨の正転時下流側にあるバッチ処理中の計数対象金種の硬貨Cは落下孔141に落下することになる。
【0115】
ステップS301で通常正転状態から切り替えられた第2スロー正転状態は、その後、ステップS303で停止状態に切り替えられるまでの間は、そのまま継続される。
【0116】
ステップS303において、搬送モータ57に停止を指示する指示信号を出力した後、制御部15は、停止枚数カウンタに1を書き込む(ステップS304)。ここで、停止枚数カウンタは、これから行う逆転搬送時に、識別計数部37を通過するはずの硬貨Cの枚数、すなわち1枚がセットされることになる。
【0117】
次に、制御部15は、繰出モータ16および搬送モータ57に逆転を指示する指示信号を出力するとともに、戻し時間の計時を開始する(ステップS305)。すると、回転円板14およびフィードベルト54がともに逆転する逆転状態となる。
【0118】
その後、制御部15は、停止枚数カウンタが1であるか否かを判定し(ステップS306)、停止枚数カウンタが1である場合(ステップS306:YES)、すなわち、計数対象金種の硬貨ではなく停止対象となった1枚の異金種硬貨Cが出口側通路端部151上にある場合、識別計数部37で、磁気データのピーク値を検知したか否かを判定する(ステップS307)。ここで、ステップS307によりピーク値が検知される硬貨Cは、上記のように、出口側通路端部151上に残留していた、停止対象となった1枚の異金種硬貨Cである。
【0119】
ステップS307の判定で、磁気データのピーク値を検知すると(ステップS307:YES)、制御部15は、再び、識別計数部37で、磁気データのピーク値を検知したか否かを判定する(ステップS308)。識別計数部37は、通常、上記のように停止対象となった1枚の異金種硬貨Cの磁気データのピーク値のみを検知することになるため、ステップS308では、磁気データのピーク値を検知しないことになる。すなわち、ステップS307,S308は、1枚の異金種硬貨Cのみが識別計数部37を通過したことを確認する処理である。
【0120】
なお、ステップS307の判断を磁気データのピーク値ではなく、識別計数部37が所定値以上のレベルで磁気データを検知していて硬貨Cを検知している検知状態から、識別計数部37で検知している磁気データが所定値未満のレベルとなって硬貨Cを検知していない非検知状態となると、停止対象となった1枚の異金種硬貨Cの、逆転搬送時の識別計数部37の通過を判断しても良い。また、ステップS308の判断も同様である。
【0121】
ステップS308で磁気データのピーク値を検知しなければ、ステップS305で計時を開始した戻し時間が、搬送通路60上に残っていた硬貨Cをすべて回転円板14に戻すのに必要な所定の逆転駆動時間経過したか否かを判定する(ステップS309)。ここでも、逆転駆動時間は、例えば、設計値が200msに設定されている。
【0122】
戻し時間が逆転駆動時間経過していなければ(ステップS309:NO)、ステップS308に戻り、戻し時間が逆転駆動時間経過するまで、ステップS308,S309を繰り返す。戻し時間が逆転駆動時間経過すると(ステップS309:YES)、制御部15は、繰出モータ16および搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力する(ステップS310)。
【0123】
これにより、回転円板14が停止するとともにフィードベルト54が停止する。戻し時間が逆転駆動時間経過するまで、回転円板14およびフィードベルト54を逆転状態とすることで、停止対象となった1枚の異金種硬貨Cが、壁面72から支持部103の先端までの長さ、あるいは壁面82から支持部101先端までの長さよりも短い外径であれば、これをリジェクト孔115に落下させることができる。また、リジェクト孔115に落下させることができない場合、停止対象となった1枚の異金種硬貨Cおよびこれよりも正転時上流側にあった搬送通路60上の硬貨Cを、全て回転円板14に戻すことができる。上記のように停止対象となった1枚の異金種硬貨Cは、最後に回転円板14に戻る。
【0124】
ステップS310で、繰出モータ16および搬送モータ57に、停止を指示する指示信号を出力すると、制御部15は、リトライカウンタを1加算して(ステップS311)、リトライカウンタが所定のリトライ設定値に達したか否かを判定し(ステップS312)、リトライカウンタが所定のリトライ設定値に達していなければ(ステップS312:NO)、ステップS101に戻る。リトライカウンタが所定のリトライ設定値に達していれば、異金種硬貨Cが混入している旨と、確認および当該硬貨Cの除去を行うように促す旨とのエラー表示(ステップS313)を行ってバッチ処理を終了する。ここで、リトライカウンタの所定のリトライ設定値は、操作表示部30への入力操作によって任意の値を自由に設定するように構成されている。
【0125】
例えば、リトライ設定値が1に設定されている場合、1回目のバッチ処理中に異金種硬貨Cが検出されて、ステップS311においてリトライカウンタが1加算されて1になると、ステップS101に戻ることなく、言い換えればリトライを行わずに、ステップS313でエラー表示を行ってバッチ処理を終了することになる。
【0126】
また、例えば、リトライ設定値が2に設定されている場合、1回目のバッチ処理中に異金種硬貨Cが検出されて、ステップS311においてリトライカウンタが1とされると、ステップS101に戻って、リトライを行うことになり、リトライのバッチ処理中に異金種硬貨Cが検出されて、ステップS311においてリトライカウンタが1加算されて2になると、ステップS313でエラー表示を行ってバッチ処理を終了することになる。このようにリトライ設定値を複数に設定すれば、上記のような逆転搬送で、異金種硬貨Cをリジェクト孔115に落下させることができれば、その後は、そのままバッチ処理を再開し、継続することができる。
【0127】
ステップS308の判定で、本来検知するはずのない、磁気データのピーク値を検知すると(ステップS308:YES)、制御部15は、停止対象となった1枚の異金種硬貨Cよりも正転時下流側にあった硬貨Cが出口側通路部112に戻ってきたと判定して、繰出モータ16および搬送モータ57を停止させて、操作表示部30に、バッチ処理の最後の硬貨が戻ってきた旨のエラー表示を行う逆転時エラー処理(ステップS314)を行ってバッチ処理を終了する。ここで、バッチ処理の最後の硬貨Cが検知される状況は、例えば、上記のように停止対象となった1枚の異金種硬貨Cにテープ等で落下孔141に落下した硬貨Cが繋がれている場合等である。
【0128】
以上のステップS304~S309の流れにおいて、制御部15は、上記した停止制御を行った後、搬送モータ57を逆転させて、正転時下流側とは逆の正転時上流側へ向けての硬貨Cの搬送に切り替え、その後、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cの識別計数部37による検知状態を確認する。停止対象となる1枚の異金種硬貨Cのみが、識別計数部37により検知されると、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cより先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての硬貨Cは、出口側通路部112上には残留していなかったことを判断することができる。
【0129】
ここで、バッチ処理中に、操作表示部30にストップ操作が入力されると、ステップS105の判断がYESとなり、制御部15は、以降、上述したステップS105において残りバッチ枚数が0と判定した場合と同様に制御を行うことになる。
【0130】
以上に述べた実施形態の硬貨処理装置11によれば、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を第1スロー速度で回転する第1スロー正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えて回転させることにより、停止対象となる硬貨Cの搬送速度を低速に切り替えてから停止させることで、停止対象となる硬貨Cを正確に停止させることができる。よって、ストッパ機構が不要となる。したがって、コスト低減、装置内レイアウトの自由度向上、低騒音化および粉塵抑制を図ることができる。
【0131】
また、制御部15は、識別計数部37の検知に基づき、計数対象金種の硬貨以外の異金種硬貨C、すなわち落下部141に落下させる落下対象以外の硬貨Cを検知すると、この異金種硬貨を停止対象となる1枚の硬貨Cとし、この停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を通常速度で回転する通常正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えて回転させることにより、停止対象となる硬貨Cの搬送速度を低速に切り替えてから停止させることになり、停止対象となる硬貨Cを正確に停止させることができる。よって、ストッパ機構が不要となる。したがって、コスト低減、装置内レイアウトの自由度向上、低騒音化および粉塵抑制を図ることができる。
【0132】
また、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を第1スロー速度で回転する第1スロー正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えた後、この停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知状態から非検知状態への変化に基づいて、搬送モータ57を停止させる停止制御を行う。この停止制御により、出口側通路部112における識別計数部37よりも正転時下流側となる出口側通路端部151上に、停止対象となる1枚の硬貨Cを停止させることになる。よって、ストッパ機構がなくても、停止対象となる硬貨を落下孔141に落下させることなく、出口側通路部112上に留めておくことができる。
【0133】
ここで、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨Cが、1枚は残留可であり、且つ、2枚は残留不可となっているため、この停止制御では、停止対象となる1枚の硬貨Cの正転時下流側に隣り合うバッチ処理の最後の硬貨Cおよびその前の硬貨Cを落下孔141に落下させることになる。このように、停止対象となる1枚の硬貨Cのみを出口側通路端部151で停止させることができ、それより先行して正転時下流側の方向に搬送されていたバッチ枚数の全ての硬貨Cは、落下孔141に落下させることができる。よって、ストッパ機構がなくても、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる1枚の硬貨Cよりも先行して正転時下流側の方向に搬送されていたバッチ枚数の全ての硬貨Cを、落下孔141に落下させることができる。
【0134】
また、制御部15は、識別計数部37の検知に基づき、計数対象金種の硬貨以外の異金種硬貨C、すなわち落下部141に落下させる落下対象以外の硬貨Cを検知すると、この異金種硬貨を停止対象となる1枚の硬貨Cとし、この停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を通常速度で回転する通常正転状態(第1回転状態)から、第2スロー速度で回転する第2スロー正転状態(第2回転状態)へ切り替えた後、この停止対象となる1枚の異金種硬貨Cの識別計数部37による検知状態から非検知状態への変化に基づいて、搬送モータ57を停止させる停止制御を行う。この停止制御により、出口側通路部112における識別計数部37よりも正転時下流側となる出口側通路端部151上に、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cを停止させることになる。よって、ストッパ機構がなくても、停止対象となる異金種硬貨Cを落下孔141に落下させることなく、出口側通路部112上に留めておくことができる。
【0135】
ここで、出口側通路端部151は、処理対象硬貨の全金種の硬貨Cが、1枚は残留可であり、且つ、2枚は残留不可となっているため、正規硬貨Cと同等の外径の異金種硬貨Cも同様であり、この停止制御では、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cの正転時下流側にあるバッチ処理中の計数対象金種の硬貨Cは落下孔141に落下することになる。このように、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cのみを出口側通路端部151で停止させることができ、それより先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての計数対象金種の硬貨Cは、落下孔141に落下させることができる。よって、ストッパ機構がなくても、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cよりも先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての計数対象金種の硬貨Cを、落下孔141に落下させることができる。
【0136】
また、制御部15は、バッチ処理の最後の硬貨Cの検知に基づいて、上記した停止制御を行った後、搬送モータ57を逆転させて、正転時下流側とは逆の正転時上流側へ向けての硬貨Cの搬送に切り替え、その後、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる1枚の硬貨Cの識別計数部37による検知状態を確認する。停止対象となる1枚の硬貨Cのみが、識別計数部37により検知されると、停止対象となる1枚の硬貨Cより先行して正転時下流側の方向に搬送されていたバッチ枚数の全ての硬貨Cは、出口側通路部上には残留していないものと判断することができる。よって、ストッパ機構がなくても、停止対象となる1枚の硬貨Cよりも先行して正転時下流側の方向に搬送されていたバッチ枚数の全ての硬貨Cの落下孔141への落下を判断することができる。
更に、制御部は、停止対象となる1枚の硬貨Cを、検知部をまたいで往復させる搬送制御を行わせることにより、バッチ枚数の全ての硬貨Cの落下を判断している。すなわち、この判断を行うために、検知部は1つの磁気センサのみを設ければ良く、当該検知部から正転時下流側に別のセンサを設ける必要がない。したがって、部品コストをより抑制する効果を奏することとなる。
【0137】
また、制御部15は、異金種硬貨Cの検知に基づいて、上記した停止制御を行った後、搬送モータ57を逆転させて、正転時下流側とは逆の正転時上流側へ向けての硬貨Cの搬送に切り替え、その後、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cの識別計数部37による検知状態を確認する。停止対象となる1枚の異金種硬貨Cのみが、識別計数部37により検知されると、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cより先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての計数対象金種の硬貨Cは、出口側通路部112上には残留していなかったことを判断することができる。よって、ストッパ機構がなくても、停止対象となる1枚の異金種硬貨Cよりも先行して正転時下流側の方向に搬送されていた全ての計数対象金種の硬貨Cの落下孔141への落下を判断することができる。
【0138】
また、識別計数部37は、磁気センサで構成されるため、停止対象となる1枚の硬貨Cの検知と、指定金種以外である異金種硬貨Cの検知とを同じ磁気センサで行うことができることになり、より低コスト化が図れる。
【0139】
また、制御部15は、停止対象となる1枚の硬貨Cよりも1枚、正転時下流側にあるバッチ処理の最後の硬貨Cの識別計数部37による検知に基づいて、搬送モータ57を、第1スロー速度で回転する第1スロー正転状態(第1回転状態)よりも高速の通常正転状態(第3回転状態)から第1スロー正転状態(第1回転状態)に切り替える。よって、バッチ処理の最後の硬貨Cの次に搬送されてきた、停止対象となる硬貨Cの搬送速度を、より低速に切り替えてから停止させることになり、よって、停止対象となる硬貨Cを、より正確に停止させることができる。
【符号の説明】
【0140】
11 硬貨処理装置
15 制御部
37 識別計数部(検知部)
54 フィードベルト
57 搬送モータ
61 入口側通路部
112 出口側通路部
141 落下孔(落下部)
151 出口側通路端部
C 硬貨
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9