(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】電子ブロックチェーンに組み込まれる取引の妥当性を確認するシステムと方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/38 20120101AFI20221121BHJP
G06F 21/64 20130101ALI20221121BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06F21/64
(21)【出願番号】P 2020565955
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(86)【国際出願番号】 US2018038957
(87)【国際公開番号】W WO2019245577
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520455162
【氏名又は名称】ストロールマン,ジェフ
【氏名又は名称原語表記】STOLLMAN, Jeff
【住所又は居所原語表記】407 Cannon Court Wayne, PA 19087 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ストロールマン,ジェフ
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220710(JP,A)
【文献】国際公開第2018/106187(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0134280(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0267472(US,A1)
【文献】国際公開第2017/004527(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0048234(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0098291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンに追加されるべき取引と関連しない者からの入力なしで行われる、プロトコルに基づくブロックの妥当性確認を通じてブロックチェーンの効率及び整合性を改善するためのコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法で、プロトコルは以下のステップを含む。
1.前記ブロックチェーンに追加されることが意図された少なくとも1つの取引と関連する取引エンティティを認証するために、認証ルールを少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにアップロードする。
2.前記ブロックチェーンに追加されることが意図された少なくとも1つの取引の整合性を検証するための検証ルールを少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにアップロードする。
3.前記ブロックチェーンに追加されるべきブロックを作成し妥当性を確認するための妥当性確認ルールを少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードにアップロードする。
4.少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにより前記認証ルールに従って少なくとも1人の第1の取引エンティティの認証情報を認証する。
5.前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにより前記認証ルールに従って少なくとも1人の第2の取引エンティティの認証情報を認証する。
6.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより少なくとも1つのコンピューターインターフェースから前記少なくとも1人の第1の取引エンティティによって作成された取引記述を受信し、ここで前記取引記述は前記ブロックチェーンに追加することが意図された少なくとも1つの取引におけるパラメータを指定する。
7.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つ
のコンピューターインターフェースに前記少なくとも1人の第2の取引エンティティからの前記取引記述の確認のための要求を送信し、ここで前記要求は前記少なくとも1つの取引の前記指定されたパラメータを含む。
8.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより、少なくとも1つのコンピューターインターフェースから少なくとも1人の第2の取引エンティティによって作成された取引の確認を受信する。
9.前記少なくとも1人の第2の取引エンティティからの前記取引記述の確認を受領すると前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つの取引を検証するステップであって、ここで、前記検証するステップは
a.前記取引記述に適用可能である前記第1及び第2の取引エンティティの前記認証された認証情報を検証するステップと、
b.
i.前記検証ルールに従って前記取引記述及び前記取引記述の確認が一貫性のために比較され一貫性があると判定される、又は
ii.前記取引記述の確認が前記取引記述を承認する
のいずれかで前記少なくとも1つの取引を自動的に検証するステップと、
c.ステップ9(b)による自動検証が発生したときに、前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより少なくとも1つの検証された取引を作成するステップと、
を含む。
10.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つの検証された取引を前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードに送信する。
11.前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードにより前記検証ルールに従って前記少なくとも1つの検証された取引の出所、内容及びフォーマットを検証することによって前記少なくとも1つの検証された取引の整合性の妥当性を確認する。
12.前記少なくとも1台の妥当性確認
ブロックチェーンノードにより、追加の当事者からの更なる入力又は同意なく、前記ルールに従って、前記ブロックチェーンに追加されるべき前記少なくとも1つの妥当性が確認された取引を含む取引の妥当性が確認されたブロックを自動的に作成する。
13.前記少なくとも1台の妥当性確認
ブロックチェーンノードにより、前記ブロックチェーンに前記取引の妥当性が確認されたブロックを自動的に追加する。
【請求項2】
少なくとも1つの前記取引記述及び前記取引記述の確認が前記少なくとも1つの取引のデジタル署名された仕様書である、請求項1に記載のコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの取引が、有形又は無形の資産の少なくとも一部の生成、購入、売却、移動、変更、所有権の移転又保管先の移転である、請求項1に記載のコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの取引が資産の少なくとも一部を生成し、移動し、追加し、変更し、移転し又は売却するものである、請求項1に記載のコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの取引の少なくとも1つの条項に対する修正の記録又は、前記修正に関連する任意のデータの記録が前記少なくとも1つの取引とは別の取引として記録される、請求項1に記載のコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの取引が情報、データ又は文書の少なくとも一部を生成し、追加し、削除し又は修正する、請求項1に記載のコンピューターに実装されたプロトコルベースの方法。
【請求項7】
ブロックチェーンに追加されるべき取引と関連しない者からの入力なしで行われる、プロトコルに基づくブロックの妥当性検証を通じてブロックチェーンの動作効率及び整合性を改善するための機械可読コードを組み込んだブロックチェーンであって、前記ブロックチェーンは、
a.実行時に前記ブロックチェーンを管理する、少なくとも1台のブロックチェーンノードに格納された第1の組の機械可読命令と、
b.前記と動作可能に接続されている少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードと、
c.前記ブロックチェーンと動作可能に接続されている少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードと、
d.前記ブロックチェーンと動作可能に接続されている少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードと、
e.少なくとも1台のブロックチェーンノードと動作可能に結合されている少なくとも1つのコンピューターインターフェースと、
を備え、
前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノード、前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノード、前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノード及び前記少なくとも1つのコンピューターインターフェースが、以下のステップによって前記ブロックチェーンのために認証、検証及び妥当性確認のプロトコルを実行する、ブロックチェーン。
1.前記ブロックチェーンに追加されることが意図された少なくとも1つの取引と関連する取引エンティティを認証するための認証ルールを前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにアップロードする。
2.前記ブロックチェーンに追加されることが意図された少なくとも1つの取引の整合性を検証するための検証ルールを前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにアップロードする。
3.前記ブロックチェーンに追加されるべきブロックを作成し妥当性を確認するための妥当性確認ルールを前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードにアップロードする。
4.前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにより前記認証ルールに従って少なくとも1人の第1の取引エンティティの認証情報を認証する。
5.前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノードにより前記認証ルールに従って少なくとも1人の第2の取引エンティティの認証情報を認証する。
6.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより、少なくとも1つのコンピューターインターフェースから前記少なくとも1人の第1の取引エンティティによって作成された取引記述を受信し、ここで前記取引記述は前記ブロックチェーンに追加することが意図された少なくとも1つの取引におけるパラメータを指定する。
7.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つ
のコンピューターインターフェースに前記少なくとも1人の第2の取引エンティティからの前記取引記述の確認のための要求を送信し、ここで前記要求は前記少なくとも1つの取引の前記指定されたパラメータを含む。
8.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより、前記少なくとも1つのコンピューターインターフェースから少なくとも1人の第2の取引エンティティによって作成された取引の確認を受信する。
9.前記少なくとも1人の第2の取引エンティティからの前記取引記述の確認を受領すると前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つの取引を検証するステップであって、ここで、前記検証するステップは
a.前記取引記述に適用可能である前記第1及び第2の取引エンティティの前記認証された認証情報を検証するステップと、
b.
i.前記検証ルールに従って前記取引記述及び前記取引記述の確認が一貫性のために比較され一貫性があると判定される、又は
ii.前記取引記述の確認が前記取引記述を承認する
のいずれかで前記少なくとも1つの取引を自動的に検証するステップと、
c.ステップ9(b)による自動検証が発生したときに、前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより少なくとも1つの検証された取引を作成するステップと、
を含む。
10.前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノードにより前記少なくとも1つの検証された取引を前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードに送信する。
11.前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノードにより前記検証ルールに従って前記少なくとも1つの検証された取引の出所、内容及びフォーマットを検証することによって前記少なくとも1つの検証された取引の整合性の妥当性を確認する。
12.前記少なくとも1台の妥当性確認
ブロックチェーンノードにより、追加の当事者からの更なる入力又は同意なく、前記ルールに従って、前記ブロックチェーンに追加されるべき前記少なくとも1つの妥当性が確認された取引を含む取引の妥当性が確認されたブロックを自動的に作成する。
13.前記少なくとも1台の妥当性確認
ブロックチェーンノードにより、前記ブロックチェーンに前記取引の妥当性が確認されたブロックを自動的に追加する。
【請求項8】
少なくとも1つの前記取引記述及び前記取引記述の確認が前記少なくとも1つの取引に関連するデジタル署名された仕様書を含む、請求項7に記載のブロックチェーン。
【請求項9】
前記デジタル署名された仕様書が前記少なくとも1人の第1の取引エンティティと前記少なくとも1人の第2の取引エンティティとの間で移転された資産の少なくとも一部と関連する、請求項8に記載のブロックチェーン。
【請求項10】
前記少なくとも1つの取引が、前記少なくとも1人の第1の取引エンティティと前記少なくとも1人の第2の取引エンティティとの間の有形又は無形の資産の少なくとも一部の生成、購入、売却、移動、変更、所有権の移転又保管先の移転である、請求項7に記載のブロックチェーン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの取引が前記少なくとも1人の第1の取引エンティティと前記少なくとも1人の第2の取引エンティティとの間の資産の少なくとも一部の売却である、請求項7に記載のブロックチェーン。
【請求項12】
前記少なくとも1台のブロックチェーンノード、前記少なくとも1台の検証ブロックチェーンノード、前記少なくとも1台の認証ブロックチェーンノード、前記少なくとも1台の妥当性確認ブロックチェーンノード及び前記少なくとも1つのコンピューターインターフェースのうちの少なくとも2つが単体のブロックチェーンノードである、請求項7に記載の計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ブロックチェーンの妥当性確認の分野に関連している。コンセンサスプロセスと呼ばれることが多いこのプロセスでは、新しい取引の整合性、新しい取引がブロックチェーンに追加される前に統合される可能性のある電子ブロックの整合性の妥当性を確認し、結果として更新されたブロックチェーンの整合性の妥当性を更に確認する。より詳細には、本発明は、取引の当事者同士が互いに「信頼」するブロックチェーン環境内で実装されるシステムに関するものであり、ここでの信頼とは(a)他の当事者の知識、(b)取引が意図した通りに完了しなかった場合に利用可能な救済手段に対する信頼、または(c)取引の妥当性確認に先立って取引の正確性と完全性を検証する能力のうちの1つ以上であり得るもので、自動化されたプロトコルに基づく取引の妥当性確認が、電子ブロックチェーンに追加される前に新しい取引を検証するために動作するものである。
【背景技術】
【0002】
ビットコインなどの暗号通貨プロトコルの目的は、受け入れられたプロトコルから逸脱しようとする可能性のあるアクターによる、悪意のあるビザンチン将軍からの二重支出攻撃を防御することができるリアルタイムの取引台帳を維持することである。Lamport, L.; Shostak, R.; Pease, M. (1982)、"The Byzantine Generals Problem"、"ACM Transactions on Programming Languages and Systems"を参照。台帳の「所有者」を持つことによる覇権を回避しつつ、取引当事者の匿名性(より正確には仮名)をサポートするために、ビットコインは分散型の妥当性確認(又は、バリデーション)プロセスを採用しており、ビットコインの取引台帳のコンセンサスはマイナーのネットワークによって確保される。これらのマイナーは、ブロックチェーンに追加されるブロックに関連したコンセンサス確認を提供するための報酬のスケジュールを通じて、コンセンサスプロセスに参加するようインセンティブを与えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マイナーの仕事、つまりマイニングには、1人のマイナー --あるいは攻撃者-- がブロックチェーンの制御を得ようとするために複数のアカウントを作成したり、ブロックチェーンを流用したりするのにコストがかかるように、非常に困難でリソースが複雑になるように設計されているプルーフ・オブ・ワーク計算が含まれる。ちなみに、現在のビットコインの価格と報酬のスケジュールでは、マイナーはブロックチェーンを確保するために毎日約150万ドルの報酬を得ており、そのうちのかなりの部分が、証明計算に必要な処理を行うための電力のみに費やされていることが指摘されている。ビットコイン・ブロックチェーンの歴史と規模にもよるが、コンセンサスを確立するために必要な計算が複雑化していることを考慮すると、プルーフ・オブ・ワーク・ベースのコンセンサス・プロトコルは時間がかかり、二重支出を防ぐために支払いを合理的に確認するのに最大1時間を必要とする。Jae Kwon, "Tendermint: Consensus Without Mining" Draft V0.6, http://tendermint.com/docs/tendermint.pdf を 参照。
【0004】
ブロックチェーン技術を使用するエンドユーザーや消費者向けのマーケットプレイス(例:多くの暗号通貨)は、単一のユーザー、ビジネス、政府機関による不当な影響を受けないように分散化されており、この分散化あるいは分散型市場は、多くの顧客のインセンティブになる。実際、このような市場の多くは、匿名で信頼されない参加者をサポートするために意図的に設計されている。
【0005】
分散化と匿名(より正確には仮名)のアクターの支持の組み合わせは、設計上、システムに対して覇権を行使する中央当局が存在しないため、このような市場とアクターが許可のない妥当性確認システム(すなわち、誰もが誰の許可を必要とせずに報酬を競うことができる妥当性確認システム)を支持させる結果となる。取引は、両方の当事者が取引を承認することで認証され、通常は各当事者がデジタル署名を適用し、それによって取引に対するそれぞれの承認と同意を確立することによって達成される。ブロックチェーンシステムでは、このような同意を得た取引はブロックに束ねられ、後に「親」ブロックチェーンである可能性のあるブロックチェーンに追加される。
【0006】
このようなシステムは、匿名のバリデーター(ビットコインのマイナーなど)に頼って、プルーフ・オブ・ワーク計算などのコンセンサスアプローチを使ってブロックチェーンにこれらのブロックを追加しており、このコンセンサスアプローチは匿名で自己選択された新しいブロックの妥当性を確認するためのものである。
【0007】
許可のないマイナーはビットコインで使用されており、ブロックチェーンのログまたは台帳に追加された取引ブロックの整合性を確保するために想定された元のアプローチである。このようなパーミッションレスのコンセンサスシステムは、典型的には、サトシ・ナカモト氏が執筆したビットコインの論文を踏襲している。S. Nakamoto, “Bitcoin: A peer-to-peer electronic cash system,” 2008.を参照。
【0008】
このコンセンサスアプローチの欠点は、人々をマイナーに誘引するためには、報酬を提供しなければならないことにある。更に、任意のマイナーやマイナーグループがシステムを乗っ取り、汚染されたブロックをブロックチェーンに追加する能力を制限するために、ビットコインや他のマーケットプレイスではマイナーのためのプルーフ・オブ・ワーク・テストを実施している。プルーフ・オブ・ワーク・テストに合格するためのコストは、例えばブルートフォース計算によって、システムのコンセンサスを圧倒し、不適切な取引の妥当性を確認するために必要なバリデーターの多重性を作り出すために法外なコストがかかるように、十分に高額または困難なものとなっている。同時に、これらのマーケットプレイスはマイナーにプルーフ・オブ・ワーク・テストに合格するにあたり、必要な投資をするよう誘導するのに十分な価値のある報酬を提供しなければならないため、結果としてコンセンサスアプローチにはコストがかかることになる。
【0009】
また、このアプローチでは特定のブロックをロールバックさせることができる。ブロックチェーンの特定のブロックを「元に戻す」ことで、妥当性が確認されたブロックで共謀が発見された場合に備えてブロックチェーン全体の整合性を保証するが、それは取引の最終的な妥当性確認を更に遅らせる。
【0010】
他の暗号通貨は、異なるコンセンサス技術を実装することで妥当性確認のコストを削減しようとする。イーサリアム・プラットフォームは、プルーフ・オブ・ステークのようなコンピューティングの課題を生じさせず、難しい問題を解決するためのコストのかかる電気の支出を必要としないプルーフ・オブ・ステークの手順を実装しようとする。イーサリアムの報酬はビットコインが提供しているものよりも小さいが、参加費用も同様である。
【0011】
ビットコインのようなオープン通貨、分散型の市場と比較して、企業のマーケットプレイス(金融市場の清算システムなど)は一般的に中央集権型であり、匿名の参加者と、識別されているが信頼されていない参加者の両方を提供している。集中化されているため、よりコスト効率の高い許可台帳システムでサービスを提供することができる。許可されたシステムでは、中央当局がシステムバリデーターを審査して割り当てるが、バリデーターは取引ブロックを承認するためにコンセンサスを得なければならないため、バリデーター間でバリデーションプロセスが分散されたままである。多額の報酬を支払うのではなく、これらの識別及び審査されたバリデーターは単純な給与を支払うことができる。また、中央当局の方が許可されたエージェントに対する信頼度が高いため、バリデーションプロセスを短縮することができ、ロールバックの機会や必要性を減らすことができる。運用コストが低いため、多くの新しい許可アプリケーションがこの代替コンセンサスアプローチを使用して開発されている。このようなシステムでは、識別されたバリデーターによって匿名の当事者による取引の妥当性が確認されており、中央管理者による精査プロセスと定期的な監査は、結託抵抗力を更に高めることができる。このような許可されたソリューションの記述は、Jae Kwon氏が"Tendermint: Consensus Without Mining"という論文で執筆している。
【0012】
ブロックチェーン技術の利点を求める他のアプリケーションでは、互いに既知で信頼できる理由がある当事者による取引が対象となる(例:既存の拘束力のある契約や、比較的予測可能なリコースを提供する他の法的インフラストラクチャ)ため、コンセンサスプロセスを完全に回避し、それによって運用コストを更に削減する機会がある。また、機密性の高い内容を含む取引については、取引情報をバリデーターに公開しないようにできることもメリットとなる。現時点ではこのようなアプローチは提案されていないため、そのようなシステムのための機会は熟しており、対象開示はこの問題と機会を対象としている。
【0013】
好ましい実施形態では、記載されたシステム及び方法は、取引が互いに既知で信頼されている参加者の間で行われるアプリケーションを提供する(または、十分なレベルの信頼がない場合には、参加者は1人または複数の当事者による不実表示または不正行為を是正するための十分な手段を有する)。開示されたシステム及び方法は、コンセンサスに到達するために多数のエージェントの介入を必要とせず、取引の妥当性を確認するためにコンピューター読み取りが可能なプロトコルに従って、ブロックチェーンに追加されるブロックを組み立てる効率的かつ自動化されたプロトコルベースのシステムを作成する。
【0014】
ブロックの妥当性確認の問題に対処しようとするコンセンサスモデルが幅広く開発されている。本発明を目的として、これらの様々なコンセンサスモデルは、パーミッションレスとパーミッション付きの2つの基準に該当する。以下の表1から分かるように、どちらのシステムも匿名(仮名)ユーザーと既知のユーザーをサポートすることができるが、どちらのモデルもユーザーが互いを信頼する必要はない。そしてどちらも、ブロックチェーンに追加された取引のブロックの妥当性を確認するためのコンセンサスの作成に参加することを望む当事者にインセンティブ(報酬や給与など)を提供している。
【0015】
コンセンサス参加者に提供されるインセンティブはモデル間で異なり、パーミッションレスは、報酬を獲得するために競うコストを正当化するために、高い報酬を提供している。一方、許可されたシステムは、一般的に既知の審査されたエージェントに固定給を支払っており、そのようなシステムの例が設計及び開示されている。その方法及びシステムの1つは、Lesavichらに発行された米国特許第9,569,771号 Method and System For Storage and Retrieval of Blockchain Block Using Galois Fields に開示されている(「'771特許」または「Lesavichら」)。'771特許は、クラウドまたはピアツーピア通信ネットワーク上で、修正されたガロアフィールドを使用して、ブロックチェーン用の1つ以上のブロックを安全に保存及び取得するための方法及びシステムを開示している。特に、'771特許は、クラウド通信ネットワーク上の電子データの保存及び検索のためのセキュリティを強化するためにガロアフィールドを使用することに焦点を当てているように見える。'771特許は、取引の記録をブロックに追加する前に、または親ブロックチェーンに直接追加する前に、取引の整合性を自動化されたプロトコルベースの妥当性確認を行う方法を開示したり、示唆したりするようには見えない。
【0016】
関連するシステムの別の例は、Fayらによって出願された米国特許出願シリアル番号 15/086,801、Systems and Methods of Blockchain Transaction Recordation に記載されている(「'801出願」または「Fayら」)。'801出願は、複数のコンピューティングノードを含む分散ブロックチェーンコンピューティングシステムと通信するコンピューターシステムを教示する。'801出願の見かけ上のコア要素およびステップは、2つの別個の取引が記録された取引の交換(例えば、AからBへの1つの取引及びBからAへの別の取引)を形成するために、いつ妥当性が確認されるかを決定することに依存する取引の監視プロセスおよび生成である。当事者の一方が取引の提出に失敗した場合、または提出された取引が失敗した場合、コンピューターシステムは2つの関連する取引のうちの一方を取り消す新しいブロックチェーン取引を生成しても良い。
【0017】
'801出願は別個の取引記録のマッチングに適宜依存しているように見え、これによるいくつかの問題が発生する。まず、それぞれの完全な取引には、最低でも2つのコンポーネント取引が必要である。これはブロックチェーンがより大きく、より速いペースで成長する原因となるだけでなく、追加の処理時間が必要となる。第2に、最初の取引を無効化する必要がある場合、完了した取引は少なくとも4つのコンポーネント取引の処理を必要とし、パフォーマンスとスケーラビリティの両方を更に消耗させる。最後に、Fayらのプロセスは、プロトコルに基づいて自動的に完了した取引の妥当性を確認するための方法またはシステムを提供しない。例えば、Fayらの例では、初期の取引コンポーネントを反転または元に戻す必要がある場合、プロトコルベースのプロセスが全ての潜在的なリビジョンを予測することは不可能であるため、プロセスは自動的に処理されない。
【0018】
本発明の自動化されたプロトコルベースのシステムは、取引当事者の全てが、候補となる取引が行われたか、または行われる予定であることの確信を検証するという条件を期待し、これに依存しているため、これらの条件が満たされている場合には、取引の妥当性を確認するためのコンセンサスインセンティブは必要ない。取引の当事者による確認という前提条件があり、当事者が指定された取引条件に同意していることは、基礎となる取引の十分な妥当性確認となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、妥当性が確認された取引を電子ブロックチェーンに記録する前に、取引の整合性の妥当性を確認するためのシステム及び方法を提供することにより、先行技術の欠点を克服し、上述のニーズを満たす。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、記録が電子ブロックチェーン内の電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法である。プロトコルは、(a)取引の一部として資産を譲渡するために、第1当事者のうち少なくとも1人が、各第1当事者が取引の少なくとも1つの条項に同意しているという第1確認を得ること、(b)取引の一部として資産を受領するため、第2当事者のうち少なくとも1人が、取引の少なくとも1つの条項に対し、第1当事者のそれぞれの合意を確認したという第2確認を得ること、(c)第1及び第2確認の受領書に基づいて、取引の妥当性が確認された電子記録を作成すること、(d)電子取引のブロックの、妥当性が確認された電子記録を追加すること、(e)ブロックチェーンに電子取引のブロックを追加することにより構成される。
【0021】
更に好ましい実施形態は、ブロックが電子ブロックチェーンに追加される前に、プロトコルベースの命令セットを使用してブロック内の電子記録の整合性の妥当性を確認する方法であり、(a)ブロックに含まれる全ての電子記録が、少なくとも1つの基礎取引の少なくとも1つの条件に関連している場合に、少なくとも1つの基礎取引に対して、少なくとも1人の転送者及び受信者によって確認されたことの妥当性を確認することと、(b)妥当性が確認されたブロックを電子ブロックチェーンに追加することにより構成される。
【0022】
そして更に好ましい実施形態は、記録が電子ブロックチェーン内の電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化されたシステムであり、システムは、(a)少なくとも1つのコンピューターサーバーから構成されており、(b)複数の端末が取引に関連する第1及び第2の複数の当事者にそれぞれ関連しており、(c)少なくとも1つのコンピューターサーバーに格納された機械可読命令が実行されると取引に関連するブロックチェーンデータ構造を管理し、少なくとも1つのコンピューターサーバーに以下のステップを実行させることを特徴とするコンピューターシステムである。
i.取引に関連する複数の第1当事者のうち、少なくとも1人から取引仕様書を受信する。
ii.複数の第2当事者のうち、少なくとも1人から取引仕様書が検証されていることの確認を得る。
iii.取得された取引仕様書の検証確認に関する電子データ送信要求を、残りの各端末に送信する。
iv.複数の当事者に関連する残りの各端末から、取引仕様書の検証確認を受信する。
v.複数の当事者の検証確認の受領書に基づいて、取引の妥当性が確認された電子記録を作成する。
vi.ブロックチェーンデータ構造に追加される取引のブロックに妥当性が確認された電子記録を追加する。
vii.ブロックチェーンデータ構造に取引のブロックを追加する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明を説明する目的で、添付の図は、現在好ましい特定の側面及び実施形態を示す。しかし、本発明は、添付の図に示されているような正確な方法やプロセスのステップ、もしくはシステム要素に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に従って更に開示され、請求されることが理解されるべきである。
図1は、電子ブロックチェーン上に維持される取引の妥当性を確認するための本発明のシステムの例示的な実施形態に関連する、主要な参加者及び要素を示す概略システム図である。
図2は、本発明のシステム内の第1のシステム要素及び通信フローの例示的な実施形態の別のシステムブロック図である。
図3は、プロセスの流れの例示的な概要を提供する本発明の方法における、特定のステップの例示的な実施形態のシステムフローチャートの説明図である。
図4は、譲渡者及び受領者の登録を含む本発明の方法の特定のステップの例示的な実施形態を示す別のシステムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
取引の精度の妥当性を確認するための革新的なシステム、プロセス、及び方法が開示され、以下のいくつかの好ましい実施形態及び例示的な用途を通して説明される。開示されたシステム及びそれらのシステムで実装された方法は、有形または無形の資産であるかどうかに関わらず、資産の売却または譲渡の追跡などの電子的な分散台帳取引を含む取引の妥当性を確認するための適用が可能である。上記の表1は、2つ以上の当事者間の取引の妥当性確認に関連する様々な要素と構成部分の概要を示している。
【0025】
特定の用語は、本明細書では、本発明のシステム、プロセス、及び方法の特定の好ましい実施形態を説明するために互換的に使用される。特定の実施形態または図を参照するようにこれらの用語を使用することは、本発明の方法論またはシステムの範囲を制限するものと解釈されるべきではない。その中心に、本発明の方法論およびシステムの実施形態が
図1に示されており、譲渡者(または売り手)70、受領者(または受取人、または買い手)90の関連する参加者が、それぞれコンピューター端末またはコンピューター入出力デバイスを有し、それぞれのデバイスがブロックチェーンサーバー30(クラウド110内に維持)と通信的に接続されている状態で示されている。参加者に関しては、例によって、「売り手」または「譲渡者」という用語には資産を現金または何らかの他の形式の報酬と交換する実体が含まれる場合があり、単に資産(法的証拠など)の保管先を他の実体に移転する場合もある。同様に、「買い手」または「受領者」または「受取人」という用語には、現金または何らかの他の形態の報酬のために資産を購入する実体が含まれる場合もあれば、荷送人や宅配便などの仲介者を含む他の実体から資産(法的証拠など)の一時的または最終的な保管を受けている場合もある。
【0026】
更に、用語「資産」は、データ、電子ファイル、無形資産(ドメイン名、様々な知的財産、商標、または著作権など)、更には暗号通貨などの仮想資産を含む、任意の製品、材料、デバイスコンポーネント、パッケージ、及び物理的または電子的な文書またはファイルを広くカバーすることが意図されている。更に「ブロックチェーン」という用語は、ここでは改竄に強く否認不能な取引記録または台帳を作成することを可能にする、任意の技術を指すために使用される。
【0027】
革新的なシステムの中核または主要な要素は、譲渡者と受領者の間の取引の側面を検証(または確認)するためにプロトコルを実装した方法を使用することである。更に詳細には、その中核となる方法論は、(a)資産の譲渡者が取引に関連する用語を検証すること、(b)譲渡者が検証した用語を資産の受取人が検証すること、(c)取引の記録をブロックチェーンに追加する前の当事者の検証に基づき、完了した取引の妥当性を確認することを含む。開示されたプロセス及び基礎となる技術は、取引の非可逆的で検証可能な電子ログを作成するのに役立つ。電子ログは、各システム利用者に提供され、維持されるセキュア識別子を使用して確認される。一例として、複数の資産保管者が資産を作成、譲渡または受領する際に、それぞれがセキュア識別子を使用する。このようなセキュア識別子は、取引を証明する可能性のある他の当事者によっても使用される。
【0028】
この取の妥当性確認技術の好ましい実施形態は、電子ブロックチェーンの妥当性確認に特に適用可能であり、有用である。概要の背景として、ブロックチェーンとは、取引の電子台帳のことである。ブロックチェーンや台帳は、新しい取引(例えば、保管先や所有者の変更)に対応する「完了した」ブロックがブロックチェーンに追加されると「成長」する。新しい取引はブロックにグループ化され、それぞれの新しいブロックが妥当性確認プロセスを経て、初めてブロックチェーンに追加される。上述したように、現在の暗号通貨ブロックチェーンシステムでは、新しいブロックの妥当性確認は、ブロックに追加される前に、通常は取引とは無関係の複数のエージェントが取引とブロックの精度について、コンセンサスに達する必要があるコンセンサスプロセスによって行われる。ここに開示されるように、様々な実施形態では、ブロック妥当性確認プロセスは自動化されたプロトコルベースで行われるものであり、それにより分散型台帳の運用コストを大幅に削減し、システムのパフォーマンスを向上させる(すなわち、所定の時間内に処理できる取引の数が大幅に増加し、取引の妥当性が確認されるまでに必要とされる時間が大幅に削減されることがある)。
【0029】
図2は、資産の販売取引におけるシステム100の例示的な実施形態の基本的な機能構成要素を示す図である。売り手(例:メーカー)は、製品の一部を買い手(例:正規代理店の1つ)に販売しようとする。買い手はメーカーの正規代理店であるため、それぞれの取引先は他の取引先に知られており、両者の間には信頼関係がある。特に当事者は、売り手が買い手に商品を出荷する意思があること、買い手が出荷された商品の受領を正確に確認することを信頼していることを両者に提供する歴史的な関係を有している。
【0030】
図で示された実施形態では、譲渡者は、端末10を使用して、受領者によって信頼された認証サービス15を介して本人認証を行う。端末10は、例えばデスクトップコンピューター、タブレットコンピューター、携帯電話、または他の類似したタイプのコンピューター入出力装置であり得る。認証サービス15は、ブロックチェーンプロバイダーの提供するサービスの一部であっても良いし、単に受領者とブロックチェーンプロバイダーの両方によって受け入れられる独立したサービスであり得る。そして、認証サービス15は、ブロックチェーンサーバー30に認証を提供する。これにより譲渡者はブロックチェーンサーバー30へのアクセスを許可する。
【0031】
同様に、受領者は自身の端末20を用いて、認証サービス25を介して本人認証を行う。なお、受領者の認証サービス25は譲渡者と同じサービスであっても良いし、譲渡者とブロックチェーン提供者が受け入れている別のサービスであっても良い。受領者用認証サービス25は、その認証をブロックチェーンサーバー30に提供することにより、受領者がブロックチェーンサーバー30にアクセスできるようにする。
【0032】
次に、譲渡者が特定の資産を出荷すると、譲渡者は電子署名された取引18(例:請求書や船荷証券)をブロックチェーンサーバー30にアップロードし、ブロックチェーンサーバー30は電子署名された取引18をブロックチェーンサーバー30にアップロードする。デジタル取引18は、取引に含まれる製品のリストを含み、そのデータには少なくとも、請求書に記載された商品の受領者(複数可)または受取人の名前も含まれる。そして、ブロックチェーンサーバー30は、取引が妥当性確認待ちであることを受領者に通知する。デジタル取引18は必ずしも受領者に送信されるわけではないが、受領者がブロックチェーンサーバー30にログインして同じデジタル取引18を閲覧することにより、受領者がアクセス可能な取引の記録が通知される。いくつかの実施形態では、
図2に示されるように、ブロックチェーンサーバー30は、(1)ブロックに追加する前に取引を管理するため、(2)取引の妥当性を確認するため、(3)妥当性が確認された取引をブロックに追加するため、(4)ブロックをブロックチェーンに追加する前にブロックの妥当性を確認するため、または(5)妥当性が確認されたブロックをブロックチェーンに追加するため、別個のサーバー30a、30b、30cで構成されても良い。
【0033】
次に、受領者はブロックチェーンサーバー30上で識別され、通知された取引を検証する。受領者が受け取った商品が、譲渡者が指定したデジタル取引18に含まれる商品と一致する場合、受領者はブロックチェーンサーバー30上にデジタル取引28をデジタルアップロードするか、署名する。受領者がデジタル取引をアップロードまたは署名した時点で、取引の妥当性は確認されたことになる。より具体的には、受領者と譲渡者は互いに既知であり、かつ十分な信頼関係を有しているため、譲渡者と受領者のデジタル署名によって証明されるように、出荷された製品が受領した製品と同じであることを確認し、記録した時点で、取引の更なる独立した妥当性確認や確認を行う必要はない。従って、この取引は、ブロックチェーン35に追加されるブロックに追加されても良いし、ブロックチェーン35に直接追加されても良い。
【0034】
また、
図2に示すように、ブロックチェーンサーバー30とブロックチェーン35を複製し、ブロックチェーンサーバー30のコピー30a、30b、30cとブロックチェーン35のコピー35a、35b、35cの各取引を並行して処理できるようにしても良い。このような冗長システムアーキテクチャは、いずれかのコンポーネント(ブロックチェーンサーバー30またはブロックチェーン35)が単一の障害点になるという問題を排除し、自動化されたプロトコルベースのコンセンサスアルゴリズムが各ブロックチェーンサーバー30内に実装される。計算結果を比較及び破棄したり、残りのブロックチェーンサーバー30の大多数とは異なるブロックチェーンサーバー30を投票で除外したりする。冗長コンピューターシステム内で既知であるように、比較及び投票プロセスは自動化され、プロトコルに基づいており、別個のエージェントまたは独立したエージェントの介入を必要としない。
【0035】
あるいは、本発明のシステムの更なる実施形態では、複数の独立したブロックチェーンサーバーが、ワイン用のブロックチェーンとハンドバッグ用のブロックチェーンのように、異なる資産取引を処理するために実装され得る。
【0036】
図3は、
図2に関連して上記に開示されたプロセスフローの例示的な実施形態を示す図である。より具体的には、譲渡者115は、認証サーバー15を介してシステムに対して自分の身元を認証する。次に、譲渡者は取引116の内容を定義し、取引文書18にデジタル署名してブロックチェーンサーバー118にアップロードし、取引文書18(例:請求書)が受領者に提供されている製品またはサービスを正確に反映していることを示す。受領者は別個の認証サービス25を介して、または譲渡者によって使用される同じ認証サービス25を介して、システム125からブロックチェーンサーバー30へのアイデンティティの認証を行う。更に、
図4に示されたシステムプロセスの別の実施形態では、譲渡されるべき資産要素の譲渡者が複数存在する場合、各譲渡者はシステムに135を登録する。同様に、受領者はシステムに145を登録する。登録135、145は、
図1に示すように、別個の登録サービス12を使用して、または合意された単一の登録サービス12を使用することにより発生する。
【0037】
次に、ブロックチェーンサーバー30は、受領者の承認132を待っている取引を通知する。受領者はブロックチェーンサーバー30上の取引18の詳細227を確認し、検証する(例えば、受け取ったアイテムと請求されたアイテムを比較する)。全てが順当であれば、受領者はブロックチェーンサーバー30上の取引28に自分のデジタル署名228を追加する。取引が指定通りに承認されたという両当事者からの同意を得た後、ブロックチェーンサーバー30は、取引をブロック332に追加し、新しいブロック335をブロックチェーン35に追加することができる。
【0038】
上述の例で描かれていないのは、受領者が請求書18の正確さに異議を唱える状況である。このような場合、受領者はブロックチェーンサーバー30上の取引との不一致を特定する。 ブロックチェーンサーバー30は、識別された不一致が少なくとも譲渡者による検証を必要とすることを、譲渡者に通知する。
【0039】
この段階では、譲渡者にはいくつかの選択肢がある。まず、譲渡者は受領者によって指摘され、ブロックチェーンサーバー30によって通知された矛盾に対処するために、前の取引18を修正し、新たな取引18aに署名することができる。このような場合、譲渡者によって提案されたが受領者によって承認されなかった元の取引18はデータ構造(対象ブロックチェーン内もしくはその一部であっても良い)に記録されていても良いが、記録される必要はない。
【0040】
あるいは、譲渡者が受領者との不一致を交渉することもできる。譲渡者と受領者との間に交渉があり、受領者が元の取引18を受け入れた場合、受領者は単に取引28にデジタル署名をするだけである。しかし、元の取引18が何らかの方法で変更された場合、記録された取引18aを新しいブロックに追加できるようになる前に、譲渡者は修正された取引18aに署名し、受領者の署名を得なければならない。上述したように、異なる実施形態では、ブロックチェーンサーバー30はブロックに追加される前に、交渉された取引または修正された取引の履歴を追跡する。これは記録しても良いし、記録しなくても良い。特定の用途では、記録または全ての交渉または修正された取引情報をブロックチェーン内に保持し、記録する必要があるだろう。しかし、他の用途では、そのような詳細な履歴、交渉、及び修正された取引情報は、最終的な取引の妥当性確認時にはほとんど使用されないか、重要ではない。異なる実施形態では、これらの側面のいずれかが、開示された方法及びシステムによって容易に実施され、達成され得る。例えば、コアブロックチェーンの複雑さとデータ保存要件を単純化して軽減するために、交渉または取引のリビジョンログのために、別の台帳または記録を作成して維持しても良い。
【0041】
本発明のシステム、プロセス、及び方法論の好ましい実施形態が説明され開示されているが、特に、特定の図及び自動プロトコルベースの方法論を使用して電子ブロックチェーンに追加される前のブロックチェーン取引の整合性の妥当性を確認するための、例示的な実施形態を参照することによる例示的表現は、本発明の方法論またはシステムの適用範囲を限定するものとして解釈されない。一例として、本明細書に記載されている取引整合性の妥当性確認システムは、他の非売環境に容易に適用することができる。本発明のシステムは、例えば、証拠品等の無形資産の譲渡など、手数料、報酬、費用等の譲渡を必要としない場合であっても、資産の譲渡には平等に適用される。このような証拠や無形資産の移転の一例としては、例えば遺言書登録所への遺言の記録がある。本発明のシステムの別の例示的な適用は、当事者の義務、責任、及び行動が自動的に監視され、記録される可能性がある契約または取引、例えば「スマート契約」での使用に関連している。
【0042】
他の改変、置換、または適用が可能な方法は本発明の真の範囲及び精神の範囲内にあることが、当技術分野に熟練した者によって認識される。同様に、添付の請求の範囲はそのような修正、置換、または適用の全てをカバーすることが意図される。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法で、プロトコルは以下のステップを含む。
a.取引の一部として資産を譲渡するために、各第1当事者が取引の少なくとも1つの条項に同意していることを、少なくとも1人の第1当事者から第1確認を得る。
b.取引の一部として資産を受領するために、少なくとも1人の第2当事者から、取引の少なくとも1つの条項に対する第1当事者のそれぞれの合意を確認したという第2確認を得る。
c.第1及び第2確認の受領書に基づいて、取引の妥当性が確認された電子記録を作成する。
d.妥当性が確認された電子記録を電子取引のブロックに追加する。
e.ブロックチェーンに電子取引のブロックを追加する。
<請求項2>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、取引の一部として資産を譲渡する少なくとも1人の第1当事者を登録するステップと、取引の一部として資産を受領する少なくとも1人の第2当事者を登録するステップを含む、請求項1に記載の方法。
<請求項3>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、取引の一部として資産を譲渡する少なくとも1人の第1当事者を認証するステップと、取引の一部として資産を受領する少なくとも1人の第2当事者を認証するステップを含む、請求項2に記載の方法。
<請求項4>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、第1確認及び第2確認のうちの少なくとも1つが取引のデジタル署名された仕様書である、請求項1に記載の方法。
<請求項5>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、少なくとも2人の当事者の間で行われる資産の保管先の移転が、取引の少なくとも1期で行われる、請求項1に記載の方法。
<請求項6>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、取引の当事者間の資産の移転である、請求項1に記載の方法。
<請求項7>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、取引の当事者間の資産の売却である、請求項1に記載の方法。
<請求項8>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、ステップ(a)が取引の一部として資産の少なくとも一部を譲渡するために少なくとも1人の第1当事者からの第1確認を得、第1当事者と第2当事者のそれぞれが取引の少なくとも1つの条件に同意する、請求項1に記載の方法。
<請求項9>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、妥当性が確認された電子記録がブロックチェーンに直接追加される、請求項1に記載の方法。
<請求項10>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、取引の少なくとも1期に対する修正の記録と、修正に関連するデータの記録が別々に記録される、請求項1に記載の方法。
<請求項11>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するプロトコルベースの方法であり、以下のステップを含む。
a.ブロックに含まれる全ての電子記録が、少なくとも1つの基礎取引の少なくとも1つの条件に関連している場合に、少なくとも1つの基礎取引に対する少なくとも1人の転送者及び受信者によって確認されていることの妥当性を確認する。
b.妥当性が確認されたブロックを電子ブロックチェーンに追加する。
<請求項12>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、少なくとも1つの基礎取引に少なくとも1人の転送者及び受信者をそれぞれ登録するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
<請求項13>
ブロックが電子ブロックチェーンに追加される前に、プロトコルベースの命令セットを使用してブロック内の電子記録の整合性の妥当性を確認する方法であり、少なくとも1つの基礎取引に少なくとも1人の転送者及び受信者をそれぞれ認証するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
<請求項14>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、妥当性確認がデジタル署名された取引の仕様書となる、請求項11に記載の方法。
<請求項15>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、電子記録の確認が基礎取引の全ての当事者によって行われる、請求項11に記載の方法。
<請求項16>
電子ブロックチェーン内の電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのプロトコルベースの方法であり、当事者間での資産の保管先の移転を基礎取引とする、請求項11に記載の方法。
<請求項17>
電子ブロックチェーンの電子ブロックに記録が追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化されたシステムであり、以下から構成される。
a.少なくとも1台のコンピューターサーバー。
b.取引に関連する複数の第1転送者及び第2受信者は、複数の端末のそれぞれに関連付けられている。
c.少なくとも1つのコンピューターサーバーに格納された機械可読命令であり、実行されると取引に関連するブロックチェーンデータ構造を管理し、少なくとも1つのコンピューターサーバーに以下のステップを実行させる。
i.取引に関連する複数の第1転送者のうち、少なくとも1人から取引仕様書を受信する。
ii.複数の第2受信者のうち、少なくとも1人から取引仕様書が検証されていることの確認を得る。
iii.取得された取引仕様書の検証確認に関連する電子データ送信要求を、残りの各端末に送信する。
iv.複数の第1及び第2当事者に関連する残りの各端末から、取引仕様書の確認を受信する。
v.複数の第1及び第2当事者の検証確認の受信に基づいて、取引の妥当性が確認された電子記録を作成する。
vi.ブロックチェーンデータ構造に追加される取引のブロックに妥当性が確認された電子記録を追加する。
vii.ブロックチェーンデータ構造に取引のブロックを追加する。
<請求項18>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、取引に関連する認証済みの各当事者を登録するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
<請求項19>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、取引に関連する認証済みの各当事者を認証するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
<請求項20>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、妥当性が確認された電子記録が取引に関連するデジタル署名済みの仕様書である、請求項17に記載の方法。
<請求項21>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、取引仕様書が複数の当事者間で転送される資産の受領書である、請求項17に記載の方法。
<請求項22>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、取引が複数の当事者間で行われる資産の移転である、請求項17に記載の方法。
<請求項23>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、取引が複数の当事者間で行われる資産の売却である、請求項17に記載の方法。
<請求項24>
記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに追加される前に、取引の電子記録の整合性の妥当性を確認するためのコンピューター化システムであり、妥当性が確認された電子記録が電子ブロックチェーンの電子ブロックに直接追加される、請求項17に記載の方法。