(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】テラヘルツ波発生装置及びドライヤ
(51)【国際特許分類】
A45D 20/12 20060101AFI20221121BHJP
A45D 20/30 20060101ALI20221121BHJP
A61F 7/03 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A45D20/12 Z
A45D20/30
A61F7/08 332Z
(21)【出願番号】P 2022013650
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592083890
【氏名又は名称】株式会社ヒラタ
(73)【特許権者】
【識別番号】516252724
【氏名又は名称】株式会社CSイノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤田 純
(72)【発明者】
【氏名】筒井 雅夫
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-199053(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112637976(CN,A)
【文献】特表2004-524120(JP,A)
【文献】特開2019-052133(JP,A)
【文献】特開2016-156121(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109363327(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106211384(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D20/00-20/52
H05B 1/00-11/00
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されると、3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する
混成材料と、
前記
混成材料を加熱する加熱部と、を備え
、
前記混成材料は、ゲルマニウム又はケイ素と、セメントと、を含むテラヘルツ波発生装置。
【請求項2】
前記
混成材料は、
さらに、チタン、ニオブ、及びプラチナのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項3】
加熱されると、3THzから150THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する混成材料と、
前記混成材料を加熱する加熱部と、
前記テラヘルツ波を含む温風を出力する排気口と、
前記テラヘルツ波を前記排気口に向けて反射する反射板と、
ユーザの指示に基づいて、前記混成材料が発生する前記テラヘルツ波の周波数帯域を選択して切り替える切替部と、を備え、
前記切替部は、3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波と、43THzから150THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波とを切り替えるドライヤ。
【請求項4】
前記
混成材料は、ゲルマニウム又はケイ素と、セメントと、を含む、請求項3に記載のドライヤ。
【請求項5】
前記混成材料は、さらに、チタン、ニオブ、及びプラチナのうち少なくとも1つを含む、請求項3又は4に記載のドライヤ。
【請求項6】
前記
加熱部は、前記混成材料から前記排気口までの距離及び風速に応じて、前記混成材料を300℃から1500℃の温度で加熱する、請求項3から5のいずれか一項に記載のドライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テラヘルツ波発生装置、及びテラヘルツ波発生装置を搭載したドライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠赤外線の放射機能を備えたドライヤが製品化され、人気を博している。例えば、特許文献1には、ファンと、モータと、ヒータとを備え、遠赤外線を発するドライヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水は遠赤外線の吸収率が高いため、遠赤外線の放射機能を備えたドライヤは濡れた毛髪を速く乾かすことができる。しかし、濡れた毛髪をドライヤで乾かすと、熱による影響で、毛髪に含まれるタンパク質が熱変性を起こし、ダメージを受けることがある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、特定の波長帯域のテラヘルツ波を毛髪に照射することにより、熱変性によるダメージを軽減させることが可能なテラヘルツ波発生装置及びドライヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、一実施形態に係るテラヘルツ波発生装置は、加熱されると、3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する混成材料と、前記材料を加熱する加熱部と、を備え、前記混成材料は、ゲルマニウム又はケイ素と、セメントと、を含む。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記テラヘルツ波発生装置における前記混成材料は、さらに、チタン、ニオブ、及びプラチナのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0009】
上記課題を解決するため、一実施形態に係るドライヤは、加熱されると、3THzから150THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する混成材料と、前記混成材料を加熱する加熱部と、前記テラヘルツ波を含む温風を出力する排気口と、前記テラヘルツ波を前記排気口に向けて反射する反射板と、ユーザの指示に基づいて、前記混成材料が発生する前記テラヘルツ波の周波数帯域を選択して切り替える切替部と、を備え、前記切替部は、3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波と、43THzから150THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波とを切り替える。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記ドライヤにおける前記混成材料は、ゲルマニウム又はケイ素と、セメントと、を含んでもよい。
【0011】
さらに、一実施形態において、前記ドライヤにおける前記混成材料は、さらに、チタン、ニオブ、及びプラチナのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記ドライヤにおける前記加熱部は、前記混成材料から前記排気口までの距離及び風速に応じて、前記混成材料を300℃から1500℃の温度で加熱してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、特定の波長帯域のテラヘルツ波を毛髪に照射することにより、熱変性によるダメージを軽減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係るテラヘルツ波発生装置を備えるドライヤの構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に、一実施形態に係るテラヘルツ波発生装置を備えるドライヤの概略構成を示す。
図1に示すドライヤ1は、テラヘルツ波発生装置10と、吸気口(吸い込み口)20と、モータ30と、ファン40と、反射板(リフレクタ)50と、排気口(吹き出し口)60と、を備える。
【0017】
テラヘルツ波発生装置10は、テラヘルツ波を発生する装置である。テラヘルツ波発生装置10は、混成材料11と、加熱部12と、を備える。
【0018】
混成材料11は、加熱されるとテラヘルツ波を発生する材料である。
【0019】
加熱部12は、混成材料11を加熱する。加熱方法は、電熱線により加熱する方法であってもよいし、加熱した物体からの熱伝導により加熱する方法であってもよい。テラヘルツ波発生装置10は、加熱部12が混成材料11を加熱することにより、テラヘルツ波を発生する。
【0020】
モータ30は、ブラシモータであってもよいし、ブラシレスモータであってもよい。モータ30は、ファン40に接続され、ファン40を回転させる。
【0021】
ファン40は、回転することで風を発生させ、吸気口20から吸気した空気を排気口60に向けて送風する。ファン40及びモータ30は、一体化されていてもよい。ファン40は、例えば軸流ファンである。なお、送風機構としてブロワを用いてもよく、この場合には軸流ファンよりも低騒音且つ大風量、大吐出圧を期待できる。
【0022】
反射板50は、テラヘルツ波発生装置10により発生されたテラヘルツ波を送風方向に向けて(すなわち、排気口60に向けて)反射する。
【0023】
排気口60は、反射板50により反射されたテラヘルツ波を含む温風を出力する。なお、図示を省略しているが、温風を発生させるために、ニクロム線のような電気抵抗値が高い導線に電気を流してもよい。
【0024】
(テラヘルツ波の周波数帯域)
次に、テラヘルツ波発生装置10が発生するテラヘルツ波の周波数帯域について説明する。
【0025】
図2に示すように、毛髪の構造は、キューティクル(毛表皮)及びCMC(細胞膜複合体)を含むキューティクル領域Aと、コルテックス(毛皮質)及びCMC(細胞膜複合体)を含むコルテックス領域Bと、メデュラ(毛髄質)Cの3層に分けられる。このように、毛髪の中心部にはメデュラCがあり、その外側にコルテックス領域Bがあり、一番外側にキューティクル領域Aがある。これらはいずれも大部分(80~90%)がケラチンタンパク質からできており、残りがメラニン色素・脂質・水分・微量元素からなっている。ケラチンタンパク質は、普通のタンパク質とは異なり、物理的にも化学的にも強靱である。
【0026】
しかし、濡れた毛髪をドライヤで乾かすと、熱による影響で、毛髪のキューティクル及びコルテックスを形づくるケラチンタンパク質が熱変性(タンパク変性)を起こすことがある。濡れた状態の毛髪は、60℃ほどの熱でも熱変性が進むとされている。タンパク変性すると髪が固くなりゴワツキや切れ毛の原因となる。
【0027】
一方、熱変性した毛髪にテラヘルツ波を照射することにより、熱で固まってしまったキューティクル及びコルテックスの組織を断片化して分離し、修復することができる。また、表面だけでなく内部も分離方向になることで毛髪全体がしなやかになる。発明者は、特に3THzから21THzのテラヘルツ波を照射した場合に、修復の効果が高いことを確認した。すなわち、ドライヤ1が出力する温風が60℃を超える場合であっても、同時に上記周波数帯域のテラヘルツ波を髪に照射することで、熱変性によるダメージを軽減させることが可能となる。この効果を得るために、テラヘルツ波発生装置10は、上記周波数帯域を含む周波数帯域のテラヘルツ波を発生することを特徴とする。
【0028】
テラヘルツ波発生装置10は、3THzから150THzまでを含む広い周波数帯域のテラヘルツ波を発生してもよい。43THzから150THzのテラヘルツ波においては水分の吸収率が高いため、素早く濡れた髪を乾かすことができる。
【0029】
図3に、上記のテラヘルツ波発生装置10の変形例として、テラヘルツ波発生装置10aの構成例を示す。
図3に示すように、テラヘルツ波発生装置10aは、混成材料11及び加熱部12に加えて、切替部13を備える。
【0030】
切替部13は、ユーザの指示に基づいて、混成材料11が発生するテラヘルツ波の周波数帯域を選択して切り替える。例えば、切替部13は、ユーザにより修復モードが選択された場合には、混成材料11から第1の周波数帯域(例えば、3THzから21THz)のテラヘルツ波を発生させ、ユーザにより速乾モードが選択された場合には、第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯域(例えば、43THzから150THz)のテラヘルツ波を発生させる。
【0031】
切替部13は、第1の周波数帯域のみ通過させるバンドパスフィルタと、第2の周波数帯域のみ通過させるバンドパスフィルタを用いることで、テラヘルツ波を切り替えることができる。あるいは、混成材料11として、第1の周波数帯域を発生する第1の混成材料11-1、及び第2の周波数帯域を発生する第2の混成材料11-2を用意し、切替部13は、選択的に混成材料11-1又は混成材料11-2を加熱させることで、テラヘルツ波を切り替えることができる。
【0032】
(混成材料)
次に、混成材料11の具体例について説明する。混成材料11は、ゲルマニウム又はケイ素(シリコン)の単体であってもよい。実験によれば、テラヘルツ波の放射量はゲルマニウムのほうが多かった。また、混成材料11は、ゲルマニウム又はケイ素に加え、カーボン、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、プラチナ、及びニッケルクロムのうち少なくとも1つを含む材料とすることで、水の吸収波長帯域でも高放射率を維持することができる。混成材料11は、さらにセメントを混ぜてセラミック材としてもよい。
【0033】
混成材料11は、加熱部12により高温に加熱される。混成材料11を高温に加熱するほどテラヘルツ波のエネルギーを大きくすることができる。しかし、テラヘルツ波発生装置10をヘアドライヤとして使用する場合には、排気口60から出力される温風の温度を120℃以下とすることが望ましい。なお、JIS(日本工業規格)の規定では、室温が30℃で吹き出し口から3cmのところの温度が140℃以下と定められている。そのため、混成材料11の加熱時の温度は、混成材料11の大きさ、混成材料11から排気口60までの距離、風速などに応じて制御する必要がある。これらを考慮すると、ドライヤ1が一般的なサイズの場合、加熱部12は、混成材料11を300℃から1500℃の温度で加熱することが望ましい。
【0034】
(反射板)
次に、反射板50の素材及び配置について説明する。反射板50の素材は、テラヘルツ波を効率よく反射する素材であればよく、例えば金である。テラヘルツ波のエネルギーは距離の2乗に反比例するため、反射板50はテラヘルツ波発生装置10の近くに配置される。例えば、反射板50は、テラヘルツ波発生装置10から、1mmから1cmの間隔をあけて配置されることが望ましい。反射板50は複数枚あってもよい。
【0035】
上述したように、テラヘルツ波発生装置10は、加熱されると3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する混成材料11と、混成材料11を加熱する加熱部12と、を備えるため、熱変性によるダメージを軽減させることが可能となる。さらに、テラヘルツ波発生装置10は、独立した機構となっているため、既存のドライヤの排気口に装着して使用することも可能である。
【0036】
また、テラヘルツ波発生装置10aは、ユーザの指示に基づいて、混成材料11が発生するテラヘルツ波の周波数帯域を選択して切り替える切替部13を更に備えることにより、用途に応じて周波数帯域を選択することが可能となる。例えば、髪が傷んでいる場合には修復モード(第1の周波数帯域)を選択し、急いでいる場合には速乾モード(第2の周波数帯域)を選択するというような使い分けができるため、利便性や顧客満足度を向上させることが可能となる。
【0037】
テラヘルツ波発生装置10を搭載したドライヤ1は、人間用のみならず、動物用(ペット用)としても使用することができる。また、ドライヤ1は、その温熱効果により、人間及び動物の血流改善用途で使用することもできる。ドライヤ1の各構成は、運用目的対象によってフレキシブルに最適なサイズ、レイアウトを構築することができる。
【0038】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ドライヤ
10,10a テラヘルツ波発生装置
11 混成材料
12 加熱部
20 吸気口
30 モータ
40 ファン
50 反射板
60 排気口
【要約】
【課題】熱変性によるダメージを軽減させる。
【解決手段】テラヘルツ波発生装置10は、加熱されると、3THzから21THzの周波数帯域を含むテラヘルツ波を発生する材料11と、材料11を加熱する加熱部12と、を備える。
【選択図】
図1