IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中川産業株式会社の特許一覧

特許7179303繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法
<>
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図1
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図2
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図3
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図4
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図5
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図6
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図7
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図8
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図9
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図10
  • 特許-繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/02 20060101AFI20221121BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20221121BHJP
   E04C 5/01 20060101ALI20221121BHJP
   E04C 5/08 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B28B23/02 A
E04G21/12 104C
E04C5/01
E04C5/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022035763
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2022-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211857
【氏名又は名称】中川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕茂
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬章
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-203762(JP,A)
【文献】実開平1-114728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 23/00
E04G 21/00
E04C
F16B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の金属板製定着片が着脱可能に衝合されており、前記各定着片にはその長手方向へ一定間隔で幅方向へ延びる複数の長穴が形成されて、これら各長穴間の板面領域が衝合方向とは反対方向へ半円形に膨出変形して係止半部となり、衝合状態の係止半部によって円形の内空間を有する少なくとも一つの円環状係止部が形成されている繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具。
【請求項2】
前記円環状係止部はその円環部が長手方向の同方向で内外方向へ傾斜している請求項1に記載の繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具。
【請求項3】
長尺の金属板にその長手方向へ一定間隔で幅方向へ延びる複数の長穴を設ける第1工程と、これら長穴間の板面領域を一方から押圧して他方へ半円形に膨出する少なくとも一つの係止半部を備える定着片を形成する第2工程と、前記定着片を一対用意して両者を前記係止半部が膨出しない側の板面で互いに着脱可能に衝合して、対向する前記係止半部によって円形の内空間を有する少なくとも一つの円環状係止部を形成する第3工程とを備える繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程は、前記長穴間の板面領域を一方から不均等に押圧して他方へ半円形に膨出しかつ膨出量が長手方向の同方向で一側縁から他側縁へ向け大きくなる少なくとも一つの係止半部を備える定着片を形成するものである請求項3に記載の繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレストレストコンクリート(PC)に使用する繊維強化樹脂製筋金棒体の定着具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCは、コンクリート中に緊張状態のPC鋼棒を位置させ、当該PC鋼棒の復元力によってコンクリートに圧縮力を付与してその強度を向上させたものである。この際、PC鋼棒を緊張させるためにその両端に定着具を装着し、当該定着具を介してPC鋼棒の端部をジャッキや反力台に結合して緊張力を与えている。このような定着具として従来は特許文献1に示されるようにスリーブ内にクサビを位置させたものや、特許文献2に示されるようなネジ構造のものが多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-126544
【文献】特開2005-188177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年はPC鋼棒に代えて繊維強化樹脂(FRP)製筋金棒体を使用する試みがあるが、従来のクサビを使用した定着具では、クサビの角部でFRP製筋金棒体の表面が傷つきやすい上にスリーブやクサビの構造が複雑で製造に手間取るという問題がある。また、従来のネジ構造を採用するのはFRP製の筋金棒体では困難であるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、FRP製筋金棒体の表面を傷つけることなく、構造及び製造が簡易で、FRP製筋金棒体を確実にジャッキや反力台に結合することが可能なFRP製筋金棒体の定着具およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明のFRP製筋金棒体の定着具は、長尺の金属板製定着片(1A,1B)が着脱可能に衝合されており、前記各定着片(1A,1B)にはその長手方向へ一定間隔で幅方向へ延びる複数の長穴(12)が形成されて、これら各長穴(12)間の板面領域(Y)が衝合方向とは反対方向へ半円形に膨出変形して係止半部(13)となり、衝合状態の前記係止半部(13)によって円形の内空間を有する少なくとも一つの円環状係止部(14)が形成されている。
【0007】
本第1発明において、各係止部の縮小開口縁が筋金棒体の外周に圧接するが、この圧接力は金属板部の弾性によるものであるから、金属板の厚みを適当に設定することによって過度に大きくなることが避けられ、FRP製筋金棒体の表面を傷つけることがない。このような係止具は従来のものに比して構造簡易である。
【0008】
本第2発明のFRP製筋金棒体の定着具では、前記円環状係止部(14)はその円環部が長手方向の同方向で内外方向へ傾斜している。
【0009】
本第2発明において、筋金棒体を緊張させると定着具には当該筋金棒体が抜け出す方向の力が作用するが、筋金棒体の外周に圧接した各係止部はその縮小開口縁がその開口径をさらに小さくするように変形し、その逆止作用によって上記筋金棒体の抜けが確実に防止される。
【0010】
本第3発明のFRP製筋金棒体の定着具の製造方法は、長尺の金属板(11)にその長手方向へ一定間隔で幅方向へ延びる複数の長穴(12)を設ける第1工程と、これら長穴(12)間の板面領域(Y)を一方から押圧して他方へ半円形に膨出する少なくとも一つの係止半部(13)を備える定着片(1,1A,1B)を形成する第2工程と、前記定着片(1,1A,1B)を一対用意して両者を前記係止半部(13)が膨出しない側の板面で互いに着脱可能に衝合して、対向する前記係止半部(13)によって円形の内空間を有する少なくとも一つの円環状係止部(14)を形成する第3工程とを備える。
【0011】
本第3発明の製造方法によれば、本第1発明の定着具をプレス機によって簡易に製造することができる。
【0012】
本第4発明のFRP製筋金棒体の定着具の製造方法では、前記第2工程は、前記長穴(12)間の板面領域(Y)を一方から不均等に押圧して他方へ半円形に膨出しかつ膨出量が長手方向の同方向で一側縁から他側縁へ向け大きくなる少なくとも一つの係止半部(13)を備える定着片(1,1A,1B)を形成するものである。
【0013】
本第4発明によれば、本第2発明の定着具をプレス機によって簡易に製造することができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、FRP製筋金棒体の表面を傷つけることがなく、構造及び製造が簡易であり、しかもFRP製筋金棒体を確実にジャッキや反力台に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】定着具の全体側面図である。
図2】金属板の全体平面図である。
図3】下型の型面を示す全体平面図である。
図4】下型の端面図である。
図5】上型の型面を示す全体平面図である。
図6】上型の全体側面図である。
図7】上型の端面図である。
図8】定着片の全体平面図である。
図9】定着片の全体側面図である。
図10】定着片の部分拡大斜視図である。
図11】定着片の部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1にはFRP製筋金棒体Rb(以下、単に筋金棒体という)の端部に装着された本発明の定着具Hの側面図を示す。定着具Hは上下一対の同形の定着片1A,1Bを対称形に衝合して構成されている。各定着片1はプレス成形によって製造される。すなわち、図2に示すように、定着片1の長さに等しい長尺の金属板11を用意し、これの一端部を除いた板面に、幅方向へ延びる矩形の長孔12を等間隔で必要数打ち抜き形成する。続いて、上記金属板11の長孔12を形成した領域Xの長さにほぼ等しい長さの金型によって、隣接する各長孔12間の板面領域Y(図2の斜線領域)を打ち出す。
【0019】
図3には金型を構成する下型2の平面図を示し、図4にはその端面図を示す。下型2の型面には幅方向中央に半円弧状の凹陥部21(図4)が形成されており、凹陥部21は長手方向へ上記板面領域Yに対応するように等間隔で複数(本実施形態では19個)形成されている。一方、図5には金型を構成する上型3の平面図を示し、図6にはその側面図を、図7にはその端面図を示す。なお、図6図7は上型3の使用時には上下が逆になる。上型3の型面には幅方向中央に半円弧状の突出部31(図7)が形成されており、突出部31は長手方向へ上記下型の凹陥部21に対応するように等間隔で形成されている。ここで、突出部31は凹陥部21に正確に対向する位置から長手方向の一方へややずれて位置させられている。
【0020】
このような下型2と上型3をプレス機に設置し、下型2と上型3間の所定位置へ供給された金属板11に対して、上型3の各突出部31を下型2の各凹陥部21内へ進入させることにより、金属板11の上記各板面領域Yが下方へ打ち出されて、膨出した係止半部13を備えた上記定着片1が成形される(図8図9)。このような定着片1の拡大斜視図を図10に示し、その拡大側面図を図11に示す。図10図11から明らかなように、定着片1の各係止半部13はその膨出量が一側縁131から他側縁132へ向け大きくなるように変形させられて、その半円周部が一方へ傾斜している。なお、図9図11は実際の成形時には上下が逆になっている。
【0021】
このようにして成形された定着片1を一対用意し、図1に示したように、これら定着片1A,1Bを、係止半部13が膨出しない側の板面で互いに対称形に衝合する。これにより、対向する各係止半部13によって、円形の内空間を有する係止部14が長手方向へ等間隔で形成された定着具Hが構成され、各係止部14はその円環部が長手方向の同方向で内外方向へ傾斜している。なお、各定着片1A,1Bには必要箇所に図略の取付穴が設けられており、衝合した状態で取付穴内に挿入されたボルトとナットによって着脱可能に結合される。また、定着片1A,1Bの一端板面にはジャッキ等に連結するための連結穴15が設けられている。
【0022】
定着具Hを使用する場合には、一対の定着片1A,1Bを分離し、図1に示すように各係止部14の拡大開口側から筋金棒体Rbの端部が挿入された状態でこれを定着片1A,1Bの間に位置させ、この状態で両定着片1A,1Bを結合する。このようにすると、各係止部14の縮小開口縁が筋金棒体Rbの外周に圧接するが、この圧接力は金属板部の弾性によるものであるから、金属板11の厚みを適当に設定することによって過度に大きくなることが避けられ、樹脂製の筋金棒体の損傷が防止される。
【0023】
この状態で、筋金棒体Rbを緊張させるべくジャッキ等から大きな引張り力が作用すると、筋金棒体Rbには定着具Hから抜け出す方向の力が作用するが、これに伴って筋金棒体Rbの外周に圧接した各係止部14はその縮小開口縁がその開口径をさらに小さくするように変形し、その逆止作用によって筋金棒体Rbの抜けは確実に防止される。
【0024】
このように本実施形態の定着具Hは、金属板11をプレス成形して簡易に製造できるとともに構造も簡単であり、しかも係止部14の筋金棒体Rbの外周への圧接は金属板部の弾性による適度なものとできるとともに係止部14の逆止変形によって筋金棒体Rbは定着具H内に確実に保持されてジャッキ等からの引張り力を確実に伝達することができる。
【0025】
なお、上記実施形態において、定着具Hに形成する係止部14の数は、筋金棒体Rbを緊張させるに必要な引張り力に応じて適宜増減させることができる。
また、上記実施形態において、係止部14の開口縁を筋金棒体Rbの外周に圧接させるだけで緊張させた筋金棒体の抜けを十分に防止できる場合には、係止部14の円環部を内外方向へ傾斜させず、平行な円環としても良い。
【符号の説明】
【0026】
1,1A,1B…定着片、11…金属板、12…長穴、13…係止半部、14…係止部、Y…板面領域。
【要約】
【課題】FRP製筋金棒体の表面を傷つけることなく、構造及び製造が簡易で、FRP製筋金棒体を確実にジャッキや反力台に結合することが可能なFRP製筋金棒体の定着具を提供する。
【解決手段】長尺の金属板製定着片1A,1Bが着脱可能に衝合されており、各定着片1A,1Bにはその長手方向へ一定間隔で幅方向へ延びる複数の長穴12が形成されて、これら各長穴12間の板面領域Yが衝合方向とは反対方向へ半円形に膨出変形して係止半部13となり、衝合状態の係止半部13によって円形の内空間を有する少なくとも一つの円環状係止部14が形成されており、円環状係止部14はその円環部が長手方向の同方向で内外方向へ傾斜している。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11