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  • 特許-発泡樹脂成形体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】発泡樹脂成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20221121BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20221121BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20221121BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20221121BHJP
   B29K 401/00 20060101ALN20221121BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C44/58
B29C45/00
B29C45/26
B29K401:00
B29K67:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022058343
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-03-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504418028
【氏名又は名称】小松 道男
(73)【特許権者】
【識別番号】517301368
【氏名又は名称】株式会社カミーノ
(73)【特許権者】
【識別番号】505458876
【氏名又は名称】株式会社ティーエヌ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100210675
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 潤
(72)【発明者】
【氏名】小松 道男
(72)【発明者】
【氏名】深澤 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝康
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 44/58
B29C 45/00
B29C 45/26
B29K 401/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む発泡樹脂射出成形体であって、
前記発泡樹脂射出成形体に対する前記バイオマス粒子の含有量が1~70質量%の範囲であり、
表面が波紋状又は樹木の年輪状の外観を呈し、
当該発泡樹脂射出成形体の変形量が、発泡成形直後の当該発泡樹脂射出成形体の5%以下であり、
当該発泡樹脂射出成形体の成形体肉厚t≧2.5mmであ ることを特徴とする発泡樹脂射出成形体。
【請求項2】
請求項1に記載された発泡樹脂射出成形体において、前記熱可塑性樹脂が生分解性樹脂を含むことを特徴とする発泡樹脂射出成形体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された発泡樹脂射出成形体において、前記熱可塑性樹脂がポリ乳酸を含むことを特徴とする発泡樹脂射出成形体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載された発泡樹脂射出成形体において、前記バイオマス粒子がセルロース粉を含むことを特徴とする発泡樹脂射出成形体。
【請求項5】
バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む発泡樹脂射出成形体の製造方法であって、
前記バイオマス粒子の含有量が1~70質量%の範囲である熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程、
溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物と、前記熱可塑性樹脂組成物の0.01~0.2質量%の範囲の超臨界流体を混合する混合工程、
前記混合工程で得られた前記超臨界流体を含む前記熱可塑性樹脂組成物を射出成形する射出成形工程を含み、
前記射出成形工程において下記式(1)及び(2)で示される条件が満たされることを特徴とする発泡樹脂射出成形体の製造方法。
金型のゲート幅X/成形体幅X≧17.4% (1)
金型のゲート肉厚t/成形体肉厚t≦20%、かつt≧2.5mm (2)
【請求項6】
請求項5に記載された発泡樹脂射出成形体の製造方法であって、前記超臨界流体が超臨界状態の窒素である、発泡樹脂射出成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された発泡樹脂射出成形体の製造方法であって、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物が金型キャビティ内で渦を形成する、発泡樹脂射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂等の熱可塑性樹脂を、取り扱いが容易な超臨界流体を発泡剤として使用して発泡させる生分解性樹脂発泡体の製造方法が検討されてきた。例えば、特許文献1には、生分解性樹脂組成物を、超臨界流体を用いて発泡させてなる発泡体が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、木粉含有熱可塑性樹脂組成物に超臨界状態の流体を含浸させ、キャビティの容積を拡大させながら射出成形して、平均孔径が異なる複数の発泡層を有する木粉含有樹脂成形体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-131703号公報
【文献】特開2011-5811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、生分解性樹脂発泡体等の熱可塑性樹脂発泡体の外観は考慮されてこなかった。また、熱可塑性樹脂発泡体は発泡成形後に収縮し、変形する場合があった。
【0006】
近年、美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体が希求されていたが、そのような熱可塑性樹脂発泡体は提供されていなかった。本発明が解決しようとする課題は、美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、バイオマス粒子を含む熱可塑性樹脂組成物と超臨界流体の混合物を、特定条件を満たすゲートを備える金型を用いて射出成形して製造される熱可塑性樹脂発泡体が、本発明の上記課題を解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む発泡樹脂射出成形体であって、前記発泡樹脂射出成形体に対する前記バイオマス粒子の含有量が1~70質量%の範囲であり、表面が波紋状又は樹木の年輪状の外観を呈し、当該発泡樹脂射出成形体の変形量が、発泡成形直後の当該発泡樹脂射出成形体の5%以下であり、当該発泡樹脂射出成形体の成形体肉厚t≧2.5mmである発泡樹脂射出成形体である。
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは生分解性樹脂を含む。
前記熱可塑性樹脂は、好ましくはポリ乳酸を含む。
前記バイオマス粒子は、好ましくはセルロース粉を含む。
【0009】
さらに本発明は、バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む発泡樹脂射出成形体の製造方法であって、前記バイオマス粒子の含有量が1~70質量%の範囲である熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程、溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物と、前記熱可塑性樹脂組成物の0.01~0.2質量%の範囲の超臨界流体を混合する混合工程、前記混合工程で得られた前記超臨界流体を含む前記熱可塑性樹脂組成物を射出成形する射出成形工程を含み、前記射出成形工程において下記式(1)及び(2)で示される条件が満たされる発泡樹脂射出成形体の製造方法である。
金型のゲート幅X1/成形体幅X≧17.4% (1)
金型のゲート肉厚t1/成形体肉厚t≦20%、かつt≧2.5mm (2)
前記超臨界流体は、好ましくは超臨界状態の窒素である。
溶融している前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは金型キャビティ内で渦を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡樹脂成形体は、美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体を提供できる。また、本発明の発泡樹脂成形体の製造方法は、美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の発泡樹脂成形体の製造に用いる射出成形装置の一実施態様を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について更に詳細に説明する。
[発泡樹脂成形体]
本発明の発泡樹脂成形体はバイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む。
<バイオマス粒子>
本発明において、バイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源であって化石資源を除いた物質である。本発明で使用されるバイオマスとして、例えば以下のものが挙げられる。
(1)資源作物
資源作物は、資源としての利用を目的に栽培されたバイオマスである。資源作物として、例えば米、トウモロコシ、いも類等由来の澱粉、サトウキビ、てんさい等由来の糖質が挙げられる。
(2)未利用バイオマス
未利用バイオマスは、資源として利用されずに廃棄されたバイオマスである。未利用バイオマスとして、例えば林地残材、木粉等の林産資源、稲わら、もみ殻、麦わら等の農産資源が挙げられる。
(3)廃棄物系バイオマス
廃棄物系バイオマスは、廃棄物として発生しているバイオマスである。廃棄物系バイオマスとして、例えば家畜排泄物等の畜産資源、加工残渣、生ごみ、動植物性残渣等の食品資源、パルプ廃液等の産業資源、製材工場残材、製紙工場残材、建築廃材等の林業資源、下水汚泥が挙げられる。
【0013】
本発明のバイオマス粒子は、前記バイオマスが粉砕等により粒子にされたものである。前記バイオマス粒子は、好ましくはセルロース粉を含む。前記セルロース粉は、林地残材、稲わら、もみ殻、麦わら、紙片等のセルロースを含むバイオマスが粉砕等により粒子にされたものであり、例えば木粉、稲わら粉、もみ殻粉、麦わら粉が挙げられる。
【0014】
前記バイオマス粒子の平均粒子径は、好ましくは1~1000μmの範囲であり、より好ましくは10~500μmの範囲である。
【0015】
本発明の発泡樹脂成形体に対する前記バイオマス粒子の含有量は1~70質量%の範囲である。当該含有量が1質量%未満であると、発泡樹脂成形体の表面に波紋が形成されない。また、当該含有量が70質量%より多いと、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高すぎて、発泡成形が困難になる。
【0016】
<熱可塑性樹脂>
本発明で使用される熱可塑性樹脂は特定の熱可塑性樹脂に限定されない。本発明で使用される熱可塑性樹脂として、例えば以下の熱可塑性樹脂が挙げられる。
(1)ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解性樹脂、
(2)低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの共重合体などの各種のポリオレフィン系樹脂、
(3)ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)などの塩素含有樹脂、
(4)テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、パーフルオロエチレンプロペン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂などのフッ素含有樹脂、
(5)エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の、(1)~(4)に示される付加系熱可塑性樹脂以外の付加系熱可塑性樹脂、
(6)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン11、メタキシリレンアジパミド(mXD6)、ヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、及びそれらの共重合体などの各種のポリアミド系樹脂、
(7)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、ポリメチレンテレフタレート(PMT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート(PEOB)、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、及び共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル(生分解性ポリエステルを除く)、液晶ポリエステルなどの各種のポリエステル系樹脂、
(8)ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等の、(6)及び(7)に示される縮合系熱可塑性樹脂以外の縮合系熱可塑性樹脂。
これらの熱可塑性樹脂の少なくとも1種が使用されてよい。
【0017】
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは生分解性樹脂を含み、より好ましくはポリ乳酸を含む。
【0018】
<その他の添加剤>
本発明の発泡樹脂成形体は、前記バイオマス粒子と前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物に、必要に応じて充填剤、難燃剤、酸化防止剤、透明化剤、可塑剤、帯電防止剤、相溶化剤、核剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、結合剤、アンチブロッキング剤、滑剤、中和剤、結晶化促進剤、着色剤、防水剤、撥水剤、抗菌剤、防曇剤、耐衝撃性強化剤等の、発泡成形用樹脂組成物に添加される通常の添加剤を添加して、後述する射出成形により成形されて得られる。
【0019】
上記充填剤として、例えばガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、Al、マイカ、黒鉛、炭素繊維、フェライト、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、タルク、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。
【0020】
上記難燃剤として、例えば塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。
上記酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の発泡樹脂成形体の表面は波紋状又は樹木の年輪状の外観を呈する。当該外観は発泡樹脂成形体毎に異なり、同一の模様は再現されないから、本発明の発泡樹脂成形体は多様な美観を呈し、その経済的価値は一層高くなる。さらに本発明の発泡樹脂成形体の外観は、視覚を通じてリラックス効果を与えられる。
【0022】
<発泡樹脂成形体の変形量>
本発明の発泡樹脂成形体の変形量は、発泡成形直後の当該発泡樹脂成形体の厚みの5%以下である。ここで、本発明の発泡樹脂成形体の変形量は、成形直後における当該発泡樹脂成形体と、成形直後から24時間経過後における当該発泡樹脂成形体を、三次元測定機で測定して算出される。三次元測定機として市販のものを使用できる。
【0023】
[発泡樹脂成形体の製造方法]
本発明の発泡樹脂成形体の製造方法は、前記バイオマス粒子と前記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。当該溶融混練工程に使用される装置として、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、押出機等が挙げられる。さらに本発明の発泡樹脂成形体の製造方法は、溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物と超臨界流体を混合する混合工程を含む。
【0024】
<超臨界流体>
前記超臨界流体は、好ましくは超臨界状態の窒素、及び超臨界状態の二酸化炭素の少なくとも1つを含み、より好ましくは超臨界状態の窒素を含む。前記熱可塑性樹脂組成物と混合される超臨界流体の含有量は、前記熱可塑性樹脂組成物の0.01~0.2質量%の範囲である。当該含有量が0.01質量%未満であると、成形体の発泡倍率が小さく、成形体の表面に波紋状又は樹木の年輪状の模様が形成されないおそれがある。また、当該含有量が0.2質量%を超えると、成形体の発泡倍率が大きくなり、発泡体中の気泡が均一にならない。
【0025】
本発明の発泡樹脂成形体の製造方法は、前記混合工程で得られた前記超臨界流体を含む前記熱可塑性樹脂組成物を射出成形する射出成形工程を含む。当該射出成形工程において下記式(1)及び(2)で示される条件が満たされる。
【0026】
金型のゲート幅X/成形体幅X≧17.4% (1)
金型のゲート肉厚t/成形体肉厚t≦20%、かつt>1.2mm (2)
ここで、X、X、t、及びtは、発泡成形直後に三次元測定機で測定される。
【0027】
本発明の発泡樹脂成形体の製造方法は、例えば図1に示す射出成形装置11を用いて実施されてよい。
【0028】
図1に示す射出成形装置11は、シリンダー12と、シリンダー12により熱可塑性樹脂が射出される金型13とを備えている。シリンダー12は、モータ14により回転駆動される回転軸部15を内部に備えると共に、熱可塑性樹脂及びバイオマス粒子を供給するホッパー16と、超臨界状態の流体を供給する超臨界流体供給部17とを備えている。
【0029】
ホッパー16はシリンダー12の金型13と反対側の端部付近に備えられ、超臨界流体供給部17はホッパー16の下流側でシリンダー12の中央部付近に備えられている。超臨界流体供給部17は、超臨界状態の流体を発生させる超臨界流体発生装置18と、超臨界流体発生装置18で発生された超臨界状態の流体をシリンダー12に向けて搬送する流体導管19と、流体導管19の途中に介装された計量装置20とを備える。流体導管19は遮断弁21を介してシリンダー12に接続されている。
【0030】
また、シリンダー12は、金型13側の先端にノズル22を備えると共に、外周面に複数の加熱装置23aを備えている。ノズル22は、外周面に加熱装置23bを備えると共に、遮断弁24を介して金型13に接続されている。
【0031】
回転軸15は、金型13と反対側の端部でモータ14に接続されると共に、外周面に設けられた螺旋状のスクリュー25と、金型13側の最先端部に設けられたスクリューヘッド26とを備えている。スクリュー25は、基端側連続スクリュー25aと、不連続スクリュー25bと、先端側連続スクリュー25cとからなる。
【0032】
基端側連続スクリュー25aは、モータ14側の端部から、ホッパー16の下部を通って超臨界流体供給部17の下部の手前までの部分に設けられている。また、不連続スクリュー25bは、超臨界流体供給部17の下方部分に設けられ、回転軸15の周方向に沿って複数の不連続部を備えている。そして、先端側連続スクリュー25cは、不連続スクリュー25bとスクリューヘッド26との間に設けられている。
【0033】
金型13は、発泡樹脂成形体1の外側形状に沿う形状を備える固定型28と、固定型28に嵌合されてキャビティ29を形成する可動型31を備える。固定型28は、シリンダー12に連通するスプルー32と、スプルー32に連通すると共に、ゲート33を介してキャビティ29に連通するランナー34を備えている。
【0034】
射出成形装置11では、まず、ホッパー16からシリンダー12内に、前記熱可塑性樹脂を投入する。前記熱可塑性樹脂は、シリンダー12内で加熱装置23aの加熱下に連続スクリュー25aで攪拌されることにより溶融し、溶融樹脂を形成する。
【0035】
次に、ホッパー16からシリンダー12内に、前記バイオマス粒子を投入する。前記バイオマス粒子の投入量は、前記熱可塑性樹脂組成物に対する前記バイオマス粒子の含有量が1~70質量%となる範囲である。前記バイオマス粒子は、予め前記熱可塑性樹脂と混合してペレットとしておき、該ペレットをホッパー16からシリンダー12内に投入するようにしてもよい。
【0036】
前記バイオマス粒子は、シリンダー12内で加熱装置23aの加熱下に連続スクリュー25aで攪拌されることにより、前記溶融樹脂に均一に混合され、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物が形成される。前記のように形成されたバイオマス粒子を含有する溶融した熱可塑樹脂組成物は、連続スクリュー25aにより、金型13方向に搬送される。
【0037】
次に、超臨界流体供給部17から、前記熱可塑性樹脂組成物の0.01~0.2質量%の範囲の超臨界状態の流体を供給し、加圧下に該熱可塑性樹脂組成物に含浸する。前記超臨界流体としては、二酸化炭素又は窒素を用いることができる。前記超臨界流体は好ましくは超臨界状態の窒素である。
【0038】
前記超臨界状態の流体は、超臨界流体供給部17の下方部分に設けられた不連続スクリュー25bにより攪拌され、前記熱可塑性樹脂組成物と十分に混合され、含浸せしめられる。この結果、スクリューヘッド26とノズル22との間のシリンダー12内に、前記熱可塑性樹脂組成物に前記超臨界状態の流体が含浸せしめられる。このとき、前記熱可塑性樹脂組成物は、発泡のための核が未形成の状態にある。
【0039】
次に、前記超臨界状態の流体が含浸せしめられた前記熱可塑性樹脂組成物をノズル22から、スプルー32、ランナー34、ゲート33を介してキャビティ29に射出する射出成形工程が実施される。
【0040】
前記射出成形工程において、下記式(1)及び(2)で示される条件が満たされる。
金型のゲート幅X/成形体幅X≧17.4% (1)
金型のゲート肉厚t/成形体肉厚t≦20%、かつt>1.2mm (2)
ここでX、X、t、及びtは、射出成形直後に発泡樹脂成形体を三次元測定機で計測して測定される。
【0041】
前記射出成形工程において、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはゲート33を介してキャビティ29内で渦を形成するように射出される。当該渦が形成されるためには、例えばゲート33における、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物の流動方向と、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物の、ゲート33近傍のキャビティ29内の流動方向を平行にする(図1中の矢印を参照)。
【0042】
ゲート33における、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物の流動方向と、溶融している前記熱可塑性樹脂組成物の、ゲート33近傍のキャビティ29内の流動方向を平行である場合、前記熱可塑性樹脂組成物がゲート33を介してキャビティ29内で渦が形成され、本発明の発泡樹脂成形体に特有の波紋状又は樹木の年輪状の外観が形成されやすくなる。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
パルプからなる紙粉(粒子径25~200μm)30質量%とポリ乳酸(ユニチカ株式会社製テラマックTE-2000)70質量%からなる原料を、押出成形機(日本製鋼所製TEX440αIII)でペレット化し、次いで射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX360、型締力360t)と超臨界流体供給装置(Trexel Inc.社製MuCell Series-II-trj-10)と金型(大同特殊鋼株式会社製プリハードン鋼NAK80)を使用して、金型温度30℃、加熱シリンダー温度210℃、充填圧力80MPa、射出速度50mm/sec、成形サイクル70sec、熱可塑性樹脂組成物中の超臨界状態の窒素の含有量0.2質量%の条件で射出成形した。波紋が射出成形された発泡樹脂平板の表面に形成されていた。成形直後の発泡樹脂平板を三次元測定機(株式会社ミツトヨ製CRYSTA-Apex V500)で測定し、当該発泡樹脂平板の成形体幅X、成形体肉厚t、金型のゲート幅X、及び金型のゲート肉厚tを計測した。前記発泡樹脂成形体の変形量を、成形直後から24時間経過後、前記三次元測定機で計測した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
成形体肉厚tを表1に示すように変更して、表面に波紋が形成された平板を射出成形した以外、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
杉木粉(粒子径1~1000μm)70質量%とポリ乳酸(ユニチカ株式会社製テラマックTE-2000)30質量%からなる原料を、押出成形機(日本製鋼所製TEX440αIII)でペレット化し、次いで射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX360、型締力360t)と超臨界流体供給装置(Trexel Inc.社製MuCell Series-II-trj-10)と金型(大同特殊鋼株式会社製プリハードン鋼NAK80)を使用して、金型温度30℃、加熱シリンダー温度210℃、充填圧力100MPa、射出速度70mm/sec、成形サイクル90sec、熱可塑性樹脂組成物中の超臨界状態の窒素の含有量0.2質量%の条件で射出成形した。波紋が射出成形された発泡樹脂筐体の表面に形成されていた。成形直後の発泡樹脂筐体を三次元測定機(株式会社ミツトヨ製CRYSTA-Apex V500)で測定し、当該発泡樹脂筐体の成形体幅X、成形体肉厚t、金型のゲート幅X、及び金型のゲート肉厚tを計測した。前記発泡樹脂成形体の変形量を、成形直後から24時間経過後、前記三次元測定機で計測した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
成形体肉厚tを表1に示すように変更して、発泡樹脂平板を射出成形した以外、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示す。当該平板の表面に波紋は形成されていなかった。
【0048】
比較例2
杉木粉(粒子径1~1000μm)70質量%とポリ乳酸(ユニチカ株式会社製テラマックTE-2000)30質量%からなる原料を、押出成形機(日本製鋼所製TEX440αIII)でペレット化し、次いで射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX360、型締力360t)と超臨界流体供給装置(Trexel Inc.社製MuCell Series-II-trj-10)と金型(大同特殊鋼株式会社製プリハードン鋼NAK80)を使用して、金型温度30℃、加熱シリンダー温度210℃、充填圧力50MPa、射出速度50mm/sec、成形サイクル60sec、熱可塑性樹脂組成物中の超臨界状態の窒素の含有量0.2質量%の条件で射出成形した。射出成形された発泡樹脂筐体の表面に波紋は形成されていなかった。成形直後の発泡樹脂筐体を三次元測定機(株式会社ミツトヨ製CRYSTA-Apex V500)で測定し、当該発泡樹脂筐体の成形体幅X、成形体肉厚t、金型のゲート幅X、及び金型のゲート肉厚tを計測した。前記発泡樹脂筐体の変形量を、成形直後から24時間経過後、前記三次元測定機で計測した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
金型のゲート肉厚t/成形体肉厚tが大きすぎる比較例1の発泡樹脂成形体、金型のゲート肉厚t/成形体肉厚tが大きすぎ、かつ金型のゲート幅X/成形体幅Xが小さすぎる比較例2の発泡樹脂成形体は共に、表面に波紋が形成されているものではなく、これらの変形量は大きかった。
一方、上記式(1)及び(2)で示される条件が満たされる実施例1~3の発泡樹脂成形体は、波紋状の美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されているものであった。
【符号の説明】
【0051】
11・・・射出成形装置、13・・・金型、29・・・キャビティ、32・・・スプルー、
33・・・ゲート、34・・・ランナー。
【要約】
【課題】美麗な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡樹脂成形体が、バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含み、この発泡樹脂成形体に対するこのバイオマス粒子の含有量が1~70質量%の範囲であり、表面が波紋状又は樹木の年輪状の外観を呈し、この発泡樹脂成形体の変形量が、発泡成形直後のこの発泡樹脂成形体の5%以下である。バイオマス粒子と熱可塑性樹脂を含む発泡樹脂成形体の製造方法が、バイオマス粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する工程と、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物と超臨界流体を混合する工程と、射出成形工程を含み、金型のゲートと発泡樹脂成形体の寸法が特定の条件を満たす。
【選択図】なし
図1