(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】チェアリフト用救助装置
(51)【国際特許分類】
A62B 1/18 20060101AFI20221121BHJP
A62B 1/00 20060101ALI20221121BHJP
B61B 11/00 20060101ALI20221121BHJP
B61K 13/04 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A62B1/18 Z
A62B1/00 A
B61B11/00 Z
B61K13/04
(21)【出願番号】P 2018166476
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】林 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充良
(72)【発明者】
【氏名】清水 匠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 潤
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3065040(JP,U)
【文献】実開平03-005449(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0075907(US,A1)
【文献】特開2017-217272(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105980652(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00-5/00
B61B 11/00
B61K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在な救助ポールと、該救助ポールの先端部に設けられ索条に掛止するフックと、救助ロープを備えて前記フックから吊下される降下装置と、前記救助ロープに取り付けられた救助ベルトと、を備え、
前記フックは、前記救助ポールの先端部側面に取り付けられ
側方に突出する取付け部を有し、前記取付け部には前記降下装置を吊下するための吊下部が形成され、前記取付け部から前記救助ポールの軸方向側に向けて斜め上方に延びて略U字
形状に折れ曲がるように形成され、
該略U字形状の部分は、前記救助ポールを垂直に立てたときに前記救助ポールに対して斜め下方に開口するように形成され、該開口から前記索条が挿入されることで前記索条を掛止するように構成されたことを特徴とするチェアリフト用救助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェアリフトが停電や故障などにより運行不能になった場合に、線路中で停止した搬器から乗客を地上へ下ろすためのチェアリフト用救助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェアリフトは、椅子式の搬器を索条から吊下し、主には傾斜地において山麓側と山頂側の停留場間を搬器が循環移動して人員の輸送を行う索道輸送設備である。チェアリフトにおいては、地上から離れた高い位置で人員を輸送するため、停電や故障等により設備が停止してこれが長期化する場合には、空中に停止した各搬器から乗客を地上へ降下させ救助する必要がある。従来このような場合の救助装置としては、先端に逆U字状のフックを有する長尺のポールに降下具を取り付けて、このポールのフックを索条に掛止し、降下具に巻き掛けた救助ロープにより乗客を降下させる救助装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の救助装置は、以下のように構成されている。この救助装置は、救助フックと、このフックに連結する棒体と、フックに吊下する応急降下用具と、この応急降下用具に備えた降下ロープとからなっている。救助フックは、鋼線を逆U字状に形成されたものであり、一側端部が外向きに屈曲した形状となっており、一方、他端は延長して延長部を形成し、この端部に掛止金具を固着して棒体を連結するようにしている。また、フック延長部の中間部には掛止金具が固着されており、ここへ応急降下用具が吊下される。
【0004】
以上の構成により、搬器の乗客を降下させる作業は以下のようにして行われる。まず、搬器の下方から救助員は、棒体の基端側を操作して搬器の進行側の索条に棒体の他端側に備えた救助フックを掛止する。このときに応急降下用具に備えた降下ロープの端部が乗客近くに吊下され、この降下ロープの端部に備えた装着ベルトを乗客が体に装着した後、乗客が降下ロープ側へと乗り移る。降下ロープの他端側は、救助員により支持されており、救助員が降下ロープを繰り出すことにより乗客が緩やかに降下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような救助装置は、応急降下用具がある程度の重量を有するものであり、棒体も10数メートルになるため全体として相当な重量となり、救助員に相応の負担を強いていた。特にフックを索条に掛止するに際しては、重量の集中したフック側を立ち起こして索条に掛止するので、このときの操作性の良さが要求されていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、乗客の救助に際して救助員にとって操作性の良いチェアリフト用救助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、伸縮自在な救助ポールと、該救助ポールの先端部に設けられ索条に掛止するフックと、救助ロープを備えて前記フックから吊下される降下装置と、前記救助ロープに取り付けられた救助ベルトと、を備え、
前記フックは、前記救助ポールの先端部側面に取り付けられ側方に突出する取付け部を有し、前記取付け部には前記降下装置を吊下するための吊下部が形成され、前記取付け部から前記救助ポールの軸方向側に向けて斜め上方に延びて略U字形状に折れ曲がるように形成され、
該略U字形状の部分は、前記救助ポールを垂直に立てたときに前記救助ポールに対して斜め下方に開口するように形成され、該開口から前記索条が挿入されることで前記索条を掛止するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、救助ポールを垂直に立てたときにフックの形状が救助ポールに対して斜め下方へ開口する略U字形状となるようにしているので、斜め方向からの救助作業に際して、フックを索条に掛止することが容易になり、救助ポールの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、救助装置の正面図である。救助装置10は、大別して救助ポール11と、フック12と、降下装置13と、救助ベルト16とからなっている。救助ポール11は、中空の円筒体を入れ子状に組み合わせ、長手方向に伸縮自在になっており、先端部はフック12と連結される。
【0012】
フック12は、鋼板により略U字形状に形成されており、救助ポール11と連結される側はやや長く延出した形状であり、この端部側方には中空円筒形状の連結部材18が溶着されており、この側方には降下装置13を吊下するための孔19が形成されている。一方、反対側端部は外側方向へ屈曲した形状に形成されており、全体としてフック12の形状は、救助ポール11に連結されて垂直に立てられた状態において、救助ポール11に対して斜め下方に開口する形状となっている。また、U字形状の円弧部内側には、ゴム材で形成された滑り止め20を嵌着している。
【0013】
上記したように、フック12には降下装置13が吊下される。降下装置13は、救助ロープ14を備えており、この救助ロープ14の移動速度が一定速度以上にならないように構成されている。救助ロープ14の両端には、カラビナ等の連結器15を連結し、一方の連結器15には、救助ベルト16が連結される。救助ベルト16は環状の帯体であり、上部には吊下リング21を備えるとともに、下部には弾力性のあるパット17を備え、さらに中間部には、二枚の帯体を掛合させるとともに、帯体に沿ってスライドすることにより環状部分の大きさを調整する締め金具22を備えている。
【0014】
図2は、救助ポール11とフック12との連結部の拡大図である。救助ポール11とフック12とは、継手23を介して連結されている。継手23は、エーテル系ウレタン等の可塑性樹脂で成形されており、両端はそれぞれ救助ポール11と連結部材18の内径に合致する円柱状に形成されており、中間部はそれより大きな径であって救助ポール11の端部と連結部材18との間に挟み込まれるようになっている。図に示すように継手23の両端には、救助ポール11と連結部材18とが外嵌され、ボルト24により継手23をそれぞれに固着することによって、救助ポール11と連結部材18とは可塑性を有して連結されている。
【0015】
図3は、救助装置10を用いて行う救助の説明図である。まず、チェアリフトが停止すると救助員33、34は、乗客32が搭乗している搬器30の下方へ救助装置10を運び、各器具を
図1の状態に組み付ける。つづいて救助員33、34は、救助ポール11を索条31の高さに適合するように伸長させた後、救助ポール11を立ち上げて救助ベルト16が乗客32の前方になる位置でフック12を索条31に掛止する。
【0016】
次に、搬器30に着座している乗客32に救助ロープ14先端の救助ベルト16を胸部に装着してもらうとともに、救助ベルト16が胸部に密着するように締め金具22を調整してもらう。救助員34は、乗客32が救助ベルト16を装着したことを確認した後、救助ロープ14を引っ張って救助ロープ14の弛みを無くし、ゆっくりと座席から腰をずらして離れるように乗客32へ指示する。この後救助員34は、救助ロープ14を緩やかに繰り出して乗客32を地上へ降下させ救助する。救助終了後、救助員33、34は、フック12を索条31から取り外し、救助装置10を次の救助を行う搬器30の位置まで運搬して同様に乗客32の救助を行う。
【0017】
一般的に、上記のような救助方法においては、索条31の側方から救助ポール11を斜めに立ち上げてフック12を索条31に掛止して救助するのが通常である。このような状況において、本救助装置10は、フック12の形状を救助ポール11に対して斜め下方へ開口するU字形状としているので、斜め方向からの救助作業に際して、フック12を索条31に掛止することが容易になり、救助ポール11の操作性が向上する。また、フック12と救助ポール11とは、可塑性材の継手23を介して連結されているので、フック12を索条31に掛止するときにフック12の位置が多少ずれていても、継手23が変形してこれを吸収することができるので、上記と同様にフック12を索条31に掛止することが容易になり、救助ポール11の操作性が向上する。
【符号の説明】
【0018】
10 救助装置
11 救助ポール
12 フック
13 降下装置
14 救助ロープ
15 連結器
16 救助ベルト
17 パット
18 連結部材
19 孔
20 滑り止め
21 吊下リング
22 締め金具
23 継手
24 ボルト
30 搬器
31 索条
32 乗客
33 救助員
34 救助員