(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20221121BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61N1/39
A61M25/00 510
(21)【出願番号】P 2018187304
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017192399
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514283054
【氏名又は名称】株式会社ニューロシューティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508060(JP,A)
【文献】特表2002-501402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除細動用電圧が印加される少なくとも2本の高圧電線を含む複数の線を可撓性管状体に巻き付けて構成したカテーテルであって、
前記複数の線は、前記高圧電線の間に配置される介在線を含
み、
前記介在線は、前記除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線である、カテーテル。
【請求項2】
除細動用電圧が印加される少なくとも2本の高圧電線を含む複数の線と、可撓性管状体と、を備えるカテーテルであって、
前記可撓性管状体の外周面には、所定の深さを有する溝が螺旋状に設けられており、
前記複数の線は、前記高圧電線の間に配置される介在線を含み、前記溝に埋設されて
おり、
前記介在線は、前記除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線である、カテーテル。
【請求項3】
前記中圧電線は、隣接する前記高圧電圧が断線した場合に、除細動用電圧が印加される高圧電線として使用可能である、請求項
1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記中圧電線の径は、他の線の径と同一である、請求項
1から3の何れか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
除細動用電圧が印加される1本の高圧電線と接地線とを含む複数の線を可撓性管状体に巻き付けて構成したカテーテルであって、
前記複数の線は、前記高圧電線と前記接地線の間に配置される介在線を含む、カテーテル。
【請求項6】
除細動用電圧が印加される1本の高圧電線と接地線とを含む複数の線と、可撓性管状体と、を備えるカテーテルであって、
前記可撓性管状体の外周面には、所定の深さを有する溝が螺旋状に設けられており、
前記複数の線は、前記高圧電線と前記接地線の間に配置される介在線を含み、前記溝に埋設されている、カテーテル。
【請求項7】
前記介在線は、樹脂材料からなる絶縁線である、請求項
5又は6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記介在線は、電源に接続されていない無接続電線である、請求項
5又は6に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記介在線は、信号を検出するための信号検出線である、請求項
5又は6に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒトや動物の血管内に挿入されるカテーテルが使用されている。現在においては、可撓性管状体の周囲に複数の線を巻き付けて構成した多重巻き線構造のカテーテルが提案され、実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
多重巻き線構造を有するカテーテルにおいては、各線に絶縁層を形成することにより絶縁を実現させているが、カテーテル全体の太さを考慮すると、絶縁層は必要最小限に薄くする必要がある。カテーテルの末端側に配置される電極によって生体からの信号を検出する場合には、生体から発生する細胞電位が-70mVから30mVであることから、絶縁層は薄くても問題はない。
【0004】
一方、カテーテルを用いて生体へと電気パルス信号を提供する場合には、比較的高い電圧(例えば心房細動をサイナスリズムへ復帰させる場合には±400V)のパルス電圧を加える必要がある(例えば、非特許文献1及び2参照)。その際、薄い絶縁層では絶縁耐圧が不足するため、
図12に示すように、除細動用電圧(例えば±400V)を加える電線100に厚い絶縁層110を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6144824号公報
【文献】S Mark Sopher、外6名、「Low energy internal cardioversion of atrial fibrillation resistant to transthoracic shocks」、Heart (1996)、第75号、p635-638、インターネット<URL: http://heart.bmj.com/content/75/6/635>
【文献】E Alt、外5名、「Efficacy of a new balloon catheter for internal cardioversion of chronic atrial fibrillation without anaesthesia」、Heart (1998)、第79号、p128-132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、
図12に示すように、厚い絶縁層110を設けた除細動用の電線100は他の電線200よりも径が大きくなる(すなわち太くなる)ため、柔軟性が損なわれてしまう。そうすると、このような太い電線100を巻いたカテーテルもまた柔軟性を欠いたものとなるため、カテーテルを複雑な血管形状に追従させることが困難になる虞がある。また、太さが違う電線100・200を巻くことで、カテーテルの外周面に段差S(凹凸)が生じてしまうことから、カテーテルを血管内に挿入する際にこの段差Sが血管の内壁に引っ掛かったり、電線100・200にほつれが生じたりする虞があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、除細動機能を有する多重巻き線構造のカテーテルにおいて、柔軟性を確保しつつ、外周面に段差が生じるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る第一のカテーテルは、除細動用電圧が印加される少なくとも2本の高圧電線を含む複数の線を可撓性管状体に巻き付けて構成したカテーテルであって、複数の線は、高圧電線の間に配置される介在線を含むものである。また、本発明に係る第二のカテーテルは、除細動用電圧が印加される少なくとも2本の高圧電線を含む複数の線と、可撓性管状体と、を備えるカテーテルであって、可撓性管状体の外周面には、所定の深さを有する溝が螺旋状に設けられており、複数の線は、高圧電線の間に配置される介在線を含み、溝に埋設されているものである。また、本発明に係る第三のカテーテルは、除細動用電圧が印加される1本の高圧電線と接地線とを含む複数の線を可撓性管状体に巻き付けて構成したカテーテルであって、複数の線は、高圧電線と接地線の間に配置される介在線を含むものである。また、本発明に係る第四のカテーテルは、除細動用電圧が印加される1本の高圧電線と接地線とを含む複数の線と、可撓性管状体と、を備えるカテーテルであって、可撓性管状体の外周面には、所定の深さを有する溝が螺旋状に設けられており、複数の線は、高圧電線と接地線の間に配置される介在線を含み、溝に埋設されているものである。
【0009】
かかる構成を採用すると、除細動用電圧(例えば±400V)が印加される高圧電線の間に介在線が配置されることにより、高圧電線同士が直接的に接触することを防ぐことができる。従って、絶縁耐圧を上げるために高圧電線の絶縁層を厚くする必要がなくなるため、カテーテルの柔軟性を確保することができる。また、高圧電線の径を、他の線の径に近付ける(又は他の線の径と同一にする)ことができるので、カテーテルの外周面に段差(凹凸)が生じるのを抑制することができる。
【0010】
本発明に係るカテーテルにおいて、樹脂材料からなる絶縁線を介在線として採用することができる。
【0011】
かかる構成を採用すると、樹脂材料からなる絶縁線を介在線として高圧電線の間に配置しているため、高圧電線同士を効果的に絶縁することができる。
【0012】
本発明に係るカテーテルにおいて、電源に接続されていない無接続電線を介在線として採用することができる。
【0013】
かかる構成を採用すると、電源に接続されていない無接続電線を介在線として利用しているため、絶縁線を別途調製する必要がない。
【0014】
本発明に係るカテーテルにおいて、信号を検出するための信号検出線を介在線として採用することができる。
【0015】
かかる構成を採用すると、信号を検出するための信号検出線を介在線として有効利用しているため、絶縁線を別途調製する必要がない。
【0016】
本発明に係るカテーテルにおいて、除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線を介在線として採用することができる。
【0017】
かかる構成を採用すると、除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線を介在線として高圧電線の間に配置しているため、高圧電線の絶縁耐圧を半分にすることができる。
【0018】
本発明に係るカテーテルにおいて、中圧電線に隣接する高圧電圧が断線した場合に、除細動用電圧が印加される高圧電線として中圧電線を使用することができる。
【0019】
かかる構成を採用すると、中圧電線に隣接する高圧電圧が断線した場合においても、中圧電線に除細動用電圧を印加する(中圧電線を高圧電線として機能させる)ことができる。
【0020】
本発明に係るカテーテルにおいて、介在線として採用される絶縁線、無接続電線、信号検出線又は中圧電線の径を、他の線の径と同一にすることができる。
【0021】
かかる構成を採用すると、介在線として採用される絶縁線、無接続電線、信号検出線又は中圧電線の径を、他の線の径と同一にするため、カテーテルの外周面に段差(凹凸)が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、除細動機能を有する多重巻き線構造のカテーテルにおいて、柔軟性を確保しつつ、外周面に段差が生じるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るカテーテルの全体構成を説明するための構成図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るカテーテルのチューブの構成を説明するための拡大側面図(部分断面図を含む)である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るカテーテルの電極配置を説明するための説明図(
図1のIII部分の拡大図)である。
【
図4】心電信号検出用の差動増幅回路を示す図である。
【
図6】
図3に示す電極配置において出力端子からパルス信号を出力した際に入力端子で検出された信号波形を示す図である。
【
図7】カテーテルの電極配置の他の例を示す拡大図である。
【
図8】
図7に示す電極配置において出力端子からパルス信号を出力した際に入力端子で検出された信号波形を示す図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係るカテーテルの電極配置の他の例を説明するための拡大図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係るカテーテルのチューブの構成を説明するための斜視図(部分断面図を含む)である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係るカテーテルのチューブの断面図である。
【
図12】従来の除細動機能を有する多重巻き線構造のカテーテルの構成を説明するための拡大側面図(一部断面図を含む)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0025】
<第一実施形態>
まず、
図1~
図9を用いて、本発明の第一実施形態に係るカテーテル1の構成について説明する。本実施形態に係るカテーテル1は、除細動機能を有するものであって、
図1に示すように、多重巻き線構造を有するチューブ2と、チューブ2に連結されたハンドル3と、チューブ2の外周に設けられた第1DC電極群40及び第2DC電極群50と、を備えている。
【0026】
チューブ2は、
図2に示すように、可撓性管状体2aと、可撓性管状体2aの外周に螺旋状に巻き付けられる複数の線(電線10及び絶縁線20)と、を有している。可撓性管状体2aは、非導電性材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料)で構成された可撓性を有する管状の部材であり、その内部には図示されていない内腔が形成されている。
【0027】
可撓性管状体2aの外周に螺旋状に巻き付けられる電線10には、
図2に示すように、除細動用電圧(例えば±400V)が印加される高圧電線11が少なくとも2本含まれている。本実施形態においては、高圧電線11の直径を、他の電線10の直径と同一に設定している。電線10(高圧電線11を含む)の外周には、ポリエステルイミドやポリアミドイミド等の樹脂材料からなる絶縁膜10a(11a)が形成されている。電線10(高圧電線11を含む)の径や絶縁膜10a(11a)の厚さは、カテーテル1の仕様等に応じて適宜設定することができる。例えば、電線10(高圧電線11)の直径を0.24mmに設定した場合には、絶縁膜10a(11a)の厚さを0.017mmに設定することができる。
【0028】
可撓性管状体2aの外周に螺旋状に巻き付けられる絶縁線20は、
図2に示すように、2本の高圧電線11の間に配置されることにより高圧電線11同士が直接的に接触することを防ぐものであり、本発明における介在線として機能する。絶縁線20は、ナイロンやポリウレタン等の樹脂材料から構成されており、その径は、電線10の径と同一に設定されている。なお、本実施形態においては、
図2に示すように、高圧電線11と他の電線10の間にも絶縁線20を配置して、高圧電線11と他の電線10とが直接的に接触することを防いでいる。
【0029】
ハンドル3は、
図1に示すように、コネクタ4を介してチューブ2の近位端に取外し可能に連結されており、チューブ2の遠位端を折り曲げるように操縦するための図示されていないスタイレット等の操縦要素を収納するように構成されている。操縦要素は、チューブ2を構成する可撓性管状体2aの内腔内に収納される。
【0030】
第1DC電極群40及び第2DC電極群50は、ヒト又は動物の心臓内部において、心房を挟む位置に配置される。第1DC電極群40及び第2DC電極群50は、
図1に示すように、いずれも複数の電極41から構成されており、心房を挟む位置に配置された際に、除細動用のエネルギが一箇所に集中しないようにしている。
【0031】
ここで、
図3~
図9を用いて、第1DC電極群40の電極配置について説明する。なお、第2DC電極群50の電極配置は、第1DC電極群40の電極配置と同様であるので説明を省略する。
【0032】
第1DC電極群40は、
図3に示すように、複数のリング状電極41を有している。複数のリング状電極41のうち一部は、除細動用のエネルギを加えるために使用され、複数のリング状電極41のうち残りは、心臓内部の心電信号を検出するための入力端子(例えば第一入力端子42a及び第二入力端子42b)及び出力端子(例えば第一出力端子43a及び第二出力端子43b)として使用される。
【0033】
本実施形態においては、
図4に示すような差動増幅回路を使用して心電信号を検出することとしている。このため、第一入力端子42aと第二入力端子42bの間に大きな電位変化が生じると、回路内に過大な入力が印可され、回路が飽和したり破損等が生じたりする可能性があるため、保護回路等が考慮されている。しかし、回路内に過大な入力が一度印可されると、第一入力端子42aと第二入力端子42bの間の電位が過大入力前の状態になるまでの間、正しく心電信号を検出することはできない。
【0034】
そこで、本実施形態においては、
図3に示すように第一入力端子42aと第二入力端子42bとを隣接させるようにし、第一入力端子42aと第二入力端子42bの間に除細動用のリング状電極41を配置しないようすることにより、確実に心電信号を検出することを可能としている。
図6は、
図5に示すようなバイフェージック出力回路を用いて、第一出力端子43a及び第二出力端子43bからパルス信号を出力した際の第一入力端子42aと第二入力端子42bの間に検出された信号波形を示したものである。
図6に示されるように、バイフェージックの信号波形が正しく検出されていることがわかる。
【0035】
なお、
図7に示すように、第一入力端子42aと第二入力端子42bの間に第二出力端子43bを配置した場合には、
図8に示すような信号波形が検出される。この例では、検出電極(入力端子42a、42b)に出力信号の影響が入り、リンギング等のノイズが発生し、バイフェージックの信号波形が正しく検出されないことがわかる。このため、二つの入力端子42a、42bの間に出力端子43bを配置する(
図7)のではなく、二つの入力端子42a、42bを隣接させる(
図3)ことが好ましい。なお、
図9に示すように、二つの入力端子42a、42bの間に回路上のリファレンス端子(接地端子)44を配置すると、出力端子43a、43bからの干渉を抑制することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係るカテーテル1の使用方法について説明する。
【0037】
まず、カテーテル1のチューブ2をヒト又は動物の血管に挿入し、チューブ2の外周に設けられた第1DC電極群40及び第2DC電極群50を心臓内部に到達させ、これら第1DC電極群40及び第2DC電極群50を、心房を挟む位置に配置する。次いで、これら電極群40・50の各入力端子及び各出力端子を用いて、心臓内部の心電信号を検出する。また、状況に応じて、電極群40・50に設けられた除細動用のリング状電極41を用いて心臓に除細動用電圧を加える。このように、本実施形態に係るカテーテル1は、心臓内部の心電信号をモニタリングしつつ除細動機能を果たすものである。
【0038】
以上説明した実施形態に係るカテーテル1においては、除細動用電圧(例えば±400V)が印加される高圧電線11の間に絶縁線(介在線)20が配置されることにより、高圧電線11同士が直接的に接触することを防ぐことができる。従って、絶縁耐圧を上げるために高圧電線11の絶縁層11aを厚くする必要がなくなるため、カテーテル1の柔軟性を確保することができる。また、高圧電線11の径を、他の電線10の径と同一にすることができるので、カテーテル1の外周面に段差(凹凸)が生じるのを抑制することができる。
【0039】
また、以上説明した実施形態に係るカテーテル1においては、樹脂材料からなる絶縁線20を介在線として高圧電線11の間に配置しているため、高圧電線11同士を効果的に絶縁することができる。
【0040】
<第二実施形態>
次いで、
図10等を用いて、本発明の第二実施形態に係るカテーテルの構成について説明する。本実施形態に係るカテーテルは、第一実施形態に係るカテーテル1におけるチューブ2の構成を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に共通である。このため、第一実施形態と異なる構成を中心に説明し、第一実施形態と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0041】
本実施形態に係るカテーテルは、第一実施形態と同様に除細動機能を有するものであって、
図10に示すようなチューブ2Aを備えている。チューブ2Aには、第一実施形態と同様のハンドル3(
図1参照)が連結されており、チューブ2Aの外周には、第一実施形態と同様の第1DC電極群40及び第2DC電極群50(
図1参照)が設けられている。ハンドル3、第1DC電極群40及び第2DC電極群50については、第一実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0042】
チューブ2Aは、
図10及び
図11に示すように、可撓性管状体2Aaと、複数の線(電線10及び絶縁線20)と、を有している。可撓性管状体2Aaは、第一実施形態と同様に非導電性材料で構成された可撓性を有する管状の部材であり、その内部には、
図11に示すように内腔2Abが形成されている。可撓性管状体2Aaの外周面には、
図10及び
図11に示すように所定の深さを有する溝2Acが螺旋状に設けられている。溝2Acには、
図10及び
図11に示すように、複数の線(電線10及び絶縁線20)が埋設される。このため、溝2Acの深さは、電線10(絶縁線20)の直径と略同一の寸法に設定されている。
【0043】
本実施形態における可撓性管状体2Aaの内腔2Abの内部には、
図11に示すように、可撓性管状体2Aaの内周面を被覆して形状を維持するためのブレード2Adが設けられている。ブレード2Adは、金属等の材料で構成することができる。また、本実施形態における可撓性管状体2Aaの外側(溝2Acに埋設された電線10及び絶縁線20の外側)は、
図10及び
図11に示すように、非導電性材料から構成される外皮2Aeで被覆される。
【0044】
電線10は、第一実施形態におけるものと同様である。すなわち、電線10には、除細動用電圧(例えば±400V)が印加される高圧電線11が少なくとも2本含まれている。高圧電線11の直径は他の電線10の直径と同一にされており、電線10(高圧電線11を含む)の外周には絶縁膜が形成されている。電線10(高圧電線11を含む)の径や絶縁膜の厚さは、カテーテルの仕様等に応じて適宜設定することができる。絶縁線20は、第一実施形態におけるものと同様である。すなわち、絶縁線20は、2本の高圧電線11の間に配置されることにより高圧電線11同士が直接的に接触することを防ぐものであり、本発明における介在線として機能する。絶縁線20は樹脂材料から構成されており、その径は電線10の径と同一に設定されている。
【0045】
以上説明した実施形態に係るカテーテルにおいては、除細動用電圧(例えば±400V)が印加される高圧電線11の間に絶縁線(介在線)20が配置されることにより、高圧電線11同士が直接的に接触することを防ぐことができる。従って、絶縁耐圧を上げるために高圧電線11の絶縁層を厚くする必要がなくなるため、カテーテルの柔軟性を確保することができる。また、高圧電線11の径を、他の電線10の径と同一にすることができるので、カテーテルの外周面に段差(凹凸)が生じるのを抑制することができる。
【0046】
また、以上説明した実施形態に係るカテーテルにおいては、樹脂材料からなる絶縁線20を介在線として高圧電線11の間に配置しているため、高圧電線11同士を効果的に絶縁することができる。
【0047】
なお、以上の各実施形態においては、高圧電線11間に配置される介在線として、樹脂材料からなる絶縁線20を採用した例を示したが、介在線として他の線を採用することもできる。例えば、介在線として、電源に接続されていない無接続電線を採用することができる。このように電源に接続されていない無接続電線を介在線として利用すると、絶縁線を別途調製する必要がない。この際、無接続電線の径を他の線の径と同一に設定すると、カテーテル1の外周面に段差(凹凸)が生じることを抑制することができるため好ましい。
【0048】
また、介在線として、信号を検出するための信号検出線を採用することもできる。このように信号を検出するための信号検出線を介在線として有効利用すると、絶縁線を別途調製する必要がない。この際、信号検出線の径を他の線の径と同一に設定すると、カテーテル1の外周面に段差(凹凸)が生じることを抑制することができるため好ましい。なお、介在線として信号検出線を利用する場合には、高圧電線11への除細動電圧の印加と、信号検出線への電圧の印加と、を同時に行うことはない。
【0049】
また、介在線として、除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線を採用することができる。このように除細動用電圧の中間電位に設定される中圧電線を介在線として高圧電線11の間に配置すると、高圧電線11の絶縁耐圧を半分にすることができる。この際、中圧電線の径を他の線の径と同一に設定すると、カテーテル1の外周面に段差(凹凸)が生じることを抑制することができるため好ましい。また、中圧電線に隣接する高圧電線11のうち何れか一方が断線した場合に、除細動用電圧が印加される高圧電線11として中圧電線を使用することができる。
【0050】
また、以上の各実施形態においては、±400Vの除細動用電圧が印加される2本の高圧電線11を採用した例を示したが、このような2本の高圧電線11に代えて、800Vの除細動用電圧が印加される1本の高圧電線と、接地線と、を採用することもできる。かかる場合には、1本の高圧電線と接地線の間に介在線(例えば絶縁線20)を配置し、高圧電線に介在線を接触させるようにする。このようにすると、絶縁耐圧を上げるために高圧電線の絶縁層を厚くする必要がなくなるとともに、高圧電線の径を他の電線の径と同一にすることができるので、カテーテルの柔軟性を確保することができるとともに、カテーテルの外周面に段差(凹凸)が生じるのを抑制することができる。
【0051】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…カテーテル
2a・2Aa…可撓性管状体
2Ac…溝
10…電線
11…高圧電線
20…絶縁線(介在線)