(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】水性美爪料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221121BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20221121BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/87
A61Q3/02
(21)【出願番号】P 2018216904
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】須▲崎▼ 清子
(72)【発明者】
【氏名】福尾 英敏
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116893(JP,A)
【文献】特表2010-515720(JP,A)
【文献】特表2007-534774(JP,A)
【文献】特開2017-118880(JP,A)
【文献】特開2004-269497(JP,A)
【文献】特開2002-284629(JP,A)
【文献】特開2010-235580(JP,A)
【文献】特開2006-321756(JP,A)
【文献】特開2017-202983(JP,A)
【文献】特開2016-141639(JP,A)
【文献】特開2000-239120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での損失正接(tanδ)が1.0~7.0である、水性美爪料組成物
であって、
水性美爪料組成物が、塗膜形成成分及び流動性調整剤を含有し、
塗膜形成成分が、80nm以下の粒子径においてピークを有する粒子径分布を示し、かつガラス転移温度が20~45℃の樹脂エマルジョンであり、
流動性調整剤が、疎水変性ポリウレタン及びカルボキシビニルポリマーを含む、水性美爪料組成物。
【請求項2】
粘度が100~400mPa・sである、請求項1に記載の水性美爪料組成物。
【請求項3】
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での損失正接(tanδ)が1.0~7.0である、
ことを確認することを含む、塗膜を形成することなく水性美爪料組成物のレベリングを評価する方法。
【請求項4】
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での貯蔵弾性率(G’)を1.5~10.0Paとし、
測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での損失正接(tanδ)を1.0~7.0とする、
水性美爪料組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性美爪料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着したりしてこれに装飾を施すというネイルアートの人気が高まっている。また、装飾や、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強の目的で、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料を爪に塗布することもなされている。
【0003】
装飾又は補強のために使用される爪装飾材料としては、ニトロセルロース系のラッカーを有機溶剤に溶解し、これに各種色調の顔料を加えたものがある。これらは、爪や人工爪に塗布した後、有機溶剤を揮発させて、光沢に優れた塗膜を形成するものである。そして、この塗膜はアセトン等の有機溶剤を用いて容易に拭き取ることができる。
しかし、この種の爪装飾材料は、有機溶剤を含むため、使用時に揮発する有機溶剤を、使用者が直接吸引するおそれがある。また、形成される塗膜は強靭な塗膜とはなり得ず、擦れ、衝撃等の刺激により容易に剥離してしまうおそれがある。
【0004】
揮発性有機溶剤を含まない爪装飾材料として、塗膜形成成分と、着色顔料等とを含む水性美爪料組成物が知られている。しかしながら、塗り感やレベリング(塗膜表面に塗布スジが生じない等)と、顔料の沈降抑制という、互いに両立させることが困難な特性を備える水性美爪料組成物を得ることは困難である。
また、水性美爪料組成物において、レベリング評価を行う際には、その都度水性美爪料組成物を塗布して塗膜を形成して行う必要があり、塗膜形成前に、迅速かつ煩雑な作業をしなくても容易にレベリング評価を行う方法が求められていた。
しかも、レベリング評価は、官能試験に頼っていることから、個人差が生じたり再現性に欠けたりするものであり、塗布前にレベリング評価を客観的に行うことができる水性美爪料組成物についてはいまだ知られていなかった。
【0005】
特許文献1には、爪にも適用し得る長期装着化粧料組成物において、長期装着化粧料組成物が、25℃及び1Hzの固定振動数における線形粘弾性領域にて、100~500×103Pa(0.0001~0.5MPa)の粘弾性率(G’)、約0.1~約1.0の損失正接(tanδ)を有するものであることが記載されている。この長期装着化粧料組成物としては、具体的にリップカラー又はリップグロスに係る例が記載されているだけである。
【0006】
特許文献2には、マニキュア組成物において、組成物の皮膜が、30℃及び20Hzで0.5以上のタンジェントデルタ(tgδ;tanδ)を有し、30℃及び0.1Hzで1MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上の貯蔵弾性率を有するものである、マニキュア組成物が記載されている。
しかしながら、皮膜形成前のマニキュア組成物自体についての損失正接や貯蔵弾性率については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについても記載されていない。
【0007】
特許文献3には、ネイルエナメルにおいて、ネイルエナメルの塗膜が、23℃及び20Hzで0.5~1.6の減衰力tgδ(tanδ)及び300MPa未満、好ましくは100MPa未満、さらに好ましくは80MPa未満の貯蔵弾性率を有するものである、ネイルエナメルが記載されている。
しかしながら、塗膜形成前のネイルエナメル自体についての損失正接や貯蔵弾性率については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについても記載されていない。
【0008】
特許文献4には、平滑板に塗布して形成される乾燥皮膜の貯蔵弾性率E’が1×105~5×107Pa(0.1~50MPa)、正接損失(損失正接)tanδが0.5以下である化粧料が記載されている。
しかしながら、この化粧料を水性美爪料組成物とすることについては記載されておらず、ファンデーションに係る具体例が記載されているだけであるし、乾燥皮膜形成前の化粧料自体についての貯蔵弾性率や損失正接については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについても記載されていない。
【0009】
特許文献5には、酸化チタンと、アルカリ可溶型アクリル樹脂と、増粘剤と、を含有する水系美爪料組成物であって、経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、撹拌することで容易に再分散可能であり、粘度の上昇を抑制し、使用性、塗布性能に優れたものが記載されている。しかしながら、この水性美爪料組成物自体についての貯蔵弾性率や損失正接については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについては記載されていない。
【0010】
特許文献6には、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルションなどのスチレン共重合体と、非イオン性界面活性剤と、1,2-アルカンジオールと、粘土鉱物及び/又は水溶性多糖類と、着色顔料とを含む水性美爪料組成物が記載されている。しかしながら、この水性美爪料組成物自体についての貯蔵弾性率や損失正接については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについては記載されていない。
【0011】
特許文献7には、粒子径分布が80nm以下においてピークを有し、かつガラス転移温度が20~45℃のアクリル樹脂系エマルジョンと、1,2-オクタンジオールを0.15~4.50質量%含有する水性美爪料組成物が記載されている。この水性美爪料組成物自体についての貯蔵弾性率や損失正接については何ら記載されていない。また、レベリング評価を塗膜形成前に行うことについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2007-534774号公報
【文献】特開2004-269497号公報
【文献】特開2004-035561号公報
【文献】特開2002-284629号公報
【文献】特開2011-140449号公報
【文献】特開2009-190995号公報
【文献】特開2016-141639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記各特許文献に記載されている水性美爪料組成物は、成膜性、光沢、塗り感及びレベリングの点をすべて満たすとともに、顔料を含む場合において、経時的に顔料の沈降が発生しない水性美爪料組成物ではない。一般に、レベリングと顔料沈降抑制は、互いに相反する特性であることから、これらの両立を可能とすることは、水性美爪料組成物において極めて重要なことである。
【0014】
また、これまでは、水性美爪料組成物のレベリング評価は、その都度水性美爪料組成物を塗布して塗膜を形成して行う必要がある。しかも、レベリング評価は、官能試験に頼っていることから、個人差が生じたり再現性に欠けたりするものであり、塗布前にレベリング評価を客観的に行うことができる水性美爪料組成物についてはいまだ知られていない。
【0015】
本発明は、上記従来技術の課題等を解決するためになされたものであって、成膜性、光沢、塗り感及びレベリングのすべての点で優れるとともに、レベリングと顔料沈降抑制とを両立させることで顔料を含む場合であっても経時的に顔料の沈降が発生せず、客観的なレベリング評価を塗膜形成前に行うことができる水性美爪料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、貯蔵弾性率及び損失正接がそれぞれ特定の範囲である水性美爪料組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
項1:貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0である、水性美爪料組成物。
項2:粘度が100~400mPa・sである、項1に記載の水性美爪料組成物。
項3:前記水性美爪料組成物が、塗膜形成成分及び流動性調整剤を含有する、項1又は2に記載の水性美爪料組成物。
項4:前記塗膜形成成分が、80nm以下の粒子径においてピークを有する粒子径分布を示し、かつガラス転移温度が20~45℃の樹脂エマルジョンである、項3に記載の水性美爪料組成物。
項5:前記流動性調整剤が、疎水変性ポリウレタン及び/又はカルボキシビニルポリマーを含む、項3又は4に記載の水性美爪料組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成膜性、光沢、塗り感及びレベリングのすべての点で優れるとともに、レベリングと顔料沈降抑制とを両立させることで顔料を含む場合であっても経時的に顔料の沈降が発生せず、客観的なレベリング評価を塗膜形成前に行うことができる水性美爪料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る水性美爪料組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュアのように爪の表面に被覆を行うためのものであり、使用者自身の爪の表面を必要に応じてサンディングする等して凹凸がある表面に被覆してもよく、また必要に応じて、着色剤等を添加して下塗りして得た下塗り層の上に被覆してもよく、さらに本発明に係る水性美爪料組成物から形成してなる層の上に上塗り層を形成してもよい。また本発明に係る水性美爪料組成物自体を下塗り層用や上塗り層用の美爪料組成物とすることもできる。
【0019】
本発明に係る水性美爪料組成物を下塗り層(ベースコート)として使用するときには、一般的には、ほぼ透明又は僅かに黄色の色調のものとして用いられるが、場合により微量の紫や青の着色剤を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することができる。
本発明の水性美爪料組成物は、着色剤を含有させることにより、ソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に着色される着色層(カラーコート)として使用することができる。
【0020】
本発明の水性美爪料組成物を上塗り層(トップコート)として使用するときには、下塗り層(ベースコート)として用いる場合と同様に、ほぼ透明又は僅かに黄色の色調のものとして用いられるが、場合により微量の紫や青の着色剤を配合して、経時劣化による色調の変化を防止してもよい。最上層であることから、爪表面の美感のために艶を発揮させることが必要である。
いずれの層用として使用する場合であっても、乾燥後少なくとも3日間、欠けたり、剥がれたりすることなく、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生しないことが必要である。
【0021】
以下に本発明の水性美爪料組成物の一実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
本発明の水性美爪料組成物は、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0である。本発明者らは、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)に係るデータを収集し分析した結果、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0である場合には、レベリングがよく顔料の沈降を抑制できることを見出した。これにより、水性美爪料組成物のレベリングを、その都度塗膜を形成することなく客観的に評価することが可能となった。
また、水性美爪料組成物は、粘度が100~400mPa・sであることが好ましい。
【0023】
[貯蔵弾性率]
本発明における水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)は、動的粘弾性パラメータであって、線形粘弾性体に振動的(周期的)な歪みまたは力を与えた場合に観測される弾性率である。
本発明における水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)は、水性美爪料組成物を、粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000:Thermo Fisher Scientific社製)を用い、測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での測定値である。
本発明の水性美爪料組成物は、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、好ましくは1.5~9.0Pa、より好ましくは1.5~8.0Pa、最も好ましくは2.0~7.0Paである。
貯蔵弾性率(G’)が1.5Pa未満であると、水性美爪料組成物の弾性力が低すぎるため、水性美爪料組成物が顔料を含有する場合に経時的に顔料の沈降が発生するおそれがある。
貯蔵弾性率(G’)が10.0Paを超えると、水性美爪料組成物の弾性力が高すぎるため、水性美爪料組成物の塗膜形成後の流動性が悪くなりレベリングの点で問題が生じるおそれがある。
【0024】
[損失正接]
本発明における水性美爪料組成物の損失正接(tanδ)は、動的粘弾性パラメータであって、貯蔵弾性率(G’)に対する損失弾性率(G”)の比(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)である。線形粘弾性体に振動的(周期的)な歪みまたは力を与えた場合に観測される弾性率である。
本発明における水性美爪料組成物の損失正接(tanδ)は、水性美爪料組成物を、粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000:Thermo Fisher Scientific社製)を用い、測定温度20℃、歪み0.05degreeの条件で測定した際の、角速度9.22(rad/s)での測定値である。
本発明の水性美爪料組成物は、損失正接(tanδ)が1.0~7.0であり、好ましくは1.0~6.0、より好ましくは1.0~5.0、最も好ましくは1.5~4.0である。
損失正接(tanδ)が1.0未満であると、水性美爪料組成物に弾性(固体)の性質が強く出ることから、水性美爪料組成物の塗膜形成後の流動性が悪くなりレベリングの点で問題が生じるおそれがある。
損失正接(tanδ)が7.0を超えると、粘性(液体)の性質の性質が強く出ることから、水性美爪料組成物が顔料を含有する場合に経時的に顔料の沈降が発生するおそれがある。
【0025】
(粘度)
本発明における水性美爪料組成物の粘度は、粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000:Thermo Fisher Scientific社製)を用い、測定温度20℃、ずり速度1000s-1の条件で測定した際に100~400mPa・sであることが好ましい。
粘度が100mPa・s未満であると、粘度が低くなりすぎて塗り感が悪くなったり、水性美爪料組成物が顔料を含有する場合に経時的に顔料の沈降が発生したりするおそれがある。
粘度が400mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎて塗り感が悪くなったり、塗膜形成後の流動性が悪くなりレベリングの点で問題が生じたりするおそれがある。
【0026】
[水性美爪料組成物の組成]
本発明の水性美爪料組成物は、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0である限り、その組成は特に限定されない。
水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整する手法としては、例えば、水性美爪料組成物中に含有される各種成分の種類や配合量を調整する方法が一般的であるが、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を所定の範囲にし得る方法であれば特に限定されない。
【0027】
特に、適切な塗膜形成成分の選択及び/又はその含有量の調整、適切な流動性調整剤(増粘剤、溶剤、成膜助剤・可塑剤等)の選択及び/又はその含有量の調整、適切な顔料の選択及び/又はその含有量(顔料濃度)の調整、適切な顔料分散剤の選択及び/又はその含有量の調整等の方法の1種又は2種以上を組み合わせ、水性美爪料組成物を構成することが好ましい。
【0028】
本発明において、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0となる水性美爪料組成物としては、塗膜形成成分及び流動性調整剤を含有するものであることが好ましい。また、前記塗膜形成成分及び流動性調整剤に加え、水性美爪料組成物の添加剤として使用可能である成分、例えば顔料等の「その他の成分」が含有されていてもよい。
以下、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0となる水性美爪料組成物の好ましい例を説明する。
【0029】
<塗膜形成成分>
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい塗膜形成成分としては、水性美爪料組成物において塗膜形成成分としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでもよい。特に、樹脂成分を塗膜形成成分として用いることが好ましい。
塗膜形成成分として樹脂成分を用いる場合、適切な樹脂成分の選択やその含有量を調整することにより、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を容易に調整することができる。
【0030】
樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、スチレン樹脂系、塩化ビニル樹脂系、塩化ビニリデン樹脂系、フッ素樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、ビニルアルコール樹脂系、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂系、スチレン-アクリル共重合体樹脂系、合成ゴム系、コアシェル重合体樹脂系、ブロック重合体樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、アルキッド樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリシロキサン樹脂系、ポリエーテル樹脂系、エポキシ樹脂系等の樹脂があげられるが特に限定されない。これらの樹脂は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0031】
例えば、水性美爪料組成物の塗膜形成成分として用いられる樹脂の重量平均分子量を調整することで、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができ、樹脂成分の分子量を増大させることで、貯蔵弾性率(G’)の値を増大させることができる。
例えば、水性美爪料組成物中に親水性の樹脂と疎水性の樹脂とを組み合わせて含有させることにより、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができる。
また、樹脂成分の配合量を増減させることにより、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができる。
【0032】
これらの樹脂成分としては、粒子、溶液又はエマルジョン等のいずれか1以上の形態で、水性美爪料組成物に配合される。
これらのうち、水性美爪料組成物の成膜性、塗り感、塗膜強度等の点や、貯蔵弾性率(G’)調整の容易性及び/又は損失正接(tanδ)調整の容易性等の点から、エマルジョンを用いることが好ましい。
【0033】
エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂系エマルジョン、ポリオレフィン樹脂系エマルジョン、スチレン樹脂系エマルジョン、塩化ビニル樹脂系エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂系エマルジョン、フッ素樹脂系エマルジョンエマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、ビニルアルコール樹脂系エマルジョン、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂系エマルジョン、スチレン-アクリル共重合体樹脂系エマルジョン、合成ゴム系エマルジョン、コアシェル重合体樹脂系エマルジョン、ブロック重合体樹脂系エマルジョン、ポリウレタン樹脂系エマルジョン、ポリエステル樹脂系エマルジョン、アルキッド樹脂系エマルジョン、ポリアミド樹脂系エマルジョン、ポリシロキサン樹脂系エマルジョン、ポリエーテル樹脂系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン等があげられるが特に限定されない。これらの樹脂エマルジョンは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0034】
これらの中でも、アクリル樹脂系エマルジョンが好ましく用いられる。
アクリル樹脂系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸のエステルを単量体成分として含む共重合体である樹脂のエマルジョンである。そのような共重合体である樹脂を構成する単量体としては以下の親水性単量体及び疎水性単量体からなるものがあげられる。
【0035】
親水性単量体としては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基、グリシジル基又はポリオキシアルキレン基含有エチレン性単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のエチレン性アミド;アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N,N-トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N,N-トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性アミン又はその塩等があげられる。これら親水性単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
疎水性単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノ及びジビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート等のフッ素系単量体、シリコーンマクロモノマー等があげられる。これら疎水性単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明の水性美爪料組成物に塗膜形成成分として含有されていてもよいアクリル樹脂系エマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体系エマルジョン、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル-スチレン共重合体系エマルジョン等が特に好ましく、硬度や光沢の点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル-スチレン共重合体系エマルジョンがより好ましい。
本発明の水性美爪料組成物にアクリル樹脂系エマルジョンが含有される場合、1種のアクリル樹脂系エマルジョンが含有されていてもよく、2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンが含有されていてもよい。2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンが含有される場合には、ガラス転移温度や平均粒子径が互いに異なる2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンが含有されることが好ましい。
【0038】
本発明の水性美爪料組成物において含有されていてもよいアクリル樹脂系エマルジョンとしては、粒子径分布が80nm以下においてピークを有し、かつガラス転移温度が20~45℃のアクリル樹脂系エマルジョンを含むものが好ましく、中でもガラス転移温度が35℃以下のアクリル樹脂系エマルジョンを含むものがより好ましく、粒子径分布が55nm以下においてピークを有することがさらに好ましい。なお、粒子径分布が80nm以下においてピークを有しているものであれば、80nmを超える粒子径においてもピークを有するようなアクリル樹脂系エマルジョンを使用することもできる。
【0039】
なお、粒子径分布が80nm以下とは、アクリル樹脂系エマルジョンの樹脂粒子の粒子径毎の含有量の分布を作成したときに、その含有量が最大の粒子径が80nm以下であることを指す。
このようなアクリル樹脂系エマルジョンとしては、ジュリマーET-410(東亞合成社製商品名)、TOCRYL BCX-3101(トーヨーケム社製商品名)、TOCRYL BCX-6202(トーヨーケム社製商品名)又はTOCRYL BCX-6020(トーヨーケム社製商品名)が好ましく使用され、これらの2種以上を用いることがより好ましい。
【0040】
本発明の水性美爪料組成物において2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンを含有する場合において、これらのアクリル樹脂系エマルジョンのうち、ガラス転移温度が最も高い高Tgアクリル樹脂系エマルジョンとしては、好ましくはガラス転移温度が35~45℃、さらに好ましくは37~44℃であり、平均粒子径が40~55nm、好ましくは45~52nmである。また、これらのアクリル樹脂系エマルジョンのうち、ガラス転移温度が最も低い低Tgアクリル樹脂系エマルジョンとしては、ガラス転移温度が20~35℃、好ましくは22~30℃であり、平均粒子径が80~100nm、好ましくは85~95nmである。
本発明において2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンが使用される場合には、ガラス転移温度が高く平均粒子径が小さいアクリル樹脂系エマルジョンと、ガラス転移温度が低く平均粒子径が大きいアクリル樹脂系エマルジョンとを含むものが好ましい。
【0041】
本発明の水性美爪料組成物において使用される塗膜形成成分の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。塗膜形成成分の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して10~60質量%であり、好ましくは20~40質量%、より好ましくは25~35質量%である。樹脂溶液や樹脂エマルジョンを塗膜形成成分として用いる場合には、樹脂分が前記塗膜形成成分の含有量となるように用いることが好ましい。
【0042】
塗膜形成成分の含有量が水性美爪料組成物全体に対して10質量%未満であると、貯蔵弾性率(G’)が低くなりすぎる、損失正接(tanδ)が大きくなりすぎる、十分に塗膜を形成できず成膜性が悪化する等の場合がある。
塗膜形成成分の含有量が水性美爪料組成物全体に対して60質量%を超えると、貯蔵弾性率(G’)が高くなりすぎる、損失正接(tanδ)が小さくなりすぎる、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感が悪化する等の場合がある。
【0043】
なお、塗膜形成成分として2種以上のアクリル樹脂系エマルジョンを用いる場合、その樹脂分全体に対する平均粒子径が最も小さいアクリル樹脂系エマルジョン由来の樹脂成分の含有比率が30~90質量%、平均粒子径が最も大きいアクリル樹脂系エマルジョン由来の樹脂成分の含有比率が10~70質量%となるようにすることが好ましい。
【0044】
<流動性調整剤>
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい流動性調整剤としては、水性美爪料組成物において流動性調整機能を発揮することができる成分であればいずれのものでもよい。
特に、増粘剤、溶剤、成膜助剤・可塑剤、湿潤剤、ポリマーポリオール等の、水性美爪料組成物を増粘又は希釈する等により流動性を調整し、その動的粘弾性を調整し得る機能を有するものが好ましい。
流動性調整剤として増粘剤、溶剤、成膜助剤・可塑剤、湿潤剤、ポリマーポリオール等を用いる場合、適切な成分の選択やその含有量を調整することにより、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を容易に調整することができる。
以下、流動性調整剤として好適に用いられる増粘剤、溶剤、成膜助剤・可塑剤、湿潤剤及びポリマーポリオールについて詳説する。
【0045】
(増粘剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい流動性調整剤としての増粘剤は、水性美爪料組成物において増粘剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでもよい。
流動性調整剤として増粘剤が用いられる場合、適切な増粘剤の選択やその含有量を調整することにより、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を容易に調整することができる。
【0046】
例えば、水性美爪料組成物の流動性調整剤として用いられる増粘剤の含有量を調整することで、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができる。通常、増粘剤の含有量を増加させると、水性美爪料組成物に弾性(固体)の性質を付与することができることから、貯蔵弾性率(G’)の値を大きく、損失正接(tanδ)の値を小さくすることが可能であり、使用する増粘剤によりその調整を精密に行うことが可能である。
【0047】
このような増粘剤としては、セルロース系増粘剤;ポリエーテル系化合物(PEG/PPGコポリマー、PEG、PPG、ポリエーテル-1、ポリグリセリン等)、ポリウレタン系化合物(ポリウレタン-39、ポリウレタン-59、ポリウレタン-62、疎水変性ポリウレタン、ポリエーテル変性ウレタン化合物等)、ポリエステル系化合物(ポリエステル-5等)、ポリビニルアルコール系化合物、カルボキシビニルポリマー系化合物、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系化合物、ポリアミド系化合物、ウレア系化合物等の高分子系増粘剤;デンプン類、アルギン酸(塩)、カラギーナン、カンテン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、マンナン、ペクチン、デキストリン、ヒアルロン酸等の有機系増粘剤;ベントナイト系鉱物(モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト等)、モンモリロナイト系鉱物、ケイ酸塩、シリカ微粒子、硫酸バリウム粒子、粘土系鉱物等の無機系増粘剤;有機樹脂微粒子系増粘剤(平均粒子系1nm~1μmで、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂の1種以上の樹脂の微粒子等)を用いることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
これらのうち、水性美爪料組成物の塗り感、沈降抑制等の点や、貯蔵弾性率(G’)調整の容易性及び/又は損失正接(tanδ)調整の容易性等の点から、セルロース系増粘剤、高分子系増粘剤の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0049】
セルロース系増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等があげられるが特に限定されない。これらのセルロース系増粘剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
高分子系増粘剤としては、前記のうち、ポリウレタン系化合物(ポリウレタン-39、ポリウレタン-59、ポリウレタン-62、疎水変性ポリウレタン、ポリエーテル変性ウレタン化合物等)、ポリエステル系化合物(ポリエステル-5等)、ポリビニルアルコール系化合物、カルボキシビニルポリマー系化合物、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系化合物が好ましく用いられるが特に限定されない。
これらの中でも、貯蔵弾性率(G’)調整及び/又は損失正接(tanδ)調整をより容易に行うことができることから、疎水変性ポリウレタン(a)及び/又はカルボキシビニルポリマー系化合物(b)を用いることが特に好ましい。これらの高分子系増粘剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
以下、前記疎水変性ポリウレタン(a)及びカルボキシビニルポリマー(b)について詳説する。
【0051】
・疎水変性ポリウレタン(a)
前記の疎水変性ポリウレタン(a)としては、会合性増粘剤としての機能を有するものが好ましい。
会合性増粘剤とは、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつコポリマーであり、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し、親水部がループ状又はブリッジ状をなすことにより増粘作用を示す増粘剤であると考えられているものである。
【0052】
本発明の水性美爪料組成物に含有される疎水変性ポリウレタン(a)としては、
下記一般式(1)
R1-{(O-R2)k-OCONH-R3[-NHCOO-(R4-O)n-R5]h}m ・・・(1)
(式中、R1はm価の有機基を表し、R2及びR4は互いに同一でも異なってもよい2価の有機基を表し、R3はウレタン結合を有していてもよいh価の有機基を表し、R5は1価の有機基を表し、k及びnは括弧内の構造の繰返し単位数であって各々独立に0~1000の整数であり、hは1以上の整数であり、mは1以上の整数である。)
で表される疎水変性ポリウレタン(a-1)の1種以上、及び/又は、
モノヒドロキシ化合物と、ポリオキシアルキレングリコールと、モノグリセリルエーテル化合物と、ポリイソシアネート化合物とを含むモノマー成分を反応させて得られる疎水変性ポリウレタン(a-2)の1種以上、が好ましく用いられる。
これらの疎水変性ポリウレタンとしては、分子の末端に疎水性基を有し、分子の骨格部分が親水性部位を有している、分子末端が疎水変性されたものが好ましく用いられる。
前記疎水変性ポリウレタン(a-1)及び疎水変性ポリウレタン(a-2)について詳説する。
【0053】
・疎水変性ポリウレタン(a-1)
前記疎水変性ポリウレタン(a-1)は、下記一般式(1)
R1-{(O-R2)k-OCONH-R3[-NHCOO-(R4-O)n-R5]h}m ・・・(1)
(式中、R1はm価の有機基を表し、R2及びR4は互いに同一でも異なってもよい2価の有機基を表し、R3はウレタン結合を有していてもよいh価の有機基を表し、R5は1価の有機基を表し、k及びnは括弧内の構造の繰返し単位数であって各々独立に0~1000の整数であり、hは1以上の整数であり、mは1以上の整数である。)
で表されるものである。疎水変性ポリウレタン(a-1)としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
一般式(1)で表される疎水変性ポリウレタン(a-1)は、例えば、式:R1-[(O-R2)k-OH]mで表される少なくとも1種のポリエーテルポリオール、式:R3-(NCO)h+1で表される少なくとも1種のポリイソシアネート、及び、式:HO-(R4-O)n-R5で表される少なくとも1種のポリエーテルモノアルコールを反応させることにより得られる。ここで、R1、R2、R3、R4、R5、k、m、h、及び、nは、一般式(1)における規定と同じである。
【0055】
前記ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート及びポリエーテルモノアルコールの反応比率は、特に限定されないが、イソシアネート基のヒドロキシ基に対する比が、0.8:1から1.4:1の間のNCO/OHの範囲内となるようにするのが好ましい。
【0056】
式:R1-[(O-R2)k-OH]mで表される少なくとも1種のポリエーテルポリオールは、m価のポリオール、及び/又は、m価のポリオールと、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド又はこれらに類する化合物との付加重合物である。ここで、R1は、好ましくは炭素数1~50のm価の有機基であり、より好ましくは酸素、窒素、硫黄、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~50のm価の炭化水素基であり、R2は、好ましくは炭素数2~20の2価の有機基であり、より好ましくは酸素、窒素、硫黄、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数2~20の2価の炭化水素基である。
【0057】
m価のポリオールは、好ましくは2~8価ポリオールであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセロール、ペンタグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトラオール、2,3,4,5-ヘキサンテトラオール、1,2,4,5-ペンタンテトラオール、1,3,4,5-ヘキサンテトラオール等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール等の6価アルコール;スクロース等の8価アルコールの1種以上を用いることができる。
【0058】
m価のポリオールに付加されるアルキレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド又はこれらに類する化合物は、単独重合されてもよく、又は少なくとも2つの材料でランダム重合もしくはブロック重合されてもよい。付加(付加重合)のための手順は、従来の手順であってもよい。また、重合度kは、0~1,000の範囲内、好ましくは1~500の範囲内、より好ましくは10~200の範囲内で選択される。好ましくは、R2を占めるエチレン基(-CH2CH2-)の比は、R2の総量に対して、50~100質量%の範囲内であることが好ましい。
式:R1-[(O-R2)k-OH]mで表されるポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、500~100,000の範囲内であり、好ましくは1,000~50,000の範囲内である。
【0059】
式:R3-(NCO)h+1で表される少なくとも1種のポリイソシアネートは、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体等である。
【0060】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネート;等の1種以上を用いることができる。
【0061】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-水添キシリレンジイソシアネート又はその混合物、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネート;等の1種以上を用いることができる。
【0062】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート;等の1種以上を用いることができる。
【0063】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート;等の1種以上を用いることができる。
【0064】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー(二量体)、トリマー(三量体)、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等の1種以上を用いることができる。
【0065】
また、前記ポリイソシアネート化合物とポリオールとの反応により得られるポリウレタンポリイソシアネートを用いることができる。ポリオールとしては、2~8価ポリオールが好ましく、例えば、前記のm価のポリオールとして記載したポリオールの1種以上を用いることができる。
【0066】
式:HO-(R4-O)n-R5で表される少なくとも1種のポリエーテルモノアルコールは、直鎖状、分岐鎖状、環状又は第2級の1価アルコールと、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド又はこれらに類する化合物との付加重合物である。
R5は、炭素数6~40、好ましくは8~36、より好ましくは12~24の有機基である疎水性基であることが好ましい。有機基としては、フッ素原子を有していてもよい炭化水素基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルケニル基等である。
【0067】
直鎖状、分岐鎖状、環状又は第2級の1価アルコールとしては、例えば、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルデカノール、1-イソノナノール、1-イソオクタデカノール、1-イソウンデカノール、1-イソトリデカノール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ジ-n-オクチルアミノエタノール、ジ-2-エチルヘキシルアミノエタノール、ジ-ヘキシルアミノエタノール、2-(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン、2-(ジオクチルアミノ)-エタノール、及び2-(ジエチルヘキシルアミノ)-エタノール等の1種以上を用いることができる。
【0068】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、式:R1-[(O-R2)k-OH]mで表される少なくとも1種のポリエーテルポリオール、式:R3-(NCO)h+1で表される少なくとも1種のポリイソシアネート、及び、式:HO-(R4-O)n-R5で表される少なくとも1種のポリエーテルモノアルコールを、加熱することで、ポリオールとポリイソシアネートの通常の反応と同様の手段により反応させることで生成することができる。
【0069】
一般式(1)で表される疎水変性ポリウレタン(a-1)は、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー(ADEKA社製商品名 アデカノールGT-700、GT-730)、(ステアレス-100/PEG-136/HDI)コポリマー(Rheox社製商品名Rheolate FX 1100)等として市販されており、これらの1種以上を用いることができる。
本発明においては、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー(ADEKA社製商品名アデカノールGT-700、GT-730)を用いることが特に好ましい。
【0070】
・疎水変性ポリウレタン(a-2)
前記疎水変性ポリウレタン(a-2)は、式:HO-(R6-O)p-R7(式中、R6は2価の有機基を表し、R7は1価の有機基を表し、pは括弧内の構造の繰返し単位数であって0~1000の整数であり、R6が複数ある場合には互いに同一でも異なってもよい。)で表されるモノヒドロキシ化合物と、式:HO-(R8-O)q-H(式中、R8は2価の有機基を表し、qは括弧内の構造の繰返し単位数であって2~1000の整数であり、R8が複数ある場合には互いに同一でも異なってもよい。)で表されるポリオキシアルキレングリコールと、式:HO-CH2-CH(OH)-CH2-O-R9(式中、R9は1価の有機基を表す。)で表されるモノグリセリルエーテル化合物と、式:R10-(NCO)r(式中、R10はr価の有機基を表し、rは1以上の整数である。)で表されるポリイソシアネート化合物とを含むモノマー成分を反応させて得られるものである。疎水変性ポリウレタン(a-2)としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0071】
前記式:HO-(R6-O)p-R7で表されるモノヒドロキシ化合物としては、前記(a-1)の疎水変性ポリウレタンの合成に用いられる式:HO-(R4-O)n-R5と同様の化合物の1種以上を用いることができる。
【0072】
前記式:HO-(R8-O)q-Hで表されるポリオキシアルキレングリコールは、R8が好ましくは炭素数2~8のアルキレン基であるポリオキシエチレングリコールであって、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/ポリオキシプロピレン)グリコール等の1種以上を用いることができる。
【0073】
前記式:HO-CH2-CH(OH)-CH2-O-R9で表されるモノグリセリルエーテル化合物は、R9が好ましくは炭素数5~12の有機基であるモノグリセリルエーテル化合物であって、例えば、モノペンチルグリセリルエーテル、モノヘキシルグリセリルエーテル、モノヘプチルグリセリルエーテル、モノオクチルグリセリルエーテル、モノ2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、モノノニルグリセリルエーテル、モノデシルグリセリルエーテル、モノウンデシルグリセリルエーテル、モノドデシルグリセリルエーテル等の1種以上を用いることができる。
【0074】
前記式:R10-(NCO)rで表されるポリイソシアネート化合物としては、前記(a-1)の疎水変性ポリウレタンの合成に用いられる式:R3-(NCO)h+1で表される少なくとも1種のポリイソシアネートと同様の化合物の1種以上を用いることができる。
【0075】
各成分の反応比は、例えば、前記ポリオキシアルキレングリコール10モルに対して、前記モノヒドロキシ化合物が10~30モル、前記モノグリセリルエーテル化合物が5~20モル及びポリイソシアネート化合物が20~50モルであることが好ましい。
【0076】
各成分を反応させる際には、前記モノヒドロキシ化合物、前記ポリオキシアルキレングリコール及び前記モノグリセリルエーテル化合物の混合物に、前記ポリイソシアネート化合物を添加して反応させることができる。
【0077】
疎水変性ポリウレタン(a-2)としては、例えば、(PEG-240/テトラデシルオクタデセス-100/エチルヘキシルグリセリン/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー(ADEKA社製商品名 アデカノールGT-930;ポリウレタン59)として市販されている。
本発明においては、前記(PEG-240/テトラデシルオクタデセス-100/エチルヘキシルグリセリン/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマーを用いることが特に好ましい。
【0078】
・カルボキシビニルポリマー(b)
前記のカルボキシビニルポリマー(b)としては、カルボキシル基を有する水溶性のビニルポリマーであり、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主鎖として、アリルショ糖やペンタエリスリトールのアリルエーテル等による架橋構造を有するポリマーが好ましい。
カルボキシビニルポリマー(b)としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0079】
本発明の水性美爪料組成物においてカルボキシビニルポリマー(b)を含有する場合、市販品を使用することができる。カルボキシビニルポリマーの市販品としては、具体的には、Lubrizol Advanced Materials社製商品名カーボポール940、同カーボポール941、同カーボポール980、同カーボポール981;和光純薬工業株式会社製商品名ハイビスワコー103、同ハイビスワコー104、同ハイビスワコー105;東亞合成株式会社製商品名ジュンロンPW-120、同ジュンロンPW-121、同ジュンロンPW-312S;住友精化株式会社製商品名AQUPEC HV-501E、同AQUPEC HV-505E;3Vシグマ社製商品名シンタレンK、同シンタレンL等があげられる。
【0080】
本発明の水性美爪料組成物にカルボキシビニルポリマーが含有される場合には、1種のカルボキシビニルポリマーを使用してもよく、2種以上のカルボキシビニルポリマーを使用してもよい。
【0081】
本発明の水性美爪料組成物に増粘剤が含有される場合、その含有量は特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)、増粘剤の増粘能力、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
増粘剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0.001~5質量%であり、好ましくは0.005~1.5質量%、より好ましくは0.015~1.5質量%である。
【0082】
増粘剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.001質量%未満であると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、顔料の沈降が発生したり、顔料の分散安定性が悪化したりするおそれがある。
【0083】
増粘剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して5質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感が悪化する。
【0084】
本発明の水性美爪料組成物に増粘剤として前記疎水変性ポリウレタン(a)が含有される場合、その含有量は特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
前記疎水変性ポリウレタン(a)の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0.015~1.5質量%であり、好ましくは0.03~0.6質量%、より好ましくは0.15~0.3質量%である。
【0085】
前記疎水変性ポリウレタン(a)の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.015質量%未満であると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、顔料の沈降が発生したり、顔料の分散安定性が悪化したりするおそれがある。
【0086】
前記疎水変性ポリウレタン(a)の含有量が水性美爪料組成物全体に対して1.5質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感が悪化する。
【0087】
本発明の水性美爪料組成物に増粘剤として前記カルボキシビニルポリマー(b)が含有される場合、その含有量は特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
前記カルボキシビニルポリマー(b)の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0.001~5質量%であり、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
前記カルボキシビニルポリマー(b)の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.001質量%未満であったり又は5質量%を超えたりすると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物に浮遊物や沈殿物が発生するおそれや、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感が悪化するおそれがある。
【0088】
(溶剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい溶剤としては、水性美爪料組成物において溶剤としての機能を発揮する成分であればいずれのものでも用いることができる。
また、溶剤は、成膜助剤としての機能を発揮することができる成分であってもよい。
【0089】
このような溶剤としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等の水溶性有機溶剤を用いることができる。
【0090】
本発明の水性美爪料組成物において使用される水の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)、粘度等に応じて適宜設定すればよい。
本発明の水性美爪料組成物において使用してもよい水溶性有機溶剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。水溶性有機溶剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~3質量%である。
【0091】
例えば、水性美爪料組成物中の流動性調整剤として用いられる溶剤の含有量を調整することで、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができる。通常、溶剤の含有量を増加させると、水性美爪料組成物に粘性(液体)の性質を付与することができるから、貯蔵弾性率(G’)の値を小さく、損失正接(tanδ)の値を大きくすることが可能であり、使用する溶剤によりその調整を精密に行うことが可能である。
【0092】
水溶性有機溶剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して少なすぎると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水に難溶性の化合物を水性美爪料組成物中に溶解させることが困難になる可能性がある。
水溶性有機溶剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して20質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物の粘度が低くなりすぎる可能性がある。
【0093】
(成膜助剤・可塑剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい成膜助剤・可塑剤としては、水性美爪料組成物において成膜助剤・可塑剤のいずれかの機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
また、成膜助剤・可塑剤は、溶剤としての機能を発揮することができる成分であってもよい。
【0094】
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい成膜助剤・可塑剤は、水性美爪料組成物の成膜性を向上させて塗膜の形成を助け、塗膜が形成された後においては比較的速やかに蒸発揮散して塗膜の強度を向上させる一時的な可塑化機能等を発揮することとなる。
【0095】
このような成膜助剤・可塑剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、スクロースアセテート等のアセテート類;ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアルコール類;1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、ヘキシレングリコール等のジオール類;フタル酸ジエステル類(フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチオル、フタル酸ブチル-2-エチルヘキシル等)、アジピン酸ジエステル類(アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル等)、コハク酸ジエステル類、セバシン酸ジエステル類(セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル等)、カプリル酸エステル、カプロン酸エステル、酢酸エステル、クエン酸エステル、ステアリン酸エステル(ステアリン酸エチル等)、パルミチン酸エステル(パルミチン酸2-エチルヘキシル等)、tert-ブチル酸と2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールのエステル等の脂肪酸エステル類;の1種以上を用いることができる。
【0096】
本発明の水性美爪料組成物において使用してもよい成膜助剤・可塑剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。成膜助剤・可塑剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~20質量%であり、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~3質量%である。
【0097】
例えば、水性美爪料組成物中の流動性調整剤として用いられる成膜助剤・可塑剤の含有量を調整することで、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することができる。
通常、低粘度の成膜助剤・可塑剤の含有量を増加させると、水性美爪料組成物に粘性(液体)の性質を付与することができるから、貯蔵弾性率(G’)の値を小さく、損失正接(tanδ)の値を大きくすることが可能である。
また、通常、高粘度の成膜助剤・可塑剤の含有量を増加させると、水性美爪料組成物に弾性(固体)の性質を付与することとなり、貯蔵弾性率(G’)の値を大きく、損失正接(tanδ)の値を小さくすることが可能である。
【0098】
前記成膜助剤・可塑剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して少ないと、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、光沢が悪化する場合や顔料の分散安定性等が損なわれる場合がある。
前記成膜助剤・可塑剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して20質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感が悪化する可能性がある。
【0099】
(湿潤剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい湿潤剤としては、水性美爪料組成物において湿潤剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
【0100】
このような湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類等の1種以上を用いることができる。
【0101】
本発明の水性美爪料組成物において使用してもよい湿潤剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。湿潤剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0.1~15質量%であり、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~5質量%である。
【0102】
湿潤剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.1質量%未満であると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、顔料を含む場合に分散安定性が悪化する場合がある。
湿潤剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して15質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物にタック性が現れる可能性がある。
【0103】
(ポリマーポリオール)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよいポリマーポリオールとしては、任意のポリマーポリオールを用いることができる。
ポリマーポリオールは、希釈剤としての機能を発揮するものであり、さらに、本発明の水性美爪料組成物の付着性を向上させる機能を発揮する場合がある。
【0104】
このようなポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノリックポリオール等の少なくとも1種以上を使用することができる。これらのうち、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの少なくとも1種が好ましく、特にポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの少なくとも1種が好ましい。
【0105】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、付加重合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等があげられる。
縮合型ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ヘキサンジメタノール、ダイマー酸ジオール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物と、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸等の有機多塩基酸との縮合反応によって得られたものがあげられる。
付加重合ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンがあげられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリオールの直接ホスゲン化、ジフェニルカーボネートによるエステル交換法などによって合成されたものがあげられる。
ポリマーポリオールの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは100~100,000である。
【0106】
本発明の水性美爪料組成物において含有されていてもよいポリマーポリオールの含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。ポリマーポリオールの含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~40質量%となる量であり、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは2~15質量%である。
【0107】
<その他の成分>
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい「その他の成分」としては、水性美爪料組成物の添加剤として使用可能な成分であればいずれのものでも用いることができる。
このような「その他の成分」としては、例えば、着色剤、界面活性剤・顔料分散剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤があげられる。
これらの成分以外にも、貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ)、レベリング、沈降、塗り感、成膜性、光沢、粘度、使用性、塗膜の耐久性等に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、香料、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、表面張力調整剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、低応力化剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、濡れ改良剤等の、これまでに慣用されている各種の添加剤の1種以上を配合することができる。
また、水性美爪料組成物に配合することができる各種の装飾材料等を配合することも可能である。
「その他の成分」のうち、着色剤、界面活性剤(顔料分散剤)、消泡剤、pH調整剤及び防腐剤について詳説する。
【0108】
(着色剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい着色剤としては、例えば、無機着色顔料、有機着色顔料、光輝顔料、蛍光顔料、着色樹脂粒子、染料等の少なくとも1種を使用することができる。着色剤の状態としては、粒子状や分散液状のものが用いられてよく、また、所望の色調とするために、2種以上の着色剤を混合して使用してもよい。
これらのうち、顔料や着色樹脂粒子等の粒子は、シランカップリング剤、樹脂、顔料誘導体等の表面処理剤で表面処理されたものであってもよく、表面処理されていないものであってもよい。
【0109】
着色顔料としては、水性美爪料組成物に、赤、青、黄、緑、紫、黒、白、オレンジ、ブラウン等各種の色調を付与し得る無機着色顔料及び/又は有機着色顔料をあげることができ、所望の色調とするために、2種以上の無機着色顔料及び/又は有機着色顔料を混合して用いてもよい。
無機着色顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、グンジョウ、カーボンブラック、鉄黒、酸化亜鉛、亜鉛黄、鉄黄、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等が使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
有機着色顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、アニリンブラック、アンスラピリミジン系顔料、アントラキノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、インジゴ系顔料、インドレリン系顔料、キナクリドン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料、ジオキサジン系顔料、ジオキサン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、スレン系顔料、多環式顔料、チオインジゴ系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
光輝顔料としては、金、銀、銅、クロム、チタン、ニッケル、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属粉や金属箔;雲母、合成雲母、シリカフレーク、アルミニウムフレーク、酸化アルミニウムフレーク、酸化鉄フレーク、ガラスフレーク等の薄片状基材に、酸化チタン、酸化鉄、シリカ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、金、銀、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、フッ化マグネシウム、窒化チタン等の1種以上の薄膜を1層以上被覆した被覆顔料、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等の真珠光沢顔料、光反射性顔料、光干渉性顔料が使用可能である。
【0112】
蛍光顔料としては、紫外領域、可視光領域及び赤外領域における特定の波長の光を励起エネルギーとして用い、前記波長と異なった波長域で発光する顔料が使用可能である。
着色樹脂粒子としては、前記着色顔料、光輝顔料、蛍光顔料、染料等の1種以上と樹脂との混合物の微粒子であり、樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0113】
前記の顔料としては、少なくとも1種の親水性基又は親油性基が顔料の表面に直接又は種々の原子団により結合している自己分散型顔料を用いてもよい。前記自己分散型顔料としては、イオン性のものが好ましく、特に、アニオン性に帯電したものが好ましい。
【0114】
染料としては、赤、青、黄、緑、紫、黒、白、オレンジ、ブラウン等各種の色の水溶性染料又は分散染料等の染料をあげることができ、これらは、酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料であってよい。
【0115】
これら着色剤のうち、特に爪被覆用として使用されている無機顔料、光輝材、有機顔料や染料を使用することができる。また、これらの着色剤を添加しない場合や、透明となる程度の量で添加した場合、もしくは染料を添加することにより透明性がある水性美爪料組成物とすることもできる。
【0116】
顔料を使用する場合、顔料のD50(メジアン径)の値を2.0μm以下とすることができ、さらに好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。この2.0μm以下の場合には、さらに発色性を向上させることができる。なおD50は、顔料の粒度分布を測定したときに、その累積体積が全体の50%となるときの粒径である。
【0117】
本発明の水性美爪料組成物において着色剤として顔料を使用する場合、適切な顔料の選択及び/又はその含有量(顔料濃度)の調整により、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することが可能である。
【0118】
本発明の水性美爪料組成物において使用してもよい着色剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき色調や美感等に応じて適宜設定すればよい。着色剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~10質量%であり、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.5~6.5質量%となる量で含有される。
着色剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して10質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、光沢を損なう可能性がある。
【0119】
(界面活性剤・顔料分散剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい界面活性剤・顔料分散剤としては、水性美爪料組成物において界面活性剤及び/又は顔料分散剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
【0120】
このような界面活性剤・顔料分散剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸モノ(ジ)エタノールアミド、脂肪酸ポリエチレングリコール、ポリエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等があげられる。具体的には、モノステアリン酸グリセリン、セスキオレイン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤;脂肪酸金属塩、アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等)、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム等)等の陰イオン性界面活性剤;塩化アルキルトリアルキルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;の1種以上を用いることができる。
【0121】
本発明の水性美爪料組成物においては、上記の界面活性剤・顔料分散剤の中でも、脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はPOEソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、中でもPOE(20)ステアリン酸ソルビタン(例えば、日光ケミカルズ社製商品名NIKKOL TS-10MV)、POE(20)ミリスチン酸ソルビタン、POE(20)パルミチン酸ソルビタン(例えば、日光ケミカルズ社製商品名NIKKOL TP-10EX)、POE(20)オレイン酸ソルビタン(例えば、日光ケミカルズ社製商品名NIKKOL TO-10MV)、POE(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタンもしくはPOE(20)ラウリン酸ソルビタン(例えば、日光ケミカルズ社製商品名NIKKOL TL-10、三洋化成工業社製商品名イオネットS-20、三洋化成工業社製商品名イオネットT-20C)、POE(6)ステアリン酸ソルビタン(例えば、日光ケミカルズ社製商品名NIKKOL TS-106V)、POE(6)ミリスチン酸ソルビタン、POE(6)パルミチン酸ソルビタン等の1種以上を用いることが好ましい。
特に、POE(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタン(ポリオキシエチレン(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタンエステル)、三洋化成工業社製商品名イオネットS-20や同イオネットT-20C(ヤシ油脂肪酸ソルビタン)の1種以上を用いることが好ましい。
【0122】
本発明の水性美爪料組成物において着色剤として顔料が使用される場合、適切な界面活性剤の顔料分散剤としての選択及び/又はその含有量の調整により、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)を調整することが可能である。
【0123】
本発明の水性美爪料組成物において使用してもよい界面活性剤・顔料分散剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)や、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。界面活性剤・顔料分散剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~2質量%であり、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0124】
界面活性剤・顔料分散剤の含有量が少ないと、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、顔料分散性、均一な塗膜形成性、光沢性及び樹脂エマルジョンの相溶性が悪化する等の問題が生じる場合がある。
界面活性剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して2質量%を超えると、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)及び/又は損失正接(tanδ)を所期の範囲内とすることが困難になる場合があり、また、水性美爪料組成物の耐水性が悪化する可能性がある。
【0125】
(消泡剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい消泡剤としては、水性美爪料組成物において消泡剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
【0126】
このような消泡剤としては、ジメチルシリコーンオイル、シリコーンオイルコンパウンド、シリコーンエマルジョン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フロロシリコーンオイル、ジメチコン、シメチコン等のシリコーン系やフッ素系の消泡剤の1種以上を用いることができる。
【0127】
本発明の水性美爪料組成物において含有されていてもよい消泡剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。消泡剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0.005~0.1質量%であり、好ましくは0.01~0.05質量%、より好ましくは0.01~0.03質量%である。
【0128】
消泡剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.005質量%未満であると、水性美爪料組成物が泡立つ可能性がある。
消泡剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.1質量%を超えると、塗布後の水性美爪料組成物にピンホールが表れる可能性がある。
【0129】
(pH調整剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよいpH調整剤としては、水性美爪料組成物においてpH調整剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
【0130】
このようなpH調整剤としては、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパンジオール、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア(水)等の無機塩基;アスコルビン酸、ギ酸、クエン酸、グリコール酸、クロロ酢酸、コハク酸、プロピオン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸等の有機酸;リン酸等の無機酸;スルホコハク酸塩、ピロリン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、アスパラギン酸塩、クエン酸塩等の塩;の1種以上を用いることができる。
【0131】
本発明の水性美爪料組成物においては、塗布・乾燥した後に塗膜中に残存しない揮発性のpH調整剤が好ましく、例えば、適当な濃度(例えば、10%)のアンモニア水が好適に用いられる。
なお、本発明の水性美爪料組成物において、塗布・乾燥した後に塗膜中に残存するpH調整剤を用いた場合、水性美爪料組成物塗膜の耐久性に問題が生じる可能性があるが、温水中に浸漬することで水性美爪料組成物塗膜の剥離を促進させることが可能となる
【0132】
本発明の水性美爪料組成物において含有されていてもよいpH調整剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物のpHが6以上~9以下の範囲、好ましくは、6.5~8.5の範囲となるように調整されるように適宜設定すればよい。pH調整剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~2質量%であり、好ましくは0~1質量%、より好ましくは0.2~0.5質量%である。
【0133】
水性美爪料組成物のpHによっては、pH調整剤を用いる必要はない。また、水性美爪料組成物の組成によっては、pH調整剤の含有量が少なすぎると顔料分散性等が悪くなる場合がある。
pH調整剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して2質量%を超えると、水性美爪料組成物の粘度が高くなりすぎて塗り感等が悪化する場合がある。
なお、水性美爪料組成物のpHが6未満となるとメイクオフ性に優れないおそれがあり、一方、pH9を超えると皮膚刺激性が生じるとともに耐冷水性や乾燥性が悪化する恐れがある。
【0134】
(防腐剤)
本発明の水性美爪料組成物に含有されていてもよい防腐剤としては、水性美爪料組成物において防腐剤としての機能を発揮することができる成分であればいずれのものでも用いることができる。
【0135】
このような防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、ヒドロキシベンゾサチオール、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)類等のフェノール類;安息香酸、安息香酸塩類、サリチル酸、サリチル酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、ソルビン酸、ソルビン酸塩類等の酸類;ヘキサクロロフェン、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)等のハロゲン化ビスフェノール類;3,4,4’-トリクロロカルバニリド、3-トリフルオロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド(ハロカルバン)等のアミド類;グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、テトラメチルチウラムジサルファイド(チラム)、感光素201、感光素101、1-ハイドロキシピリジン-2-チオン(ジンクピリチオン)、イミダゾイルウレア化合物(イミダゾリジニルウレア)、N-トリクロロメチル・メルカプト-4-シクロヘキセン-2-ジカルボキシイミド、塩化リゾチーム、クロルフェネシン、クロロブタノール、2-ブロム-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、6-アセトキシ-2,4-ジメチル-m-ジオキサン等の1種以上を用いることができる。
【0136】
本発明の水性美爪料組成物において含有されていてもよい防腐剤の含有量は、特に制限されず、水性美爪料組成物に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。防腐剤の含有量としては、例えば、水性美爪料組成物全体に対して0~1質量%であり、好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.2~0.7質量%である。
【0137】
防腐剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して0.1質量%未満であると、防腐能力の点で問題が生じる場合がある。
防腐剤の含有量が水性美爪料組成物全体に対して1質量%を超えると、化粧品の添加基準を超えることとなる。
【0138】
[水性美爪料組成物の使用方法]
本発明の水性美爪料組成物は、使用者自身の爪の表面に、必要に応じてサンディングを施した後、さらに必要に応じて下塗りをした後に、筆や刷毛を用いる等の公知の手段によって爪表面に塗布することができる。
もちろん、爪表面に本発明の水性美爪料組成物を塗布後、乾燥前に小さな飾りや粉体等を塗膜表面に付着させることも可能である。
爪に塗布した後、自然乾燥させたり、赤外線等を当てたりして加熱乾燥させることができる。
被覆される爪は、人の手足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でもよい。また、マネキン等の人形の爪部に用いることも可能である。
【実施例】
【0139】
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明の水性美爪料組成物をより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0140】
[水性美爪料組成物の評価方法]
【0141】
<レベリング>
1.ナイロン板に各水性美爪料組成物を30μl取る。
2.一般的な美爪料組成物用の筆で、一辺が1.5cmの正方形の中を縦に4回、横に4回、再度縦に4回塗り広げる。
3.塗布後、一晩以上室温で乾燥させる。
4.乾燥後の塗膜のレベリング具合を評価する。
◎:塗膜がなだらかで筆跡が見えない。
○:塗膜がなだらかであるが筆跡がやや見える。
△:塗膜に大きな波が見える。
×:塗膜に細かな波が見える。
【0142】
<沈降>
1.各水性美爪料組成物を透明なサンプル瓶に充填する。
2.50℃の雰囲気下で2週間保存する。
3.外観を目視で観察し評価する。
◎:沈殿していない。
○:ほとんど沈殿していない。
△:沈殿がみられる。
×:著しく沈殿している。
【0143】
<塗り感>
1.爪に、各水性美爪料組成物を一般的な美爪料組成物用の筆で適量塗り広げる。
2.乾燥後、塗膜表面を目視で観察する。
○:塗膜がなだらかで筆跡が見えない。
△:塗膜に大きな波が見える。
×:塗膜に細かな波が見える。
【0144】
実施例1
アクリル樹脂系エマルジョンを25.399質量部(樹脂分の含有量として)、1,2-オクタンジオールを2.000質量部、赤色202号を0.120質量部、青色404号を0.030質量部、酸化チタンを4.400質量部、ヒドロキシエチルセルロースを0.026質量部、カルボキシビニルポリマーを0.150質量部、疎水変性ポリウレタンを0.255質量部、ヤシ油脂肪酸ソルビタンを0.022質量部、POEヤシ油脂肪酸ソルビタンを0.335質量部、フェノキシエタノールを0.500質量部、エタノールを2.500質量部、シメチコンを0.010質量部、プロピレングリコールを2.000質量部、水を水性美爪料組成物として100質量部となる量、となる割合で各成分を加えて水性美爪料組成物を得た。得られた水性美爪料組成物について、レベリング、沈降及び塗り感について評価した。
結果を表1に示す。
【0145】
実施例2~9、比較例1~8
表1に示す成分を、表1に示す質量部となる割合で各成分を加えて水性美爪料組成物を得た。得られた水性美爪料組成物について、レベリング、沈降及び塗り感について評価し、結果を表1に併せて示す。
【0146】
【0147】
表中の成分は以下のとおりである。
・アクリル樹脂系エマルジョン1:
ジュリマーET-410(東亜合成社製商品名)とTOCRYL BCX-6020(トーヨーケム社製商品名)を、樹脂分の質量比でジュリマーET-410:TOCRYL BCX-6020=64.69:12.20の比率でブレンドしたもの(表1中のアクリル樹脂系エマルジョンの配合量は樹脂分の含有量)。
【0148】
・アクリル樹脂系エマルジョン2:
ビニゾール1050N(大同化成工業社製商品名)
【0149】
・合成マイカパール顔料:
Skolor Niello Silver 9010S(CQV社製商品名)
【0150】
・カルボキシビニルポリマー:
カーボポール940(Lubrizol Advanced Materials社製商品名)
【0151】
・疎水変性ポリウレタン:
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー(ADEKA社製商品名アデカノールGT-730)
【0152】
・POEヤシ油脂肪酸ソルビタン:
ヤシ油脂肪酸ソルビタンエステルのポリエチレンオキサイド20モル付加物
【0153】
・シメチコン:
ポリジメチルポリシロキサンとシリカの混合物(信越化学工業社製商品名KM-72)
【0154】
・市販品A及びB
市販されている水性美爪料組成物を2種類準備し、貯蔵弾性率(G’)(Pa)、損失正接(tanδ)及び粘度(mPa・s)を測定した。
【0155】
表1より、本発明に係る実施例1~9の水性美爪料組成物は、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paの範囲内であり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0の範囲内であり、レベリング、沈降、塗り感のいずれの評価に問題がないことがわかる。
【0156】
これに対して、比較例の水性美爪料組成物は、レベリング、沈降及び塗り感のいずれか1つ以上に問題があることがわかる。
貯蔵弾性率(G’)が1.5Pa未満で、損失正接(tanδ)が1.0~7.0の範囲内である比較例1及び2の水性美爪料組成物は、レベリング及び塗り感の評価に問題がないものの、沈降の評価に問題がある。
貯蔵弾性率(G’)が10.0Paを超え、損失正接(tanδ)が1.0~7.0の範囲内であるものの下限値に近い比較例3の水性美爪料組成物は、沈降及び塗り感の評価に問題がないものの、レベリングの評価に問題がある。
貯蔵弾性率(G’)が10.0Paを大きく超え、損失正接(tanδ)が1.0未満である比較例4の水性美爪料組成物は、沈降の評価に問題がないものの、レベリング及び塗り感の評価に問題がある。
貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paの範囲内であるものの下限値に近く、損失正接(tanδ)が7.0を超える比較例5の水性美爪料組成物は、レベリングの評価に問題がないものの、沈降及び塗り感の評価に問題があり、また、粘度が高すぎるものである。
貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paの範囲内であり、損失正接(tanδ)が7.0を超える比較例6の水性美爪料組成物は、レベリングの評価に問題がないものの、沈降及び塗り感の評価に問題があり、また、粘度が高すぎるものである。
貯蔵弾性率(G’)が10.0Paを超え、損失正接(tanδ)が1.0未満である比較例7及び8の水性美爪料組成物(いずれも市販品)は、沈降及び塗り感の評価に問題がないものの、レベリングの評価に問題がある。
【0157】
これら実施例及び比較例の記載からみて、水性美爪料組成物において、貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paの範囲内であり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0の範囲内であることにより、成膜性、光沢、塗り感及びレベリングのすべての点で優れるとともに、レベリングと顔料沈降抑制とを両立させることで顔料を含む場合であっても経時的に顔料の沈降が発生しない水性美爪料組成物を提供することができる。
さらに、水性美爪料組成物の貯蔵弾性率(G’)が1.5~10.0Paであり、損失正接(tanδ)が1.0~7.0であることにより、レベリング、沈殿及び塗り感に問題がない水性美爪料組成物とすることができることから、これらの指標を用いて水性美爪料組成物の客観的な評価を塗膜形成前に行うことが可能となる。