(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】リガンド誘発型の細胞発現のマイクロ流体分析
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221121BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20221121BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20221121BHJP
C40B 40/02 20060101ALI20221121BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20221121BHJP
C40B 50/04 20060101ALI20221121BHJP
C40B 50/06 20060101ALI20221121BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C40B40/02
C40B40/08
C40B50/04
C40B50/06
G01N37/00 103
(21)【出願番号】P 2018536470
(86)(22)【出願日】2017-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2017050620
(87)【国際公開番号】W WO2017121832
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-09
(32)【優先日】2016-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500262197
【氏名又は名称】ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】フウ,ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】セア,サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】マーチン,クリストフ エー.
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/103339(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/200893(WO,A2)
【文献】特表2011-525811(JP,A)
【文献】Lab on a Chip, 2012, Vol.12, pp.2146-2155
【文献】Cell, 2015, Vol.161, No.5, pp.1187-1201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロ流体コンパートメントであって、前記複数のマイクロ流体コンパートメントの少なくとも1%が、部分集合を構成し、該部分集合における各々のマイクロ流体コンパートメントは、
(i)第1の細胞と、
(ii)該第1の細胞の表面上でリガンドに到達されることが可能な標的分子
に特異的に結合することが意図される1種のポリペプチドリガンドを発現する1個の第2の細胞又は1個の無細胞発現系と、
(iii)
バーコードオリゴヌクレオチドの群
に固有のバーコード配列、並びに第1の細胞および1個の第2の細胞または1個の無細胞発現系のmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列をそれぞれ含む1群のバーコードオリゴヌクレオチド
を含むものであって、
前記mRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列は、逆転写のプライマーとして使用するのに適したもの、及び/又は、mRNA及び/又はcDNAからの増幅に使用するのに適したものであり、及び、
複数のマイクロ流体コンパートメントのバーコードオリゴヌクレオチドは、1群のバーコードオリゴヌクレオチドに固有のバーコード配列を除いて、構造および配列が同一である、
複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項2】
前記マイクロ流体コンパートメントの部分集合のサイズは、少なくとも5%又は10%である、請求項1に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項3】
前記第1の細胞、及び前記第2の細胞又は前記無細胞発現系により発現されるポリペプチドリガンドは、異なる種に由来する、請求項1又は2に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項4】
前記第1の細胞の表面上でリガンドに到達されることが可能な標的分子は、細胞シグナル伝達受容体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項5】
前記第1の細胞は、疾患細胞、幹細胞若しくは多能性細胞、又は多能性がポリペプチドリガンドにより誘導可能である細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項6】
前記第2の細胞は、B細胞系譜の非ヒト形質細胞であり、かつ前記ポリペプチドリガンドは、該形質細胞により産生される抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項7】
前記ポリペプチドリガンドは、抗体、抗体誘導体、及び抗体ミメティックからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項8】
前記1群のバーコードオリゴヌクレオチドは、1つのビーズに結合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項9】
前記mRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列は、mRNAの3'ポリ(A)テール又は遺伝子特異的配列に特異的に結合することが可能な配列である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項10】
前記複数のマイクロ流体コンパートメントの部分集合のマイクロ流体コンパートメントはそれぞれ、以下:
- 細胞溶解剤、
- RNアーゼインヒビター、
- DNアーゼ、
- 逆転写反応のための試薬、及び/又は、
- 第1の細胞である疾患細胞若しくは該疾患細胞の起源となる疾患の治療のための薬物又は薬物候補、
の1種以上を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメント。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメントを生成する方法であって、
(a)マイクロ流体システム中に、(i)複数の第1の細胞を含む流体と、(ii)該第1の細胞の表面上でリガンドに到達されることが可能な標的分子
に特異的に結合することが意図される1種のポリペプチドリガンドをそれぞれ発現する複数の第2の細胞又は無細胞発現系を含む流体と、(iii)各々の群が群に固有のバーコード配列、並びに第1の細胞および第2の細胞または無細胞発現系のmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列を含む1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含む流体とを導入する工程であって、該mRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列は、逆転写のプライマーとして使用するのに適したもの、及び/又は、mRNA及び/又はcDNAからの増幅に使用するのに適したものである、及び
(b)マイクロ流体コンパートメント中に、前記複数のマイクロ流体コンパートメントにおけるマイクロ流体コンパートメントの部分集合のサイズが少なくとも1%であるように、第1の細胞、1個の第2の細胞又は1個の無細胞発現系、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含むコンパートメントを繰り返し生成し、共同コンパートメント化する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
細胞の遺伝子発現を測定する方法であって、
(a)請求項1~10のいずれか一項に記載の複数のマイクロ流体コンパートメントを準備する工程と、
(a') 第1の細胞と第2の細胞間の相互作用が十分に遺伝子発現の変化をもたらすように、マイクロ流体コンパートメントをインキュベートする工程と、
(b)該マイクロ流体コンパートメント中に含まれる細胞を溶解する工程と、
(b')バーコードオリゴヌクレオチドによってmRNAを捕捉する工程と、
(c)該細胞から放出されるmRNAをcDNAへと逆転写する工程と、
(d)該cDNAを増幅する工程と、
(e)
該cDNAの配列及び任意に該cDNAのそれぞれの量を測定する工程と、
(f)同じバーコード配列を含む配列を
選択する工程であって、以下の配列:
- 第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される1種のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列と他のリガンドをコードするヌクレオチド配列との比較において異なる固有のバーコード配列を含む配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される2種以上のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列と対応付けられた固有のバーコード配列を含む配列と、
の上記3つの配列を
選択から除外
する工程と、
を含み、工程(c)又は工程(d)は、プライマーとしてバーコードオリゴヌクレオチドを用いて行われ、
前記マイクロ流体コンパートメントの内容物は、バーコードオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング後で、かつ工程(e)の前の任意の段階でプールされる、方法。
【請求項13】
前記バーコードオリゴヌクレオチドは、それが工程(c)においてプライマーとして使用される場合にはポリ(dT)配列若しくはポリ(dU)配列を有し、又は前記バーコードオリゴヌクレオチドは、それが工程(d)においてプライマーとして使用される場合には遺伝子特異的プライマー対の一部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)標的細胞の遺伝子発現に対する、前記標的細胞又は
前記標的細胞の表面上でリガンドに到達されることが可能な1種以上の標的分子
で脊椎動物を免疫化することにより誘導された抗体の効果を測定するための、又は(ii)標的細胞の遺伝子発現に対する、ライブラリーに由来するポリペプチドリガンドの効果を測定するための、請求項12~13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体工学の分野に関し、特に同じマイクロ流体コンパートメント中で発現されるリガンドに応じた細胞の遺伝子発現の分析に関する。リガンドを生成する細胞及び発現系のトランスクリプトームをバーコード化することにより、そのリガンドの細胞発現に対する効果を確認することができる。本発明は、この目的のためのマイクロ流体コンパートメント及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
コンパートメントベースのマイクロ流体工学、例えば液滴ベースのマイクロ流体工学は、高スループットなスクリーニング用途のために大きな可能性を秘めている。単一細胞のコンパートメント中へのカプセル化は、抗体等の細胞産物の非常に高いスループットでの、例えば1日当たり数十万個までの試料のスクリーニングを可能にする。単一細胞RNAシーケンシング(RNAseqとも呼ばれる)は、多くの科学的な注目及び商業的な注目を集めた。その目標は、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現パターンの解析であり、こうして、幹細胞、腫瘍、又は発生過程の胚のような雑多な集団において別個の細胞型を分析及び解明することが可能となる。Fluidigm Corp.社は、単一細胞RNAseqのためのバルブベースのマイクロ流体的解決策を提供するこの技術の業界大手となった。その会社のC1システムは、単回実行において96個までの細胞を処理することができ、このプラットフォームの次世代型は、1回で800個までの細胞のスループットを有することとなる。並行して、ナノウェル(非特許文献1)及び液滴ベースのマイクロ流体技術(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)が開発され、RNAseq又はChiPseqに関しては10000個までの細胞の処理が可能となった。これらのシステムでは、単一細胞が、固有の(unique)バーコードを有するポリTヌクレオチドを呈示する単一のビーズと一緒にマイクロ流体液滴又はナノウェル中にカプセル化される(
図1)。カプセル化の後に、それらの細胞は溶解され、全ての細胞内mRNAは、バーコード化されたポリTプライマーとハイブリダイズすることで、該バーコードとの物理的な連結が保証される。この段階で、又は液滴内での追加の逆転写工程の実施後のいずれかで、全ての試料をプールし、次世代シーケンシングにかけることができる。そのバーコード化のため、個々の細胞の発現パターンをなおも区別することができるため、その集団内の違いが明らかにされる。従来技術の単一細胞シーケンシング技術及び研究は、もっぱら単一細胞を個別に特徴付けることに着目している。しかしながら、それらの技術及び研究は、2種の異なる細胞を共同カプセル化することも、それらのトランスクリプトームを同時にシーケンシングすることも目的としていない。そのように2種の異なる細胞型を同じ液滴中に共同カプセル化し、そして両方の細胞型のmRNAを同じバーコードにより標識することは、非常に大きな生物医学的な可能性を秘めている。それは、細胞-細胞相互作用、例えば細胞Aがどのように細胞B又は細胞Bにより分泌される因子の存在に反応するのかを解析することを可能にし、特に年間で5百億米国ドルを上回る売上があるモノクローナル抗体等の遺伝子にコードされた薬物候補をスクリーニングするために、非常に多重化された様式で活用することができると考えられる。
【0003】
そのために、本発明者は、何百種もの異なる未知のリガンドを細胞発現に対する効果について試験することと、リガンドの正体を突き止めて細胞及びその遺伝子発現に関連付けることとの全てを同時に可能にする、細胞により発現される未知のリガンドに応じた細胞発現の分析を可能にする新規スクリーニング法を実現した。例えば出発点として、ヒト癌細胞又はその膜抽出物で動物が免疫化され得る。引き続き、何百種の若しくはさもなくば何千種もの既知の又は今まで未同定であった細胞エピトープ及び受容体に対する抗体を分泌する形質細胞を単離し、そして単一形質細胞及び単一癌細胞を、固有のバーコード(それぞれのビーズごとに、したがってそれぞれのコンパートメントごとに異なるバーコード)を有するポリTプライマーを呈示する単一のビーズと一緒にコンパートメント中に共同コンパートメント化することを基礎とするスクリーニングにかけることができる。このことは、1つだけの単一細胞を特異的にカプセル化することを目的とし、2個以上の細胞の1つのコンパートメント中への共同コンパートメント化を望ましくない出来事とみなしているこれまでの単一細胞RNAseqの使用とは根本的に異なっている。形質細胞及び癌細胞を内在しているコンパートメントの生成に引き続き、それらの試料は、標的細胞に作用する抗体の効果的な分泌を可能にするようにインキュベートされ得る。抗体が、表面受容体に結合することができるだけでなく、単一のカスケードを誘発させ、最終的に発現様式の変化をもたらし得ることは良く知られている(非特許文献5、非特許文献6)。インキュベート期間の後に、上記形質細胞及び癌細胞はコンパートメント内で溶解され得て、細胞内mRNAは、該コンパートメント中のバーコード化されたポリTプライマーとハイブリダイズする。これにより、各々のコンパートメント中の両者の細胞型のmRNAが同じバーコードに物理的に結合され/同じバーコードで標識されることが保証される。言い換えれば、動物の形質細胞の抗体をコードする遺伝子、及びヒトの癌細胞において該動物の抗体と接触した時に発現される遺伝子の両方は、同じバーコードで標識される。この工程で、又は該コンパートメントの内側で第1鎖cDNAが合成された後のいずれかで、全てのコンパートメントの内容物がプールされる。引き続き、次世代シーケンシングライブラリーが作製され、シーケンシングされる。次いで、得られたデータはそれらのバーコードに基づいて解析され、こうして特定のコンパートメント中に存在した抗体の正体だけでなく、該抗体のヒト細胞の発現パターンに対する効果も解明される。これは、発現パターンから導き出すことができる所望の機能的効果を有する抗体、例えば特定の経路を活性化/不活性化させる抗体を特異的に見つけることを可能にする。この手法は、何百種又は何千種のエピトープを含む細胞全体又は膜抽出物での動物の免疫化に基づく何百万種の抗体を、何百種の又はさもなくば何千種もの効果について並行してスクリーニングすることを可能にする。この多重化の高さは、創薬において今までに実現されていないが、本発明により提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Fan, H.C., G.K. Fu, and S.P.A. Fodor, Science, 2015. 347(6222): p. 628
【文献】Macosko, E.Z. et al., Cell, 2015. 161(5): p. 1202-14
【文献】Klein, A.M., et al., Cell, 2015. 161(5): p. 1187-201
【文献】Rotem, A., et al., Nat Biotechnol, 2015. 33(11): p. 1165-72
【文献】Silva, H.M., et al., Immunol Lett, 2009. 125(2): p. 129-36
【文献】Franke, A., et al., PLoS One, 2011. 6(2): p. e16596
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、複数のマイクロ流体コンパートメントであって、上記コンパートメントの少なくとも1%が、部分集合を構成し、該部分集合における各々のコンパートメントは、
(i)第1の細胞と、
(ii)該第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に特異的に結合することが意図されるポリペプチドリガンドを発現する1個の第2の細胞又は1個の無細胞発現系と、
(iii)群に固有のバーコード配列、並びにmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列をそれぞれ含む1群のバーコードオリゴヌクレオチドと、
を含む、複数のマイクロ流体コンパートメントに関する。
【0006】
第2の態様において、本発明は、第1の態様による複数のマイクロ流体コンパートメントを生成する方法であって、
(a)マイクロ流体システム中に、(i)複数の第1の細胞を含む流体と、(ii)該第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に特異的に結合することが意図されるポリペプチドリガンドをそれぞれ発現する複数の第2の細胞又は無細胞発現系を含む流体と、(iii)各々の群が群に固有のバーコード配列、並びにmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列を含む1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含む流体とを導入する工程と、
(b)第1の細胞、第2の細胞又は無細胞発現系、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドを、前記複数のコンパートメントにおけるコンパートメントの部分集合のサイズが少なくとも1%であるように、マイクロ流体コンパートメント中に繰り返し共同コンパートメント化する工程と、
を含む、方法に関する。
【0007】
第3の態様において、本発明は、細胞の遺伝子発現を測定する方法であって、
(a)第1の態様による複数のマイクロ流体コンパートメントを準備する工程と、
(b)該コンパートメント中に含まれる細胞を溶解する工程と、
(c)該細胞から放出されるmRNAをcDNAへと逆転写する工程と、
(d)該cDNAを増幅する工程と、
(e)その配列及び任意に該cDNAのそれぞれの量を測定する工程と、
(f)同じバーコード配列を含む配列を、以下の配列:
- 第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される1種のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列とその他の配列において対応付けられていない固有のバーコード配列を含む配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される2種以上のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列と対応付けられた固有のバーコード配列を含む配列と、
を除外して選択する工程と、
を含み、工程(c)又は工程(d)は、プライマーとしてバーコードオリゴヌクレオチドを用いて行われる、方法に関する。好ましくは、上記方法は、どのポリペプチドリガンドが、工程(f)で選択された配列の起源となる細胞と同じコンパートメント中に含まれるかを判定する工程(g)を更に含み、該工程(g)は、除外された第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列から、工程(f)の選択された配列のバーコード配列と対応付けられたポリペプチドリガンドをコードする核酸配列を同定することを含む。
【0008】
第4の態様において、本発明は、(i)標的細胞の遺伝子発現に対する、上記標的細胞又はその表面上の到達可能な1種以上の分子若しくはその一部分で脊椎動物を免疫化することにより誘導された抗体の効果を測定するための、又は(ii)標的細胞の遺伝子発現に対する、ライブラリーに由来するポリペプチドリガンドの効果を測定するための、第3の態様の方法の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液滴中での細胞内トランスクリプトームの従来の分子バーコード化(Macosko, E.Z., et al., Cell, 2015. 161(5): p. 1202-14に記載される)を示す図である。A)Drop-Seqバーコード化の概略。複合組織は個々の細胞に解離され、それらは次いで、バーコード化されたプライマーを有するマイクロ粒子(灰色の丸)と一緒に液滴中にカプセル化される。それぞれの細胞は液滴内で溶解され、そのmRNAはその随伴マイクロ粒子上のプライマーに結合する。それらのmRNAはcDNAへと逆転写され、「マイクロ粒子に結合された単一細胞トランスクリプトーム」(STAMP)と呼ばれる1群のビーズが生成される。バーコード化されたSTAMPは、次いで高スループットmRNA-seqのためにプールで増幅させることで、あらゆる所望の数の個々の細胞を分析することもできる。B)マイクロ粒子上のプライマーの配列。全てのビーズ上のプライマーは、STAMP形成後にPCR増幅を可能にする共通配列(「PCRハンドル」)を含む。各々のマイクロ粒子は108個より多くの個々のプライマーを含み、それらの個々のプライマーは同じ「細胞バーコード」を共に有するが(C)、mRNA転写物のデジタル計数を可能にする異なる固有の分子識別子(UMI)を有する(D)。30塩基対のオリゴdT配列が、mRNAの捕捉のために全てのプライマー配列の末端に存在する。
【
図2】遺伝子発現ベースの抗体スクリーニングのための新規手法の概略を示す図である。動物をヒト細胞又はその膜抽出物で免疫化する。結果として、免疫化された動物は、何百種又は何千種もの表面エピトープに対する抗体を発現する形質細胞を生成することとなる。これらの細胞を単離し、単一細胞レベルでマイクロ流体液滴中に、免疫化のために使用されたヒト細胞型及びビーズ上のバーコード化されたポリTプライマー(それぞれのビーズごとに、したがってそれぞれの液滴ごとにバーコードは異なる)と一緒にカプセル化する。引き続き上記液滴をインキュベートすることで、分泌された抗体により標的細胞の網羅的遺伝子発現パターンに影響が及ぼされる。後続工程として、該液滴内の両方の細胞型を溶解させ、それらのmRNAを、ビーズ上に存在するオリゴヌクレオチドバーコード(それぞれの液滴ごとに、したがってそれぞれの形質細胞-標的細胞の組ごとに固有のものである)で標識する。次いで次世代シーケンシング(RNAseq)を実施し、データを解析する。結果として、それぞれの抗体の細胞内シグナル伝達に対する効果を測定することができ、こうして、多くの新規の治療用抗体が高度に多重化された様式で解明される。
【
図3】96個の異なる試料の構成を示す図である。種々のバーコード化がなされたプライマーを備えるビーズ(左上)を、ヒトSKBR3癌細胞(細長い形状)、マウス抗Her2ハイブリドーマ細胞(丸い形状)又は両者の混合物と一緒に試験管中に手動でピペッティングする。両者の混合物の場合には、上記ヒト癌細胞を、抗Her2抗体とプレインキュベートした。
【
図4】試料処理を示す図である。細胞が溶解されて、細胞内mRNAが、バーコード化されたプライマーとハイブリダイズする(1)。この段階で全てのビーズをプールすることができ、それらの試料は、全ての下流工程のために一緒に処理される。テンプレートスイッチング逆転写酵素による逆転写を行うことで(2)、異なるビーズ上のmRNAには、異なるバーコード化がなされていることが保証される。引き続き次世代シーケンシングライブラリーを作製するが、その作製には、多重化工程、タグメンテーション工程、及び幾つかの精製工程が含まれる(3~4)。最後に試料をシーケンシングし(5)、データを解析する(6)。工程(1)及び(2)についての挿絵は、Macosco et al., Cell, 161(5):1202-14, 2015. doi: 10.1016/j.cell.2015.05.002から抜粋した。
【
図5】シーケンシング実験から得られた結果を示す図である。それぞれの点は、1つの試料に対応し、ヒト(x軸)及びマウス(Y軸のリード)のその数に相当する。楕円で印した「mm」(左側)内の試料は、マウスハイブリドーマ細胞のみを内在しているチューブに明らかに割り当てることができ、楕円で印した「hs」(下方)内の試料は、ヒト癌細胞のみを内在しているチューブに明らかに割り当てることができ、そして長方形内の試料は、両方の細胞型を内在しているチューブに明らかに割り当てることができる(「mm-hs」で印される)。厳密な閾値アルゴリズムに基づいて、幾つかの試料は割り当てられないままである(例えば、いずれの種についても300未満のリードを示す場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を下記に詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬は変更することができるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することを目的とするものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。他に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0011】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Koelbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)及び"Encyclopedia of Microfluidics and Nanofluidics", Springer Reference, Volume 1に記載のように定義される。
【0012】
幾つかの文献が本明細書の文章全体を通して引用される。本明細書に引用される各々の文献(特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、使用説明書等の全てを含む)は、上記又は下記を問わず、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書中のいずれの記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるものではない。
【0013】
下記で本発明の要素を記載する。これらの要素は特定の実施形態とともに挙げられているが、更なる実施形態を作成するのに、これらの要素をどのような方法及びどのような数でも組み合わせることができることを理解されたい。多様に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を例示的に記載された実施形態のみに限定するものとは解釈されない。本明細書は例示的に記載された実施形態と、あらゆる数の開示された及び/又は好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持及び包含するものであると理解されたい。さらに文脈上他に指定のない限り、本出願において記載された全ての要素のあらゆる並び替え(permutations)及び組み合わせが本出願の明細書により開示されていると見なされる。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」という語は(the word "comprise", and variations such as "comprises" and "comprising")、提示の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外しないことを意味するものと理解される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、数量を特定していない単数形(the singular forms "a", "an", and "the")は、文脈上他に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0015】
第1の態様において、本発明は、複数のマイクロ流体コンパートメントであって、上記コンパートメントの少なくとも1%が、部分集合を構成し、該部分集合における各々のコンパートメントは、
(i)第1の細胞と、
(ii)該第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に特異的に結合することが意図されるポリペプチドリガンドを発現する1個の第2の細胞又は1個の無細胞発現系と、
(iii)群に固有のバーコード配列、並びにmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列をそれぞれ含む1群のバーコードオリゴヌクレオチドと、
を含む、複数のマイクロ流体コンパートメントに関する。
【0016】
本明細書で使用される用語「複数」は、少なくとも20、少なくとも100、少なくとも1000、又は少なくとも10000の数を指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「マイクロ流体コンパートメント」又は「マイクロコンパートメント」は、水性液体を含む又はカプセル化する或る特定のサイズのコンパートメントを指す。該マイクロ流体コンパートメントのサイズは、通常は1マイクロリットル(μl)未満である。好ましくは、そのサイズは、1000 nl未満、100 nl未満、20 nl未満、又は最も好ましくは1 nl未満である。そのサイズの下限は、1 pl、好ましくは10 plである。
【0018】
多岐にわたるコンパートメント化法又はマイクロカプセル化法を利用可能であり(Benita, S., Ed. (1996). Microencapsulation: methods and industrial applications. Drugs and pharmaceutical sciences. Edited by Swarbrick, J. New York: Marcel Dekker)、本発明により使用されるマイクロ流体コンパートメントの生成に使用することができる。文献では、実に200種を超えるマイクロカプセル化法又はコンパートメント化法が明らかにされている(Finch, C. A. (1993) Encapsulation and controlled release. Spec. Publ.-R. Soc. Chem. 138, 35)。これらは、脂質ベシクル(リポソーム)等の膜に包まれた水性ベシクル(New, R. R. C., Ed. (1990). Liposomes: a practical approach. The practical approach series. Edited by Rickwood, D. & Hames, B. D. Oxford: Oxford University Press)、及び非イオン性界面活性剤ベシクル(van Hal, D. A., Bouwstra, J. A. & Junginger, H. E. (1996). Nonionic surfactant vesicles containing estradiol for topical application. In Microencapsulation: methods and industrial applications (Benita, S., ed.), pp. 329-347. Marcel Dekker, New York.)を含む。好ましい実施形態においては、上記マイクロ流体コンパートメントは、液滴、ナノウェル、及びバルブベースのマイクロ流体コンパートメントからなる群から選択される。ナノウェルは、任意の形状及び深さの窪みである。好ましくは、ナノウェルは、以下に定義される固体粒子の直径の2倍未満の直径を有するため、そのコンパートメント中には個別のビーズだけしか捕捉されない(Fan HC, Fu GK, Fodor SP. Science. 347(6222):1258367, 2015. doi: 10.1126/science.1258367)。言い換えると、その直径は、少なくとも200 nmで、かつ100 μmまで、好ましくは600 nm~20 μmである。ナノウェルの容量は、好ましくは1 pL~10 nLである。バルブベースのコンパートメントは、マイクロ流体バルブにより閉鎖又は閉塞されるマイクロ流体チャネルの区分である(Thorsen T, Maerkl SJ, Quake SR , Science 298(5593): 580-584, 2002. DOI: 10.1126/science.1076996)。バルブベースのコンパートメントの容量は、好ましくは1 pL~10 nLである。好ましくは、該マイクロ流体コンパートメントは、不混和性液体中の水性液体のマイクロ流体液滴である。このように、好ましくは本発明のマイクロコンパートメントは、エマルジョン、つまりは2つの不混和性の液相であって、該相の一方がもう一方の相中に微視的なサイズの液滴として分散されている不均質な系から形成される(Becher, P. (1957) Emulsions: theory and practice. Reinhold, New York; Sherman, P. (1968) Emulsion science. Academic Press, London; Lissant, K.J., ed Emulsions and emulsion technology. Surfactant Science New York: Marcel Dekker, 1974; Lissant, K.J., ed. Emulsions and emulsion technology. Surfactant Science New York: Marcel Dekker, 1984)。エマルジョンは、不混和性液体の任意の適切な組み合わせにより製造することができる。好ましくは、本発明のエマルジョンは、液滴の形で存在する相として水(粒子及びその他の成分を含む)と、これらの液滴が懸濁される周囲マトリックスとしての疎水性の不混和性液体(好ましくは油)とを有する。そのようなエマルジョンは、「油中水型」と呼ばれる。これは、水相が別々の液滴中にコンパートメント化されるという利点を有する。好ましくは疎水性油である外部相は一般的に不活性である。該エマルジョンは、1種以上の表面活性剤(界面活性剤)の添加により安定化され得る。これらの界面活性剤は、水/油界面で相の分離を防ぐ(又は少なくとも遅延させる)働きをする。多くの油及び多くの乳化剤を、油中水型エマルジョンの生成のために使用することができる。最近の編集物には、16000種の界面活性剤が挙げられており、それらの多くが乳化剤として使用される(Ash, M. and Ash, I. (1993) Handbook of industrial surfactants. Gower, Aldershot)。
【0019】
好ましくは、水性マイクロコンパートメントは、マイクロ流体システムにおいて生成され、取り扱われ、及び/又は制御される。この技術は、微細加工チャネルを通じた連続液流の操作に基づいている。液流の作動は、外部圧力源、外部機械的ポンプ、一体型機械的マイクロポンプ、又は毛管力及び動電機構の組み合わせのいずれかにより行われる。連続流システムにおけるプロセス監視機能は、ナノリットル範囲にまで下がった分解能を提供するMEMS技術に基づく高感度マイクロ流体流量センサを用いて実現することができる。
【0020】
マイクロ流体デバイスは、一般的に約10マイクロメートルから数百マイクロメートルの直径のチャネルのネットワークからなり、その中に少量の試薬を特定の順序で注入し、混合し、そして特定の時間にわたりインキュベートすることができる。アッセイは、バルブ(チャネルの特定の領域を閉塞する)を使用して独立したコンパートメントを生成することにより、又は不混和性の油相により取り囲まれた水性液滴が閉じた容器として働く2相マイクロ流体工学によって高度に並列化することができる。これらの手法は、劇的に減少されたアッセイ容量(ピコリットルからナノリットル)、及び大きく改善されたスループットを可能にする。例えば、コンパートメントは、1秒間当たりに1000個を超える速度で生成され得る。さらに、コンパートメントを同様の速度で分割、融合及び選別するためのマイクロ流体モジュールが開発されており、こうして古典的なベンチトップ手順を模擬する操作のレパートリーが提供される。
【0021】
好ましい実施形態(本明細書の全ての態様に当てはまる)において、上記デバイス、特にチャネルは、真核細胞を含むコンパートメントを取り扱うのに十分な大きさである。言い換えると、上記デバイス、特にチャネルは、本明細書に記載されるサイズのコンパートメント、特に660 plの液滴を取り扱うのに十分な大きさである。
【0022】
更なる実施形態において、上記コンパートメントの部分集合、すなわちコンパートメントの少なくとも1%は、それぞれのコンパートメントが特定の成分を含む部分集合を構成するが、そのサイズは、複数のコンパートメントの全数の少なくとも2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、好ましくは13.5%、又は更に20%超であり、その際、列挙したそれぞれのより大きい百分率は、隣のより小さい百分率よりも好ましい。特定の実施形態においては、該百分率は、少なくとも5%である。
【0023】
さらに、複数のマイクロ流体コンパートメントのコンパートメントの25%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満は、コンパートメントが空である「ブランク」の部分集合(上記又は下記で部分集合について述べられる場合に、上記部分集合を意味し、ブランクの部分集合を意味しない)を構成する。これに関して「空である」とは、コンパートメントが、上記定義(項目(i)~(iii))の第1の細胞、第2の細胞若しくは無細胞発現系、又は1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含まないことを意味する。「ブランク」の部分集合は、そのような空であるコンパートメントだけを含む部分集合である。
【0024】
第1の態様の部分集合のそれぞれのコンパートメントは、2個以上の第1の細胞、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個までの第1の細胞を含むことができ、ここで、より低い上限は、より高い上限よりも好ましい。第1の態様の方法の最も好ましい実施形態においては、上記部分集合の各々のコンパートメントは、ちょうど1個の第1の細胞を含む。
【0025】
本明細書で使用される用語「第1の細胞」は、あらゆる細胞を指し、好ましくはその細胞は、哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。1つの実施形態においては、上記細胞は、幹細胞又は多能性細胞、例えば胚性幹細胞若しくは成人幹細胞、又は非幹細胞及び非多能性細胞であって、好ましくは多能性がポリペプチドリガンドにより誘導可能である細胞である。そのような非幹細胞及び非多能性細胞は、好ましくは外胚葉、内胚葉、又は中胚葉の系譜に由来する細胞である。上記細胞は、成長停止細胞(例えば細胞周期の様々な段階、すなわちG0、G1、S、G2、前期、前中期及び中期で進行を阻止された細胞)、非増殖細胞、有糸分裂後細胞又は非有糸分裂細胞、静止細胞、良性細胞、老化細胞、in vitroで分化した胚性幹細胞、in vitroで分化した人工多能性幹細胞、最終分化した細胞、好ましくは初代細胞であり得る。好ましい細胞は脂肪細胞、星状細胞、B細胞、心筋細胞、軟骨細胞、角膜上皮細胞、樹状細胞、内分泌細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、顆粒球、造血細胞、造血幹細胞、肝細胞、ケラチノサイト、腸上皮細胞、肝臓細胞、I型肺上皮細胞、II型肺上皮細胞、リンパ球、マクロファージ、乳房上皮細胞、メラニン細胞、メサンギウム細胞、間葉系幹細胞、筋細胞、筋芽細胞、ナチュラルキラー細胞、神経細胞、好中球、骨芽細胞、膵β細胞、周皮細胞、前脂肪細胞、前駆細胞、前立腺上皮細胞、腎上皮細胞、腎近位尿細管細胞、網膜色素上皮細胞、セルトリ細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、幹細胞、間質細胞、T細胞、及び上記細胞型のサブセットからなる群から選択される細胞である。上記細胞は非哺乳動物細胞(例えば魚類又は鳥類に由来する)又は哺乳動物細胞(例えばマウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギに由来する)、好ましくはヒト細胞である。
【0026】
好ましい実施形態においては、上記第1の細胞は疾患細胞である。特に、疾患細胞は、腫瘍細胞、慢性感染細胞、老化細胞、炎症性表現型を示す細胞、アミロイドタンパク質を蓄積している細胞、又はミスフォールドしたタンパク質を蓄積している細胞とすることができる。
【0027】
腫瘍細胞の場合、基礎疾患は、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS腫瘍、乳癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍ファミリー、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、咽頭癌及び下咽頭癌、白血病、肝癌、肺癌、リンパ腫、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、副鼻腔癌及び鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫-成人軟部癌、皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択されることが好ましい腫瘍である。
【0028】
慢性感染細胞の場合、基礎疾患は慢性感染性疾患、例えば結核、マラリア、慢性ウイルス性肝炎(HBV、D型肝炎ウイルス及びHCV)、後天性免疫不全症候群(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされる)、又はEBV関連障害:全身性自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ及びシェーグレン症候群)、及び多発性硬化症(MS)である。好ましくは、上記慢性感染細胞は、先に挙げた感染性疾患の病原体又はその一部分を含む。
【0029】
老化細胞の場合、基礎疾患は、老化関連疾患、例えば(i)早老を特徴とする早老性症候群と呼ばれる希少な遺伝性障害:ウェルナー症候群(WS)、ブルーム症候群(BS)、ロスモンド-トムソン症候群(RTS)、コケイン症候群(CS)、色素性乾皮症(XP)、裂毛症若しくはハッチンソン-ギルフォードプロジェリア症候群(HGPS)、又は(ii)一般的な年齢関連障害:肥満、2型糖尿病、サルコペニア、骨関節炎、特発性肺線維症及び慢性閉塞性肺疾患、白内障、神経変性疾患若しくは癌治療に関連する障害である。好ましくは、上記老化細胞は、特にミスフォールドした形で、及び/又は細胞表面上に提示されて、1種以上のタンパク質、例えばプリオンタンパク質(PrP)、FasR、Fasリガンド、CD44、EGF受容体、CD38、Notch-1、CD44、CD59又はTNF受容体を発現する。それにもかかわらず、第1の細胞は、これらのタンパク質の1種以上を発現する非疾患細胞であってもよい。
【0030】
炎症性表現型を示す細胞の場合においては、基礎疾患は、炎症性疾患、例えばアレルギー、喘息、アテローム性動脈硬化症(Atherosclerosis)、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、炎症性筋疾患、肥満、骨盤炎症性疾患、再潅流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、脈管炎、又は間質性膀胱炎である。好ましくは、炎症性表現型を示す細胞は、1種以上の炎症誘発因子、例えばブラジキニン、C3、C5a、XII因子、膜攻撃複合体(Membrane attack complex)、プラスミン、トロンビン、リソソーム顆粒、ヒスタミン、IFN-γ、IL-8、IL-6、IL-8、IL-18、ロイコトリエンB4、一酸化窒素、プロスタグランジン類、TNF-α、又はC反応性タンパク質を過剰発現する細胞である。
【0031】
アミロイドタンパク質を蓄積している細胞の場合に、基礎疾患は、アミロイドフィブリルの異常な蓄積を伴う疾患、例えばアルツハイマー病、2型糖尿病、パーキンソン病、伝達性海綿状脳症、致死性家族性不眠症、ハンチントン病、甲状腺の髄様癌、不整脈、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、産生腺腫、家族性アミロイドポリニューロパチー、遺伝性非神経障害性全身性アミロイドーシス、透析関連アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、脳アミロイドアンジオパチー脳アミロイドアンジオパチー、全身性ALアミロイドーシス、又は孤発性封入体筋炎である。好ましくは、アミロイドタンパク質を蓄積している細胞は、1種以上のアミロイド、例えばβアミロイド、IAPP、α-シヌクレイン、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、アポリポタンパク質A1、血清アミロイドA、メディン(Medin)、プロラクチン、トランスサイレチン、リゾチーム、β-2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピセリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、又はS-IBMを過剰発現する細胞である。
【0032】
ミスフォールドしたタンパク質を蓄積している細胞の場合においては、基礎疾患は、プロテオパチー、例えばアルツハイマー病、脳β-アミロイドアンジオパチー、緑内障における網膜神経節細胞変性、プリオン病、パーキンソン病、タウオパチー、前頭側頭葉変性症、FTLD-FUS、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、家族性イギリス型認知症、家族性デンマーク型認知症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、CADASIL、アレキサンダー病、セイピノパチー、家族性アミロイド性ニューロパチー、老人性全身性アミロイドーシス、AL(軽鎖)アミロイドーシス、AH(重鎖)アミロイドーシス、AA(続発性)アミロイドーシス、II型糖尿病、大動脈中膜アミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、ApoAIIアミロイドーシス、ApoAIVアミロイドーシス、フィンランド型の家族性アミロイドーシス、リゾチームアミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、封入体筋炎/ミオパチー、白内障、ロドプシン突然変異を伴う網膜色素変性症、甲状腺髄様癌、心房性アミロイドーシス、下垂体プロラクチノーマ、遺伝性格子状角膜ジストロフィー、皮膚苔癬アミロイドーシス、マロリー小体、角膜ラクトフェリンアミロイドーシス、肺胞蛋白症、歯原性(ピンドボルグ)腫瘍アミロイド、精嚢アミロイド、嚢胞性線維症、鎌状赤血球症、又は重症疾患ミオパチーである。好ましくは、ミスフォールドしたタンパク質を蓄積している細胞は、1種以上のタンパク質、例えばアミロイドβペプチド(Aβ)、タウタンパク質、アミロイドβペプチド(Aβ)、アミロイドβペプチド(Aβ)、プリオンタンパク質、α-シヌクレイン、微小管関連タンパク質タウ(タウタンパク質)、TDP-43、肉腫融合(FUS)タンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、TDP-43、FUS、タンデムグルタミン伸長を伴うタンパク質、ABri、ADan、シスタチンC、Notch3、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、セイピン(Seipin)、トランスサイレチン、セルピン、モノクローナル免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、アミロイドAタンパク質、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP;アミリン)、メディン(ラクトアドヘリン)、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、アポリポタンパク質AIV、ゲルソリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、β-2ミクログロブリン、アミロイドβペプチド(Aβ)、クリスタリン、ロドプシン、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、プロラクチン、ケラトエピセリン、ケラチン、ケラチン中間径フィラメントタンパク質、ラクトフェリン、サーファクタントタンパク質C(SP-C)、歯原性エナメル芽細胞関連タンパク質、セメノゲリンI、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質、ヘモグロビン、又はミオシンユビキチン化の過剰タンパク質溶解状態をミスフォールドしている細胞である。
【0033】
第1の態様の好ましい実施形態においては、上記第1の細胞は、各々のコンパートメントにつき同じ細胞、又は同じ細胞型(例えば腫瘍細胞)である。
【0034】
本明細書で使用される用語「第2の細胞」は、ポリペプチドリガンドを分泌する、又はポリペプチドリガンドをその表面上に提示する細胞を指す。第2の細胞が、複数のコンパートメント内で同じ細胞型であることが好ましい。特に、上記第2の細胞は、B細胞系譜の細胞、好ましくは形質細胞である。最も好ましくは、B細胞系譜の細胞は、第1の細胞又は該第1の細胞の表面上の到達可能な1種以上の分子若しくはその一部分、例えば膜抽出物で免疫化された脊椎動物に由来する。もう1つの実施形態においては、上記第2の細胞は、ライブラリーに由来するポリペプチドリガンドを発現する細胞である。
【0035】
本明細書で使用される用語「無細胞発現系」は、インプットRNA又はDNA、例えばプラスミドからタンパク質を産生するために必要な分子の組合せ物を指す。上記組合せ物は、リボソーム、tRNA、アミノ酸(アミノアシルtRNAを含む)、RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチド、及び任意の必要な補因子、緩衝剤、並びに酵素活性のために必要な塩を含んでもよく、かつ細胞溶解物を含んでもよい。無細胞発現系の例には、限定されるものではないが、mRNA(インプットがDNAである場合)及びタンパク質の産生に必要な転写系及び翻訳系を含む細菌(例えばE.コリ)又は真核細胞(例えばウサギ網状赤血球)の無細胞抽出物が含まれる。無細胞発現系の特定の例は、Invitrogen社(米国、カリフォルニア州、カールスバッド)により供給されるExpressway(商標)Plus発現系又はRoche Diagnostics社(ドイツ、マンハイム)により供給される網状赤血球溶解物系である。本明細書での無細胞発現系の範囲は、例えば「単数」の無細胞発現系又は「1つ」の無細胞発現系について述べられる場合に、それが発現するポリペプチドリガンドにより決定される。言い換えると、無細胞発現系は、それが1種のみのポリペプチドリガンドのためのインプットRNA又はDNAを含む場合には、単一の無細胞発現系である。
【0036】
第1の態様の好ましい実施形態においては、それぞれの第2の細胞又は無細胞発現系により発現されるポリペプチドリガンドは、定常領域及び可変領域を有する。そこでは、該可変領域は通常、結合特異性を決定し、該定常領域は骨格を与える。さらに、それぞれの第2の細胞又は無細胞発現系のポリペプチドリガンドは、同じ定常領域を有することが好ましい。一般的に、複数のマイクロ流体コンパートメントは、異なるポリペプチドリガンド、特に異なる可変領域を有するペプチドリガンドを含む。
【0037】
1つの実施形態においては、前記ポリペプチドリガンドは、抗体、抗体誘導体、及び抗体ミメティックからなる群から選択される。上記抗体、抗体誘導体、又は抗体ミメティックは、単一特異的(すなわち、細胞表面上の到達可能な1種の標的分子又はその一部分に対して特異的)又は多重特異的(すなわち、同じ細胞又は異なる細胞の表面上の到達可能な2種以上の標的分子又はその一部分に対して特異的)、例えば二重特異的又は三重特異的であり得る(例えばCastoldi et al., Oncogene. 2013 Dec 12;32(50):5593-601; Castoldi et al., Protein Eng Des Sel. 2012 Oct;25(10):551-9を参照)。
【0038】
本明細書で使用される用語「抗体誘導体」は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含むが、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY又はIgW等の抗体の全体構造を有さないものの、標的分子を依然として結合可能である分子を指す。上記誘導体は、限定されるものではないが、機能的(すなわち、標的結合性、特に特異的標的結合性)抗体フラグメント、例えばFab、Fab2、scFv、Fv若しくはそれらの一部分、又は免疫グロブリンのその他の誘導体若しくは組み合わせ、例えばナノボディ、ダイアボディ、ミニボディ、ラクダ科単一ドメイン抗体、単一ドメイン若しくはFabフラグメント、可変領域の重鎖及び軽鎖のドメイン(例えばFd、Vλ及びVκを含むVL、VH、VHH)、並びに少なくとも2つの構造的ループにより連結された免疫グロブリンドメインの2つのβストランドからなるミニドメインであってもよい。好ましくは、抗体誘導体は一価である。
【0039】
本明細書で使用される用語「抗体ミメティック」は、抗体と同様に抗原に特異的に結合することができるが、抗体に構造的に関連していない有機化合物を指す。抗体ミメティックは通常、約3kDa~20kDaのモル質量を有する人工ペプチド又はタンパク質である。抗体ミメティックの例は、限定されるものではないが、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、クニッツ型ドメインペプチド、モノボディ、プロテインAのZドメイン、γBクリスタリン、ユビキチン、シスタチン、スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7D、リポカリン、膜受容体のAドメイン、アンキリンリピートモチーフ(ankyrin repeat motif)、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼインヒビターのクニッツ型ドメイン(Kunitz domain)、フィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメイン、合成ヘテロ二価リガンド若しくはヘテロ多価リガンド(Josan et al., Bioconjug Chem. 2011 22(7):1270-1278;Xu et al., PNAS 2012 109 (52) 21295-21300;Shallal et al., Bioconjug Chem. 2014 25(2) 393-405)又は例えば(ランダム)ペプチドライブラリーに由来する合成ペプチドリガンドである。合成ペプチドリガンドは、特定の標的分子に結合する機能のある非天然産生アミノ酸配列を有する。本発明の範囲内でのペプチドリガンドは一般的に、約50未満のアミノ酸残基の、好ましくは約40未満のアミノ酸残基の拘束された(すなわち、例えばβターン若しくはβプリーツシートを生ずるアミノ酸が存在する等の幾つかの構造要素を有するか、又は例えばジスルフィド結合されたCys残基が存在することにより環状化される)又は拘束されていない(線状)アミノ酸配列である。約40未満のアミノ酸残基のペプチドリガンドのなかでも好ましいのは、約10アミノ酸残基から約30アミノ酸残基の間のペプチドリガンドである。
【0040】
本明細書で使用される用語「特異的に結合することが意図される」は、可能性のある結合反応が意図される又は望まれることを指す。その結合反応は、第2の細胞又は無細胞発現系が、第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に結合するポリペプチドを偶然発現するために第1の細胞及び第2の細胞又は無細胞発現系の共同コンパートメント化により全く偶然に又は偶発的に生じ得る偶然の結合反応ではない。「意図される」とは、例えば、共同コンパートメント化が、第1の細胞の表面上の到達可能な分子若しくはその一部分に結合する、及び/又は第1の細胞の遺伝子発現に対する或る特定の効果、特に所望の効果を引き起こすポリペプチドリガンドを同定するように設計されているスクリーニングの一部として実施されることを意味する。1つの実施形態において、特に第2の細胞が、動物を本明細書に記載される第1の細胞により免疫化することにより得られる実施形態においては、本明細書で述べられるコンパートメントの部分集合(例えば、少なくとも5%、10%、13.5%又は20%の部分集合)が、第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に実際に特異的に結合するポリペプチドリガンドを発現する1個の第2の細胞又は1個の無細胞発現系を含むことが好ましい。しかしながら、第1の細胞に特異的ではないライブラリー由来のポリペプチドリガンドが使用される本明細書に記載される実施形態においては、おそらく上記コンパートメントの部分集合の第2の細胞又は無細胞発現系により発現される全てのポリペプチドリガンドは、第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に特異的に結合するわけではない。それにもかかわらず、なおもそれらの結合は意図される。
【0041】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」は、結合相手が、この場合には第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分が、そのような結合相手の雑多な集団、特に細胞、例えば生物、好ましくは人体において存在することを決定づける結合反応を指す。したがって、特定されたリガンドは、その特定の標的分子に結合し、本質的な量では、細胞上に存在するその他の分子、又は生物中でリガンドが接触し得るその他の分子に結合しない。一般的に、標的分子に「特異的に結合する」リガンドは、その標的分子に関して、約105 mol/リットルを上回る(例えば、106 mol/リットル、107 mol/リットル、108 mol/リットル、109 mol/リットル、1010 mol/リットル、1011 mol/リットル及び1012 mol/リットル又はそれより大きい)平衡親和性定数を有する。
【0042】
第1の細胞の表面上の到達可能な標的分子又はその一部分に関する1つの実施形態においては、上記標的分子は、細胞受容体、より好ましくは細胞シグナル伝達受容体である。好ましくは、該標的分子は、タンパク質、糖脂質又はグリコシドからなる群から選択される。特定の実施形態においては、該標的分子は、Gタンパク質結合受容体、イオンチャネル及び膜通過輸送体からなる群から選択されるタンパク質である。
【0043】
本明細書で使用される用語「バーコードオリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つのいわゆる可変領域(「バーコード配列」)を有するオリゴヌクレオチドであって、その可変領域のヌクレオチド配列が、同じ群のオリゴヌクレオチド内で同じであるオリゴヌクレオチドを指す。そこでは「可変」とは、特定のオリゴヌクレオチドの配列は変化し得るが、可変領域の配列を除いて構造及び配列が同一であるオリゴヌクレオチドが存在することを意味し、すなわち、可変領域は、オリゴヌクレオチド間で異なるが、その他は、該オリゴヌクレオチドの構造及び配列は同一である。可変領域の長さは、好ましくは1ヌクレオチド~50ヌクレオチド、より好ましくは1ヌクレオチド~20ヌクレオチド、最も好ましくは2ヌクレオチド~10ヌクレオチドである。「バーコードオリゴヌクレオチド」の全長は、好ましくは10ヌクレオチド~100ヌクレオチド、より好ましくは10ヌクレオチド~50ヌクレオチド、最も好ましくは10ヌクレオチド~25ヌクレオチドである。
【0044】
好ましい実施形態においては、上記バーコードオリゴヌクレオチドは、固有の分子識別子(UMI)を更に含む。「UMI」は、1群における全てのオリゴヌクレオチド及び/又は固体粒子に結合された全てのオリゴヌクレオチドのそれぞれのオリゴヌクレオチド分子に関して固有のもの(又は固有のものとなると考えられる長さで無作為)であるオリゴヌクレオチド配列である。これは、増幅の信頼性を改善し、増幅ノイズを低下させ得る(例えば、S. Islam et al., Quantitative single-cell RNA-seq with unique molecular identifiers. Nature methods 11, 163, Feb, 2014を参照)。またUMIは、シーケンシング後にmRNA転写物をデジタル計数するために使用することができる。そこでは好ましくは、同じバーコード配列及び同じUMIを有する全てのシーケンシングされた増幅物は、ひとまとめとして、すなわち単一の事象又は単一のmRNA転写物として計数される。UMIの固有性(uniqueness)を実現するために、その多様性4N(Nは、UMI当たりのヌクレオチドの数である)は、好ましくは、先に規定された部分集合におけるコンパートメントの数よりも、好ましくは複数のマイクロ流体コンパートメントにおけるコンパートメントの数よりも少なくとも10倍大きい。
【0045】
本明細書で使用される用語「1群のバーコードオリゴヌクレオチド」は、同じバーコード配列及び好ましくは該セット内で及び/又は固体粒子に結合されたバーコードオリゴヌクレオチド内で固有のそれぞれ1つのUMIを有する複数のバーコードオリゴヌクレオチドを指す。好ましい実施形態においては、それぞれの1群のバーコードオリゴヌクレオチドは、1つ以上の、好ましくは1つの固体粒子、好ましくはビーズ又はナノ粒子に結合されている。それが2つ以上の固体粒子に結合されている場合に、それぞれの固体粒子は好ましくは、その完全な群を含み、すなわち、それらの固体粒子は、好ましくは互いに同一のコピーであり、ここでそれぞれのコピーは、その完全な群を含む。最も好ましくは、該固体粒子はビーズである。「ビーズ」(「マイクロビーズ」とも呼ばれる)は、少なくとも100 nmで、50 μmまでの、好ましくは300 nm~10 μmの直径を有する、核酸がそこに結合し得る又は連結され得る表面を有する一様なポリマー粒子である。丸い形状である必要はなく、すなわち本明細書で使用される用語「ビーズ」は、その他の形状も包含する。本明細書で述べられるビーズは通常、ポリエチレンビーズ若しくはポリスチレンビーズ、又はゲルマトリックスでできたビーズである。本明細書で使用される用語「ナノ粒子」は、約1 nmから1000 nmまでの、好ましくは1 nmから100 nmまでの直径を有する粒子を指す。ナノ粒子の成分は、金属、例えば金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金、それらの合金、半導体材料、例えばCdSe、CdS、InAs、InP、若しくはそれらのコア/シェル構造物、又は有機粒子、例えば有機ポリマー、脂質、糖類、若しくはその他の有機材料、例えばポリスチレン、ラテックス、アクリレート、若しくはポリペプチドからできた粒子を含み得る。そのような有機粒子は、任意に幾らかの無機材料を含み得るが、無機材料の量は、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満である。
【0046】
本明細書で使用される用語「mRNA及び/又はそのcDNAに特異的に結合することが可能な配列」は、所与のmRNA及び/又はそのcDNAに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%相補性である配列を指す。mRNAに関しては、上記配列は、mRNAの3'ポリ(A)テールに特異的に結合することが可能な配列、特にポリ(dT)配列又はポリ(dU)配列であることが好ましい。そのような配列は、あらゆるmRNAに特異的に結合することが可能であり、通常は、10ヌクレオチド長~60ヌクレオチド長、好ましくは15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは約20ヌクレオチド長である。特定のmRNA及び/又はcDNAに結合するために、mRNA及び/又はそのcDNAに特異的に結合することが可能な配列は、該mRNA又はcDNAの遺伝子特異的配列(mRNAがそこから転写される遺伝子)に結合することが可能である。そのような配列は通常、10ヌクレオチド長~60ヌクレオチド長、好ましくは15ヌクレオチド長~30ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長~25ヌクレオチド長である。
【0047】
一般的に、mRNA及び/又はそのcDNAに特異的に結合することが可能な配列が、バーコードオリゴヌクレオチドの3'末端にあり、かつmRNA鋳型又はcDNA鋳型のいずれかからのDNA重合をプライミングすることが可能であることが好ましい。該配列が遺伝子特異的配列に結合することが可能である場合に、上記部分集合のコンパートメントは、遺伝子特異的配列に結合することが可能な上記配列とプライマー対を形成する更なるオリゴヌクレオチドを更に含むことが好ましく、そのプライマー対は、mRNA及び/又はそのcDNAからDNAアンプリコンを生成するために適している。好ましい実施形態においては、mRNA及び/又はそのcDNAに特異的に結合することが可能な配列は、上記群のそれぞれのバーコードオリゴヌクレオチドにつき同じである。
【0048】
第1の態様の複数のコンパートメントの好ましい実施形態においては、前記第1の細胞、及び前記第2の細胞又は前記無細胞発現系により発現されるポリペプチドリガンドは、異なる種に由来する。好ましくは、上記第1の細胞は、哺乳動物細胞、例えばマウス細胞、ラット細胞、又は霊長類細胞である。最も好ましくは、第1の細胞は、ヒト細胞である。第2の細胞又は無細胞発現系により発現される遺伝子は、真核性(例えば酵母又は昆虫)及び原核性(例えばE.コリ)の種を含む異なる種に由来する。特定の実施形態においては、その第2の細胞又は無細胞発現系により発現される遺伝子は、脊椎動物の種、特に哺乳動物の種に由来する。具体的な種の例は、霊長類動物の種、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、及びサメである。
【0049】
第2の細胞は、ポリペプチドリガンドを発現するように遺伝子操作された細胞であってもよい。この特定の場合には、該第2の細胞は、例えばヒト細胞である第1の細胞と同じ種であっても同じ種でなくてもよいが、発現されるポリペプチドリガンドは、第1の細胞とは異なる種、例えば第1の細胞がヒト細胞であれば非ヒトの種に由来する。特定の実施形態においては、第2の細胞は、ライブラリーに由来するポリペプチドリガンドを発現するように遺伝子操作されている。
【0050】
本明細書で使用される用語「ライブラリー」は、スクリーニング目的のために通常使用されるポリペプチドの、特に本明細書に規定されるポリペプチドリガンドのコレクションを指す。その用語は、ポリペプチドのコレクションをコードし、かつ貯蔵及び増殖の目的のために、例えば細菌、ウイルス及びファージを含む微生物の集団内でDNAの形で保持されているDNA断片のコレクションを包含する。ライブラリーは、ポリペプチドのコレクションを発現する細胞のコレクションも包含する。
【0051】
もう1つの好ましい実施形態においては、複数のコンパートメント内の第2の細胞又は無細胞発現系は、一様な発現パターンを有する。用語「一様な発現パターン」は、本質的に同じ遺伝子発現であるが、本質的に発現されるポリペプチドリガンドの種類に関してのみ相違し、特にその可変領域に関しては相違するが、その定常領域に関しては相違しない遺伝子発現を指す。本明細書での「本質的に同じ」とは、単一細胞分析で観察される技術的ノイズの10倍以下の、好ましくは5倍以下の、好ましくは3倍以下の変動を意味する。用語「技術的ノイズ」は、単一細胞の遺伝子発現を決定づける少なくとも1つの複製物について観察される変動を指す。技術的ノイズは、例えばBrennecke et al., Nature Methods, vol. 10, no. 11, p. 1093に記載されるようにして測定することができる。
【0052】
もう1つの好ましい実施形態においては、第1の態様の上記複数のコンパートメントの部分集合のコンパートメントはそれぞれ、以下:
- 細胞溶解剤、
- RNアーゼインヒビター、
- DNアーゼ、
- 逆転写反応のための試薬、及び/又は、
- 第1の細胞である(is)疾患細胞若しくは該疾患細胞の起源となる疾患の治療のための薬物又は薬物候補、
の1種以上を更に含む。そのような薬物は、例えば増感剤として作用する、該薬物への第1の細胞の感受性に影響を及ぼすポリペプチドリガンドをスクリーニングするために使用することができる。
【0053】
逆転写反応のための試薬は、好ましくは逆転写酵素、水性緩衝液、塩及び/又はデスオキシヌクレオシド三リン酸を含む。適切な試薬は、当該技術分野で良く知られており、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Edition), Green & Sambrook 2012を参照のこと。好ましくは限定されるものではないが、AMV、クローニングされたMMLV、SuperscriptII、ReverTraAce、Tth逆転写酵素、B型肝炎逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、細菌性逆転写酵素、Thermoscript、RSV逆転写酵素、RAV(ラウス関連ウイルス)逆転写酵素、MAV(骨髄芽球症関連ウイルス)逆転写酵素、及びHIV逆転写酵素を含むRNA依存性DNAポリメラーゼの存在下での熱安定性RNAポリメラーゼが好ましい。Kotewicz Mらの米国特許第5,244,797号、及びGerard Gらの国際公開第1998047912号を参照のこと。好ましくは、それらの試薬は、cDNA合成の間に特定の5'オリゴヌクレオチドを導入するための一定のSmartプライマーも含む。これらのSmartプライマーは、幾つかの逆転写酵素(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素)により第1鎖合成の間に新たに合成された全てのcDNA分子中に、そのターミナルトランスフェラーゼ活性に基づき非特異的に導入される3'-ポリCストレッチを使用する。該Smartプライマーは、対象の配列(例えば、T7オリゴヌクレオチド配列)と、その3'末端の短いポリGストレッチとからなり、したがって上記cDNA分子と部分的にハイブリダイズすることが可能である。逆転写酵素がその地点に到達すると、逆転写酵素は鋳型を切り替え、残りのSmartプライマー配列と相補的な配列を、新たに合成されたcDNA鎖中に組み込む。したがって、それぞれのcDNA分子は、コードする遺伝子とは無関係に、両末端に規定された配列を有し(ポリT及び相補的なSmartプライマー配列)、こうして後続のPCRにより増幅され得る。
【0054】
第2の態様において、本発明は、第1の態様による複数のマイクロ流体コンパートメントを生成する方法であって、
(a)マイクロ流体システム中に、(i)複数の第1の細胞を含む流体と、(ii)該第1の細胞の表面上の到達可能な分子又はその一部分に特異的に結合することが意図されるポリペプチドリガンドをそれぞれ発現する複数の第2の細胞又は無細胞発現系を含む流体と、(iii)各々の群が群に固有のバーコード配列、並びにmRNA及び/又はcDNAに特異的に結合することが可能な配列を含む1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含む流体とを導入する工程と、
(b)第1の細胞、第2の細胞又は無細胞発現系、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドを、前記複数のコンパートメントにおけるコンパートメントの部分集合のサイズが少なくとも1%であるように、マイクロ流体コンパートメント中に繰り返し共同コンパートメント化する工程と、
を含む、方法に関する。
【0055】
特定の実施形態においては、複数のコンパートメントにおけるコンパートメントの部分集合のサイズは、少なくとも5%である(第1の態様に関して特定されたその他の割合も考えられる)。
【0056】
本明細書で使用される用語「流体」は、水性液体であって、そこに含まれる成分がマイクロ流体液滴中には含まれない水性液体を指す。それらの成分が水性マイクロ流体(microfluidic)液滴中に含まれるのであれば、その液体は、先に規定された不混和性の液体である。
【0057】
本明細書で使用される用語「共同コンパートメント化」は、2種以上の成分を単一のコンパートメント中で、特に先に規定されたマイクロ流体コンパートメント中で一緒にすることを指す。マイクロ流体液滴に関しては、その用語は「共同カプセル化」とも呼ぶことができ、それは本明細書で使用される場合に、水相中の成分を、不混和性相中の水性マイクロ流体液滴中に入れ込むことを指す。カプセル化法又はマイクロカプセル化法は、先に記載されている。本発明に関して、用語「共同カプセル化」は、2種以上の水性マイクロ流体液滴の成分を単一の水性マイクロ流体液滴中に入れ込むことを包含するとも解されるべきである。この過程は、液滴融合としても知られている。1対1の融合は、例えばMazutis et al.(Lab Chip (2009) vol. 9 (18) pp. 2665-2672)に従って行うことができる。1対1の融合を適用して3個以上の液滴を融合する場合に、それらの液滴は順次に融合される。更なる液滴融合法は、P. Day et al. (eds.), Integrated Analytical Systems, Springer Science+Business Media, LLC 2012, Chapter 2に記載されている。
【0058】
好ましい実施形態においては、所望の上記部分集合のサイズは、
(a)受動的な共同コンパートメント化、好ましくは共同カプセル化、
ここで、コンパートメント容量、並びに(i)の細胞の濃度、(ii)の細胞の濃度又は無細胞発現系の濃度、及び(iii)の群の濃度は、λが(i)の細胞の濃度、(ii)の細胞の濃度又は無細胞発現系の濃度、及び(iii)の群の濃度のそれぞれについて0.1から2の間、好ましくは約1であるように選択され、ここで、λは、1コンパートメント当たりの細胞、無細胞発現系、及び群のそれぞれの平均数である(それに代えて又はそれに加えて、流体(i)及び(ii)が共同カプセル化の前に合されるのであれば、λは、全ての第1の細胞及び第2の細胞又は無細胞発現系の濃度について1から3の間であり、好ましくは約2である)、
(b)確定的な共同コンパートメント化、好ましくは共同カプセル化、
ここで、チャネル形状は、第1の細胞、第2の細胞若しくは無細胞発現系、及び/又は1群のバーコードオリゴヌクレオチドの整列を促進して、ポアソン分布により決まる(Poisson-determined)共同コンパートメント化よりも改善された共同コンパートメント化が達成される、
により実現される。
【0059】
受動的な共同コンパートメント化のための方法は、例えばClausell-Tormos et al., Chem Biol. (5):427-37, 2008 and Todd et al., RSC Adv., 3, 20512-20522, 2013に記載されている。全ての第1の細胞及び第2の細胞又は無細胞発現系の濃度について1から3の間の、好ましくは約2のλを達成するために、1 ml当たりに0.5×106個~10×106個、好ましくは1 ml当たりに1×106個~3×106個の細胞/無細胞発現系の組み合わせの密度が使用されることが好ましい。受動的な共同コンパートメント化を改善するために、液滴は、正確な液滴の占有度について選別及び選択され得る。言い換えると、コンパートメント中における第1の細胞、第2の細胞若しくは無細胞発現系、及び/又は1群のバーコードオリゴヌクレオチドの存在を検出し、それらのコンパートメントは、第1の細胞、第2の細胞若しくは無細胞発現系、及び/又は1群のバーコードオリゴヌクレオチドの存在について選別される。適切な選択法及び選別法は、Hu et al., Lab Chip, 2015,15, 3989-3993; DOI: 10.1039/C5LC00686Dに記載されている。確定的な共同コンパートメント化のための方法は、例えばKemna et al., Lab Chip. 2012 12(16):2881-7; doi: 10.1039/c2lc00013jに記載されている。確定的な共同コンパートメント化に適したチャネル形状は、例えばKemna et al.にも記載されるディーン力を使用する螺旋形のチャネルである。
【0060】
第2の態様の方法のもう1つの実施形態においては、工程(b)において上記第1の細胞、第2の細胞又は無細胞発現系、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドは、工程(b)の前にマイクロ流体コンパートメント、好ましくは液滴中に個々に内包されており、そして工程(b)における共同コンパートメント化は、コンパートメントの、好ましくは液滴の融合によるものであり、又は工程(b)において上記第1の細胞、第2の細胞又は無細胞発現系、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドは、共存する前にマイクロ流体コンパートメント中には内包されておらず、コンパートメント、好ましくは液滴は、工程(b)で生成される。
【0061】
液滴は、不混和性相中に単分散された水滴又は油滴の流れを生成することにより生成され得る。マイクロ流体液滴発生器は、不混和性流体の2つ以上の流れを合わせ、不連続相にせん断力を発生させて、分離した液滴へと分裂させることにより動作する。好ましい液滴発生器は、集束流型液滴発生器及びT形液滴発生器である。集束流型液滴発生器は、分散相(集束される流体又は芯部の流体)に隣接する又はそれを包囲する連続相流体(集束する流体又は鞘部の流体)を基礎としており、こうして両方の流体が押し出されるオリフィスの近くで液滴の離脱が引き起こされる。T形液滴発生器は、マイクロチャネルのT字の分岐点を使用し、そこで液滴は、それぞれ1方向からその分岐点に向かってくる油流及び水流の間の界面不安定性をうまく活用してその交差点で自発的に形成される。
【0062】
第2の態様に関して使用される全てのその他の用語は、本発明の第1の態様に関して規定された意味を有する。さらに、第1の態様に関して特定された、第2の態様に適用可能な全ての実施形態は、第2の態様についても想定される。
【0063】
第3の態様において、本発明は、細胞の遺伝子発現を測定する方法であって、
(a)第1の態様による複数のマイクロ流体コンパートメントを準備する工程と、
(b)該コンパートメント中に含まれる細胞を溶解する工程と、
(c)該細胞から放出されるmRNAをcDNAへと逆転写する工程と、
(d)該cDNAを増幅する工程と、
(e)その配列及び任意に該cDNAのそれぞれの量を測定する工程と、
(f)同じバーコード配列を含む配列を、以下の配列:
- 第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される1種のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列とその他の配列において対応付けられていない固有のバーコード配列を含む配列と、
- 第2の細胞又は無細胞発現系により発現される2種以上のポリペプチドリガンドをコードするヌクレオチド配列と対応付けられた固有のバーコード配列を含む配列と、
を除外して選択する工程と、
を含み、工程(c)又は工程(d)は、プライマーとしてバーコードオリゴヌクレオチドを用いて行われる、方法に関する。
【0064】
好ましい実施形態においては、上記方法は、ポリペプチドリガンドと接触されていない第1の細胞の遺伝子発現と、上記方法において測定される遺伝子発現とを比較することを含む。ポリペプチドリガンドと接触されていない第1の細胞の遺伝子発現は、既に既知であっても、若しくは予め測定されてもよく、又はその遺伝子発現は、既知の第1の細胞数、好ましくは1個の第1の細胞を含む提供されたコンパートメントに対して第3の態様の方法の工程(b)~(e)を使用してコントロールとして測定され得る。ポリペプチドリガンドと接触されていない第1の細胞の遺伝子発現をこのように使用することで、ポリペプチドリガンドにより引き起こされる遺伝子発現の変化の測定が容易になる。
【0065】
本明細書で使用される用語「細胞の遺伝子発現を測定する」は、細胞により産生されるmRNAを測定することを指す。これは、特定のmRNA転写物(すなわち1つの特定の遺伝子のmRNA転写物)又は配列に分解された全てのmRNA、言い換えると細胞のトランスクリプトーム(すなわち、DNAゲノムから産生されるmRNAのコレクション)であり得る。好ましくは、mRNAの量は、同様に、例えばUMIを使用して測定される。
【0066】
本明細書で使用される用語「溶解する」は、細胞の膜の破壊により、該細胞のRNAが同じコンパートメント内でバーコードオリゴヌクレオチドに到達可能となることを指す。細胞は、コンパートメント、特に液滴の完全性を壊さない任意の適切な手段によって溶解され得る。適切な手段は、例えば熱、凍結及び融解のサイクル、レーザー照射、超音波処理、機械的溶解、例えばせん断、又は溶解緩衝液を添加すること(例えば、液滴を、溶解緩衝液を含むマイクロ流体液滴と融合させること)である。好ましい手段は、凍結及び融解のサイクル又はレーザー照射である。マイクロ流体工学の状況において、熱溶解は、マイクロ流体チップの下に取り付けられた、試料と熱的接続されている平坦な金属板を介して行うことができる。PDMS中に埋設されたスライドガラスを使用するか、又はチップを水中に事前に浸漬することによって、蒸発の問題は排除される。あるいは熱溶解は、マイクロ流体チップ中に組み込まれた加熱要素を使用することにより行うことができる。
【0067】
工程(c)においては、mRNAは、当該技術分野において既知の方法、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Edition), Green& Sambrook 2012から知られる方法を使用して転写される。逆転写反応のための試薬は先に記載されている。
【0068】
上記方法は既にこの転写を含むが、コンパートメントが無細胞発現系を含む場合には、これらの無細胞発現系のmRNAはまた、工程c)においてcDNAへと逆転写されることが指摘される。
【0069】
工程(d)において、cDNA/DNAは、当該技術分野において既知の方法、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Edition), Green & Sambrook 2012から知られる方法により増幅される。cDNAを増幅するための試薬は、好ましくは、ポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼ、水性緩衝液、塩、デスオキシヌクレオチド三リン酸、及び/又はプライマーを含む。適切な試薬は、当該技術分野で良く知られており、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Edition), Green & Sambrook 2012を参照のこと。cDNAは、例えば任意のPCRベースの方法を使用して直接的に増幅することができ、又は例えばin vitro転写(IVT)増幅により間接的に増幅することができ(例えばHashimshony et al., Cell Reports, 2, 666-673, 2002を参照)、その際、cDNAを再び転写させることで、複数のmRNA分子を得て、それらが次いで再びcDNAに転写される。好ましくは、鋳型cDNA/DNAは、約5PCRサイクル~30PCRサイクル又は10PCRサイクル~15PCRサイクルに相当する、25~30倍、より好ましくは210~25倍だけ増幅される。IVT増幅等の間接的な増幅法のためには、インキュベート時間及び/又は転写のための量若しくは酵素は、相応して調節される。まだ含まれていない場合には、オリゴヌクレオチドを増幅するための試薬(本明細書に規定される)は、増幅工程で添加される。
【0070】
工程(e)においては、cDNAの配列(及びそれにより相応のmRNAの配列)は、当該技術分野において既知の任意のシーケンシング法(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th Edition), Green & Sambrook 2012を参照)により測定することができる。例示的なシーケンシング反応には、Maxam及びGilbert(Proc. Natl. Acad Sci USA, 1977, 74:560)又はSanger(Sanger et al., 1977, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 74:5463)により開発された技術に基づく反応が含まれる。また、質量分析法によるシーケンシングを含む、様々な自動化されたシーケンシング法のいずれかを利用することができると考えられる(Biotechniques (1995) 19:448)。例えば、米国特許第5,547,835号及び国際公開第94/16101号、米国特許第5,547,835号、並びに国際公開第94121822号及び米国特許第5,605,798号及び国際特許出願番号PCT/US96/03651、Cohen et al. (1996) Adv. Chromatogr. 36: 127-162、及びGriffin et al. (1993) Appl Biochem Biotechnol 38:147-159を参照のこと。更なるその他の適切なシーケンシング方法は、例えば米国特許第5,580,732号及び米国特許第5,571,676号に開示されている。
【0071】
好ましい実施形態においては、次世代シーケンシング(NGS、第2世代シーケンシング又は第3世代シーケンシングとしても知られる)により測定される。NGSの背後にある概念は、DNAの小さい断片の塩基を、それぞれの断片がDNA鋳型鎖から再合成されるときに放出されるシグナルから順次に同定することである。NGSはこの過程を、単一の又は幾つかのDNA断片に限定されずに、何百万もの反応全体にわたり大規模並列的に拡大する。この進歩は、単一のシーケンシング実行において何百ギガ塩基のデータを生成可能な最新機器を用いて、全ゲノムにまたがるDNA塩基対の大きなストレッチを迅速にシーケンシングすることを可能にする。例えば、Shendure and Ji, Nature Biotechnology 26, 1135-1145 (2008)、又はMardis, Annu Rev Genomics Hum Genet. 2008;9:387-402を参照のこと。適切なNGSプラットフォームは、市販されており、例えばRoche社の454プラットフォーム、Roche社の454 Juniorプラットフォーム、Illumina社のHiSeq若しくはMiSeqプラットフォーム、又はLife Technologies社のSOLiD 5500若しくはIon Torrentプラットフォームである。
【0072】
工程(e)の好ましい実施形態においては、cDNA配列及びそれらのそれぞれの量、すなわち工程(d)の増幅前のそれぞれの固有のcDNA配列の量が測定される。この量は、各々のコンパートメント中に存在するmRNAの量を表す。好ましくは、その量は、UMIを使用して、すなわち同じUMIと対応付けられた配列をデジタル計数することにより測定される。
【0073】
工程(f)における配列の選択は、適切なin silico法、例えばGalaxyプロジェクト(www.galaxyproject.org)により行われる。
【0074】
本明細書で使用される用語「対応付けられた」は、それぞれのバーコードオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた逆転写又は増幅の結果としての核酸配列における連関を指す。
【0075】
工程(c)又は工程(d)におけるプライマーとしてのバーコードオリゴヌクレオチドの使用は、先に記載されるバーコードオリゴヌクレオチドの構造に依存する。例えば、該バーコードオリゴヌクレオチドがポリ(dT)配列又はポリ(dU)配列を有する場合に、それは工程(c)の逆転写のためのプライマーとして使用される。そのバーコードオリゴヌクレオチドがプライマー対の一部分である場合に、それは工程(d)におけるcDNA増幅のためのプライマーとして使用される。
【0076】
第3の態様の方法の1つの実施形態においては、工程(a)において複数のマイクロ流体コンパートメントは、第2の態様の方法を使用して提供される。
【0077】
好ましくは、第3の態様の方法においては、コンパートメントの内容物は、好ましくはバーコードオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリングの後で、かつ好ましさの低い方から工程(f)、(e)、(d)又は(c)の前の任意の段階で、かつmRNA及びcDNAに関する下限を考慮してプールされる。そのアニーリングは、細胞の溶解後にコンパートメント内で起こる(けれども、無細胞発現系により産生されたmRNAの場合は、アニーリングは事前に起こり得る)。該バーコードオリゴヌクレオチドがmRNAにアニーリングするように設計されている場合に、該コンパートメントの内容物は、好ましくは、好ましさの高い方から工程(b)、(c)又は(d)の後にプールされる。該バーコードオリゴヌクレオチドがcDNAにアニーリングするように設計されている場合に、該コンパートメントの内容物は、好ましくは、工程(d)の後にプールされる。一般的に、コンパートメントの内容物のプール作業をできるだけ早く行うことで、並行処理が可能となり、時間及び資源が削減される。この目的のために、コンパートメントの内容物は、工程(e)のシーケンシングの前にプールすることが意図される。
【0078】
コンパートメントがマイクロ流体液滴である実施形態においては、液滴の内容物のプール作業は、液滴をプールした後に液滴を破壊することにより行われる。好ましくは、該液滴は、工程(a)、(b)若しくは(c)の後にプールされ、又は複数の液滴は、プールされた液滴として事前に準備される。液滴のプール作業は常にそれらの破壊の前に行われるが、そのプール作業を破壊の直前で行う必要はない。すなわち、第3の態様の方法の工程の1つ以上は、液滴のプール作業及び破壊の間に行われ得る。プールされた(すなわち収集された)液滴は、当該技術分野で既知の任意の手段により、例えば不安定化剤の添加により、例えばClausell-Tormos et al.(Chem Biol, vol 15, pg 427, 2008)により記載されるエマルジョン不安定化剤、例えばペルフルオロオクタノール又はA104(RainDance Technologies社)を使用して、又は電界の印加により、又はエマルジョンの凍結及び融解により破壊されて、合された成分が水相中に放出される。もう1つの実施形態においては、この破壊は、液滴をレザバー中に注入(そして任意にエマルジョン不安定化剤を添加)することにより行うことができ、そこでは密度の差により相分離が起こる。次いで上方の水相は、更なる処理のために分離される。プールされたコンパートメントの、好ましくは液滴の内容物は、従来のベンチトップの状況で実施され得る。
【0079】
第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列は、例えば以下のように除外され得る。
1)好ましい実施形態においては、第1及び第2の細胞、又は無細胞発現系により発現される遺伝子(特にポリペプチドリガンド)は異なる種に由来するものであり、第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列は、種間の配列の多様性に基づき除外される。
2)第2の細胞又は無細胞発現系が一様な発現パターンを有するもう一方の実施形態においては、一様な発現パターンの全ての遺伝子の平均発現が測定され、工程(e)で測定された遺伝子発現から取り除かれる。残りの遺伝子発現が、第1の細胞の発現である。好ましくは、一様な発現パターンの全ての遺伝子の平均発現は、単一細胞レベルで、少なくとも3種の第2の細胞又は無細胞発現系について測定される。一様な発現パターンは、全てのmRNAの配列(そこからcDNAがシーケンシングされる)及びそれらのそれぞれの量を含む。
【0080】
第1の態様の更なる好ましい実施形態においては、方法は、どのポリペプチドリガンドが、工程(f)で選択された配列の起源となる細胞と同じコンパートメント中に含まれるかを判定する工程(g)を更に含み、該工程(g)は、除外された第2の細胞又は無細胞発現系に由来する配列から、工程(f)の選択された配列のバーコード配列と対応付けられたポリペプチドリガンドをコードする核酸配列を同定することを含む。好ましくは、工程(f)及び(g)は、全ての固有のバーコード配列について繰り返されるか、又は同時に実施される。これは、第2の細胞又は無細胞発現系により発現されるポリペプチドリガンドと一緒にコンパートメント中に共同コンパートメント化された全ての第1の細胞の発現パターンの測定を可能にする。この場合に、第3の態様の方法は、細胞の遺伝子発現に対するリガンドの効果を測定するための方法としても記載することができる。
【0081】
第3の態様に関して使用される全てのその他の用語は、本発明の第1態様及び第2の態様に関して規定された意味を有する。さらに、第1の態様及び第2の態様に関して特定された、第3の態様に適用可能な全ての実施形態は、第3の態様についても想定される。
【0082】
第4の態様において、本発明は、(i)標的細胞の遺伝子発現に対する、上記標的細胞又はその表面上の到達可能な1種以上の分子若しくはその一部分で脊椎動物を免疫化することにより誘導された抗体の効果を測定するための、又は(ii)標的細胞の遺伝子発現に対する、ライブラリーに由来するポリペプチドリガンドの効果を測定するための、第3の態様の方法の使用に関する。
【0083】
上記標的細胞は、第3の態様の第1の細胞である。好ましい実施形態においては、上記標的細胞は、疾患細胞、幹細胞、多能性細胞、又は非幹細胞及び非多能性細胞であって、多能性がポリペプチドリガンドにより誘導可能である細胞からなる群から選択される。好ましくは、上記標的細胞は、ヒト細胞である。
【0084】
選択肢(i)においては、上記抗体は、好ましくはB細胞系譜の細胞、より好ましくは免疫化された脊椎動物の形質細胞により発現される。
【0085】
特定の実施形態においては、選択肢(i)による使用は、脊椎動物の免疫化自体、又は脊椎動物からの細胞の単離を含まないが、脊椎動物から単離した後の脊椎動物由来の細胞を使用するin vitro適用を含む。
【0086】
第4の態様に関して使用される全てのその他の用語は、本発明の第1の態様、第2の態様、及び第3の態様に関して規定された意味を有する。さらに、第1の態様、第2の態様、及び第3の態様に関して特定された、第4の態様に適用可能な全ての実施形態は、第4の態様についても想定される。
【0087】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらは単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるものとする。
【実施例】
【0088】
実施例1: 既知の薬物標的を使用する、抗炎症特性を有する抗体の選択
方法論:マウスを、炎症経路の調節に関与するヒト細胞表面受容体、例えばアデノシンA1受容体、CD7、CD43、CD45、インテグリン、CD2、CD3のエピトープ(J. L. Cash, L. V. Norling and M. Perretti, Drug discovery today, 2014, 19, 1186-1192)で免疫化する。1回以上のブースター注射に引き続き、B細胞を脾臓及び/又は骨髄から単離する。次いで、該B細胞を、660 pLの液滴(J. Clausell-Tormos et al., Chem Biol, 2008, 15, 427-437)中に、疾患関連炎症遺伝子型を示すヒト細胞、例えば炎症関連mRNAの高い発現を示す関節炎又は多発性硬化症についての細胞モデル(C. Lambert et al., Arthritis Rheumatol, 2014, 66, 960-968、W. R. Swindell et al., Bmc Genomics, 2013, 14、A. K. Kemppinen et al., Bmj Open, 2011, 1)と一緒に共同カプセル化する。カプセル化のために、以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)よりも大幅に高い細胞密度が選択される。最大で1 mL当たりに1×105個の細胞を使用するのではなく、1 mL当たりに約3×106個(両方の細胞型の1:1混合物について)の細胞密度が使用される。この理由は、例えば以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)の場合のような1より大幅に小さいλ値(細胞密度に液滴容量を掛けたもの)ではなく、2のλ値を使用することにより、2個の細胞を同じ液滴中に共同カプセル化するための高い確率が達成されるためである。2種の細胞型に加えて、ポリTプライマー(又は特異的に標的化されるmRNA配列とアニーリングするプライマー)と一緒に固有の試料バーコード及び固有の分子識別子(UMI)が設けられるビーズ又はゲル粒子が、上記660 pLの液滴中に共同カプセル化される。次いで、得られたエマルジョンを、B細胞が分泌する抗体がヒト標的細胞の発現パターンに対して作用可能にするのに十分な時間(一般的には、数時間から1日又は2日までの間)にわたり37℃でインキュベートする。これは、細胞がマイクロ流体液滴内にある間に発現パターンが変化することを避けるためにできる限り短いインキュベート時間が選択された以前の研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)とは対照的である。インキュベート後に、細胞溶解を、細胞含有液滴と溶解緩衝液を内在している液滴とを融合させるか、又は該液滴をアレイ(H. X. Hu et al., Lab on a Chip, 2015, 15, 3989-3993)に供給し、それらを繰り返しの凍結融解サイクルにかけるかのいずれかにより惹起させる。細胞溶解されると、両方の細胞型(マウスB細胞及びヒト標的細胞)の細胞内mRNAが液滴内に放出され、こうしてビーズ上の又はゲル粒子内のポリTプライマーとハイブリダイズする。結果として、両方の細胞型のmRNAは、同じ試料バーコードを示すプライマーとハイブリダイズする。引き続き、そのエマルジョンは破壊され、全てのビーズ又はゲル粒子がプールされ、洗浄される。次いで、結合されたmRNAの逆転写はまとめて(巨視的試験管を使用して)実施される。あるいはcDNA合成を、エマルジョンの破壊前に液滴内で行うこともできる。全ての新たに生成されたcDNAは、最後にPCRにより増幅され、例えばIllumina社のシーケンシングプラットフォーム(E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214、P. Brennecke et al., Nature methods, 2013, 10, 1093-1095)のための既存のプロトコルを使用して次世代シーケンシングにかけられる。
【0089】
本実験の配列分析はその後に以下のように行われる。まず最初に、標的細胞のmRNA発現パターンを、B細胞のmRNA発現パターンと区別する必要がある。これは、2つの異なる方法で、すなわちi)マウスB細胞ドナー及びヒト標的細胞の間の限られた配列ホモロジーを活用するか、又はii)参照B細胞のトランスクリプトームを取り除くことにより行うことができる。これは、種々のB細胞の発現パターンが、固有のクローン抗体の発現とあまりかけ離れて変動しないため可能である。それに対して、ヒト標的細胞の発現パターンは、一緒にインキュベートされるB細胞が分泌する抗体に依存して変動することとなる。配列分析の第2の工程として、試料バーコードに基づいて区別することができる個々のヒト標的細胞の発現パターンを、抗炎症性mRNA発現パターン、例えば更なる先に規定された炎症関連mRNAの下方調節についてスクリーニングする。相応のトランスクリプトームを有する細胞が特定されたら、全てのシーケンシングデータを、抗炎症性発現パターンを有するヒト標的細胞と同じ液滴中に存在していたB細胞に由来する、同じバーコードを有する抗体をコードするVl遺伝子及びVh遺伝子についてスクリーニングする。これは、標的細胞に対する所望の抗炎症効果を有する抗体の特定を可能にする。この手法の様式は、
図2に示されている。
【0090】
実施例2: 既知の癌関連経路を調節することが知られていない可能性がある薬物標的に対して作用する抗癌抗体の選択
方法論:マウスを、ヒト癌細胞又はその膜抽出物で免疫化する。1回以上のブースター注射に引き続き、B細胞を脾臓及び/又は骨髄から単離する。次いで、該B細胞を、660 pLの液滴(J. Clausell-Tormos et al., Chem Biol, 2008, 15, 427-437)中に、免疫化のために使用された癌細胞と一緒に共同カプセル化する。これらは、特定の発癌遺伝子(例えばBRAF、KRAS)が過剰発現及び/又は突然変異されている腫瘍由来のヒト細胞系統又は原発癌細胞であり得る。カプセル化のために、以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)よりも大幅に高い細胞密度が選択される。最大で1 mL当たりに1×105個の細胞を使用するのではなく、1 mL当たりに約3×106個(両方の細胞型の1:1混合物について)の細胞密度が使用される。この理由は、例えば以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)の場合のような1より大幅に小さいλ値(細胞密度に液滴容量を掛けたもの)ではなく、2のλ値を使用することにより、2個の細胞を同じ液滴中に共同カプセル化するための高い確率が達成されるためである。2種の細胞型に加えて、ポリTプライマー(又は特異的に標的化されるmRNA配列とアニーリングするプライマー)と一緒に固有の試料バーコード及び固有の分子識別子(UMI)が設けられるビーズ又はゲル粒子が、上記660 pLの液滴中に共同カプセル化される。次いで、得られたエマルジョンを、B細胞が分泌する抗体がヒト標的細胞の発現パターンに対して作用可能にするのに十分な時間(一般的には、数時間から1日又は2日までの間)にわたり37℃でインキュベートする。これは、細胞がマイクロ流体液滴内にある間に発現パターンが変化することを避けるためにできる限り短いインキュベート時間が選択された以前の研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)とは対照的である。インキュベート後に、細胞溶解を、細胞含有液滴と溶解緩衝液を内在している液滴とを融合させるか、又は該液滴をアレイ(H. X. Hu et al., Lab on a Chip, 2015, 15, 3989-3993)に供給し、それらを繰り返しの凍結融解サイクルにかけるかのいずれかにより惹起させる。細胞溶解されると、両方の細胞型(マウスB細胞及びヒト標的細胞)の細胞内mRNAが液滴内に放出され、こうしてビーズ上の又はゲル粒子内のポリTプライマーとハイブリダイズする。結果として、両方の細胞型のmRNAは、同じ試料バーコードを示すプライマーとハイブリダイズする。引き続き、そのエマルジョンは破壊され、全てのビーズ又はゲル粒子がプールされ、洗浄される。次いで、結合されたmRNAの逆転写はまとめて、例えば巨視的試験管を使用して、実施される。あるいはcDNA合成を、エマルジョンの破壊前に液滴内で行うこともできる。全ての新たに生成されたcDNAは、最後にPCRにより増幅され、例えばIllumina社のシーケンシングプラットフォーム(E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214、P. Brennecke et al., Nature methods, 2013, 10, 1093-1095)のための既存のプロトコルを使用して次世代シーケンシングにかけられる。
【0091】
本実験の配列分析はその後に以下のように行われる。まず最初に、標的細胞のmRNA発現パターンを、B細胞のmRNA発現パターンと区別する必要がある。これは、2つの異なる方法で、すなわちi)マウスB細胞ドナー及びヒト標的細胞の間の限られた配列ホモロジーを活用するか、又はii)参照B細胞のトランスクリプトームを取り除くことにより行うことができる。これは、種々のB細胞の発現パターンが、固有のクローン抗体の発現とあまりかけ離れて変動しないため可能である。それに対して、ヒト標的細胞の発現パターンは、一緒にインキュベートされるB細胞が分泌する抗体に依存して変動することとなる。配列分析の第2の工程として、試料バーコードに基づいて区別することができる個々のヒト標的細胞の発現パターンを、特定の発癌遺伝子の下方調節、例えば発癌遺伝子をコードするmRNAの存在量の低下についてスクリーニングする。相応のトランスクリプトームを有する細胞が特定されたら、全てのシーケンシングデータを、ヒト癌細胞と同じ液滴中に存在していたB細胞に由来する、同じバーコードを有する抗体をコードするVl遺伝子及びVh遺伝子についてスクリーニングする。これは、ヒト癌細胞に対する所望の治療効果を有する抗体の特定を可能にする。この手法の様式は、
図2に示されている。
【0092】
実施例3: 疾患関連の網羅的発現プロファイルをその健康な対応発現プロファイルに転換させる抗体の選択
方法論:マウスを、ヒト癌細胞又はその膜抽出物で免疫化する。数回のブースター注射に引き続き、B細胞を脾臓及び/又は骨髄から単離する。次いで、該B細胞を、660 pLの液滴(J. Clausell-Tormos et al., Chem Biol, 2008, 15, 427-437)中に、免疫化のために使用された癌細胞と一緒に共同カプセル化する。カプセル化のために、以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)よりも大幅に高い細胞密度が選択される。最大で1 mL当たりに1×105個の細胞を使用するのではなく、1 mL当たりに約3×106個(両方の細胞型の1:1混合物について)の細胞密度が使用される。この理由は、例えば以前の単一細胞ゲノミクス研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)の場合のような1より大幅に小さいλ値(細胞密度に液滴容量を掛けたもの)ではなく、2のλ値を使用することにより、2個の細胞を同じ液滴中に共同カプセル化するための高い確率が達成されるためである。2種の細胞型に加えて、ポリTプライマー(又は特異的に標的化されるmRNA配列とアニーリングするプライマー)と一緒に固有の試料バーコード及び固有の分子識別子(UMI)が設けられるビーズ又はゲル粒子が、上記660 pLの液滴中に共同カプセル化される。次いで、得られたエマルジョンを、B細胞が分泌する抗体がヒト標的細胞の発現パターンに対して作用可能にするのに十分な時間(一般的には、数時間から1日又は2日までの間)にわたり37℃でインキュベートする。これは、細胞がマイクロ流体液滴内にある間に発現パターンが変化することを避けるためにできる限り短いインキュベート時間が選択された以前の研究(A. M. Klein et al., Cell, 2015, 161, 1187-1201、E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214)とは対照的である。インキュベート後に、細胞溶解を、細胞含有液滴と溶解緩衝液を内在している液滴とを融合させるか、又は該液滴をアレイ(H. X. Hu et al., Lab on a Chip, 2015, 15, 3989-3993)に供給し、それらを繰り返しの凍結融解サイクルにかけるかのいずれかにより惹起させる。細胞溶解されると、両方の細胞型(マウスB細胞及びヒト標的細胞)の細胞内mRNAが液滴内に放出され、こうしてビーズ上の又はゲル粒子内のポリTプライマーとハイブリダイズする。結果として、両方の細胞型のmRNAは、同じ試料バーコードを示すプライマーとハイブリダイズする。引き続き、そのエマルジョンは破壊され、全てのビーズ又はゲル粒子がプールされ、洗浄される。次いで、結合されたmRNAの逆転写はまとめて、例えば巨視的試験管を使用して実施される。あるいはcDNA合成を、エマルジョンの破壊前に液滴内で行うこともできる。全ての新たに生成されたcDNAは、最後にPCRにより増幅され、例えばIllumina社のシーケンシングプラットフォーム(E. Z. Macosko et al., Cell, 2015, 161, 1202-1214、P. Brennecke et al., Nature methods, 2013, 10, 1093-1095)のための既存のプロトコルを使用して次世代シーケンシングにかけられる。
【0093】
本実験のシーケンシング分析はその後に以下のように行われる。まず最初に、標的細胞のmRNA発現パターンを、B細胞のmRNA発現パターンと区別する必要がある。これは、2つの異なる方法で、すなわちi)マウスB細胞ドナー及びヒト標的細胞の間の限られた配列ホモロジーを活用するか、又はii)参照B細胞のトランスクリプトームを取り除くことにより行うことができる。これは、種々のB細胞の発現パターンが、固有のクローン抗体の発現とあまりかけ離れて変動しないため可能である。それに対して、ヒト標的細胞の発現パターンは、一緒にインキュベートされるB細胞が分泌する抗体に依存して変動することとなる。配列分析の第2の工程として、試料バーコードに基づいて区別することができる個々のヒト癌細胞の発現パターンを、網羅的発現パターンのその健康な対応発現パターンへの転換についてスクリーニングする。例えば、標的として膵臓腫瘍細胞がカプセル化される場合に、健康な膵臓細胞の網羅的発現パターンを取得し、特定の抗体の存在下でその健康な対応発現パターンとほとんど差異を示さない膵臓腫瘍細胞、例えばアポトーシス促進性因子の通常の発現レベル又は更により高い発現レベル、発癌遺伝子のより低い発現レベル等を示す膵臓腫瘍細胞を探すことができる。相応のトランスクリプトームを有する細胞が特定されたら、全てのシーケンシングデータを、ヒト癌細胞と同じ液滴中に存在していたB細胞に由来する、同じバーコードを有する抗体をコードするVl遺伝子及びVh遺伝子についてスクリーニングする。これは、ヒト癌細胞に対する所望の治療効果を有する抗体の特定を可能にする。
【0094】
実施例4: 様々な種に由来する配列間の区別
a)α-Her2抗体を分泌する単一のマウスハイブリドーマ細胞及び固有のバーコード化がなされたポリTプライマーを呈示するビーズ(32個の試料)と、
b)単一のヒトSKBR3癌細胞及び固有のバーコード化がなされたポリTプライマーを呈示するビーズ(32個の試料)と、
c)単一のマウスα-Her2ハイブリドーマ細胞、単一のヒト癌細胞(α-Her2抗体とプレインキュベートされた)及び固有のバーコード化がなされたポリTプライマーを呈示するビーズ(32個の試料)と、
を含む96個の試料を、4 μlの全容量を使用してPCRチューブ中に手動で準備した。細胞を溶解させ、該細胞(試料cの場合にはヒト及びマウス)の細胞内mRNAを、ビーズ(Chemgenes社から商業的に入手)にハイブリダイズさせた。引き続き、それらの試料をプールし、逆転写をMaxima H Minus逆転写酵素(Thermo Fisher社)を使用して実施した。第2鎖合成を、鋳型スイッチ用オリゴヌクレオチド(配列)を使用して実施した。次いで次世代シーケンシングライブラリーを、DropSeqプロトコル(http://mccarrolllab.com/dropseq/)に基づいて調製した。最後に該試料をIllumina社のプラットフォームでシーケンシングし、データを解析した。この作業の流れ全体は、
図3(試料準備)及び
図4(後続工程)に図示されている。
【0095】
全ての配列を異なるバーコードに従って分類した後に、ヒト及びマウスのリードの数を、XYグラフにプロットした(
図5)。予想通り、ほぼ等しい存在量を有する3種の異なる集団、つまりほぼマウスゲノムのみに割り当てられ得る配列を示す試料(試料組成物aに相当、
図5で「mm」で印される)、ほぼヒトゲノムのみに割り当てられ得る配列を示す試料(試料組成物bに相当、
図5で「hs」で印される)、並びにマウスゲノム及びヒトゲノムにほぼ等しい割合で割り当てられ得る配列を示す試料(試料組成物cに相当、
図5で「mm-hs」で印される)が観察された。
【0096】
厳密な質の閾値に基づいて、幾つかの試料(例えば、リードの数が300リードの閾値を下回る試料、又はマウスゲノム及びヒトゲノムの両方と合致する配列を示すが、ほぼ等しい割合にない試料)は、示されたいずれの集団にも自動的には割り当てられなかった。これらは、
図5では黒色で示されている。しかしながら、これらの割り当てられなかった試料の数は、閾値の低下により、又は試料当たりのリードの全数の増加(好ましい)により減らすことができることに留意されたい。
【0097】
より重要なことには、試料組成物c(単一のマウスハイブリドーマ細胞及びヒト癌細胞を含み、本発明のために望まれる)に割り当てられ得る全ての試料に関して、マウス抗体をコードする配列及びヒトmRNA配列が得られた。まとめると、このことは、その手法を使用することで、標的細胞のトランスクリプトームを、特定の抗体と一緒のインキュベートに応じて分析し(例えば細胞状態、調節されたシグナル伝達経路を推測し)、同時に抗体の正体を確認することができることを明らかに示している。
【0098】
実施例5: 第1の細胞、1個の第2の細胞、及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドを含むマイクロ流体液滴の生成
本発明による複数のコンパートメントの生成の原理を示すために、それらの細胞及び1群のバーコードオリゴヌクレオチドの代わりにビーズを使用した。より具体的には、以下の3種の粒子:
1.)抗体発現細胞を模擬する緑色蛍光性ビーズ(Bangslabs社、カタログ番号FS07F)、
2.)標的細胞を模擬する青色蛍光性ビーズ(Thermo Fisher社、カタログ番号F8829)、
3.)バーコード化されたプライマーを有するビーズを模擬する非蛍光性ビーズ(Tosoh Bioscience社、カタログ番号19815)、
をモデル系として使用した。
【0099】
全ての3種の粒子を内在している液滴を高い割合で得るために、本発明と以前の手法とを明確に区別する2つの特定の措置を選択した:
a)使用される粒子密度は、従来技術と比較して大幅により高かった。緑色蛍光性ビーズ及び青色蛍光性ビーズの1:1混合物を、1ミリリットル当たり250万個の全体密度に調節した。Macosco et al., Cell 2015の刊行物に記載されるのと同じ幾何学的配置を有するマイクロ流体チップを使用して、約250 pLの容量を有する液滴を、非蛍光性ビーズ(1.5×105個/mlの密度に調節)を同時注入しながら生成した。これらの液滴の50%より多くは、開始直後に少なくとも1個の蛍光性粒子(細胞を模擬している)を含んでいた。
b)得られたエマルジョンを、二重陽性の青色-緑色液滴(両方の細胞型の存在を示す;Hu, Eustace and Merten, Lab Chip 2015に記載される)について選別した。
【0100】
液滴の後続の顕微鏡分析により、以下の占有度が明らかになった。
【0101】
【0102】
まとめると、これらの結果は、3種の異なる粒子(例えば、2種の異なる細胞型及び細胞内mRNAのバーコード化のためのビーズ)を内在している液滴の割合が10%を超えるエマルジョンを、高い細胞密度及び後続の多色選別工程のような措置を取ることにより容易に生成することができることを明らかに示している。3種の異なる粒子を内在し、そのうち2種が単一粒子(例えば、細胞内mRNAのバーコード化のための単一のビーズ、第1の細胞、及び単一の第2の細胞)である液滴の割合が5%を超えるエマルジョンは、この特定の実施例においては7.06%である。それぞれの型の対象物をちょうど1個内在している液滴だけに着目した場合でさえも、5%を超える全割合を容易に得ることができる。これらの数は、細胞密度及びビーズ密度等のパラメータ、選別用チップ及び選別用ソフトウェア等を最適化することにより改善することができ、そのことは当該技術分野における平均的な技能の範囲内である。
【0103】
注目すべきことに、上記選別工程はこの手法における強力なツールであるが、必須の必要条件ではない。ポアソン統計学に基づいて、それぞれの粒子の密度を液滴容量に対して1に調節した場合に、3種の異なる粒子をちょうど1個内在している液滴を、5%の最頻値で得ることができる。さらに、効率がポアソン統計学を基礎とする限界を超える確定的な細胞カプセル化装置が記載されている(例えばKemna EW, Schoeman RM, Wolbers F, Vermes I, Weitz DA, van den Berg A. Lab Chip. 12(16):2881-7, 2012. doi: 10.1039/c2lc00013j)。したがって、3種の異なる粒子を内在している液滴を高い割合で得るために多岐にわたる様々な方法が存在する。これを実現するために特に有益であるのは、既存の単一細胞トランスクリプトーム手法と比較して少なくとも4倍~10倍高い特に高い粒子密度を使用すること、又は所望の占有度を有する液滴についての後続の選別工程を実施することである。
【符号の説明】
【0104】
図1
Complex tissue 複合組織
Cell isolation 細胞単離
Use Drop-Seq to analyze the RNA of each individual cell Drop-Seqを使用して、それぞれの個別の細胞のRNAを解析する
Cell suspension 細胞懸濁液
Suspend in droplets with beads (microparticles) ビーズ(マイクロ粒子)を有する液滴で懸濁する
Single-cell transcriptomes attached to microparticles マイクロ粒子に結合された単一細胞トランスクリプトーム
Library ライブラリー
RNA-seq library with 10,000 single-cell transcriptomes 10000種の単一細胞トランスクリプトームを有するRNA-seqライブラリー
Barcoded primer bead バーコード化されたプライマービーズ
PCR handle PCRハンドル
Cell barcode 細胞バーコード
図2
Target cell (e.g. Cancer cell) or membrane extract 標的細胞(例えば癌細胞)又は膜抽出物
plasma cells 形質細胞
sequence of AB1 AB1の配列
effect of AB1 on the expression pattern 発現パターンに対するAB1の効果
sequence of AB2 AB2の配列
effect of AB2 on the expression pattern 発現パターンに対するAB2の効果
sequence of AB3 AB3の配列
effect of AB3 on the expression pattern 発現パターンに対するAB3の効果
図3
PCR handle PCRハンドル
Cell barcode 細胞バーコード
図5
number of murine reads マウスのリードの数
number of human reads ヒトのリードの数
unassigned 割り当てられず