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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】気泡管および水準器
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/26 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
G01C9/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019023298
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020134153
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592150170
【氏名又は名称】株式会社アカツキ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】小寺 建樹
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-72009(JP,U)
【文献】特許第5487353(JP,B1)
【文献】特公昭3-1133(JP,B1)
【文献】特開2005-10129(JP,A)
【文献】特公昭31-1725(JP,B1)
【文献】特開平10-234997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/18 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口端となり他端が閉塞端となる筒状で透明な容器と、
前記容器の開口端を封鎖する蓋と、
一端が前記蓋に固定され、他端が前記容器内を閉塞端に向けて延びる軸と、
前記容器内の前記軸との間の空間に、気泡が形成されるように隙間を残して充填された液体と、を備え、
前記軸の他端は、前記容器の閉塞端に設けられた凹部に嵌め込まれている、気泡管。
【請求項2】
前記容器の閉塞端の凹部は、前記容器を中空に削り出す際にあらかじめ削孔された、ドリルによる下穴の残存部である請求項1に記載の気泡管。
【請求項3】
前記軸は、円柱形である請求項1または2に記載の気泡管。
【請求項4】
前記軸は、不透明であり、かつその外周に軸方向に並列する目盛り線を有している請求項1から3のいずれかに記載の気泡管。
【請求項5】
前記軸は、その外周の軸方向中間部に図形状の基準標識を有し、
前記基準標識を、前記気泡を通じて視認することで気泡の位置変化を確認可能となっている、請求項1から4のいずれかに記載の気泡管。
【請求項6】
前記基準標識は、前記気泡と比較して外形寸法がほぼ等しいか小さい、円形または前記軸の軸方向を長軸とする長円形の外径を有している請求項5に記載の気泡管。
【請求項7】
前記液体と前記軸とは、異なる色であって、前記液体を通じて前記軸の色を視認できないような色にそれぞれ着色されており、
前記軸の色は、前記気泡を通じて視認可能となっている、請求項1から6のいずれかに記載の気泡管。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の気泡管を備える水準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡管およびその気泡管を備える水準器に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等において、施工の対象となる壁面等の測定対象となる面(測定面)の水平度合いを計測するための器具として水準器が知られている。
水準器には気泡管が付属している。一般的な気泡管は、両端が閉塞された筒状の透明な容器に、気泡が形成されるように隙間を残して液体を充填してなる。
容器の外周面または内周面には気泡管の軸方向に並列する目盛り線が付されており、気泡管が水平な状態で、気泡は目盛り線と目盛り線との中間部に位置している。気泡管は、たとえば横倒し(その容器の軸方向が水準器本体の底面と平行)に水準器本体に組み込まれている。
【0003】
測定の際には、水準器本体の底面などの基準面を測定面に押し当てる。測定面が水平な状態から傾斜していれば、傾斜の上流側に向けて気泡が移動し、気泡とその傾斜の上流側に位置する目盛り線とのクリアランスが狭まり、気泡とその傾斜の下流側に位置する目盛り線とのクリアランスが広がることになる。一方、測定対象面がほぼ水平な状態であれば、気泡は両目盛り線の中間位置からほとんど動かず、クリアランスに変化はない。
気泡と容器の目盛り線とのクリアランスの変化を目視にて確認することで、傾斜状態を測定することが可能となる。
【0004】
このように、測定の際に気泡管を目視で確認する都合上、気泡管を見やすいようにその径が太いほうが好ましいといえる。もっとも、気泡管を太くすると、容器の内部に充填された液体の量(体積)も増加するため、温度変化による液体の膨張収縮の総量も大きなものとなってしまう。
そして、気泡は、気泡管内の隙間に相当するため、その寸法は、測定場所の温度環境にしたがって、液体が膨張すると小さく、液体が収縮すると大きくなる。このため、単に気泡管を太くしただけでは、液体の膨張収縮の総量が大きくなることに伴ない、気泡の寸法変化が従来よりも甚だしいものとなってしまう。そうなると、気泡と目盛り線とのクリアランスが大きく変動してしまうなどして、正確な測定が望めない恐れがある。
【0005】
このため、特許文献1および2のように、水準器の気泡管について、液体が充填される容器の内部に、軸を設置する試みがなされている。
特許文献1の軸はくの字形に屈曲しており、特許文献2の軸は角柱形であるが、いずれも内部には液体は流入しないようになっており、液体は容器と軸との間の空間のみに充填されることになる。
容器内の液体の量は、軸の体積分だけ減じられることになるため、温度変化に伴なう液体の膨張収縮の総量が小さくなり、気泡管を大型化しても、気泡の寸法変化を抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5487353号公報
【文献】特公昭3-1133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の気泡管の場合、軸の気泡管内における設置態様が不明確であるが、「液量調整部材(注:軸のこと)が、前記気泡管内に・・移動自在に配されている」(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1等)とある以上は、少なくとも固定されてはいないといえる。
しかしながら、軸が容器内でずれ動く等すると、その動きに気泡が随伴して測定面の傾斜状態とは無関係に移動するなどして、正確な測定をおこなえない恐れがある。
【0008】
また、特許文献2の気泡管の場合、軸の両端部に両側に張り出す瘤状の突起を設け、この軸を容器に圧入することで、軸を容器内に位置決めしている。
しかし、軸の圧入の際に、容器の奥側(閉塞端の側)にまで入れすぎてしまうと、容器の手前側(開口端の側)にまで引き戻すのが困難である等して、容器内で軸を適切な位置に位置決めするのが容易ではない。
【0009】
したがって、本発明の解決すべき課題は、水準器の気泡管について、容器の内部で減容用の軸がずれ動かないようにするとともに、その軸の容器の内部における位置決めを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、発明にかかる気泡管を、一端が開口端となり他端が閉塞端となる筒状で透明な容器と、前記容器の開口端を封鎖する蓋と、一端が前記蓋に固定され、他端が前記容器内を閉塞端に向けて延びる軸と、前記容器内の前記軸との間の空間に、気泡が形成されるように隙間を残して充填された液体と、を備え、前記軸の他端は、前記容器の閉塞端に設けられた凹部に嵌め込まれている構成としたのである。
【0011】
減容用の軸の一端部を容器の開口を封鎖する蓋に固定したため、軸が容器内でずれ動くことが防止される。軸の他端部は容器の閉塞端の凹部にはめ込まれているため、軸は両端部を凹部と蓋とで支持されることになり、撓んだり傾斜したりして、適正な位置からずれることが防止される。
容器の開口端を蓋で封鎖する作業をおこなうと、その蓋と一体になった軸が容器内を挿通し、その端部が容器の閉塞端の凹部にほぼ自動的にはめ込まれることになるため、軸を容器内で位置決めすることが容易である。
【0012】
発明にかかる気泡管において、前記容器の閉塞端の凹部は、前記容器を中空に削り出す際にあらかじめ削孔された、ドリルによる下穴の残存部である構成を採用するのが好ましい。
【0013】
気泡管の筒状の容器を柱体から削り出す場合、仕上げ用ドリルの刃先がぶれるのを防止したり、仕上げ用ドリルの切削抵抗を減じたりするために、あらかじめ柱体に、仕上げ用ドリルよりも径の小さな下穴用ドリルで下穴を開けることになる。
仕上げ加工後に、容器の閉塞端に残存する下穴の先端部を、軸をはめ込む凹部として利用する構成を採用することで、別途凹部を形成する必要がなくなり、気泡管の製造の労力やコストを抑えることができる。
【0014】
発明にかかる気泡管において、前記軸は円柱形である構成を採用するのが好ましい。
【0015】
軸が、特許文献1の軸のように、くの字形に屈曲していたり、特許文献2の軸のように、角柱形であったりすると、気泡が軸の屈曲部や角部に引っかかるなどして、その移動が妨げられ、測定面の傾斜状態を正確に測定できなくなる恐れがある。軸を円柱形に構成することにより、その外面に気泡が引っかかる箇所がなくなるため、気泡が容器内をスムーズに移動することができ、測定の正確性が期せられる。
【0016】
発明にかかる気泡管において、前記軸は、不透明であり、かつその外周に軸方向に並列する目盛り線を有している構成を採用することができる。
【0017】
従来のように目盛り線が容器の周面に形成されている場合、容器が透明であることから、視線の手前側の目盛り線のみならず奥側の目盛り線も重なり合うように視認されてしまう(交差視認という)。
また、目盛り線が容器の外周面に形成されている場合、容器の肉厚分だけ、目盛り線と気泡との距離が離れてしまう。他方、目盛り線が容器の内周面に形成されている場合、目盛り線と気泡との距離は近接するものの、一般に物品の内周面に目盛り線を形成するのは外周面に形成するよりも困難である。
目盛り線を不透明の軸に設ける構成を採用することで、視線の手前側の目盛り線だけが見え、視線の奥側の目盛り線は軸自身の色で遮られるため、手前側と奥側の目盛り線が重なり合って視認されてしまうことが防止できる。
加えて、目盛り線と気泡との距離が近接しているため、気泡と目盛り線とのクリアランスを読み取ることが容易となり、測定の精度が向上する。筒状の容器の内周面に目盛り線を形成する場合と比べて、軸の外周面に目盛り線を形成するのは加工等が容易である。
【0018】
発明にかかる気泡管において、前記軸は、その外周の軸方向中間部に図形状の基準標識を有し、前記基準標識を、前記気泡を通じて視認することで気泡の位置変化を確認可能となっている構成を採用することができる。
また、前記基準標識としては、前記気泡よりも外形寸法が小さい、円形または前記軸の軸方向を長軸とする長円形の外径を有している構成を採用することが好ましい。
【0019】
このように構成すると、気泡の内部からその動きを確認することができるため、気泡の外部からその動きを確認可能な目盛り線等と組み合わせることで、複数の基準を用いて測定をおこなうことができ、測定の精度がより向上する。
基準標識を気泡と平面視でほぼ相似形の円形または長円形に構成すると、気泡の移動量がわずかである場合にも、そのずれを視認することが容易となるため、測定の精度がさらに向上する。
【0020】
発明にかかる気泡管において、前記液体と前記軸とは、異なる色であって、前記液体を通じて前記軸の色を視認できないような色にそれぞれ着色されており、前記軸の色は、前記気泡を通じて視認可能となっている構成を採用することができる。
【0021】
このように構成すると、気泡が軸の色で着色されているように見え、その周囲の、軸とは異なる色の液体とのコントラストで、視認性が向上する。気泡が存在する箇所以外では、軸の色は液体の色に埋没して見えなくなるため、着色された軸の存在が気泡視認の妨げとなることはない。
【0022】
上記した課題を解決するため、発明にかかる水準器として、上記各発明にかかる気泡管を備える構成を採用したのである。
【発明の効果】
【0023】
発明にかかる気泡管および水準器を以上のように構成したので、気泡管の容器内部における軸のずれ動きが防止され、かつ軸の容器内部における位置決めが容易となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態の水準器の斜視図
図2】実施形態の水準器の側面図
図3】第1実施形態の気泡管を分解した状態での縦断面図
図4】第1実施形態の気泡管を組み立てた状態での縦断面図
図5】第2実施形態の気泡管の(a)は上面図、(b)は縦断面図
図6】第3実施形態の気泡管の縦断面図
図7】第4実施形態の気泡管の(a)は上面図、(b)は側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1および図2に示す実施形態の水準器1は、水準器本体2に対して、実施形態の気泡管10が組み込まれたものである。
ケーシングとしての水準器本体2の長手方向の中央上部は窪んでおり、ここに第1実施形態の気泡管10が横倒しの状態に組み込まれている。第1実施形態の気泡管10は、その大半が露出し、かつ左右の端部はそれぞれ水準器本体2に支持されている。
水準器本体2の底面2aは基準面となっており、この基準面を対象物の測定面に押し当てた状態で、気泡管10を目視にて確認することで、測定面の傾斜度合が測定できるようになっている。
水準器本体2の側面には、装飾用のラベル2bが付されている。
【0027】
水準器本体2の両端部は、それぞれ窪んでおり、右端部には、フック等を引っかけるためのリング3が組み込まれている。
リング3はその右半部が水準器本体2の窪みの上下に架け渡されるようにして露出しており、その左半部は水準器本体2に内蔵されている。
【0028】
また水準器本体2の左端部には、他の気泡管4が縦向きに組み込まれている。他の気泡管4は、その大半が露出し、かつ上下の端部は水準器本体の窪みの上下にそれぞれ支持されている。
他の気泡管4は、円筒形の容器に気泡4aの分の隙間を残して液体を充填してなり、容器の周面には、容器軸方向に並列する目盛り線4bが付されている。他の気泡管4も、第1実施形態の気泡管10と同様に、測定面の傾斜度合を測定する際に目視にて確認される。
【0029】
図3および図4のように、第1実施形態の気泡管10は、容器11と、蓋12と、軸13と、液体14とを備える。
【0030】
容器11は、有色透明または無色透明で全体が円筒形をなしており、その左端が閉塞端11aとなり、その右端が開口端11bとなっている。容器11は、ドリル等を用いて中空に削り出されている。
削り出しの際には、まず小径の下穴用ドリルで下穴が開けられ、ついで下穴を目印として、大径の仕上げ用ドリルで容器11の内径に相当する径の仕上げ穴が開けられる。その結果、容器11の閉塞端11aの中心部には下穴の残存部である円盤状の凹部11cが形成されることになる。
【0031】
容器11の胴部11dの内周面には、容器11の軸方向に並列する目盛り線11eが設けられている。目盛り線11eは、容器11の閉塞端11a寄りの位置と開口端11b寄りの位置にそれぞれ一対、計4本が配列されている。
胴部11dの軸方向中央部から、閉塞端11aの側の目盛り線11eと開口端11bの側の目盛り線11eの距離とは、ほぼ等しくなっている。また、一対の目盛り線11e間の間隔は、閉塞端11aの側と開口端11bの側とでほぼ等しくなっている。
目盛り線11eの形成態様は特に限定されないが、図示では、胴部11dの内周面に円環状の溝を形成したうえで、円環状の金属線11eを弾性的に縮径させた状態で胴部11dの中に入れ込み、溝の地点でその金属線11eが自動的に拡径することで溝にはまり込むことによっている。もちろん、目盛り線11eは、胴部11dの内周面や外周面に円環状の着色を施す等の手段で形成してもよい。
【0032】
蓋12は、全体が円板形をなしており、容器11の拡径する開口端11bに嵌めこまれ、開口端11bを封鎖している。
【0033】
軸13は、全体が細長い円柱形をなしており、その右端部が蓋12の円盤の中心に連結されている。軸13は、容器11の内部を挿通して延び、その左端部は閉塞端11aの凹部11cにはめ込まれている。容器11の軸心と軸13の軸心とは一致している。
こうして軸13は、その両端部が蓋12と凹部11cにそれぞれ支持されている。
軸13の蓋12への連結態様は特に限定されないが、図示では蓋12と一体成形されている。もちろん、軸13と蓋12とを別体に成形した後に、ネジ止め等の適宜手段を用いて一体化してもよい。
容器11とは異なり、軸13の色は特に限定されない。
【0034】
液体14は、容器11内で、容器11と軸13との間の空間に気泡14aの分の隙間を残して充填されている。軸13は、液体14が内部には入り込まないように構成されている。
気泡14aは、その中立位置において、容器11の閉塞端11aの側の目盛り線11eと開口端11bの側の目盛り線11eの間に収まるような大きさに調整されている。
容器11とは異なり、液体の色は特に限定されない。
【0035】
実施形態の水準器1および第1実施形態の気泡管10の構成は以上のようであり、測定の際には、気泡14aと目盛り線11eのクリアランスの変化を目視にて確認することで、測定面の傾斜の度合いを測定することになる。
第1実施形態の気泡管10は、容器11内の軸13の存在により、気泡管10の寸法に比して容器11の内部に充填されている液体14の量(体積)が少なくなっている。このため、温度変化に伴なう液体14の膨張ないし収縮の総量が抑えられている。結果として、測定時の温度環境に左右されることなく、気泡14aの大きさをほぼ一定に維持することができる。
したがって、気泡14aが中立位置にあるにもかかわらず、その寸法が大きくなりすぎて、目盛り線11eとのクリアランスがほとんどないとか、その寸法が小さくなりすぎて目盛り線11eとのクリアランスが大きすぎる、といった事態が生じないようになっており、測定の精度が向上している。
【0036】
図5に第2実施形態の気泡管10を示す。この例では、気泡管10の軸13の外周面に基準標識13aが設けられている点で、第1実施形態の気泡管10と構成を異にする。
基準標識13aは軸13の軸方向の中間部に設けられている。基準標識13aの形状は軸13の軸方向を長軸とする略長円形となっており、気泡14aとほぼ相似形である。
長円形の基準標識13aの寸法は、気泡14aの寸法よりも若干小さくなっている。気泡14aが中立位置にあるときに、基準標識13aが内側に気泡14aが外側になるように、同心上に重なり合う。
【0037】
基準標識13aの形成態様は特に限定されないが、図では、軸13の成形時に、長円形の凸部としての基準標識13aを一体成形することによっている。
もちろん、基準標識13aを軸13と別体に形成した後に一体化してもよいし、軸13への着色により基準標識13aを形成してもよい。
気泡14aと目盛り線11eとのクリアランスの変化に加えて、基準標識13aの外縁とのクリアランスの変化を目視にて確認することで、測定面の傾斜状態をより精度よく測定可能となる。このとき気泡14aと基準標識13aとは相似形であることから、気泡14aの僅かな位置変化でも目視にて検出しやすくなっている。
【0038】
図6に第3実施形態の気泡管10を示す。この例では、目盛り線11eに替えて、気泡管10の軸13の外周面に目盛り線13bが設けられており、かつ軸13は不透明である点で、第1実施形態の気泡管10と構成を異にする。
目盛り線13bは、軸13の軸方向に等間隔を置いて並列している。目盛り線13bの形成態様は特に限定されないが、図では、軸13の成形時に、円環状の凸部としての目盛り線13bを一体成形することによっている。
もちろん、目盛り線13bは、軸13の外周面に溝を形成し、縮径可能な円環状の金属線13bを弾性的に拡径させた状態で軸13に通し、溝の地点で自動的に縮径して嵌まり込むことにより形成してもよいし、軸13への着色により形成してもよい。
【0039】
気泡14aと目盛り線13bとのクリアランスの変化を目視にて確認することで、測定面の傾斜状態を測定可能となる。軸13が不透明であるため、視線の手前側の目盛り線13bのみが視認でき、視線の奥側の目盛り線13bは軸13に隠れて視認できない。したがって、手前側と奥側の目盛り線13bが交差して視認されることがない。
また、容器11の外周面に目盛り線を形成する場合に比べて、気泡14aと目盛り線13bとが近接している。このため、クリアランスを正確に読み取ることが可能である。
【0040】
図7に第4実施形態の気泡管10を示す。この例では、気泡管10の軸13が黄緑などの淡色に、液体14が緑などの濃色に着色されている点で、第1実施形態の気泡管10と構成を異にする。
このような色の濃淡の関係から、軸13は液体14を通じては、その色が視認できなくなり、液体14と同色のように見える。一方、気泡14aを通じては、軸13の色は視認可能であり、気泡14aが軸13の色に着色されたかのように見える。
液体14の色と、軸13の色に着色されたように見える気泡14aとのコントラストにより、気泡14aの視認性が向上している。
【0041】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【0042】
水準器本体2の形状や気泡管10の数および位置は実施形態に限定されない。たとえば、水準器本体2をボックス型としたり、気泡管10を3つ以上備えたものとしたりすることができる。
水準器1のリング3は省略可能であるし、ストラップ等のリング3とは異なる部材が水準器1に付属していてもよい。
【0043】
実施形態では気泡管10の容器11を削り出しにより形成しているが、はじめから円筒形に成形してもよい。
閉塞端11aの凹部11cも下穴の残存部でなくともよく、閉塞端11aの成形時に凹部11cを一体的に成形してもよい。容器11の胴部11dと閉塞端11aとは一体でなくともよく、別体に成形した後に一体化してもよい。
気泡管10が水準器1に組み込まれる向きは実施形態に限定されず、他の気泡管4のように、縦向きに組み込まれたり、斜め向きに組み込まれたりしてもよい。
気泡管10の外形も筒状である限りにおいて実施形態に限定されず、角筒状等でもよい。
【0044】
目盛り線11e、13bの数は実施形態に限定されない。基準標識13aの数および形状は実施形態に限定されず、たとえば軸13の左右端にそれぞれ1つずつ設けてもよいし、半球形等の突起状の形状としてもよい。基準標識13aは、目立つように軸13とは異なる色に着色してもよい。
また、容器11の目盛り線11e、軸13の基準標識13a、軸13の目盛り線13bは適宜に組み合わせ可能であり、目盛り線11eと目盛り線13bの双方を採用してもよい。
【0045】
液体と軸とを、気泡が目視時に目立つように着色する場合、その着色の態様は第4実施形態に限定されず、異なる色であって、液体を通じて軸の色を視認できず、かつ気泡を通じて軸の色を視認できるような色に着色されていればよい。
たとえば、液体を黒のような濁色とし、軸を白としても、黒色の液体を通じて軸の白色は確認できず、気泡は軸の白色に染まるため、白黒のコントラストで気泡の視認が容易となる。
液体が濁色の場合、目盛り線や基準標識を軸13に形成すると、液体の色に隠れて視認が困難となるが、目盛り線を容器11に形成すると、目盛り線と気泡とのクリアランスを問題なく確認することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 実施形態の水準器
2 水準器本体
2a 底面
2b ラベル
3 リング
4 他の気泡管
4a 気泡
4b 目盛り線
10 実施形態の気泡管
11 容器
11a 閉塞端
11b 開口端
11c 凹部
11d 胴部
11e 目盛り線
12 蓋
13 軸
13a 基準標識
13b 目盛り線
14 液体
14a 気泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7