(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】流体制御機器
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
F16K37/00 G
(21)【出願番号】P 2020540130
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027964
(87)【国際公開番号】W WO2020044827
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018161689
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】木曽 秀則
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義明
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/150949(WO,A1)
【文献】特開昭59-147234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 7/12
F16K 51/00
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
前記閉空間の近傍において、前記貫挿孔の内周面と前記ダイヤフラム押えの間をシールするシール部材、をさらに有する、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の流体制御機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御装置において流体の漏出を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては膜厚の細かな制御が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような成膜処理は成膜装置に流体を供給する流体制御機器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を惹き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御機器における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、半導体製造プロセスにおいては反応性が高く極めて毒性の高いガスが使われるため、漏出が微小なうちに、かつ遠隔的に漏出を検知できることが重要である。
【0003】
この点、特許文献1では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取り付けられる漏れ検知部材とからなるシール部破損検知機構であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏れ検知部材は前記孔に取り付けられる筒状体とこの筒状体に設けられた可動部材とからなり、この可動部材は制御器内の前記空隙内に充満した漏出流体の圧力によって前記筒状体の外方へ可動とされてなるものが提案されている。
また、特許文献2では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取付けられる漏洩検知部材とからなるシール部破損検知機構付制御器であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏洩検知部材は特定の流体の存在によって感応するものが提案されている。
また、特許文献3では、流体の漏れを検出する漏れ検出装置であって、センサ保持体と、漏れ検出対象部材に設けられて漏れ検出対象部材内の密封部分と外部とを連通するリークポートに対向するようにセンサ保持体に保持された超音波センサと、超音波センサのセンサ面とリークポートとの間に設けられた超音波通路と、超音波センサで得られた超音波を処理する処理回路とを備えているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-093736号公報
【文献】特開平05-126669号公報
【文献】特開2014-21029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシール部破損検知機構では、制御器内の空隙の加圧は判別することができるが、負圧を判別することができず、流体の漏出が僅かである場合には、可動部材が十分に可動せず、漏出を検知できないおそれがある。
また、特許文献2記載のシール部破損検知機構付制御器では、流体の漏出が僅かである場合には、パージガスで希釈化されて漏洩検知部材が感応しないおそれがあり、また、漏洩検知部材が所定の流体に対しては感応しないおそれもある。
さらに、特許文献3記載の漏れ検出装置では、流体の漏出が僅かである場合には、超音波が微弱で漏出を検知できないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、流体制御機器において、流体の漏出が僅かな場合でも精度よく漏出を検知可能なものを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御機器は、流路と隔離された閉空間内の圧力を検知する流体制御機器であって、前記流路が形成されたバルブボディと、前記流路における流体の流通を許容又は遮断すると共に、前記閉空間を前記流路から隔離する隔離部材と、前記バルブボディ上に配設されて前記隔離部材との間に前記閉空間を形成すると共に、前記閉空間に連通し、ダイヤフラム押えが上下動可能に貫挿される貫挿孔が設けられたボンネットと、前記貫挿孔内を上下動して前記隔離部材を押圧すると共に、前記貫挿孔から抜出不能とする拡径部が設けられた前記ダイヤフラム押えと、前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、前記閉空間内において、前記ダイヤフラム押えの拡径部と前記ボンネットの間に介在し、前記ダイヤフラム押えの上下動に伴って前記ダイヤフラム押えの拡径部と前記ボンネットの間で弾性的に膨縮する弾性体と、を有する。
【0008】
また、前記ボンネットには、前記閉空間側に開口し、前記弾性体を収容する収容部が設けられており、前記弾性体は、前記ダイヤフラム押えの上下動に伴って膨縮すると共に、圧縮時には弾性変形して前記収容部に収容されるものとしてもよい。
【0009】
また、前記収容部は、前記貫挿孔のうち、前記閉空間の近傍において拡径した部分として構成され、前記弾性体は、前記貫挿孔の内周面と前記ダイヤフラム押えの間をシールするものとしてもよい。
【0010】
また、前記弾性体は、自然状態において、前記閉空間とは反対の側に空隙を形成して前記収容部に収容されているものとしてもよい。
【0011】
また、前記閉空間内で上下動する前記ダイヤフラム押えの拡径部の位置が、前記ダイヤフラム押えに連動するピストンの上死点を規定するものとしてもよい。
【0012】
また、前記閉空間の近傍において、前記貫挿孔の内周面と前記ダイヤフラム押えの間をシールするシール部材、をさらに有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体制御機器において、流体の漏出が僅かな場合でも精度よく漏出を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器を示した(a)外観斜視図、(b)平面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係る流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
図1に示す本実施形態に係る流体制御機器V1は、内蔵するセンサによって内部動作を検出可能な機器であって、検出した情報に基づいて流体制御機器V1の異常、特に流体制御機器V1内における流体の漏出を検知することができる。また、この流体制御機器V1は、外部端末に接続し、当該外部端末に対して流体制御機器V1の異常に関する情報やセンサによって検出した情報を提供することができる。
なお、流体制御機器V1の実際的な使用場面においては、複数の流体制御機器V1は他の流量制御機器等と共に集積して流体制御装置(ガスボックス)を構成する。
【0016】
本実施形態に係る流体制御機器V1は、エア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブであり、
図1、
図2に示されるように、バルブボディ1、ボンネット部2、カバー部3、アクチュエータ部4を備える。
【0017】
●バルブボディ1
バルブボディ1は
図2及び
図3に示されるように、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12とからなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御機器V1によってユニット化された流体制御装置を構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0018】
円筒部12は、ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部はボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。
この円筒部12には、軸心方向に長さを有し、ボンネット部2が配設される側であって基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。このスリット12bを介して、ボンネットウォール25から延び出したフレキシブルケーブル51が内側から外側へ導出される。
【0019】
凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路と流体が流出する流出路、及び当該流入路と流出路に連通する弁室112が形成されている。流入路、流出路、及び弁室112は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0020】
●ボンネット部2
ボンネット部2は
図2~
図4に示されるように、バルブボディ1の凹部12a内に収容した状態に配設される。
このボンネット部2は、シート21、ダイヤフラム22、ダイヤフラム押え23、ボンネット24、ボンネットウォール25を備えるほか、流体の漏出に伴う圧力変化の検出精度を高めるための弾性体6を有している。
【0021】
環状のシート21は、弁室112における流入路の開口周縁に設けられている。シート21にダイヤフラム22を当接離反させることによって流入路から流出路へ流体を流通させたり、流通を遮断させたりすることができる。
【0022】
ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属からなると共に、中心部が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流路とアクチュエータ部4が動作する空間とを隔離している。このダイヤフラム22は、ダイヤフラム押え23により押圧されていない状態では、
図2(b)に示されるように、シート21から離反しており、流入路と流出路とを連通させ、流体の流通を許容する。一方、ダイヤフラム押え23により押圧された状態では、
図2(a)に示されるように、ダイヤフラム22の中央部が変形してシート21に当接しており、流入路と流出路を遮断させ、流体の流通を遮断する。
【0023】
ダイヤフラム押え23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、ピストン43の上下動に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
このダイヤフラム押え23は、略円柱状の基体部231と、ダイヤフラム22に当接する側の一端側において拡径した拡径部232からなる。
【0024】
基体部231には、軸心方向に長さを有し、拡径部232とは反対側の一端が開口した有底の条溝231aが形成されている。この条溝231aには、ボンネットウォール25のネジ孔25cにねじ込まれたネジ25dの軸棒部分が摺動可能に嵌合する。条溝231aとネジ25dは、ダイヤフラム押え23の周方向の回動を規制する回動規制手段を構成し、これによりダイヤフラム押え23は、ピストン43に連動して上下動しつつも、周方向の回動を規制される。
【0025】
また、基体部231には、磁気センサを構成する磁石M1が取り付けられている。この磁石M1は、ボンネットウォール25に取り付けられた磁性体M2と共に後述する磁気センサを構成する。なお、本実施例では、磁石M1は、基体部231の条溝231aの反対側に取り付けられているが、磁性体M2と磁気センサを構成するのに支障がない限り、基体部231上の他の位置に取り付けることもできる。
【0026】
拡径部232は、ボンネット24の貫挿孔241aの径よりも大きな径を有する略円盤状の部分であって、閉空間S2内に位置してダイヤフラム押え23を貫挿孔241aから抜出不能としている。
また、この拡径部232は、ピストン43に連動したダイヤフラム押え23の上下動に応じて、ボンネット24の仕切部241との間で弾性体6を挟圧する。
【0027】
ここで、拡径部232の幅は、ダイヤフラム押え23を貫挿孔241aから抜出不能とすると共に、弾性体6をボンネット24の仕切部241との間に挟圧できる最小限の幅とするのが好適である。拡径部232の幅をこのような幅にすると共に、ボンネット24の仕切部241の下面側に設けられる閉空間S2の幅又は径を、拡径部232の幅又は径に即して小さくすれば、閉空間S2の体積を減らすことができる。
【0028】
このような構成からなるダイヤフラム押え23は、流体制御機器V1の開閉に伴って上下動するピストン43の上死点を規定している。即ち、ダイヤフラム押え23の拡径部232の上面は開弁時、ボンネット24の仕切部241との間で弾性体6を挟圧して圧縮させるところ、駆動圧によって最大限、弾性体6を圧縮させたときの位置が上死点を構成する。
これにより、他の位置をピストン43の上下動の上死点とする場合と異なり、開弁時にダイヤフラム押え23の拡径部232が到達する位置に余裕を持たせる必要がなく、閉空間S2の体積を最小限に抑えることができる。
【0029】
ボンネット24は、略円筒状からなり、バルブボディ1上に配設され、ダイヤフラム22との間に閉空間を形成する。
このボンネット24は、下端部においてバルブボディ1との間にダイヤフラム22を挟持しており、この部分でダイヤフラム22とバルブボディ1との間がシールされる。
【0030】
また、ボンネット24の内部には、ダイヤフラム押え23が上下動可能に貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成された略円盤状の仕切部241が設けられている。
仕切部241の上方ないしは、アクチュエータ部4が配設される側に形成される凹部24aには、ボンネットウォール25が収容される。仕切部241とボンネットウォール25には夫々、互いに対応する位置にネジ穴241bと貫通孔25eが設けられており、ボンネット24にボンネットウォール25がボルト25fによって螺設される。
【0031】
ボンネット24の仕切部241は、一定の厚みを有しており、仕切部24に形成されている貫挿孔241aの内周面とダイヤフラム押え23の間には、シール部材としてのOリングO2が介装されている。これにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定される閉空間S2の気密性が確保されている。
【0032】
ここで、閉空間S2の気密性を確保するためのOリングO2は、上下動するダイヤフラム押え23の動作方向のうち、閉空間S2の近傍に設けられている。これにより、貫挿孔241aの閉空間S2側の開口部からOリングO2までの隙間を減らし、閉空間S2の体積を小さくしている。
なお、ここにいう閉空間S2の近傍とは少なくとも、上下動するダイヤフラム押え23の動作方向において、ダイヤフラム押え23とピストン43が当接する側よりも閉空間S2側に偏った位置をいい、さらに好適には、OリングO2とダイヤフラム押え23の拡径部232が接することなく隔てられる最小限の距離を保持できる位置をいう。
【0033】
また、ボンネット24の仕切部241には、ボンネットウォール25に取り付けられている圧力センサPに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPが設けられていることにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を測定することができる。
【0034】
また、ボンネット24の側面には、内側に収容したボンネットウォール25から導出されたフレキシブルケーブル51を外側へ導出させるための貫通孔241cが設けられている。
【0035】
ボンネットウォール25は、ボンネット24内に配設される部材である。このボンネットウォール25は肉厚の略円盤状の部材を平面視略C字状に刳り貫いた形状からなる。このボンネットウォール25の中心には、ダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させる貫挿孔25aが設けられている。また、貫挿孔25aをボンネットウォール25の半径方向外側に向かって開口させる開口部25bが設けられている。
【0036】
ボンネットウォール25の厚み部分の所定の箇所には、貫挿孔25aから半径方向外側に向かってねじ切られたネジ孔25cが形成されている。このネジ孔25cには外側からネジ25dが螺合し、螺合したネジ25dの軸心部分は、貫挿孔25a側へ抜け出して、貫挿孔25aに貫挿されたダイヤフラム押え23の条溝231aに摺動可能に嵌合する。
【0037】
ボンネットウォール25には、ボンネット24のネジ穴241bに対応する位置に貫通孔25eが設けられている。ネジ穴241bと貫通孔25eには、ボンネット24の仕切部241上にボンネットウォール25が配設された状態でボルト25fが螺合し、これによりボンネット24にボンネットウォール25が固定される。
【0038】
ボンネットウォール25の外周面のうち、開口部25b近傍には、開口部25bを塞ぐように掛け渡して固定された平板状の磁性体M2が取り付けられている。この磁性体M2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1と共に後述する磁気センサを構成する。
【0039】
●弾性体6
弾性体6は、外力に応じて弾性的に膨縮する部材であって、外面が非多孔質材料でコーティングされた多孔質の軟性樹脂等からなる。また、本例では一定の厚みを有するリング状に構成され、中央にはダイヤフラム押え23の基体部231が貫挿される貫挿孔6aが設けられている。
【0040】
この弾性体6は、貫挿孔6a内にダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させた状態で、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間に介在し、ダイヤフラム押え23の上下動に伴って弾性的に膨縮する。即ち、流体制御機器V1の開弁時、ダイヤフラム押え23がダイヤフラム22から離反すると、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間で挟圧されて圧縮される。一方、流体制御機器V1の閉弁時、ダイヤフラム押え23がダイヤフラム22に当接し、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241が離間すると、挟圧状態から解放されて膨らみ、圧縮前の自然状態に戻る。
これにより、流体制御機器V1の弾性体6の分だけ閉空間S2に占める気体の容積を減じることができる。
【0041】
なお、本実施形態において、弾性体6はリング状に構成され、貫挿孔6aにダイヤフラム押え23を貫挿させられるようになっているが、これに関わらず、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間に介在して弾性的に膨縮する限り、他の形状からなるものとしてもよい。例えば、外形が矩形状であってもよいし、複数の弾性部材の集合体として構成されていてもよい。
【0042】
●カバー部3
カバー部3は
図1及び
図5に示されるように、アクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧して一体的に保持すると共に、回路基板52及び回路基板52に設けられたコネクタ53を流体制御機器V1に固定する固定手段を構成する。
このカバー部3は、カバー31と平板状のプレート32、33を備える。
【0043】
カバー31は、略U字状からなり、その内側にはアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部が嵌め込まれる。
カバー31の両側面には、アクチュエータボディ41が嵌め込まれる位置に対応してネジ孔31aが設けられている。これにより、バルブボディ1が内側にはめ込まれた状態でネジ孔31aにネジ31bを螺入させ、ネジ31bの先端をバルブボディ1に圧接させると、バルブボディ1をカバー31の内側に挟持することができる。
【0044】
また、カバー31の厚み部分には、ネジ穴31cが設けられている。このネジ穴31cに、ネジ31dがプレート32、33の貫通孔32b、33bを介して螺合することで、カバー31にプレート32、33が取り付けられる。
【0045】
プレート32、33は、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部を嵌めた状態でカバー31とネジ止め固定され、固定された状態においては、カバー31との間にアクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧保持する。
このプレート32の下方には、舌片状に切り欠いた切欠部32aが形成されており、フレキシブルケーブル51はこの切欠部32aを介して、コネクタ53が設けられた回路基板52へ導出される。
【0046】
プレート33は、プレート32との間に回路基板52を介装させた状態でプレート32及びカバー31にネジ止め固定され、プレート32との間に回路基板52を挟圧保持する。
このプレート33には、中央部に略矩形状の貫通孔33aが設けられており、回路基板52に設けられたコネクタ53はこの貫通孔33aから外側へ抜け出る。
【0047】
ここで、基台部11が平面視矩形状からなるところ、カバー部3は
図1(b)に示されるように、コネクタ53を矩形状の基台部11の対角線方向に向けて流体制御機器V1に固定している。このような向きにコネクタ53を固定するのは以下の理由による。即ち、複数の流体制御機器V1によってユニット化された流体制御装置(ガスボックス)を構成する場合には、集積化の要請から、隣り合う矩形状の基台部11の向きを揃えてできる限り隙間をなくし、基盤あるいはマニホールドブロック上に流体制御機器V1を配設するのが好適である。他方、このように配設して集積させた場合には、コネクタ53に端子等を接続しにくくなる。そのため、コネクタ53を基台部11の対角線方向に向けることで、真横に配設されている流体制御機器V1の方に向ける場合と比べ、接続するスペースを広く取ることができる。その結果、コネクタ53に端子等を接続するのが容易であるし、端子等の折れや撚れによる断線等の不具合を防いだり、端子等が流体制御機器V1に当たって流体制御機器V1の動作に異常をもたらすといった不具合を防いだりすることもできる。
【0048】
●アクチュエータ部4
アクチュエータ部4は、ボンネット部2上に配設される。
このアクチュエータ部4は
図2に示されるように、アクチュエータボディ41、アクチュエータキャップ42、ピストン43、バネ44を備える。なお、
図3においては、アクチュエータ部4の内部構造を省略しているが、内部構造は
図2に示されるとおりである。
【0049】
アクチュエータボディ41は、ピストン43とボンネット24の間に介装される。
このアクチュエータボディ41は
図3に示されるように略円柱形状からなり、中心部には、ピストン43とダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。
図2に示されるように、貫挿孔41a内ではピストン43とダイヤフラム押え23が当接しており、ダイヤフラム押え23はピストン43の上下動に連動して上下動する。
【0050】
アクチュエータボディ41のピストン43が配設される側の上端面には、環状の突条からなる周壁411が形成されており、周壁411の内側の平坦な水平面とピストン43の拡径部431の下端面との間には、駆動圧が導入される駆動圧導入室S1が形成される。
【0051】
また、アクチュエータボディ41のピストン43が配設される側の外周面上には、雄ネジが切られており、アクチュエータキャップ42の内周面に切られた雌ネジと螺合することにより、アクチュエータボディ41はアクチュエータキャップ42の一端に取り付けられる。
【0052】
アクチュエータボディ41の長さ方向の中心部は、断面視略六角形状に形成されており、当該断面視六角形状の部分とバルブボディ1の上端部分は、カバー31によって一体的に挟圧される。
【0053】
アクチュエータキャップ42は、下端部が開口したキャップ状の部材であり、内部にピストン43とバネ44を収容している。
アクチュエータキャップ42の上端面には、ピストン43の駆動圧導入路432に連通する開口部42aが設けられている。
アクチュエータキャップ42の下端部は、アクチュエータボディ41の上部が螺合して閉止されている。
【0054】
ピストン43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ダイヤフラム押え23を介してダイヤフラム22をシート21に当接離反させる。
このピストン43の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部431を構成している。ピストン43は、拡径部431の上面側においてバネ44の付勢力を受ける。また、拡径部431の下端側には、駆動圧が供給される駆動圧導入室S1が形成される。
【0055】
また、ピストン43の内部には、上端面に形成された開口部43aと、拡径部431の下端側に形成される駆動圧導入室S1とを連通させるための駆動圧導入路432が設けられている。ピストン43の開口部43aはアクチュエータキャップ42の開口部42aまで連通しており、外部から駆動圧を導入するための導入管が開口部42aに接続され、これにより駆動圧導入室S1に駆動圧が供給される。
【0056】
ピストン43の拡径部431の外周面上には、OリングO41が取り付けられており、このOリングO41はピストン43の拡径部431の外周面とアクチュエータボディ41の周壁411の間をシールしている。また、ピストン43の下端側にもOリングO42が取り付けられており、このOリングO42はピストン43の外周面とアクチュエータボディ41の貫挿孔41aの内周面の間をシールしている。これらのOリングO41、O42により、ピストン43内の駆動圧導入路432に連通する駆動圧導入室S1が形成されると共に、この駆動圧導入室S1の気密性が確保されている。
【0057】
バネ44は、ピストン43の外周面上に巻回されており、ピストン43の拡径部431の上面に当接してピストン43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0058】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)からエアが供給されると、エアはピストン43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室S1に導入される。これに応じて、ピストン43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室S1にエアが導入されなくなると、ピストン43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0059】
●センサ
流体制御機器V1は、機器内の動作を検出するためのセンサとして、圧力センサPと、磁石M1と磁性体M2からなる磁気センサを備えている。
圧力センサPは
図2に示されるように、ボンネットウォール25の下面、ないしは流路側に取り付けられており、連通孔241dを介して、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2に連通している。この圧力センサPは、圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。これにより圧力センサPは、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン26が介装されており、気密状態が担保されている。
【0060】
なお、圧力センサPは、ゲージ圧あるいは大気圧のいずれを検出するものでもよく、それぞれの場合に応じて、判別処理部71(
図7を参照して後述)が参照する閾値が設定されればよい。
また、本実施形態では、閉空間S2内の圧力変化を圧力センサPによって検出することにより、流体の漏出等に起因した流体制御機器V1の異常を検知するが、コンデンサ型マイクロホンユニットを圧力センサPとして用いることが可能である。即ち、コンデンサ型マイクロホンユニットは、音波を受けて振動する振動板と、振動板に対向して配置された対向電極を有し、振動板と対向電極との間の静電容量の変化を電圧の変化に変換して音声信号とすることができる。そして、このコンデンサ型マイクロホンユニットは、振動板の背面側に設けられる空気室を塞ぐことで無指向性(全指向性)となる。無指向性の場合、コンデンサ型マイクロホンユニットはあらゆる方向からの音波による音圧の変化をとらえて動作するため、圧力センサとして利用することが可能となる。
【0061】
ボンネットウォール25の開口部25bには磁性体M2が取り付けられており、この磁性体M2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1と共に磁気センサを構成する。
この磁気センサによって以下の通り、弁の開閉動作を検知することができる。即ち、磁石M1がダイヤフラム押え23の上下動に応じて上下動するのに対し、磁性体M2はボンネットウォール25及びボンネット24共にバルブボディ1内に固定されている。この結果、ダイヤフラム押え23の上下動に従って上下動する磁石M1と、位置が固定されている磁性体M2との間に発生する磁界の変化に基づき、ダイヤフラム押え23の動作、ひいては弁の開閉動作を検知することができる。
なお、本実施形態では磁気センサを用いたが、これに限らず、他の実施形態においては、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
【0062】
圧力センサPと磁気センサには夫々、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル51の一端が接続しており(磁気センサについては、詳細には磁性体M2に接続している)、フレキシブルケーブル51の他端は、流体制御機器V1の外側に設けられた回路基板52に接続している。
本例において、回路基板52には、所定の情報処理を実行する処理モジュール7(
図7を参照して後述)が構成されている。処理モジュール7は、圧力センサPや磁気センサから取得した情報に基づき、流体制御機器V1の異常を検知する処理を実行する。そして、回路基板52には外部端子接続用の略矩形状のコネクタ53が設けられており、これにより、圧力センサPと磁気センサによって測定されたデータを抽出したり、処理モジュール7によって実行された異常判別処理の処理結果に係るデータを抽出したりすることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、フレキシブルケーブル51と回路基板52にはフレキシブル基板(FPC)が用いられ、フレキシブルケーブル51、回路基板52、及びコネクタ53は一体的に構成されている。フレキシブルケーブル51と回路基板52にフレキシブル基板を用いることにより、配線経路として部材間の隙間を利用することが可能になり、その結果、被覆線を用いる場合に比べて流体制御機器V1自体を小型化することができる。
また、処理モジュール7は回路基板52とは別に、流体制御機器V1内に格納されていてもよいし、圧力センサP又は磁気センサの一部として構成されていてもよい。
また、コネクタ53の種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0064】
以上の構成からなる流体制御機器V1は、弾性体6の分だけ閉空間S2内の容積を減じることができるため、閉空間S2内の圧力変化を精度よく検出することができる。その結果、流路から閉空間S2への流体の僅かな漏出など、ダイヤフラム22の破損等に起因した異常を検知することができる。
【0065】
●ソフトウェア構成例
以上の構成からなる流体制御機器V1において、閉空間S2内の圧力変化に基づいて流体制御機器V1の異常を判別する処理の一例を述べる。
処理モジュール7は、回路基板52上に設けられた演算回路やメモリによって構成され、これにより
図6に示されるように、判別処理部71と通信処理部72からなる機能ブロックを備える。この処理モジュール7は、フレキシブルケーブル51によって圧力センサPや磁気センサと連携可能に構成されており、当該圧力センサPや磁気センサからデータの供給を受けることができるようになっている。
【0066】
判別処理部71は、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサPによって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間S2への流体の漏出等に起因した流体制御機器V1の異常を判別する処理を実行する。即ち、通常使用時において、流体制御機器V1の弁の開閉で想定される閉空間S2内の圧力の限界値を所定の閾値としておく。そして、閉空間S2内の圧力の検出値が当該閾値を超えた場合に、流体制御機器V1に異常が生じたものと判別する。このような判別の合理性は、ダイヤフラム22の破損等によって閉空間S2へ流体が漏出して閉空間S2内の圧力が上昇した結果として、あるいは流路内の減圧によって閉空間S2内の圧力が減少した結果として閉空間S2内の圧力の検出値が閾値を超えたとみなせることによる。
【0067】
通信処理部72は、コネクタ53を介して接続された外部端末8に対し、判別処理部71による判別結果を送信する処理を実行するための機能部である。
【0068】
なお、本実施形態では、判別処理部71による処理結果は、コネクタ53を介して外部端末8に送信させるものとしているが、通信処理部72を例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)等で構成し、無線通信によって送信するものとすることもできる。
【0069】
また、コネクタ53に他の端末が常時接続されている場合、通信処理部72は、判別処理部71による判別結果を1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で送信することができる。この点、流体の微量な漏出はその瞬間を検知するのが難しいが、数日程度であれば昇圧するため検知可能となる。一方、閉空間S2は気密な空間であるため、微小な漏出が発生しても直ちに問題となりにくい。そのため、所定の周期による送信であっても支障がない。さらに、このように所定の周期で情報の送信を行う場合には、消費電力を抑えることができる。
【0070】
また、流体制御機器V1が複数、集積されて流体制御装置を構成する場合、各流体制御機器V1の通信処理部72は、外部端末8に対して自己を識別可能な自己識別情報と共に、判別処理部71による判別結果を流体制御機器V1ごとに異なるタイミングで送信することができる。
【0071】
外部端末8に対して、流体制御機器V1を個々に識別可能な自己識別情報が送信されることで、流体制御装置を構成する複数の流体制御機器V1のうちのいずれが異常を来しているのかを判別することができる。
また、外部端末8に対して、流体制御機器V1ごとに異なるタイミングで判別結果が送信されることで、パケット衝突の問題を回避することができるし、一斉に送信される場合と比べて一時的な処理の過負荷を防ぐこともできる。さらに、一斉に送信される場合と違い、データ送信に利用される無線のチャンネルを流体制御機器V1ごとに変える必要がないため、多くのチャンネルを用意する必要がない。流体制御機器V1と外部端末8の接続手段をBluetooth(登録商標)によって実現する場合には、同時接続台数が限られるため(通常7台)、送信のタイミングを変えることで同時接続台数を超える数の流体制御機器V1を用いることができる。
【0072】
外部端末8は、所謂パーソナルコンピュータやサーバ、データの送受信や処理が可能な可搬型端末等であって、CPU(、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成される。
この外部端末8は、流体制御機器V1の閉空間S2への流体の漏出の判別結果を受信するための通信処理部を有している。外部端末8が流体制御機器V1から受信した情報は適宜、流体制御機器V1の管理者あるいは監視者等が利用する端末からの求めに応じて、当該監視者等が利用する端末に提供される。
【0073】
以上の構成からなる流体制御機器V1により、圧力センサPによって検出された閉空間S2内の圧力と所定の閾値との比較に基づき、閉空間S2への流体の漏出等に起因した流体制御機器V1の異常を検知することができる。
また、流体制御機器V1の異常に関する情報が外部端末8に集約されるため、流体制御機器V1の監視者等は、流体制御機器V1の動作状況を負担なく監視することができる。
さらに、流体制御機器V1は、閉空間S2内の圧力を検出した上、所定の閾値と検出値とを比較することによって異常を検知するため、閉空間S2内が負圧となる異常を来した場合でも、これを検知することができる。
【0074】
なお、このような機能構成は一例であって、判別処理部71を外部端末8に備えさせ、圧力センサPによる検出値など、流体制御機器V1の動作情報を外部端末8に送信するものとしてもよく、各種の機構構成が可能である。
【実施例2】
【0075】
次に、本発明の第二の実施形態に係る流体制御機器について説明する。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態に係る流体制御機器V2は、ボンネット24に弾性体9を収容する収容部24bを備えたものである。
なお、本実施形態に係る流体制御機器V2の説明においては、上述した第一の実施形態に係る流体制御機器V1の変形例として流体制御機器V2に言及することとし、同一の機能や構成を有する部材に対しては流体制御機器V1と同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0076】
本実施形態におけるボンネット24には、閉空間S2側に向かって開口し、開口部より弾性体9を収容する略凹状の収容部24bが設けられている。特に本実施形態においては、収容部24bはボンネット24の仕切部241に設けられた貫挿孔241aの一部をなしており、貫挿孔241aの他の部分よりも拡径し、ダイヤフラム押え23の基体部231の径よりも大きな径を有している。
【0077】
なお、上述した第一の実施形態と同様、本実施形態においても、ダイヤフラム押え23の拡径部232が流体制御機器V1の開閉に伴って上下動するピストン43の上死点を規定するものとするのが好適である。
【0078】
●弾性体9
弾性体9は上述した弾性体6と同様、外力に応じて弾性的に膨縮する部材であって、外面が非多孔質材料でコーティングされた多孔質の軟性樹脂等からなる。また、本例においても略リング状に構成され、中央にはダイヤフラム押え23の基体部231が貫挿される貫挿孔9aが設けられている。
【0079】
一方、本例における弾性体9は、自然状態において収容部24bに収容されるシール部91と、収容部24bからはみ出し、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間で弾性的に膨縮する膨縮部92とからなる。
【0080】
シール部91は、収容部24bの形状に即した略リング状からなる。このシール部91は、収容部24bに収容された状態でダイヤフラム押え23とボンネット24の間をシールして閉空間S2の気密性を確保しており、上述した第一の実施形態に係る流体制御機器V1を構成するOリングO2の機能を果たしている。
これにより本例では、第一の実施形態に係る流体制御機器V1が有したOリングO2を設けなくてもよい。ただし、このことはOリングO2を別途、設けることを妨げるものではなく、第一の実施形態と同様にOリングO2を設けてもよい。
【0081】
膨縮部92は、シール部91と同様に略リング状からなるが、収容部24b及びシール部91の径に比して大きな径からなる。この膨縮部92は、貫挿孔9a内にダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させた状態で、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間に介在し、ダイヤフラム押え23の上下動に伴って弾性的に膨縮する。即ち、流体制御機器V2の開弁時、ダイヤフラム押え23がダイヤフラム22から離反すると、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241の間で挟圧されて圧縮される。一方、流体制御機器V2の閉弁時、ダイヤフラム押え23がダイヤフラム22に当接し、ダイヤフラム押え23の拡径部232とボンネット24の仕切部241が離間すると、挟圧状態から解放されて膨らみ、圧縮前の自然状態に戻る。
【0082】
なお、本実施形態において、弾性体9は略リング状に構成され、貫挿孔9aにダイヤフラム押え23を貫挿させられるようになっているが、これに関わらず、膨縮部92が収容部24bからはみ出し、ダイヤフラム押え23の拡径部232からの押圧力に応じて弾性的に膨縮する限り、他の形状からなるものとしてもよい。例えば、外形が矩形状であってもよいし、複数の弾性部材の集合体として構成されていていてもよい。また、膨縮部92が収容部24bやシール部91と同じ径からなり、シール部91と膨縮部92の外周面が面一となるように構成してもよい。
【0083】
また、このような収容部24b、及びシール部91と膨縮部92から弾性体9の構成は、膨縮部92の一部又は全体が収容部24bに収容される構成を除外するものではない。従って、流体制御機器V2の開弁時、ダイヤフラム押え23からの押圧力によって弾性体9の膨縮部92の一部又は全部が弾性的に変形し、収容部24bに収容されるようになっていてもよい。
また、上述した第一の実施形態に係る流体制御機器V1が備えたOリングO2を備えるものとすれば、シール部91を設けることなく、弾性体9を膨縮部92のみからなるものとすることもできる。この場合、流体制御機器V2の開弁時、ダイヤフラム押え23からの押圧力によって、弾性体9の一部又は全部が収容部24bに収容される。
【0084】
また、弾性体9は収容部24bに収容されるが、閉弁時の自然状態において、閉空間S2とは反対の側(収容部24bの奥)に空隙を形成して収容部24bに収容されるようにしてもよい。これにより、開弁時には弾性体9が当該空隙を埋めながら収容部24bに収容される一方、閉弁時には弾性体9が閉空間Sに大きくせり出し、閉空間S2の体積を小さくすることができる。
【0085】
本実施形態に係る流体制御機器V2によれば、ダイヤフラム押え23とボンネット24の間をシールしつつ、弾性体9の分だけ閉空間S2に占める気体の容積を減じることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 バルブボディ
2 ボンネット部
21 シート
22 ダイヤフラム
23 ダイヤフラム押え
231 基体部
232 拡径部
24 ボンネット
24a 凹部
24b 収容部
241 仕切部
241a 貫挿孔
25 ボンネットウォール
3 カバー部
4 アクチュエータ部
51 フレキシブルケーブル
52 回路基板
53 コネクタ
6 弾性体
6a 貫挿孔
7 処理モジュール
8 外部端末
9 弾性体
9a 貫挿孔
91 シール部
92 膨縮部
M1 磁石
M2 磁性体
O1、O2 Oリング
P 圧力センサ
S1 駆動圧導入室
S2 閉空間
V1、V2 流体制御機器