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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】自転車用ペダル
(51)【国際特許分類】
   B62M 3/08 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
B62M3/08 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022513044
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007672
【審査請求日】2022-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314013327
【氏名又は名称】株式会社グロータック
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 将行
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0125148(US,A1)
【文献】特開2015-223862(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018105616(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0031850(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0125147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0102049(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0377171(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297650(US,A1)
【文献】米国特許第10173748(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第0360245(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底に固定したクリートを介して靴を固定可能な自転車用ペダルであって、
前記クリートの先端部と連結する第1連結部と、
前記クリートの後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前記第1連結部側に付勢された第2連結部と、を備え、
前記第2連結部は、前記クリートを前記第1連結部とともに前後に挟持してペダル本体に固定するクリート固定位置、及び当該クリート固定位置よりも後方側のクリート取り外し位置の範囲を移動し、
前記第2連結部が前記クリート固定位置から前記クリート取り外し位置に向かって所定距離以上移動した場合に、前記クリートを固定する方向の付勢力が前記クリート固定位置での付勢力よりも弱くなるように調整するクリート固定力調整機構を備え、
前記第2連結部は、ペダル軸と平行な軸周りに回動可能に設けられ前記クリートの後端部と連結する爪部と、当該爪部に一端部が支持され且つ当該ペダル本体の後端部の後方側に他端部が支持された、当該爪部に前記付勢力を付与する弾性部材とを有し、
前記クリート固定力調整機構は、前記弾性部材の他端部を上下方向に移動可能に支持する支持機構を有するとともに、前記第2連結部の回動により前記弾性部材の付勢方向を変更することで前記クリート固定位置から前記クリート取り外し位置方向への所定距離以上移動に応じて前記クリートを固定する方向の付勢力が弱くなるように調整することを特徴とする自転車用ペダル。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2連結部の前記クリートの後端部との連結部分のペダル本体に対する左右方向の位置を調整する調整部及び当該連結部分を調整位置にて固定する固定部を有するクリート回転位置調整機構を備えることを特徴とする自転車用ペダル
【請求項3】
靴底に固定したクリートを介して靴を固定可能な自転車用ペダルであって、
前記クリートの先端部と連結する第1連結部と、
前記クリートの後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前記第1連結部側に付勢された第2連結部と、
前記第2連結部の前記クリートの後端部との連結部分のペダル本体に対する左右方向の位置を調整する調整部及び当該連結部分を調整位置にて固定する固定部を有するクリート回転位置調整機構と、を備えることを特徴とする自転車用ペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に固定したクリートを介して靴を固定可能な自転車用ペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴底に固定したクリートを介して靴を固定する自転車用ペダルとして、例えば、特許文献1記載の自転車用ペダルが開示されている。
かかる自転車用ペダルは、ペダル軸となるスピンドルと、中心管形軸芯支持部を備えたペダル本体と、フロントクランプ部材と、リアクランプ部材とを備えている。フロント及びリアクランプ部材は、ペダル本体の上面に連結され、クランプ位置と開放位置との間で移動するように配置されたクリート係合機構を構成している。また、ペダル本体とリアクランプ部材との間に2個のトーションスプリングが連結されている。クリートは、前進運動及び下降運動(踏込む動作)により、クリートをペダルに押し込むことによって、ペダルに噛み合わされる。これにより、クリートは、ペダルに開放自在にロックされる。一方、靴のかかとをペダルの外側に曲げることによって、クリートをペダルから開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-252279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、リアクランプ部材は2個のトーションスプリングによって、フロントクランプ部材側に付勢されており、この付勢力は、リアクランプ部材を解放位置方向へと回動させるほど大きくなる。そのため、靴のかかとをペダルの外側に曲げるために比較的大きな力が必要となる。したがって、この動作を長距離の運転で疲れた脚で行うのは非常に煩わしい作業となる。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、クリートをペダルから取り外す際に必要な力を従来と比較して軽減することができる自転車用ペダルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の自転車用ペダルは、靴底に固定したクリートを介して靴を固定可能な自転車用ペダルであって、前記クリートの先端部と連結する第1連結部と、前記クリートの後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前記第1連結部側に付勢された第2連結部と、を備え、前記第2連結部は、前記クリートを前記第1連結部とともに前後に挟持してペダル本体に固定するクリート固定位置、及び当該クリート固定位置よりも後方側のクリート取り外し位置の範囲を移動し、前記第2連結部が前記クリート固定位置から前記クリート取り外し位置に向かって所定距離以上移動した場合に、前記クリートを固定する方向の付勢力が前記クリート固定位置での付勢力よりも弱くなるように調整するクリート固定力調整機構を備える。
【0006】
〔発明2〕 さらに、発明2の自転車用ペダルは、発明1の自転車用ペダルにおいて、前記第2連結部は、ペダル軸と平行な軸周りに回動可能に設けられ前記クリートの後端部と連結する爪部と、当該爪部に一端部が支持され且つ当該ペダル本体の後端部の後方側に他端部が支持された、当該爪部に前記付勢力を付与する弾性部材とを有し、前記クリート固定力調整機構は、前記弾性部材の他端部を上下方向に移動可能に支持する支持機構を有するとともに、前記第2連結部の回動により前記弾性部材の付勢方向を変更することで前記クリート固定位置から前記クリート取り外し位置方向への所定距離以上移動に応じて前記クリートを固定する方向の付勢力が弱くなるように調整する。
【0007】
〔発明3〕 さらに、発明3の自転車用ペダルは、発明2の自転車用ペダルにおいて、前記第2連結部の前記クリートの後端部との連結部分の左右方向の位置を調整するクリート回転位置調整機構を備える。
〔発明4〕 また、上記目的を達成するために、発明4の自転車用ペダルは、靴底に固定したクリートを介して靴を固定可能な自転車用ペダルであって、前記クリートの先端部と連結する第1連結部と、前記クリートの後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前記第1連結部側に付勢された第2連結部と、前記第2連結部の前記クリートの後端部との連結部分の左右方向の位置を調整するクリート回転位置調整機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、発明1の自転車用ペダルによれば、自転車用ペダルに固定されたクリートを自転車用ペダルから取り外す際に、クリート固定力調整機構によって、第2連結部をクリート固定位置よりも後方側へと所定距離以上移動したときにクリート固定力をクリート固定位置のときよりも弱くなるようにした。これにより、従来と比較して、弱い力でクリートを自転車用ペダルから取り外すことができる。
さらに、発明2の自転車用ペダルによれば、発明1と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0009】
さらに、発明3の自転車用ペダルによれば、第2連結部のクリートの後端部と連結する部分の左右方向の位置を調整することができるので、クリートのペダル面に直交する軸周りの回転方向の位置を調整することができる。
また、発明4の自転車用ペダルによれば、発明3の自転車用ペダルと同等の作用及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
図2】実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す斜視図であり、(a)は、平面側から視た斜視図であり、(b)は、底面側から視た斜視図である。
図3】実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す図であり、(a)は右側目図、(b)は背面図である。
図4】(a)は、スピンドル軸を示す図であり、(b)は、自転車用ペダル1の分解斜視図である。
図5】(a)~(c)は、スピンドルユニット10のスピンドル取付部材60に対する取付位置を調整することでQファクタを調整する構成を説明するための図である。
図6】自転車用ペダル1を自転車のクランクアーム300に取り付けた状態を示す部分平面図である。
図7】(a)は、クリートと係合しない初期位置にあるときの爪部25、弾性部材26及びクリート固定力調整ネジ32の位置関係を示す図であり、(b)は、爪部25がクリート固定位置にあるときのクリート固定力の大きさを示す図であり、(c)は、爪部25がクリート取り外し位置にあるときのクリート固定力の大きさを示す図である。
図8】(a)は、クリート固定位置にてクリート100を固定した状態を示す斜視図であり、(b)は、クリート取り外し位置へとクリート100を回転させた状態を示す斜視図である。
図9】(a)~(c)は、試作品による爪部の移動に対する弾性部材の変形状態及びクリート固定力調整ネジの変位状態を示す図である。
図10】(a)~(c)は、試作品を用いた爪部の左右位置を調整する手順を説明するための図である。
図11】(a)及び(b)は、爪部25の左右位置を調整前及び調整後の自転車用ペダル1の底面図である。
図12】(a)及び(b)は、爪部25の左右位置を調整前及び調整後の自転車用ペダル1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔構成〕
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図12は、実施の形態を示す図である。
図1は、本実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。図2は、本実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す斜視図であり、(a)は、平面側から視た斜視図であり、(b)は、底面側から視た斜視図である。図3は、本実施の形態に係る自転車用ペダル1の一構成例を示す図であり、(a)は右側目図、(b)は背面図である。図4(a)は、スピンドル軸を示す図であり、図4(b)は、自転車用ペダル1の分解斜視図であり、図5(a)~(c)は、スピンドルユニット10のスピンドル取付部材60に対する取付位置を調整することでQファクタを調整する構成を説明するための図である。図6は、自転車用ペダル1をクランクアーム300に取り付けた状態を示す図である。図7(a)は、クリートと係合しない初期位置にあるときの爪部25、弾性部材26及びクリート固定力調整ネジ32の位置関係を示す図であり、図7(b)は、爪部25がクリート固定位置にあるときのクリート固定力の大きさを示す図であり、図7(c)は、爪部25がクリート取り外し位置にあるときのクリート固定力の大きさを示す図である。図8(a)は、クリート固定位置にてクリート100を固定した状態を示す斜視図であり、(b)は、クリート取り外し位置へとクリート100を回転させた状態を示す斜視図である。
【0012】
以下、図1中に矢印で示した方向に基づいて構成を説明する。すなわち、左右側面はその方向のままで、正面を前面、背面を後面、平面を上面、底面を下面とする。そして、左側面から右側面を向く方向を右方、その逆を左方、後面から前面を向く方向を前方、その逆を後方、底面から平面を向く方向を上方、その逆を下方と定義する。
本実施の形態の自転車用ペダル1は、靴底に取り付けられたクリートを介して靴を取付可能なステップ・イン式のペダルである。なお、自転車用ペダル1は、左右のペダルが左右鏡像で同じ構成となっているので右側のペダルについてのみ説明する。
【0013】
自転車用ペダル1は、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示すように、スピンドルユニット10と、ペダル本体20と、クリート固定力調整機構30と、カバー40と、クリート回転位置調整機構50と、スピンドル取付部材60とを備える。
ペダル本体20は、スピンドルユニット10が下面側に取り付けられる平面視略矩形状の中央部29と、スピンドルユニット10を境に前方側に突出する平面視略台形状の前端部21と、スピンドルユニット10を境に後方側に突出する平面視略台形状の後端部22とを有する。
【0014】
まず、スピンドルユニット10の構成について詳細に説明する。
スピンドルユニット10は、スピンドルカバー11と、スピンドル本体12とを備える。
スピンドル本体12は、図4(a)に示すように、中央部が一端側から他端側に向かって先細りとなる略円錐台形状の軸部120と、軸部120の他端に設けられた外側端部121と、軸部120の一端に設けられた取付端部122と、軸受124及び125と、軸受126とを備える。
【0015】
外側端部121は、軸部120の他端から長手方向に沿って他端と同径に外側に延出するとともに先端に六角穴が形成された略円筒状体からなり、取付端部122は、軸部120の一端から長手方向に沿って一端と同径に外側に延出するとともに、先端に六角穴が形成され且つ一端側の一部の外周面にネジ溝が形成された略円筒状の取付軸部122aと、一端側と他端側のネジ溝との境界部に設けられたフランジ部122bとを有している。
軸受124及び125は、これらの内輪の内側に外側端部121の軸部120側の部分が嵌入されて外側端部121に内輪が固定され、軸受126は、その内輪の内側に取付端部122のフランジ部122bよりも他端部側の部分が嵌入されて取付端部122に内輪が固定されている。
【0016】
スピンドルカバー11は、図4(b)並びに図5(a)及び(b)に示すように、外形が横断面八角形状で且つ内形が横断面円形状の略有底筒状のカバー本体110と、カバー本体110の開放端に設けられた軸受126を収容するための円筒形状に膨らんだ軸受包囲部111とを備える。加えて、カバー本体110の長手方向の一端側寄りに設けられるとともに、外周面に周方向に沿って形成され且つ長手方向に沿って等間隔に設けられた溝部112a、112b、112c、112d及び112eを有する位置調整用溝112を備える。なお、溝部112a~112eは、横断面円形状に構成されている。
【0017】
スピンドルユニット10は、スピンドル本体12を、取付端部122の取付軸部122a及びフランジ部122bが外部に露出するようにしてスピンドルカバー11の内側に収容することで構成されている。この状態では、スピンドル本体12の軸受124及び125の外輪はカバー本体110の内周面に固定され、軸受126の外輪は軸受包囲部111の内周面に固定される。これにより、スピンドルカバー11は、スピンドル本体12の軸線周りに回動可能となっている。
【0018】
次に、スピンドル取付部材60の構成について説明する。
スピンドル取付部材60は、平面視略台形状の板を長手方向の軸周りに下方に湾曲させた形状となっている。上底側(後端側)の端部には、上方に突出する取付部61が設けられており、取付部61の長手方向の両端部には、それぞれ上側から下側へと貫通するネジ穴61hが設けられている。さらに、取付部61のネジ穴61hの下側には、それぞれネジ穴61hと連通した丸ナット65を収容する収容部61cが設けられている。
【0019】
また、下底側(前端側)の端部の長手方向の両端部には、それぞれ上方に突出する取付部62が設けられており、取付部62には、それぞれ上側から下側へと貫通するネジ穴62hが設けられている。さらに、取付部62のネジ穴62hの下側には、それぞれネジ穴62hと連通した丸ナット65を収容する収容部62cが設けられている。
さらに、スピンドル取付部材60は、その取付部61及び62の間の湾曲部63の長手方向の中央部に、周方向に沿って延在し且つ長手方向に沿って間隔を空けて立設された突起部64a及び64bを備える。これら突起部64a及び64bは、位置調整用溝112の溝部112a~112eのうち隣接する2つの溝部に嵌め込み可能に構成されている。
【0020】
次に、ペダル本体20へのスピンドルユニット10の取付構成について説明する。
図4(b)に示すように、ペダル本体20の前端部21の前端枠部211の左右端部には、それぞれ3つのネジ穴を一部重複して前後方向に連結した構成のクリート前後位置調整用ネジ穴21Hが上下に貫通して設けられている。さらに、ペダル本体20の後端部22の後端枠部221の前端部の左右端部には、それぞれ3つのネジ穴を一部重複して前後方向に連結した構成のクリート前後位置調整用ネジ穴22Hが上下に貫通して設けられている。
【0021】
また、カバー40は、平面視で略U字状を成す薄板状の部材から構成されており、ペダル本体20上面のクリート前後位置調整用ネジ穴21H及び22Hのいずれか4つのネジ穴部と同時に且つ同軸に重なる位置にそれぞれネジ穴40Hが上下に貫通して設けられている。
スピンドルユニット10は、図5(a)及び(b)に示すように、スピンドルカバー11に設けられた位置調整用溝112の長手方向に隣接するいずれか2つの溝内にスピンドル取付部材60の湾曲部63に設けられた突起部64a及び64bを嵌入することでスピンドル取付部材60に取り付けられる。このとき、突起部64a及び64bを嵌め込む2つの溝の位置を調整することで、図5(b)の矢印に示す方向に、4段階にスピンドルユニット10の位置を調整することができる。すなわち、Qファクタ(左右のペダル間距離)を調整することができるようになっている。
【0022】
そして、スピンドルユニット10が取り付けられたスピンドル取付部材60は、カバー40、取付ネジ41及び丸ナット65を介してペダル本体20の底面側に取り付けられる。
すなわち、カバー40のネジ穴40Hとスピンドル取付部材60のネジ穴61h及び62hとがクリート前後位置調整用ネジ穴21H及び22Hを介して同軸に重なるように位置合わせをする。この状態で、カバー40の前端部21側の上方から2箇所、取付ネジ41をネジ穴40H、クリート前後位置調整用ネジ穴21H及びネジ穴62hの順に通して丸ナット65のネジ穴に螺合する。同様に、カバー40の後端部22側の上方から2箇所、取付ネジ41をネジ穴40H、クリート前後位置調整用ネジ穴22H及びネジ穴61hの順に通して丸ナット65のネジ穴に螺合する。これにより、スピンドルユニット10がペダル本体20に取付られた状態となる。
【0023】
このとき、クリート前後位置調整用ネジ穴21H及び22Hに対するスピンドルユニット10の取付位置を調整することでスピンドルユニット10に対するクリートの前後方向の位置を調整することができる。
また、スピンドルユニット10をペダル本体20に取り付ける際に、図5(b)に示すように、スピンドル取付部材60とペダル本体20の下面との間にスペーサ80を挟むことで、スタックハイト(スピンドル本体12の中心(軸心)から靴底までの距離)を調整することができる。加えて、自転車用ペダル1にクリート100を介して靴を固定時に足裏の角度(カント角)がフラットとなるような厚み形状のスペーサ80を間に挟むことによってカント角の調整をすることもできる。
【0024】
また、自転車用ペダル1は、図6に示すように、スピンドルユニット10の取付軸部122aを介してクランクアーム300のクランク軸310に連結され、クランクアーム300と一体となって回転するように構成されている。また、クランクアーム300と連結された状態で、ペダル本体20は、スピンドルユニット10の軸線周りに回動自在となっている。
次に、ペダル本体20の詳細な構成を説明する。
ペダル本体20の前端部21は、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)、図3(a)及び(b)並びに図8(a)及び(b)に示すように、平面視略台形状に開口する前端開口穴210を形成する前端枠部211を備える。さらに、前端枠部211の前端部には、クリート100の前端部に設けられた平面視略三日月形状の前端クリート側係合面101と連結される前部連結部23が設けられている。
【0025】
さらに、ペダル本体20の後端部22は、平面視略凸字状に開口する後端開口穴220を形成する後端枠部221を備える。さらに、後端部22には、クリートの後端部に設けられた平面視略横長台形状の後端クリート側係合面102と連結される後部連結部24が設けられている。
前部連結部23は、前端枠部211の前端部下面の後端開口穴220側の一部を略三日月形状に厚みを薄くして他部と段差状に形成された前クリート係合面230を備えている。ここで、前クリート係合面230は、クリート100の連結時に下側を向く面であり、ペダル本体20の上側から後端開口穴220に差し込まれたクリート100の前端クリート側係合面101と係合(当接)する係合面である。
【0026】
後部連結部24は、爪部25と、爪部25にクリート100を固定するクリート固定力を付与するための弾性部材26と、爪部25を回動自在に軸支するためのペダル軸(スピンドルユニット10)と平行な支軸27と、支軸27を後端部22に固定するための固定ネジ28とを備える。
爪部25は、後端開口穴220よりも上側に配置された係合爪部250と、係合爪部250の下端の左寄り及び右寄りの位置からそれぞれ下方に突出して設けられた左右方向に対向する一対の板状の左右支持部251L及び251Rと、左右支持部251L及び251Rの内側の上下方向の中間部に後方側に突出して設けられたバネ支持部252とを備える。
【0027】
係合爪部250は、図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図7(a)~(c)に示すように、クリート100と係合しない初期位置において後方に向かって斜め下方へと僅かに傾斜する上面250aと、上面250aの前端から前方斜め下方へと延びる第1傾斜面250bとを有する。加えて、第1傾斜面250bの前端からより大きな傾斜角で前方斜め下方へと延びる第2傾斜面250cと、第2傾斜面250cの前端から下方に僅かに伸びる前端面250dとを有する。さらに、前端面250dの下端から後方へと斜め上方に僅かに傾斜して延びる後クリート係合面250eと、上面250aの後端から前方側斜め下方に伸びる後端面250fとを有している。なおさらに、後端面250fの左右中央には、前方側へと凹む凹部250Sが設けられている。
【0028】
ここで、第1傾斜面250b及び第2傾斜面250cは、靴底にクリート100が取り付けられた靴を穿いた利用者の上側からの踏み込み動作によってクリート100の後端クリート側係合面102の裏面と当接して、後端クリート側係合面102を係合爪部250の下側の後クリート係合面250eと係合する位置へと案内する役割を有する。
また、図7(a)に示すように、爪部25の左支持部251L及び右支持部251Rの下端部には、それぞれ支軸27を挿通する軸穴251hが左右方向に貫通して設けられている。
【0029】
また、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示すように、ペダル本体20の後端部22の後端枠部221の左右端部の左支持部251L及び右支持部251Rの軸穴251hと重なる位置には、それぞれ軸穴251hと同径の軸穴223が同軸に左右方向に貫通して設けられている。また、後端部22の後端枠部221の左右端部の下面側には、それぞれ軸穴223と連通するネジ穴224(図10を参照)が穿設されている。
【0030】
ここで、支軸27の長手方向の両端部には、自身をペダル本体20の後端部22に固定するためのネジ穴27h(図10を参照)が設けられている。支軸27は、例えば、ペダル本体20の左側面側の軸穴223から挿入され、左支持部251L及び右支持部251Rの軸穴251hを通って右側面側の軸穴223まで差し込まれる。このとき、後端部22の後端枠部221の左右端部の内側面と左右支持部251L及び251Rの外側面との間には隙間51が形成されており、この隙間51を埋めるように支軸27の外径よりも大きい内径を有する円環状のスペーサ52が左右に1つずつ支軸27を内側に挿通して配置されている。これら2つのスペーサ52は、クリート回転位置調整機構50の構成部品である。
【0031】
そして、支軸27は、後端部22の後端枠部221の左右端部の下面側にそれぞれ設けられた、軸穴223と連通するネジ穴224及び支軸27の両端部に設けられたネジ穴27hを介して、固定ネジ28によって後端部22に固定されている。
この状態で、爪部25を支軸27周りに回動することで係合爪部250を前後方向に移動することができる。但し、クリートの係合していない初期位置では、爪部25の左右支持部251L及び251Rの前端側の部分が後端枠部221の前端部の内周面と当接した状態となっており、初期位置よりも前方側には移動できないように構成されている。
【0032】
バネ支持部252は、図1(a)、図2(b)及び図7(a)に示すように、軸部252aと、軸部252aの長手方向中央部に後方側に突出するように設けられた円筒状又は円柱状のバネ係合部252bとを有している。バネ係合部252bは、軸部252aに一体的に固定されている。軸部252aは、左右支持部251L及び251Rの上下方向の中間部の後端部に左右方向に貫通して設けられた軸穴251h2に軸線周りに回動自在に支持されている。すなわち、爪部25が後方側に回動すると軸部252aが回動しバネ係合部252bも共に回動するように構成されている。
【0033】
弾性部材26は、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示すように、圧縮コイルバネから構成されており、一端部がバネ支持部252のバネ係合部252bを内側に挿入する形で支持され、他端部がクリート固定力調整機構30を構成するバネ支持部31に支持されている。
弾性部材26は、後部連結部24にクリート100が係合していない状態の爪部25の初期位置において、爪部25が前部連結部23側に付勢されるように所定長さ縮めた状態で取り付けられている。
【0034】
クリート固定力調整機構30は、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)、図3(a)及び(b)並びに図7(a)に示すように、バネ支持部31と、クリート固定力調整ネジ32と、ネジ頭支持穴33とを含んで構成されている。
バネ支持部31は、弾性部材26の内径よりも長い横幅及び縦幅を有する背面視で略八角形状の板状をなし、板面の中央部に板面を貫通して形成されたネジ穴を有する板状体31aと、板状体31aのネジ穴と連通するネジ穴を有し、板状体31aの正面側に固定された略円筒状のバネ係合部31bとを有する。
【0035】
クリート固定力調整ネジ32は、六角穴付きの鍋型のネジ頭32aと、バネ支持部31のネジ穴の長さよりも長いネジ軸32bとを有する。クリート固定力調整ネジ32は、ネジ軸32bをバネ支持部31のネジ穴に螺合することでバネ支持部31に取り付けられている。
ネジ頭支持穴33は、ペダル本体20の後端部22の後端枠部221の後端部の左右中央に前後方向に貫通して設けられた、クリート固定力調整ネジ32のネジ頭32aの径よりも短い径の貫通穴から構成されている。
【0036】
クリート固定力調整機構30は、バネ支持部31を、弾性部材26の他端部側からバネ係合部31bを内側に挿通して板状体31aが弾性部材26の他端部と当接した状態で、クリート固定力調整ネジ32のネジ頭32aをネジ頭支持穴33に後端枠部221の内周面側から押し当てて取付けられる。
この状態で、六角レンチによって、ネジ頭32aをバネ支持部31のネジ穴にねじ込む方向又は外す方向に回すことで、弾性部材26の他端を押圧する板状体31aの位置を調整することで、クリート固定位置(初期位置)での固定力(付勢力)を調整することができるようになっている。
【0037】
次に、クリート100を自転車用ペダル1に固定する場合の動作について説明する。
靴底にクリート100が取り付けられた靴を穿いた利用者が、クリート100の前端部を自転車用ペダル1の前端開口穴210に差し込んで前端クリート側係合面101を前部連結部23の前クリート係合面230に当接した状態で踏み込み動作を行ったとする。これにより、クリート100の後端クリート側係合面102の裏面が初期位置にある係合爪部250の第1傾斜面250bに当接する。この状態でさらに踏み込むことで爪部25が支軸27周りに弾性部材26を縮ませながら回動して係合爪部250が後方側へとおじぎしながら移動するとともに裏面が第1傾斜面250bに沿って案内される。これにより裏面が第2傾斜面250cに当接し、この状態でさらに踏み込むことで爪部25が支軸27周りに弾性部材26をさらに縮ませながら回動して係合爪部250が後方側へとさらにおじぎしながら移動し、裏面が第2傾斜面250cに沿って案内される。この移動により、やがて後端クリート側係合面102が係合爪部250の下側に入り込むとともに、弾性部材26の反力によって爪部25が支軸27周りに逆方向に回動して係合爪部250が前方側の初期位置へと戻る。これにより、図8(a)に示すように、前端クリート側係合面101が前クリート係合面230に当接し、後端クリート側係合面102が後クリート係合面250eと当接した状態となる。この状態では、クリート100が前部連結部23及び後部連結部24の間に挟まれて自転車用ペダル1に固定される。
【0038】
ここで、初期位置とクリート100を固定しているクリート固定位置とは略同じ位置又は同じ位置となるように前部連結部23及び後部連結部24が構成されている。以下、初期位置とクリート固定位置とは同じ位置として説明する。
次に、自転車用ペダル1に固定されたクリート100(靴)を自転車用ペダル1から取り外す場合の動作を説明する。
自転車用ペダル1に固定されたクリート100を自転車用ペダル1から取り外す場合、利用者は、先端側を支点にクリート100の後端側を内側又は外側に回動させる。
【0039】
図8(b)の例では、クリート100を内側に回転させており、この回転により斜め方向を向いたクリート100の後端面に係合爪部250が押されて爪部25が支軸27周りに回動し、係合爪部250が弾性部材26を縮ませながら後方側へとおじぎしながら移動する。すなわち、クリート100は平面視で略凸字形状を成しており、前端部の横幅に対して後端部の横幅が長く構成されている。したがって、前端部を支点に回動させることで、固定状態のときと比較して前後方向の長さが長くなり係合爪部250が押される。
【0040】
図8(b)に示す回動位置から、さらに内側へと回動することで、弾性部材26が最大まで縮んだ状態となり、且つ係合爪部250が最後方へと移動して、クリート100が自転車用ペダル1から外れる。
ここで、図9(a)~(c)は、自転車用ペダル1の試作品による係合爪部250の移動に対する弾性部材26の変形状態及びクリート固定力調整ネジ32の変位状態を示す図である。
なお、図9(a)~(c)は、係合爪部250を指で押しているが、クリート100をその先端部を支点に内側又は外側に回動させて自転車用ペダル1から取り外す際の係合爪部250の移動に対する弾性部材26の変形状態及びクリート固定力調整ネジ32の変位状態に対応している。また、図9(a)~(c)において、自転車用ペダル1と同様の構成部について同じ符号を付してある。
【0041】
本実施の形態に係る自転車用ペダル1は、クリート100の取り外し動作において、クリート固定力調整機構30によってクリート固定力を調整することができるようになっている。
具体的に、図9(a)に示すクリート固定位置では、図7(b)中の破線矢印に示すように、弾性部材26の反力Fbが破線矢印の方向にかかっている。なお、矢印の長さが力の大きさを示している。このとき、クリート100の後端部を斜め上方から押圧するクリート固定力Ffは、図7(b)中の一点鎖線の矢印に示すようになり、比較的大きな力がかかっている。すなわち、ペダルを漕いでいるときにクリート100がすっぽ抜けることが無いように十分な力がかかっている。また、図7(b)中の実線は、弾性部材26の軸線26aを示す。
【0042】
そして、爪部25が支軸27周りに回動して係合爪部250がクリート固定位置から後方側に移動すると、図9(b)に示すように、係合爪部250の背面側のバネ支持部252の軸部252aによって弾性部材26の一端側が押圧されて弾性部材26が僅かに縮む。この状態では、弾性部材26の反力Fbが大きくなるため、図示省略するが、クリート固定位置のときよりもクリート固定力Ffが大きくなる。
引き続き、係合爪部250が図9(c)に示すクリート取り外し位置まで移動すると、同図中の矢印に示すように、弾性部材26が係合爪部250の可動域内で最大まで縮むとともに、クリート固定力調整ネジ32のネジ頭32aが六角穴を斜め上側に向ける方向(上方)に摺動し、これに伴ってバネ支持部31の板状体31aの上端部がネジ頭支持穴33から離れる方向に移動する。これにより、バネ係合部31bが下方側へと弾性部材26の他端部を内側から押しながら移動する。また、弾性部材26の一端側を支持するバネ支持部252が爪部25の回動に伴って回動し、バネ係合部252bが上方側へと弾性部材26の一端部を内側から押しながら移動する。そのため、クリート固定位置のときと比較して弾性部材26の向きが大きく変化し、弾性部材26の反力Fbの方向が支軸27側へと大きく変化する。この状態では、係合爪部250の後端面250fが略下方を向いた状態となり、凹部250S内に弾性部材26の一部が収納される。
【0043】
すなわち、図7(c)中の実線に示すように、弾性部材26の軸線26aの方向が図7(b)中の軸線26aと比較して支軸27側へと大きく変化しており、図7(c)中の破線矢印で示した反力Fbが略支軸27側を向くようになる。これにより、図7(c)中一点鎖線の矢印で示したクリート固定力Ffが図7(b)に示すクリート固定位置のときと比較して極めて小さくなる。
このようにクリート固定力Ffがクリート固定位置のときよりも小さくなる状態は、弾性部材26の軸線26aの向きが変化して反力Fbの方向が支軸27側へと変化していくことで生じる。なお、図示省略したが、クリート固定力Ffが、クリート固定位置のときよりも小さくなる状態は、係合爪部250の位置が図9(b)に示す位置よりも後方側で且つクリート取り外し位置よりも手前側から発生し、クリート取り外し位置に近づくに連れてクリート固定力Ffが小さくなり、クリート取り外し位置又はその手前で最小となる。
【0044】
次に、クリート回転位置調整機構50について説明する。
図10(a)~(c)は、試作品を用いた爪部25のクリート回転位置を調整する手順を説明するための図である。図11(a)及び(b)は、爪部25の左右位置を調整前及び調整後の自転車用ペダル1の底面図である。図12(a)及び(b)は、爪部25の左右位置を調整前及び調整後の自転車用ペダル1の平面図である。また、図10(a)~(c)において、自転車用ペダル1と同様の構成部について同じ符号を付してある。
【0045】
クリート回転位置調整機構50は、爪部25の左右方向の位置を調整することでペダル面と垂直な軸周りのクリート回転位置を調整するための機構である。クリート回転位置調整機構50は、図1(b)、図2(b)及び図10(a)~(c)に示すように、爪部25の左右支持部251L及び251Rの外側面と、これら外側面と対向する後端部22の後端枠部221の左右端部の内側面との間の隙間51と、これら隙間51に配置されたスペーサ52とを含んで構成される。
【0046】
具体的に、クリート回転位置の調整は、図10(a)に示すように、支軸27を固定している固定ネジ28を外し、支軸27を右側に一部抜き出して左側の隙間51に配置されていたスペーサ52を取り外す。続いて、図10(b)に示すように、今度は支軸27を左側へと抜き出す。そして、係合爪部250を左側の隙間51が無くなるまで左側に移動し、取り外したスペーサ52を右側の隙間51に配置する。すなわち、図10(c)に示すように、係合爪部250を移動して拡がった右側の隙間51に2つのスペーサ52を重ねて配置する。その後、支軸27を元の挿入位置へと戻して固定ネジ28で固定する。
【0047】
これにより、図11(a)及び図12(a)に示す爪部25の基準位置に対して、図11(b)及び図12(b)に示すように、爪部25がスペーサ52の1つ分の幅だけ左側に移動する。この状態では、図12(a)及び(b)中の一点鎖線で示す基準時のクリート100の向きに対して、図12(b)中の実線に示す向きへとクリート100の向きが変わり、クリート100の回転方向の位置が変わる。
なお、爪部25を左方向に位置調整してクリート100の時計回り方向への回転位置を調整する例を説明したが、爪部25の右方向への位置調整についても、逆の手順となるだけで同様となる。
【0048】
〔実施の形態の効果〕
次に、実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、自転車用ペダル1を、自転車のクランクアーム300のクランク軸310に取り付けられる取付端部122を有するスピンドル本体12を有するスピンドルユニット10と、スピンドルユニット10の取付端部122よりも他端部側にスピンドル本体12の軸線周りに回転自在に取り付けられ、スピンドルユニット10の前方側及び後方側にそれぞれ突出する前端部21及び後端部22を有するペダル本体20と、ペダル本体20の前端部21の上面に設けられクリート100の先端部と連結する前部連結部23と、ペダル本体20の後端部22の上面に設けられ、クリート100の後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前部連結部23側に付勢された後部連結部24とを備える構成とした。加えて、後部連結部24は、クリート100を前部連結部23とともに前後に挟持してペダル本体20に固定するクリート固定位置、及びクリート固定位置よりも後方側のクリート取り外し位置の範囲を移動するように構成され、後部連結部24の係合爪部250が固定位置からクリート取り外し位置に向かって所定距離以上移動した場合に、クリート100を固定する方向の付勢力であるクリート固定力Ffが、クリート固定位置に係合爪部250が位置するときよりも弱くなるように調整するクリート固定力調整機構30を備える構成とした。
【0049】
より具体的に、後部連結部24を、ペダル本体20の後端部22に回動可能に軸支されクリート100の後端部と連結する爪部25と、爪部25に一端部が支持され且つペダル本体20の後端部22の上面の後方側に他端部が支持された、爪部25に前部連結部側に付勢する付勢力を付与する弾性部材26とを有する構成とした。そして、クリート固定力調整機構30を、弾性部材26の他端部を上下方向に移動可能に支持するバネ支持部31及びクリート固定力調整ネジ32を有するとともに、後部連結部24の爪部25の回動によるクリート固定位置からクリート取り外し位置方向への所定距離以上の移動に応じて弾性部材26の他端部の支持位置を変更して弾性部材26の付勢方向を変更することでクリート100を固定する方向の力(クリート固定力Ff)が弱くなるように調整するようにした。
【0050】
このような構成であれば、自転車用ペダル1に固定されたクリート100を自転車用ペダル1から取り外す際に、クリート100の内側又は外側への回動によって爪部25の係合爪部250が後方へと移動しその移動距離が所定距離以上となったときに、クリート固定力調整機構30によって、弾性部材26の反力Fbの方向が支軸27側へと変更され、クリート固定力Ffを小さくすることができる。これにより、従来の例えばトーションスプリングで付勢する構成と比較して、弱い力でクリート100を自転車用ペダル1から取り外すことができる。
【0051】
また、本実施の形態では、自転車用ペダル1を、爪部25の左右方向の位置を調整することで、クリート100の回転方向の位置を調整することができるクリート回転位置調整機構50を備える構成とした。
具体的に、クリート回転位置調整機構50は、爪部25の左右支持部251L及び251Rの外側面と、これら外側面と対向する後端部22の後端枠部221の左右端部の内側面との間の隙間51と、これら隙間51に配置されたスペーサ52とを含む構成とした。
【0052】
このような構成であれば、固定ネジ28を外して支軸27を移動して、左右どちらか一方のスペーサ52を取り外し、次いで爪部25をスペーサ52を取り外した側に移動する。そして、この移動によって拡がった左右どちらか他方の隙間51にスペーサ52を2つ重ねて配置して、支軸27を元の位置に戻して固定ネジ28で固定することで、爪部25の左右方向の位置を調整することができる。これにより、自転車用ペダル1側にてクリート100の回転方向の位置を調整することができる。
【0053】
ここで、従来は、クリート100の靴底への取付位置を調整することで、クリート100側で回転方向の位置調整をしていたが、靴底に対するクリート100の位置調整は、前後方向の位置調整も可能であるため、前後方向の一方に最大まで位置調整した場合に、回転方向への位置調整ができなくなるといった問題があった。または、前後方向の位置調整との組み合わせで回転方向の位置調整が十分にできないといった問題があった。本実施の形態のクリート回転位置調整機構50であれば、ペダル側で回転位置の調整ができるので、クリート側での回転位置調整ができない又は不十分であったときに補助することが可能である。
【0054】
また、本実施の形態では、自転車用ペダル1を、スピンドルカバー11に設けた位置調整用溝112と、スピンドル取付部材60に設けた突起部64a及び64bとによって、スピンドルユニットのペダル本体20に対する左右方向の取付位置を調整できる構成とした。
このような構成であれば、自転車用ペダル1においてQファクタを調整することができる。
また、本実施の形態では、自転車用ペダル1を、ペダル本体20の前端部21及び後端部22に設けたクリート前後位置調整用ネジ穴21H及び22Hによって、スピンドルユニット10のペダル本体20への前後方向の取付位置を調整できる構成とした。
【0055】
このような構成であれば、自転車用ペダル1においてクリート100の前後方向の位置を調整することができる。
また、本実施の形態では、自転車用ペダル1を、スピンドルユニット10をペダル本体20に取り付ける際に、スピンドル取付部材60とペダル本体20の下面との間に挟むことができるスペーサ80を備える構成とした。
このような構成であれば、自転車用ペダル1において、スタックハイトを調整することができる。また、間に挟むスペーサ80の厚み形状によってカント角の調整をすることもできる。
【0056】
〔対応関係〕
実施の形態において、前部連結部23は、発明1及び4の第1連結部に対応し、後部連結部24は、発明1乃至4の第2連結部に対応し、バネ支持部31、クリート固定力調整ネジ32及びネジ頭支持穴33は、発明2の支持機構に対応している。
〔変形例〕
なお、上記の実施の形態において、クリート固定力調整機構30の構成を、バネ支持部31、クリート固定力調整ネジ32及びネジ頭支持穴33によって弾性部材26の軸線26aの向きを変更して反力Fbの方向を支軸27側に変更することでクリート固定力Ffを調整する構成としたが、この構成に限らない。係合爪部250の後方側への移動に応じて、弾性部材26の反力Fbの向きをクリート固定力Ffが弱くなる方向に変更することができれば他の構成としてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態及びその変形例において、クリート回転位置調整機構50の構成を、支軸27をずらして、左右どちらか一方の隙間51にあるスペーサ52を取り外して、爪部25をスペーサ52を取り外した側に移動し、これにより拡がった左右どちらか他方の隙間51に2つのスペーサ52を配置することでクリート100の回転位置を調整する構成としたが、この構成に限らない。例えば、支軸27をずらさない状態でも着脱できるスペーサを隙間51に配置する構成とするなど他の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…自転車用ペダル、 10…スピンドルユニット、 11…スピンドルカバー、 12…スピンドル本体、 20…ペダル本体、 21…前端部、 22…後端部、 23…前部連結部、 24…後部連結部、 25…爪部、 26…弾性部材、 27…支軸、 28…固定ネジ、 29…中央部、 30…クリート固定力調整機構、 31…バネ支持部、 32…クリート固定力調整ネジ、 33…ネジ頭支持穴、 40…カバー、 27h,40H,61h,62h,224…ネジ穴、 41…取付ネジ、 50…クリート回転位置調整機構、 51…隙間、 52,80…スペーサ、 60…スピンドル取付部材、 61,62…取付部、 61c,62c…収容部、 63…湾曲部、 64a,64b…突起部、 65…丸ナット、 100…クリート、 101…前端クリート側係合面、 102…後端クリート側係合面、 210…前端開口穴、 211…前端枠部、 220…後端開口穴、 221…後端枠部、 223,251h,251h2…軸穴、 250…係合爪部、 250a…上面、 250b…第1傾斜面、 250c…第2傾斜面、 250d…前端面、 250e…後クリート係合面、 250f…後端面、 250S…凹部、 251L…左支持部、 251R…右支持部、 252…バネ支持部、 252a…軸部、 252b…バネ係合部、 300…クランクアーム、 310…クランク軸
【要約】
クリートをペダルから取り外す際に必要な力を従来と比較して軽減することができる自転車用ペダルを提供する。
自転車用ペダル1を、ペダル本体(20)の前端部(21)に設けられクリート(100)の先端部と連結する前部連結部(23)と、ペダル本体(20)の後端部(22)に設けられ、クリート(100)の後端部と連結するとともに前後方向に移動可能で且つ前部連結部(23)側に付勢された後部連結部(24)と、後部連結部(24)がクリート固定位置からクリート取り外し位置に向かって所定距離以上移動した場合に、クリート(100)を固定する方向の付勢力がクリート固定位置での付勢力よりも弱くなるように調整するクリート固定力調整機構(30)とを備える構成とした。
図1
図2
図3
図4
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図10
図11
図12