IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西ペイント株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20221121BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221121BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221121BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20221121BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B05D5/06 101A
B05D7/24 302P
B05D7/24 302T
B05D7/24 303C
B05D7/24 303J
C09D7/61
C09D101/08
C09D133/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019005618
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020110781
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新海 博文
(72)【発明者】
【氏名】若杉 幸憲
(72)【発明者】
【氏名】松岡 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 賢志
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075306(JP,A)
【文献】特開2000-178500(JP,A)
【文献】特開2014-019714(JP,A)
【文献】特開2014-025062(JP,A)
【文献】特開平05-247402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-201/10
C08J 7/04-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に、着色顔料を含むカラーベース塗料を塗装し、カラーベース塗料を塗装して得られた塗膜上に、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分、並びに蒸着アルミニウム顔料(D)を含むメタリックベース塗料を塗装し、メタリックベース塗料を塗装して得られた塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法であって、
蒸着アルミニウム顔料(D)の平均粒子径が5~20μmの範囲内であり、厚さが0.01~0.2μmの範囲内であって且つアスペクト比が100~700の範囲内であり、
メタリックベース塗料が、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、蒸着アルミニウム顔料(D)を50~100質量部含有し、
カラーベース塗料が、形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが60~100℃の範囲内、架橋点間分子量Mcが300~2000の範囲内であることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
メタリックベース塗料におけるリン酸基含有アクリル樹脂(A)が、構成する全モノマーの合計量に対して、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)3~48質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)6~45質量%及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)10~91質量%からなるモノマー混合物の共重合体樹脂である請求項に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
塗装して得られる複層塗膜の60度鏡面光沢度が150~300の範囲内である請求項1又は2に記載の塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性が高く、且つ素材付着性、特にプラスチック基材に対する付着性に優れ、耐候性等の塗膜物性にも優れる塗膜を形成可能な塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内外板部や樹脂部品、家電品などの塗装において、より高級感のある意匠が求められるようになり、メタリック塗料や干渉色塗料といった光輝性顔料を用いた塗料が多く用いられている。特に金属光沢感があり、しかもフリップフロップ性が強い塗膜の要求があり、これらの要求に対して、特許文献1には、厚さが0.01~0.2μm、アスペクト比が100~300の薄片状のアルミニウム顔料を使った塗料が提案されている。しかし、特許文献1に記載された方法では、プラスチック素材との付着性や、塗装して得られた塗膜の鏡面光沢度が不十分となる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-29877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、意匠性が高く、且つ素材付着性、特にプラスチック基材に対する付着性に優れ、耐候性等の塗膜物性にも優れる塗膜を形成可能な塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
1.被塗物に、着色顔料を含むカラーベース塗料を塗装し、カラーベース塗料を塗装して得られた塗膜上に、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分、並びに蒸着アルミニウム顔料(D)を含むメタリックベース塗料を塗装し、メタリックベース塗料を塗装して得られた塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法であって、蒸着アルミニウム顔料(D)の平均粒子径が5~20μmの範囲内であり、厚さが0.01~0.2μmの範囲内であって且つアスペクト比が100~700の範囲内であることを特徴とする塗膜形成方法、
2.メタリックベース塗料が、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、蒸着アルミニウム顔料(D)を50~100質量部含有する1項に記載の塗膜形成方法、
3.メタリックベース塗料におけるリン酸基含有アクリル樹脂(A)が、構成する全モノマーの合計量に対して、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)3~48質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)6~45質量%及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)10~91質量%からなるモノマー混合物の共重合体樹脂である1項又は2項に記載の塗膜形成方法、
4.カラーベース塗料が、形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが60~100℃の範囲内、架橋点間分子量Mcが300~2000の範囲内である1~3項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法、
5.塗装して得られる複層塗膜の60度鏡面光沢度が150~300の範囲内である1~4項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗膜形成方法によれば、意匠性が高く、且つ素材付着性、特にプラスチック基材に対する付着性に優れ、耐候性等の塗膜物性にも優れる複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の塗膜形成方法においては、被塗物に、着色顔料を含むカラーベース塗料を塗装する。被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Feなど)メッキ鋼などの金属材料;ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)樹脂などのスチレン系樹脂;その他ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などまたはこれらのハイブリッド樹脂や繊維強化プラスチック(Fiber-Reinforced Plastics)などやエンジニアリング樹脂などのプラスチック材料(合成樹脂成型品);ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;木材;繊維材料(紙、布など)などを挙げることができ、特にプラスチック材料(合成樹脂成型品)が好適である。これらの素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。さらに、上記被塗物に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させたものを被塗物とすることもできる。特に被塗物がプラスチック材料の場合はプライマー塗膜が形成されていても良い。
【0008】
本発明の塗膜形成方法において、カラーベース塗料は、着色顔料を含む。着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料;酸化チタン顔料等の金属酸化物顔料及びカーボンブラック顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0009】
本発明において、カラーベース塗料における着色顔料の配合量は、複層塗膜の明度や、素材の色を隠蔽する観点から、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し固形分として、通常0.01~150質量部、特に0.05~120質量部の範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明において、カラーベース塗料において配合せしめる着色顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、着色顔料を、カラーベース塗料における樹脂組成物の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0011】
カラーベース塗料には、複層塗膜の下層意匠を強調することを目的として、鱗片状アルミニウム顔料を含んでいてもよい。
【0012】
鱗片状アルミニウム顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0013】
鱗片状アルミニウム顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。リーフィングタイプは、塗料組成物に配合すると塗装して得られた塗膜の表面に配列(リーフィング)し、金属感の強い仕上がりが得られ、熱反射作用を有し、防錆力を発揮するものであるため、タンク・ダクト・配管類および屋上ル-フィングをはじめ各種建築材料などに利用されることが多い。本発明においては、複層塗膜の下層意匠を強調する点や、耐水性の点から、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0014】
上記鱗片状アルミニウム顔料の大きさは、平均粒子径が5~40μmの範囲内のものを使用することが、塗装された塗膜の仕上がり性やハイライトの明度の点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が7~25μmの範囲内もの、特に好ましくは8~23μmの範囲内ものである。厚さは0.05~0.5μmの範囲内のものを使用することが好ましい。本明細書において平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。厚さは、該顔料を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して厚さを画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。
【0015】
また、カラーベース塗料が鱗片状アルミニウム顔料を含む場合その含有量は、塗装して得られる塗膜の仕上がり性の点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、合計で0.1~15質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.2~10質量部の範囲内である。
【0016】
本発明で使用するカラーベース塗料における鱗片状アルミニウム顔料としては、塗装して得られる塗膜の耐薬品性の点から、鱗片状アルミニウム顔料100質量部に対して、0.01~10質量部のラジカル重合性不飽和カルボン酸及び/又は0.01~30質量部のラジカル重合性二重結合を有する燐酸モノ又はジエステル及び2~50質量部のラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体から生成した高度に三次元した樹脂によって強固に密着して表面被覆された樹脂コートアルミニウム顔料を使用することができる。
【0017】
また、本発明の塗膜形成方法におけるカラーベース塗料には、鱗片状アルミニウム顔料として、着色アルミニウム顔料を使用することができる。着色アルミニウム顔料としては、鱗片状アルミニウム顔料の表面に、着色顔料を吸着せしめ、さらに樹脂被覆したものを挙げることができる。例えば、特開平1-315470号に記載されている着色アルミニウム顔料を使用することができる。または、鱗片状アルミニウム顔料の表面に酸化鉄等を化学蒸着し、さらに樹脂被覆したものを挙げることができる。
【0018】
カラーベース塗料には、複層塗膜の下層意匠を強調することを目的として、半透明な基材を金属酸化物で被覆した光干渉性顔料を含んでいてもよい。
【0019】
光干渉性顔料としては、具体的には、天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク等の半透明の基材を金属酸化物で被覆した顔料を使用することができる。
【0020】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、人工マイカとは、SiO、MgO、Al、KSiF、NaSiF等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。具体的には、フッ素金雲母(KMgAlSi10)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSi10)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi10)、Naテニオライト(NaMgLiSi10)、LiNaテニオライト(LiMgLiSi10)等が知られている。被覆される金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
【0021】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。被覆される金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
【0022】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、鱗片状のガラス基材に金属酸化物を被覆したものであって、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じて粒子感を発現する。被覆する金属酸化物としては、特に制限されるものではないが、酸化チタンや酸化鉄が知られている。
【0023】
金属酸化物被覆鱗片状シリカ顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを、基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものである。
【0024】
上記光干渉性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0025】
上記光干渉性顔料の大きさは、平均粒子径が5~50μmの範囲内のものを使用することが、複層塗膜の下層意匠を強調する点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が7~35μmの範囲内のものである。厚さは0.05~7.0μmの範囲内のものを使用することが好ましい。平均粒子径が、前記上限値を越えると、複層塗膜において、光干渉性顔料による粒子感が過剰になって意匠的に好ましくない場合があり、下限値未満では、干渉色の発現が不十分になる場合がある。
【0026】
また、カラーベース塗料が光干渉性顔料を含む場合、その含有量は、複層塗膜の下層意匠を強調する点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、合計で0.1~15質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.2~10質量部の範囲内である。
【0027】
本発明で使用するカラーベース塗料は、通常、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂を、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ-ト化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤と併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解又は分散して使用される。
【0028】
さらにカラーベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0029】
本発明で使用するカラーベース塗料は、塗装して得られる塗膜の付着性等の性能と意匠性成立の観点から、硬化膜厚として25μmになるように塗装し80℃にて30分間焼き付けて硬化させたときの硬化塗膜のガラス転移温度Tgが60~100℃の範囲内となるように、上記各成分の量組成を調整することが好ましい。
【0030】
本明細書において、硬化塗膜のガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定装置によって得られた測定値を理論式に適用して求めた計算値であって、具体的には、以下のようにして測定して得られた数値として定義するものとする。
【0031】
(硬化塗膜のガラス転移温度)
ガラス転移温度の測定は、測定に供するカラーベース塗料を、PTFE板上に硬化膜厚が25μmになるように塗布し、80℃にて30分間の硬化条件によって硬化塗膜を形成した後、得られた硬化塗膜を長さ30mm、幅5mmの短冊状に裁断する。次に、該硬化塗膜をPTFE板から剥離し、得られた短冊状の硬化塗膜を試料として、DINAMIC VISCOELASTOMETER MODEL VIBRON(ダイナミックビスコエラストメータ モデルバイブロン)DDV-II EA型(東洋ボールドウィン社製、自動動的粘弾性測定機)を用いて周波数110Hz、昇温速度4℃/分の測定条件で、動的ガラス転移温度Tgを測定する。
【0032】
また本発明で使用するカラーベース塗料は、塗装して得られる塗膜の付着性等の性能と意匠性成立の観点から、硬化膜厚として25μmになるように塗装し80℃にて30分間焼き付けて硬化させたときの硬化塗膜の架橋点間分子量Mcが、300~2000、好ましくは300~1000の範囲内となるように、上記各成分の量組成を調整することが好ましい。
【0033】
本明細書において、架橋点間分子量Mcは、動的粘弾性測定装置によって得られた測定値を理論式に適用して求めた計算値であって、以下のようにして測定することができる。
【0034】
(硬化塗膜の架橋点間分子量Mc)
架橋間の樹脂の分子量を架橋点間分子量といい、架橋密度が大きくなるほどこの値は小さくなる。本発明の硬化塗膜の架橋点間分子量は、上記硬化塗膜のガラス転移温度を測定する際に得られた最小弾性率の値を下記ゴム粘弾性理論式にあてはめて求めた理論計算値である。
【0035】
式1:Mc=3ρRT/Emin
ここで、
Mc:架橋点間分子量(g/mol)、
ρ :試料塗膜の密度(g/m3)、
R :気体定数(8.314J/K/mol)、
T :最小弾性率のときの絶対温度(K)、
Emin:温度Tのときの最小弾性率(Pa)。
【0036】
本発明で使用するカラーベース塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12~60質量%、好ましくは15~50質量%に、また、20℃における粘度を12~23秒/フォ-ドカップ#3に調整しておくことが好ましい。
【0037】
本発明で使用するカラーベース塗料は、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装等の方法によって、前記被塗物に塗装することができる。カラーベース塗料の塗装膜厚は、通常、カラーベース塗料を硬化させた後の塗膜の膜厚が15~40μm、特に25~35μmの範囲内となるような塗装膜厚であることが塗膜の平滑性の点から好ましい。
【0038】
本発明の塗膜形成方法においては、カラーベース塗料を塗装して得られた未硬化の塗膜上にメタリック塗料を塗装することができる。未硬化の塗膜は、カラーベース塗料を塗装した直後の塗膜に限定されるものではなく、室温で数分間放置した塗膜や、熱風乾燥機等を使用して、約40~約120℃程度の温度で約1~30分程度加熱乾燥せしめた塗膜も含有する。
【0039】
本発明の塗膜形成方法においては、カラーベース塗料を塗装後、乾燥硬化せしめた塗膜上にメタリックベース塗料を塗装することもできる。乾燥硬化は、例えば、熱風乾燥機等を使用して、約70~約150℃の温度で、15~40分程度保持することによって行うことができる。
【0040】
本発明の塗膜形成方法におけるメタリックベース塗料は、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分、並びに蒸着アルミニウム顔料(D)を含むものである。
【0041】
リン酸基含有アクリル樹脂(A)
リン酸基含有アクリル樹脂(A)は、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)からなるモノマー混合物の共重合体樹脂である。
【0042】
「重合性不飽和モノマー」とは、少なくとも1つのラジカル重合しうる不飽和基(重合性不飽和基)を有するモノマー化合物を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0043】
リン酸基含有アクリル樹脂(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)
リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)は、1分子中に1個以上のリン酸基(例えば、-PO基又は-HPO-基)を含有する重合性不飽和モノマーである。リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)を、以下「モノマー(a1)」と略称することがある。
【0045】
モノマー(a1)の具体例としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどの重合性不飽和モノマー;モノアルキルリン酸(例えば、ブチルリン酸、デシルリン酸、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸など)にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマー;ベンジルリン酸にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマー;例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基に環状エステルを開環付加させた後、次いで、五酸化リンやオキシ塩化リンを反応させて得た重合性不飽和モノマー(a11)等を挙げることができる。これらのモノマー(a1)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なおこれらの重合性不飽和モノマー(a1)として、重合性不飽和モノマー(a11)を含むことが、塗膜の密着性や耐候性の向上に望ましい。
【0046】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが例示される。
【0047】
上記環状エステルとしては、β-プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-カプリロラクトン、δ-ラウロラクトンが例示され、ε-カプロラクトンが好ましい。
【0048】
重合性不飽和モノマー(a11)の例として、下記一般式で表される重合性不飽和モノマーが挙げられる。
【0049】
【化1】
【0050】
[式中、R1は水素原子又はメチル基であり、Xは炭素数1~12のアルキレン基であり、mは2~6の整数である。]
Xは炭素数1~12のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~4程度である。アルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
【0051】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)は、1分子中に1個以上の水酸基を含有する重合性不飽和モノマーである。水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)を、以下「モノマー(a2)」と略称することがある。
【0052】
モノマー(a2)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和モノマー;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにε-カプロラクトンを開環付加させて得られるε-カプロラクトン変性ビニルモノマー(例えば、「プラクセルFA-1」「プラクセルFA-2D」「プラクセルFA-3」「プラクセルFA-4」「プラクセルFA-5」「プラクセルFM-1」「プラクセルFM-2D」「プラクセルFM-3」「プラクセルFM-4」「プラクセルFM-5」(以上、いずれもダイセル化学社製、商品名)などの多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε-カプロラクトンを開環付加した化合物が挙げられる。
【0053】
なかでも、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε-カプロラクトンを開環重合した化合物が反応性などの点から好適である。これらのモノマー(a2)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
その他の重合性不飽和モノマー(a3)
その他の重合性不飽和モノマー(a3)は、前記リン酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)と前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)以外のモノマーである。その他の重合性不飽和モノマー(a3)を、以下「モノマー(a3)」と略称することがある。
【0055】
その他の重合性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート(大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~24の環構造を含んでいてもよい炭化水素基を有するアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香環含有ビニル化合物;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのニトリル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、N-グリシジルアクリルアミド、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸などの酸無水物基含有ビニル化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有するアミノアルキル(メタ)アクリレート;メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;などが挙げられる。前記その他の重合性不飽和モノマー(a3)は1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0056】
リン酸基含有アクリル樹脂(A)は、上記モノマー(a1)、上記モノマー(a2)及び上記モノマー(a3)からなるモノマー混合物を、例えば、溶液重合法、塊状重合後に懸濁重合を行う塊状-懸濁二段重合法等によって重合反応することによって得ることができる。
【0057】
リン酸基含有アクリル樹脂(A)を得る方法としては、なかでも溶液重合法が好適である。溶液重合法は、例えば、前記モノマー混合物を有機溶媒に溶解又は分散せしめ、ラジカル重合開始剤の存在下で、通常80℃~200℃程度の温度で撹拌しながら加熱する方法を挙げることができる。反応時間は、通常1~10時間程度が適当である。
【0058】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス-2-メチルブチロニトリル、アゾビスジバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤;t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサエート、t-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-ビス(4,4-ジt-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物系重合開始剤などを挙げることができる。
【0059】
上記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-デカノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、1、4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド等のアミド系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができ、これらの有機溶剤はそれぞれ単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0060】
なおリン酸基含有アクリル樹脂(A)を製造する際において、上記モノマー(a1)、モノマー(a2)及びモノマー(a3)の配合割合は、全モノマーの合計量に対して、モノマー(a1)3~48質量%、好ましくは10~45質量%、モノマー(a2)6~45質量%、好ましくは9~40質量%、モノマー(a3)10~91質量%、好ましくは15~81質量%であることが、仕上り性、付着性及び鏡面光沢度の向上に望ましい。
【0061】
このようにして得られたリン酸基含有アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量が3,000~100,000、好ましくは7,000~30,000の範囲内、水酸基価は10~100mgKOH/g、好ましくは25~80mgKOH/g、酸価は1~200mgKOH/g、好ましくは3~150mgKOH/gの範囲であることが適している。
【0062】
なお本明細書における重量平均分子量は、JIS K 0124-83に記載の方法に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製、商品名)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」「TSKgel G-3000HXL」「TSKgel G-2500HXL」「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0063】
なお本明細書において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0064】
ポリイソシアネート化合物(B)
ポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であって、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロック化ポリイソシアネート、イソシアネート基がブロック剤でブロックされていないポリイソシアネートのいずれでも使用できる。
【0065】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びシクロペンタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;該ポリイソシアネートのビユーレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物;これらのポリイソシアネートと低分子量もしくは高分子量のポリオール化合物(例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなど)とを過剰量のイソシアネート基で反応させてなる遊離イソシアネート基含有プレポリマーなどが挙げられる。
【0066】
さらに、これらのポリイソシアネート化合物の遊離イソシアネート基を、フェノール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物、ラクタム化合物、アルコール化合物、メルカプタン化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸系化合物、イミン系化合物などのブロック剤で封鎖したブロック化ポリイソシアネートも使用することができる。
【0067】
ポリイソシアネート化合物(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することできる。
【0068】
セルロース樹脂(C)
セルロース樹脂(C)としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのうちセルロースアセテートブチレートが好適である。
【0069】
セルロースアセテートブチレートは、セルロースの部分アセチル化物をさらにブチルエステル化して得られるものであり、市販品としては、「CAB-381-0.5」「CAB-381-0.1」「CAB-381-2.0」「CAB-551-0.2」「CAB-551-0.01」「CAB-553-0.4」「CAB-531-1」「CAB-500-5」「CAB-321-0.1」「Solus2100」「Solus2300」(以上、米国イーストマン ケミカル社製、商品名)などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
また、セルロース樹脂(C)の重量平均分子量としては、25,000~100,000、好ましくは40,000~85,000、さらに好ましくは60,000~80,000が好適である。
【0071】
セルロース樹脂(C)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
なお本発明のメタリックベース塗料におけるリン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)の配合割合は、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分の固形分合計質量を基準にして、リン酸基含有アクリル樹脂(A)が50~90質量部、好ましくは55~75質量部、ポリイソシアネート化合物(B)が5~40質量部、好ましくは8~35質量部、セルロース樹脂(C)が1~20質量部、好ましくは5~17質量部であることが、塗料安定性、得られる塗膜の仕上り性、付着性及び耐候性向上の為に望ましい。
【0073】
蒸着アルミニウム顔料(D)
蒸着アルミニウム顔料(D)は、蒸着アルミニウム膜を細断して鱗片状とした顔料である。このような蒸着アルミニウム顔料(D)の製造方法は、限定されるものではないが、例えば、配向ポリプロピレン、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムをベースフィルムとして用い、その上に剥離剤を塗布し、剥離剤の上にアルミニウムの蒸着を行う。次いで、アルミニウムの蒸着後、蒸着アルミニウムの酸化を防止するため、例えば、蒸着面の上にトップコート剤を塗布する。その後に、上記蒸着アルミニウム膜を上記ベースフィルムから剥離し、これを細断することにより鱗片状のアルミニウムとし、さらに分級することにより得ることができる。
【0074】
本発明における蒸着アルミニウム顔料(D)としては、平均粒子径が5~20μmの範囲内、好ましくは7~12μmの範囲内であること、厚さが0.01~0.2μmの範囲内、好ましくは0.02~0.18μmの範囲内であること及びアスペクト比が100~~700の範囲内、好ましくは120~600の範囲内であることが、塗料安定性や仕上り性の点から好ましい。アスペクト比は、前記平均粒子径(μm)を厚さ(μm)で除した数値として定義するものとする。
【0075】
上記蒸着アルミニウム顔料(D)の市販品としては、例えば、Metasheen71-0010(BASF社製、商品名)、Metalure L55700、Metalure L51016MA、Metalure A61006(以上、Eckart社製、商品名)、Starbrite 2100-EAC(Silverline社製、商品名)が挙げられる。
【0076】
蒸着アルミニウム顔料(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ
る。
【0077】
なお上記蒸着アルミニウム顔料(D)の配合割合としては、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びセルロース樹脂(C)を含有するバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、50~100質量部であり、好ましくは50~95質量部であることが、仕上り性、密着性及び耐候性の向上の為に好適である。
【0078】
紫外線吸収剤(E)
本発明で使用されるメタリックベース塗料は、必要に応じて、紫外線吸収剤(E)をさらに含有することができる。紫外線吸収剤(E)としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0079】
ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2´-ヒドロキシ-3´,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2´-ヒドロキシ-4´-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0080】
トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0081】
ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、また、公知の重合性紫外線吸収剤、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなども使用することが可能である。
【0082】
上記紫外線吸収剤(E)の市販品としては、例えば、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 348-2、TINUVIN 479、TINUVIN 405、TINUVIN 292(BASF社製、商品名)、TINUVIN\チヌビンは登録商標)、RUVA 93(大塚化学社製、商品名)、HOSTAVIN 3206HP LIQ(デュポン社製、商品名)等が挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤(E)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
必要に応じて配合される紫外線吸収剤(E)の使用量は、使用する場合には、前記バインダ成分の固形分合計100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部の範囲であることが望ましい。
【0085】
その他の成分
また、本発明で使用されるメタリックベース塗料には、必要に応じて、その他の顔料、触媒、その他の顔料分散剤、その他の樹脂(例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂)、染料、可塑剤、反応性希釈剤、沈降防止剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、界面活性剤、NAD、レオロジーコントロール剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)、有機溶剤などを1種又は2種以上を組み合わせてさらに含有することができる。
【0086】
上記のその他の顔料としては、例えば、チタン白、カーボンブラックなどの着色顔料;クレー、タルク、バリタ、カオリンなどの体質顔料;トリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料;酸化ビスマス、水酸化ビスマス、乳酸ビスマスなどのビスマス化合物が挙げられる。
【0087】
上記の触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどの有機錫化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸塩などの錫化合物が挙げられる。
【0088】
上記レオロジーコントロール剤の市販品としては、例えば、ディスパロン6900(楠本化成社製、商品名)、チクゾールW300(共栄社化学社製、商品名)等のアマイドワックス;ディスパロン4200(楠本化成社製、商品名)等のポリエチレンワックスなどのワックス類;HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、疎水化HEC、CMC(カルボキシメチルセルロース)等のセルロース系のレオロジーコントロール剤;BYK-410、BYK-411、BYK-420、BYK-425(以上、ビックケミー社製、商品名)等のウレタンウレア系のレオロジーコントロール剤;フローノンSDR-80(共栄社化学社製、商品名)等のアニオン系のレオロジーコントロール剤;フローノンSA-345HF(共栄社化学社製)等のポリオレフィン系のレオロジーコントロール剤;フローノンHR-4AF(共栄社化学社製、商品名)等の高級脂肪酸アマイド系のレオロジーコントロール剤;が挙げられる。上記の反応性希釈剤の市販品としては、プラクセル205、プラクセル303、プラクセル305(以上、いずれもダイセル化学社製、商品名)などが挙げられる。
【0089】
本発明で使用されるメタリックベース塗料は、好ましい1つの態様においては有機溶剤型の塗料組成物である。
【0090】
メタリックベース塗料は、リン酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、セルロース樹脂(C)、蒸着アルミニウム顔料(D)、必要に応じて、紫外線吸収剤(E)及びその他の成分などを混合し、有機溶剤などで希釈して得ることができる。
【0091】
特にメタリックベース塗料は、塗装時の固形分濃度を0.1~2質量%、好ましくは0.2~1.8質量%、さらに好ましくは0.3~1.6質量%とすることが、仕上り性、鏡面光沢度に優れた塗膜、特に、60度鏡面光沢度が100以上である金属調の複層塗膜を得るために望ましい。
【0092】
本発明の塗膜形成方法においては、メタリックベース塗料を塗装して得られた未硬化又は硬化塗膜上に、クリヤー塗料を塗装する。未硬化の塗膜は、メタリックベース塗料を塗装した直後の塗膜に限定されるものではなく、室温で数分間放置したり、熱風乾燥機等を使用して、約40~約80℃程度の温度で約1~20分程度加熱乾燥せしめた塗膜も含有する。
【0093】
メタリックベース塗料による塗膜を乾燥硬化させる場合、70~180℃、好ましくは110~150℃の温度で、約1~60分間、好ましくは3~30分間程度で焼付け乾燥することができる。メタリックベース塗料による塗膜は、乾燥膜厚で0.1~1.0μm、好ましくは0.1~0.5μmの範囲が望ましい。
【0094】
本発明の塗膜形成方法におけるクリヤー塗料は、前述のメタリックベース塗料を塗装して得られる未硬化もしくは硬化させてなる塗面に塗装する塗料であり、従来公知のものが制限なく使用でき、例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ-ト化合物、ブロックポリイソシアネ-ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0095】
クリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適時配合することができる。着色顔料としては、前記カラーベース塗料に配合することができる干渉性顔料として例示したものから1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、クリヤー塗膜中の樹脂固形分100質量部に対して、固形分として30質量部以下、好ましくは0.01~15質量部、特に好ましくは0.1~10質量部の範囲内である。
【0096】
またクリヤー塗料には、透明性や塗膜性能を損なわない範囲内において、干渉性顔料を適時配合することができる。干渉性顔料としては、前記カラーベース塗料に配合することができる干渉性顔料として例示したものから1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、クリヤー塗膜中の樹脂固形分100質量部に対して、固形分として0.1~15質量部、特に好ましくは0.2~10質量部の範囲内である。
【0097】
クリヤー塗料には、透明性や塗膜性能を損なわない範囲内において、艶調整剤を適宜配合することができる、艶調整剤とは、塗膜中に塗膜のビヒクル成分と異なる屈折率を持つ粒子成分として存在することにより、入射光を適度に乱射させ、塗膜の艶を調整する効果を奏するものである。一般には、微粉シリカ(含水ニ酸化ケイ素)やポリエチレン粉末、樹脂ビーズ、セラミックビーズあるいはこれらをプレ分散した分散液等が用いられる。これらのうちで、微粉シリカ、微粉シリカをプレ分散した分散液、セラミックビーズが好ましく、特に好ましくは微粉シリカであるが、限定されるものではなく、求める質感に応じて、艶調整剤を1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0098】
上記艶調整剤の好ましい配合量は、クリヤー塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲内、特に好ましくは0.2~4質量部の範囲内である。
【0099】
クリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15~70μmの範囲内とするのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50~約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥~約80℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0100】
上述のとおり本発明の塗膜形成方法で得られる複層塗膜は、60度鏡面光沢度が150以上、特に150~300の範囲内となることが好適である。
【実施例
【0101】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0102】
製造例1:リン酸基含有モノマーaの製造
撹拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応槽に、プラクセルFM-2D(*1)358部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50~60℃で五酸化リン63.9部を少しずつ添加した。全量添加後、60℃で5時間熟成し、脱イオン水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行ってリン酸基含有モノマーaを得た。
【0103】
(*1)プラクセルFM-2D:ダイセル化学工業(株)製、商品名、2-ヒドロキシエチルメタクリレート1モルにε-カプロラクトン2モルを付加したモノマー
【0104】
製造例2:リン酸基含有アクリル樹脂(A-1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル120部を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持しつつ、下記モノマー混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間攪拌し熟成を行なった。
【0105】
その後、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1部とジプロピレングリコールジメチルエーテル30部とからなる重合開始剤溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間攪拌し熟成して、固形分45質量%のリン酸基含有アクリル樹脂(A-1)を得た。得られたリン酸基含有アクリル樹脂(A-1)の重量平均分子量は15,000、水酸基価は30mgKOH/g、酸価は16mgKOH/gであった。
【0106】
(モノマー混合物)
ライトエステルP-1M (*2) 3部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
プラクセルFM-3X (*3) 25部
n-ブチルアクリレート 10部
ラウリルメタクリレート 10部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 1部
スチレン 41部
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル 5部。
【0107】
(*2)ライトエステルP-1M:共栄社化学(株)製、商品名、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートであるリン酸基含有重合性不飽和モノマー
(*3)プラクセルFM-3:ダイセル化学工業(株)製、商品名、2-ヒドロキシエチルメタクリレート1モルにε-カプロラクトン3モルを付加したモノマー
【0108】
製造例3~10:リン酸基含有アクリル樹脂(A-2)~(A-9)の製造
製造例2において、モノマー混合物を下記表1とする以外は製造例2と同様にして、リン酸基含有アクリル樹脂(A-2)~(A-9)を得た。なお、表中の配合内容における数値は、固形分としての質量部を表す。併せて、重量平均分子量、水酸基価及び酸価を示した。
【0109】
製造例11:アクリル樹脂(A-10)の製造
製造例2において、モノマー混合物を下記表1とする以外は製造例2と同様にして、アクリル樹脂(A-10)を得た。なお、表中の配合内容における数値は、固形分としての質量部を表す。併せて、重量平均分子量、水酸基価及び酸価を示した。
【0110】
【表1】
【0111】
製造例12:メタリックベース塗料(M-1)の製造
下記の工程1及び工程2によって、メタリックベース塗料(M-1)を得た。
【0112】
工程1:製造例5で得たリン酸基含有アクリル樹脂(A-4)溶液5部(固形分)、「Metasheen71-0010」(*14)90部(固形分)及びスワゾール1000を95部混合し、ペイントシェーカーで30分間分散させて、固形分10%の顔料分散ペーストを得た。
【0113】
工程2:工程1によって得られた顔料分散ペーストを95部(固形分)、製造例2で得られた製造例2で得たリン酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液を60部(固形分)、「デュラネートMF-K60X」(*4)25部(固形分)及び「CAB-381-20」(*7)10部(固形分)を均一に混合し、スワゾール1000を添加して固形分を調整して、塗料固形分1.2質量%のメタリックベース塗料(M-1)を得た。
【0114】
製造例13~45:メタリックベース塗料(M-2)~(M-34)の製造
下記表2~4の配合内容とする以外は、実施例1と同様にしてメタリックベース塗料(M-2)~(M-34)を得た。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
尚、表2~4中の(*4)~(*18)は下記のとおりである。
(*4)デュラネートMF-K60X:旭化成ケミカルズ社製、活性メチレンブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートの樹脂溶液、固形分60%
(*5)デスモジュールBL-3175:住化バイエルウレタン社製、メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分約75%
(*6)サイメル303:ダイセル・オルネクス社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂
(*7)CAB-381-20:セルロースアセテートブチレート、イ-ストマンケミカルプロダクト社製、商品名、アセチル基含有量=13.5%、ブチリル基含有量=37%、数平均分子量は70,000。
(*8)CAP-482-20:セルロースアセテートプロピオネート、イ-ストマンケミカルプロダクト社製、商品名、アセチル基含有量=2.5%、プロピオニル基含有量=46%、数平均分子量は75,000
(*9)CAB-551-0.2:セルロースアセテートブチレート、イ-ストマンケミカルプロダクト社製、商品名、アセチル基含有量=2.0%、ブチリル基含有量=52%、数平均分子量は30,000。
(*10)ニトロセルロースDHX30-50:ノーベル社製、商品名、ニトロセルロース、窒素含有量約12%、数平均分子量は76,000。
(*11)HOSTAVIN 3206HP LIQ:デュポン社製、商品名、紫外線吸収剤
(*12)TINUVIN 292:BASF社製、商品名、紫外線吸収剤
(*13)TINUVIN 123:BASF社製、商品名、光安定剤
(*14)Metasheen71-0010:BASF社製、商品名、蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径12μm、厚み20nm、固形分10%
(*15)Metalure L55700:Eckart社製、商品名、蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径11μm、厚み35nm
(*16)Starbrite 2100-EAC:Silberline Manufacturing社製、商品名、蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径10μm、厚み30nm
(*17)6360NS:東洋アルミ社製、商品名、アルミニウム顔料、平均粒子径10μm、厚み250nm
(*18)MS650 Moonlight-Silver:東洋アルミ社製、商品名、アルミニウム顔料、平均粒子径13μm、厚み60nm
【0119】
カラーベース塗料:
カラーベース塗料(BC-1):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが98℃、架橋点間分子量Mcが657。
【0120】
カラーベース塗料(BC-2):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが79℃、架橋点間分子量Mcが1140。
【0121】
カラーベース塗料(BC-3):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが90℃、架橋点間分子量Mcが820。
【0122】
カラーベース塗料(BC-4):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)/アルミニウム顔料含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが98℃、架橋点間分子量Mcが650。
【0123】
カラーベース塗料(BC-5):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)/マイカ含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが99℃、架橋点間分子量Mcが648。
【0124】
カラーベース塗料(BC-6):水酸基含有アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物/着色顔料(カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー)/ガラスフレーク含有。形成される硬化塗膜(膜厚25μm)のガラス転移温度Tgが98℃、架橋点間分子量Mcが653。
【0125】
製造例46:水酸基含有アクリル樹脂(W-1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中にスチレン30部、イソボルニルアクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート3部、t-ブチルメタクリレート9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート28部、酢酸ブチル10部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル2部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(W-1)溶液を得た。
【0126】
得られた水酸基含有アクリル樹脂(W-1)の水酸基価は116mgKOH/g、重量平均分子量は6000、ガラス転移温度は78℃であった。
【0127】
製造例47~54:クリヤー塗料の製造
表5に示す配合組成となるように水酸基含有アクリル樹脂(W-1)溶液及び顔料を混合・攪拌して固形分約40%の各主剤を作成した。この主剤に硬化剤(「TLA-100」、旭化成社製、ポリイソシアネート)を加え、均一に混合した。次いで、得られた混合物に希釈溶剤を添加し、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒である各クリヤー塗料(CC-1)~(CC-8)を得た。
【0128】
【表5】
【0129】
実施例1
ABS基板上にカラーベース塗料(BC-1)を硬化膜厚で25μmとなるようにエアスプレー塗装し、室温で3分間放置した後、その上にメタリックベース塗料(M-1)を硬化膜厚で0.5μm以下となるようにエアスプレー塗装し、室温で3分間放置した後、クリヤー塗料(CC-1)を乾燥膜厚35μmとなるようエアスプレー塗装し、80℃で20分加熱して硬化させて、複層塗膜を有する試験塗板を得た。
【0130】
実施例2~37及び比較例1~13
実施例1において各塗料を表6及び表7のとおりとする以外は実施例1と同様にして各試験塗板を得た。
【0131】
各試験板を下記試験に供した。結果を表6及び表7に併せて示す。
【0132】
(1)塗料安定性:
メタリックベース塗料(NV40%)を100mLのガラス容器に入れ、35℃にて35日間容器中に密閉して貯蔵した。その後の状態を以下の基準で判断した。
【0133】
Sは、貯蔵前と変化なく良好である
Aは、やや粘度上昇がみられるが、1分間以下の撹拌でもとの状態に戻る
Bは、粘度上昇がみられ、1分間を超えて10分間以下の撹拌でもとの状態に戻る
Cは、層分離がみられ塗料として使用できない
【0134】
(2)仕上り性:
各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生度合を下記基準で評価した。
【0135】
Sは、メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する
Aは、メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する
Bは、メタリックムラがかなり認められ、塗膜外観がやや劣る
Cは、メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る
【0136】
(3)付着性(耐水後):
各試験板について、40℃の温水に240時間浸漬した後、水洗いをして、JIS K 5600-5-6(1990)に準じて塗膜に2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。
【0137】
Sは、残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし
Aは、残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けあり
Bは、残存個数/全体個数=99個~90個/100個
Cは、残存個数/全体個数=89個以下/100個
【0138】
(4)耐候性:
促進耐候性試験には、JIS B 7754に規定されたスーパーキセノンウェザオメーター(商品名、スガ試験機社製)を使用し、1時間42分間のキセノンアークランプの照射と18分間の降雨の条件による2時間を1サイクルとして、500サイクルの繰り返し試験終了後の塗板と、実験室内に保管しておいた控え塗板(初期)と比較して評価を行なった。
【0139】
Sは、塗膜表面に異常が認められず、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差△Eが1.0未満である
Aは、塗膜に僅かな黄変が認められるがワレの発生がなく、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差△Eが1.0以上かつ2.0未満であり、製品とした場合に問題がないレベル
Bは、塗膜に黄変が認められるがワレの発生がなく、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差△Eが2.0以上かつ3.0未満である
Cは、塗膜の黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差△Eが3.0以上であるか、又は塗膜にワレが生じている
【0140】
(5)60度鏡面光沢度:
60度鏡面光沢度を、JIS K5600-4-7に準拠して測定した。測定には日本
電飾株式会社製の光沢計(型番VG-2000)を用い、下記の基準で評価した。
【0141】
SSは、鏡面光沢度が270以上
Sは、鏡面光沢度が220以上で、かつ270未満
Aは、鏡面光沢度が200以上で、かつ220未満
Bは、鏡面光沢度が150以上で、かつ200未満
Cは、鏡面光沢度が150未満
【0142】
【表6】
【0143】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の塗膜形成方法は、自動車内外板部や樹脂部品、家電品等各種工業製品に適用できる。