(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/00 20110101AFI20221121BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20221121BHJP
H04H 20/78 20080101ALI20221121BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H04N5/00 B
H04N21/61
H04H20/78
H03F3/68 220
(21)【出願番号】P 2019144237
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018152191
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】岡元 達哉
(72)【発明者】
【氏名】坂井 来人
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】森澤 大輔
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-005058(JP,A)
【文献】特開2002-232859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/00
H04N 21/00
H04N 7/16
H04H 20/78
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟内共聴装置の伝送線路に設けられた共聴信号を増幅する増幅装置であって、
前記増幅装置は、
前記共聴信号を構成する複数の周波数帯域の信号を、周波数帯域別にそれぞれ増幅すると共に、通信バスに接続するインタフェースを有する複数の増幅ユニットと、
前記インタフェースを有し、前記複数の増幅ユニットに前記通信バスを介してそれぞれ接続されて、前記複数の増幅ユニットにおける各増幅ユニットに設定されたパラメータを前記各増幅ユニットから取り込んで保存すると共に、前記各増幅ユニットに保存されたパラメータを設定することができる制御ユニットとを備え、
前記複数の増幅ユニットのいずれかが交換された際に、前記制御ユニットは、交換前の増幅ユニットに設定されていた前記パラメータを読み出して、交換された増幅ユニットに前記通信バスを介して設定し、前記制御ユニットが交換された際に、交換された制御ユニットは、前記各増幅ユニットから前記通信バスを介して前記各増幅ユニットに設定されているパラメータを取り込んで保存することを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
前記通信バスは、2線の平衡伝送路を用いてシリアル接続される通信バスとされていることを特徴とする
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記増幅ユニットに設定されたパラメータおよび出力レベル等の動作データが、公衆通信網に接続可能なゲートウェイに供給され、前記動作データは該ゲートウェイから公衆通信網を介して公衆通信網に接続されているクラウドに送出され、公衆通信網に接続されている監視手段が前記クラウドにアクセスして前記増幅ユニットの前記動作データあるいは前記パラメータの情報を確認することにより、前記監視手段がレベル変化を修復するようレベル調整を行えると共に、前記増幅ユニットの設置時の工事ミスなどを指摘することができることを特徴とする
請求項1に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナで受信した放送信号やCATV局からの伝送信号などを棟内において分岐・分配する棟内共聴装置の増幅装置に適用して好適な増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書で云う「棟内共聴装置」とは、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置する共聴装置を云うものとする。
棟内共聴装置にCATV(ケーブルテレビジョン)を導入する場合の一例の構成を
図5に示す。
図5に示す棟内共聴装置1100は、棟内に設置され、CATV信号伝送ライン中に挿入されている双方向分岐増幅装置1101により分岐された下り方向のCATV信号が、タップオフ(TAP OFF )1102および保安器SBを介して棟内に引き込まれ、双方向増幅装置1105の第1入力端子に入力されると共に、BS/CSアンテナ1103よりのBS-IFあるいはCS-IF信号が、双方向増幅装置1105の第2入力端子に入力される。これらの第1入力端子および第2入力端子に入力された3種類の信号は、それぞれ双方向増幅装置1105により増幅されて出力端子から混合されて出力される。
【0003】
双方向増幅装置1105の出力は分岐器1106に供給され、分岐器1106において分岐された1つの信号は、分配器1107により複数に分配される。この分配された信号は双方向増幅装置1108により増幅されて、さらに分配器1109により複数に分配される。分配器1109により分配された1つの分配出力は、複数個縦続に接続された直列ユニット1110~1115に供給される。この直列ユニット1115の終端にはインピーダンス整合用の終端抵抗1116が接続されている。
この直列ユニット1110~1115は宅内の各部屋等に設けられており、この直列ユニット1110~1115にはテレビジョン受像機等に接続されるケーブルが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の棟内共聴装置1100において、伝送される共聴信号は上り方向のCATV信号と、下り方向のCATV信号と、BS・CS-IF信号とにより構成される。そして、双方向分岐増幅装置1105,1108は、この3つの異なる周波数帯域の信号からなる共聴信号を増幅する増幅部を備えている。この増幅部では、所定のレベルで3つの異なる周波数帯域の信号が出力されるようにレベル調整されている。この場合、増幅部における3つの異なる周波数帯域の各信号の入力・出力レベルを作業者が測定器で確認しながら、内蔵されているゲイン調整ボリュームや減衰量切換スイッチを操作して、増幅部のレベルの調整を行っていた。このため、増幅部のレベル調整は、繁雑な作業が必要となって長時間のレベル調整時間が必要であった。調整作業中は、増幅部を備える双方向増幅装置を作動させないことから全停波することになる。
【0006】
これを解決するために、双方向増幅装置に制御部を設けて、増幅ユニットのレベル調整を制御部において電子制御で行なうことが考えられる。この場合は、ある程度の時間で容易に調整作業を行うことができるが、制御部が故障した場合は増幅部も機能しなくなり、全停波してしまうという問題点があった。
また、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)に接続するインタフェースを増幅部に設けて、増幅部に接続したPCから調整作業を行うことが考えられる。この場合は、容易に調整作業を行うことができるが、増幅部に設定するパラメータをPCに保存しておく必要があると共に、増幅部を交換した場合は、増幅部にパラメータを保存したPCを接続して、PCから読み出したパラメータを増幅部に設定するというデータ移行作業が必要になるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、調整作業を簡易に行うことのできる増幅装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の増幅装置は、所定の周波数帯域の信号を増幅すると共に、通信バスに接続するインタフェースを有する増幅ユニットと、前記インタフェースを有し、前記増幅ユニットに前記通信バスを介してそれぞれ接続されて、前記増幅ユニットに設定されたパラメータを前記増幅ユニットから取り込んで保存すると共に、前記増幅ユニットに保存されたパラメータを設定することができる制御ユニットとを備え、前記増幅ユニットが交換された際に、前記制御ユニットは、交換前の増幅ユニットに設定されていた前記パラメータを読み出して、交換された増幅ユニットに前記通信バスを介して設定し、前記制御ユニットが交換された際に、交換された制御ユニットは、前記増幅ユニットから前記通信バスを介して前記増幅ユニットに設定されているパラメータを取り込んで保存することを最も主要な特徴としている。
また、本発明の他の増幅装置は、棟内共聴装置の伝送線路に設けられた共聴信号を増幅する増幅装置であって、前記増幅装置は、前記共聴信号を構成する複数の周波数帯域の信号を、周波数帯域別にそれぞれ増幅すると共に、通信バスに接続するインタフェースを有する複数の増幅ユニットと、前記インタフェースを有し、前記複数の増幅ユニットに前記通信バスを介してそれぞれ接続されて、前記複数の増幅ユニットにおける各増幅ユニットに設定されたパラメータを前記各増幅ユニットから取り込んで保存すると共に、前記各増幅ユニットに保存されたパラメータを設定することができる制御ユニットとを備え、前記複数の増幅ユニットのいずれかが交換された際に、前記制御ユニットは、交換前の増幅ユニットに設定されていた前記パラメータを読み出して、交換された増幅ユニットに前記通信バスを介して設定し、前記制御ユニットが交換された際に、交換された制御ユニットは、前記各増幅ユニットから前記通信バスを介して前記各増幅ユニットに設定されているパラメータを取り込んで保存することを最も主要な特徴としている。
【0009】
上記した本発明の増幅装置において、前記通信バスは、2線の平衡伝送路を用いてシリアル接続される通信バスとされている。
また、上記した本発明の増幅装置において、前記増幅ユニットに設定されたパラメータおよび出力レベル等の動作データが、公衆通信網に接続可能なゲートウェイに供給され、前記動作データは該ゲートウェイから公衆通信網を介して公衆通信網に接続されているクラウドに送出され、公衆通信網に接続されている監視手段が前記クラウドにアクセスして前記増幅ユニットの前記動作データあるいは前記パラメータの情報を確認することにより、前記監視手段がレベル変化を修復するようレベル調整を行えると共に、前記増幅ユニットの設置時の工事ミスなどを指摘することができるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の増幅装置は、制御ユニットと、複数の増幅ユニットとが通信バスにより接続されて、相互にデータの送受をすることができる増幅装置を備えている。そして、複数の増幅ユニットのいずれかが交換された際に、制御ユニットは、交換前の増幅ユニットに設定されていたパラメータを読み出して、交換された増幅ユニットに通信バスを介して設定することができる。このため、交換された増幅ユニットの調整作業を簡易に行うことができる。また、制御ユニットが故障しても複数の増幅ユニットは動作を継続することができ停波することはない。さらに、制御ユニットが交換された際に、交換された制御ユニットは、各増幅ユニットから通信バスを介して各増幅ユニットに設定されているパラメータを取り込んで保存していることから、制御ユニットが交換されても各増幅ユニットに設定されているパラメータが失われることがない。さらにまた、2線の平衡伝送路を用いてシリアル接続される通信バスとすることにより、ノイズやサージに対する耐性を向上することができ、誤ったパラメータが増幅ユニットに設定されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例である増幅装置を備える棟内共聴装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の増幅装置とされる双方向増幅装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の増幅装置とされる双方向増幅装置の制御ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の増幅装置とされる双方向増幅装置の増幅ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例>
本発明の実施例の増幅装置を備える棟内共聴装置の構成を
図1に示す。
図1においては、双方向増幅装置17,19,22,24が本発明にかかる増幅装置とされている。
本発明の実施例の増幅装置を備える「棟内共聴装置」には、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置される共聴装置が含まれているものとする。
図1に示す本発明の実施例の増幅装置を備える棟内共聴装置1は、屋上などに設置されたBS・CSアンテナ10と混合器12とゲートウェイ13とを備え、混合器15と双方向増幅装置17と分岐・分配器18と双方向増幅装置19と分岐・分配器20とが縦続接続された伝送線路と、双方向増幅装置22と分岐・分配器23とが縦続接続された第1系統と、双方向増幅装置24と分岐・分配器25とが縦続接続された第2系統とから構成されている。伝送線路で伝送される伝送信号は、伝送線路損失や分配や分岐されることで減衰され、この減衰を補償するために、双方向増幅装置17,19,22,24が設けられている。
棟内共聴装置1には、CATV局1010から幹線に設置されている増幅装置や分岐・分配装置などの幹線機器1011を介してCATV信号の伝送ライン中に挿入されている分岐・分配装置などにより分岐されたCATV信号の下り信号(以下、「CATV下り信号」という)がタップオフ(TAP OFF )1012および保安器1013を介して棟内に引き込まれている。そして、保安器1013までのメンテナンスはCATV局1010が行うが、保安器1013以降のメンテナンスは加入者が行うこととされている。
【0013】
棟内共聴装置1では、第2入力端子にゲートウェイ13が接続されている混合器12の第1入力端子にBS・CSアンテナ10よりのBS・CS-IF信号が入力され、混合器12の出力端子は混合器15の第2入力端子に接続されている。棟内共聴装置1に入力されたCATV下り信号は、混合器15の第1入力端子に入力され、混合器15の第1入力端子に入力されたCATV下り信号および第2入力端子に入力されたBS・CS-IF信号が混合されて共聴信号とされて出力端子から出力される。
【0014】
混合器15の出力端子から出力された共聴信号は双方向増幅装置17に入力されて所定のレベルになるよう増幅される。双方向増幅装置17の出力は分岐・分配器18に供給され、分岐・分配器18において複数に分岐・分配される。分岐・分配器18を通過した共聴信号は、双方向増幅装置19に入力されて所定のレベルになるよう増幅される。双方向増幅装置19の出力は分岐・分配器20に供給され、分岐・分配器20において複数に分岐・分配される。分岐・分配器20を通過した共聴信号は、さらに、分岐・分配器21で第1系統と第2系統の共聴信号に分配される。第1系統に分配された共聴信号は、双方向増幅装置22に入力されて所定のレベルになるよう増幅されて、双方向増幅装置22の出力は分岐・分配器23に供給されて複数に分岐・分配される。分岐・分配器23で分岐・分配された共聴信号は宅内の各部屋等に設けられている直列ユニットにそれぞれ供給され、直列ユニットにはテレビジョン受像機等に接続されるケーブルが接続される。また、第2系統に分配された共聴信号は、双方向増幅装置24に入力されて所定のレベルになるよう増幅されて、双方向増幅装置24の出力は分岐・分配器25に供給されて複数に分岐・分配される。分岐・分配器25で分岐・分配された共聴信号は宅内の各部屋等に設けられている直列ユニットにそれぞれ供給され、直列ユニットにはテレビジョン受像機等に接続されるケーブルが接続される。
【0015】
また、第1系統の直列ユニットから送出された上り信号は分岐・分配器23を介して双方向増幅装置22で所定のレベルになるよう増幅されて、分岐・分配器21に供給される。さらに、第2系統の直列ユニットから送出された上り信号は分岐・分配器25を介して双方向増幅装置24で所定のレベルになるよう増幅されて、分岐・分配器21に供給される。分岐・分配器21から出力された上り信号は、分岐・分配器20-双方向増幅装置19-分岐・分配器18-双方向増幅装置17の経路で上っていき、混合器15を介して保安器1013に入力される。保安器1013を通過した上り信号は、タップオフ1012、CATVの幹線および幹線機器1011を介してCATV局1010に上っていき受信される。
【0016】
上記したように、共聴信号は、CATV下り信号とCATV信号の上り信号(以下、「CATV上り信号」という)およびBS・CS-IF信号から構成され、双方向増幅装置17,19,22,24は、CATV下り信号を増幅する増幅ユニットとCATV上り信号を増幅する増幅ユニットおよびBS・CS-IF信号を増幅する増幅ユニットを有している。それぞれの増幅ユニットの供給電圧および供給電流や温度などの機器の状態情報と、入力レベル、出力レベル、C/Nなどの伝送信号の状態情報からなる動作データは周期的にモニタされている。モニタされたモニタ信号は、動作データにモニタされた増幅ユニット特有の一意の識別情報(以下、「ID」という)を付加して構成されており、モニタ信号は変調されて共聴信号では使用されていない周波数帯域(例えば、920MHz)の通信信号になって棟内共聴装置1内の幹線を上っていき、混合器15と混合器12を介してゲートウェイ13に供給される。例えば、通信信号はFSK(frequency shift keying)信号とされている。ゲートウェイ13は、棟内共聴装置1とインターネット14との間でデータの送受を行える機能を有しており、通信信号をベースバンド信号であるモニタ信号に戻してTCP(Transmission Control Protocol )やHTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)によりモニタ信号をインターネット14上のクラウド3に送出することができる。モニタ信号はクラウド3に保存される。なお、ゲートウェイ13は、所定時間ごとにモニタ信号をクラウド3に送出したり、モニタ信号が更新されるごとにモニタ信号をクラウド3に送出している。
【0017】
ゲートウェイ13は、例えば携帯電話網やWi-Fiなどの無線でインターネット14に接続されるが有線でインターネット14に接続してもよい。インターネット14上には監視センター2が有線あるいは無線で接続されている。これにより、監視センター2はクラウド3にアクセスすることにより、クラウド3上のアプリケーションによりID別にグラフ化されたモニタ信号を表示器上で監視できる。IDでは、双方向増幅装置17,19,22,24の各増幅ユニットを識別できると共に、増幅ユニット内の各増幅器の入力レベルを調整する入力レベル調整部と出力レベルを調整する出力レベル調整部をそれぞれ識別することができる。また、クラウド3上のアプリケーションによりモニタ信号が解析されて、モニタ信号に異常があった際には、異常情報を表示器上に表示して監視することができる。異常情報により、いずれかの増幅ユニットに不具合が生じる予兆が見られた場合は、当該増幅ユニットを有している棟内共聴装置1が設置されている建物に要員を派遣して事前に当該増幅ユニットを交換することができ、障害の発生を予防することができるようになる。これにより、監視センター2は、棟内共聴装置1における双方向増幅装置17,19,22,24の各増幅ユニットを周期的に監視することができる。さらに、ゲートウェイ13はモニタ信号に加えて、双方向増幅装置17,19,22,24の各増幅ユニットに設定されているパラメータの情報もクラウド3に送っており、監視センター2はクラウド3に格納されたパラメータを変更することにより、インターネット14およびゲートウェイ13を介して変更されたパラメータを増幅ユニットに設定することができる。パラメータには上記IDが付加されており、割り当てられた周波数帯域の信号を所定レベルで出力するように増幅ユニットに設定されるパラメータである。
【0018】
<双方向増幅装置>
次に、棟内共聴装置1における本発明にかかる増幅装置である双方向増幅装置17,19,22,24の構成を説明するが、双方向増幅装置19,22,24は双方向増幅装置17と同じ構成とされているため、双方向増幅装置17を代表としてその構成を示す機能ブロック図を
図2に示す。
図2に示す双方向増幅装置17は、制御ユニット51と、CATV上り信号を増幅する第1増幅ユニット52と、CATV下り信号を増幅する第2増幅ユニット53と、BS・CS-IF信号を増幅する第3増幅ユニット54とを備えている。そして、制御ユニット51と第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニットとは通信バス17-1により相互に接続されている。
【0019】
図2に示すように双方向増幅装置17における制御ユニット51は、マイクロコントローラー(MCU)100とI/O104とインタフェース(IF)104aと通信I/F105を少なくとも備えている。第1増幅ユニット52はMCU130とI/O134と増幅部52-1とを少なくとも備えており、第2増幅ユニット53もMCU150とI/O154と増幅部53-1とを少なくとも備えており、第3増幅ユニット54もMCU160とI/O164と増幅部54-1とを少なくとも備えている。そして、I/O104,I/O134,I/O154,I/O164はそれぞれRS485のインタフェースをそなえており、相互にRS485の通信バス17-1により接続されている。これにより、制御ユニット51は、2線の平衡伝送路を用いてシリアルの半二重通信で、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54との間でデータの送受を行えるようになる。具体的には、制御ユニット51は、パラメータを通信バス17-1を通じて第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定することができると共に、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータを通信バス17-1を通じて取り込むことができる。
制御ユニット51の通信I/F105は、制御ユニット51に取り込んだ第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されていたID付きのパラメータと、前記したモニタ信号とを共聴信号では使用されていない周波数帯域(例えば、920MHz)の通信信号に変調してゲートウェイ13に送出している。また、I/F104aはUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)のインタフェースとされ、パーソナルコンピュータ(PC)と接続することができる。PCを接続すると、PCからI/F104aを介して第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54の初期設定を行うことができると共に、所定のパラメータを設定することができる。
【0020】
具体的には、双方向増幅装置17を初めて設置した際に、PCをI/F104a介して制御ユニット51に接続する。そして、制御ユニット51に通信バス17-1で接続されている第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54内の各増幅器の入力レベルを調整する入力レベル調整部と出力レベルを調整する出力レベル調整部をPCによりそれぞれ調整することにより、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54から所定のレベルで割り当てられた周波数帯域の信号が出力されるようにする。このように、双方向増幅装置17はPCから電子制御されて、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に所定のパラメータが設定されるようになる。
【0021】
双方向増幅装置17においては、図示しない基板上に制御ユニット51と第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54とが搭載されており、コネクタにより基板に対して脱着可能とされている。そして、RS485とされた通信バス17-1は2線の平衡伝送路とされていることから、脱着の機構を簡易化できると共に、ノイズやサージに対する耐性を向上することができる。上記したように、制御ユニット51を介して第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54のレベル調整が行なわれるが、調整時のパラメータは制御ユニット51のメモリに保存されると共に、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54のメモリに保存される。このため、例えば、制御ユニット51が故障しても、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54はそれぞれに内蔵されたMCUの制御の基で動作しており、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータは維持されることから、停波することはない。このように、制御ユニット51と第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54は、それぞれMCUを内蔵しているため独立して動作しており、いずれかのユニットが故障しても、他のユニットに影響を及ぼすことはない。
【0022】
例えば、第1増幅ユニット52が故障して交換する場合は、第1増幅ユニット52に設定されていたパラメータを制御ユニット51のメモリから読み出して交換された第1増幅ユニット52に設定する。これにより、調整作業をすることなく交換された第1増幅ユニット52からは所定のレベルで割り当てられた周波数帯域の信号が出力されるようになる。第2増幅ユニット53あるいは第3増幅ユニット54が故障した場合も同様に、制御ユニット51は、第2増幅ユニット53あるいは第3増幅ユニット54に設定されていたパラメータを制御ユニット51のメモリから読み出して交換された第2増幅ユニット53あるいは第3増幅ユニット54に設定するようになる。これにより、調整作業をすることなく交換された第2増幅ユニット53あるいは第3増幅ユニット54からは所定のレベルで割り当てられた周波数帯域の信号が出力されるようになる。
【0023】
また、制御ユニット51が故障した際は、制御ユニット51を交換する。交換した制御ユニット51は、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54から設定されているパラメータを読み出して、内部のメモリにパラメータを保存する。これにより、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータを補完することができる。
さらに、上記したように双方向増幅装置17,19,22,24における第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータの情報はクラウド3に送られて、クラウド3に保持される。環境変化により双方向増幅装置17,19,22,24における第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54のいずれかの増幅ユニットのレベル調整を行う必要がある場合は、監視センター2はクラウド3に保持されているパラメータを変更することにより、インターネット14およびゲートウェイ13を介して変更されたパラメータを当該増幅ユニットに設定することができる。これにより、監視センター2はクラウド3にアクセスすることで、環境変化によりいずれかの増幅ユニットの出力レベルが所定の値から変化したことを確認した際には、環境変化によるレベル変化を修復するよう当該増幅ユニットのレベル調整を行えると共に、増幅ユニットを設置した際には、設置した増幅ユニットに設定されたパラメータや出力レベルを表示器上で確認することにより設置時の工事ミスなどを指摘することができる。
【0024】
<制御ユニット>
次に、棟内共聴装置1における本発明にかかる増幅装置である双方向増幅装置が備えている制御ユニット51の構成を示す機能ブロック図を
図3に示す。
図3に示す制御ユニット51は、MCU100と通信I/F105と測定部106とアナログ-デジタル変換器(A/D)107とを備え、通信I/F105と測定部106とA/D107とはMCU100のバス108に接続されている。MCU100はマイクロコントローラーであり、MCU100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、I/O104を備え、これらをバス108で接続して構成されている。CPU101は、ROM102に記憶された制御処理プログラムを実行することにより、制御ユニット51が上記した処理を行うようにMCU100が動作する。この場合、制御ユニット51に取り込まれた増幅ユニットに設定されたパラメータやモニタ信号はRAM103の領域に設定されテンポラリメモリに格納される。また、電源投入時には、CPU101がROM102に格納されている初期設定プログラムを実行して初期状態とする。通信I/F105は、各増幅ユニットからのモニタ信号で変調した通信信号をゲートウェイ13に送り出している。また、MCU100のI/O104に含まれているRS485ポートを介して通信バス17-1に接続されている。そして、通信バス17-1に接続された第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54から、設定されているパラメータが取り込まれて、テンポラリメモリ領域に格納される。I/O104におけるI/F104aにはPCを接続することができ、PCを接続すると、PCからI/F104aを介して第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54の初期設定を行うことができると共に、所定のパラメータを設定することができる。
【0025】
測定部106には5本のRFラインが接続されており、第1増幅ユニット52の入力と出力を分岐した分岐出力と、第2増幅ユニット53および第3増幅ユニット54の入力を分岐した分岐出力と、双方向増幅装置の出力を分岐した分岐出力からなる分岐出力1~5のRF信号が各RFラインから入力されている。測定部106では、CPU101の制御の基で分岐出力1~5のアナログのRF信号を受信して、各分岐出力における各チャンネル毎のレベルを検出してデジタルのレベル信号としている。また、A/D107は、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54における電圧、電流、温度等のセンサーからのアナログのセンサー信号を、CPU101の制御の基で取り込んでデジタル信号に変換している。測定部106のデジタルのレベル信号とデジタルのセンサー信号とは、CPU101の制御の基でMCU100においてID付きのモニタ信号とされて、テンポラリメモリ領域に格納される。そして、通信I/F105においてモニタ信号と取り込んだパラメータの情報とがパケット化されて通信信号が作成され、通信信号がゲートウェイ13に送られるようになる。
【0026】
<増幅ユニット>
次に、棟内共聴装置1における本発明にかかる増幅装置である双方向増幅装置の増幅ユニットの構成を示す機能ブロック図を示す。ここでは、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54の機能ブロック図が同じ構成とされることから、代表として第1増幅ユニット52の機能ブロック図を
図4に示している。
図4に示す第1増幅ユニット52は、MCU130と複数のセンサー52-2を備える増幅部52-1とを備えている。MCU130はマイクロコントローラーであり、MCU130は、CPU131、ROM132、RAM133、I/O134を備え、これらをバス137で接続して構成されている。CPU131は、ROM132に記憶された増幅処理プログラムを実行することにより、第1増幅ユニット52が上記した増幅処理を行うようにMCU130が動作する。この場合、増幅部52-1に設定されるパラメータはRAM133の領域に設定されたテンポラリメモリに格納される。また、電源投入時には、CPU131がROM132に格納されている初期設定プログラムを実行して第1増幅ユニット52を初期化する。増幅部52-1における入力と出力の分岐信号は第1増幅ユニット52から制御ユニット51に送られる。また、第1増幅ユニット52における電圧、電流、温度等の複数のセンサー52-2からのセンサー信号は制御ユニット51に送られる。I/O134は、RS485インタフェースを備え通信バス17-1に接続される。これにより、制御ユニット51は第1増幅ユニット52に、入力されたRF信号を所定レベルで出力するように設定するパラメータを送れると共に第1増幅ユニット52に設定されているパラメータおよび第1増幅ユニット52の動作データを取り込むことができる。通信バス17-1およびI/O134を介して送られたパラメータは、CPU131の制御の基で増幅部52-1の所定部に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の実施例の増幅装置を備える棟内共聴装置において、棟内共聴装置にはCATV下り信号が入力されると説明したが、CATV信号とBS・CS-IF信号とを混合した信号が入力されてもよい。また、ゲートウェイはクラウドに送ると説明したが、クラウドを省略して監視センターに監視情報やパラメータの情報を直接送るようにしてもよい。
また、本発明の実施例の増幅装置である双方向増幅装置における通信バスはRS485と説明したが、これに限ることはなく2線の平衡伝送路を用いてシリアル接続される通信バスとされていればよい。さらに、双方向増幅装置における増幅ユニットは、CATV上り信号を増幅する第1増幅ユニットと、CATV下り信号を増幅する第2増幅ユニットと、BS・CS-IF信号を増幅する第3増幅ユニットから構成されると説明したが、これに限ることなくFM放送信号などを増幅する第4増幅ユニットを追加したり、第1増幅ユニットと第2増幅ユニットとに替えてUHF放送信号(地上デジタル放送)およびFM放送信号を増幅する増幅ユニットを採用するようにしてもよい。
本発明にかかる増幅装置を備える「棟内共聴装置」には、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置される共聴装置が含まれているが、双方向増幅装置や分岐・分配器の数は上記説明した数に限らず、棟内の規模や設備等に応じた任意の数とすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 棟内共聴装置、2 監視センター、3 クラウド、10 BS・CSアンテナ、12 混合器、13 ゲートウェイ、14 インターネット、15 混合器、17,19,22,24 双方向増幅装置、17-1 通信バス、18,20,21,23,25 分岐・分配器、51 制御ユニット、52 第1増幅ユニット、52-1 増幅部、52-2 センサー、53 第2増幅ユニット、53-1 増幅部、54 第3増幅ユニット、54-1 増幅部、100 MCU、101 CPU、102 ROM、103 RAM、104 I/O、104a I/F、105 通信I/F、106 測定部、107 A/D変換器、108 バス、130 MCU、131 CPU、132 ROM、133 RAM、134 I/O、137 バス、150,160 MCU、1010 CATV局、1011 幹線機器、1012 タップオフ、1013 保安器、1105,1108 双方向分岐増幅装置、1100 棟内共聴装置、1101 双方向分岐増幅装置、1103 アンテナ、1105 双方向増幅装置、1106 分岐器、1107 分配器、1108 双方向増幅装置、1109 分配器、1110~1115 直列ユニット、1115 直列ユニット、1116 終端抵抗