(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】高速道路点検用画像データ収集システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20221121BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H04N7/18 D
E01C23/01
(21)【出願番号】P 2021566462
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015374
【審査請求日】2021-11-09
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】大西 篤志
(72)【発明者】
【氏名】森 俊之
(72)【発明者】
【氏名】榊原 稔基
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6721915(JP,B1)
【文献】特開2016-207006(JP,A)
【文献】特開2009-141550(JP,A)
【文献】特開2019-196680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
E01C 21/00-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速道路上を走行する自動車において、撮影手段と、記憶手段と、画像抽出手段と、位置情報取得手段と、無線通信手段を含むローカルエリアネットワークが構築され、
前記撮影手段は、撮影開始コマンドを受けてから撮影終了コマンドを受けるまで、所定の時間間隔で静止画像を撮影し、撮影毎に、得られた画像データを前記記憶手段に引き渡し、
前記記憶手段は、前記画像データを取得したタイミングに前記位置情報取得手段から取得した位置情報を撮影位置情報とし、前記画像データを前記撮影位置情報に対応させて記憶し、
前記画像抽出手段は、画像抽出地点の位置データを有し、前記画像抽出地点の位置データに最も近い前記撮影位置情報に対応する前記画像データを前記記憶手段から抽出し、前記自動車に搭載されておらず所定の場所に設置されたデータ蓄積装置に、前記無線通信手段を介して前記静止画像のデータを
、点検対象となる高速道路において予め定められた地点の点検に用いるための点検用静止画像のデータとして送信することを特徴とする高速道路点検用画像データ収集システム。
【請求項2】
前記画像抽出手段は、前記静止画像のデータを、前記静止画像のデータの利用者が所持する端末装置に設定された閲覧手段を介して閲覧できる形式に加工する請求項1に記載の高速道路点検用画像データ収集システム。
【請求項3】
前記ローカルエリアネットワークに、前記撮影手段の複数が含まれる請求項1に記載の高速道路点検用画像データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速自動車国道や自動車専用道路など、自動車が高い速度域で走行する高速道路の点検に用いられる画像を収集するための、道路点検用画像データ収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の路面状態を点検する作業においては、その点検対象となる路面面積が極めて大きく、限られた時間内で全体を網羅するためには特定部位の状態判断に費やすことのできる時間が制限されていた。そのため、路面状態を評価できる技能を有する点検者が、点検対象となる路面の現場に赴き目視による評価を行う点検方法では、点検数に限界があった。そこで、点検者が現場に赴くことなく、走行車両から撮影して得られた点検対象となる路面の画像を使用した点検が試みられており、点検に用いる画像を収集するための様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、特開平10-294932公報には、予め設定されている巡視箇所を、ユーザの操作を介さずに自動的に撮影する画像撮影装置が提案されている。また、特開2019-154017公報には、点検のために撮影された画像における路面の撮影状態を撮影時に確認し、天候や照度などの環境条件、或いは、カメラ角度などの撮影条件が、画像を使用した点検結果へ影響を及ぼすことを防止する撮影画像事前確認システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-294932公報
【文献】特開2019-154017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高速自動車国道や自動車専用道路など、自動車が高い速度域で走行する高速道路の点検には、高い頻度で収集された、少なくとも4K以上の高解像度の画像が必要となる。そして、道路の点検に用いる画像を収集するための従来の技術を利用し、画像による高速道路の点検を実施することは難しかった。
【0006】
具体的には、高い速度域での走行を維持しながら特定地点の静止画像を位置の誤差なく撮影することは従来の技術では難しく、連続動画を撮影し特定地点の静止画を抽出することで必要な画像を収集することとなり、データ容量の大きい連続動画が作業に必要となる処理に多くの手間や時間を要することが、実施にあたり問題となっている。
【0007】
すなわち、データ容量の大きい連続動画の無線送信は難しいため、全ての撮影作業が終了した後車両に搭載された装置機器から手元の装置機器にデータを移す手間が生じ、更に、連続動画のデータ容量増大により、データの転送や静止画像の抽出等の処理に多くの時間を要することになる。そして、画像の収集される頻度が高くなれば、これらの処理に要する手間や時間は、実施にあたり容認できる範囲を超えるものとなることが問題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、自動車が高い速度域で走行する高速道路の画像による点検を可能とする高速道路点検用画像収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高速道路点検用画像データ収集システムでは、高速道路上を走行する自動車において、撮影手段と、記憶手段と、画像抽出手段と、位置情報取得手段と、無線通信手段を含むローカルエリアネットワークが構築される。前記撮影手段は、所定の時間間隔で静止画像を撮影し、撮影毎に、得られた画像データを前記記憶手段に引き渡す。前記記憶手段は、前記画像データを取得したタイミングに前記位置情報取得装置から取得した位置情報を撮影位置情報とし、前記画像データを前記撮影位置情報に対応させて記憶する。そして、前記画像抽出手段は、画像抽出地点の位置データを有し、前記画像抽出地点の位置データに最も近い前記撮影位置情報に対応する前記画像データを前記記憶手段から抽出し、前記自動車に搭載されておらず所定の場所に設置されたデータ蓄積装置に、前記無線通信手段を介して前記静止画像のデータを画像による点検に用いるためのデータとして送信する。
【0010】
前記画像抽出手段は、前記静止画像のデータを、前記静止画像のデータの利用者が所持する端末装置に設定された閲覧手段を介して閲覧できる形式に加工して送信するものであってもよい。
【0011】
前記ローカルエリアネットワークに、前記撮影手段の複数が含まれてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る道路点検用画像データ収集システムでは、所定の時間間隔で静止画像を撮影し、撮影毎に、得られた画像データを撮影した静止画像の画像データを、撮影位置情報に対応させて記憶し、撮影位置情報が画像抽出地点の位置データに最も近い画像データを記憶手段から抽出することにより、撮影抽出地点、すなわち、特定地点の画像データを取得できる。また、抽出された画像データのみが、自動車に搭載されていないデータ蓄積装置に無線通信装置を介して送信される。そのため、撮影される静止画像の解像度を高めても、必要とされる特定地点の画像データの容量は無線通信装置を介して送信できる範囲内の増大に止まり、しかも、無線通信装置を介して自動車に搭載されていないデータ蓄積装置に送信されることから、撮影作業が終了した後車両に搭載された装置機器から手元の装置機器にデータを移す必要もない。従って、高速道路の高解像度画像を、高い頻度で、実施にあたり容認できる範囲の手間と時間で収集することができ、高速道路の画像による点検の実施が可能となる。
【0013】
また、画像抽出手段が、静止画像のデータを、静止画像のデータの利用者が所持する端末装置に設定された閲覧手段を介して閲覧できる形式に画像データを加工して送信するものであれば、取得した画像を即座に利用しなければならない状況に対応することができる。
【0014】
更に、本発明に係る道路点検用画像データ収集システムでは、自動車専用道路上を走行する車両において、撮影手段と、記憶手段と、画像抽出手段と、位置情報取得手段と、無線通信手段を含むローカルエリアネットワーク(以下、「車内LAN」とする)が構築されるため、車内LANに撮影手段の複数を含めた場合にも、車内LANによるデータ授受により各撮影手段の撮影位置情報を同期させることができる。従って、路面に加えて更に道路付属物の点検を行う場合など、撮影角度が異なる複数の高画質画像が必要とされる状況にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る高速道路点検用画像データ収集システムの実施形態の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明に係る高速道路点検用画像データ収集システムの実施形態を説明する。
この実施形態は、点検対象となる高速道路において予め定められた地点の点検に用いるための点検用静止画像を収集するためのものである。点検用静止画像は高速道路上を走行する自動車1から撮影され、その画像データはインターネット2を経由しデータ蓄積装置3に蓄積されるものとなっている。
【0017】
自動車1には、撮影手段11、記憶手段12及び画像抽出手段14を有するカメラ装置4と、位置情報取得手段15及び無線通信手段16として機能するための演算処理部を有する制御装置5が搭載され、これら装置を含む車内LAN6が構築されている。なお、この実施形態では、予め定められた撮影地点において画角の異なる三方向の撮影を可能とするために、カメラ装置4が3台接続されている。ただし、カメラ装置4の数に制限は無く、用途や目的に応じた数とすればよい。
【0018】
データ蓄積装置3は、自動車1に搭載されておらず、所定の場所に設置されている。そして、自動車1からのインターネット2を経由した画像データのアップロードと、画像データの利用者が所持する端末装置7を使用しての画像データの閲覧が可能とされている。この実施形態では、データ蓄積装置3として、公知のクラウドサーバが採用されている。
【0019】
3台のカメラ装置4は、撮影装置と小型演算処理装置で構成され、インターフェースである入出力手段14を介し車内LAN6を構成する装置機器とのデータ授受が可能とされている。撮影装置は、本発明の撮影手段に相当し、3台のカメラ装置4の各々の撮影手段11が自動車1に対し異なる撮影角度で固定されている。なお、この実施形態では、撮影手段11として市販の4Kカメラが使用されているが、必要とされる画質の画像を撮影できる機能を備えるものであればよく、その他公知の撮像機器を使用してもよい。
【0020】
カメラ装置4を構成する小型演算処理装置は、本発明の記憶手段、及び、画像抽出手段として機能するものとなっている。なお、この実施形態では、小型演算処理装置として公知のマイクロコンピュータが使用されているが、必要な処理を実行できるものであればよく、その他公知の演算処理装置を使用してもよい。
【0021】
撮影手段11は、制御装置5から出力される撮影開始コマンドを受けて、所定の時間間隔での静止画像の撮影を開始し、撮影毎に、得られた画像データを記憶手段12に引き渡すものとなっている。静止画像を撮影する時間間隔は、撮影条件や点検対象の状況などを考慮し適切に設定すればよい。なお、静止画像の撮影は、制御装置5から出力される撮影終了コマンドを受けて終了する。
【0022】
記憶手段12は、制御装置5から、自動車1の走行位置情報を随時受けている。そして、撮影手段11から画像データが引き渡されると、そのタイミングで、すなわち画像データを取得したタイミングで制御装置5から取得した位置情報を撮影位置情報とし、画像データを撮影位置情報に対応させて記憶する。
【0023】
画像抽出手段13は、画像抽出地点の位置データを有し、予め設定されているスケジュールに従い、記憶手段12に対する撮影位置情報の照会を行い、画像抽出地点の位置データに最も近い撮影位置情報に対応する画像データを記憶手段12から抽出する。そして、画像データの利用者が所持する端末装置7に設定された閲覧手段17により閲覧できる形式へ加工したアップロード用データを、制御装置5の無線通信手段16を介してデータ蓄積装置3にアップロードする。
【0024】
この実施形態では、閲覧手段17において撮影地点毎に画像データのファイル名がリンク先URLとして表示され、画像データのファイル名は所定の規則に従って作成されるものとなっている。そして、画像抽出手段13では、アップロードする画像データの名称を規則に従った内容とする加工処理が行われるものとされている。また、ファイル形式はJPGとされている。ただし、閲覧手段17を介して閲覧できる形式に制限はなく、利用が想定される端末装置7の機能や使用環境に応じて、適切なものとすればよい。
【0025】
制御装置5は、インターフェースである入出力手段19を介し、車内LAN6を構成する装置機器とのデータ授受が可能とされている。そして、位置情報取得手段15及び無線通信手段16としての機能を有するとともに、撮影手段11に対するコマンドを入力するためのユーザーインターフェースとしての機能を有するものとなっている。
【0026】
位置情報取得手段15は、GNSSを利用して自動車1の位置情報を取得し、その情報を車内LAN6に接続された機器に送信する。
【0027】
無線通信手段16は、カメラ装置4からデータ蓄積装置3へ画像データをアップロードするための通信を担うものとなっている。
【0028】
コマンド入力手段18は、画像を表示するディスプレイを備えている。そして、ディスプレイに表示された図画に対するタッチ操作により、撮影手段11に対する撮影開始コマンド又は撮影終了コマンドを受け付け、受け付けたコマンドを撮影手段11に出力するものとなっている。
【0029】
車内LAN6は、カメラ装置4及び制御装置5を含む装置機器を相互に通信可能な状態で接続するともに、必要に応じた装置の追加や交換を可能とするものとなっている。この実施形態では、TCP/IPプロトコルを用い公知のLANケーブルとルータの接続により構築されているが、その他の公知の手法で構築してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 自動車
2 インターネット
3 データ蓄積装置
4 カメラ装置
5 制御装置
6 車内LAN
7 端末装置
11 撮影手段
12 記憶手段
13 画像抽出手段
14、19 入出力手段
15 位置情報取得手段
16 無線通信手段
17 閲覧手段
18 コマンド入力手段
【要約】
本発明に係る高速道路点検用画像データ収集システムでは、高速道路上を走行する自動車において、撮影手段と、記憶手段と、画像抽出手段と、位置情報取得手段と、無線通信手段を含むローカルエリアネットワークが構築される。前記撮影手段は、所定の時間間隔で静止画像を撮影し、撮影毎に、得られた画像データを前記記憶手段に引き渡す。前記記憶手段は、前記画像データを取得したタイミングに前記位置情報取得装置から取得した位置情報を撮影位置情報とし、前記画像データを前記撮影位置情報に対応させて記憶する。そして、前記画像抽出手段は、画像抽出地点の位置データを有し、前記画像抽出地点の位置データに最も近い前記撮影位置情報に対応する前記画像データを前記記憶手段から抽出し、前記車両に搭載されておらず所定の場所に設置されたデータ蓄積装置に、前記無線通信手段を介して前記静止画像のデータを送信する。