(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】アブレーションの計画と制御のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017237446
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-10-19
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アクラム・ゾアビ
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルウィ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/181317(WO,A2)
【文献】特表2013-511330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0058387(US,A1)
【文献】特表2013-512748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0078094(US,A1)
【文献】特開2005-199072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00-18/28
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーションを可視化するための装置であって、
出力デバイスと、
プロセッサであって、ユーザーに対し、前記出力デバイス上に、患者の組織内のアブレーションのための領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示し、前記ユーザーから、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上のアブレーション位置と、前記アブレーション位置においてアブレーションを行うための1つ又は2つ以上のそれぞれのアブレーション構成とを特定する、アブレーション情報を受け取り、かつ前記ユーザーに対し、前記3Dチューブ上に、前記アブレーション位置及び前記対応するアブレーション構成に基づいて前記組織内の前記アブレーションの推定影響を表示するように構成された、プロセッサと、
を備え、
前記領域が、アブレーションのための標的領域であり、それぞれの前記アブレーション位置及び前記対応するアブレーション構成が、前記アブレーションに使用された実際のアブレーション位置及び対応する実際のアブレーション構成であり、
各実際のアブレーション構成が、それぞれの実際のアブレーション位置で損傷を形成するのに使用され、前記プロセッサは、各実際のアブレーション位置で、前記損傷の寸法を評価するように構成されており、
前記プロセッサは、
前記アブレーション構成を変更されたことにより生じた、計画されたアブレーション構成から超過した前記アブレーションの推定影響を、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域
に表示するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、近接する損傷が非連続的である、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記表示された3Dチューブを、前記アブレーション位置での前記組織の解剖学的画像に重ね合わせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記領域が肺静脈(PV)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アブレーション構成が、アブレーション持続時間、アブレーション出力、標的温度、及びインピーダンス低下からなるリストから選択される、1つ又は2つ以上のアブレーション属性を含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、不整脈の治療に関し、特に、アブレーションの計画と制御のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組織アブレーションは、心不整脈などの様々なタイプの疾患を治療するために使用することができる。場合によっては、適用するアブレーションは複雑であり、事前計画を必要とする。アブレーション処置を計画及び制御するには、様々な技法を適用することができる。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2014/0058387号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、アブレーション計画に関するシステム及び方法について記述しており、これには、治療可能性に基づいて1つ又は2つ以上のアブレーション体積の形状及び寸法を画定することと、治療対象となる標的体積を決定することとが含まれる。処置計画は、1つ又は2つ以上のアブレーション体積を使用して、標的体積内の計画されたアブレーションの個数と位置とを決定することにより提供される。同時確率分布が、標的体積内の少なくとも2つの計画されたアブレーションに対して判定される。最終的形状が可視化され、標的体積に対する治療の確率に基づいて、計画目標が達成されたかどうかが判定される。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0277763号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、介入的アブレーション治療計画システム、及び患者体内に位置する標的体積の画像表示を生成する画像システムについて記述している。この計画システムは、アブレーション治療を受ける標的体積の、計画された標的体積をセグメント化する、セグメント化装置を含む。計画プロセッサは、計画された標的体積全体をアブレーション治療でカバーする、1つ又は2つ以上のアブレーションゾーンによるアブレーション計画を生成し、この各アブレーションゾーンは所定のアブレーション体積を有し、この所定のアブレーション体積は、アブレーション中にアブレーションプローブを動かすことにより画定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記述される本発明の一実施形態は、アブレーションの可視化のための方法を提供し、これは、ユーザーに対し、患者の組織内のアブレーションのための領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示することを含む。アブレーション情報は、この3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上のアブレーション位置と、そのアブレーション位置においてアブレーションを行うための1つ又は2つ以上のそれぞれのアブレーション構成とを特定するものであり、これをユーザーから受け取る。組織内のアブレーションの推定影響は、そのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成に基づいて、ユーザーに対し、3Dチューブ上に表示される。
【0006】
いくつかの実施形態において、この領域は、アブレーションのための標的領域であり、それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成は、アブレーションが適用されるように計画されている、計画されたアブレーション位置、及び対応する計画されたアブレーション構成である。他の実施形態において、それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成は、アブレーションに使用された実際のアブレーション位置及び対応する実際のアブレーション構成である。更に他の実施形態において、各実際のアブレーション構成は、それぞれの実際のアブレーション位置で損傷を形成するのに使用され、この推定影響を表示することは、各実際のアブレーション位置で、損傷の寸法及び程度を評価することを含む。
【0007】
一実施形態において、この推定影響を表示することは、近接する損傷が非連続的である、3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示することを含む。別の一実施形態において、この推定影響を表示することは、超過したアブレーションが適用されている、3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示することを含む。更に別の一実施形態において、3Dチューブを表示することは、表示された3Dチューブを、アブレーション位置での組織の解剖学的画像に重ね合わせることを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、この領域は肺静脈(PV)を含む。他の実施形態において、このアブレーション構成は、アブレーション持続時間、アブレーション出力、アブレーション指標、標的温度、及びインピーダンス低下からなるリストから選択される、1つ又は2つ以上のアブレーション属性を含む。
【0009】
更に、本発明の一実施形態により、アブレーションを可視化するための装置が提供される。この装置は、出力デバイス及びプロセッサを備える。このプロセッサは、ユーザーに対し、出力デバイス上に、患者の組織内のアブレーションのための領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示し、ユーザーから、3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上のアブレーション位置を特定するアブレーション情報を受け取り、かつユーザーに対し、3Dチューブ上に、そのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成に基づいて組織内のアブレーションの推定影響を表示するように構成されている。
【0010】
本発明は、図面と総合すれば、以下の「発明を実施するための形態」からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく追跡及びアブレーションシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、アブレーションのための標的領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブの概略描写図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、組織内のアブレーションの推定影響を視覚的に表わす、3Dチューブの概略描写図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
心臓アブレーション処置は典型的に、正確な結果を達成するために、事前の計画を必要とする。例えば、肺静脈(PV)隔離術では、PVの周囲の周りに連続的な損傷のアブレーションを行うことにより、PVの望ましくない電気インパルスの伝播をブロックする。連続的な損傷を正確に形成するために、術式を計画し制御することが重要である。
【0013】
本明細書に後で説明する本発明の実施形態は、アブレーション処置の計画及び制御のための改善された技法を提供する。いくつかの実施形態において、アブレーション処置を計画する際、プロセッサは、ユーザー(典型的には医師)に対し、アブレーションされるPVの標的領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示するように構成される。ユーザーは次に、プロセッサに対し、アブレーション情報を提供する。このアブレーション情報は、3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の計画されたアブレーション位置と、その特定されたアブレーション位置においてアブレーションを行うための1つ又は2つ以上のそれぞれの計画されたアブレーション構成とを特定する。あるアブレーション位置に対するアブレーション構成は、例えば、アブレーション強度、アブレーション持続時間、及び/又はその他の属性を特定し得る。
【0014】
一実施形態において、アブレーション位置及び構成をユーザーから受け取った後、プロセッサは、それぞれのアブレーション構成を用いてアブレーション位置で組織をアブレーションするようにカテーテルの電極を作動させ、かつ3Dチューブ上に、実際のアブレーション位置及び対応する実際のアブレーション構成に基づいてアブレーションの推定影響を表示するように構成される。
【0015】
場合によっては、1つ又は2つ以上の実際のアブレーション位置及び/又はそれぞれの実際のアブレーション構成が、計画されたアブレーション位置及び/又は構成とは異なることがある。そのような場合、プロセッサは、3Dチューブ上に、組織アブレーションの計画と、実際の推定影響との間の差を表示するように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサは更に、実際のアブレーションの推定影響を評価し、かつその評価結果をユーザーに対して表示するように構成される。
【0016】
一実施形態において、プロセッサは、計画中又は実際の処置中に、損傷の非連続性を検出することができる。この実施形態において、プロセッサはそれに応じてユーザーにアラートを発することができ、更に、変更されたアブレーション位置及び/又は変更されたアブレーション構成を提案することができ、これによって損傷の非連続部分を埋め、これによって、連続的な損傷を形成する可能性を高めることができる。
【0017】
本開示の技法は、例えば、一度に1つの標的位置をアブレーションする単電極(「ポイント・バイ・ポイント」)カテーテル、又は、同時に複数の標的位置をアブレーションする多電極カテーテル(例えばラッソーカテーテル又はバスケットカテーテル)などの、様々なアブレーション技法と共に使用することができる。
【0018】
本開示の技法は、アブレーション状態のリアルタイム可視化を提供し、医師がアブレーションの計画を行い、その進行を追跡することを可能にし、これによって、アブレーション計画からの偏差が生じた場合は、例えば、近接する損傷の間にある望ましくない隙間を、3Dチューブのマークなしセクションとして表示することによって、すぐに修正することが可能になる。
【0019】
更に本開示の技法は、心臓アブレーションに限定されるものではない。例えば、本開示の技法は、腫瘍のアブレーションに使用することができ、この場合、表示された3Dチューブは、腫瘍の周囲の安全マージン付き又は安全マージンなしで腫瘍を表わし得る。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、カテーテル22(本実施例では心臓カテーテル)と、制御コンソール24と、を含む。本明細書に記述される実施形態において、カテーテル22は、心臓26の組織のアブレーション(下記の
図2を参照)といった、任意の好適な治療用及び/又は診断用目的で使用され得る。
【0021】
コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信するため及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ41を含む。コンソール24は更に、下記の
図2及び3に示す3次元(3D)チューブを表示するように構成されたユーザーディスプレイ35を含み、この3Dチューブは、心臓26の画像27に重ね合わせることができる。
【0022】
一実施形態において、表示された3Dチューブは、アブレーション処置を実施する前の、計画された位置の推定影響と、対応するアブレーション構成とを視覚的に表わすことができる(下記の
図2を参照)。別の一実施形態において、表示された3Dチューブは、実際のアブレーション位置と、対応する実際のアブレーション構成とに基づいて、組織内のアブレーションの推定影響を表わすことができる。一実施形態において、この3Dチューブは、心臓26の画像27に重ね合わせて表示することができる。
【0023】
いくつかの術式、例えば組織のアブレーションにおいて、医師30は、事前に処置を計画することができる。いくつかの実施形態において、アブレーションを計画するために、プロセッサ41は、医師30から、組織内のアブレーションの標的領域を受け取り、心臓26の組織をアブレーションするための標的領域を視覚的に表わす仮想3次元(3D)チューブ(下記の
図2を参照)をディスプレイ35に表示する。この3Dチューブは、下記の
図2~3に詳しく図示されている。医師は次に、必要なアブレーション位置とそれぞれのアブレーション構成とを、プロセッサに提供する。
【0024】
アブレーション処置を実施するために、医師30は、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通して、カテーテル22を挿入する。カテーテル22は、その遠位端に装着された1つ又は2つ以上のアブレーション電極40を含む。電極40は、心臓26の標的位置で組織をアブレーションするように構成されている。医師30は、挿入
図23に示されるように、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32を用いてカテーテル22を操作することによって、心臓26内の標的位置の近傍でこの遠位端を操作する。カテーテル22の近位端は、プロセッサ41のインターフェース回路に接続される。
【0025】
いくつかの実施形態において、心臓腔内の遠位端の位置は、磁気位置追跡システムの位置センサー(図示なし)によって測定される。この場合、コンソール24は駆動回路34を含み、この駆動回路34は、テーブル29に横たわる患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する磁界発生器36を駆動する。この位置センサーは遠位端に装着され、磁界発生器36からの外部磁界の検出に反応して、位置信号を生成するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系における遠位端の位置を示す。
【0026】
この位置検知の方法は、様々な医療用途で、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT特許公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に詳細に記述されており、それらの開示はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、医師30はプロセッサ41を使用して、遠位端40を操作して標的位置へと動かし、電極40を作動させることにより、その標的位置で組織のアブレーションを行うことができる。代替的な実施形態において、プロセッサ41は3Dチューブを表示するためだけに使用することができ、コンソール22は、1つ又は2つ以上の他のプロセッサを含み得、これを遠位端40の操作及び組織のアブレーションのために使用することができる。
【0028】
典型的には、プロセッサ41は一般用途コンピュータで構成され、コンピュータには、本明細書に記載する機能を実行するソフトウェアがプログラムされている。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを通して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に、又は追加的には、磁気的、光学的、若しくは電子的メモリなどの持続性有形媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。
【0029】
アブレーション処置の計画
図2は、本発明の一実施形態による、医師30に対し、ディスプレイ35上に表示された、アブレーションのための標的領域を視覚的に表わす仮想3次元(3D)チューブ50の概略描写図である。
図2の例において、アブレーション処置は心臓26の肺静脈(PV)48を隔離することを目的とするが、本明細書に記述される実施形態は、他の任意のアブレーション処置に使用することができる。
【0030】
処置の計画段階において、1つ又は2つ以上のPVの解剖学的画像48が、医師30に対し、ディスプレイ35上に表示される。この解剖学的画像は、任意の好適な撮像技術、例えば、心エコー法、多検出器コンピュータ断層撮影(MDCT)、又はファストアナトミカルマッピング(FAM)を例えばCARTO(商標)システム(Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)製造)に実装したもの、を使用して取得することができ、これらの詳細は、米国特許第9,265,434号、米国特許出願公開第2011/0152684 A1号、同第2015/0018698 A1号、及び同第2016/0183824 A1号、並びに欧州特許出願公開第2338419 A1号に記述されており、これらの開示はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
一実施形態において、計画段階の一環として、医師30は複数のアブレーション位置及び対応するアブレーション構成を選択し、この情報をプロセッサ41に提供する。一実施形態において、医師30は、それぞれのアブレーション位置で具体的なアブレーション構成を設定することができる。いくつかの実施形態において、アブレーション構成は、例えばアブレーション持続時間、アブレーション出力、アブレーション指標、標的温度、インピーダンス低下、又はその他の任意の好適なアブレーション属性などの、様々なアブレーション属性を特定することができる。この例において、55A、55B、55C、55D、55E、及び55Fとして示される6つのアブレーション位置が選択されている。プロセッサ41はPVの画像48を使用し、また医師により特定された標的アブレーション位置及びアブレーション構成を使用して、ディスプレイ35上に仮想3Dチューブ50を表示する。
【0032】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、各アブレーション位置について、それぞれのアブレーション構成が適用されると仮定したときに形成され得る損傷の寸法を推定するように構成される。一実施形態において、プロセッサ41は、アブレーション位置のいずれかの側に、チューブ50の着色セクションをマークするように構成される。この着色セクションの寸法が、損傷の推定寸法に対応する。
【0033】
いくつかの実施形態において、この技法はアブレーション計画段階に使用することができ、この場合、医師30は、初期のアブレーション位置の計画及び対応するアブレーション構成を用いて開始することができる。一実施形態において、プロセッサ41は、適宜チューブ50のそれぞれのセクションを色で塗ることにより、計画されたアブレーションの推定影響を表示する。
【0034】
この可視化技法を使用することによって、医師30はこの処置を適応的に計画することができ、例えば、チューブ全体を色で塗るようにすることで、連続的な損傷の形成を確実にすることができる。アブレーションの推定影響により、計画されたスキームが連続的損傷を形成しないことが示された場合、プロセッサ41はチューブ50内にマークされていない(例えば透明な)セクションを表示し、これは、非連続的な損傷であることを示す。そのような場合、医師30は、例えば、チューブ50に沿ってアブレーション位置を動かす、位置を追加若しくは削除する、及び/又は1つ若しくは2つ以上のアブレーション位置でアブレーション構成を変更することにより、計画されたスキームを変更することができる。プロセッサ41は、再評価のため、その変更された計画の推定影響をチューブ50上に表示する。医師30は、医学的要件が充足されるまで、この反復的な計画変更プロセスを繰り返すことができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、プロセッサは目盛52と共にチューブ50を表示し、これは、医師30がチューブ50に沿ってアブレーション位置を選択するのを支援する。医師は、選択された各アブレーション位置に対して、それぞれのアブレーション構成をプロセッサに提供する。位置55A~55Fは、例えば、チューブ50上にマークとして仮想的に表示される。
【0036】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、アブレーション処置の計画及び実行において医師30を支援するために、それぞれのアブレーション構成に基づいて、選択された各アブレーション位置での予測される損傷境界をチューブ50上にマークするように構成される。例えば、この境界マークを用いて、医師30は、PV 48の周囲に連続的な損傷を達成するよう、アブレーション構成を変更することができる。
【0037】
一実施形態において、プロセッサ41は更に、
図2に示すように、チューブ50を、PVの解剖学的画像48に、又は、医師30が選択する器官の任意の解剖学的再構成に重ね合わせて表示するように構成することができる。他の実施形態において、チューブ50は別個に示すことができる。
【0038】
アブレーションの推定影響の表示
図3は、本発明の一実施形態による、仮想3Dチューブ50を用いた、アブレーションの推定影響の概略描写図である。
【0039】
一実施形態において、アブレーション処置中に、プロセッサ41は、遠位端の位置を、その遠位端に装着された位置センサーから受け取り、チューブ50に対するアブレーション電極40の位置を表示し、これによって医師30は、選択したアブレーション位置(例えば位置55A)へと遠位端を操作して動かすことができる。遠位端を操作して、例えば位置55Aまで動かした後、医師30は、上述の
図2に示したように、位置55Aの所定のアブレーション構成を用いて、組織を部レーションするために電極40を作動させる。
【0040】
典型的に、アブレーションは計画された位置で、それぞれの計画された構成を用いて実行される。しかしながら、場合によっては、組織に適用された実際のアブレーションは、計画されたアブレーションからの偏差が生じることがある。例えば、組織のアブレーション中に、実際のアブレーション構成が、計画された構成とは異なることがある。別の例として、遠位端40の実際の位置が、計画された正確な位置から偏位することがある。そのような場合、結果として得られる損傷は、計画通りの正確な損傷とは一致しない。
【0041】
位置55Aでアブレーションした後、プロセッサ41は仮想的にチューブ50のセクション60Aを色で「塗り」、これは、アブレーションによって形成された実際の損傷を表わす。一実施形態において、プロセッサ41は、アブレーション中に、遠位端40の実際の位置(これは、位置追跡システムから得られた「実際のアブレーション位置」である)と、この位置で実施された実際のアブレーション構成とに基づいて、セクション60Aに塗られた色を表示する。
【0042】
一実施形態において、セクション60Aの寸法及び色(目盛52に沿って測定される)は、位置55Aでの組織に対するアブレーションの実際の影響を可視化する。いくつかの実施形態において、医師30は、セクション60Aの寸法及び色を使用して、アブレーション計画と比較した実際のアブレーション影響を推定し、次の計画されたアブレーション位置である位置55Bでのアブレーション構成を調節することができる。
【0043】
図3の例において、位置55A及び55Bでのアブレーションは、それぞれのセクション60A及び60Bで示すように、チューブ50の計画されたセクションを色で塗る。この例において、セクション60Cで示される、位置55Cでのアブレーション影響の可視化は、計画された領域よりもカバーが少なく、これはチューブ50内のセクション62及び63が透明なままであることによって示されている。透明なセクション62は、このセクションで連続的損傷が形成されなかったことを示し、よって、この非連続性により、PV 48の望ましくない電気インパルスの伝播をブロックできなくなる可能性がある。
【0044】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、変更されたアブレーション構成を提案することができ、あるいは、医師30は、手動で位置55Dでのアブレーション構成を変更することができ、これによってセクション63での連続的損傷を形成し、これは、望ましくない電気インパルスがセクション63を通過するのをブロックするのに必要である。例えば、位置55Dで、医師30は、実際のアブレーション出力を増加させ、及び/又は実際のアブレーション持続時間を延長することができ、これによってセクション63の隙間を埋め、セクション60Cと60Dにより可視化された連続的な損傷を形成することができる。
【0045】
一実施形態において、プロセッサ41は更に、基準から外れたアブレーション推定影響を表示するように構成される。例えば、プロセッサ41は、例えば位置55Dでのアブレーション構成を変更したことにより生じた、超過したアブレーションをセクション65に表示することができる。この超過したアブレーションは、組織に対する超過したアブレーションの実際の影響を示す、所定の色、テクスチャー、又はその他の任意の好適な可視化効果を用いて表示することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、セクション62を埋めるためのアブレーション戦略(例えば、アブレーション位置及び対応するアブレーション構成)を提案することができ、これにより、PV 48の周囲での連続的損傷の形成を完全にすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、位置55A~55Fでのアブレーションを完了した後、プロセッサ41はチューブ50に沿ってアブレーション影響を評価することができる。例えば、プロセッサ41はアブレーションが連続的損傷を実際に形成したかどうかを評価して、チューブ50に沿ってアブレーションの非連続性が特定された場合、又はその他の任意の予期せぬ結果が特定された場合、医師30に通知することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は更に、遠位端40の位置と、1つ又は2つ以上の計画されたアブレーション位置との間の距離を表示するように構成される。
【0049】
図2~3に示したチューブ50の構成及び対応するアブレーションスキームは、単に概念を明確にする目的で示された例示的な構成である。代替的な実施形態では、他の任意の好適な構成を用いることができる。例えば、仮想3Dチューブは直線形状を有し得、これによりアブレーションラインを形成することができる。
【0050】
本明細書に記述される実施形態において、プロセッサ41は、最初に計画中、次に実際のアブレーション処置中の、2段階プロセスでチューブ50を可視化する。代替的な実施形態において、本開示の技法は、計画中のみ、又は実際の処置中のみに使用することができる。
【0051】
本明細書に記述される実施形態は、主として心臓学に関するが、本明細書に記載される方法及びシステムは、腫瘍アブレーションなど他の用途にも用いることができる。
【0052】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0053】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションを可視化するための方法であって、
ユーザーに対し、患者の組織内のアブレーションのための領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示することと、
前記ユーザーから、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上のアブレーション位置と、前記アブレーション位置においてアブレーションを行うための1つ又は2つ以上のそれぞれのアブレーション構成とを特定する、アブレーション情報を受け取ることと、
前記ユーザーに対し、前記3Dチューブの上に、前記アブレーション位置及び前記対応するアブレーション構成に基づいて前記組織内の前記アブレーションの推定影響を表示することと、
を含む、方法。
(2) 前記領域が、アブレーションのための標的領域であり、前記それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成は、前記アブレーションが適用されるように計画されている、計画されたアブレーション位置、及び対応する計画されたアブレーション構成である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成が、前記アブレーションに使用された実際のアブレーション位置及び対応する実際のアブレーション構成である、実施態様1に記載の方法。
(4) 各実際のアブレーション構成が、それぞれの実際のアブレーション位置で損傷を形成するのに使用され、前記推定影響を表示することは、各実際のアブレーション位置で、前記損傷の寸法及び程度を評価することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記推定影響を表示することは、近接する損傷が非連続的である、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0054】
(6) 前記推定影響を表示することは、過剰なアブレーションが適用されている、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示することを含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記3Dチューブを表示することが、前記表示された3Dチューブを、前記アブレーション位置での前記組織の解剖学的画像に重ね合わせることを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記領域が肺静脈(PV)を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記アブレーション構成が、アブレーション持続時間、アブレーション出力、アブレーション指標、標的温度、及びインピーダンス低下からなるリストから選択される、1つ又は2つ以上のアブレーション属性を含む、実施態様1に記載の方法。
(10) アブレーションを可視化するための装置であって、
出力デバイスと、
プロセッサであって、ユーザーに対し、前記出力デバイス上に、患者の組織内のアブレーションのための領域を視覚的に表わす3次元(3D)チューブを表示し、前記ユーザーから、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上のアブレーション位置と、前記アブレーション位置においてアブレーションを行うための1つ又は2つ以上のそれぞれのアブレーション構成とを特定する、アブレーション情報を受け取り、かつ前記ユーザーに対し、前記3Dチューブ上に、前記アブレーション位置及び前記対応するアブレーション構成に基づいて前記組織内の前記アブレーションの推定影響を表示するように構成された、プロセッサと、
を備える、装置。
【0055】
(11) 前記領域が、アブレーションのための標的領域であり、前記それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成は、前記アブレーションが適用されるように計画されている、計画されたアブレーション位置、及び対応する計画されたアブレーション構成である、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記それぞれのアブレーション位置及び対応するアブレーション構成が、前記アブレーションに使用された実際のアブレーション位置及び対応する実際のアブレーション構成である、実施態様10に記載の装置。
(13) 各実際のアブレーション構成が、それぞれの実際のアブレーション位置で損傷を形成するのに使用され、前記プロセッサは、各実際のアブレーション位置で、前記損傷の寸法及び程度を評価するように構成されている、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記プロセッサは、近接する損傷が非連続的である、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記プロセッサは、過剰なアブレーションが適用されている、前記3Dチューブに沿った1つ又は2つ以上の領域を表示するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
【0056】
(16) 前記プロセッサが、前記表示された3Dチューブを、前記アブレーション位置での前記組織の解剖学的画像に重ね合わせるように構成されている、実施態様10に記載の装置。
(17) 前記領域が肺静脈(PV)を含む、実施態様10に記載の装置。
(18) 前記アブレーション構成が、アブレーション持続時間、アブレーション出力、アブレーション指標、標的温度、及びインピーダンス低下からなるリストから選択される、1つ又は2つ以上のアブレーション属性を含む、実施態様10に記載の装置。