(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】吐出弁構造の誤欠品検査方法及び吐出弁構造
(51)【国際特許分類】
F04C 28/28 20060101AFI20221121BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20221121BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20221121BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20221121BHJP
F16K 15/16 20060101ALI20221121BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20221121BHJP
G01M 13/00 20190101ALI20221121BHJP
【FI】
F04C28/28 A
F04B39/10 C
F04C29/00 B
F04C29/12 H
F16K15/16 Z
F16K51/00 F
G01M13/00
(21)【出願番号】P 2017245316
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】出口 裕展
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-158866(JP,U)
【文献】特開2009-041481(JP,A)
【文献】特開2014-167282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 28/28
F04C 29/00
F04C 29/12
F16K 51/00
F16K 15/16
G01M 13/00
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の吐出弁構造(1)の誤欠品検査方法であって、
前記吐出弁構造(1)は、
<1>前記圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切ると共に、前記圧縮室と前記吐出室を連通する吐出孔を有する仕切り壁(12)と、
前記吐出室側で前記吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有する吐出弁(20)と、
前記吐出弁(20)に覆いかぶさるように設けられ、前記吐出弁(20)の開度を規制する弁押さえ(30)と、
前記吐出孔を覆う部分から外れた位置において、前記弁押さえ(30)に貫設された挿通孔と前記吐出弁(20)に貫設された挿通孔を挿通して前記仕切り壁(12)に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルト(40)と、
を備えた組立構造と、
<2>前記弁押さえ(30)は検査部材(50)を挿入するための検査孔(33)を有すると共に、前記検査孔(33)と前記仕切り壁(12)との間に前記吐出弁(20)の一部が介在する検査構造とを有し、
前記検査孔(33)に前記検査部材(50)を挿入し、前記検査部材(50)の挿入深さによって、前記吐出弁(20)の欠品有無を検査することを特徴とする吐出弁構造の誤欠品検査方法。
【請求項2】
前記組立構造を完成させたのち、前記吐出弁(20)の有無を検査することを特徴とする請求項1に記載の吐出弁構造の誤欠品検査方法。
【請求項3】
前記圧縮機の前記仕切り壁(12)、前記吐出弁(20)及び前記弁押さえ(30)は、相互の位置関係を決める位置決め孔(14,21,34)を有し、
該位置決め孔(14,21,34)に挿入するための位置決め凸部(61)が設けられた組立治具(60)を用意し、
前記組立構造を組み立てる工程が、
<1>前記組立冶具(60)の前記位置決め凸部(61)が前記位置決め孔(21,34)に挿入される状態となるように、前記弁押さえ(30)及び前記吐出弁(20)を前記組立冶具(60)にセットする配置工程と、
<2>前記仕切り壁(12)の位置決め孔(14)に前記組立冶具(60)の位置決め凸部(61)を挿入し、前記弁押さえ(30)と前記吐出弁(20)がセットされた前記組立冶具(60)を組み合わせる組立工程と、
<3>前記検査孔(33)に前記検査部材(50)を挿入する検査工程と、
を含み、
前記検査工程において、前記吐出弁(20)の有無を検査することを特徴とする請求項1に記載の吐出弁構造の誤欠品検査方法。
【請求項4】
前記圧縮機の前記仕切り壁(12)、前記吐出弁(20)及び前記弁押さえ(30)は、相互の位置関係を決める位置決め孔(14,21,34)を有し、
該位置決め孔(14,21,34)に挿入するための円柱状の位置決めピン(51)を用意し、
前記組立構造を組み立てる工程が、
前記仕切り壁(12)の前記位置決め孔(14)に前記位置決めピン(51)の一端(51a)を挿入するピン設置工程と、
前記仕切り壁(12)から突出した前記位置決めピン(51)の他端(51b)に前記吐出弁(20)及び前記弁押さえ(30)の前記位置決め孔(21,34)を挿通させる配置工程と、
前記検査部材(50)を前記検査孔(33)に挿入する検査工程と、
を含み、
検査工程において、前記吐出弁(20)の有無を検査することを特徴とする請求項1に記載の吐出弁構造の誤欠品検査方法。
【請求項5】
圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切るとともに、前記圧縮室と前記吐出室を連通する吐出孔が設けられた仕切り壁(12)と、
前記吐出室側で前記吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有する吐出弁(20)と、
前記吐出弁(20)に覆いかぶさるように設けられ、前記吐出弁(20)の開度を規制する弁押さえ(30)と、
前記吐出孔を覆う部分から外れた位置において、前記弁押さえ(30)に貫設された挿通孔と前記吐出弁(20)に貫設された挿通孔を挿通して前記仕切り壁(12)に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルト(40)と、
を備え、
前記弁押さえ(30)は、平坦部(31)と該平坦部(31)に連接する湾曲部(32)とを有する板状部材であり、前記平坦部(31)は、前記吐出弁(20)の表面のうち、該吐出弁(20)が開の時に前記仕切り壁(12)に密着する部分を覆い、前記湾曲部(32)は、前記吐出弁(20)の表面のうち、該吐出弁(20)が開の時に前記仕切り壁(12)から離れる部分を覆うように構成されており、
前記弁押さえ(30)は前記固定ボルト(40)の前記挿通孔と別に、検査孔(33)を有し、該検査孔(33)は前記平坦部(31)に設けられており、前記検査孔(33)と前記仕切り壁(12)との間に前記吐出弁(20)の一部が介在する構造を有
し、
前記検査孔(33)は、検査部材(50)の挿入用孔であることを特徴とする吐出弁構造。
【請求項6】
前記仕切り壁(12)は、前記検査孔(33)と対応する領域に凹部(13)を有することを特徴とする請求項
5に記載の吐出弁構造。
【請求項7】
前記凹部(13)は前記検査孔(33)よりも対応する領域が大きいことを特徴とする請求項
6に記載の吐出弁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関し、特には吐出弁構造の誤欠品検査方法及び吐出弁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールの吐出口に吐出弁と弁押さえとを備えた圧縮機が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1の圧縮機では、弁押さえには、ボルトで固定するためのボルト挿入用穴を有し、弁押さえ自体及び吐出弁の位置決めが可能である。また、吐出弁には、弁押さえの突起部を固定するための突起挿入用穴がある。固定スクロールには、ボルト挿入用穴が設けられる。
【0003】
固定スクロールの鏡板背面に、吐出弁及び弁押さえの位置決めを行う突起を設け、鏡板の吐出室側に一体的にねじ止め固定することで加工工数を低減することができるスクロール圧縮機が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0004】
主軸受の窪みの内周壁部の平行部分の中心線を吐出孔の中心と台座リベット孔の中心とを結ぶ直線に対して偏心させることで誤組立てを確実に防止できるロータリ圧縮機が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0005】
吐出弁と弁押さえとを組付けたとき、吐出弁に設けた弁体表裏判別マークによって、弁押さえの組付け後に吐出弁の誤組付けの検査を行うことができるロータリ圧縮機が開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0006】
弁押さえの形状によって誤組み込みを防止できるロータリ圧縮機が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-80909号公報
【文献】特開2001-329969号公報
【文献】特開2008-101503号公報
【文献】特開2014-167282号公報
【文献】特開2004-116413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1~5では、吐出弁を備えていない吐出弁構造を組み立てることが可能であり、吐出弁の欠落を検出することができない。吐出弁の有無を確認するためには、カメラ若しくは認識システムなどの検査プロセスを追加し、さらにカメラ若しくは認識システムなどで確認できる形状を追加する必要がある。又は吐出弁の欠落を確認するために弁押さえの高さ測定が必要となる。
【0009】
本開示の目的は、簡単な検査部材によって吐出弁の欠落を検出することができる吐出弁構造の誤欠品検査方法及び吐出弁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法は、圧縮機の吐出弁構造の誤欠品検査方法であって、前記吐出弁構造は、(1)前記圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切ると共に、前記圧縮室と前記吐出室を連通する吐出孔を有する仕切り壁と、前記吐出孔を前記吐出室側で前記吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有す吐出弁と、前記吐出弁に覆いかぶさるように設けられ、前記吐出弁の開度を規制する弁押さえと、前記吐出孔を覆う部分から外れた位置において、前記弁押さえに貫設された挿通孔と前記吐出弁に貫設された挿通孔を挿通して前記仕切り壁に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルトと、を備えた組立構造と、(2)前記弁押さえは検査部材を挿入するための検査孔を有すると共に、前記検査孔と前記仕切り壁との間に前記吐出弁の一部が介在する検査構造とを有し、前記検査孔に前記検査部材を挿入し、前記検査部材の挿入深さによって、前記吐出弁の欠品有無を検査することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法では、前記組立構造を完成させたのち、前記吐出弁の有無を検査することが好ましい。これによって、固定ボルトによって仕切り壁と吐出弁と弁押さえとが固定された状態で検査することとなるので、より確実に正しい組立構造の吐出弁構造を提供することができる。
【0012】
本発明に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法では、前記圧縮機の前記仕切り壁、前記吐出弁及び前記弁押さえは、相互の位置関係を決める位置決め孔を有し、該位置決め孔に挿入するための位置決め凸部が設けられた組立治具を用意し、前記組立構造を組み立てる工程が、(1)前記組立冶具の前記位置決め凸部が前記位置決め孔に挿入される状態となるように、前記弁押さえ及び前記吐出弁を前記組立冶具にセットする配置工程と、(2)前記仕切り壁の位置決め孔に前記組立冶具の位置決め凸部を挿入し、前記弁押さえと前記吐出弁がセットされた前記組立冶具を組み合わせる組立工程と、(3)前記検査孔に前記検査部材を挿入する検査工程と、を含み、前記検査工程において、前記吐出弁の有無を検査することが好ましい。これによって、吐出弁及び弁押さえを適切な位置に配置することができる。
【0013】
本発明に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法では、前記圧縮機の前記仕切り壁、前記吐出弁及び前記弁押さえは、相互の位置関係を決める位置決め孔を有し、該位置決め孔に挿入するための円柱状の位置決めピンを用意し、前記組立構造を組み立てる工程が、前記仕切り壁の前記位置決め孔に前記位置決めピンの一端を挿入するピン設置工程と、前記仕切り壁から突出した前記位置決めピンの他端に前記吐出弁及び前記弁押さえの前記位置決め孔を挿通させる配置工程と、前記検査部材を前記検査孔に挿入する検査工程と、を含み、検査工程において、前記吐出弁の有無を検査することが好ましい。これによって、吐出弁及び弁押さえを適切な位置に配置することができる。
【0014】
本発明に係る吐出弁構造は、圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切るとともに、前記圧縮室と前記吐出室を連通する吐出孔が設けられた仕切り壁と、前記吐出孔を前記吐出室側で前記吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有する吐出弁と、前記吐出弁に覆いかぶさるように設けられ、前記吐出弁の開度を規制する弁押さえと、前記吐出孔を覆う部分から外れた位置において、前記弁押さえに貫設された挿通孔と前記吐出弁に貫設された挿通孔を挿通して前記仕切り壁に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルトと、を備え、前記弁押さえは、平坦部と該平坦部に連接する湾曲部とを有する板状部材であり、前記平坦部は、前記吐出弁の表面のうち、該吐出弁が開の時に前記仕切り壁に密着する部分を覆い、前記湾曲部は、前記吐出弁の表面のうち、該吐出弁が開の時に前記仕切り壁から離れる部分を覆うように構成されており、前記弁押さえは前記固定ボルトの前記挿通孔と別に、検査孔を有し、該検査孔は前記平坦部に設けられており、前記検査孔と前記仕切り壁との間に前記吐出弁の一部が介在する構造を有し、前記検査孔(33)は、検査部材(50)の挿入用孔であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る吐出弁構造では、前記仕切り壁は、前記検査孔と対応する領域に凹部を有することが好ましい。これによって、吐出弁の欠品の有無の違いによる検査部材の挿入深さの違いがより大きくなるため、吐出弁の欠品をより確実に検出することができる。
【0017】
本発明に係る吐出弁構造では、前記凹部は前記検査孔よりも対応する領域が大きいことが好ましい。これによって、吐出弁が欠品しているとき、検査部材が、凹部により確実に入り込むため、吐出弁の欠品をより確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、簡単な検査部材によって吐出弁の欠落を検出することができる吐出弁構造の誤欠品検査方法及び吐出弁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る吐出弁構造の一例を示す斜視図である。
【
図5】弁押さえと吐出弁とを組立冶具にセットした状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5の状態を別の角度から見た斜視図である。
【
図7】組立冶具を用いた誤欠品検査方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図11】位置決めピンを用いた誤欠品検査方法の別の例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0021】
図1は、本実施形態に係る吐出弁構造の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1の吐出弁構造の平面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。
図4は、
図3のB部分拡大図である。
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る吐出弁構造1について説明する。
【0022】
本実施形態に係る吐出弁構造1は、
図1~
図4に示すように、圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切るとともに、圧縮室と吐出室を連通する吐出孔が設けられた仕切り壁12と、吐出孔を吐出室側で吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有する吐出弁20と、吐出弁20に覆いかぶさるように設けられ、吐出弁20の開度を規制する弁押さえ30と、吐出孔を覆う部分から外れた位置において、弁押さえ30に貫設された挿通孔と吐出弁20に貫設された挿通孔を挿通して仕切り壁12に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルト40と、を備え、弁押さえ30は固定ボルト40の挿通孔と別に、検査孔33を有し、吐出弁20は弁押さえ30の検査孔33が対応する領域内に、少なくともその吐出弁20の一部又は全部が入り込むようにした構造を有する。
【0023】
圧縮機は、例えば、スクロール型圧縮機、ロータリ型圧縮機又はピストン型圧縮機である。
図1~
図4では、一例としてスクロール圧縮機の吐出弁構造を示したが本発明はこれに限定されない。
【0024】
仕切り壁12は、圧縮室と吐出室とを仕切る壁であり、吐出孔(不図示)を有する。圧縮室は、圧縮機の内部空間のうち、冷媒を圧縮する空間である。吐出室は、圧縮機の内部空間のうち、圧縮室で圧縮された冷媒が流入する空間である。吐出孔は、圧縮室と吐出室とを連通させる冷媒の通路である。例えば、
図1~
図4に示すように圧縮機がスクロール圧縮機である場合、仕切り壁12は、固定スクロール11の鏡板である。また、圧縮機がローリングピストン式ロータリ圧縮機である場合、仕切り壁12は、密閉容器の主軸受を形成する側板である。スライドベーン式ロータリ圧縮機である場合、仕切り壁12は、シリンダブロックである。圧縮機がピストン圧縮機である場合、仕切り壁12は、弁板である。
【0025】
仕切り壁12は、固定ボルト40の締結用のネジ穴(不図示)を有する。ネジ穴は、仕切り壁12の表面に設けられた窪みであることが好ましい。
【0026】
吐出弁20は、吐出孔の吐出室側の開口を覆うように配置される。吐出弁20は、冷媒の流れを圧縮室から吐出室への一方向とし、冷媒が吐出室から圧縮室に逆流することを防止する逆止弁である。吐出弁20は、
図1に示すように、一端部が固定端20aとされ、他端部が自由端20bとされた板状のリード弁であることが好ましい。
【0027】
吐出弁20は、吐出孔を覆う部分から外れた位置に、吐出弁20の板厚方向に貫通する挿通孔(不図示)を有する。挿通孔は、固定ボルト40の挿入用孔である。固定ボルト40の挿入用孔は、吐出弁20が開の時に仕切り壁12に密着する部分に設けられることが好ましい。
【0028】
弁押さえ30は、
図1~
図4に示すように、平坦部31と平坦部31に連接する湾曲部32とを有する板状部材である。平坦部31は、吐出弁20の表面のうち、吐出弁20が開の時に仕切り壁12に密着する部分を覆う。湾曲部32は、吐出弁20の表面のうち、吐出弁20が開の時に仕切り壁12から離れる部分を覆う。湾曲部32の湾曲度合いによって、吐出弁20の浮上量、すなわち開度が規制される。
【0029】
弁押さえ30は、吐出弁20の固定ボルト40の挿入用孔に対応する位置に、弁押さえ30の板厚方向に貫通する挿通孔(不図示)を有する。挿通孔は、固定ボルト40の挿入用孔である。固定ボルト40の挿入用孔は、平坦部31に設けられることが好ましい。
【0030】
固定ボルト40は、弁押さえ30と吐出弁20とを仕切り壁12に固定する締結部材である。
【0031】
吐出弁構造1は、仕切り壁12と、吐出弁20と、弁押さえ30と、固定ボルト40と、を備えた組立構造を有する。組立構造では、吐出弁20と弁押さえ30とが重ねられた状態で1本の固定ボルト40によって仕切り壁12に固定されている。
【0032】
また、吐出弁構造1は、弁押さえ30が検査孔33を有すると共に、吐出弁20の検査孔33が対応する領域には、少なくとも吐出弁20の一部又は全部が入り込んでいる検査構造を有する。
【0033】
検査孔33は、弁押さえ30の板厚方向に貫通する貫通孔であり、固定ボルト40の挿入用孔とは別の孔である。検査孔33は、
図1又は
図2に示すように、平坦部31に設けられることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る吐出弁構造1では、検査孔33は、検査部材の挿入用孔である形態を包含する。検査部材は、検査孔33に挿入可能な形状であればよく、例えば、針状又は棒状である。
【0035】
吐出弁20の弁押さえ30の検査孔33に対応する領域内に、少なくともその吐出弁20の一部又は全部が入り込むとは、吐出弁20と弁押さえ30とを仕切り壁12に固定したとき、弁押さえ30の検査孔33と仕切り壁12との間に吐出弁20が介在する状態をいい、例えば、吐出弁20が検査孔33に対応する領域に検査部材が入り込む大きさの孔を有さない形態、又は吐出弁20が検査孔33に対応する領域に検査部材が入り込まない大きさの孔を有する形態を包含する。
【0036】
吐出弁20は、吐出弁20の弁押さえ30の検査孔33に対応する領域に凹凸を有さないことが好ましい。これによって、検査部材を弁押さえ30の検査孔33に挿入した時、検査部材が凹凸に当たることがないので、吐出弁20の誤欠品をより確実に確認することができる。
【0037】
本実施形態に係る吐出弁構造1では、仕切り壁12は、
図3又は
図4に示すように、検査孔33と対応する領域に凹部13を有することが好ましい。これによって、吐出弁20の欠品の有無の違いによる検査部材の挿入深さの違いがより大きくなるため、吐出弁20の欠品をより確実に検出することができる。
【0038】
図15は、
図2のA-A線断面図の変形例である。本実施形態に係る吐出弁構造1では、
図15に示すように、凹部13は検査孔33よりも対応する領域が大きいことが好ましい。これによって、吐出弁20が欠品しているとき、検査部材が、凹部13により確実に入り込むため、吐出弁20の欠品をより確実に検出することができる。
【0039】
仕切り壁12、吐出弁20及び弁押さえ30は、
図3又は
図4に示すように、相互の位置関係を決める位置決め孔14,21,34をそれぞれ有することが好ましい。
【0040】
仕切り壁12に設けられた位置決め孔14は、仕切り壁12の表面に設けられた窪みであることが好ましい。ここで、窪みとは貫通しない穴をいう。また、位置決め孔14は、固定ボルト40の締結用のネジ穴とは別の穴であるか、又は固定ボルト40の締結用のネジ穴と同じ穴であってもよい。
【0041】
吐出弁20に設けられた位置決め孔21は、吐出弁20の板厚方向に貫通する貫通孔である。位置決め孔21は、吐出弁20が開の時に仕切り壁12に密着する部分に設けられることが好ましい。また、位置決め孔21は、固定ボルト40の挿入用孔とは別の孔であるか、又は固定ボルト40の挿入用孔と同じ孔であってもよい。
【0042】
弁押さえ30に設けられた位置決め孔34は、弁押さえ30の板厚方向に貫通する貫通孔である。位置決め孔34は、平坦部31に設けられることが好ましい。位置決め孔34は、検査孔33とは別の孔である。また、位置決め孔34は、固定ボルト40の挿入用孔とは別の孔であるか、又は固定ボルト40の挿入用孔と同じ孔であってもよい。
【0043】
次に、吐出弁構造の誤欠品検査方法を説明する。
【0044】
本実施形態に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法は、圧縮機の吐出弁構造1の誤欠品検査方法であって、吐出弁構造1は、
図1~
図4に示すように、(1)圧縮機の圧縮室と吐出室を仕切ると共に、圧縮室と吐出室を連通する吐出孔を有する仕切り壁12と、吐出孔を吐出室側で吐出孔を開閉する様に設けられた弾性を有す吐出弁20と、吐出弁20に覆いかぶさるように設けられ、吐出弁20の開度を規制する弁押さえ30と、吐出孔を覆う部分から外れた位置において、弁押さえ30に貫設された挿通孔と吐出弁20に貫設された挿通孔を挿通して仕切り壁12に設けられたネジ穴に螺合する固定ボルト40と、を備えた組立構造と、(2)弁押さえ30は検査部材を挿入するための検査孔33を有すると共に、吐出弁20の検査孔33が対応する領域には、少なくとも吐出弁20の一部又は全部が入り込んでいる検査構造とを有し、検査孔33に検査部材(不図示)を挿入し、検査部材の挿入深さによって、吐出弁20の欠品有無を検査する。
【0045】
本実施形態に係る吐出弁構造は検査構造を有する。これによって、吐出弁構造1では、
図4に示すように、検査孔33と仕切り壁12との間に、吐出弁20が介在することとなる。このため、吐出弁20が存在するときは、検査部材の先端が当接するまで検査孔33に挿入すると、検査部材が吐出弁20に突き当たり、挿入深さは弁押さえ30の厚さ相当の深さになる。これに対して、吐出弁20が欠落するときは、検査部材の先端が当接するまで検査孔33に挿入すると、検査部材が仕切り壁12まで到達するか、又は仕切り壁12に凹部13があるときは凹部13に挿入されるので、挿入深さは弁押さえ30の厚さよりも深くなる。このように、挿入深さの相対的な違いによって、吐出弁20の欠品の有無を検出することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法は、吐出弁構造の誤組立も検出することができる。より具体的には、
図1~
図4に示すように、吐出弁構造では、仕切り壁12側から順に吐出弁20と弁押さえ30とが配置されるべきところ、誤って仕切り壁12側から順に弁押さえ30と吐出弁20とが配置されてしまったとする。この場合、検査部材は吐出弁20に当接して、検査部材の挿入深さは弁押さえ30の厚さよりも浅くなる。これによって、誤組立であることを検出することができる。
【0047】
本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、組立構造を完成させたのち、吐出弁20の有無を検査することが好ましい。これによって、固定ボルト40によって吐出弁20と弁押さえ30とが仕切り壁12に固定された状態で検査することとなるので、より確実に正しい組立構造の吐出弁構造を提供することができる。
【0048】
次に、
図5~
図10を参照して、組立冶具を用いた誤欠品検査方法の一例を説明する。
【0049】
本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、圧縮機の仕切り壁12、吐出弁20及び弁押さえ30は、相互の位置関係を決める位置決め孔14,21,34(
図3又は
図4に図示)を有し、
図5又は
図6に示すように、位置決め孔14,21,34に挿入するための位置決め凸部61が設けられた組立治具60を用意し、組立構造を組み立てる工程が、(1)組立冶具60の位置決め凸部61が位置決め孔21,34に挿入される状態となるように、弁押さえ30及び吐出弁20を組立冶具60にセットする配置工程と、(2)
図7~
図10に示すように、仕切り壁12の位置決め孔14(
図9又は
図10に図示)に組立冶具60の位置決め凸部61を挿入し、弁押さえ30と吐出弁20がセットされた組立冶具60を組み合わせる組立工程と、(3)検査孔63,33に検査部材50を挿入する検査工程と、を含み、検査工程において、吐出弁20の有無を検査することが好ましい。
【0050】
組立冶具60は、
図5又は
図6に示すように、一方の表面に突設された位置決め凸部61を有する部材である。位置決め凸部61の形状は、位置決め孔14,21,34に挿入可能であればよく、特に限定されない。
【0051】
組立冶具60は、弁押さえ30の固定ボルト40の挿入用孔及び吐出弁20の固定ボルト40の挿入用孔22(
図5又は
図6に図示)を覆わないことが好ましい。このような形態は、例えば、組立冶具60が、
図5~
図8に示すように、弁押さえ30の固定ボルトの挿入用孔及び吐出弁20の固定ボルト40の挿入用孔22(
図5又は
図6に図示)に対応する位置に固定ボルト40の締結作業用孔62を有するか、又は組立冶具60が、弁押さえ30の固定ボルトの挿入用孔及び吐出弁20の固定ボルト40の挿入用孔22(
図5又は
図6に図示)に対応する位置に切り欠き(不図示)を有していてもよい。
【0052】
組立冶具60は、
図7又は
図8に示すように、弁押さえ30の検査孔33に対応する位置に検査孔63を有することが好ましい。
【0053】
配置工程では、位置決め孔21,34に位置決め凸部61を挿入して、組立冶具60側から順に、弁押さえ30と吐出弁20となるように重ねてセットする。
【0054】
組立工程では、弁押さえ30と吐出弁20とがセットされた組立冶具60を
図5又は
図6に示す状態から裏返して、
図7~
図10に示すように、仕切り壁12に載置し、仕切り壁12の位置決め孔14(
図9又は
図10に図示)に組立冶具60の位置決め凸部61を挿入する。
【0055】
組立構造を組み立てる工程は、検査工程後、検査結果がOKであった物について、固定ボルト40で弁押さえ30と吐出弁20とを仕切り壁12に締結固定する工程を行うことが好ましい。これによって、OK品だけが固定ボルト40を有することとなるので、吐出弁20の欠品又は誤組立を検出されたNG品をより確実に排除することができる。また、NG品について吐出弁20の配置、又は組立直しをより速やかに行うことができる。
【0056】
検査工程では、組立冶具60を仕切り壁12に組み合わせた状態のまま、検査部材50を組立冶具60の検査孔63から挿入することが好ましい。そして、検査工程において、吐出弁構造1の組付けが正しいことが確認された後、組立冶具60を取り外す工程を行うことが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、
図1、
図2、
図5又は
図6に示すように、吐出弁20及び弁押さえ30が位置決め用の切欠き部25(
図5及び
図6に図示),35(
図1及び
図2に図示)を有し、かつ、仕切り壁12が切欠き部25,35に対応する位置に位置決め孔15を有することが好ましい。さらに、組立治具60が、
図5及び
図6に示すように、位置決め孔15に挿入するための位置決め凸部64を有することが好ましい。そして、配置工程が、組立冶具60の位置決め凸部64が位置決め用の切欠き部25,35に係合される状態となるように、弁押さえ30及び吐出弁20を組立冶具60にセットする工程を更に有し、組立工程が、仕切り壁12の位置決め孔15(
図1又は
図2に図示)に組立冶具60の位置決め凸部64を挿入し、弁押さえ30と吐出弁20がセットされた組立冶具60を組み合わせる工程を更に有することが好ましい。吐出弁20及び弁押さえ30の位置決めを2本の位置決め凸部61,64で行うことで、より正確に位置決めすることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、位置決め凸部61の位置決め孔14,32,34への挿入に加えて、固定ボルト40を吐出弁20の固定ボルトの挿入用孔22(
図5又は
図6に図示)、弁押さえ30の固定ボルトの挿入用孔(不図示)及び固定ボルト40の締結用のネジ穴(不図示)に挿入することによって位置決めを行ってもよい。吐出弁20及び弁押さえ30の位置決めを位置決め凸部61及び固定ボルト40の2か所で行うことで、より正確に位置決めすることができる。
【0059】
次に、
図11~
図14を参照して、位置決めピンを用いた誤欠品検査方法の別の例を説明する。
【0060】
本実施形態に係る吐出弁構造の誤欠品検査方法では、圧縮機の仕切り壁12、吐出弁20及び弁押さえ30は、相互の位置関係を決める位置決め孔14,21,34(
図3又は
図4に図示)を有し、位置決め孔14,21,34に挿入するための円柱状の位置決めピン51を用意し、
図11~
図14に示すように、組立構造を組み立てる工程が、仕切り壁12の位置決め孔14に位置決めピン51の一端51a(
図13又は
図14に図示)を挿入するピン設置工程と、仕切り壁12から突出した位置決めピン51の他端51bに吐出弁20及び弁押さえ30の位置決め孔21,34を挿通させる配置工程と、検査部材50を検査孔33に挿入する検査工程と、を含み、検査工程において、吐出弁20の有無を検査することが好ましい。
【0061】
位置決めピン51は、円柱状の部材であることが好ましい。位置決めピン51を円柱状とすることで、他形状よりピンを挿す位置決め孔14の製作が容易となり、また位置決め孔に対応するピン51の製作が容易にできる。
【0062】
位置決めピン51の直径は、仕切り壁12の位置決め孔14の直径の99~100%であることが好ましく、99.3~99.5%であることがより好ましい。これによって、位置決めピン51のぐらつきを防止できるため、ピン設置工程において位置決めピン51をより確実に設置することができる。
【0063】
位置決めピン51の直径は、吐出弁20の位置決め孔21の直径の95~98%であることが好ましく、96~97%であることがより好ましい。また、位置決めピン51の直径は、弁押さえ30の位置決め孔34の直径の95~98%であることが好ましく、96~97%であることがより好ましい。これによって、配置工程において吐出弁20及び弁押さえ30をより確実に配置することができる。
【0064】
組立構造を組み立てる工程は、検査工程後、検査結果がOKであった物について、固定ボルト40で弁押さえ30と吐出弁20とを仕切り壁12に締結固定する工程を行うことが好ましい。これによって、OK品だけが固定ボルト40を有することとなるので、吐出弁20の欠品又は誤組立を検出されたNG品をより確実に排除することができる。また、NG品について吐出弁20の配置、又は組立直しをより速やかに行うことができる。
【0065】
位置決めピン51を取り外す工程は、固定ボルト40を締結固定する工程の後に行うことが好ましい。
【0066】
本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、
図11及び
図12に示すように、吐出弁20及び弁押さえ30が位置決め用の切欠き部35を有し、かつ、仕切り壁12が切欠き部35に対応する位置に位置決め孔15を有することが好ましい。そして、位置決め孔15に挿入するための円柱状の位置決めピン52を用意し、
図11及び
図12に示すように、ピン設置工程が、仕切り壁12の位置決め孔15に位置決めピン52を挿入する工程を更に有し、配置工程が、仕切り壁12から突出した位置決めピン51に吐出弁20及び弁押さえ30の切欠き部35を係合させる工程を更に有することが好ましい。吐出弁20及び弁押さえ30の位置決めを2本の位置決めピン51,52で行うことで、より正確に位置決めすることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る吐出弁構造1の誤欠品検査方法では、位置決めピン51の位置決め孔14,32,34への挿入に加えて、固定ボルト40を吐出弁20の固定ボルトの挿入用孔、弁押さえ30の固定ボルトの挿入用孔及び固定ボルト40の締結用のネジ穴に挿入することによって位置決めを行ってもよい。吐出弁20及び弁押さえ30の位置決めを位置決めピン51及び固定ボルト40の2か所で行うことで、より正確に位置決めすることができる。
【0068】
本実施形態に係る誤欠品検査方法は、弁押さえ30と吐出弁20の輪郭に対応する輪郭孔を設けた冶具プレート(不図示)を用意し、組立構造を組み立てる工程が、仕切り壁12の上の所定の位置に冶具プレートを設置する治具設置工程と、冶具プレートの輪郭孔をガイドとして仕切り壁12の上に吐出弁20及び弁押さえ30をのせる配置工程と、検査部材50を検査孔33に挿入する検査工程と、を含み、検査工程において、吐出弁20の有無を検査する形態を包含する。この形態では、例えば
図5~
図10に示すような組立冶具60又は
図11~
図14に示すような位置決めピン51を用いずに、冶具プレートの輪郭孔に吐出弁20及び弁押さえ30を嵌め合わせることで位置決めを行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 吐出弁構造
11 固定スクロール
12 仕切り壁
13 凹部
14,15 位置決め孔
20 吐出弁
20a 固定端
20b 自由端
21 位置決め孔
22 固定ボルトの挿入用孔
25 切欠き部
30 弁押さえ
31 平坦部
32 湾曲部
33 検査孔
34 位置決め孔
35 切欠き部
40 固定ボルト
50 検査部材
51,52 位置決めピン
51a 位置決めピンの一端
51b 位置決めピンの他端
60 組立治具
61,64 位置決め凸部
62 固定ボルトの締結作業用孔
63 検査孔