(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】トリプタミド組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20221121BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/385 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/4748 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/592 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20221121BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20221121BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20221121BHJP
A61K 36/16 20060101ALI20221121BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61K31/343
A61K31/375
A61K31/385
A61K31/4415
A61K31/4748
A61K31/519
A61K31/522
A61K31/592
A61K31/593
A61K31/714
A61K33/04
A61K33/06
A61K36/16
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2017539513
(86)(22)【出願日】2015-10-15
(86)【国際出願番号】 US2015055745
(87)【国際公開番号】W WO2016061357
(87)【国際公開日】2016-04-21
【審査請求日】2018-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2014-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517132762
【氏名又は名称】シグナム バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ストック, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ストック, マクスウエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロンコウ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス, ホセ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー, クリステン
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】鳥居 敬司
【審判官】前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518196(JP,A)
【文献】特表2013-539788(JP,A)
【文献】米国特許4168324第(US,A)
【文献】国際公開第2014/126596(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/121381(WO,A1)
【文献】Neurobiology of Aging,2014,Vol.35,p.2701-2712
【文献】Braz.J.Plant.Physiol.,2006,Vol.18(1),p.201-216
【文献】Neurotherapeutics,2013,Vol.10,p.143-153
【文献】J.Agric.Food.Chem.,1979,Vol.27(1),p.12-15
【文献】Basurto-Islas,G. et al.,Therapeutic benefits of a component of coffee in a rat model of Alzheimer’s disease,Neurobiology of Aging,2014,p.2701-2712
【文献】Lee,K.W. et al.,Neuroprotective and Anti-inflammatory Properties of a Coffee Component in the MPTP Model of Parkinson’s Disease,Neurotherapeutics,2013,Vol.10,p.143-153
【文献】Speer,K. et al.,The lipid fraction of the coffee bean,Brazilian Journal of Plant Physiology,2006,Vol.18,No.1,p.201-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80, A61K 36/00-36/9068
REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CAPlus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプタミド、ジテルペン及びカフェインを含む
コーヒーワックス抽出物を含む組成物であって、該トリプタミドは下記式(I)で表され、式(I)中のnが18以上である溶出の遅いトリプタミド:式(I)中のnが18より小さい溶出の早いトリプタミドの重量比が少なくとも約7:1で溶出の遅いトリプタミドと溶出の早いトリプタミドの混合物を含み、組成物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも30%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含み、
組成物中のジテルペンの量が約
2mg/k
gより少なく、組成物の総重量に基づき、カフェインの量が約5%を超えない、組成物。
【請求項2】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約8:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約9:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約10:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約25:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約50:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約75:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも約100:1の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも35%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも40%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも45%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも50%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を含む製剤。
【請求項14】
製剤の一回量又は単位用量当たり10mgより少ないカフェインを含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
製剤の一回量又は単位用量当たり2mgより少ないカフェインを含む、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
製剤の一回量又は単位用量当たり約0.12mgより少ないカフェストールを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
製剤の一回量又は単位用量当たり約0.06mgより少ないカーウェオール(Kaweol)を含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
製剤が固体投与形態である、請求項13から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
固体投与形態が錠剤、カプセル、サシェ、粉末及び固形製剤の形態からなる群より選択される、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
製剤が液体投与形態である、請求項13から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
液体投与形態が飲料、シロップ、懸濁液、乳液、チンキ剤、エリキシル剤、茶及び発泡性製剤からなる群より選択される請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
ビタミン、微量元素、食品又は健康補助食品、ハーブ抽出物、及び薬物の一又は複数を更に含む、請求項13から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
ビタミンD、ビタミンB
6、ビタミンB
9、ビタミンB
12及びビタミンCより選択される一又は複数のビタミンを含む、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
ビタミンD、ビタミンB
6及びビタミンB
12を含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
マグネシウム及びセレンより選択される一又は複数の微量元素を含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
アルファリポ酸及びフペルジンAより選択される一又は複数の健康補助食品を含む、請求項22から25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
イチョウ葉を含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
単位用量の形態である、請求項13から27のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
単位用量が約250マイクログラムから約5mgのビタミンB
6を含む、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
単位用量が約1mgから約2mgのビタミンB
6を含む、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
単位用量が約50マイクログラムから約1mgのビタミンB
9を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
単位用量が約200マイクログラムから約600マイクログラムのビタミンB
9を含む、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
単位用量が約1マイクログラムから約100マイクログラムのビタミンB
12を含む、請求項28から32のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項34】
単位用量が約5マイクログラムから約15マイクログラムのビタミンB
12を含む、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
単位用量が約250IUから約6000IUのビタミンDを含む、請求項28から34のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
単位用量が約750IUから約2500IUのビタミンDを含む、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
単位用量が約500マイクログラムから約100mgのマグネシウムを含む、請求項28から36のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項38】
単位用量が約8mgから約24mgのマグネシウムを含む、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
単位用量が約1マイクログラムから約500mgのセレンを含む、請求項28から38のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
単位用量が約40マイクログラムから約100マイクログラムのセレンを含む、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
単位用量が約1mgから約1.3gのアルファリポ酸を含む、請求項28から40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
単位用量が約25mgから約75mgのアルファリポ酸を含む、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
単位用量が約1mgから約1gのフペルジンAを含む、請求項28から42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項44】
単位用量が約25mgから約75mgのフペルジンAを含む、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
単位用量が約1mgから約100mgの請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を含む、請求項28から44のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
単位用量が約10mgから約60mgの請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を含む、請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
ビタミンD、ビタミンB
6、ビタミンB
12、マグネシウム、セレン、及びフペルジンAを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
ビタミンB
9を更に含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
イチョウ葉を更に含む、請求項47又は48に記載の組成物。
【請求項50】
そのような治療を必要としている対象において外傷性脳損傷を治療するための医薬であって、請求項47から49のいずれか一項に記載の組成物の有効量又は請求項13から46のいずれか一項に記載の製剤の有効量を含む、医薬。
【請求項51】
そのような治療を必要としている対象において慢性外傷性脳症を治療するための医薬であって、請求項47から49のいずれか一項に記載の組成物の有効量又は請求項13から46のいずれか一項に記載の製剤の有効量を含む、医薬。
【請求項52】
組成物又は製剤が、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドの有効量を含む、請求項50に記載の医薬。
【請求項53】
組成物又は製剤が、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドの有効量を含む、請求項51に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、どちらも参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる、2014年10月15日出願の米国仮特許出願第62/063,983号及び2015年2月27日出願の同第62/121,711号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、とりわけ、溶出の早いトリプタミドと溶出の遅いトリプタミドの混合物を含む抽出物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
トリプタミドはタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)を調節し、脳の健康及びその様々な認知機能を高める。現在、トリプタミド、より具体的にはエイコサノイル、ドコサノイル及びテトラコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは、コーヒー及びココア製品に微量に含まれるため、単独ではない形態で、食餌に取り込むことが可能である。
【0004】
より具体的には、ロブスタコーヒーノキの豆は565-1120mg/kg、アラビカコーヒーノキの豆は500-2370mg/kgの総トリプタミドを含み得る(Maier, 1981)。しかしながら、食用のコーヒーは、一杯当たり総量0.6-0.8mgのみのトリプタミドを含む水性抽出物の形態で提供され得る。総トリプタミドは、少なくともそれぞれ40%、41%及び3%のエイコサノイル、ドコサノイル及びテトラコサノイルトリプタミドを有し、13.26%の溶出の早いトリプタミドと86.74%の溶出の遅いトリプタミドとを含み得る。
【0005】
一般的なコーヒー飲料中のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドのレベルは、下記表1に示される。市販のコーヒー飲料を一杯消費することにより、0.6から0.72mgのエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドを得ることができる。
表1
【0006】
更に、コーヒーに含まれるカフェストール及びカーウェオール等の特定のジテルペンは、対象に投与されるとコレステロール高値の助長に関連しており、男性では少なくとも8%の増加及び女性では少なくとも10%の増加を示している。実際に、コーヒーは、最大で0.6-1%のジテルペン、言い換えるとコーヒー一杯当たり3-7mgのジテルペンを含む。文献は、一日当たりそれぞれ10mgのジテルペンを消費することにより、血清コレステロールを5mg/dL上昇させ得ると示す。したがって、長期的な神経保護に必要最低限とみられる一日3-5杯のコーヒーは、特に、既存の心血管疾患、喫煙、座っていることの多いライフスタイル及び遺伝要因等の高コレステロール及び/又はその他心血管疾病になりやすい基礎疾患を有する対象には、いくつかの心血管の易罹病性が考えられ得る。
【0007】
更に、コーヒーは一杯当たり50-436mgの量でかなりの量のカフェインを含み、カフェイン抜きのコーヒーは一杯当たり約2-25mgを含む(http://www.cspinet.org/new/cafchart.htm)。カフェインは、既に高血圧を患っている対象において血圧を上昇させる、不眠症、痛風、消化不良、頭痛、尿失禁を引き起こす、及び女性において繁殖力を低下させるとして知られている。カフェインの過剰摂取は、特に基礎疾患を有する対象においては死を含む有害な症候をもたらし得る(http://www.caffeineinformer.com/harmful-effects-of-caffeine)。
【0008】
同様に、ココアリキュール製品は40.1mg/kg又は一杯当たり約1.6mgの総トリプタミドを含む。トリプタミドの大部分が、残念なことに、ドコサノイル及びテトラコサノイル誘導体から成る一方、ココア製品は生物学的に有意な量のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドを含まず、神経変性、パーキンソン病及びアルツハイマー病の様々なモデルに有効性が証明されている。
【0009】
トリプタミドの全ての利点を含むが、高コレステロール値及び高血圧等の悪影響のない組成物の必要性が依然として存在する。
【0010】
興奮毒性細胞死を予防し得る追加の治療剤の必要性も依然として存在する。米国だけでも年間1.7百万を超える個人が外傷性脳損傷(TBI)に罹患している(2010年秋)。TBIのリスクグループは、軍人、スポーツ選手、自動車事故被害者及び家庭内暴力被害者を含むがこれらに限定されない(Hoge 2008; DeKosky 2010; McKee 2009; Valera 2003)。慢性外傷性脳症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患及び認知症等の疾患に関連している(Mortimer 1991; Flemming 2000; goldman 2006; Ben-Shlomo 1997; Chen 2007; Schmidt 2010)。受傷後の観察は、グルタメートのレベルが2.8倍増加することを示している(Faden 1989, Globus, 1995)。過度のグルタメート曝露の下流効果は、最終的に興奮毒性細胞死を生じさせるCa2+の流入、酸化的ストレス及び細胞傷害を引き起こすAMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸)受容体、NMDA(N-メチル-D-アスパルギン酸)受容体、及びグルタメート受容体の過活性化である。この種の二次的損傷は、疾患の介入に対する標的となってきた。例えば、非毒性の、非精神異常発現薬である、NMDA受容体アンタゴニストであるメマンチンは、神経保護作用があり、アルツハイマー病及びパーキンソン病の治療法として使用されてきた(Kornhuber 1994; Emre 2010; Merello 1999; Reisberg 2003)。それでもなお、追加治療が役に立つであろう。
【0011】
本発明は、これらのアンメットニーズに応えようとするものである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様は、溶出の遅いトリプタミド:溶出の早いトリプタミドが少なくとも7:1の重量比で溶出の遅いトリプタミドと溶出の早いトリプタミドの混合物を含み、EHT抽出物中のトリプタミドの総重量に基づき、少なくとも30%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含むEHT抽出物を提供する。特定の実施態様において、EHT抽出物中のカフェインの量は、抽出物の総重量に基づき、約15%を超えず、且つ/又は抽出物中のジテルペンの量は約1mg/kgより少ない。
【0013】
EHT抽出物組成物とも称されるEHT抽出物を含む組成物もまた提供される。EHT抽出物組成物は、ビタミン、微量元素、食品又は健康補助食品、ハーブ抽出物、及び薬物の一又は複数を更に含み得る。特定の実施態様において、EHT抽出物組成物は、ビタミン、微量元素、及び食品又は健康補助食品を含む。その他の実施態様において、EHT抽出物組成物は、ビタミン、微量元素、食品又は健康補助食品及びハーブ抽出物を含む。
【0014】
一実施態様において、本発明は、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、380-420mcgのフォレート(葉酸)、8-12mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、及び70-80mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の固形単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、400mcgのフォレート(葉酸)、10mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、16mgのマグネシウム、及び75mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)、フォレート(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、マグネシウム、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、1800-2200IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、8-12mcgのビタミンB12(メチルコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、68-72mcgのセレン(セレノメチオニン)、48-52mgのアルファリポ酸、48-52mcgのフペルジンA、及び30-40mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、2000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、10mcgのビタミンB12(メチルコバラミン)、16mgのマグネシウム、70mcgのセレン(セレノメチオニン)、50mgのアルファリポ酸、50mcgのフペルジンA、及び35mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)、ビタミンB12(メチルコバラミン)、マグネシウム、セレン(セレノメチオニンとして)、アルファリポ酸、フペルジンA、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、1800-2200IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、380-420mcgのフォレート(葉酸)、8-12mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、68-72mcgのセレン(セレノメチオニン)、48-52mgのアルファリポ酸、48-52mcgのフペルジンA、及び30-40mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、2000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、400mcgのフォレート(葉酸)、10mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、16mgのマグネシウム、70mcgのセレン(セレノメチオニン)、50mgのアルファリポ酸、50mcgのフペルジンA、及び35mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)、フォレート(葉酸)、ビタミンB12(メチルコバラミン)、マグネシウム、セレン(セレノメチオニン)、アルファリポ酸、フペルジンA、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、800-1000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、8-12mcgのビタミンB12(メチルコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、68-72mcgのセレン(セレノメチオニン)、98-102mgのイチョウ葉抽出物粉末、48-52mgのアルファリポ酸、及び30-40mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、1000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、10mcgのビタミンB12(メチルコバラミン)、16mgのマグネシウム、70mcgのセレン(セレノメチオニン)、100mgのイチョウ葉抽出物粉末、50mgのアルファリポ酸、及び35mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンB6(ピリドキシンHClとして)、ビタミンB12(メチルコバラミン)、マグネシウム、セレン(セレノメチオニンとして)、イチョウ葉抽出物粉末、アルファリポ酸、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0018】
別の実施態様において、本発明は、800-1000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、8-12mcgのビタミンB12(メチルコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、68-72mcgのセレン(セレノメチオニン)、48-52mgのアルファリポ酸、及び30-40mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、1000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHCLとして)、10mcgのビタミンB12(メチルコバラミンとして)、16mgのマグネシウム、70mcgのセレン(セレノメチオニン)、50mgのアルファリポ酸、及び35mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)、ビタミンB12(メチルコバラミン)、マグネシウム、セレン(セレノメチオニン)、アルファリポ酸、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0019】
別の実施態様において、本発明は、1800-2200IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、34-39mgのビタミンC、1.4-1.8mgのビタミンB6(ピリドキシンHCl)、8-12mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、14-18mgのマグネシウム、82-86mcgのセレン(セレン酵母)、135-139mgのイチョウ葉抽出物粉末、及び30-40mgのEHT抽出物を含む製剤(例えば、錠剤等の単位用量)を提供する。別の実施態様において、製剤は、2000IUのビタミンD(コレカルシフェロール)、36.36mgのビタミンC、1.6mgのビタミンB6(ピリドキシンHClとして)、10mcgのビタミンB12(シアノコバラミン)、16mgのマグネシウム、84mcgのセレン(セレン酵母)、137.50mgのイチョウ葉抽出物粉末、及び35mgのEHT抽出物を含む。他の実施態様において、製剤は、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンC、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、マグネシウム、セレン(セレン酵母)、イチョウ葉抽出物粉末、及びEHT抽出物から成る又は基本的に成る。
【0020】
本発明の別の態様は、外傷性脳損傷又は脳症を治療する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、本明細書中の組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の組成物のHPLC分析を表す。対応するトリプタミドのレベルは表2で数量化され、記載される。
【
図2】短期的TBIはpTauレベルにおける増加を引き起こすこと及び長期的TBIはPP2A脱メチル化を引き起こすことを表す。
【
図3】GFAPはTBI及びCTEに対するバイオマーカーとして機能すること並びに動物に食餌として予想外に投与されるEHTはTBI後のネズミの脳におけるGFAPを低下させることを示す。
【
図4】用量依存的方法におけるEHT抽出物を用いた治療の際に観察されるグルタメートにより誘導される減少した神経細胞傷害性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本項(又は本出願の他の項)における見出し及び小見出しは、参照の便宜を図るためのみのものであり、限定を意図するものではない。
【0023】
定義
本明細書中で使用される場合、トリプタミドとは式(I):
に包含される化合物を指す。
[上式中、nは14-22であり、(CH
2)
n基における一又は複数のCH
2基がCHで置換されていて、一又は複数の二重結合を提供してもよい。]
【0024】
本明細書中で使用される場合、溶出の早いトリプタミドとは、上に定義される通り、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドより前に逆相カラム上に溶出するトリプタミドを指す。アルキル鎖中20より少ない総数の炭素を有するトリプタミド(即ち、式(I)中のnが18より小さい)は、溶出の早いトリプタミドである。通常、溶出の早いトリプタミドは<40℃の融点を有し、バター様の硬さを有する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、溶出の遅いトリプタミドとは、上に定義される通り、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドより後に逆相カラム上に溶出するトリプタミドを指し、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドそれ自体を含む。アルキル鎖中20以上の総数の炭素を有するトリプタミド(即ち式(I)中のnが18以上)は、溶出の遅いトリプタミドである。エイコサノイル、ドコサノイル及びテトラコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドはすべて溶出の遅いトリプタミドの例であり、それらは溶出の早いトリプタミドより後に逆相カラム上に溶出する。通常、溶出の遅いトリプタミドは>40℃の融点を有し、固体である。
【0026】
例えば、下記のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは溶出の遅いトリプタミドであり、アルキル鎖中の炭素の総数は20である:
【0027】
下記のN-(2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル)ステアラミド又は「18-5HT」は、溶出の早いトリプタミドであり、アルキル鎖中の炭素の総数は18である:
【0028】
本明細書中で使用される場合、ジテルペンとは式(II):
に包含される化合物を指す。
[ここで、破線はあってもなくてもよい。]
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「EHT抽出物」とは、溶出の早いトリプタミドと溶出の遅いトリプタミドの混合物を含むコーヒー抽出物を指す。特定の実施態様において、EHT抽出物とは、組成物中の全てのトリプタミドの重量に基づき、少なくとも30%、又は35%、40%、45%若しくは50%のエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを有する、少なくとも約1:7、1:8、1:9、1:10、1:25、1:50、1:75及び1:100までの比率の溶出の早いコーヒートリプタミドと溶出の遅いコーヒートリプタミドの混合物を指す。加えて、簡略のため、本明細書中で使用されるEHT抽出物は、EHT抽出物がエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含むあらゆる成分(エイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドを含むコーヒー豆若しくはコーヒーに由来する抽出物等)又はエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドそれ自体(有機出発物質から分離されたか或いは合成的に調製されたかを問わない)を指す他の実施態様を指すと読める。
【0030】
外傷性脳損傷(TBI)は、頭蓋内損傷としても知られ、外力が外傷的に脳を損傷する際に生じる。TBIは、重症度、機序(閉鎖性頭部外傷若しくは穿通性頭部外傷)、又はその他の特徴(例えば、特定の部位若しくは広範囲での発生)により分類され得る。頭部外傷とは、通常、TBIを指すが、頭皮及び頭蓋骨等の脳以外の構造への損傷を含み得るため、より広義のカテゴリーである。TBIは、戦闘、乗馬、軍事訓練、落下、スポーツ(コンタクト及びソロ)、衝撃波曝露(単独又は複数の小規模なもの)、自転車及び自動車事故で被った頭部外傷に関連し得る。
【0031】
慢性外傷性脳症(CTE)は、進行性変性疾患である脳症の一種であり、現在は、複数回の脳震盪及びその他の型の頭部外傷の病歴を有する個人においてのみ、断定的に診断され得る。
【0032】
本開示において使用される場合、用語「有効量」とは、「治療的有効量」と互換性があり、本明細書中に開示される特定の疾患、症状、又は障害を治療するのに有効な化合物若しくは組成物の量又は用量を意味し、「治療する」とは、所望の予防、抑制、軽減、又は改善効果を含む。本発明に基づく治療の方法において、少なくとも一の化合物の「有効量」が対象(例えば哺乳類)に投与される。当業者により理解されるように、「有効量」は、化合物又は組成物、疾患(及びその重症度)、所望の治療、対象の年齢及び体重等により変化するであろう。
【0033】
EHT抽出物は、特定の実施態様において、抽出物の総重量に基づき、約15%、又は10%、又は5%を超えない減量したカフェインを有し得る。特定の実施態様において、EHT抽出物中のカフェインの量は、一回量又は単位用量当たり2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、又は10mgを超えない。
【0034】
更に別の実施態様において、上記のEHT抽出物のうちのいずれか等のEHT抽出物は、減量したジテルペンを有する。例えば、一実施態様において、EHT抽出物は、EHT抽出物1kg当たり約2mg以下のジテルペンを有する。一実施態様において、EHT抽出物は、EHT抽出物1kg当たり約1mg以下のカフェストール、又はEHT抽出物一回量又は単位用量当たり約0.12mgを超えないカフェストールを有する。
【0035】
更なる実施態様において、EHT抽出物は、組成物の一部として、固体投与形態で投与される。例えば、固体投与形態は、錠剤、カプセル、サシェ剤、粉末、又は固形食の形態であり得る。特定の実施態様において、固体投与形態等で投与されるEHT抽出物の量は、一回量又は単位容量当たり1mgから2グラムの間であり得る(例えば、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、250mg、500mg、1g、1.5g、又は2g)。
【0036】
更なる実施態様において、EHT抽出物は、飲料、シロップ剤、懸濁液、乳液、チンキ剤、エリキシル剤、茶、発泡性製剤等の液体投与形態で投与される。例えば、EHT抽出物は液体投与形態で投与され得、組成物中のEHT抽出物の量は、特定の実施態様において、一回量又は単位用量当たり1mg以上及び2グラム未満を提供するようになっている。
【0037】
固体投与形態で投与されるか又は液体投与形態で投与されるかを問わず、EHT抽出物は、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9(葉酸又はフォレート)、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)、微量元素(例えば、ヨウ素、鉄、マグネシウム、クロミウム、カルシウム、セレン、亜鉛、マンガン、カリウム)、食品及び健康補助食品(例えば、N-アセチルL-システイン、アセチルL-カルニチン、S-アデノシルメチオニン、ビンポセチン、フペルジンA、L-テアニン、ホスファチジルセリン、バコパ、プテロスチルベン、L-チロシン、L-グルタミン、バコピン、L-ピログルタミン酸、ホスファチジルセリン、ドコサヘキサエン酸、コリン、イノシトール、N-アセチルチロシン、ガンマ-アミノ酪酸、アクチビン、L-アルファ グリセリルホスホリルコリン、シチコリン、)ハーブ部分(例えば、葉、根、芽、花、茎等)又はハーブ、果物若しくは植物抽出物、(例えば、緑茶抽出物、ビルベリー標準抽出物、ブドウ果皮抽出物、ガラナ抽出物、コーラナッツ抽出物、ペパーミント油、トゥルシー抽出物(ホーリーバジル)、緑茶抽出物、イチョウ葉抽出物、イワベンケイ抽出物、白茶抽出物、紅茶抽出物、オタネニンジン)、薬学的に許容される賦形剤(例えば、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、腸溶コーティング、天然香味料、ゼラチン、二酸化チタン、白米粉、塩、酢酸、EDTA二ナトリウム、ぬか油、植物ろう、ゼラチン、グリセリン、水、着色料(例えば、アナトー、カルミン、イナゴマメ)、セルロース、水、リン酸二カルシウム、薬学的な釉薬、デンプン、マルトデキストリン、植物セルロース、ヒマワリレシチン、ベニバナ油、グリセリン、ヒマワリレシチン、ソルビトール、変性食品デンプン)、及び薬物(例えば、ピラセタム、ADHD治療薬、キサンチン、ニコチン、チアネプチン、コリン作用薬バルプロエート、プラミラセタム、オキシラセタム、コルラセタム、及びアニラセタム)と共に投与され得る。
【0038】
特定の実施態様において、EHT抽出物は、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB9、ビタミンB12及びビタミンCより選択される少なくとも一のビタミンを更に含む組成物(即ち、EHT抽出物組成物)に含まれる。或いは、EHT抽出物組成物は、少なくとも二、又は少なくとも三の、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB9、ビタミンB12及びビタミンCより選択されるビタミンを含み得る。一実施態様において、EHT抽出物組成物は、ビタミンD、ビタミンB6、及びビタミンB12を含む。更なる実施態様において、EHT抽出物組成物は、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12及びビタミンCを含む。更なる実施態様において、EHT抽出物組成物は、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB9及びビタミンB12含む。
【0039】
一実施態様において、ビタミンDはコレカルシフェロール(ビタミンD3)として含まれる。同様に、ビタミンB6はピリドキシンHClとして、ビタミンB12はメチルコバラミンとして含まれ得る。或いは、他の形態のこれらのビタミンが、上記の形態に加えて、又はそれらの代わりに含まれ得る。
【0040】
ビタミンB6を含むEHT抽出物組成物において、ビタミンB6は、単位用量で又は一回量で、約250マイクログラムから約5mg、又は約750マイクログラムから約3mg、又は約1mgから約2mg(例えば、約1.6mg)のビタミンB6を提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のビタミンB6が含まれ得る。
【0041】
ビタミンB9を含むEHT抽出物組成物において、ビタミンB9は、単位用量で又は一回量で、約50マイクログラムから約1mg、又は約100マイクログラムから約750マイクログラム、又は約200マイクログラムから約600マイクログラム(例えば、約400マイクログラム)のビタミンB9を提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のビタミンB9が含まれ得る。
【0042】
ビタミンB12を含むEHT抽出物組成物において、ビタミンB12は、単位用量で又は一回量で、約1マイクログラムから約100マイクログラム、又は約2.5マイクログラムから約25マイクログラム、又は約5マイクログラムから約15マイクログラム(例えば、約10マイクログラム)のビタミンB12を提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のビタミンB12が含まれ得る。
【0043】
ビタミンDを含むEHT抽出物組成物において、ビタミンDは、単位用量で又は一回量で、約250IUから約6000IU、又は約500IUから約5000IU、又は約750IUから約2500IU(例えば、約1000IU、約2000IU)のビタミンDを提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のビタミンDが含まれ得る。
【0044】
特定の実施態様において、EHT抽出物組成物は、マグネシウム及びセレンより選択される少なくとも一の微量元素を含む。例えば、EHT抽出物組成物はマグネシウムとセレンとの両方を含み得る。マグネシウムは、クエン酸マグネシウムとして含まれ得、又、マグネシウムのその他の薬学的に許容される塩が含まれ得る。同様に、セレンはセレノメチオニンとして含まれ得るが、無機セレン(セレナイト)も含まれ得る。セレンはセレン酵母としても含まれ得る。
【0045】
マグネシウムを含むEHT抽出物組成物において、マグネシウムは、単位用量で又は一回量で、約500マイクログラムから約100mg、又は約1mgから約30mg、又は約8mgから約24mg(例えば、約16mg)のマグネシウムを提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のマグネシウムが含まれ得る。当業者により理解されるであろう通り、マグネシウムがマグネシウムの薬学的に許容される塩(例えば、クエン酸マグネシウム)として含まれる場合、投与量は、化学量論(例えば、100mgのクエン酸マグネシウムは16mgのマグネシウムを生成する)により調整される必要がある。
【0046】
セレンを含むEHT抽出物組成物において、セレンは、単位用量で又は一回量で、約1マイクログラムから約500mg、又は約10マイクログラムから約400マイクログラム、又は約40マイクログラムから約100マイクログラム(例えば、約70マイクログラム又は約84マイクログラム)のセレンを提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のセレンが含まれ得る。
【0047】
特定の実施態様において、EHT抽出物組成物は、イチョウ葉抽出物粉末等のイチョウ葉を含む。例えば、約1mgから約750mg、又は約10mgから約400mg、又は約100mgから約170mg(例えば、約137.50mg)のイチョウ葉が含まれ得る。或いは、その他の量のイチョウ葉が含まれ得る。
【0048】
特定の実施態様において、EHT抽出物組成物は、アルファリポ酸及びフペルジンAから選択される少なくとも一の健康補助食品を含む。例えば、EHT抽出物組成物は、アルファリポ酸及びフペルジンAの両方を含み得る。
【0049】
アルファリポ酸を含むEHT抽出物組成物において、アルファリポ酸は、単位用量で又は一回量で、約1mgから約1.3g、又は約2.5mgから約500mg、又は約25mgから約75mg(例えば、約50mg)のアルファリポ酸を提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のアルファリポ酸が含まれ得る。
【0050】
フペルジンAを含むEHT抽出物組成物において、フペルジンAは、単位用量で又は一回量で、約1mgから約1g、又は約2.5mgから約500mg、又は約25mgから約75mg(例えば、約50mg)のフペルジンAを提供する量で、組成物中に提供される。或いは、その他の量のフペルジンAが含まれ得る。
【0051】
特定の実施態様において、EHT抽出物は、組成物1kg当たり1mgから1グラムの量で存在し得る。組成物中で提供されるEHT抽出物は、特定の実施態様において、単位用量又は一回量で、約1mgから約150mg、又は約5mgから約75mg、又は約10mgから約60mg(例えば、35mg)の量のEHT抽出物である。
【0052】
記載の通り、EHT抽出物は、例えば、Bビタミン類(例えば、ビタミンB6、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12)と共に投与され得る。いくつかの実施態様において、Bビタミン類は、単位用量又は一回量当たり約1マイクログラムから10mg、又は約50マイクログラムから約5mgの量でまとまって存在し得る。EHT抽出物は、一又は複数のマグネシウム及びセレン、又はマグネシウムとセレンの両方を更に含み得、一又は複数のハーブ、果物又は植物抽出物(例えば、イチョウ葉、及びフペルジンA等のトウゲシバの抽出物)を更に含んでいてもよい。
【0053】
一実施態様において、有効量のEHT抽出物を含む組成物は、外傷性脳損傷(TBI)に罹患した対象に、外傷性脳損傷を治療するために投与される。一実施態様において、有効量のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは、外傷性脳損傷(TBI)に罹患した対象に、外傷性脳損傷を治療するために投与される。EHT抽出物又はエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは、例えば、経口的に又は非経口的に(例えばIV)投与され得る。
【0054】
別の実施態様において、有効量のEHT抽出物を含む組成物は、脳症に罹患した又は脳症を発症するリスクのある対象に、脳症を治療するために投与される。一実施態様において、有効量のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは、脳症に罹患した対象に、脳症を治療するために投与される。脳症は、例えば慢性外傷性脳症(CTE)であり得る。EHT抽出物又はエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドは、例えば、経口的に又は非経口的に(例えばIV)投与され得る。
【0055】
別の実施態様において、EHT抽出物は、TBIを発症するリスクのある、又は炎症、感染、血管異常、自己免疫疾患、代謝異常、及び遺伝性要因による脳症(例えばCTE)を発症するリスクのある対象に投与される。
【0056】
更に別の実施態様において、EHT抽出物は、心血管疾患、メタボリックシンドローム、肺疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、炎症、感染、肝疾患、腎疾患、腫瘍性疾患、筋骨格疾患、消化器疾患、泌尿生殖器疾患、性的疾患、機能疾患、遺伝的易罹病性、栄養不足、環境及び毒素曝露、並びに薬物反応/曝露のリスクのある対象に投与される。
【0057】
有効量のEHT抽出物は、EHT抽出物中のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドにある程度基づき、当業者により決定され得る。しかしながら、EHT抽出物はドコサノイル及びテトラコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミド等のその他の活性成分を含み得るため、エイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドが単独で投与される場合と比較して、より少ない量のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドが必要とされることがあることが知られている。
【0058】
例えば、有効量のEHT抽出物は、一日0.1mg以上のエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドを提供するEHTの量であり得る。特定の実施態様において、EHT抽出物は、例えば、一日0.1mg、一日5mg、一日10mg、一日20mg、一日25mg、一日50mg、又は一日100mgのエイコサノイル 5-ヒドロキシトリプタミドを提供するように投与される。例えば、体重1kg当たり3mg-120mgのEHT抽出物は、直ちに記載される治療方法に従い、経口的に又は非経口的に(例えばIV)投与され得る。
【実施例】
【0059】
実施例1.EHT抽出物の調製
機械撹拌器及び熱電体を備えた20L被覆ガラス反応器に市販のコーヒーワックス(7kg)を充填した。湯(10L、75℃)を添加し、温度を70-75℃で2時間維持した。二つの層の形成を観察した時点で、底弁を通して水層を排出した。湯洗浄をもう一度繰り返し、この時点でイソプロパノール(16L、99.9%)を反応器に充填した。次いで、2時間激しく撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。撹拌器を停止し、混合物を一晩かけて4℃に冷却し、次いで粗生成物をガラスフィルター上に収集し、乾燥させ、次いで36時間(又は一定重量まで)真空オーブンに移して、粗コーヒー抽出物(1.2kg;10%トリプタミド)を得た。
【0060】
撹拌器を備えた20L被覆ガラス反応器に、ローディングバルブを通して粗コーヒー抽出物(5kg、上記より)を添加し、イソプロパノール(10L、99%)を更に加え、75℃に加熱した。撹拌しながら更に1時間温度を維持し、コーヒー抽出物が完全に溶解したことを確認した。次いで、イソプロパノール溶液を、底弁を介して結晶化容器中に分配し、一晩かけて室温に冷却した。生成物を濾過により三つのバッチ中のガラスフィルター(5L、Chemglass)上に収集し、真空オーブン中で一定重量まで(約36時間)乾燥させた。最終生成物(3.4kg、68%収率)をプラスチック容器中の二重のポリエチレン袋に詰めた(圧延は任意)。
【0061】
実施例2.EHT抽出物のHPLC分析
図1は、実施例1に記載の通りに調製された本発明によるEHT抽出物のHPLC分析を表す。HPLC分析は、Braz. J. Plant Physiol.,18(1):201-216(2006)by Karl Speer et al.で一般的に記載される通りに実施し、参照により本明細書に組み入れられ、280nmの励起波長及び330nmの発光波長での蛍光検出が用いられた。対応するトリプタミドのレベルは表2で数量化し、記載する。トリプタミド1-6は溶出の早いトリプタミドであり、7-11(12及び13は定量化できる量でEHT抽出物に見られない)は溶出の遅いトリプタミドである。
表2
【0062】
実施例1に記載の通り調製された本発明によるコーヒー、ココア及びEHT抽出物中のトリプタミドのレベル。トリプタミド4、12及び13は、定量化できる量でEHT抽出物中に検出されなかった。
【0063】
実施例3:EHT抽出物中のカフェストール及びカーウェオールレベルの決定
HPLC法
室温で、Guardカラムを備えたPhenomenexLuna C18 3u 50mmx4.6mmを有するAgilent 1200機器上で、高速液体クロマトグラフィー分析を実施した。移動相は、溶媒A:0.05%TFAを含むHPLC等級水(以下「溶媒A」)及び溶媒B:1分当たり1mLの流量を有する0.05%TFAを含むHPLC等級アセトニトリル(以下「溶媒B」)である。勾配は以下のように設定した:0%溶媒Bで開始し、次いで99%溶媒Bを16分、次いで99%溶媒Bを10分。カフェストールに対しては214nm及びカーウェオールに対しては254nmの蛍光を使用してピークを定量化した。ピーク面積を、事前に決定された対応する標準曲線と比較した。カフェストールの保持時間は11.77分、カーウェオールの保持時間は11.67分であった。
【0064】
標準曲線は、合成カフェストール(Aldrich)及びカーウェオール(Aldrich)を使用して行った。カフェストールの検出下限値は0.5μg/mLと決定した。カフェストールの定量化下限値は1μg/mLと決定した。カーウェオールの検出下限値(LLOD)は1μg/mLと決定した。カーウェオールの定量下限値(LLOQ)は2μg/mLと決定した。
【0065】
試料調製及び計算:
EHT抽出物の試料(1.1mg、実施例1に記載の通り調製)をDMSO(1mL)中に溶解させ、40℃まで温め、5分間ボルテックスした。この溶液の10μLをHPLCに注入した。三つの連続した実験において、11.67分ではピークは観察されず、11.77では小さなピーク(6.2iu)が観察された。11.77分のピークがカフェストールであると検証するため、その分析標準をEHT試料にスパイクし、再度実行した。再び、11.77分では一つのピークが観察され、それをカフェストールとして同定した。カフェストール標準曲線から誘導される等式を使用して、1mgのEHT抽出物が約1.58μgのカフェストールを含むことを決定した。EHT抽出物中のカーウェオールの量は、LLODを下回った。
【0066】
実施例4.EHT抽出物錠剤
実施例1のEHT抽出物をピリドキシンHCI、葉酸、シアノコバラミン、及びクエン酸マグネシウムと組み合わせ、ブレンダー中に置き、均一に混合されるまで混ぜ合わせた。造粒は観察されなかった。次いで、混ぜ合わされた製剤を標準的な打錠機に置き、錠剤に圧縮した。バルク製剤中のビタミンB
6、葉酸、シアノコバラミン及びクエン酸マグネシウムの量は、対象により経口的に投与される単位容量として、下記の表3の錠剤を得られるように選択する。
表3
【0067】
下記のコーティング溶液を熱気に導入し、錠剤コーティング機で新たに圧縮されるように適用されたコーティングミックスを形成する。コーティングされた錠剤を管理条件下で乾燥させ、最終単位投与形態を調製する。
【0068】
バニラコーティングのみ:リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸、コーティング(ヒプロメロース、タルク、二酸化チタン、ポリエチレングリコール、サッカリンナトリウム、天然香味料、スクラロース)、ステアリン酸マグネシウム及びシリカ。
【0069】
赤コーティングのみ:リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸、コーティング(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、FD&CF#40、タルク及び二酸化チタン)、ステアリン酸マグネシウム及びシリカ。
【0070】
バニラ及び赤コーティング:リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸、コーティング(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール、FD&C赤#40レーキ、タルク、二酸化チタン、バニリン)、ステアリン酸マグネシウム及びシリカ。
【0071】
表4-8中の下記の製剤も同じ手順で調製する。これらの錠剤のそれぞれは、一回量は一錠であり、一日一回投与するように指示されている。
表4
表5
表6
表7
表8
【0072】
実施例5.EHT抽出物水性製剤
実施例1に記載の通り調製した2グラムのEHT抽出物を、70℃での激しい撹拌下で、3グラムの2-ヒドロキシエチル 12-ヒドロキシオクタデカノエート(Solutol HS15)及び2グラムのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween-80)と共に溶かして、非常に粘性のある暗褐色のシロップを生成する。シロップを少量の湯と更に混合し、均一になるまで撹拌する。冷却する際、このシロップを必要な濃度まで更に水で希釈する。予想外に、このように生成された水性EHT抽出物は、その経口バイオアベイラビリティを改善し得る。
【0073】
下の表9は、この水性EHT抽出物の薬物動態学的説明を提供する。示したように、水性製剤は、本実施例に記載した通り、DMSOでの抽出に基づき調製され、2-ヒドロキシエチル 12-ヒドロキシオクタデカノエート及びモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンで処理されていない、非水性EHT製剤と比較して、予想外にその経口バイオアベイラビリティを改善する。
表9:
【0074】
実施例6.TBI及びCTEを治療するためのEHT抽出物の使用
図2は、短期的TBIはpTauレベルにおける増加を引き起こすこと及び長期的TBIはPP2A脱メチル化を引き起こすことを説明する。Papaは、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)は血清中に放出されて外傷性脳損傷(TBI)を起こし、頭蓋内のCT病変、特に、頭蓋外骨折における病変J. Neurotrauma. 2014 Nov 15;31(22):1815-22. PMID 24903744)を検出するのに使用され得る。
【0075】
したがって、GFAPはTBI及びCTEのバイオマーカーとして機能する。
図2は、実施例1に記載の通りに調製され、TBIを有するマウスに投与されたEHT抽出物を示す。マウスは、約3週間、げっ歯類の餌を介して、一日当たり約5グラムの.1%EHT抽出物を受けると推定される。EHT抽出物を受けるこのマウスのグループは、EHT抽出物が投与されなかった対照食餌グループと比較して、TBI後のマウスの脳において予想外に低いGFAPを示した。
【0076】
実施例7:初代神経細胞培養
大脳皮質の初代神経培養物を、Brewer1995に従い、ラットの胚(E17)から得た。2%B27、グルタミン、及びペンストレップ(pen-strep)抗生物質が補充されたNeurobasal(R)培地中の細胞を、cm2当たり1×104細胞の濃度でポリ-d-リジンでプレコートした培養皿に置いた。培養物を37℃及び5%CO2で保持した。
【0077】
グルタメート興奮毒性
実施例1に従って調製したEHT抽出物の存在下又は不存在下、初代皮質ニューロンを10uMグルタメートで併用治療した;ポジティブコントロールとしてデシプラミン(despramine)を使用した。37℃及び5%CO
2での24時間後、製造業者のプロトコール(Roche)に従って細胞上清中の乳酸脱水素酵素の活性を測定することにより、細胞生存率を決定した。
図4は、用量依存的方法におけるEHT抽出物を用いた治療の際に観察されるグルタメートにより誘導される減少した神経細胞傷害性を示す。
【0078】
EHT抽出物か又はエイコサノイル-5-ヒドロキシトリプタミドが、興奮毒性細胞死に対して神経保護特性を呈するか否かは、知られていない。EHT抽出物は、グルタメートの興奮毒性に関する同様の実験形式において事前に報告されたメマンチン用量反応曲線と比較して、ラットの皮質ニューロンの神経保護に対して優れた力価を呈する。