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特許7179467電気絶縁プレート及びそれを用いた配管固定具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】電気絶縁プレート及びそれを用いた配管固定具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/04 20060101AFI20221121BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20221121BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20221121BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
F16L3/04
F16L3/12 B
F16B2/06 A
F16B35/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018023457
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019138404
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507344977
【氏名又は名称】太平興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-213118(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192442(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159881(WO,A1)
【文献】実開昭57-165885(JP,U)
【文献】特開2017-114401(JP,A)
【文献】実開平04-106584(JP,U)
【文献】特開2010-065838(JP,A)
【文献】特開2012-152077(JP,A)
【文献】特開2007-165286(JP,A)
【文献】特開平05-087271(JP,A)
【文献】実開昭51-082018(JP,U)
【文献】実開昭55-117124(JP,U)
【文献】米国特許第5028020(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/04
F16L 3/12
F16B 2/06
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのプレート側ボルト孔が離間形成されるとともに該2つのプレート側ボルト孔の間に配管が当接される当接面を有し、前記2つのプレート側ボルト孔を、前記配管が固定される支持手段に設けられた2つの支持手段側ボルト孔とともにUボルトの2つの雄ネジがそれぞれ挿通できるように構成するとともに、前記支持手段と前記配管とを電気絶縁できるように構成されてなる電気絶縁プレートにおいて、
前記2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止される係止手段を前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、前記配管を前記支持手段に固定する際、該配管から前記当接面と平行な方向に該当接面に作用する荷重によって前記支持手段に対する面内方向移動が制限されるように構成したことを特徴とする電気絶縁プレート。
【請求項2】
前記係止手段を前記プレート側ボルト孔の開口周縁に沿って環状に形成された環状突起とした請求項1記載の電気絶縁プレート。
【請求項3】
前記係止手段を、前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心に近い側の開口周縁に半環状に形成した構成とし、又は前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心から遠い側の開口周縁に半環状に形成した構成とした請求項1記載の電気絶縁プレート。
【請求項4】
前記当接面であって前記係止手段の突設側と背中合わせとなる側に一対の受座を互いに離間させて突設するとともに、該一対の受座をそれらの先端が前記配管の外周面に当接するように構成した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の電気絶縁プレート。
【請求項5】
前記2つのプレート側ボルト孔の間であって前記係止手段の突設側に両面テープを貼着した請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の電気絶縁プレート。
【請求項6】
配管を跨ぐように配置され該配管を支持手段に固定するように構成されるとともに周面が電気絶縁材で被覆されたUボルトと、前記支持手段と前記配管との間に挟み込まれることでそれらを電気絶縁できるように構成されてなる電気絶縁プレートとを備え、該電気絶縁プレートに2つのプレート側ボルト孔を離間形成するとともに該2つのプレート側ボルト孔の間に前記配管が当接される当接面を設け、前記2つのプレート側ボルト孔を、前記支持手段に設けられた2つの支持手段側ボルト孔とともに前記Uボルトの2つの雄ネジがそれぞれ挿通できるように構成した配管固定具において、
前記2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止される係止手段を前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、前記配管を前記支持手段に固定する際、該配管から前記当接面と平行な方向に該当接面に作用する荷重によって前記支持手段に対する前記電気絶縁プレートの面内方向移動が制限されるように構成したことを特徴とする配管固定具。
【請求項7】
前記配管を横走り管、前記支持手段を壁面に取り付けられたブラケット若しくは床面に設置された架台とし、又は前記配管を立ち上がり管、前記支持手段を壁面に取り付けられた振れ止めとした請求項6記載の配管固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管をブラケットや架台あるいは振れ止めに取り付ける際に用いられる電気絶縁プレート及びそれを用いた配管固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
ここで、金属管には、ガス管と呼ばれる配管用炭素鋼管、スケジュール管と呼ばれる圧力配管用炭素鋼管、一般配管用ステンレス鋼管、ライニング鋼管等があり、配管用炭素鋼管は、冷温水、冷却水、排水、通気、消火といった幅広い用途に、圧力配管用炭素鋼管は、使用圧力が0.98MPaを越える冷温水、冷却水、高圧蒸気等に、一般配管用ステンレス鋼管は、空調衛生設備に、ライニング鋼管は、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したものが給水管としてそれぞれ用いられている。
【0004】
これらの配管を建物内に設置するにあたっては、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持するほか、壁面に取り付けられたブラケットや床面に設置された門型架台に載せた上、これらのブラケットや架台にUボルトで固定し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に固定するほか、壁面に取り付けられた振れ止めにUボルトで固定する。
【0005】
一方、配管が金属管である場合、金属製のUボルト、ブラケット、架台あるいは振れ止めとの間を電気絶縁することで配管の防食に配慮する必要があり、従来においては、Uボルトの周面に電気絶縁材を被覆するとともに、配管とブラケット、架台あるいは振れ止めとの間に電気絶縁材料からなるプレートを挟み込む対策が施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-213118公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1記載の発明の場合、配管である被取付物10は、該被取付物を跨ぐように配置されたUボルト1(ボルト本体2)の雄ネジ部3,3を台座14の挿通孔14aに通した上、該雄ネジ部を構築物等の支持体11に形成したボルト孔11aにさらに挿通し、スプリングワッシャ15を介してナット6で締め付けることで、支持体11に固定されるようになっており、台座14は、電気絶縁性を有する合成樹脂材製のプレートで形成してある(特許文献1の段落[0019]~段落[0020]参照)。
【0008】
かかる特許文献1記載の発明によれば、ボルト本体2の湾曲部2Aに電気絶縁材料からなる絶縁管4を外嵌被着した構成とも相俟って、配管である被取付物10と金属製のUボルト1及び架台である支持体11との間が電気絶縁され、かくして異種金属接触腐食が防止される。
【0009】
ここで、特許文献1記載の台座14に代表される電気絶縁プレートを用いる場合においては、Uボルトの雄ネジを電気絶縁プレートのボルト孔に挿通する際、予めUボルトが配管を跨いだ状態になっていなければならない。
【0010】
そのため、横走り管をブラケットや架台(以下、ブラケット等)に固定するにあたっては、まず、電気絶縁プレートのボルト孔がブラケット等のボルト孔に位置合わせされた状態となるように、該電気絶縁プレートをブラケット等の設置面に載置し、次いで、該電気絶縁プレートの上に横走り管を載せた後、該横走り管を跨ぐようにUボルトをブラケット等に配置し、しかる後、Uボルトの雄ネジを電気絶縁プレート及びブラケット等のボルト孔に挿通してナットで締結するという手順になる。
【0011】
しかしながら、横走り管を載せる際に電気絶縁プレートがずれてしまうことがあり、その場合には、上述のボルト孔が位置あわせされるように、電気絶縁プレートの位置をあらためて調整せねばならないとともに、その間、横走り管をブラケット等から浮かせておかねばならず、ブラケット等への固定作業に時間を要するという問題を生じていた。
【0012】
また、立ち上がり管を振れ止めに固定する際には、電気絶縁プレートを上述した位置に保持しつつ、Uボルトの挿入を行わねばならず、配管の荷重は作用しないものの、一方の手でUボルトを、他方の手で電気絶縁プレートを持たねばならないことから、状況によっては、例えば高所作業であれば、位置合わせやその状態の保持が困難になる場合があるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、配管とブラケット等あるいは振れ止めとの間に挟み込みつつ該配管をUボルトで容易にブラケット等や振れ止めに固定することが可能な電気絶縁プレート及びそれを用いた配管固定具を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気絶縁プレートは請求項1に記載したように、2つのプレート側ボルト孔が離間形成されるとともに該2つのプレート側ボルト孔の間に配管が当接される当接面を有し、前記2つのプレート側ボルト孔を、前記配管が固定される支持手段に設けられた2つの支持手段側ボルト孔とともにUボルトの2つの雄ネジがそれぞれ挿通できるように構成するとともに、前記支持手段と前記配管とを電気絶縁できるように構成されてなる電気絶縁プレートにおいて、
前記2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止される係止手段を前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、前記配管を前記支持手段に固定する際、該配管から前記当接面と平行な方向に該当接面に作用する荷重によって前記支持手段に対する面内方向移動が制限されるように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る電気絶縁プレートは、前記係止手段を前記プレート側ボルト孔の開口周縁に沿って環状に形成された環状突起としたものである。
また、本発明に係る電気絶縁プレートは、前記係止手段を、前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心に近い側の開口周縁に半環状に形成した構成とし、又は前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心から遠い側の開口周縁に半環状に形成した構成としたものである。
【0016】
また、本発明に係る電気絶縁プレートは、前記当接面であって前記係止手段の突設側と背中合わせとなる側に一対の受座を互いに離間させて突設するとともに、該一対の受座をそれらの先端が前記配管の外周面に当接するように構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る電気絶縁プレートは、前記2つのプレート側ボルト孔の間であって前記係止手段の突設側に両面テープを貼着したものである。
【0018】
また、本発明に係る配管固定具は請求項6に記載したように、配管を跨ぐように配置され該配管を支持手段に固定するように構成されるとともに周面が電気絶縁材で被覆されたUボルトと、前記支持手段と前記配管との間に挟み込まれることでそれらを電気絶縁できるように構成されてなる電気絶縁プレートとを備え、該電気絶縁プレートに2つのプレート側ボルト孔を離間形成するとともに該2つのプレート側ボルト孔の間に前記配管が当接される当接面を設け、前記2つのプレート側ボルト孔を、前記支持手段に設けられた2つの支持手段側ボルト孔とともに前記Uボルトの2つの雄ネジがそれぞれ挿通できるように構成した配管固定具において、
前記2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止される係止手段を前記2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、前記配管を前記支持手段に固定する際、該配管から前記当接面と平行な方向に該当接面に作用する荷重によって前記支持手段に対する前記電気絶縁プレートの面内方向移動が制限されるように構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る配管固定具は、前記配管を横走り管、前記支持手段を壁面に取り付けられたブラケット若しくは床面に設置された架台とし、又は前記配管を立ち上がり管、前記支持手段を壁面に取り付けられた振れ止めとしたものである。
【0020】
本発明に係る電気絶縁プレートにおいては、Uボルトに設けられた2つの雄ネジを挿通するための一対のプレート側ボルト孔が従来と同様に離間形成してあるが、本発明においては、それら2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ係止手段を突設してあり、該係止手段は、2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止されることで、支持手段に対する面内方向移動が制限されるようになっている。
【0021】
また、本発明に係る配管固定具においては、Uボルトに設けられた2つの雄ネジを挿通するための一対のプレート側ボルト孔が従来と同様に電気絶縁プレートに離間形成してあるが、本発明においては、それら2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ係止手段を突設してあり、該係止手段は、支持手段に設けられた2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止されることで、配管固定作業の際に電気絶縁プレートに作用する面内方向荷重に起因した支持手段に対する該電気絶縁プレートの面内方向移動が制限されるようになっている。
【0022】
このようにすると、本発明の電気絶縁プレートを支持手段であるブラケットや架台あるいは振れ止めに配置する際、電気絶縁プレートの係止手段が支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止されるように該電気絶縁プレートを支持手段に配置することにより、プレート側ボルト孔と支持手段側ボルト孔との位置合わせを容易に行うことができるとともに、電気絶縁プレートが間に挟み込まれる形で配管を支持手段に配置する際にも、プレート側ボルト孔が支持手段側ボルト孔に位置合わせされた状態が保持される。
【0023】
すなわち、配管が横走り管である場合には該横走り管を介して、立ち上がり管である場合には電気絶縁プレートを押さえ付ける作業員の指を介して、それぞれ電気絶縁プレートに面内方向(ズレ方向)の荷重が作用することがあるが、かかる状況が生じたとしても、支持手段の設置面上を電気絶縁プレートが滑る形で移動してプレート側ボルト孔が支持手段側ボルト孔からずれてしまうおそれがなくなり、かくしてUボルトによって配管を固定する際の作業性が格段に向上する。
【0024】
プレート側ボルト孔及び支持手段側ボルト孔は、丸孔である場合も包摂されるが、長孔としての構成が典型例となる。
【0025】
係止手段は、2つのプレート側ボルト孔の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設されるものであるが、2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁に係止されることで、支持手段に対する電気絶縁プレートの面内方向移動が制限される限り、その具体手構成は任意である。
【0026】
例えば、2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心に近い側の開口周縁にそれぞれ係止されるように、2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、同じくボルト孔中心に近い側の開口周縁に半環状に形成した構成や、2つの支持手段側ボルト孔の開口周縁のうち、ボルト孔中心から遠い側の開口周縁にそれぞれ係止されるように、2つのプレート側ボルト孔の開口周縁のうち、同じくボルト孔中心から遠い側の開口周縁に半環状に形成した構成が本発明の係止手段に包摂されるが、プレート側ボルト孔の開口周縁に沿って環状に形成された環状突起とした構成においては、該環状突起が支持手段側ボルト孔に嵌り込む形となるため、支持手段に対する電気絶縁プレートの横ズレがより確実に防止される。
【0027】
なお、面内方向移動とは、Uボルトに設けられた2つの雄ネジを2つのプレート側ボルト孔及び2つの支持手段側ボルト孔に挿通することができないほどの横ズレを意味するものであって、上述した2つの雄ネジの挿通に支障がないのであれば、遊びやガタツキといった多少の面内方句移動は当然許容される。
【0028】
電気絶縁プレートは、配管と支持手段との間に挟み込まれることでそれらが電気絶縁される限り、どのような材料でどのように構成されるかは任意であり、全体がプラスチック等の非導電性材料で形成された構成や、金属製基材の表面を非導電性材料で被覆した構成が少なくとも包摂されるし、配管とUボルトとの電気絶縁をどのように行うかは、本発明に係る電気絶縁プレートにおいては任意である。
【0029】
なお、Uボルトとの併用を前提とした本発明に係る配管固定具においては、周面が電気絶縁材で被覆されたUボルトを用いた構成となる。
【0030】
本発明に係る配管固定具においては、配管を横走り管、支持手段を壁面に取り付けられたブラケット若しくは床面に設置された架台とし、又は配管を立ち上がり管、支持手段を壁面に取り付けられた振れ止めとした構成が典型例となる。
【0031】
電気絶縁プレートの当接面とは、配管が横走り管である場合には、配管が電気絶縁プレート上に載置されることによる該配管との接触面であり、配管が立ち上がり管である場合には、配管が側方から電気絶縁プレートに押し付けられることによる該配管との接触面を意味する。
【0032】
ここで、電気絶縁プレートの当接面であって係止手段の突設側と背中合わせとなる側に一対の受座を互いに離間させて突設するとともに、該一対の受座をそれらの先端が配管の外周面に当接するように構成したならば、横走り管を電気絶縁プレート上に載置したり、立ち上がり管を電気絶縁プレートに側方から押し付けたりする際、これらの配管を安定させることができるため、Uボルトによる支持手段への固定作業がさらに容易になる。
【0033】
一対の受座は、配管が当接面に当接している状態でそれらの先端が該配管の外周面に同時に当接する必要はなく、配管が各側にずれたときにその側に位置する受座の先端が該配管の外周面に当接すれば足りる。
【0034】
電気絶縁プレートを支持手段に配置するにあたり、上述した係止作用を用いつつ、横走り管であれば、電気絶縁プレートを支持手段であるブラケットや架台に単に載せるだけでもよいし、立ち上がり管であれば、電気絶縁プレートを支持手段である振れ止めに単に押さえ付けるだけでもかまわないが、2つのプレート側ボルト孔の間であって係止手段の突設側に両面テープを貼着したならば、かかる両面テープを介して電気絶縁プレートが支持手段に接着されるため、電気絶縁プレートの上述した横ズレをより確実に防止することができるとともに、立ち上がり管の場合には、Uボルトによる固定作業の際、電気絶縁プレートを指で押さえておく必要がなくなり、特に高所での作業性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態に係る配管固定具1及びそれに用いられる電気絶縁プレート3の全体斜視図。
図2】本実施形態に係る配管固定具1及びそれに用いられる電気絶縁プレート3の側面図。
図3】本実施形態に係る電気絶縁プレート3の図であり、(a)は図2のA-A線方向から見た矢視図、(b)は図2のB-B線方向から見た矢視図、(c)は図1とは別の方向から見た斜視図。
図4】横走り管7の取付け手順を示した図。
図5】変形例に係る電気絶縁プレート3aの斜視図。
図6】変形例に係る配管固定具及びそれに用いられる電気絶縁プレート3aの全体斜視図。
図7】変形例に係る電気絶縁プレートであって、図3(b)と同一方向から見た矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る電気絶縁プレート及びそれを用いた配管固定具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る電気絶縁プレート及び配管固定具を示した全体斜視図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る配管固定具1は、Uボルト2と電気絶縁プレート3とで構成してあり、Uボルト2は、電気絶縁材4で周面を被覆してある。
【0038】
電気絶縁プレート3は、Uボルト2に設けられた2つの雄ネジ5,5がそれぞれ挿通される2つのプレート側ボルト孔6,6を離間形成してあるとともに、該2つのプレート側ボルト孔の間に配管である横走り管7が当接される当接面8を有する。
【0039】
電気絶縁プレート3は、支持手段としてのブラケット11に設けられた2つの支持手段側ボルト孔12,12に2つのプレート側ボルト孔6,6が位置合わせされるように該電気絶縁プレートをブラケット11に配置するとともに当接面8に当接された横走り管7を跨ぐようにUボルト2を配置した状態で、2つの雄ネジ5,5を2つのプレート側ボルト孔6,6及び2つの支持手段側ボルト孔12,12に挿通して該雄ネジの各先端にナット13,13をそれぞれ螺合することことにより、横走り管7をブラケット11に固定できるようになっている。
【0040】
ブラケット11は、壁面(図示せず)に取り付けられた支持手段であって山形鋼(アングル)で構成してあるとともに、横走り管7は、ガス管と呼ばれる配管用炭素鋼管、スケジュール管と呼ばれる圧力配管用炭素鋼管、一般配管用ステンレス鋼管、ライニング鋼管といった金属管で構成してあり、電気絶縁プレート3は、これら横走り管7とブラケット11とが電気絶縁されるように合成樹脂で構成してある。
【0041】
本実施形態に係る電気絶縁プレート3は図2及び図3でよくわかるように、2つの支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁に係止される係止手段としての環状突起21,21を2つのプレート側ボルト孔6,6の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、ブラケット11の設置面14に対する面内方向移動が制限されるようになっている。
【0042】
環状突起21,21は、2つのプレート側ボルト孔6,6の開口周縁に沿って環状に形成してあり、その突出高さは、例えば電気絶縁プレート3を構成するプレート本体の厚みと同程度に設定すればよい。
【0043】
プレート側ボルト孔6,6及び支持手段側ボルト孔12,12は、Uボルト2の雄ネジ5,5を挿通する際の作業性を高めるべく、それぞれ長孔として形成しておくのが望ましい。
【0044】
環状突起21,21は、ブラケット11の支持手段側ボルト孔12,12にスムーズに嵌め込まれるように、その大きさ、プレート側ボルト孔6,6が丸孔であれば外径寸法を適宜決定する。
【0045】
電気絶縁プレート3の当接面8には、環状突起21,21の突設側と背中合わせとなる側に一対の受座22,22を互いに離間させて突設してあるとともに、該一対の受座をそれらの先端23,23が横走り管7の外周面に当接するように構成してある。
【0046】
本実施形態に係る配管固定具1を用いて横走り管7をブラケット11に固定するには、まず図4(a)に示したように、電気絶縁プレート3の環状突起21,21がブラケット11の支持手段側ボルト孔12,12に嵌め込まれるようにして、該電気絶縁プレートをブラケット11の設置面14に載置する。
【0047】
このようにすると、電気絶縁プレート3の2つのプレート側ボルト孔6,6は、2つの支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁に対する環状突起21,21の係止作用により、ブラケット11に設けられた2つの支持手段側ボルト孔12,12に自動的に位置合わせされる。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、横走り管7の外周面が電気絶縁プレート3の当接面8に当接される形で該横走り管を電気絶縁プレート3を介してブラケット11の上に載せる。
【0049】
このとき、横走り管7がいずれかの側にずれようとしても、その側に位置する受座22の先端23が横走り管7の外周面に当接して該横走り管のズレ動作を拘束する。すなわち、台座22,22は、横走り管7のズレを拘束し、ブラケット11上での横走り管7の載置状態を安定させるストッパーとして機能する。
【0050】
次に、横走り管7を跨ぐようにしてUボルト2をブラケット11の上方から落とし込み、該Uボルトの雄ネジ5,5をプレート側ボルト孔6,6及び支持手段側ボルト孔12,12に挿通する。
【0051】
このとき、プレート側ボルト孔6,6及び支持手段側ボルト孔12,12は、上述したように環状突起21,21の係止作用によって事前に位置あわせされているため、Uボルト2を上方から単に落とし込むだけで、該Uボルトの雄ネジ5,5は、おのずとプレート側ボルト孔6,6及び支持手段側ボルト孔12,12にそれぞれ挿通される。
【0052】
最後に、雄ネジ5,5の各先端にナット13,13をそれぞれ螺合し、これらを締め付けることで、横走り管7をブラケット11に固定する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る電気絶縁プレート3及びそれを用いた配管固定具1によれば、ブラケット11に設けられた支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁に係止される環状突起21,21を、電気絶縁プレート3のプレート側ボルト孔6,6の開口周縁から面外方向に向けてそれぞれ突設することで、ブラケット11に対する電気絶縁プレート3の面内方向移動を制限するように構成したので、環状突起21,21が支持手段側ボルト孔12,12に嵌め込まれるように電気絶縁プレート3をブラケット11に配置すれば、その嵌合による係止作用でプレート側ボルト孔6,6を支持手段側ボルト孔12,12に容易に位置合わせすることができるとともに、該電気絶縁プレートを介して横走り管7をブラケット11の上に載せる際、横走り管7を介して電気絶縁プレート3に面内方向(ズレ方向)の荷重が作用したとしても、電気絶縁プレート3がブラケット11の設置面14に対して横ズレするおそれがなくなり、かくしてUボルト2によって横走り管7を固定する際の作業性が格段に向上する。
【0054】
また、本実施形態に係る電気絶縁プレート3及びそれを用いた配管固定具1によれば、電気絶縁プレート3の当接面8に一対の受座22,22を互いに離間させて突設するとともに、該一対の受座をそれらの先端23,23が横走り管7の外周面に当接するように構成したので、台座22,22が横走り管7のズレを拘束するストッパーとして機能し、かくしてブラケット11上での横走り管7の載置状態を安定させることが可能となる。
【0055】
本実施形態では、電気絶縁プレート3の当接面8に一対の受座22,22を突設するようにしたが、横走り管7の載置安定性に問題がないのであれば、これを省略してもかまわない。
【0056】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図5に示すように、電気絶縁プレート3に代えて、2つのプレート側ボルト孔6,6の間であって環状突起21,21の突設側に両面テープ51を貼着してなる電気絶縁プレート3aを採用することができる。
【0057】
かかる構成によれば、両面テープ51を介して電気絶縁プレート3aが支持手段としてのブラケット11に接着されるため、電気絶縁プレート3の上述した横ズレをより確実に防止することができる。
【0058】
なお、両面テープ51を貼着する構成を除き、電気絶縁プレート3aは電気絶縁プレート3と同様の構成であるので、ここではその詳細な説明を省略する。また、一対の受座22,22については、上述したようにこれを省略することが可能である。
【0059】
また、本実施形態では、配管を横走り管7、支持手段をブラケット11で構成したが、該ブラケットに代えて、床面に設置された架台を支持手段としてもよいし、これらの構成に代えて、図6に示すように、配管を立ち上がり管61、支持手段を壁面(図示せず)に取り付けられた振れ止め62としてもよい。
【0060】
かかる構成においては、立ち上がり管61を横走り管7と同様に金属管で構成してあるとともに、振れ止め62を山形鋼(アングル)で構成してあり、電気絶縁プレートは、特に電気絶縁プレート3aで構成してある。
【0061】
このように構成すると、上述の実施形態と同様、電気絶縁プレート3aの環状突起21,21が支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁に係止されるように該電気絶縁プレートを振れ止め62に配置することにより、プレート側ボルト孔6,6と支持手段側ボルト孔12,12との位置合わせを容易に行うことができるとともに、電気絶縁プレート3aが間に挟み込まれる形で立ち上がり管61を振れ止め2に配置する際にも、プレート側ボルト孔6,6が支持手段側ボルト孔12,12に位置合わせされた状態が保持される。
【0062】
すなわち、電気絶縁プレート3aを押さえ付ける作業員の指を介して、該電気絶縁プレートに面内方向(ズレ方向)の荷重が作用したとしても、振れ止め62の設置面上を電気絶縁プレート3aが滑る形で移動してプレート側ボルト孔6,6が支持手段側ボルト孔12,12からずれてしまうおそれがなくなり、かくしてUボルト2によって立ち上がり管61を固定する際の作業性が格段に向上する。
【0063】
また、立ち上がり管61を電気絶縁プレート3bに側方から押し付ける際、台座22,22のズレ防止作用によって該立ち上がり管を安定させることができるため、Uボルト2による振れ止め62への固定作業が容易になる。
【0064】
ここで、本変形例では、両面テープ51の接着作用により、電気絶縁プレート3aが振れ止め62に接着された状態で、Uボルト2の固定作業を行うことができるため、該固定作業の際、電気絶縁プレート3aが落下しないようにこれを指で押さえておく必要がなくなり、特に高所での作業性が格段に向上する。
【0065】
また、本実施形態では、環状突起21,21で本発明の係止手段を構成したが、該係止手段は、2つの支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁に係止されることで、支持手段に対する電気絶縁プレートの面内方向移動が制限される限り、その具体手構成は任意であって、例えば図7(a)に示すように、2つの支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁のうち、ボルト孔中心に遠い側の開口周縁にそれぞれ係止されるように、2つのプレート側ボルト孔6,6の開口周縁のうち、同じくボルト孔中心に遠い側の開口周縁に半環状に形成してなる半環状突起71,71で本発明の係止手段を構成することができるし、同図(b)に示すように、2つの支持手段側ボルト孔12,12の開口周縁のうち、ボルト孔中心に近い側の開口周縁にそれぞれ係止されるように、2つのプレート側ボルト孔6,6の開口周縁のうち、同じくボルト孔中心に近い側の開口周縁に半環状に形成してなる半環状突起72,72で本発明の係止手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 配管固定具
2 Uボルト
3,3a 電気絶縁プレート
4 電気絶縁材
5 雄ネジ
6 プレート側ボルト孔
7 横走り管(配管)
8 当接面
11 ブラケット(支持手段)
12 支持手段側ボルト孔
21 環状突起(係止手段)
22 台座
23 台座の先端
51 両面テープ
61 立ち上がり管(配管)
62 振れ止め(支持手段)
71,72 半環状突起(係止手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7