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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221121BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/175 113
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018065475
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019171798
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 昇
(72)【発明者】
【氏名】木田 朗
(72)【発明者】
【氏名】倉田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】甲野藤 淳
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141084(US,A1)
【文献】特開2008-074050(JP,A)
【文献】特開2013-173252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出して記録を行う記録手段と、
前記記録手段へ供給される液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から前記記録手段へ液体を供給する供給手段と、
前記記録手段と前記供給手段とを接続するための第一ジョイント手段及び第二ジョイント手段と、
前記第一ジョイント手段と前記第二ジョイント手段とを移動可能に保持するホルダ手段と、を備えた記録装置において、
前記ホルダ手段において前記記録手段と接続する側に配され、駆動手段によって前記ホルダ手段を前記記録手段に対して高さ方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録手段は、記録媒体に記録する際に水平方向に対して傾いて保持されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第一ジョイント手段は、前記記録手段に液体を供給するための第一ジョイント開口と、前記記録手段に対する前記第一ジョイント手段の位置決めを行う第一位置決め開口と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第一ジョイント開口は、複数の第一ジョイント開口であり、前記第一位置決め開口は、複数の第一位置決め開口であることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第二ジョイント手段は、前記記録手段から液体を回収するための第二ジョイント開口と、前記記録手段に対する前記第二ジョイント手段の位置決めを行う第二位置決め開口と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第二ジョイント開口は、複数の第二ジョイント開口であり、前記第二位置決め開口は、複数の第二位置決め開口であることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記駆動手段であるモータと、前記モータと接続するねじ部を有し、前記ホルダ手段が前記ねじ部の回転によって移動して、前記第一ジョイント手段と前記第二ジョイント手段との前記記録手段に対する接続と、前記記録手段に対する前記第一ジョイント手段と前記第二ジョイント手段との接続の解除と、が切り替わることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第一ジョイント手段と前記第二ジョイント手段とは、前記ホルダ手段に対して移動可能に保持されかつ前記移動手段から略同じ距離の位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、前記記録装置に対して着脱可能に挿入されており、前記記録手段の前記第一ジョイント手段および前記第二ジョイント手段との接続部は、前記記録手段における挿入方向奥側に配されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記供給手段は、前記液体貯留部から前記記録手段へ液体を加圧供給し、前記記録手段から回収されるインクの流量を調整することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出して記録する記録装置に関し、特には、記録ヘッド内でインクが循環する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドから液体を吐出する記録装置では、タンクに貯留された液体(インク)を記録ヘッドに供給するものがある。また近年では、記録ヘッドの吐出状態を良好に維持するため、記録ヘッドとタンクとの間でインクを循環する構成の記録ヘッドも知られている。このような記録ヘッドは、タンクから供給されるインクが流れる供給用流路と、タンクに回収されるインクが流れる回収用流路とを備えている。これら供給用流路と回収用流路とはそれぞれジョイント部を介してタンクと接続される。記録ヘッドとタンクとを接続するジョイント部では、インクの漏れが生じないように正確な接続が求められる。
【0003】
特許文献1には、供給用固定ジョイント部材と回収用可動ジョイント部材とがジョイントホルダに設けられ、固定ジョイント部材を位置決めの基準として可動ジョイント部材の接続時の自由度を高めて接続することで良好な接続を可能にする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-47547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている構成では、位置決めの基準としている固定ジョイント部材の接続は、ジョイント部材と記録ヘッドと、が正確に位置決めされていることが前提となっている。そのため、ジョイント部材あるいは記録ヘッドの位置にずれが有る場合には、固定ジョイント部材は正確な接続ができない虞がある。
【0006】
よって本発明は、供給用と回収用のいずれのジョイント部材も正確な接続が可能な記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明の記録装置は、液体を吐出して記録を行う記録手段と、前記記録手段へ供給される液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部から前記記録手段へ液体を供給する供給手段と、前記記録手段と前記供給手段とを接続するための第一ジョイント手段及び第二ジョイント手段と、前記第一ジョイント手段と前記第二ジョイント手段とを移動可能に保持するホルダ手段と、を備えた記録装置において、前記ホルダ手段において前記記録手段と接続する側に配され、駆動手段によって前記ホルダ手段を前記記録手段に対して高さ方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、供給用と回収用のいずれのジョイント部材も正確な接続が可能な記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インクジェット記録装置の内部構成を示した図である。
図2】記録装置における制御構成を示すブロック図である。
図3】記録装置が記録状態にあるときを示す図である。
図4】(a)~(c)は、記録媒体が給送されるときの搬送経路を示す図である。
図5】(a)~(c)は、記録媒体が給送されるときの搬送経路を示す図である。
図6】(a)~(d)は、記録動作を行う場合の搬送経路を示す図である。
図7】記録装置がメンテナンス状態のときを示す図である。
図8】記録装置のジョイント部を示した斜視図である。
図9】記録ヘッドの接続部を示す斜視図である。
図10】記録ヘッド側から見たジョイント部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置(以下、記録装置)1の内部構成を示した図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部(記録部)2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8(プラテン9)の上流側および下流側に配され、搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、排出モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8(プラテン9)の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
記録装置1には、上記駆動ローラを駆動するための複数のモータが設けられており、上記駆動ローラのそれぞれは、複数のモータのうちの1つに接続されている。モータと駆動ローラの対応関係については後に詳しく説明する。
【0015】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0016】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0017】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0018】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0019】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0020】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0021】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0022】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0023】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。
【0024】
搬送制御部207は、記録媒体Sの搬送状態を検知する検知部212と、複数の駆動ローラを駆動する駆動部211とに接続しており、検知部212から得られる検知結果に基づいて駆動部211を用いて記録媒体Sの搬送を制御する。検知部212は、記録媒体Sの有無を検知する検知部材20と駆動ローラの回転量を検出するエンコーダ21を有している。
【0025】
搬送制御部207によって記録媒体Sが搬送される過程で、プリントコントローラ202の指示に従って、記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0026】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0027】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0028】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す図である。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0029】
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材と離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0030】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0031】
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0032】
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録時の記録媒体Sは、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pを下側から上側に移動し、その進行方向は、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0033】
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
【0034】
図5(a)~(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0035】
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
【0036】
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0037】
図6(a)~(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す図である。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
【0038】
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
【0039】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
【0040】
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0041】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0042】
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときを示す図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0043】
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0044】
以下、本発明の特徴事項について説明する。
【0045】
図8は、記録装置1のジョイント部90を示した斜視図である。ジョイント部90は記録ヘッド8と接続可能であり、インク供給ユニット15と記録ヘッド8とがジョイント部90を介して接続される。ジョイント部90は、記録ヘッド8にインクを供給する第一のジョイント部材91と記録ヘッド8からインクを回収する第二のジョイント部材92とを備えている。このように、本実施形態では1つのジョイント部で、記録ヘッド8へのインクの供給と、記録ヘッド8からのインクの回収を行うことができるように構成されている。
【0046】
ジョイント部90は、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とを支持するジョイントホルダ93を備えており、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92との間に昇降手段94を備えている。昇降手段94は、雄ねじが形成された軸状の部材であり、回転可能にモータ37と接続されている。昇降手段94が回転することでジョイント部90を昇降させることができ、回転方向を変えることで、上昇と下降とを切替えることができる。昇降手段94の回転によってジョイント部90が下降すると記録ヘッド8と接続され、ジョイント部90が上昇すると記録ヘッド8との接続が解除される。
【0047】
第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とは同じ構成であるため、以下では第一のジョイント部材91を例に説明する。記録装置1は、4色のインクを用いて記録を行う。そのため第一のジョイント部材91は、4色の各色に対応した4つのジョイント開口95を備えている。なお、これらジョイント開口95の数は限定するものでなく単数あるいは複数の開口であってもよい。4つのジョイント開口95は、開口している一方の端部と反対の他方の端部がチューブによってインク供給ユニット15と接続されており、1列に配置されて設けられ、一方の端部はジョイント部90が下降する下降方向に向けて開口している。また、第一のジョイント部材91は、2つの位置決め開口96を備えており、2つの位置決め開口96は、ジョイント開口95の列と並ぶように設けられいる。なお、位置決め開口の数も限定するものでなく、単数あるいは複数設けられていてもよい。
【0048】
第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とは、ジョイントホルダ93の両端部にそれぞれが設けられており、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92との間であり、ジョイントホルダ93のほぼ中央に昇降手段94が設けられている。このように昇降手段94に対して第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とが左右均等(昇降手段94から略同じ距離)になるように設けられている。これによって、昇降手段94の下降によってジョイント部90が記録ヘッド8と接続する際に、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92に略均等に力がかかり良好な接続を可能にしている。
【0049】
図9は、記録ヘッド8に設けられた接続部を示す斜視図である。図9(a)は接続部が露出した状態を示し、図9(b)は後述するシャッタ83によって接続部が被覆された状態を示す。記録ヘッド8との接続時には、ジョイント部90を下降していくと、まず、位置決め開口96に記録ヘッド8側に設けられたガイドピン81が挿入される。その後、ジョイント開口95が、記録ヘッド8側に設けられたニードル部82と接続される。
【0050】
図10は、記録ヘッド8側から見たジョイント部90を示した図である。ジョイントホルダ93には、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とがそれぞれ入る2つの開口97が設けられている。開口97は、第一のジョイント部材91、第二のジョイント部材92のそれぞれの外径寸法よりも大きな開口になっている。つまり、2つの開口97それぞれに、第一のジョイント部材91、第二のジョイント部材92が入ると、第一のジョイント部材91、第二のジョイント部材92と開口97との間には所定量の隙間(遊び)ができるように構成されている。そのため、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とは、ジョイントホルダ93に対して移動可能に構成されている。
【0051】
なお、この所定量の隙間は、装置の構成に合わせて適宜設定することが望ましい。このように構成されていることで、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とは、記録ヘッド8との接続の際に、矢印X方向および矢印Y方向に移動することが可能であり、矢印X方向および矢印Y方向に高い自由度で接続することができる。つまり、第一のジョイント部材91、第二のジョイント部材92の両方とも接続時の自由度が高い状態で記録ヘッド8と接続することが可能となっている。
【0052】
すなわち、第一のジョイント部材91及び第二のジョイント部材92と、記録ヘッド8の接続部との間で取付位置のバラつきや部品公差によるずれがあっても、所定量の隙間を設けることでずれを吸収することができる。これによって、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92とは、記録ヘッド8に対して良好な接続状態での接続が可能となる。特に、記録装置1においては、不図示のポンプによってインク供給ユニット15内のインク貯留部(液体貯留部)から記録ヘッド8へインクを加圧供給する形態であり、インクの水頭差を利用した供給形態よりも確実な接続状態が要求される。そのため、複数のジョイント部材がジョイントホルダ93に対して移動可能な構成とすることで、接続の際に各々がイコライズ可能であり、より正確な接続状態を実現することができる。
【0053】
ジョイント部90は、記録ヘッド8の一方の端部と接続される。記録ヘッド8はユーザによって交換することが可能に構成されており、記録ヘッド8の交換の際には、記録ヘッド8の他方の端部を操作して交換する。つまり、記録ヘッド8とジョイント部90とは、記録ヘッド8を記録装置1に挿入する際の、挿入方向奥側の端部で接続されるように構成されている。
【0054】
このように、記録ヘッド8とジョイント部90との接続部と、記録ヘッド8のユーザが操作する操作部(不図示)とが離れていることで、ユーザによる記録ヘッド8交換の際に、ユーザの手がインクで汚れることを防止している。また、ユーザが不用意に接続部に触れて破損させることも防止することができる。
【0055】
更にまた、記録ヘッド8の接続部には、記録装置1から記録ヘッド8を取り外した際に、記録ヘッド8からインクを供給するニードル部82の上部を覆うシャッタ83が設けられている(図9(b)参照)。シャッタ83は、バネ84によって矢印で示す方向に付勢されている。記録ヘッド8を取り外すと、バネ84の付勢によってシャッタが閉じることでユーザがインクで汚れることを防止している。また、シャッタ83にはフック85が設けられており、不図示のヘッドホルダに記録ヘッド8が挿入されると、ヘッドホルダのガイド突起とフック85が当接してバネ84の付勢に抗する力が発生する。これにより、バネ84の付勢に抗してシャッタ83がスライド移動して、図9(a)に示すようにニードル部82が露出する。なお、シャッタ83を付勢するための部材はバネ84に限らず、弾性部材等であってもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92との2つのジョイント部材を用いた構成を説明したがこれに限定するものではない。つまり、昇降手段を中心に、接続時に各ジョイント部材に略均等に力がかかるように配置されている複数のジョイント部材であればよい。
【0057】
このように、第一のジョイント部材91と第二のジョイント部材92との両方をジョイントホルダ93に対して可動にして接続時の自由度を高めた構成とする。これによって、供給用と回収用とのいずれのジョイント部材とも正確な接続が可能な記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0058】
1 記録装置
8 記録ヘッド
90 ジョイント部
91 第一のジョイント部材
92 第二のジョイント部材
93 ジョイントホルダ
94 昇降手段
95 ジョイント開口
96 位置決め開口
97 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10