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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】レール走行車運搬台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/04 20060101AFI20221121BHJP
   B05B 17/00 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
B62B3/04 C
B05B17/00 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018077435
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019182290
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日 2017年10月30日 (2)販売した場所 小沢ガーデン 金子 周弘(愛知県豊橋市小松原町字今西49) (3)販売者 やまびこジャパン株式会社 中部支社名古屋支店(愛知県清須市西枇杷島町宮前1-39)
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】斗ヶ澤 龍太
(72)【発明者】
【氏名】宮原 一昭
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-294411(JP,A)
【文献】特開平11-334581(JP,A)
【文献】実公昭51-005690(JP,Y1)
【文献】特開2003-226242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/04
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配設される複数本の作業通路のそれぞれに配設した作業用レール上を自走可能なレール走行車を載せて前記複数本の作業通路の配列方向へと運搬するためのレール走行車運搬台車であって、前記レール走行車を載せて運搬可能な台車本体と、該台車本体上で前記レール走行車を案内する台車側レールと、を備え、該台車側レールが、前記各作業用レールとの間の地面を介して前記レール走行車の自走による乗降を案内するスロープを有し、該スロープが前記レール走行車の車輪を受入れ易いように上から見て先細り形状とされている、レール走行車運搬台車。
【請求項2】
前記レール走行車の前記台車本体への乗降時に、前記スロープの先端部が地面から浮いている、請求項1に記載のレール走行車運搬台車。
【請求項3】
前記スロープは、前記各作業用レールとの間の地面を介して前記レール走行車の自走による乗降を、レール走行車の車輪の切欠きを用いて案内する、請求項1又は2に記載のレール走行車運搬台車。
【請求項4】
前記スロープの先端部に上下方向の厚みがある、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレール走行車運搬台車。
【請求項5】
前記台車側レールが、前記台車本体上で水平に延びる上面部と、同じく前記台車本体上で前記上面部より長く水平に延びる下面部と、を備え、前記上面部の先端と前記下面部の先端との間に前記スロープが延在する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレール走行車運搬台車。
【請求項6】
前記レール走行車を自動的に停止させるための非接触式センサが前記レール走行車に配設され、前記レール走行車が前記台車本体上で所定の停止位置に到達した時に前記非接触式センサによって検知される被検知材が前記台車本体に配設される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレール走行車運搬台車。
【請求項7】
前記台車本体の車輪として、前記台車本体の進行方向の前後のいずれか一方に方向固定輪、いずれか他方に方向自在輪が配設され、作業者が前記台車本体を操作するためのハンドルが前記台車本体に配設され、前記台車本体の進行方向の左右のいずれ側で前記レール走行車による作業が行われる場合にも、前記台車本体による前記レール走行車の運搬方向の前方に前記方向固定輪を位置させ且つ後方に前記方向自在輪と前記ハンドルとを位置させることができるように、前記台車本体に対する前記方向固定輪、前記方向自在輪及び前記ハンドルの取付位置が変更可能とされている、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレール走行車運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール走行車を載せて運搬するための台車に関し、詳しくは、前記レール走行車の乗降を円滑になし得るレール走行車運搬台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レール走行車の一例として、特許文献1の0023段落及び図7図8に記載されているように、ハウス内の畝間通路(作業通路)に敷設されたレール上を自動で走行しながら、畝の生育植物(農作物)に対して薬液散布等の作業を行う自走式の農業用ロボットが知られている。この農業用ロボットは、前記レール上を往復走行して一つの畝間通路での作業を終えると、次の畝間通路へと移動させられる。
【0003】
次の畝間通路への農業用ロボットの移動は、特許文献1の0018段落に記載されているように、復路を戻り走行してきた農業用ロボットを畝間通路の始端側で移動台車に乗り移らせ、この移動台車を、畝間通路と直交する方向に延びる移動台車用通路に沿って移動させることにより行われる。特許文献1の0023段落及び図7図8に記載されているように、前記移動台車にもレールが敷設されており、農業用ロボットは、畝間通路上のレールと移動台車上のレールとの間を車輪で移動する。
【0004】
また、レール上を走行する農業用ロボットではなくタイヤ走行式の農業用ロボットを運搬するための台車として、特許文献2に記載されているように、揺動自在な歩み板を装備し、該歩み板を介してタイヤ走行式の農業用ロボットを乗降させるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-233459号公報
【文献】実公平5-23254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものにおいては、0018段落に記載されているように、移動台車用通路が畝間通路より掘り下げて形成される。これは、特許文献1の図7から明らかなように、畝間通路上のレールと移動台車上のレールとを同一高さで接続可能として、両レール間における農業用ロボットの移動を円滑に行えるようにするためである。
【0007】
このため、特許文献1のものは、移動台車用通路の形成に手間がかかり、コスト高にならざるを得ないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2のものは、タイヤ走行式の農業用ロボットの運搬を企図したものであるため、それをそのままレール走行式のものに適用することには難がある。
【0009】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、レール走行車の乗降が円滑に行われ、且つコストも抑制できる、レール走行車運搬台車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明に係るレール走行車運搬台車は、並列に配設される複数本の作業通路のそれぞれに配設した作業用レール上を自走可能なレール走行車を載せて前記複数本の作業通路の配列方向へと運搬するためのレール走行車運搬台車であって、前記レール走行車を載せて運搬可能な台車本体と、該台車本体上で前記レール走行車を案内する台車側レールと、を備え、該台車側レールが、前記各作業用レールとの間の地面を介して前記レール走行車の自走による乗降を案内するスロープを有し、該スロープが前記レール走行車の車輪を受入れ易いように上から見て先細り形状とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1のものにおいて、前記レール走行車の前記台車本体への乗降時に、前記スロープの先端部が地面から浮いていることを特徴とする。
【0013】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1又は2のものにおいて、前記スロープは、前記各作業用レールとの間の地面を介して前記レール走行車の自走による乗降を、レール走行車の車輪の切欠きを用いて案内することを特徴とする。
【0014】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1乃至のいずれかのものにおいて、前記スロープの先端部に上下方向の厚みがあることを特徴とする。
【0015】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1乃至のいずれかのものにおいて、前記台車側レールが、前記台車本体上で水平に延びる上面部と、同じく前記台車本体上で前記上面部より長く水平に延びる下面部と、を備え、前記上面部の先端と前記下面部の先端との間に前記スロープが延在することを特徴とする。
【0016】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1乃至のいずれかのものにおいて、前記レール走行車を自動的に停止させるための非接触式センサが前記レール走行車に配設され、前記レール走行車が前記台車本体上で所定の停止位置に到達した時に前記非接触式センサによって検知される被検知材が前記台車本体に配設されることを特徴とする。
【0017】
請求項の本発明に係るレール走行車運搬台車は、請求項1乃至のいずれかのものにおいて、前記台車本体の車輪として、前記台車本体の進行方向の前後のいずれか一方に方向固定輪、いずれか他方に方向自在輪が配設され、作業者が前記台車本体を操作するためのハンドルが前記台車本体に配設され、前記台車本体の進行方向の左右のいずれ側で前記レール走行車による作業が行われる場合にも、前記台車本体による前記レール走行車の運搬方向の前方に前記方向固定輪を位置させ且つ後方に前記方向自在輪と前記ハンドルとを位置させることができるように、前記台車本体に対する前記方向固定輪、前記方向自在輪及び前記ハンドルの取付位置が変更可能とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の本発明によれば、ある作業通路での作業を終えたレール走行車を、作業用レールと地面と台車側レールのスロープとを介して、台車本体上へと自走で乗り込ませることができる。このため、台車本体上へのレール走行車の乗り込みに支障がない。レール走行車の乗り込み後に台車本体を複数本の作業通路の配列方向へと移動させることで、次の作業通路の入口へとレール走行車を運搬することができる。そして、次の作業通路の入口で、台車側レールのスロープと地面とを介して、台車本体から次の作業用レールへとレール走行車を自走で移行させる。請求項1の本発明によれば、前記従来のもののように、レール走行車運搬台車の通路を掘り下げて形成する等の必要がないので、コストが抑制できる。また、請求項1の本発明によれば、台車本体上へのレール走行車の乗り込み時に該レール走行車の車輪がスロープと結合し易い。このため、台車本体に対するレール走行車の乗り込みが円滑且つ確実に行われる。また、スロープがレール走行車の車輪を受入れ易いように上から見て先細り形状とされているので、台車本体上へのレール走行車の乗り込み時に該レール走行車の車輪がスロープと結合し易い。このため、台車本体に対するレール走行車の乗り込みが円滑且つ確実に行われる。
【0020】
請求項の本発明によれば、レール走行車の乗降時にスロープの先端部が地面から浮いているので、レール走行車の台車本体への乗降後、スロープをそのままにした状態で台車本体を移動させることができる。よって、作業効率がよい。
【0021】
請求項の本発明によれば、スロープは、レール走行車の自走による乗降を、切欠きの地面から浮いた部分を利用して案内するので、レール走行車の乗降をスムーズに行うことが出来る。
【0022】
請求項の本発明によれば、スロープの先端部が尖鋭となることを回避できるので、スロープの先端部によって作業者が負傷したり周囲に悪影響が及んだりすることが防止でき、安全性が高い。
【0023】
請求項の本発明によれば、台車側レール自体に屈曲部を形成することなくスロープを形成することができる。
【0024】
請求項の本発明によれば、レール走行車が台車本体上において所定の停止位置で自動的に停止するので、台車本体上へのレール走行車の乗り込みの際に作業者が台車本体の姿勢保持に専念できる。よって、作業性がよい。また、非接触式センサを用いるので、接触式のものを採用した場合のような衝撃が生じることがないほか、故障も生じ難く、コスト上も有利である。
【0025】
請求項の本発明によれば、台車本体に対する方向固定輪、方向自在輪及びハンドルの取付位置を変更することで、台車本体の進行方向の左右のいずれ側でレール走行車による作業が行われる場合にも、台車本体によるレール走行車の運搬方向の前方に方向固定輪を位置させ且つ後方に方向自在輪と前記ハンドルとを位置させることができる。このため、台車本体の進行方向の左右のいずれ側でレール走行車による作業が行われる場合でも、台車本体の操向操作及び移動操作を作業者が簡単且つ円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の一形態に係るレール走行車運搬台車の使用環境を示す平面図である。
図2図1中のレール走行車の平面図である。
図3図1中のレール走行車の側面図である。
図4】本発明の実施の一形態に係るレール走行車運搬台車の斜視図である。
図5図4のレール走行車運搬台車を別の角度から見た斜視図である。
図6図4のレール走行車運搬台車の平面図である。
図7図4のレール走行車運搬台車の正面図である。
図8図4のレール走行車運搬台車のスロープとレール走行車の車輪との関係を示す拡大正面図である。
図9】(a)は図8の平面図であり、(b)及び(c)は、(a)とは異なる態様の車輪とスロープとの関係を示す平面図である。
図10】他の態様の台車側レールを示す側面図である。
図11】スロープの形成方法の一例を示す説明図である。
図12】レール走行車が作業用レールから地面を介して台車本体上へと乗り込んだ状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係るレール走行車運搬台車(以下、単に「台車」という。)1の使用環境の一例を説明する。
【0029】
図1に示すように、農業用ハウス2内に作物栽培用の多数の畝3,3,3・・・が並列に配設され、隣り合う畝3,3同士の間には、多数の作業通路4,4,4・・・が配設される。各作業通路4には一対の作業用レール5,5が敷設され、この一対の作業用レール5,5上をレール走行車(レール走行作業車)としての自走式の液体散布車6が往復移動する。但し、本発明において、レール走行車が液体散布車に限定されないことは勿論であり、例えば、施肥、種まき、収穫等、作業通路で何等かの作業を行う作業車であればよい。
【0030】
前記液体散布車6は、作業者Wが始動操作をすることで作業通路4の始端4aを出発し、作業通路4の終端4bに達すると自動的に進行方向を切り換える。そして、液体散布車6は、作業通路4を前後(図1では左右)に往復移動する際に、進行方向の左右両側の畝3,3で生育する作物に対して防除液等の液体の散布作業を行う。
【0031】
作業通路4の始端4a側の枕地7には、作業通路4の配列方向(図1では上下)に延びる台車通路8が配設される。液体散布車6は、作業通路4の始端4aに戻ると自動的に散布を停止し、台車通路8で待機している台車1に自走で乗り込んで自動で停止する。台車1に液体散布車6が乗り込む際に、作業者Wが台車1の位置を微調整しても良い。その後、作業者Wが台車1を押して次の作業通路4の入口位置Pまで人力で移動させる。但し、台車通路8における台車1の移動は、例えば実公平1-11333号公報や実開平2-96882号公報等に示されているように、自動式とすることも可能である。
【0032】
作業者Wが次の作業通路4の入口位置Pに台車1を停止させ、液体散布車6の始動操作を行うと、液体散布車6が自走で台車1から地面に降り、作業通路4の作業用レール5,5に乗って、前記と同様に作業通路4を往復移動しながら液体の散布作業を行う。以上の繰り返しにより、多数の作業通路4,4,4・・・での液体散布作業が進行する。
【0033】
図2及び図3に示すように、液体散布車6は、作業用レール5,5上を自走可能な車体9上に、自動巻取式ホースリール10と噴霧ノズル装置11とを搭載している。自動巻取式ホースリール10は、作業通路4における液体散布車6の往路の自走に同期してホースHを繰り出し、液体散布車6の復路の自走に同期してホースHを巻き取る。自動巻取式ホースリール10は、図3に示すように、車体9に搭載されるバッテリ12を電源とする正逆回転自在な電動モータ13を駆動源として回転駆動される。
【0034】
図1に示すように、ホースHの上流側端部は作業通路4の始端4a側の枕地7に配設される定置式ポンプ14の吐出口に連通され、ホースHの下流側端部は噴霧ノズル装置11に連通される。定置式ポンプ14は、同じく枕地7に配設される液体タンク15内の液体を、ホースHを介して噴霧ノズル装置11へと圧送する。噴霧ノズル装置11は、液体散布車6の往路及び/又は復路の自走時に、走行方向の左右両側の畝3,3の作物に対して液体散布を行う。
【0035】
図2及び図3に示すように、液体散布車6の車体9には前車軸16と後車軸17(便宜的に図2及び図3で見て左方を前とする)とがそれぞれ回動自在に支持され、各車軸16,17の両端には、作業用レール5,5上を転動可能な車輪18が配設されている。図2及び図3の例では、前記車輪18として、外周面の幅方向中央部にレール嵌合用の切欠きとしての溝19を有するH形車輪が使用され、作業用レール5もH形車輪に対応する形状のものが使用されている。
【0036】
液体散布車6の車輪18は、前記電動モータ12を駆動源として回転駆動される。電動モータ12と各車輪18との間には、常に液体散布車6の進行方向前側の車輪が駆動輪として作動するように、前後でそれぞれ逆方向に作用する一方向クラッチ(図示せず)を介装すると、液体散布車6の畝間走行性が良好となり、好適である。
【0037】
図3に示すように、液体散布車6の車体9には、該車体9を自動的に停止させるために磁気センサ等の非接触式センサ20が配設される。これに対応して、図1に示すように、非接触式センサ20によって検知される金属板等の被検知材21が、各作業通路4の終端4b側に配設される。非接触式センサ20が被検知材21を検知すると、この検知信号が図3の制御ユニット22に入力されて電動モータ13の回転方向が自動的に切り換わり、液体散布車6の進行方向と自動巻取式ホースリール10の回転方向とが自動的に切り換わる。
【0038】
次に、図4図7を参照して、前記台車1について詳細に説明する。台車1は、前記液体散布車6を載せて運搬可能な台車本体23と、該台車本体23上で前記液体散布車6を支持する一対の台車側レール24,24と、を備える。
【0039】
台車本体23は、台座25と、該台座25を地面G上で移動可能に支持する車輪26と、を備える。台座25は、例えば鉄板等の剛性金属板と骨材とで形成され、図示例では、台車本体23の車高を極力低くするために、台座25の前後の左右位置に車輪取付用の縦ブラケット27が上向きに折り曲げ形成されている。各縦ブラケット27の上部には、水平ブラケット28が固着される。そして、車輪26と車輪ブラケット29とが一体化された車輪ユニット30が、各水平ブラケット28に対してボルトとナット等からなる固着具で取り外し可能に固着されている。台車本体23の車高を極力低くすることで、一対の台車側レール24,24への液体散布車6の乗り込みを小さな動力で確実に実行させることができる。
【0040】
なお、縦ブラケット27に対する水平ブラケット28の取付高さ位置は可変としておくのが好ましい。こうしておくことで、台車通路8(図1参照)の路面の凹凸状況や台車通路8の表面が土であるかコンクリートであるか等、台車通路8の路面の状況に応じて台車本体8の車高を作業し易い適切な高さに変更できるからである。図示例では、水平ブラケット28の取付孔を縦ブラケット27上に上下複数設けることで、ボルトとナット等からなる固着具による縦ブラケット27に対する水平ブラケット28の取付高さ位置を変更できるようにしてある。
【0041】
台座25には、台車本体23を操向操作及び移動操作するための手押し式のハンドル31が取り外し可能に固着されている。図示例ではT字状のハンドルとされているが、下向き開口コ字状等、操向操作及び移動操作に便利な適宜の形状のハンドルを採用することができる。
【0042】
本実施の形態では、前記車輪ユニット30として、方向固定輪26aと方向自在輪26bとを有するものを用いている。方向固定輪式の車輪ユニット30aは台車本体23の進行方向の前方Fに配設し、方向自在輪式の車輪ユニット30bは台車本体の進行方向の後方Bに配設するのが好ましい。そして、ハンドル31を台車本体23の進行方向の後方Bに配設することにより、作業者Wが台車本体23の後方Bに立って該台車本体23の操向操作を小さな力で円滑に行うことができる。また、ハンドル31と方向自在輪式車輪ユニット30bが同じ側に配設されていて、自走する液体散布車6が台車1に乗降する際に作業者Wは台車1を操作し易い。
【0043】
前記一対の台車側レール24,24は、前記一対の作業用レール5,5と同じ形式のレールであり、且つ一対の作業用レール5,5と同間隔で配設される。一対の台車側レール24,24は、台車本体23上において台車本体23の進行方向に対して左右(L-R)方向に延びるように台車本体23上に配設される。したがって、図1に示すように、作業通路4の入口位置Pに台車通路8の延び方向を前後(F-B)方向として台車を配置することにより、一対の作業用レール5,5の延長線上に一対の台車側レール24,24を位置させることができる。以下、台車1のこの位置を乗降時位置という。
【0044】
図4図7に示すように、各台車側レール24は、乗降時位置における作業通路4側の端部にスロープ24aを有する。このスロープ24aは、台車側レール24と作業用レール5との間で地面Gを介して液体散布車6の自走による乗降を案内する。このスロープ24aがあることで、乗降時位置にある台車1の一対の台車側レール24,24と各作業通路4の一対の作業用レール5,5との間で、地面Gを介して液体散布車6を自走で乗降させることができる(図12参照)。なお、図12に示すように、作業用レール5の台車1側の端部にも、液体散布車6の車輪18を案内するスロープ5aが設けられる。
【0045】
図7に明瞭に示されているように、本実施の形態では、液体散布車6の台車本体23への乗降時に、地面Gとスロープ24aとの間で液体散布車6の車輪18の転動が良好な範囲でスロープ24aの先端部24bが地面Gから浮いている。このため、液体散布車6の台車本体23への乗降後、スロープ24aをそのままにした状態で台車本体23を移動させることができる。よって、作業効率がよい。
【0046】
ここで、「地面Gとスロープ24aとの間で液体散布車6の車輪18の転動が良好な範囲」とは、図8に拡大して示すように、スロープ24aの先端部24bの上面24cと地面Gとの間の上下間隔Sが、液体散布車6の車輪18の切欠き19におけるレール踏面18aとフランジ外周面18bとの間の距離Dと同じか該距離Dよりも小さい場合をいう。液体散布車6の車輪18が図9(b)(c)に示す形式のものである場合も同様である。この条件が満たされてさえいれば、スロープ24aの先端部24bが地面Gから浮いていても、地面Gとスロープ24aとの間での液体散布車6の車輪18の転動には全く支障がない。
【0047】
なお、スロープ24aは、レール走行車の自走による乗降を、車輪18の切欠き19の地面から浮いた部分を利用して案内するという特徴は、スロープ24aの長さをより短くし、且つ、スロープ24aの傾斜をより緩やかにすることにもつながる。スロープ24aの長さをより短くできれば、台車1の側方への余計な突出を極力抑えることができるので、台車1の取扱性が向上する。また、スロープ24aの傾斜をより緩やかにすることができれば、液体散布車6の台車本体23への乗り込みが小さな動力で円滑且つ確実に行える。
【0048】
他の実施の形態として、液体散布車6の台車本体23への乗降時にのみスロープ24aの先端部24bが地面Gに接触するように構成することもできる。この場合には、スロープ24aの部分を上方へ折り畳み可能に構成するなどして、台車本体23の移動時にはスロープ24aの先端部24bを地面Gから離すことができるようにしておけばよい。
【0049】
限定はされないが、図6に示すように、スロープ24aを上から見た形状は、液体散布車6の車輪18を受入れ易いように先細り形状とするのが好ましい。このようにすれば、一対の作業用レール5,5に対する一対の台車側レール24,24の位置合わせについて許容範囲が生ずるので、レール同士の位置合わせが容易に行える。また、台車本体23上への液体散布車6の乗り込み時に該液体散布車6の車輪18がスロープ24aと結合し易く、台車本体23に対する液体散布車6の乗り込みが円滑且つ確実に行われる。
【0050】
なお、平面視(上面視)におけるスロープ24aの先細り形状は、液体散布車6の車輪18のレール係合溝の形状との関係で定まる。例えば、図2の液体散布車6の車輪18は、図9(a)に拡大して示すように、外周面の幅方向中央部にレール嵌合用の切欠きとして溝19を有するH形車輪であるので、これに対応して、スロープ24aは、上から見て左右の両側面が台車側レール24の中心軸線Xに向かって均等に近づく先細り形状とするのが好ましい。
【0051】
また、図9(b)に示すように、液体散布車6の車輪18が、レール踏面32の外側にフランジ33を有する車輪である場合には、これに対応して、スロープ24aは、上から見てスロープ24aの外側面24dがスロープ24aの内側面24eに向かって近づく先細り形状とするのが好ましい。
【0052】
また、図9(c)に示すように、液体散布車6の車輪18が、切欠き32の内側にフランジ33を有する電車式の車輪である場合には、これに対応して、スロープ24aは、上から見てスロープ24aの内側面24eがスロープ24aの外側面24dに向かって近づく先細り形状とするのが好ましい。
【0053】
限定はされないが、図8に示すように、スロープ24aの先端部24bには上下方向の厚みTがあることが好ましい。このようにすれば、先細り形状のスロープ24aの先端部24bが尖鋭となることを回避できるので、スロープ24aの先端部24bによって作業者が負傷したり周囲に悪影響が及んだりすることが防止でき、安心して使用できる。図8の例では、スロープ24aの先端部24bに、台車本体23を構成する台座25の肉厚分だけ上下方向の厚みTがある。
【0054】
限定はされないが、図8の例では、台車側レール24が、台車本体23上で水平に延びる上面部34と、同じく前記台車本体23上で前記上面部34より長く水平に延びる下面部35と、を備え、前記上面部34の先端と前記下面部35の先端との間に前記スロープ24aが延在する。この構成によれば、台車側レール24自体に屈曲部を形成することなくスロープ24aを形成することができる。但し、図10に示すように、台車側レール24の先端部を下方へ屈曲させてスロープ24aを形成してもよいことは勿論である。
【0055】
限定はされないが、図8の例では、台車側レール24が、台車本体23上で水平に延びる水平レール部36と、該水平レール部36の先端に連結される前記スロープ24aと、を備え、前記水平レール部36が円筒状の外周面を有する棒材で形成され、前記スロープ24aが、図11に示すように、水平レール部36を構成する前記棒材と同サイズの棒材37を傾斜面38に沿って斜めに切断して得られる切断部材39で形成される。この場合、水平レール部36と切断部材39とをそれぞれ準備し、それらを連結することで台車側レール24を作製することができる。よって、台車側レール24を低コストで製造することができる。なお、図11に示すように、一つの棒材37から二つの切断部材39,39が得られることも、コスト節減に貢献する。
【0056】
図12には、スロープ24aを介して液体散布車6が台車本体23上に乗り込んで停止した状態が示されている。液体散布車6は、台車本体23上の所定の停止位置に自動的に停止する。この自動停止を可能とするために、台車本体23には、液体散布車6の前記非接触式センサ20によって検知される金属板等の被検知材40(図4図6参照)が配設される。
【0057】
本実施の形態では、台車本体23の台座25が鉄等の金属板で形成されているので、台座25の一部が被検知材40として液体散布車6の非接触式センサ20で検知されるようにしてある。これにより、液体散布車6が台車本体23上において所定の停止位置で自動的に停止するので、作業性がよい。また、非接触式センサ20を用いるので、接触式のものを採用した場合のような衝撃が生じることがないほか、故障も生じ難く、コスト上も有利である。
【0058】
なお、図12図4及び図5に示すように、台車本体23においてスロープ24aとは反対側の位置には、ホースホルダ41が配設されている。このホースホルダ41は、一対の台車側レール24,24のほぼ中央位置に配設され、液体散布車6の自動巻取式ホースリール10によって繰り出し及び巻き取りされるホースHの所定位置を保持する。
【0059】
図4図7を参照して既に述べたように、本実施の形態では、方向固定輪式の車輪ユニット30aを台車本体23の進行方向の前方Fに配設し、方向自在輪式の車輪ユニット30bを台車本体23の進行方向の後方Bに配設し、手押し式のハンドル31を台車本体23の進行方向の後方Bに配設してある。そして、図1に示すように、ハンドル31を操作する作業者Wから見て左側に広がる畝3の列に対して液体散布車6にて作業を行い、この液体散布車6を台車1で次の作業通路4の入口位置Pへと運搬するようになっている。
【0060】
これに対し、図1とは反対に、ハンドル31を操作する作業者Wから見て右側に広がる畝の列に対して液体散布車6にて作業を行い、この液体散布車6を台車1で次の作業通路の入口位置へと運搬したい場合もある。この場合にも、作業者Wが台車1の後方に立って台車1の操向操作及び移動操作を少ない労力で円滑に行えるように、方向固定輪式の車輪ユニット30aが台車本体23の進行方向の前方Fに位置し、方向自在輪式の車輪ユニット30bとハンドル31とが台車本体23の進行方向の後方Bに位置することが好ましい。
【0061】
そこで、本実施の形態では、方向固定輪式の車輪ユニット30aと方向自在輪式の車輪ユニット30bとハンドル31とが、台車本体23の前後で付け替え可能とされている。これにより、台車本体23の進行方向の左右のいずれ側で液体散布車6による散布作業が行われる場合でも、台車本体23による液体散布車6の運搬方向の前方Fに方向固定輪式の車輪ユニット30aを位置させ且つ後方Bに方向自在輪式の車輪ユニット30bとハンドル31とを位置させることができる。
【0062】
具体的には、図4及び図5に示すように、台車本体23の前後の水平ブラケット28に対し、方向固定輪式の車輪ユニット30aと方向自在輪式の車輪ユニット30bのいずれをも取付可能な汎用取付孔群42を設け、ボルト及びナット等からなる固着具でいずれの方式の車輪ユニット30a,30bでも取り付け可能としてある。同様に、台車本体23の前後両側にハンドル取付孔43を設け、ボルト及びナット等からなる固着具で台車本体23の前後のいずれにもハンドル31を取り付け可能としてある。
【0063】
なお、左右一対の方向自在輪式の車輪ユニット30b,30bとハンドル31とを一体に形成し、これらを一体として台車本体23の前後で付け替え可能とすることもできる。このようにすれば、付け替え作業の手間が省けて好適である。
【0064】
他の態様として、台車本体23の前後いずれの車輪も方向自在輪26bとしておき、ハンドル31のみを台車本体23の前後で付け替え可能とすることもできる。
【0065】
図4及び図7において、符号44は、台車本体23を地面Gに対して固定するためのブレーキ装置を示している。このブレーキ装置44は、台車本体23に上下動可能に支持されるプッシュロッド45と、このプッシュロッド45を上昇位置と下降位置とに固定するストッパ46と、を備える。ストッパ46を解除して上昇位置にあるプッシュロッド45を下降位置へと押し下げて地面Gに押圧させ、ストッパ46で再度固定することで、ブレーキ装置44が作用する。例えば、台車1に対する液体散布車6の乗降時にブレーキ装置44を利かせておけば、台車1の安定性が高まり、作業者Wがハンドル31を保持していなくても液体散布車6の乗降が可能となる。また、作業者Wは、台車1に乗った液体散布車6を置いて異なる作業をすることも可能である。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 レール走行車運搬台車
4 作業通路
5 作業用レール
6 レール走行車(液体散布車)
18 レール走行車の車輪
19 切欠き(溝)
20 非接触式センサ
23 台車本体
24 台車側レール
24a スロープ
24b スロープの先端部
26a 方向固定輪(台車本体の車輪)
26b 方向自在輪(台車本体の車輪)
27 縦ブラケット
31 ハンドル
32 切欠き
34 台車側レールの上面部
35 台車側レールの下面部
40 被検知材
G 地面
T スロープの先端部の厚み
F 台車本体の進行方向の前方
B 台車本体の進行方向の後方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12