(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 21/072 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A63B21/072 Z
(21)【出願番号】P 2018108044
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501223515
【氏名又は名称】鈴木 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀俊
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0086522(KR,A)
【文献】特開昭59-168863(JP,A)
【文献】特開昭60-072572(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216221(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/00-21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、かつ筒状の外装体と、
可撓性を有し、かつ前記外装体の内側に嵌入された筒状の内装体と、
前記内装体の内側に充填された粒子状体と、
前記内装体が嵌入された前記外装体および前記粒子状体が充填された前記内装体の各々の両端の開口を塞ぐキャップ部材と
、
前記内装体の前記内側に充填された接着剤とを備え、
前記接着剤は前記内装体の両端の前記開口を塞ぐように充填されている、トレーニング器具。
【請求項2】
前記外装体は、前記内装体よりも衝撃吸収性能が高い、請求項
1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
前記外装体の厚みは、前記内装体の厚みよりも大きい、請求項
2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
前記粒子状体の比重は1よりも大きい、請求項1~
3のいずれか1項に記載のトレーニング器具。
【請求項5】
前記粒子状体は、複数の鉄の粒子を含んでいる、請求項
4に記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球、ゴルフ、バドミントンなどの肩を大きく動かすスポーツにおいては、パフォーマンス向上および故障予防などの面から肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることが求められる。
【0003】
実用新案登録第3092615号公報には、肩周辺の筋運動を活発化させることが可能なトレーニング器具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載のトレーニング器具では、使用者の肩・脇腹・背中にかかる負荷が不十分であるため、肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることは困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることができるトレーニング器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトレーニング器具は、可撓性を有し、かつ筒状の外装体と、可撓性を有し、かつ外装体の内側に嵌入された筒状の内装体と、内装体の内側に充填された粒子状体と、内装体が嵌入された外装体および粒子状体が充填された内装体の各々の両端の開口を塞ぐキャップ部材とを備えている。
【0008】
本発明のトレーニング器具によれば、使用時に粒子状体が動くことにより遠心力が大きくなる。このため、使用者の肩・脇腹・背中にかかる負担を大きくすることができる。これにより、肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることができる。また、キャップ部材により粒子状体がトレーニング器具から流出することを防止することができる。
【0009】
上記のトレーニング器具は、好ましくは、内装体の内側に充填された接着剤をさらに備えている。接着剤は内装体の両端の開口を塞ぐように充填されている。このため、接着剤により粒子状体が内装体の両端の開口から流出することを防止することができる。したがって、粒子状体がトレーニング器具から流出することをさらに確実に防止することができる。
【0010】
上記のトレーニング器具においては、好ましくは、外装体は、内装体よりも衝撃吸収性能が高い。このため、スイング中にトレーニング器具が使用者等に接触したときに、外装体により衝撃が吸収され易い。したがって、安全性を向上させることができる。
【0011】
上記のトレーニング器具においては、好ましくは、外装体の厚みは、内装体の厚みよりも大きい。このため、外装体の衝撃吸収性能を高くすることが容易となる。したがって、安全性を向上させることが容易となる。
【0012】
上記のトレーニング器具においては、好ましくは、粒子状体の比重は1よりも大きい。このため、粒子状体の重量を確保することが容易となる。したがって、使用者にかかる負荷を十分に大きくすることが容易となる。
【0013】
上記のトレーニング器具においては、好ましくは、粒子状体は、複数の鉄の粒子を含んでいる。このため、粒子状体の重量を確保することができる。したがって、使用者にかかる負荷を十分に大きくすることができる。また、鉄の粒子は安価であるため、トレーニング器具の製造コストを低減することが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のトレーニング器具によれば、肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるトレーニング器具の構成を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図1のトレーニング器具がしなった状態を示す正面図である。
【
図6】実施例1におけるトレーニング器具を用いたトレーニングの一連の動作を示す図である。
【
図7】実施例2におけるトレーニング器具を用いたトレーニングの一連の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1および
図2を参照して、本発明の一実施の形態におけるトレーニング器具の構成について説明する。
図1および
図2に示されるように、本実施の形態におけるトレーニング器具は、外装体10と、内装体20と、粒子状体30と、キャップ部材40と、接着剤50と、仕切り部材60とを備えている。
【0017】
外装体10は可撓性を有している。外装体10は筒状に構成されている。外装体10は両端に開口OP(第1開口OP1)が設けられている。外装体10は両端の開口OPをつなぐ内部空間を有している。外装体10の外周面はトレーニング器具の外周面を構成している。外装体10の外径は例えば55mmであり、内径は例えば45mmである。
【0018】
外装体10は弾力性を有している。外装体10は発泡体により構成されていてもよい。外装体10の材料として、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、クロロプレン、SBR(Styrene-butadiene Rubber)、NBR(Nitrile Butadiene Rubber)、NR(Natural Rubber)、EVA(Ethylene-Vinyl Acetate)、スポンジ、合成樹脂発泡体が用いられてもよい。これらの材料によれば、外部の衝撃に耐えつつ、トレーニング器具1のしなりに追随する柔らかさを充たすことができる。
【0019】
外装体10は、内装体20よりも衝撃吸収性能が高い。この衝撃吸収性能の高低は、トレーニング器具1においては、アスカーC硬度の高低をもって判定される。つまり、外装体10のアスカーC硬度が内装体20のアスカーC硬度よりも低い場合、外装体10は、内装体20よりも衝撃吸収性が高いと判定される。外装体10の厚みは、内装体20の厚みよりも大きい。外装体10の厚みは外装体10の径方向の厚みである。内装体20の厚みは内装体20の径方向の厚みである。外装体10の内周面に内装体20が内嵌めされている。
【0020】
内装体20は可撓性を有している。内装体20は筒状に構成されている。内装体20は両端に開口OP(第2開口OP2)が設けられている。内装体20は両端の開口OPをつなぐ内部空間を有している。内装体20は外装体10の内側に嵌入されている。内装体20の外周面に外装体10の内周面が外嵌めされている。
【0021】
内装体20は、外装体10の内周面と内装体20の外周面とが互いに摺動可能となるように構成されている。つまり、内装体20の外表面は、外装体10の内周面に固着されていない。内装体20の内周面で取り囲まれた内部空間に粒子状体30が配置されている。
【0022】
内装体20の材料として、例えば、EVA、PVC(Polyvinyl Chloride)、NR、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、クロロプレン、SBR、NBRが用いられてもよい。これらの材料によれば、トレーニング器具1のしなりを実現させるための柔らかさを充たすことができる。
【0023】
粒子状体30は内装体20の内側に充填されている。粒子状体30は流動性を有している。粒子状体30は、複数の粉、粒などの集合体である。粒子状体30の比重は1よりも大きい。つまり、粒子状体30の密度は水の密度よりも大きい。粒子状体30は、複数の鉄の粒子を含んでいる。粒子状体30は、複数の鉄の粒子と、不可避不純物から構成されていてもよい。粒子状体30の充填率は、例えば80%以上100%未満であってもよい。この充填率とは、挿入した粒子状体30の体積/内装体20の容積×100である。また、粒子状体30の粒径は、例えば、0.01mm以上10.0mm以下であってもよい。
【0024】
キャップ部材40は、外装体10の開口OP(第1開口OP1)および内装体の開口OP(第2開口OP2)から粒子状体30が流出しないようにするためのものである。キャップ部材40は、内装体20が嵌入された外装体10および粒子状体30が充填された内装体20の各々の両端の開口OPを塞ぐように構成されている。
【0025】
キャップ部材40は、内装体20が嵌入された外装体10の開口OP(第1開口OP1)を塞ぐように構成されている。キャップ部材40は、外装体10の両端の開口OP(第1開口OP1)をそれぞれ塞ぐように構成されている。キャップ部材40は、外装体10の一端および他端のそれぞれに取り付けられている。キャップ部材40は、外装体10の開口OP(第1開口OP1)を内側から塞ぐように構成されている。キャップ部材40は外装体10の先端から開口OP(第1開口OP1)内に挿入されている。キャップ部材40は外装体10の先端の内周面に当接している。キャップ部材40は外装体10に内嵌めされている。
【0026】
キャップ部材40は、粒子状体30が充填された内装体20の開口OP(第2開口OP2)を塞ぐように構成されている。キャップ部材40は、内装体20の両端の開口OP(第2開口OP2)をそれぞれ塞ぐように構成されている。キャップ部材40は、内装体20の一端および他端のそれぞれに取り付けられている。キャップ部材40は、内装体20の軸方向に内装体20を挟むように配置されている。キャップ部材40は、内装体20の開口OP(第2開口OP2)を外側から覆うように構成されている。キャップ部材40は内装体20の先端の外周面に当接している。キャップ部材40は、内装体20に外嵌めされている。キャップ部材40は、内装体20の軸方向に接着剤50よりも内側まで延在していてもよい。
【0027】
接着剤50は、内装体20の内側に充填されている。接着剤50は、内装体20の両端の開口OP(第2開口OP2)を塞ぐように充填されている。接着剤50は、粒子状体30を挟むように配置されている。接着剤50は内装体20の開口OP(第2開口OP2)を内側から塞ぐように構成されている。接着剤50は、内装体20の軸方向に幅を有するように配置されている。接着剤50の軸方向の幅は、トレーニング器具1の軸方向の全長の20分の1以上10分の1以下の寸法を有していることが好ましい。接着剤50は、トレーニング器具1のしなりを制限するため、この寸法にすることで、粒子状体30を封止しつつ、トレーニング器具1のしなりを確保することが容易となる。接着剤50の軸方向の幅は例えば50mmである。
【0028】
接着剤50は内装体20の内周面に接着されている。接着剤50はキャップ部材40に接着されている。接着剤50は仕切り部材60に接着されている。接着剤50は、粒子状体30の両側に配置された仕切り部材60を挟むように配置されている。接着剤50の材料は例えばホットメルトである。なお、キャップ部材40は接着剤50に1または複数のタッカーで固定されていてもよい。
【0029】
仕切り部材60は、粒子状体30と接着剤50とを仕切るためのものである。仕切り部材60により粒子状体30が内装体20に充填された状態で接着剤50を充填することが容易となる。仕切り部材60は、内装体20の内側に配置されている。仕切り部材60は、粒子状体30と接着剤50との間の内装体20の内部空間を塞ぐように構成されている。仕切り部材60は粒子状体30を挟むように配置されている。仕切り部材60の材料は例えばEVAである。
【0030】
トレーニング器具1の両端において外装体10と内装体20との間にキャップ部材40が挟まれている。このため、トレーニング器具1の両端は、それ以外の部分に比べて直径が大きくなる。トレーニング器具1の側面は楕円形状を有していてもよい。また、トレーニング器具1の軸方向に直交する断面は楕円形状を有していてもよい。
【0031】
図1および
図3を参照して、トレーニング器具1は可撓性を有している。トレーニング器具1は、トレーニング器具1の軸方向に直線状に延びる状態と、軸方向に対して湾曲する状態とに変形可能に構成されている。トレーニング器具1は、使用者がトレーニング器具1を用いてトレーニングしたときに、しなるように変形可能に構成されている。
【0032】
トレーニング時にしなりを実現するために、トレーニング器具1は0.5m以上の長さを有していることが好ましい。トレーニング器具1が0.5m以上の長さを有していることにより使用者は片手でトレーニング器具1を把持してトレーニングすることが容易となる。また、トレーニング器具1は4m以下の長さを有していることが好ましい。トレーニング器具1が4mを超える長さを有している場合には使用者が一人でトレーニングすることが困難である。なお、トレーニング器具1は1.5m以下の長さを有していることが特に好ましい。トレーニング器具1が1.5m以下の長さを有していることにより使用者は両手でトレーニング器具を把持してトレーニングすることが容易となる。
【0033】
トレーニング器具1の重量は0.5kg以上8kg以下であることが好ましい。
次に、本実施の形態におけるトレーニング器具1の作用効果について説明する。
【0034】
本実施の形態におけるトレーニング器具1によれば、使用時に粒子状体30が動くことにより遠心力が大きくなる。このため、使用者の肩・脇腹・背中にかかる負担を大きくすることができる。これにより、肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることができる。つまり、肩甲骨および胸椎の可動域を拡大させることができる。また、これにより、使用者は自分の身体をより思い通りに扱える能力を鍛えることができる。つまり、身体操作性を向上させることができる。また、キャップ部材40により粒子状体30がトレーニング器具1から流出することを防止することができる。トレーニング時に両端の速度が大きくなるため、キャップ部材40により両端の開口OPを塞ぐことにより粒子状体30が開口OPから飛び出さないようにすることができる。
【0035】
セルフストレッチでは、負荷が足りないため、短時間で肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることは困難である。また、パートナーストレッチでは、負荷を十分にかけることが可能となるが、長い時間がかかる。これに対して、本実施の形態におけるトレーニング器具1では、セルフストレッチおよびパートナーストレッチに比べて短時間で肩甲骨および胸椎の可動域を向上させることができる。
【0036】
本実施の形態におけるトレーニング器具1は、内装体20の内側に充填された接着剤50を備えている。接着剤50は内装体20の両端の開口OP(第2開口OP2)を塞ぐように充填されている。このため、接着剤50により粒子状体30が内装体20の両端の開口OP(第2開口OP2)から流出することを防止することができる。これにより、キャップ部材40と接着剤50とで二重に粒子状体30の流出を防止することができる。したがって、粒子状体30がトレーニング器具1から流出することをさらに確実に防止することができる。よって、トレーニング時に粒子状体30がトレーニング器具1の外に飛び出すことを防止することができる。
【0037】
本実施の形態におけるトレーニング器具1においては、外装体10は、内装体20よりも衝撃吸収性能が高い。このため、スイング中にトレーニング器具1が使用者等に接触したときに、外装体10により衝撃が吸収され易い。したがって、安全性を向上させることができる。
【0038】
本実施の形態におけるトレーニング器具1においては、外装体10の厚みは、内装体20の厚みよりも大きい。このため、外装体10の衝撃吸収性能を高くすることが容易となる。したがって、安全性を向上させることが容易となる。
【0039】
本実施の形態におけるトレーニング器具1においては、粒子状体30の比重は1よりも大きい。このため、粒子状体30の重量を確保することが容易となる。したがって、使用者にかかる負荷を十分に大きくすることが容易となる。
【0040】
本実施の形態におけるトレーニング器具1においては、粒子状体30は、複数の鉄の粒子を含んでいる。このため、粒子状体30の重量を確保することができる。したがって、使用者にかかる負荷を十分に大きくすることができる。また、鉄の粒子は安価であるため、トレーニング器具1の製造コストを低減することが容易となる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、上記の本実施の形態と同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0042】
本実施の形態におけるトレーニング器具1と同様の構成を備えたトレーニング器具1を準備した。実施例のトレーニング器具1では、全長は1mとし、重量は4kgとした。また、接着剤50の幅は50mmとした。
【0043】
このトレーニング器具1を用いたトレーニングの前後において測定者(被験者)の肩甲骨および胸椎の柔軟性を測定した。このトレーニング器具1を用いたトレーニングとして後述する実施例1および実施例2のトレーニングを行った。実施例1のトレーニングを約10分間行った後に実施例2のトレーニングを約10分間行った。また、トレーニング前ならびに実施例1および実施例2のトレーニング後の胸椎回旋テストおよび広背筋テストにより測定者の肩甲骨および胸椎の柔軟性を測定した。
【0044】
測定者は、10年以上の野球経験を有する者とした。測定者の人数は、25名とした。また、測定項目に関して、ウィルコクソンの符号順位検定により群間の差を検定した。有意水準は5%未満とした。
【0045】
図4を参照して、胸椎回旋テストについて説明する。
図4(a)~(b)は、胸椎回旋テストの一連の動作を示している。
図4(a)は測定者が胸椎を回旋する前の状態を示している。
図4(b)は測定者が胸椎を回旋した後の状態を示している。
図4(a)に示されるように、測定者は四つん這いの状態から右手の中指でつむじを触った。続いて、
図4(b)に示さるように、
図4(a)に示された状態から測定者は胸椎を右に回旋させた。その際、視線は回旋とともに移動させた。
【0046】
このように胸椎を回旋されたときの角度を簡易角度計により測定した。この簡易角度計で測定した角度に応じて点数を付けた。地面と直交する軸の角度を0°とした。この0°から30°毎に1点ずつ点数が増加するように点数を付けた。最大の点数は7点とした。この場合、角度は180°以上となる。具体的には、角度が30°未満の場合に1点とし、60°未満の場合に2点とし、90°未満の場合に3点とし、120°未満の場合に4点とし、150°未満の場合に5点とし、180°未満の場合に6点とし、180°以上の場合に7点とした。
【0047】
図5を参照して、広背筋テストについて説明する。
図5(a)~(b)は、広背筋テストの一連の動作を示している。
図5(a)は広背筋テストの初期姿勢を示している。
図5(b)は広背筋テストの測定姿勢を示している。
図5(a)に示されるように、測定者は壁に背中を付けた状態で両肘および両掌を合わせた。
図5(b)に示されるように、
図5(b)に示された状態から測定者は両腕を前方挙上し、両肘が互いに離れた位置を測定した。この位置に応じて点数を付けた。点数は、この位置が顎より下の場合に-2点とし、顎以上鼻未満の場合に-1点とし、鼻以上眉毛未満の場合に0点とし、眉毛より上の場合に1点とした。
【0048】
図6を参照して、上記のトレーニング器具1を用いたトレーニングの実施例1について説明する。
図6(a)~(e)は、実施例1におけるトレーニング器具1を用いたトレーニングの一連の動作を示している。実施例1は、トレーニング器具1を8の字状に動かすトレーニングを想定している。
図6(a)は測定者の最初の姿勢を示している。
図6(b)~(e)はスイングが実施される様子を示している。
【0049】
図6(a)に示されるように、測定者は、両手を肩幅の間隔に広げた状態において逆手でトレーニング器具1を把持した。トレーニング器具1は両端がたるむように変形した。測定者は、両足を肩幅の間隔に広げた状態で膝を軽く曲げた。測定者は、背筋を伸ばした状態で水平に対して45度上を見た。
【0050】
図6(a)に示される最初の状態から
図6(b)~(e)に示されるように、測定者は、下肢、体幹、目線を固定した状態でトレーニング器具1を用いてトレーニングを行った。
図6(b)に示されるように、測定者は両肘を伸ばした状態でトレーニング器具1を左上に投げるように振った。トレーニング器具1の高さの目安は、両肘が耳の高さとなる位置とした。続いて、
図6(c)に示されるように、測定者はトレーニング器具1を左下にそのまま下した。次に、
図6(d)に示されるように、測定者は両肘を伸ばした状態でトレーニング器具1を右上に投げるように振った。トレーニング器具1の高さの目安は、両肘が耳の高さとなる位置とした。続いて、
図6(e)に示されるように、測定者はトレーニング器具1を右下にそのまま下した。
図6(b)~(e)に示されるように、測定者を正面から見たときに、トレーニング器具1は横8の字(無限大記号)のように動いた。
【0051】
実施例1におけるトレーニングでは、トレーニング器具1の両端が振られた方向にしなることにより振られた方向にかかる遠心力が大きくなった。このため、測定者の肩・脇腹・背中にかかる負担が大きくなった。
【0052】
次に、
図7を参照して、上記のトレーニング器具1を用いたトレーニングの実施例2について説明する。
図7(a)~(d)は、実施例2におけるトレーニング器具1を用いたトレーニングの一連の動作を示している。実施例2は、ゴルフスイングを想定している。
図7(a)は、測定者の初期姿勢の状態を示している。
図7(b)はトップの状態を示している。
図7(c)は、ダウンスイングの状態を示している。
図7(d)はフォロースルーの状態を示している。
【0053】
図7(a)に示されるように、測定者は両手を肩幅の間隔に広げた状態において右手に対して左手が逆手になるようにトレーニング器具1を把持した。トレーニング器具1は両端がたるむように変形した。測定者は、両足を肩幅の間隔に広げた状態で膝を軽く曲げた。測定者はボール100が目の真下に位置するように前傾した。
【0054】
図7(b)に示されるように、測定者は、頭を固定して左肩があごの下に来るまで上半身を回転させた。測定者は左肩をあごにつけた。その際、測定者は、下半身を固定し、左肘を伸ばし、右肘を曲げた。
【0055】
続いて、
図7(c)に示されるように、測定者は、左肩および左腕主体で両肘を伸ばしたままトレーニング器具1を振った。測定者は、スイング中、右腕がボール100を追い越すまでは顔を固定し、その後視線を前に移した。
【0056】
続いて、
図7(d)に示されるように、測定者は、両肘が耳の高さ位置となるまで、トレーニング器具1を上げた。測定者は、視線を前に向け、右肩があごの下に来るまで、上半身を回転させた。
【0057】
実施例2におけるトレーニングでは、トレーニング器具1の両端が振られた方向にしなることにより振られた方向にかかる遠心力が大きくなった。このため、測定者の肩・脇腹・背中にかかる負担が大きくなった。
【0058】
図8を参照して、実施例1および実施例2のトレーニング前後の胸椎回旋テストの測定結果について説明する。
図8に示されるようにトレーニング前よりもトレーニング後の測定値が有意に大きくなった。したがって、トレーニング後に胸椎が回旋する角度が大きくなった。これにより、実施例1のトレーニングにより測定者の肩甲骨および胸椎の柔軟性が向上することが確認された。
【0059】
図9を参照して、実施例1および実施例2のトレーニング前後の広背筋テストの測定結果について説明する。
図9に示されるようにトレーニング前よりもトレーニング後の測定値が有意に大きくなった。したがって、トレーニング後に両肘が互いに離れる位置が高くなった。これにより、実施例2のトレーニングにより測定者の肩甲骨および胸椎の柔軟性が向上することが確認された。
【0060】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 トレーニング器具、10 外装体、20 内装体、30 粒子状体、40 キャップ部材、50 接着剤、60 仕切り部材、100 ボール、OP 開口。