(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20221121BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221121BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20221121BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221121BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221121BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221121BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20221121BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/14
H02J3/38 130
H02J13/00 311T
H02J7/00 A
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2018108323
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 龍朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 功太朗
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186290(JP,A)
【文献】特開2018-033273(JP,A)
【文献】特開2017-022864(JP,A)
【文献】特開2013-027214(JP,A)
【文献】特開2016-059186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
7/34-7/36
13/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続された第1の需要家、および前記第1の需要家とは独立して前記電力系統に接続された第2の需要家、を含む複数の需要家
のそれぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測部と、
予測された前記需要家ごとの前記需要電力量に基づいて、前記複数の需要家それぞれの前記時間単位ごとの受電電力量が、需要家ごとに定められた目標値以下となり、かつ、予め定められた第1の時間帯に含まれるいずれの前記時間単位においても、前記複数の需要家のそれぞれが有する蓄電池の蓄電残量から前記需要家ごとに定められた最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、前記複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となるように、
かつ、前記電力系統への逆潮流が発生しないように、前記需要家のそれぞれが有する蓄電池の前記時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する作成部と、
を備える蓄電池管理装置。
【請求項2】
前記作成部は、さらに、前記需要家ごとの前記時間単位ごとの受電電力量が前記目標値以下となり、かつ、前記第1の時間帯に含まれる第2の時間帯において、複数の前記需要家の受電電力量の合計値を、予測された前記需要電力量の合計値よりも前記削減量以上
削減するように、前記蓄電池の前記時間単位ごとの前記充電量および前記放電量を規定する第2の充放電計画を作成し、
前記第2の充放電計画は、前記第2の時間帯より前の時刻においては、前記第1の充放電計画と等しい、
請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記第1の充放電計画または前記第2の充放電計画に従って、前記蓄電池の充放電を制御する制御部をさらに備える、
請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記作成部は、さらに、前記複数の需要家それぞれの前記時間単位ごとの前記受電電力量が、前記目標値以下となり、かつ、前記第1の時間帯に含まれるいずれの前記時間単位においても、前記複数の需要家のそれぞれが有する前記蓄電池の蓄電残量から前記最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、前記複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となる前記充電量および前記放電量が複数存在する場合に、他の前記充電量および前記放電量を規定した場合よりも前記複数の需要家の従量電気料金の合計値が小さくなるように、前記第1の充放電計画を作成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記作成部は、さらに、前記複数の需要家それぞれの前記時間単位ごとの前記受電電力量が、前記目標値以下となり、かつ、前記第1の時間帯に含まれるいずれの前記時間単位においても、前記複数の需要家のそれぞれが有する前記蓄電池の蓄電残量から前記最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、前記複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となる前記充電量および前記放電量が複数存在する場合に、他の前記充電量および前記放電量を規定した場合よりも電力取引所からの電力購入金額の合計値が小さくなるように、前記第1の充放電計画を作成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項6】
前記最低蓄電量は、電力系統からの電力供給が停止した場合において、前記需要家が一定期間事業を継続可能な電力量である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項7】
前記作成部は、さらに、前記複数の需要家のそれぞれが有する太陽光発電装置の余剰電力を前記蓄電池に充電するように、前記充電量および前記放電量を規定する前記第1の充放電計画を作成する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項8】
電力系統に接続された第1の需要家、および前記第1の需要家とは独立して前記電力系統に接続された第2の需要家、を含む複数の需要家
のそれぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測ステップと、
予測された前記需要家ごとの前記需要電力量に基づいて、前記複数の需要家それぞれの前記時間単位ごとの受電電力量が、需要家ごとに定められた目標値以下となり、かつ、予め定められた第1の時間帯に含まれるいずれの前記時間単位においても、前記複数の需要家のそれぞれが有する蓄電池の蓄電残量から前記需要家ごとに定められた最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、前記複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となるように、
かつ、前記電力系統への逆潮流が発生しないように、前記需要家のそれぞれが有する蓄電池の前記時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する作成ステップと、
を含む蓄電池管理方法。
【請求項9】
電力系統に接続された第1の需要家、および前記第1の需要家とは独立して前記電力系統に接続された第2の需要家、を含む複数の需要家
のそれぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測ステップと、
予測された前記需要家ごとの前記需要電力量に基づいて、前記複数の需要家それぞれの前記時間単位ごとの受電電力量が、需要家ごとに定められた目標値以下となり、かつ、予め定められた第1の時間帯に含まれるいずれの前記時間単位においても、前記複数の需要家のそれぞれが有する蓄電池の蓄電残量から前記需要家ごとに定められた最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、前記複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となるように、
かつ、前記電力系統への逆潮流が発生しないように、前記需要家のそれぞれが有する蓄電池の前記時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する作成ステップと、
をコンピュータに実行させる蓄電池管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の供給状況に応じて、複数の需要家の合計の需要電力量を決められた量削減するデマンドレスポンス(DR、Demand Response)や、これを活用した取り組みである、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)への注目が高まっている。また、複数の需要家の敷地等に設置された蓄電池を統合制御し、それぞれの蓄電池にエネルギーマネージメントサービスやアンシラリーサービスを実施する技術も知られている。
【0003】
また、需要家毎の受電電力のピークカットを目的として需要家側に設置された蓄電池を制御する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-220384号公報
【文献】国際公開第2016/084347号公報
【文献】特開2018-19485号公報
【文献】国際公開第2017/203664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、デマンドレスポンスの開始時間が可変である場合において、デマンドレスポンスと、各需要家ごとの受電電力量のピークカットの両方を行うことは困難な場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の蓄電池管理装置は、予測部と、作成部とを備える。予測部は、電力系統に接続された第1の需要家、および前記第1の需要家とは独立して前記電力系統に接続された第2の需要家、を含む複数の需要家のそれぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する。作成部は、予測された需要家ごとの需要電力量に基づいて、複数の需要家それぞれの時間単位ごとの受電電力量が、需要家ごとに定められた目標値以下となり、かつ、予め定められた第1の時間帯に含まれるいずれの時間単位においても、複数の需要家のそれぞれが有する蓄電池の蓄電残量から需要家ごとに定められた最低蓄電量を除いた電力量の合計値が、複数の需要家の受電電力量の合計に対して予め定められた削減量以上となるように、かつ、前記電力系統への逆潮流が発生しないように、需要家のそれぞれが有する蓄電池の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる電力需給システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるDR可能時間帯と、DR発動時間帯との関係の一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる蓄電池管理装置が有する機能の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる各需要家の契約内容データの一例である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる各需要家の蓄電池性能データの一例である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる各需要家の過去の受電電力量の実績の一例である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる第1の充放電計画の作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるピークカット目標値と、予測された需要電力量との関係の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる蓄電池の蓄電残量の一例を示す折れ線グラフである。
【
図10】
図10は、実施形態にかかる電力の需給バランスを説明する図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかる第1の充放電計画の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施形態にかかる第1の充放電計画から、1つの需要家に関するデータを抽出したグラフである。
【
図13】
図13は、実施形態にかかる第1の充放電計画の実行および第2の充放電計画の作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態にかかる第2の充放電計画の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施形態にかかる第2の充放電計画から、1つの需要家3に関するデータを抽出したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態にかかる電力需給システムSの概要を示す図である。
図1に示す系統運用者6は、電力会社や送配電事業者等であり、電力系統5を運用して、発電機8を制御することにより、複数の需要家3および需要家7へ電力を供給する。
【0009】
需要家3および需要家7は、電力の供給を受け、当該電力を利用する主体である。本実施形態においては、需要家3は、後述のDRアグリゲータ2の管理範囲1に含まれる需要家であり、例えば、事務所や商業施設が入居するビル等とする。また、需要家7は、工場やビル、住宅等とする。また、ビル等を運用する事業者を、需要家3としても良い。
【0010】
また、各需要家3は、蓄電池4や太陽光発電装置(Photovoltaics、PV)9を有している。本実施形態においては、全ての需要家3は、蓄電池4を有するものとする。蓄電池4は、後述のピークカットおよびデマンドレスポンスに用いられる他、災害時等に電力系統5から各需要家3への電力供給が停止した場合においても需要家3が一定期間事業を継続するために必要な電力を蓄えるためにも用いられる。電力供給が停止した場合においても需要家3が一定期間事業を継続可能な電力量を、BCP(Business Continuity Planning、事業継続計画)容量という。BCP容量は、本実施形態における蓄電池4の最低蓄電量の一例であり、需要家3ごとに定められる。また、需要家3が蓄電池4をBCPのために利用しない場合は、BCP容量は“0”となる。
【0011】
DRアグリゲータ2は、系統運用者6からの受電電力量の削減要請(DR要請)に基づいて、複数の需要家3の受電電力量を削減してデマンドレスポンスを行う事業者である。本実施形態のDRアグリゲータ2は、系統運用者6からの削減要請に基づいて、各需要家3の蓄電池4を制御することによって、所定の時間帯の各需要家3の受電電力量の合計を、各需要家3のベースライン電力の合計値から、予め決められた量だけ削減する。
【0012】
本実施形態のベースライン電力は、各需要家3の予想される需要電力量である。また、ベースライン電力は、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われていない場合における各需要家3の受電電力量としても良い。また、本実施形態では、デマンドレスポンスにおいて契約等によって、複数の需要家3の受電電力量の合計に対して予め決められた削減量を、DR量という。
【0013】
また、本実施形態においては、系統運用者6から削減要請を受けてDRアグリゲータ2が受電電力量の削減を行うことを、「デマンドレスポンスを発動する」という。本実施形態においては、DRアグリゲータ2が系統運用者6から削減要請を受ける可能性のある時間帯を、「DR可能時間帯」という。また、DR可能時間帯のうち、系統運用者6から削減要請を受けてDRアグリゲータ2が実際にDRを発動する時間帯を、「DR発動時間帯」という。
【0014】
また、本実施形態のDRアグリゲータ2は、デマンドレスポンスだけではなく、各需要家3ごとの受電電力量のピークカットをする。具体的には、DRアグリゲータ2は、各需要家3の蓄電池4を制御することによって、各需要家3ごとの受電電力量の最大値を、予め定められたピークカットの目標値以下にする。ピークカットの目標値の詳細については、
図4で後述する。
【0015】
DRアグリゲータ2は、蓄電池管理装置10によって蓄電池4の充電または放電のスケジュール(充放電計画)を作成し、当該充放電計画に従って蓄電池4の充放電を制御する。蓄電池管理装置10は、PC(Personal Computer)等であり、CPUと、メモリと、HDDと、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0016】
図2は、本実施形態にかかるDR可能時間帯90と、DR発動時間帯91との関係の一例を説明する図である。
図2の横軸は24時間分の時間単位(t)、縦軸は受電電力量または需要電力量(kWh)を示す。本実施形態における時間単位は、30分間隔であるものとする。
【0017】
図2の棒グラフは、需要家3ごとの受電電力量を積み上げた値を示す。また、
図2の折れ線グラフは、需要家3ごとの需要電力量(ベースライン電力)を積み上げた値を示す。
【0018】
図2に示す例では、時間単位“t”が“18”~“39”の時間帯が、DR可能時間帯90である。また、
図2に示す例では、時間単位“t”が“26”~“27”の時間帯が、DR発動時間帯91である。DR発動時間帯91は、DR可能時間帯90に含まれる。また、DR発動時間帯91の時間の長さを、DR継続時間という。
【0019】
本実施形態においては、DR可能時間帯90と、DR継続時間とは、系統運用者6とDRアグリゲータ2との間で事前に結ばれた契約等により予め定められているものとする。また、本実施形態においては、系統運用者6からDRアグリゲータ2への受電電力量の削減要請は、削減を開始する時刻の直前に行われる場合がある。このため、本実施形態のDR発動時間帯91は、DRが発動する直前まで決定していない場合がある。また、系統運用者6からDRアグリゲータ2への受電電力量の削減要請は、毎日行われるとは限らないため、DRが発動せずに、DR可能時間帯90が経過する場合もある。
【0020】
DR発動時間帯91は、本実施形態における第1の時間帯の一例である。また、DR可能時間帯90は、本実施形態における第2の時間帯の一例である。
【0021】
図2に示すT(計画対象期間)と、T~
DR(DR可能時間帯90に含まれる時刻tの集合)と、ΔT
DR(DR継続時間)と、T
ADR(計画対象期間において、DR発動時間帯91の終了後の時間帯に含まれる時刻tの集合)と、の詳細については後述する。
【0022】
図3は、本実施形態にかかる蓄電池管理装置10が有する機能の一例を示す図である。
図2に示すように、蓄電池管理装置10は、入力部11と、記憶部12と、取得部13と、表示制御部14と、演算部15と、演算部15と、制御部16とを備える。また、演算部15は、予測部17と、作成部18とを備える。
【0023】
記憶部12は、入力部11から入力された需要家3の契約内容データと、蓄電池4に関するデータと、需要家3ごとのBCP容量と、需要家3の電気料金の従量料金の買電単価データと、取得部13が取得したデータと、予測部17および作成部18でデータ処理を行うための計算条件と、予測部17および作成部18の演算結果等を記憶する。記憶部12は、例えばHDDや、メモリである。
【0024】
図4は、本実施形態にかかる各需要家3の契約内容データの一例である。契約内容データは、各需要家3の契約に関するデータであり、より詳細には、需要家名と、各需要家3の契約電力と、各需要家3のピークカット電力とが対応付けられたデータである。ピークカット電力は、需要家3が受電電力の最大値の目標値として電力会社あるいはアグリゲータと契約した値である。ピークカット電力を時間単位(本実施形態においては、30分間)ごとの電力量に変換すると、ピークカット目標値(目標電力量)となる。各需要家3は、一定期間以上、受電電力をピークカット電力以下に保つことができた場合に、契約電力を引き下げることが可能となり、基本料金を低くすることができる。ピークカット目標値は、本実施形態における目標値の一例である。
【0025】
また、
図5は、本実施形態にかかる各需要家3の蓄電池性能データの一例である。蓄電池性能データは、各需要家3の蓄電池4に関するデータであり、より詳細には、蓄電池4を特定可能な蓄電池名と、当該蓄電池4を有する需要家名と、各蓄電池4の容量、充放電レートと、充放電効率とが対応付けられたデータである。
【0026】
図3に戻り、入力部11は、入力装置を介してデータの入力を受け、記憶部12に保存する。入力部11が受けるデータは、後述の最適化モデルにおけるパラメータの設定値や、DR発動時間帯91の開始時刻等である。
【0027】
取得部13は、需要家3に設置された電力量計21から、需要家3の受電電力量の計測値を取得する。
図6は、本実施形態にかかる各需要家3の過去の受電電力量の実績の一例である。取得部13は、日付と、時刻と、需要家3毎に、30分間隔の時間単位ごとの受電電力量を電力量計21から取得し、これらのデータを対応付けて、受電電力量の実績データとして記憶部12に保存する。
【0028】
図3に戻り、表示制御部14は、予測部17および作成部18の演算結果等を表示装置に表示する。
【0029】
予測部17は、各需要家3の時間単位ごとの需要電力量を予測する。より詳細には、予測部17は、記憶部12に保存された受電電力量の実績データや、曜日等のカレンダー情報に基づいて、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われない場合の、翌日の時間単位ごとの各需要家3の需要電力量を予測する。予測部17の予測した結果が、時間単位ごとの各需要家3のベースライン電力となる。
【0030】
また、予測部17は、各需要家3の時間単位ごとの太陽光発電量を予測する。より詳細には、予測部17は、記憶部12に保存された受電電力量の実績データと、天気予報情報とに基づいて、翌日の時間単位ごとの各需要家3の太陽光発電量を予測する。天気予報情報は予め記憶部12に記憶されても良いし、入力部11より入力されてもよい。
【0031】
また、需要電力量(ベースライン電力)や太陽光発電量は、入力部11より入力され、記憶部12に記憶されても良い。例えば、需要電力量(ベースライン電力)や太陽光発電量は、他システムから入力されても良い。
【0032】
作成部18は、蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画と、第2の充放電計画とを作成する。第1の充放電計画は、DR可能時間帯90に含まれるいずれの時間単位においてもデマンドレスポンスの発動が可能となるように蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する充放電計画である。また、第2の充放電計画は、DR発動時間帯91において複数の需要家3の受電電力量の合計値を予測された需要電力量(ベースライン電力)の合計値よりもDR量以上削減する充放電計画である。
【0033】
作成部18は、第1の充放電計画と、第2の充放電計画のいずれにおいても、需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカット目標値以下となり、かつ、蓄電池4の蓄電残量(充電残量)がBCP容量以上であるように、蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する。本実施形態においては、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の蓄電残量から、需要家3ごとに定められたBCP容量を除いた電力量を、余力電力量という。作成部18は、第1の充放電計画と、第2の充放電計画のいずれにおいても、余力電力量を用いてピークカットおよびデマンドレスポンスを行う。
【0034】
このため、より詳細には、作成部18は、第1の充放電計画においては、予測された需要家3ごとの需要電力量に基づいて、需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカット目標値以下となり、かつ、予め定められたDR可能時間帯90に含まれるいずれの時間単位においても、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の蓄電残量から、需要家3ごとに定められたBCP容量を除いた電力量(余力電力量)の合計値が、DR量以上となるように蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する。この際、作成部18は、DR発動時間帯91以降の時間帯において、需要家3の予測された需要電力量がピークカット目標値を超過した場合には、超過分の電力量を蓄電池4から放電し、需要家3の予測された需要電力量がピークカット目標値を下回る場合には、不足分の電力量を蓄電池4に充電することを前提として、蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する。
【0035】
また、作成部18は、第2の充放電計画においては、需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカット目標値以下となり、かつ、DR発動時間帯91において、複数の需要家3の受電電力量の合計値を、予測された需要電力量の合計値よりもDR量以上削減する蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する。また、第2の充放電計画は、DR発動時間帯91の開始時刻より前の時刻においては、前記第1の充放電計画と等しいものとする。
【0036】
作成部18は、第1の充放電計画を、デマンドレスポンスの発動の有無が未定の段階、例えば計画対象期間の前日等に作成する。また、作成部18は、第2の充放電計画を、デマンドレスポンスの発動が決定し、DR発動時間帯91が定められた後に作成する。
【0037】
制御部16は、作成部18によって作成された第1の充放電計画または第2の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御する。より詳細には、制御部16は、第1の充放電計画または第2の充放電計画を、時間単位ごとの充電または放電の電力値(設定値)を示す指令信号に変換して、各蓄電池4に送信する。蓄電池4は、制御部16から充電を指示する指令信号を受信した場合は、時間単位ごとに指定された量だけ、電力系統5または太陽光発電装置(PV)9から電力を取得して充電をする。また、蓄電池4は、放電を指示する指令信号を受信した場合は、時間単位ごとに指定された量だけ、放電をして屋内配電線22を介して負荷23に電力を供給する。負荷23は、照明や空調等の電力を消費する機器である。
【0038】
次に、以上のように構成された本実施形態の蓄電池管理装置10が実行する処理の流れについて説明する。
図7は、本実施形態にかかる第1の充放電計画の作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、計画対象期間の前日に実行されるものとする。
【0039】
まず、予測部17は、記憶部12から受電電力量の実績データや、曜日等のカレンダー情報を読み出し、これらの情報に基づいて、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われない場合の、翌日の時間単位ごとの各需要家3の需要電力量(ベースライン電力)を予測する(S1)。
【0040】
また、予測部17は、記憶部12から各太陽光発電装置9の太陽光発電電力量の実績データや、日射量等の気象情報を読み出し、これらの情報に基づいて、翌日の時間単位ごとの各太陽光発電装置9の太陽光発電電力量を予測する(S2)。
【0041】
次に、作成部18は、予測部17によって予測された需要電力量および太陽光発電電力量と、需要家3それぞれの蓄電池4や電気料金に関する情報と、に基づいて、翌日を計画対象期間とした第1の充放電計画を作成する(S3)。
【0042】
より詳細には、作成部18は、式(2)~(9)に示される制約条件下で、式(1)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電量を求める。式(1)~(9)の最適化問題は、線形計画問題と呼ばれる問題である。作成部18は、例えば、単体法や内点法等の手法によって(1)の目的関数を最小化する最適解を算出する。
【0043】
【0044】
式(1)は、計画対象期間Tにおける全需要家3の従量電気料金の合計値を示す。ここでは、Tは、この処理が実行される日の翌日の0時から開始する24時間とする。また、式(1)~(9)において、tまたはτは、30分間隔の時間単位を示す。式(1)~(9)の説明では、時間単位を時刻tまたは時刻τという。また、dは需要家3を示す。Dは、DRアグリゲータ2の管理対象である需要家3の集合、つまり全需要家3を示す。
【0045】
作成部18は、式(2)~(9)を満たした上で、式(1)の値(全需要家3の従量電気料金の合計値)がより少なくなる変数Pr(d,t)、S(d,t)、Qchg(d,t)、Qdis(d,t)の値を求める。
【0046】
Pr(d,t)は、需要家3ごとの時刻tにおける受電電力量(kWh)である。S(d,t)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの時刻tにおける蓄電残量(kWh)である。
【0047】
また、Qchg(d,t)は、需要家3ごとの蓄電池4の時刻tにおける充電量(kWh)である。Qdis(d,t)は、需要家3ごとの蓄電池4の時刻tにおける放電量(kWh)である。この最適化モデルによって作成部18が算出するQchg(d,t)とQdis(d,t)の値が、第1の充放電計画となる。
【0048】
本実施形態では、式(1)の値が最小化する解が最適解であるため、作成部18は、式(2)~(9)の制約条件を満たすQchg(d,t)とQdis(d,t)の値が複数存在する場合、式(1)の値が他のQchg(d,t)とQdis(d,t)よりも小さくなるQchg(d,t)とQdis(d,t)の値を、第1の充放電計画とする。
【0049】
作成部18は、予測部17によって予測された需要電力量および太陽光発電電力量と、記憶部12に保存された需要家3それぞれの蓄電池4やBCP容量および電気料金に関する情報から、式(1)~(9)の入力パラメータc(d,t)、Pd(d,t)、Ppv(d,t)、Ppc(d)、ΔP+(d,τ)、ΔP-(d,τ)、Δt、T~DR、ΔTDR、TADR、ηchg(d)、ηdis(d)、W(d)、C(d)、DR、SBCP(d)の入力値を取得し、各入力パラメータに入力した上で、式(1)~(9)の最適化モデルの最適解を求める。
【0050】
c(d,t)は、需要家3ごとの時刻tにおける従量料金の買電単価(円/kWh)である。
【0051】
P
d(d,t)は、需要家3ごとの時刻tにおける需要電力量の予測値(ベースライン電力)(kWh)である。P
pv(d,t)は、需要家3ごとの時刻tにおける太陽光発電電力量の予測値(kWh)である。P
pc(d)は、
図4に示された需要家3ごとのピークカット電力(kW)である。
【0052】
ΔP+(d,τ)は、需要家3の時刻τにおける予測される需要電力量(ベースライン電力)がピークカット目標値から超過した分の電力量(kWh)である。ΔP-(d,τ)は、需要家3の時刻τにおけるベースライン電力がピークカット目標値から不足した分の電力量(kWh)である。
【0053】
Δtは、時間ステップ(time step)であり、各式の時間単位を示す。本実施形態の時間ステップは、30分(0.5時間)刻みである。T~DRは、DR可能時間帯90に含まれる時刻tの集合である。ΔTDRは、DR継続時間である。TADRは、計画対象期間Tにおいて、DR発動時間帯91の終了後の時間帯に含まれる時刻tの集合である。
【0054】
ηchg(d)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの充電効率である。ηdis(d)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの放電効率である。W(d)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの定格容量(kWh)である。C(d)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの充放電レート(C)である。
【0055】
DRは、DR量、つまり、系統運用者6とDRアグリゲータ2との間の契約で予め決められた全需要家3の受電電力量の時刻t(時間単位)当たりの削減量(kWh)である。また、SBCP(d)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとのBCP容量である。
【0056】
式(2)は、DR可能時間帯90において、需要家3全体における蓄電池4の余力電力量を、デマンドレスポンスとピークカットを可能な量以上確保するという制約条件(制約式)である。より詳細には、式(2)は、DR可能時間帯90に含まれるいずれの時刻t(時間単位)においても、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の余力電力量の合計値が、DR発動時間帯91の終了後の時間帯(TADR)における各需要家3のピークカットために必要な電力量を確保した上で、DR継続時間においてデマンドレスポンスのために削減される受電電力量(DR・ΔTDR/Δt)以上になる、という制約条件である。
【0057】
式(2)の左辺は、放電効率を乗算した蓄電池4の余力電力量を示す。また、式(2)の右辺の第1項は、DR継続時間においてデマンドレスポンスのために削減される受電電力量を示す。式(2)の右辺の第2項は、DR発動時間帯91以降の各時刻τにおける各需要家3のピークカットをするために要する電力量の合計値を示す。本実施形態では、需要家3の時刻τにおける需要電力量がピークカット目標値から不足した分の電力量(ΔP-(d,τ))は、蓄電池4に充電可能であるものとする。このため、需要電力量の予測値(ベースライン電力)がピークカット目標値を超過する場合は、当該超過分に相当する電力量が蓄電池4から放電されるが、ベースライン電力がピークカット目標値を超過しない場合は、不足分の電力量は蓄電池4に充電される。不足分の電力量(ΔP-(d,τ))は、充電効率および放電効率を乗算した上で、超過分の電力量から減算される。
【0058】
図8は、本実施形態にかかるピークカット目標値と、予測された需要電力量(ベースライン電力)との関係の一例を示す図である。例えば、
図8に示す需要家Cのベースライン電力は、時間単位“18”、“19”、“30”、“31”においてはピークカット目標値を超過しているが、それ以外の時間単位においてはピークカット目標値を下回っている。また、需要家A、Bについては、全ての時間単位においてベースライン電力がピークカット目標値を下回っている。式(2)では、このようにベースライン電力がピークカット目標値を下回る場合の、ピークカット目標値とベースライン電力との差分(不足分)の電力量を蓄電池4の充電に用いることを前提としている。また、作成部18が第1の充放電計画を作成する時点では、DR発動時間帯91は決定していないため、作成部18は、パラメータtの値をDR可能時間帯90の範囲で変更して式(2)に入力して、式(2)を実行することにより、DR可能時間帯90内のいずれの時刻tでDR発動時間帯91が開始しても、式(2)の制約条件が満たされるように、第1の充放電計画を作成する。
【0059】
また、本実施形態においては、蓄電池4の充電残量および余力電力量は、時間単位の終了時における蓄電残量を基準とする。式(2)においては、DR発動時間帯91をDR可能時間帯90の中のある時間に固定して考えた場合、DR発動時間帯91の開始時点から、DR継続時間においてデマンドレスポンスのために削減される受電電力量と、DR発動時間帯91の終了後の時間帯における各需要家3のピークカットために必要な電力量と、の合計値が、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の余力電力量の合計値以下になることが求められるため、DR発動時間帯91の開始直前の時間単位の終了時(時刻t-1)を用いて、蓄電池4の余力電力量を算出する。
【0060】
ここで、本実施形態における蓄電池4の余力電力量について、図を用いて説明する。
図9は、本実施形態にかかる蓄電池4の蓄電残量の一例を示す折れ線グラフである。
図9の横軸は時刻t、縦軸は蓄電池4の蓄電残量(kWh)を示す。蓄電池4の蓄電残量は、蓄電池4の定格容量W(d)以下となる。
図9に示すように、時刻t-1の終了時における蓄電池4の余力電力量は、時刻t-1の終了時における蓄電残量S(d,t-1)からBCP容量(S
BCP(d))を除いた電力量である。また、需要家3が蓄電池4をBCPのために利用しない場合は、BCP容量S
BCP(d)は“0”となるため、蓄電池4の蓄電残量の全てが余力電力量となる。
【0061】
次に、式(3)は、電力の需給バランスを保つことを規定する制約条件ある。より詳細には、式(3)は、需要家3ごとかつ時刻tごとの需要電力量(ベースライン電力)Pd(d,t)に対して、太陽光発電電力量Ppv(d,t)を減算し、蓄電池4の充電量Qchg(d,t)を加算し、蓄電池4の放電量Qdis(d,t)を減算した値が、需要家3の受電電力量Pr(d,t)と等しくなるという制約条件である。
【0062】
図10は、本実施形態にかかる電力の需給バランスを説明する図である。
図10に示すように、電力を消費する負荷23の需要電力量P
d(d,t)に対して、太陽光発電電力量P
pv(d,t)と、蓄電池4の放電量Q
dis(d,t)と、受電電力量Pr(d,t)とが供給される。また、太陽光発電電力量P
pv(d,t)と受電電力量Pr(d,t)とは、蓄電池4の充電量Q
chg(d,t)としても用いられる。例えば、太陽光発電装置9によって発電された太陽光発電電力量P
pv(d,t)のうち、負荷23で消費されない余剰電力は、蓄電池4に充電される。作成部18は、式(3)により、このような電力の需給バランスを保つよう、充電量Q
chg(d,t)と放電量Q
dis(d,t)との値を制約する。また、需要家3が太陽光発電装置9を有していない場合は、作成部18は、太陽光発電電力量P
pv(d,t)を“0”として式(3)を実行する。
【0063】
次に、式(4)は、逆潮流禁止の制約条件である。需要家3に設置された蓄電池4から放電された電力、あるいは太陽光発電装置9が発電した電力が、電力系統5に流入することを逆潮流という。式(4)は、需要家3ごとの時刻tにおける受電電力量が0以上となること、つまり、蓄電池4や太陽光発電装置9から電力系統5への電力の流入が無いことを規定している。
【0064】
式(5)は、需要家3ごとのピークカットの制約条件である。式(5)は、需要家3ごとの時刻tにおける受電電力量が、需要家3ごとのピークカット目標値以下となるように規定する。
【0065】
式(6)は、蓄電池4におけるエネルギー保存則の制約条件である。より詳細には、式(6)は、時間単位における蓄電池4の蓄電残量の変化量は、充電量に充電効率を乗算した値から、放電量を放電効率で除算した値を減算した値となることを規定する。
【0066】
式(7)は、蓄電池4の放電量の上限の制約条件である。また、式(8)は、蓄電池4の充電量の上限の制約条件である。需要家3に設置された蓄電池4ごとの時刻tにおける放電量および充電量は、各蓄電池4の定格容量と充放電レートによって規定される。
【0067】
式(9)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとのBCPの制約条件である。式(9)は、各蓄電池4の蓄電残量が、BCP容量以上であることを規定するとともに、蓄電残量の最大値が蓄電池容量を超えないことを規定する。
【0068】
作成部18は、上述の式(1)~(9)を用いて作成した第1の充放電計画と、算出された変数P
r(d,t)、S(d,t)、Q
chg(d,t)、Q
dis(d,t)の値と、予測された需要電力量と、予測された太陽発電電力量と、を、記憶部12に保存する。ここで、
図7に示すフローチャートの処理が終了する。
【0069】
図11は、本実施形態にかかる第1の充放電計画の一例を示すグラフである。
図11の横軸は24時間分の時刻t、縦軸は受電電力量または需要電力量(kWh)を示す。
図11上部の棒グラフは、需要家3ごとの受電電力量を積み上げた値を示す。また、
図11上部の折れ線グラフは、需要家3ごとの需要電力量(ベースライン電力)を積み上げた値を示す。また、
図11下部の棒グラフは、需要家3の蓄電池4ごとの充放電量を積み上げた値を示す。
図117下部の棒グラフの正の数は放電、負の数は充電を示す。
図11下部の折れ線グラフは、需要家3の蓄電池4ごとの蓄電容量を積み上げた値を示す。
【0070】
図11に示す例では、DR可能時間帯90においてデマンドレスポンスが発動された場合のDR継続時間全体でのDR量は、全需要家3の合計で12kWhとする。この場合、全需要家3の蓄電池4は、DR可能時間帯90の開始時の時点で、デマンドレスポンスの発動に備えるために、合計で12kWh以上の余力電力量を確保するように充電する。また、全需要家3の蓄電池4は、さらに、需要家3ごとの受電電力量のピークカットのために、それぞれ余力電力量を確保するように充電する。これにより、DR可能時間帯90のいずれの時間単位においてデマンドレスポンスが発動されても、蓄電池4は余力分の蓄電残量を用いて、DR量の電力量を放電することができる。
【0071】
図12は、本実施形態にかかる第1の充放電計画から、1つの需要家3に関するデータを抽出したグラフである。第1の充放電計画では、各蓄電池4の余力分の蓄電残量を放電することによって、需要家3ごとの受電電力量のピークカットを行う。
図12に示すように、当該需要家3に設置された蓄電池4は、需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯に放電をすることにより、受電電力量をピークカット目標値以下にする。
【0072】
DR可能時間帯90およびDR発動時間帯91は全需要家3に共通して同じ時間帯であるが、各需要家3の需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯はそれぞれの需要家3によって異なる。このため、DR可能時間帯90およびDR発動時間帯91と、各需要家3の需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯とは、一致するとは限らない。作成部18は、需要家3ごとの需要電力量の予測値に基づいて第1の充放電計画を作成するため、各需要家3の需要電力量が増加する時間帯に合わせて各蓄電池4の放電をしてピークカットをする計画を作成することができる。
【0073】
次に、DRアグリゲータ2は、計画対象期間の当日に第1の充放電計画を実行し、需要家3の蓄電池4の充放電を制御する。
図13は、本実施形態にかかる第1の充放電計画の実行および第2の充放電計画の作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、表示制御部14は、第1の充放電計画を表示装置に表示する(S11)。これにより、DRアグリゲータ2の担当者等(ユーザ)は、第1の充放電計画を表示装置上で確認することができる。
【0075】
そして、制御部16は、作成された第1の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御することによって、第1の充放電計画を実行する(S12)。
次に、作成部18は、デマンドレスポンスの発動の有無を判断する(S13)。例えば、系統運用者6からのDR要請の信号等を受け付けた場合に、作成部18は、デマンドレスポンスが発動すると判断する。また、系統運用者6からDR要請の連絡を受けたDRアグリゲータ2が蓄電池管理装置10にデマンドレスポンスの発動の指示を入力しても良い。また、デマンドレスポンスの要請を受けた場合に、DR発動時間帯91が系統運用者6から指定されるものとする。
【0076】
作成部18は、デマンドレスポンスが発動していないと判断した場合は(S13“No”)、DR可能時間帯90が終了したか否かを判断する(S14)。DR可能時間帯90が終了していないと判断した場合は(S14“No”)、作成部18は、S13の処理に戻る。また、作成部18が、デマンドレスポンスが発動しないまま、DR可能時間帯90が終了したと判断した場合は(S14“Yes”)、このフローチャートの処理は終了する。
【0077】
作成部18は、デマンドレスポンスが発動すると判断した場合は(S13“Yes”)、第2の充放電計画を作成する(S15)。
【0078】
より詳細には、作成部18は、DR発動時間帯以降の時刻において、上述の式(3)~(9)に示される制約条件に加えて、下記の式(10)、(11)の制約条件を満たした上で、式(1)の目的関数を最小化する最適化モデルの最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電量を求める。作成部18は、第2の充放電計画の作成においては、式(2)の制約条件は使用しない。
【0079】
【0080】
式(10)は、DR発動時間帯91において、全需要家3の受電電力量の合計値が、ベースライン電力からDR量を減算した値以下であるという制約条件である。パラメータTDRは、DR発動時間帯91に含まれる時刻tの集合である。
【0081】
また、式(11)は、DR発動時間帯91の開始時点(DR発動時間帯91の直前の時間単位の終了時点)において、第2の充放電計画における蓄電池4の充電残量が、第1の充放電計画における蓄電残量と等しいという制約条件である。パラメータt
DRは、DR発動時間帯91の開始時刻である。また、作成部18は、式(11)のパラメータS´(d,t)に、
図7の第1の充放電計画の作成処理で求めた変数S(d,t)の値を入力する。
【0082】
本実施形態においては、DRアグリゲータ2がデマンドレスポンスを行うか否かは、当日デマンドレスポンスが発動される直前まで不明である。このため、作成部18は、DR発動時間帯91よりも前の時刻においては、第1の充放電計画によりデマンドレスポンスを行うことが可能な量の各蓄電池4の蓄電残量を確保しておき、実際にデマンドレスポンスが発動された場合には、式(10)、(11)の制約条件を満たす第2の充放電計画を作成する。作成部18は、作成した第2の充放電計画を、記憶部12に保存する。
【0083】
次に、表示制御部14は、作成部18によって作成された第2の充放電計画を表示装置に表示する(S16)。そして、制御部16は、作成された第2の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御することによって、第2の充放電計画を実行する(S12)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0084】
図14は、本実施形態にかかる第2の充放電計画の一例を示すグラフである。第2の充放電計画は、DR発動時間帯91の開始前までは、
図11に示した第1の充放電計画と同様である。第2の充放電計画では、DR発動時間帯91に、需要家3の蓄電池4が放電することによって、受電電力量がベースライン電力よりDR量分減少している。
図14で示す例では、受電電力量が、DR発動時間帯91内の30分間隔の時間単位ごとに6kWh削減されることにより、1時間のDR継続時間の合計で12kWh削減されている。
【0085】
また、
図14に示すように、DR発動時間帯91にDR量分の電力削減を行っても、各蓄電池4の充電残量はBCP容量以上の値を保っている。つまり、第2の充放電計画では、各蓄電池4は、BCP容量を確保した上で、余力分の充電残量を用いて、DR発動時間帯91に、受電電力量をDR量分減少させるための放電をする。
【0086】
第2の充放電計画においても、各蓄電池4は、充放電を行うことにより、需要家3ごとの受電電力量のピークカットを行う。
【0087】
図15は、本実施形態にかかる第2の充放電計画から、1つの需要家3に関するデータを抽出したグラフである。
図15に示す例では、DR発動時間帯91の後に、需要家Cの需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測されているため、需要家Cの蓄電池4は、DR発動時間帯91における放電量を抑えている。また、需要家Cの蓄電池4は、
図15に示すように、第2の充放電計画において、需要家Cの需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯に放電をすることにより、需要家Cの受電電力量をピークカット目標値以下に保っている。
【0088】
従来技術においては、1つの蓄電池によりデマンドレスポンスやピークカットなどの複数のサービスを行う場合、各サービスで使用する蓄電池の容量上限をあらかじめ定めることによって、蓄電残量をサービス別に使い分けていた。しかしながら、DRアグリゲータ2が複数の需要家3をまとめてデマンドレスポンスを行う場合は、DR発動時間帯91と各需要家3の需要電力量がピークカット目標値を超える時間帯とが異なる場合ある。このような場合に、従来技術では、デマンドレスポンスとピークカットのそれぞれで使用する蓄電池の容量上限を最適化することが出来ず、蓄電池の利用効率を高めるための限界となっていた。
【0089】
また、デマンドレスポンスの開始時間が可変である場合には、デマンドレスポンスのために蓄電池4が放電する時刻が直前まで決定されないため、デマンドレスポンスとピークカットとにそれぞれ必要となる蓄電残量を、蓄電池4が十分に充電することが困難な場合があった。
【0090】
これに対して、本実施形態の蓄電池管理装置10は、需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカット目標値以下となり、かつ、予め定められたDR可能時間帯90に含まれるいずれの時刻t(時間単位)においても、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の余力電力量の合計値が、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の蓄電残量から需要家3ごとに定められた最低蓄電量を除いた余力電力量の合計値が、DR量以上となるように、蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、デマンドレスポンスの開始時間が確定していなくとも、デマンドレスポンスとピークカットの両方に必要な充電残量を前もって確保することができる。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、デマンドレスポンスの開始時間が可変である場合にも、複数の需要家3の受電電力量の合計値に対するデマンドレスポンスと、各需要家3ごとの受電電力量のピークカットの両方を行うことができる。
【0091】
また、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、蓄電池4を充電または放電することによって、需要家3の消費電力量を削減しなくとも、デマンドレスポンスとピークカットとを行うことができる。
【0092】
さらに、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカット目標値以下となり、かつ、DR可能時間帯90に含まれるDR発動時間帯91において、複数の需要家3の受電電力量の合計値を、予測された需要電力量の合計値よりもDR量以上削減するように、蓄電池4の時間単位ごとの充電量および放電量を規定する第2の充放電計画を作成する。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、DR可能時間帯90内のいずれの時刻にデマンドレスポンスが開始されても、複数の需要家3の受電電力量の合計値に対するデマンドレスポンスと、各需要家3ごとの受電電力量のピークカットの両方を行うことができる。また、第2の充放電計画は、第2の時間帯より前の時刻においては、第1の充放電計画と等しい。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、デマンドレスポンスの発動後に、第1の充放電計画から第2の充放電計画に円滑に切り換えることが可能となる。
【0093】
さらに、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、第1の充放電計画に従って、蓄電池4の充放電を制御するため、デマンドレスポンスとピークカットとを確実に実行することができる。
【0094】
さらに、本実施形態の蓄電池管理装置10は、複数の需要家3それぞれの時間単位ごとの受電電力量が、ピークカット目標値以下となり、かつ、DR可能時間帯90に含まれるいずれの時間単位においても、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の蓄電残量からBCP容量を除いた余力電力量の合計値が、DR量以上となる充電量および放電量が複数存在する場合に、他の充電量および放電量を規定した場合よりも複数の需要家3の従量電気料金の合計値が小さくなるように、第1の充放電計画を作成する。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、デマンドレスポンスとピークカットとをした上で、各需要家3の経済的な負担をさらに低減することができる。
【0095】
また、本実施形態における最低蓄電量は、電力系統からの電力供給が停止した場合において、需要家3が一定期間事業を継続可能な電力量であるBCP容量である。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、デマンドレスポンスおよびピークカットのために放電した際にも、各需要家3の事業継続のために必要な蓄電残量を蓄電池4に保持することができる。例えば、需要家3がBCPを目的として既に蓄電池4を設置している場合がある。このような場合に、本実施形態の蓄電池管理装置10は、BCPのための蓄電残量を確保した上で、既設の蓄電池4の余力分の蓄電残量をデマンドレスポンスおよびピークカットに利用することができる。
【0096】
さらに、本実施形態の蓄電池管理装置10は、複数の需要家3のそれぞれが有する太陽光発電装置9の余剰電力を蓄電池4に充電するように、充電量および放電量を規定する第1の充放電計画を作成する。このため、本実施形態の蓄電池管理装置10によれば、需要家3が電力系統5から受電した電力だけではなく、太陽光発電装置9によって発電した電力をデマンドレスポンスおよびピークカットに利用することができる。
【0097】
本実施形態の記憶部12に保存されるデータ、および、取得部13が取得するデータは一例であり、上述の例の限定されるものではない。また、本実施形態では、30分間隔の時間単位を基準としたが、時間単位は1時間間隔でも良い。また、本実施形態においては、DR継続時間は、予め定められているものとしたが、DR発動時間帯91の決定時に決まるものとしても良い。この場合、作成部18は、第1の充放電計画の作成の際に、DR継続時間の長さを変更して複数パターンの第1の充放電計画を作成しても良い。
【0098】
また、作成部18は、DR発動時間帯91が決定される前に、複数パターンのDR発動時間帯91を想定した第2の充放電計画を予め作成しても良い。
【0099】
また、本実施形態では、計画対象期間は翌日の24時間分としたが、作成部18は、翌日分だけではなく、2日分以上の第1の充放電計画を予め作成するものとしても良い。
【0100】
(変形例)
上述の実施形態1では、作成部18は、計画対象期間Tにおける全需要家3の従量電気料金の合計値を最小化するように第1の充放電計画を作成していたが、電力取引所からの電力購入金額の合計値を最小化するように第1の充放電計画を作成しても良い。
【0101】
この場合、作成部18は、需要家3ごとの時刻tにおける従量料金の買電単価の代わりに、電力取引所の時刻tにおける電力単価の予測値(円/kWh)を式(1)の入力パラメータc(d,t)に入力して、第1の充放電計画および第2の充放電計画を作成する。本変形例においては、式(1)は、計画対象期間Tにおいて電力小売り事業者が電力取引所より調達する電力調達コストの合計値を示す。
【0102】
つまり、本変形例の蓄電池管理装置10は、複数の需要家3それぞれの時間単位ごとの受電電力量が、ピークカット目標値以下となり、かつ、DR可能時間帯90に含まれるいずれの時間単位においても、複数の需要家3のそれぞれが有する蓄電池4の蓄電残量からBCP容量を除いた余力電力量の合計値が、DR量以上となる充電量および放電量が複数存在する場合に、他の充電量および放電量を規定した場合よりも電力取引所からの電力購入金額の合計値が小さくなるように、第1の充放電計画を作成する。
【0103】
このため、本変形例の蓄電池管理装置10に蓄電池管理装置10よれば、例えば、DRアグリゲータ2が、電力取引所から購入した電力を需要家3に販売している場合に、DRアグリゲータ2の電力の購入コストを低減することができる。
【0104】
本実施形態の蓄電池管理装置10で実行される蓄電池管理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態の蓄電池管理装置10で実行される蓄電池管理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の蓄電池管理装置10で実行される蓄電池管理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態の蓄電池管理プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0105】
本実施形態の蓄電池管理装置10で実行される蓄電池管理プログラムは、上述した各部(入力部、取得部、表示制御部、演算部、予測部、作成部、制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から蓄電池管理プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ入力部、取得部、表示制御部、演算部、予測部、作成部、制御部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
2 DRアグリゲータ
3 需要家
4 蓄電池
5 電力系統
6 系統運用者
9 太陽光発電装置(PV)
10 蓄電池管理装置
11 入力部
12 記憶部
13 取得部
14 表示制御部
16 制御部
17 予測部
18 作成部
90 DR可能時間帯
91 DR発動時間帯