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特許7179506無線システム内のクロック間で同期させるためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】無線システム内のクロック間で同期させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G04R 20/26 20130101AFI20221121BHJP
   G04R 40/06 20130101ALI20221121BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20221121BHJP
【FI】
G04R20/26
G04R40/06
G04G5/00 J
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018120553
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2019039905
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】15/634,220
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-027327(JP,A)
【文献】特開2005-157946(JP,A)
【文献】特開2005-283278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 20/00-60/14
G06F 1/00-40/00
G04G 5/00,7/00
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスツールをナビゲートするための磁気ナビゲーションシステム内の第1のクロックと第2のクロックを同期させるための方法であって、前記方法が、
前記第1のクロックを使用して磁界を生成することと、
前記ワイヤレスツールにて前記第2のクロックを使用して前記磁界を受信し、前記磁界に応答して前記ワイヤレスツールの位置を決定することと、
一定の時間間隔にて、ゴング信号を前記第2のクロックに送信することと、
前記第2のクロックにてそれぞれの前記ゴング信号が受信されたかどうかを判定することと、
前記ゴング信号を受信した場合、
前記ゴング信号の送信時における前記第1のクロックの時間と、前記第2のクロックの時間の差分を計算し、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しい場合は、前記差分をスキュー時間として学習し、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しくない場合は、前記第2のクロック時間を前記第1のクロックの時間に設定し、前記差分を前記スキュー時間として学習することと
前記ゴング信号を受信しなかった場合、前記第2のクロック時間を学習された前記スキュー時間に基づき調整し、前記差分を前記スキュー時間として学習することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記差分の平均を使用して、前記スキュー時間を算出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記差分の平均及び標準偏差を算出することと、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ガウス分布フィッティングを使用して、前記スキュー時間算出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一定の時間間隔が、1ミリ秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ワイヤレスツールをナビゲートするための磁気ナビゲーションシステム内の第1のクロックと第2のクロックを同期させるためのシステムであって、
前記第1のクロックを使用して磁界を生成するフィールド発生器と、
前記ワイヤレスツールにて前記第2のクロックを使用して前記磁界を受信し、前記磁界に応答して前記ワイヤレスツールの位置を決定する磁界場所特定センサと、
プロセッサであって、
一定の時間隔にて、ゴング信号を前記第2のクロックに送信し、それぞれの前記ゴング信号が前記それぞれのゴング信号送信時の第1のクロックの時間を表し、
前記第2のクロックにてそれぞれの前記ゴング信号が受信されたかどうかを判定し、
前記ゴング信号を受信した場合、
前記ゴング信号の送信時における前記第1のクロックの時間と、前記第2のクロックの時間の差分を計算し、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しい場合は、前記差分をスキュー時間として学習し、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しくない場合は、前記第2のクロックの時間を前記第1のクロックの時間に設定し、前記差分を前記スキュー時間として学習し、
前記ゴング信号を受信しなかった場合、前記第2のクロック時間を学習された前記スキュー時間に基づき調整し、前記差分を前記スキュー時間として学習するように構成された、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記差分を使用して前記スキュー時間を算出するように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記差分の平均及び標準偏差を算出し、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定するように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、ガウス分布フィッティングを使用して前記スキュー時間を算出するように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記一定の時間間隔が、1ミリ秒である、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
ワイヤレスツールをナビゲートするための磁気ナビゲーションシステムであって、第1のクロックを使用して磁界を生成するフィールド発生器と、前記ワイヤレスツールにて第2のクロックを使用して前記磁界を受信し、前記磁界に応答して前記ワイヤレスツールの位置を決定する磁界場所特定センサと、を備えるシステム内の前記第1のクロックと前記第2のクロックを同期させるためのコンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令が、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
定の時間間隔にてゴング信号を前記第2のクロックに送信するステップと、
前記第2のクロックにてそれぞれの前記ゴング信号が受信されたかどうかを判定するステップと、
前記ゴング信号を受信した場合、
前記ゴング信号の送信時における前記第1のクロックの時間と、前記第2のクロックの時間の差分を計算し、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しい場合は、前記差分をスキュー時間として学習するステップと、
前記第1のクロックの時間が前記第2のクロックの時間に等しくない場合は、前記第2のクロック時間を前記第1のクロックの時間に設定し、前記差分を前記スキュー時間として学習するステップと、
前記ゴング信号を受信しなかった場合、前記第2のクロック時間を学習された前記スキュー時間に基づき調整し、前記差分を前記スキュー時間として学習するステップと、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項12】
前記差分の平均を使用して前記スキュー時間を算出することを更に含む、請求項11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項13】
前記差分の平均及び標準偏差を算出することと、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定することと、を更に含む、請求項11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項14】
ガウス分布フィッティングを使用して、前記スキュー時間を算出することを更に含む、請求項11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項15】
前記一定の時間間隔が、1ミリ秒である、請求項11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
システムは、クロック信号を受信しなかったときでも、無線システム内の複数のクロックを同期させる。
【0002】
無線システム内の複数のクロックを同期させる方法が提示される。本方法は、一定量の時間が経過したときに、ゴング信号時間を含むゴング信号をクロックに送信することを含む。各クロックにおいて、ゴング信号を受信しているときには、及びゴング信号時間がクロック時間と等しくないときには、クロック時間をゴング信号時間に設定する。各クロックにおいて、ゴング信号を受信しなかったときには、クロック時間の設定を推定時間に設定し、スキューを学習する。
【0003】
一実施形態では、スキューを学習することは、クロック時間とゴング信号時間との間の平均差を算出することを含む。一実施形態では、スキューを学習することは、受信したゴング信号及びクロック時間を使用して平均及び標準偏差を算出することと、算出した平均及び標準偏差を使用して推定時間を決定することとを含む。一実施形態では、推定時間は、スキュー及びクロック時間を使用して決定される。一実施形態では、推定時間は、ガウス分布フィッティングを使用して計算される。一実施形態では、一定量の時間は、1ミリ秒である。
【0004】
クロック信号を受信しなかったときでも、無線システム内のクロック間で同期させるためのコンピュータプログラム製品も示される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面と共に一例として与えられた以降の説明から、より詳細な理解が可能になる。
図1】本発明の一実施形態に従うシステムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に従う、無線システム内のクロック間で同期させるための概略図である。
図3】本発明の一実施形態に従う、実際のゴングタイムスタンプと理論ゴングタイムスタンプとを比較したグラフである。
図4】本発明の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
提案されるシステムは、無線システムの問題、及びクロック信号の欠落による無線システム内のクロック間の同期の潜在的消失を対象とする。クロック信号を取り出すために、無線システム内のクロックの障害を補償するシステム及び方法が必要とされる。システムは、1つ又は2つ以上のゴング又は「リセットクロック」信号を受信しなかったときでも、無線システム内のクロックの間(between)/間(among)での同期を提供する。
【0007】
医療用器具、カテーテル、無線デバイス、その他などのツールをナビゲートするために使用される磁気ナビゲーションシステムは、一般に、磁界を有するコイルを備え、各コイルは、それ自体の周波数を有する。例えば、ロケーションパッドのフィールド発生器によって発生させたロケーションフィールドは、15の周波数を放射することができる。加えて、磁気ナビゲーションシステムは、1つ又は2つ以上のセンサを空間内に含み、各センサは、典型的に、全てのコイル周波数を受信する。各コイルは、他のコイルに対して固有の周波数を有するので、センサは、各コイルの場所を決定することができる。
【0008】
1つのそのような磁気ナビゲーションシステムは、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)によって製作されるCARTO(商標)システムに見出すことができる。磁気ナビゲーションシステムにおいて、磁界は、典型的に、フィールド発生器からなるロケーションパッドによって発生される。そのようなシステムでは、磁気位置検知を使用して、患者の臓器内部のツールの遠位端部の位置座標を決定することができる。この目的のために、コンソール又はロケーションパッド内の駆動回路が、フィールド発生器を駆動して、患者の身体内に磁界を発生させる。典型的に、フィールド発生器はコイルを備え、コイルは、患者の外部の既知の位置において患者の身体の下に配置される。これらのコイルは、調査されるべき患者の臓器を含む既定の作業容積内に磁界を発生させる。ナビゲートされるべきツールの遠位端部内の磁界センサは、これらの磁界に応じて電気信号を生成する。信号プロセッサは、典型的にはロケーション座標及び方向座標の両方を含む遠位端部の位置座標を決定するために、これらの信号を処理する。この位置検知方法は、上述したCARTO(商標)システムに実装され、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、それらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
磁気ナビゲーションシステムと共に特定のツール、例えばカテーテルを使用する手順の間、カテーテルの遠位センサの場所は、典型的に、ナビゲーションシステムにおいて使用可能な主磁界を測定することによって決定される。無線ツールをナビゲートするために使用される磁気ナビゲーションシステム、例えば「無線システム」では、発生器の部分、例えばコイルなどと、受信機の部分、例えばセンサなどとの間で協調させる必要がある。典型的に、そのような無線システムにおける磁界の電荷(正又は負)は、交流(AC)と判断される。特定の材料は、AC電圧を発生させる能力、及び/又はAC電圧を受けたときに振動する能力である、圧電気を有する。
【0010】
しかしながら、圧電気は、伝送に対して遅延を生じさせ得るので、伝送の位相を決定する必要がある。理想的には、発生器及び受信機はどちらも、同じクロックを使用して動作するが、物理的な制約又は他の制約のため、代わりに2つ(又はそれ以上)のクロックを使用しなければならない。残念なことに、2つ以上のクロックの使用は、クロック間(between)及び/又クロック間(among)にスキューをもたらす場合があり、かつ無線システムが同期されない場合があり、すなわち、異なるクロックが異なる時間を有する。ゴング機構を使用して、クロック間の同期を容易にすることができる。典型的に、ゴング機構は、リセット又は「ゼロ」信号を全てのクロックに無線で伝送することによって、全てのクロックをリセットするか、又は「ゼロにする」。しかしながら、いくつかの事例では、無線で伝送された信号が失われ、クロックをリセットするように指示するためにクロックに到達しない。この状態では、信号を受信しなかったクロック(複数可)は、リセットされず、したがって、他のクロック(複数可)との同期を失う。更に、特定のクロックにおいて2つ以上の信号が失われると、同期の欠如が増加する。
【0011】
無線システム内のクロックを首尾よく同期させ、かつ互いに同期した状態を維持することを可能にするシステム及び方法に対する必要性が存在する。この必要性を解決するために、本発明の「フライホイール機構」が提示される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に従うシステムの概略図である。図1に示されるように、本システムは、医療用ツール10(例えば、カテーテル、カテーテルチューブなど)と、少なくともクロック38を有するプロセッサ14及びディスプレイ又はモニタ16を備えるワークステーション12と、クロック40を有するカテーテルハブ18と、LPドライバ20と、患者(頭部のみ示す)22と、WiFiアンテナ24と、RF同期Txアンテナ26と、RF同期Rxアンテナ28と、ロケーションパッド30とを含むことができる。一実施形態では、カテーテルハブ18は、ナビゲートされる全てのセンサからデータを受信し、LPドライバ20は、ロケーションパッド30にACなどの電流を駆動し、電流は、フィールド発生器が磁界を発生することを可能にする。一実施形態では、カテーテルハブ18は、WiFiアンテナ24と、ナビゲートされるツールから信号を受信するためのRF同期Rxアンテナ28とを備える。一実施形態では、LPドライバ20は、WiFiアンテナ24と、LPドライバ20がロケーションパッド30に電流を伝送することを可能にするRF同期Txアンテナ26とを備える。
【0013】
ツール10の遠位端部の位置及び方向は、磁界場所特定センサの位置を決定することによって確認することができる。ツール10は、電磁界又は音場などの非電離フィールドによって場所を特定することができる。上で論じたように、ツール10の先端部は、関連するフィールドのための伝送又は受信アンテナ(図示せず)を備えることができる。非電離フィールドのための受信又は伝送アンテナ(図示せず)が、検査されるべき患者に取り付けられる。受信機又は伝送器は、これらのアンテナに接続され、受信したフィールド波を電気的場所特定又は画像信号に変換する。
【0014】
ロケーションパッド30は、コイル(図示せず)を備えることができ、コイルは、本発明の実施形態において使用することができる1つの種類の磁気変換器である。「磁気変換器」とは、本特許出願の状況において、また特許請求の範囲において、印加された電流に応答して磁界を発生させ、かつ/又は、印加された磁界に応答して電気信号を出力する装置を意味するものである。本出願の実施形態では、コイルを磁気変換器として記述しているが、代わりの実施形態では、当業者にとっては自明であるように、他の種類の磁気変換器を用いることができる。
【0015】
ワークステーション12は、ディスプレイ16に取り外し可能に接続することができる。ワークステーション12はまた、1つ又は2つ以上の医療用ツール10を接続することができるカテーテルハブ18にも取り外し可能に接続される。接続は、ハードワイヤード若しくはWiFi接続、又は両方であってもよい。カテーテル又はENTツールなどのツール10は、患者の頭部22を通してナビゲートすることができる。ワークステーション12、LPドライバ20、及びカテーテルハブ18は、別個の構成要素として示されているが、これらの構成要素は全て別個の構成要素であってもよく、これらの構成要素を全てまとめて単一の構成要素に含んでもよく、又はより少ない構成要素として様々に組み合わせてもよい。
【0016】
図2は、無線システム内のクロックを同期させるための本発明の方法である「フライホイール機構」の概略図である。本方法は、1つ(又は2つ以上)のクロックにおいてゴング又はリセット信号が失われた場合であっても、無線システム内のクロックを同期させ続けることを可能にする。ゴング信号の消失又は欠落によって生じる問題を解決するために、本発明の手法は、クロックのスキューの学習手法及び内部推定器を備え、したがって、ゴング信号を受信しなかったときであっても、クロックのリセットを可能にする。以下の実施例を使用して、本発明の手法を例示するが、限定するものではない。
【0017】
第1の実施例において、図1に示されるシステムなどの無線システムは、クロック1 38及びクロック2 40を備える。最初に、クロック38、40は、どちらも「ゼロ」又は12:00に設定される。1時間後に、クロック1 38は、1:00を示し、クロック2は、1:05を示す。クロック2 40がゴング信号を受信すると、クロック2 40は、(クロック1 38に一致又は同期するように)1:00にリセットする。また、クロック2 40においてゴング信号を受信すると、これは、スキューを学習するためのデータとしてプロセッサ14に報告される。2時間後に、クロック1 38は、2:00を示し、クロック2 40は、2:05を示す。クロック2 40は、ゴング信号を受信し、2:00にリセットし、このデータもまた、プロセッサ14に報告される。このデータは、クロック2 40がクロック1 38より5分遅れてスキューしていることを示し、すなわち、クロック1 38が1:00を示すときに、クロック2 40は、1:05を示す(1:05と1:00との間の差は、5分である)。同様に、クロック1 38が2:00を示すときに、クロック2 40は、2:05を示す。プロセッサ14は、少なくともこのデータを使用して、本発明の手法を行い、クロック2 40がクロック1 38より5分遅れてスキューしていることを「学習する」。一実施形態では、システムは、「オンザフライで」スキューを学習し、すなわち、システムは、受信され、プロセッサに報告された全てのゴング(ゴング信号)を使用して、統計(例えば、平均及び標準偏差)を構築し、次いで、これらの統計を使用して、欠落しているゴングを推定することができる。上で述べたように、統計は、プロセッサ14によってカテーテルハブ18から収集され、「学習」のために分析される。
【0018】
3時間後に、クロック1 38は、3:00を示し、クロック2 40は、3:05を示す。この時点では、クロック2 40においていかなるゴング信号も受信していないので、リセットを行わない。しかしながら、本明細書で開示する「フライホイール機構」の方法論によれば、クロック2 40は、(「学習した」5分のスキューのため)ゴング信号を3:05に受信するはずであったことを認識し、したがって、クロック2 40は、潜在的な不一致に気付く。クロック2 40は、毎時5分のスキューを「学習している」ので、それに応じてクロック2 40を調整することができる。この実施例では、約3:10において、いかなるゴング信号も受信しなかったときに、クロック2 40を3:05にリセットして、5分のスキュー、及び3:05に受信するはずであったゴング信号のための更に5分の待ち時間について修正する。したがって、いかなるゴング信号も受信しなかったときには、推定したスキューが使用され、この推定に従ってクロックがリセットされる。この推定したスキューは、学習されることができ、かつ「典型的遅延」又はスキューを示すことができる。ゴング信号を受信しているかどうかにかかわらず、ゴング信号が送信されるたびにスキューを学習し、次いで、スキューを推定することを続ける。図2に示される実施例において、ゴング信号は、毎時送信されるが、ゴング信号の送信の間には、より多い又はより少ない時間が経過することがある。一実施形態では、スキューを学習又は推定することは、ガウス分布フィッティングを使用して行うことができる。この種類の確率分布フィッティングは、確率分布、例えば、理想的又は理論的なゴング信号時間の分布を、一連のデータ、例えば、ゴング信号データの反復測定に適合させることを含む。これは、一定の間隔におけるゴング信号の発生頻度の予測を可能にすることができる。
【0019】
第2の実施例において、クロック1 38及びクロック2 40は、同じく12:00から始まる。ゴング信号は、1:05にクロック2 40において受信され、クロック2 40は、1:00にリセットされる。次のゴング信号は、2:07にクロック2 40において受信され、クロック2 40は、2:00にリセットされる。フライホイール機構は、平均タイムラグ又はスキューが6分(例えば、5分及び7分の平均)であることを学習する。約3:10までに、クロック2 40は、ゴング信号を受信しておらず、システムは、ゴング信号がおよそ3:06ごろに受信しているはずであったことを認識する。したがって、3:10に、クロック2 40は、3:04にリセットされる(平均タイムラグの6分を減算し、平均タイムラグから4分後のリセット時間、例えば、3:10-6分に調整する)。第1の実施例と同様に、ゴング信号を受信するたびに、新しく受信した時間信号を平均タイムラグの算出に組み込んで、平均タイムラグが調整されるように学習を続ける。説明を簡単にするために、これらの実施例は、ゴング信号の間に1時間の間隔を使用する。しかしながら、1ミリ秒又はそれ以上の間隔も使用することができる。
【0020】
図3は、実際のゴングタイムスタンプと、理論ゴングタイムスタンプとを例示するグラフである。図3のグラフにおいて、Xは、理論上の、又は予想されるゴングタイムスタンプであり、Yは、受信したゴングの実際のタイムスタンプである。システムが完全である(すなわち、いかなる外部干渉も受けない)場合、実際のタイムスタンプは、理論上のタイムスタンプに正確に一致し、すなわち、y=xである。しかしながら、実際には、システム内に干渉があるので、図3のグラフは、いくらかの「ジッタ」が理論値付近にあることを示す。
【0021】
図4は、本発明の方法のフロー図である。一実施形態では、本方法は、以下のように進行することができる。ステップS1において、クロックが「ゼロ」又は12:00に設定される。ステップS2において、一定量の時間が経過した後に、ゴング信号がカテーテルハブ18に送信される。一実施形態では、一定量の時間は、60分(1時間)である。
【0022】
クロックにおいてゴング信号を受信している場合(S3=はい)、クロック上の時間がゴング信号によって送信された時間に等しいかどうかを判定する。クロック時間がゴング信号時間に等しい場合(S4=はい)は、ステップS7に進む。
【0023】
クロック時間がゴング信号時間に等しくない場合(S4=いいえ)、ステップS6において、クロック時間をゴング信号時間に設定する。一実施形態では、ゴング信号時間とクロック時間との間の差は、決定された又は「学習した」スキュー又は遅延時間である。ステップS7に進む。
【0024】
クロックにおいてゴング信号を受信しなかった場合(S3=いいえ)、クロック時間は、ある時間、例えば推定時間(もしもそれが受信されていたとしたらゴング時間がいつであったかを推定する)になるよう、決定されたスキュー時間だけ調整される。
【0025】
ステップS7において、受信したゴング信号を使用して学習を行い、推定時間を決定する。一実施形態では、ステップS7において学習を行うことは、クロック上の時間とゴング信号によって送信された時間との間の平均差として平均遅延時間を算出することにより、スキュー又は遅延時間を決定することによって行われる。例えば、平均遅延時間(ALT)は、クロック上の時間(CT)からゴングによって送信された時間(GT)を引いて、クロック時間の数(n)で割った合計に等しく、例えば、ALT=Σ(CT-GT)/n)であり、式中、nは、記録されたクロック時間の数である。上の実施例1及び2では、n=3(1:00、2:00、3:00)である。より多い又はより少ないクロック時間の数が可能である。ステップS7の完了後に、ステップS2において続ける。
【0026】
本明細書の開示に基づいて多くの変更例が可能であることを理解されたい。特徴及び要素が特定の組み合わせで上に説明されているが、各特徴又は要素は、他の特徴及び要素を用いずに単独で、又は他の特徴及び要素を用いて若しくは用いずに他の特徴及び要素との様々な組み合わせで使用されてもよい。
【0027】
提供される方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおける実装を含む。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor、DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ若しくは2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)回路、任意の他の種類の集積回路(integrated circuit、IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(hardware description language、HDL)命令及びネットリスト等の他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。そのような処理の結果は、次いで、本明細書で説明される方法を実装するプロセッサを製造するために半導体製造プロセスにおいて使用される、マスクワークとすることができる。
【0028】
本明細書に提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実行のために持続性コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装することができる。持続性コンピュータ可読記憶媒体の例としては、ROM、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)が挙げられる。
【0029】
〔実施の態様〕
(1) 無線システム内の複数のクロックを同期させるための方法であって、各クロックが、時間を有し、前記方法が、
一定量の時間が経過したときに、ゴング信号時間を含むゴング信号を前記クロックに送信することと、
各クロックにおいて、前記ゴング信号を受信することと、
前記ゴング信号時間を前記クロック時間と比較することと、前記ゴング信号時間が前記クロック時間に等しくないときに、前記クロック時間を前記ゴング信号時間に設定し、スキュー時間を算出することと、
前記ゴング信号を受信しなかったときに、前記スキュー時間だけ前記クロック時間を調整することと、を含む、方法。
(2) 前記クロック時間と前記ゴング信号時間との間の平均差を算出することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記受信したゴング信号及び前記クロック時間を使用して、平均及び標準偏差を算出することと、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) ガウス分布フィッティングを使用して、前記スキューを学習することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記一定量の時間が、1ミリ秒である、実施態様1に記載の方法。
【0030】
(6) 無線システム内の複数のクロックを同期させるためのシステムであって、
各々がクロック時間を有する、2つ又はそれ以上のクロックと、
プロセッサであって、
一定量の時間が経過したときに、ゴング信号時間を含むゴング信号を前記クロックに送信し、
各クロックにおいて、前記ゴング信号を受信し、
前記ゴング信号時間を前記クロック時間と比較し、
前記ゴング信号時間が前記クロック時間に等しくないときに、前記クロック時間を前記ゴング信号時間に設定し、スキュー時間を算出し、
前記ゴング信号を受信しなかったときに、前記スキュー時間だけ前記クロック時間を調整するように構成された、プロセッサと、を備える、システム。
(7) 前記プロセッサが、前記クロック時間と前記ゴング信号時間との間の平均差を算出するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記受信したゴング信号及び前記クロック時間を使用して、平均及び標準偏差を算出し、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、ガウス分布フィッティングを使用して推定時間を算出するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(10) 前記一定量の時間が、1ミリ秒である、実施態様6に記載のシステム。
【0031】
(11) 無線システム内の複数のクロックを同期させるためのコンピュータソフトウェア製品であって、各クロックが、時間を有し、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令が、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
一定量の時間が経過したときに、ゴング信号時間を含むゴング信号を前記クロックに送信するステップと、
各クロックにおいて、前記ゴング信号を受信するステップと、
前記ゴング信号時間を前記クロック時間と比較するステップと、前記ゴング信号時間が前記クロック時間に等しくないときに、前記クロック時間を前記ゴング信号時間に設定し、スキュー時間を算出するステップと、
前記ゴング信号を受信しなかったときに、前記スキュー時間だけ前記クロック時間を調整するステップと、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
(12) 前記クロック時間と前記ゴング信号時間との間の平均差を算出することを更に含む、実施態様11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(13) 前記受信したゴング信号及び前記クロック時間を使用して、平均及び標準偏差を算出することと、前記算出された平均及び標準偏差を使用して、前記スキュー時間を決定することと、を更に含む、実施態様11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(14) ガウス分布フィッティングを使用して、推定時間を算出することを更に含む、実施態様11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(15) 前記一定量の時間が、1ミリ秒である、実施態様11に記載のコンピュータソフトウェア製品。
図1
図2
図3
図4