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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】水素センサを備える電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20221121BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221121BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221121BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20221121BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20221121BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20221121BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20221121BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20221121BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20221121BHJP
   H01M 8/0204 20160101ALI20221121BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221121BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20221121BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20221121BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221121BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/60
C25B9/65
C25B13/02 302
C25B15/00 302
H01M8/02
H01M8/0204
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/0444
H01M8/1004
H01M8/10 101
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018131500
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2019031733
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】1756603
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルディン バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン レミ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-167780(JP,A)
【文献】特開2003-083934(JP,A)
【文献】特表2010-503143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247818(US,A1)
【文献】国際公開第2002/001659(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0022027(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気化学セル(10)を備える電気化学装置(1)であって、
-電解質プロトン交換膜(19)と、膜(19)の第1面(19.1)に接触する第1電極(21)と、膜(19)の反対側の第2面(19.2)と接触する第2電極(22)とを有する膜電極接合体(11)と、
-前記膜電極接合体(11)がその間に配置される第1及び第2バイポーラプレート(13.1、13.2)と、前記第1バイポーラプレート(13.1)を通過し、前記膜(19)の前記第1面(19.1)と流体連通された少なくとも1つの第1排出マニホールド(15.1)とを備え、
-前記膜電極接合体(11)は、第1及び第2電極(21、22)によって画定された活性領域(2)と、活性領域(2)と第1排出マニホールド(15.1)との間に位置する接続領域(3)とを備え、
-水素の酸化を確実にするのに適した触媒を含み、前記第1面(19.1)に接触し、接続領域(3)に配置されたアノード(31)と、第2面(19.2)に接触し、前記アノード(31)の反対側に位置するカソード(32)と、
-電気回路を介して前記アノード(31)と前記カソード(32)との間に電圧を印加するのに適した電源(33)と、
-前記電源(33)に接続され、前記電気回路に流れる電流を測定するのに適した電流センサ(35)と、
-電流の測定値から前記第1面(19.1)上の水素の存在を検出するのに適した電流センサ(35)に接続された演算ユニット(36)と、
を備える、少なくとも一つの水素センサ(30)を備える電気化学装置。

【請求項2】
前記演算ユニット(36)は、電流の測定値から前記アノード(31)で酸化された水素の量を計算するのに適している、
請求項1に記載の電気化学装置(1)。
【請求項3】
前記演算ユニット(36)は、電流の測定値から、前記第1面(19.1)上の接続領域(3)を循環する水素の量を計算するのに適している、
請求項1又は2に記載の電気化学装置(1)。
【請求項4】
第1バイポーラプレート(13.1)は、前記第1排出マニホールド(15.1)と連通し、前記アノード(31)上に重ねられた少なくとも1つの流通経路を備える第1流体流通路(18.1)を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学装置(1)。
【請求項5】
それぞれの前記バイポーラプレート(13.1、13.2)は、導電性材料からなる少なくとも1つのシートから形成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学装置(1)。
【請求項6】
前記アノード(31)及び前記カソード(32)は、前記バイポーラプレート(13.1、13.2)から電気的に絶縁されている、
請求項5に記載の電気化学装置(1)。
【請求項7】
電解質の前記膜(19)は、
接続領域(3)の縁部に位置する突出部(24)と、
前記膜(19)の前記第1面(19.1)に取り付けられ、前記アノード(31)を前記突出部(24)に接続する第1導電性トラック(34.1)と、第2面(19.2)に取り付けられ、前記カソード(32)を前記突出部(24)に接続する第2導電性トラック(34.2)とを備える前記電源(33)と、
を備える、
請求項5又は6に記載の電気化学装置(1)。
【請求項8】
前記第1及び第2導電性トラック(34.1、34.2)は、10μm以下の厚さを有する、
請求項7に記載の電気化学装置(1)。
【請求項9】
第1及び第2バイポーラプレート(13.1、13.2)は、電気絶縁材料からなるプレート(41.1、41.2)でそれぞれ形成され、それぞれ、前記アノード(31)とは独立して第1電極(21)を分極し、前記カソード(32)とは独立して第2電極(22)を分極するように配置された導電線(45、47、49;46、48、50)を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学装置(1)。
【請求項10】
前記第1バイポーラプレート(13.1)は一体に作られ、内面(42i.1)及び外面(42e.1)を有し、前記内面(42i.1)は、流体流通路(18.1)を形成する構造を有し、前記第1バイポーラプレート(13.1)は、第1電位を前記第1電極(21)に印加し、第1電位とは異なる第2電位を前記アノード(31)に印加するのに適している、
請求項9に記載の電気化学装置(1)。
【請求項11】
前記第1バイポーラプレート(13.1)の絶縁材料(41.1)は、前記内面(42i.1)と反対側の前記外面(42e.1)とを画定し、前記内面(42i.1)は、支持面を介して前記第1電極(21)又は前記アノード(31)と接触する縦壁(44.1)によって、長手方向に2つに分離された流体流通経路と、縦壁(44.1)の支持面上に延在し、前記第1電極(21)に電位を印加するための第1セット(45.1)、及び前記アノード(31)に異なる電位を印加するための第2セット(46.1)に適した、導電線(45.1、46.1)と、を備える、
請求項10に記載の電気化学装置(1)。
【請求項12】
前記第1バイポーラプレート(13.1)は、前記外面(42e.1)上に延在するコンタクト形成線(contact-making line)と呼ばれる第1導電線(49.1)及び第2導電線(50.1)と、縦壁(44.1)内の前記外面(42e.1)と前記内面(42i.1)との間に延在する第1(47.1)及び第2(48.1)導電性ビアと、を備え、コンタクト形成する前記第1導電線(49.1)は、導電性ビア(47.1)を通る導電線の第1セット(45.1)に電位を印加するのに適しており、コンタクト形成する前記第2導電線(50.1)は、他の導電性ビア(48.1)を通る導電線の第2セット(46.2)に異なる電位を印加するのに適している、
請求項11に記載の電気化学装置(1)。
【請求項13】
前記第2面(19.2)と流体連通する第2排出マニホールド(15.2)と、前記第2排出マニホールド(15.2)と連通している流体の第2流通路(18.2)とを備え、前記第2電極(22)は、前記第2流通路(18.2)内を循環する水素の酸化を確実にするのに適しているか、又は、電解質の前記膜(19)を横切って拡散したプロトンの還元を確実にするのに適している、
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、燃料電池又は電解槽のようなプロトン交換膜を備える電気化学装置内の水素の存在を検出するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池又は電解槽のような電解質プロトン交換膜を有する電気化学装置は、慣習的に、膜電極接合体(MEA)をそれぞれ有する1つ又は複数の電気化学セルを備え、これは、電解質膜によって互いに分離されたアノード及びカソードから形成される。
【0003】
電解槽の場合、水がアノードに運ばれ、電位差が電極に加えられると、水の酸化が行われ、酸素とプロトンが生成される。後者は、電解質膜を横切ってカソードに移動し、そこでプロトンの還元が行われ、水素が生成される。燃料電池の場合、アノードは導入された水素の酸化を行い、カソードは導入された酸素と、アノードから生じるプロトンと電子とを用いた還元反応によって水を生成する。
【0004】
しかしながら、電解質膜は水素に対して透過係数がゼロでないので、水素は膜を横切って対向電極に透過することによって拡散することができる。従って、電解槽の場合、水素はアノードに拡散して生成された酸素と混合し、液体水の不在下で水素の体積分率が約4%より大きくなると、発火する危険性がある。燃料電池の場合、カソードにおける水素の割合が高いと、電解質膜の構造的劣化、例えば膜の老化又は局所的破裂の存在がもたらされる可能性がある。
【0005】
従って、このような膜を備える電気化学装置において、電解質プロトン交換膜を横切る透過によって拡散した水素の存在を検出する必要がある。
【0006】
欧州特許第1296395号明細書は、測定信号を抽出することを可能にするプリント回路の両側に配置された燃料電池ガスケットに関する。特に、パラジウムブリッジとアルミナ基板からなる水素センサが記載されている。
【0007】
国際公開第2008/032838号は燃料電池に関し、その1つの電気化学セルは水素センサを備える。これは、水素濃度が低下した不純物蓄積領域である制限領域の下流の水素流通経路に位置する。
【0008】
欧州特許第1293777号明細書には、膜電極接合体から形成された水素センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第1296395号明細書
【文献】国際公開第2008/032838号
【文献】欧州特許第1293777号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することであり、より詳細には、水素センサを備える電解質プロトン交換膜を有する電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この理由から、本発明の主題は、少なくとも1つの電気化学セルを備える電気化学装置であって、電解質プロトン交換膜と、膜の第1面に接触する第1電極と、膜の反対側の第2面と接触する第2電極とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体がその間に配置される2つのバイポーラプレートと、前記バイポーラプレートを通過し、前記膜の前記第1面と流体連通された少なくとも1つの第1排出マニホールドとを備え、前記膜電極接合体は、第1及び第2電極によって画定された活性領域と、活性領域と第1排出マニホールドとの間に位置する接続領域とを備える。
【0012】
本発明によれば、電気化学装置は、水素の酸化を確実にするのに適した触媒を含み、前記第1面に接触し、接続領域に配置されたアノードと、第2面に接触し、前記アノードの反対側に位置するカソードと、電気回路を介して前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加するのに適した電源と、前記電源に接続され、前記電気回路に流れる電流を測定するのに適した電流センサと、電流の測定値から前記第1面上の水素の存在を検出するのに適した電流センサに接続された演算ユニットとを備える、少なくとも一つの水素センサを備える。
【0013】
この電気化学装置の好ましいが限定されない態様は以下の通りである。
【0014】
前記演算ユニットは、電流の測定値から前記アノードで酸化された水素の量を計算するのに適していてもよい。
【0015】
前記演算ユニットは、電流の測定値から、前記第1面上の接続領域を循環する水素の量を計算するのに適していてもよい。
【0016】
第1バイポーラプレートは、前記第1排出マニホールドと連通し、前記アノード上に重ねられた少なくとも1つの流通経路を備える第1流体流通路を備えていてもよい。
【0017】
それぞれの前記バイポーラプレートは、導電性材料からなる少なくとも1つのシートから形成されてもよい。
【0018】
前記アノード及び前記カソードは、前記バイポーラプレートから電気的に絶縁されていてもよい。
【0019】
電解質の前記膜は、接続領域の縁部に位置する突出部と、前記膜の前記第1面に取り付けられ、前記アノードを前記突出部に接続する第1導電性トラックと、第2面に取り付けられ、前記カソードを前記突出部に接続する第2導電性トラックとを備える前記電源とを備えていてもよい。
【0020】
前記第1及び第2導電性トラックは、10μm以下の厚さを有していてもよい。
【0021】
第1及び第2バイポーラプレートは、電気絶縁材料からなるプレートでそれぞれ形成され、それぞれ、前記アノードとは独立して第1電極を分極し、前記カソードとは独立して第2電極を分極するように配置された導電線を備えていてもよい。
【0022】
前記第1バイポーラプレートは一体に作られ、内面及び外面を有し、前記内面は、流体流通路を形成する構造を有し、前記第1バイポーラプレートは、第1電位を前記第1電極に印加し、第1電位とは異なる第2電位を前記アノード)に印加するのに適していてもよい。
【0023】
前記第1バイポーラプレートの絶縁材料は、前記内面と反対側の前記外面とを画定し、前記内面は、支持面を介して前記第1電極又は前記アノードと接触する縦壁によって、長手方向に2つに分離された流体流通経路と、縦壁の支持面上に延在し、前記第1電極に電位を印加するための第1セット、及び前記アノードに異なる電位を印加するための第2セットに適した、導電線とを備えていてもよい。
【0024】
前記第1バイポーラプレートは、前記外面上に延在するコンタクト形成線(contact-making line)と呼ばれる第1導電線及び第2導電線と、縦壁内の前記外面と前記内面との間に延在する第1及び第2導電性ビアとを備え、コンタクト形成する前記第1導電線は、導電性ビアを通る導電線の第1セットに電位を印加するのに適しており、コンタクト形成する前記第2導電線は、他の導電性ビアを通る導電線の第2セットに異なる電位を印加するのに適していてもよい。
【0025】
本発明の他の態様、目的、利点及び特徴は、限定されない例として、添付の図面を参照しながら、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】それぞれ膜電極接合体(MEA)を有する電気化学セルのスタックを備える、従来技術の電気化学装置の一例の分解斜視図である。
図2】膜電極接合体の接続領域に配置された電極を有する水素センサを備える、一実施形態に係る電気化学装置の概略縦断面図である。
図3A図3A~3Eは、バイポーラプレートが導電性シートタイプである、実施形態の第1変形例に係る電気化学装置の様々な部分の概略上面図である。図3Aは、MEAを覆うバイポーラプレートを示す図である。
図3B図3Bは、第1電極の側部上のMEAを示し、その膜は、検出アノード又はカソードに接触する導電性トラックが延びる突出部を備える図である。
図3C図3Cは、第2電極の側面上のMEAを示し、その膜は、検出アノード又はカソードに接触する導電性トラックが延びる突出部を備える図である。
図3D図3Dは、スルー開口部(through-aperture)を有する拡散層を示す図である。
図3E図3Eは、拡散層が活性領域の第1電極を覆う拡散層であり、スルー開口部が検出アノードの反対側に位置する図である。
図4】1つ以上の流体流通経路の出口に配置された複数の水素センサを備える、実施形態の他の変形に係るMEAの概略上面図である。
図5A図5A、5Bは、バイポーラプレートがPCB(プリント回路基板)タイプである、実施形態の第2変形例に係る電気化学装置の概略図である。図5Aは、第1電極の側部の上面図であり、流通経路によって覆われたMEAを示す。
図5B図5Bは、図5Aに示される面A-Aに沿った断面における電気化学装置の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面及び以下の説明において、同一の符号は同一又は類似の要素を表す。また、様々な要素は、図をより明瞭にするために一定の縮尺で表されていない。さらに、様々な実施形態及び変形例は、互いに排他的ではなく、一緒に組み合わせることができる。他に指示がない限り、「実質的に(substantially)」、「約(around)」、「~のオーダーの(of the order of)」の用語は、「10%以内(to within 10%)」を意味する。
【0028】
図1は、国際公開第2004/102710号に記載されている、従来技術の電気化学装置1の例を示し、電解質プロトン交換膜を有する電気化学セル10のスタックを備える。
【0029】
ここでは直交3次元直接座標系(X、Y、Z)が定義され、以下の説明では、X軸及びY軸が各電気化学セル10の電解質膜の面に沿って配置されており、X軸はアノード流体流れ(anodic fluidic flow)の主方向に沿って配置され、Z軸は平面XYに直交するように配置される。
【0030】
各電気化学セル10は、電解槽の場合には、例えばアノードの第1電極と、電解質プロトン交換膜によって互いに分離された、例えばカソードの第2電極で形成された膜電極接合体11(MEA)を備える。アノード、膜及びカソードは、当業者に公知の従来の要素である。各MEA11は、平面XYに平行な電解質膜の主平面に沿って延びている。ここではガス拡散層12(GDL)が電極を覆っている。
【0031】
各MEA11は、バイポーラプレート13によって隣接するセルのそれから分離される。各バイポーラプレート13は、セル10の第1電極と部分的に接触するように意図された面と、隣接するセル10の第2電極と部分的に接触するように意図された他の反対側の面とを備える。各バイポーラプレート13は、流体流通路(distribution circuits)によって、一方では第1セル10のアノードに、他方では隣接するセル10のカソードに反応種を運び、これらの同じ流通路を介して電気化学反応及び非反応性種から生じる生成物を排出し、また、セル10間に電流を送るのに適している。それはまた、特に、燃料電池の場合には、発生した熱を排出するようにセル10間で熱伝導流体の流れを提供することができる。
【0032】
電気化学装置1はまた、セル10のスタックを通過する、より正確には、MEA11の縁部に面するバイポーラプレート13を通過する開口部でそれぞれ形成された別個のフローマニホールド14、15を備える。注入マニホールド14は、注入口16からの反応性流体の注入を行い、排出マニホールド15は、電気化学反応の生成物を排出口17に排出することを可能にする。
【0033】
従って、一般に、各電気化学セル10は、第1注入マニホールドを第1排出マニホールドに接続する第1流通路を備え、これは流入する反応流体F1、inを第1電極に接触させるのに適している。第2流通路は、第2注入マニホールドを第2排出マニホールドに接続し、これは第2電極に他の流入する反応流体F2、inを接触させるのに適している。
【0034】
図2は、水素センサ30を備えた電気化学セル10を備える一実施形態に係る電気化学装置1の縦断面図を概略的に示す。
【0035】
電気化学セル10は、2つのバイポーラプレート13.1、13.2を備え、その間にMEA11が配置される。各バイポーラプレート13.1、13.2は、2つのフローマニホールドの間の、より正確には、注入マニホールド14.1、14.2と排出マニホールド15.1、15.2との間のMEA11の電極21、22における流体の流れを確保するのに適した流体流通路18.1、18.2を備える。流通路18.1、18.2は、注入マニホールド14.1、14.2と連通する入口と、排出マニホールド15.1、15.2と連通する出口との間に延びる流通経路(distribution channels)のネットワークで形成されている。第1バイポーラプレート13.1は、MEA11の第1電極21に反応性流体を運ぶことを可能にし、第2バイポーラプレート13.2は、第2電極22へ及び/又は第2電極22からの他の流体の流れを可能にする。
【0036】
膜電極接合体11は、一方では、互いに対向して配置された第2電極22から第1電極21を分離し、他方では、互いに対向して配置された、検出センサ30のカソード32からアノード31を分離する同じ電解質プロトン交換膜19を備える。
【0037】
第1及び第2電極21、22は、MEA11の活性領域2を画定する。従って、MEA11は、活性領域2と、いわゆる接続領域3とを備え、後者は、活性領域2と排出マニホールド15.1、より正確には活性領域2と第1排出マニホールド15.1との間に配置される。このように、電解質膜19は、接続領域3ではなく、活性領域2のみで、第1及び第2電極21、22で被覆されている。活性領域2では、装置1の電気化学的効率に寄与する電気化学反応が起こる。活性領域2は、電解槽の場合には水の電気分解の部位であり、燃料電池の場合には水素と酸素の反応による水の生成部位である。従って、接続領域3は、装置の電気化学的効率に寄与しないという意味で不活性であると言える。
【0038】
電解質膜19は、アノードからカソードへのプロトンの拡散を可能にし、アノードとカソードは互いに対向して配置され、プロトンはHイオンの形態で膜内に存在することが可能である。これは、ゼロでない水素透過係数を有し、従って、膜を横切ってカソードからアノードへの水素の拡散を可能にする。電解質膜19はモノリシックであり、その全表面積にわたって同じ材料で形成されている。従って、それは、80℃、大気圧で、1.25×10cm/s/cmのオーダーの水素透過係数を有する電解槽の場合には、ナフィオン(Nafion)115又はナフィオン117の製品名で市販されているような、又、燃料電池の場合にはナフィオン211の製品名で販売されているような、当業者によって慣習的に選択された材料から製造され得る。
【0039】
第1電極21は、電解質膜19の第1面19.1と接触しており、第1流通路18.1を介して、燃料電池場合には酸素、電解槽の場合には水である、反応流体F1、inを受け取る。これは流入する流体F1、inの酸化又は還元のための反応を行うのに適した活性層を含み、活性層はこの電気化学反応を促進する触媒を有する。
【0040】
第2電極22は、電解質膜19の対向する第2面19.2に接触しており、燃料電池の場合には酸化される水素を受け取り、電解槽の場合には水素を生成する。これは還元又は酸化反応を実施するのに適した活性層を含み、活性層はこの電気化学反応を促進する触媒を有する。
【0041】
第1及び第2電極21、22は、電気回路23によって互いに電気的に接続されている。電気回路23は、電解槽の場合には、電子が2つの電極21、22間を循環することを可能にし、第1電極21と第2電極22との間に電位差を印加することができる。この場合、第1電極21に設定された電位が第2電極22に設定されている電位よりも大きいという意味で、印加電圧V1は正である。例えば、50mA/cmと4A/cmとの間の電流密度の場合、1.3Vと3Vの間、例えば約1.8Vに等しくてもよい。燃料電池の場合、電気回路23は、電極21、22によって電位差が印加される端子に電荷を備え得る。
【0042】
燃料電池の場合、第1電極21は、導入された酸素から水を生成する還元反応を行うカソードであり、プロトンと電子は第2電極22に由来する。また、第2電極22は、導入された水素の酸化反応を行うアノードである。電解質膜19の透過により、水素は電解質膜19の第2面19.2から第1面19.1に拡散して第1カソード流通路18.1に流入する。
【0043】
電解槽の場合、第1電極21は導入された水の酸化反応を行うアノードであり、第2電極22はプロトンの還元を行うカソードである。電解質膜19の透過により、水素は第2面19.2から第1面19.1に拡散して、第1流通路18.1に流入することもできる。
【0044】
水素センサ30は、検出アノード31と検出カソード32とを備え、これらはいずれも活性領域2と排出マニホールド15.1との間の、接続領域3内であって、注入マニホールド14.1から排出マニホールド15.1への流体の流れの長手方向において、第1電極21の下流に配置されている。水素センサ30は、存在する水素の少なくとも一部を酸化することにより、第1流通路18.1内の水素の存在を検出するのに適している。アノード31とカソード32とは、同じ電解質膜19によって互いに分離されており、センサ30は、アノード31とカソード32との間に電位差V2を印加することを可能にする電源33をさらに備える。
【0045】
検出アノード31は、電解質膜19の第1面19.1と接触し、MEA11の接続領域3に位置し、第1流通路18.1を流れる流体F1、outによってアクセス可能である。これは、電気的に絶縁されているという意味で、第1電極21と分離されている。これは水素の酸化を実施するのに適した活性層を含み、この層はこの酸化反応を促進する触媒、例えば炭素によって担持された白金粒子、又はさらにはパラジウムを含む。水素の酸化反応は次のように記載される。
【化1】
【0046】
検出カソード32は、電解質膜19の第2面19.2と接触しており、検出アノード31に対向し、第2流通路18.2と流体連通している。これは、電気的に絶縁されているという意味で、第2電極22と分離されている。これは水素の酸化から生じる電子で電解質膜19を横切って拡散したプロトンの還元を行うのに適した活性層を含む。活性層は、この還元反応を促進する触媒、例えば炭素によって担持された白金粒子、又はさらにはパラジウムを含む。プロトンの還元反応は次のように記載される。
【化2】
【0047】
水素センサ30は、検出アノード31と検出カソード32との間に電位差V2、好ましくはDC電位差を印加することを可能にする電源33を備えており、アノード31に存在する水素の少なくとも一部の酸化、カソード32への電子の循環、カソード32でのプロトンの還元を可能にする。一例として、印加電圧V2は、電解槽又は燃料電池の場合には電極21、22間の電位差と同じ符号である。一般に、それは電圧V1よりも絶対値として低い値を有し、約0.2Vに等しいか又は約0.4Vであり得る。従って、電源33は、電圧発生器をアノード31及びカソード32に接続する導電性トラックから形成される電気回路に関連する電圧発生器を備える。
【0048】
水素センサ30は、電源33に接続された電流センサ35を備える。電流センサ35は、第1流通路18.1に任意に最初に存在していた水素がアノード31で酸化されるか否かに応じて、電源33の電気回路内を任意に循環する電流の値を測定する。
【0049】
水素センサ30はまた、電解質膜19の第1面19.1、すなわち第1流通路18.1における水素の存在を検出するのに適した、電流センサ35に接続された演算ユニット36を備える。測定された電流の値から、演算ユニット36は、アノード31で酸化された水素の量を演算することができる。有利には、演算ユニット36は、電流の測定値から、電解質膜19の第1面19.1すなわち第1流通路18.1における接続領域3内を循環する水素の量を推定することを可能にする、データベース(事前に得られたノモグラム)又は電気化学的モデルを組み込む。データベースは、例えば、電気化学セル10の分極曲線の1点に対して、センサ35によって供給される電流値の関数として第1流通路18.1内を循環する水素の量を接続することによって、事前に得られる。
【0050】
このように、電気化学装置1は、第1流通路18.1、すなわち、水素が透過によって拡散することができる電解質膜19の側面19.1における水素の存在の可能性を検出できるという意味で、電気化学セル10内に組み込まれた水素センサ30を備える
【0051】
このように、水素センサ30は、リアルタイムで、電解質膜19を透過することによって拡散した水素の存在を検出すること、又、さらには、検出アノード31で酸化された水素の量を検出することを可能にする。有利には、活性領域2の出口で第1流通路18.1内を循環する水素の量を推定することができる。従って、この情報は、電解槽の場合に発火の危険性を制限するために、及び/又は、電解質膜19の健康状態(老化の程度、局所的な破裂など)を知るために、用いられ得る。
【0052】
従って、使用するのが困難又は高価になる、電気化学セル10の特定の機器に頼る必要性が回避される。さらに、水素センサ30は、酸化によって存在する水素を検出するという事実によって、第1流通路18.1を循環する流出流体F1、out中の水素の体積割合を減少させるという利点を有する。
【0053】
次に、電解槽の場合の電気化学装置1の動作を説明する。
【0054】
水F1、inは、注入マニホールド14.1を介して第1流通路18.1の入口に注入され、ここではアノードである第1電極21と接触する。この例では、第2注入マニホールド14.2を通って第2流通路18.2の入口に水F2、inを注入することもできる。活性領域2の第1電極21で水が酸化され、第1流通路18.1を循環する酸素が生成され、第2電極22でプロトンが還元され、第2流通路18.2を循環する水素が生成される。
【0055】
しかし、第2電極22で発生した水素は、電解質膜19を透過して第1電極21に拡散する。活性領域2の出口では、第1流通路18.1を循環する流体F1、outは、酸素と、ゼロでない体積割合の水素を含む。
【0056】
次いで、流出する流体F1、outは、活性領域2と第1排出マニホールド15.1との間に位置する接続領域3を通過する。従って、それは、存在する水素の少なくとも一部の酸化を行う検出アノード31と接触し、ゼロではない電圧V2が電極31、32間に印加される。次いで、プロトンがカソード32に拡散し、電子は電源33の電気回路内を循環する。次に、プロトンの還元がカソード32で行われる。
【0057】
電流センサ35は、電源33に流れる電流のゼロではない値を測定し、演算ユニットは、測定値がゼロでない場合に水素の存在を検出する。ユニット36は、アノード31で酸化された水素の量を計算することもできる。演算ユニット36は、さらに、電流の測定値から、活性領域2の出口における第1流通路18.1内を循環する水素の量を推定することができる。
【0058】
図3A図3Eは、本実施形態の第1変形例に係る電気化学装置1の様々な部分を上面図として示す。
【0059】
この変形例では、バイポーラプレート13は導電性材料からなるシートで形成され、その流通路18はスタンピング又はモールディングによって得ることができる。従って、これらは、第1電極21と第2電極22との間の電気的循環を可能にする。検出アノード31と検出カソード32とは、バイポーラプレート13から電気的に絶縁されているが、後者の流通路18と流体連通している。
【0060】
図3Aは、電解質膜19の第1面19.1と流体連通する第1バイポーラプレート13.1の上面図である。この例では、3つの注入マニホールド、即ち、第1電極21と接触することが意図された流入する流体F1、inのための第1マニホールド14.1、第2電極と接触することが意図された流入する流体F2、inのための第2マニホールド、ここでは、燃料電池の場合、冷却回路内を循環するように意図された熱伝導流体を注入するための第3マニホールドとを備える。さらに、第1流通路18.1を循環して流出する流体F1、outを受けとる第1マニホールド15.1と、第2流通路を循環して流体F2、outを受け取る第2マニホールドと、熱伝導流体のための第3マニホールドとを備える。電解質膜19と同様に、MEA11の活性領域2は点線で示されている。従って、MEA11の接続領域3は、活性領域2と第1排出マニホールド15.1との間に位置する。後で詳細に説明するように、電解質膜19は、バイポーラプレート13.1の輪郭から突出する突出部24を含む。
【0061】
図3B、3Cは、図3Bには第1電極21の側面、図3Cには第2電極22の側面のMEA11の上面図である。アノード31は、電解質膜19の第1面19.1に接しており、接続領域3に位置しており、カソード32は、第2面19.2に接しており、アノード31に対向している。アノード31とカソード32は分離されているため、第1電極21と第2電極22からそれぞれ電気的に絶縁されている。
【0062】
電解質膜19は、接続領域3の縁部に位置する突出部24を備える。突出部24は、バイポーラプレート13の輪郭を越えて突き出るような大きさを有しているため、電気化学セルのスタックの外側からアクセス可能である。
【0063】
電流源は、突出部24と電気的に接触するアノード31から第1面19.1上を連続的に延びる第1導電性トラック34.1を備える。これは、突出部24と電気的に接触しているカソード32から第2面19.2上で連続的に延びる第2導電トラック34.2を含む。導電性トラック34.1、34.2は、例えば、導電性材料とイオノマーから形成されたインクの堆積によって生成されたプリント回路基板の形態をとることができ、有利には10μm以下の厚さを有する。従って、封止欠陥又は機械的応力の不均質性を誘発し得る局部的な厚さが制限される。従って、それらがバイポーラプレートの輪郭から突き出ている限り、電圧発生器を導電性トラック34.1、34.2に容易に接続することができる。
【0064】
図3D、3Eは、貫通開口部25.1を含む拡散層12.1(ガス拡散層用GDL)の上面図である。第1拡散層12.1は、第1面19.1と接触し、活性領域2及び接続領域3を覆うようになっている。拡散層12.1が検出アノード31と接触するのを防止するために、貫通開口部25.1が設けられており、その輪郭は、アノード31の縁部との接触を防止するような大きさにされている。このように、拡散層12.1とアノード31との間の電気的接触は回避される一方、流出する流体F1、outが後者に達することが可能となる。カソードに対する第2拡散層についても同様である。導電性トラックはまた、拡散層から、例えばMEAの補強材を形成する絶縁膜(図示せず)によって電気的に絶縁されている。
【0065】
好ましくは、電気的に絶縁性であるが多孔性のポリマーフィルム(図示せず)をアノード31と第1バイポーラプレート13.1との間に配置することができる。フィルムは、例えば、Celgard 2500のようなCelgard社から市販されているポリマーであってもよい。このように、第1流通路18.1とアノード31との間の流体連通を維持しながら、アノード31と第1バイポーラプレート13.1との間の電気絶縁が高められる。第2バイポーラプレート18.2に対するカソード32についても同様である。
【0066】
図4は、第1電極21の側面にある他の変形例に係るMEAの上面図を示し、装置1が複数の水素センサ30.1、30.2、30.3を備える点で図3Bのものと本質的に異なる。各水素センサ30.1、30.2、30.3は、接続領域3内に配置されたアノードとカソードとを含む。種々の水素センサ30.1、30.2、30.3の検出アノードは、互いに電気的に絶縁され、それぞれの第1流通路の1つ以上の経路(channels)に対向して配置されている。検出カソードは、対応するアノードに対向して配置される。水素センサ30.1、30.2、30.3は、電解質膜19の突出部24まで延在する第1及び第2導電性トラックを備える。いくつかの突出部、又はここに示すような単一の突出部が設けられ得る。従って、局在化された様式で水素の存在を検出することができ、1つ以上の流通経路が他の流通経路よりも多くの水素を含むか否かを示すことが可能である。これにより、特に、電解質膜19の健康状態をより正確に監視し、膜の可能性のある破裂をより正確に突き止めることが可能になる。膜の破裂が存在する流通経路を閉鎖する目的でマイクロバルブを設けることができる。
【0067】
図5A、5Bは、実施形態の第2変形例に係る電気化学装置1の様々な部分を、上面図(図5A)、断面図(図5B)として示す。
【0068】
この変形例では、バイポーラプレート13は、電気的に絶縁性の材料でできた構造化されたプレートを含み、その中に、検出アノード31及び検出カソード32とは独立して第1及び第2電極21、22を分極するのに適した導電線が延びる。検出アノード31及び検出カソード32は、バイポーラプレート13の絶縁材料と接触するが、第1及び第2電極21、22から電気的に絶縁される。バイポーラプレート13は、PCBプリント回路基板タイプである。
【0069】
図5Aは、電解質膜19の第1面19.1側のMEA11の上面図であり、破線で示す第1流通路18.1の例である。
【0070】
MEA11は、活性領域2を画定する第1電極21と、接続領域3に配置された検出アノード31とによって、第1面19.1が被覆された電解質膜19を備える。複数の流通経路は、活性領域2を横切り、ここでは純粋に説明のために、接続領域3で合流して流れ均質化領域が形成される。もちろん、経路の他の配置も可能である。従って、例として、流通経路は、接続領域内で互いに離れていてもよく、又はグループで合流することもできる。
【0071】
第1変形例とは異なり、検出アノード31及び検出カソード32の分極がバイポーラプレート13によって行われる限り、電解質膜19は、電流源の導電性トラックを受けとる突出部分を含まない。
【0072】
図5Bは、この第2変形例に係るPCBタイプのバイポーラプレート13の例である、図5Aに示す切断面A-Aに沿った断面を概略的かつ部分的に示す。
【0073】
ここではMEA11が示されており、第1領域は活性領域2を形成し、第1領域とは他の第2領域は、第1流通路18.1の流体連続性において、第1排出マニホールド15.1(図示せず)の方向に、活性領域2の下流に位置する接続領域3を形成する。活性領域2は、電解質膜19によって互いに分離された第1電極21と第2電極22とを備え、接続領域3は、同じ電解質膜19によって互いに分離されたアノード31とカソード32とを備える。アノード31と第1電極21とは、カソード32と第2電極32と同様に電気的接触を避けるために互いに分離されている。公知の方法では、電解質膜19はプロトンを伝導するが、電子に対して絶縁性である。
【0074】
流通路18.1、18.2は、バイポーラプレートを構成することによって形成される。従って、第1流通路18.1は、流体流通経路を画定する構造を有する同じバイポーラプレート13.1内に作られる。バイポーラプレートは、第1電極21に電位を印加し、アノード31に他の異なる電位を印加するのに適している。同様に、第2流通路18.2は、流体流通経路を画定する構造を有する同じバイポーラプレート13.2内に作られる。バイポーラプレートは、第2電極22に電位を印加し、カソード32に他の任意に異なる電位を印加するのに適している。
【0075】
この例では、各バイポーラプレート13.1、13.2はPCB(プリント回路基板)タイプのものである。従って、電気絶縁材料、例えば、その上又は中に電線が延びているセラミックから形成された部分41.1、41.2を含む。
【0076】
第1バイポーラプレート13.1(ここでは第2バイポーラプレート13.2は同一である)を参照すると、絶縁部分41.1は、プレート13.1の厚さ軸に沿って互いに対向する外面42e.1及び内面42i.1を有する。内面42i.1は、電解質膜19の第1面19.1に向けられ、流通路18.1を画定する構造を備える。
【0077】
流通路18.1の経路は、2つに分離され、その端部が第1電極21又はアノード31と接触する支持面を形成し、分極トラックと呼ばれる電気トラック45.1、46.1によって被覆されている、絶縁プレート41.1の縦壁(longitudinal wall)44.1によって境界が定められている。
【0078】
従って、流通経路を分離し境界を定める縦壁44.1の端部の全て又は一部は、そのような電気分極トラック45.1、46.1で被覆される。分極トラック45.1は、第1電極21と接触し、分極トラック46.1は、アノード31と接触する。分極トラック45.1は、分極トラック46.1から電気的に絶縁されている。
【0079】
分極トラック45.1は、第1電極21と接触して、外面42e.1上に延びるコンタクト形成トラックと呼ばれる電気トラック49.1に接続されている。コンタクト形成トラック49.1は、第1ビア47.1によって分極トラック45.1に接続されている。ビア47.1は、導電性材料で満たされた貫通開口部であり、縦壁44.1の絶縁プレート13.1の厚さ方向の軸に沿って延びている。
【0080】
同様に、検出アノード31と接触する分極トラック46.1は、同じ外面42e.1上に延びる他のコンタクト形成電気トラック50.1に接続されている。コンタクト形成トラック50.1は、ビア48.1によって分極トラック46.1に接続されている。コンタクト形成する第1及び第2電気トラック49.1、50.1は、互いに電気的に分離されている。
【0081】
従って、同じバイポーラプレート13.1は、第1電極21及び検出アノード31のための第1流体流通路18.1を形成し、これら2つの電極21、31に互いに異なる電位を印加することを可能にする。
【0082】
第2バイポーラプレート13.2は、上述した第1バイポーラプレート13.1と同一、又は、類似であってもよい。さらに、厚さ方向の軸に沿っていくつかの膜電極接合体を積み重ねることが可能であり、隣接する膜電極接合体は、図5Bに示すものと同様のPCBタイプのバイポーラプレートによって分離される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B