(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/171 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
E06B9/171
(21)【出願番号】P 2018142573
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 裕樹
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-121043(JP,A)
【文献】実開平2-53492(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/15,9/17,9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向両端にフック部が設けてある複数枚のスラットからなるシャッターカーテンを備え、シャッターカーテンの巻取時に径方向に隣接するスラットのフック部の接触に起因して、開口部全開状態におけるシャッターカーテンの巻径が、巻取シャフトの長さ方向の両端あるいは一端において大きくなるシャッター装置において、
前記シャッターカーテンの上端のスラットの上端は、当該上端のスラットの幅方向に間隔を存して設けた複数の吊元の高さ方向の下端に連結されることで当該吊元を介して前記巻取シャフトに連結されており、
前記複数の吊元から選択された1つあるいは複数の吊元の高さ方向の上端には1つあるいは複数のスペーサが連結されており、前記1つあるいは複数のスペーサは、巻取シャフトの周方向に前記吊元を挟んで前記上端のスラットと反対側に位置して、前記巻取シャフトに固定されている、
シャッター装置。
【請求項2】
前記吊元の高さ方向の上端には上側連結部が形成されており、
前記スペーサの高さ方向の下端には下側連結部が形成されており、
前記スペーサは、前記下側連結部を、前記吊元の前記
上側連結部に幅方向からスライドさせることで当該吊元に連結されている、
請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記複数の吊元は、それぞれ螺子によって前記巻取シャフトの周面に固定されており、
前記巻取シャフトの周面の所定位置には、長さ方向に間隔を存して複数の雌螺子が設けてあり、
前記スペーサは、螺子によって前記巻取シャフトに固定されている、
請求項1、2いずれか1項に記載のシャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャッター装置において、開口部全開状態におけるシャッターカーテンの巻径が、巻取シャフトの長さ方向の両端あるいは一端において大きくなる場合がある。特に、スラットの幅方向両端に耐風フックが設けてあるシャッターカーテンの巻き上げ時に、耐風フックの立ち上がり部が干渉し、耐風フックが取り付けられている両端部のみスラットの巻径が大きくなって(巻が膨れる)、スラット端部と中央部位で巻径の差が発生し、結果として、開口部全開状態における座板の変形(座板の幅方向中央部位の撓みや片下がりを伴った撓み)に繋がる場合がある。
【0003】
このような開口部全開状態における座板の変形(具体的には、座板の幅方向中央部位の撓みや片下がりを伴った撓み)は、
(ア)開口部全開状態において、まぐさラインと座板下端の不一致が目立ち、座板の納まりがスッキリせずに意匠上好ましくない、
(イ)まぐさ内部にエマーゼンシスイッチ等の検知部材がある場合、意図しないタイミングでシャッターカーテンとこれらの部材が干渉してしまうおそれがある、
といった不具合を招く。
【0004】
スラット端部の巻径とスラットの中央部位の巻径のギャップを補正するべく、常に天井内(シャッターケース内)に位置して外部に露出することがない上端側のスラットの所定部位(例えば幅方向の中央部位)に板状のスペーサを挟むことも考えられるが、このやり方ではスペーサが脱落してしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1には、スクリーンシャッターにおけるスクリーンの片下がりを補正するために、巻取ドラムの外周面に複数のスペーサを取り付けて巻取ドラムの外形を段階的に増大させることが開示されている。しかしながら、シャッターカーテンがスクリーンからなると共に、スペーサはガラス繊維などからなる可撓性材であり、接着剤によって巻取ドラムの外周面に貼り付けられるものであり、スラットがこのスペーサに接触した場合には、当該スペーサが押圧されて潰れてスペーサの機能を果たさなかったり、破けたり脱落したりするおそれがあり、このスペーサをスラットシャッターに用いることはできない。また、スクリーンシャッターのスクリーンの片下がりは必ずしも座板の変形を伴うものではない。
【文献】特開2002-4749号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スラット巻取時の巻径ギャップに起因する座板の変形を防止することができるシャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するべく本発明が採用した技術手段は、
開口部全開状態におけるシャッターカーテンの巻径が、巻取シャフトの長さ方向の両端あるいは一端において大きくなるシャッター装置において、
前記シャッターカーテンの上端のスラットの上端は、当該上端のスラットの幅方向に間隔を存して設けた複数の吊元の高さ方向の下端に連結されることで当該吊元を介して前記巻取シャフトに連結されており、
前記複数の吊元から選択された1つあるいは複数の吊元の高さ方向の上端には1つあるいは複数のスペーサが連結されており、前記1つあるいは複数のスペーサは、巻取シャフトの周方向に前記吊元を挟んで前記上端のスラットと反対側に位置して、前記巻取シャフトに固定されている、
シャッター装置、である。
巻取シャフトの長さ方向の所定位置(座板が変形した下方に撓んでいる部位に対応する位置)にスペーサを設けることで、スラットの巻径ギャップを補正するようにしている。
1つあるいは複数のスペーサが設けられる1つあるいは複数の吊元は、当該吊元にスペーサを設けた後のシャッターカーテンの巻径が開口幅方向(巻取シャフトの長さ方向)に亘ってほぼ一定となるように選択される。
【0008】
1つの態様では、前記吊元の高さ方向の上端には上側連結部が形成されており、
前記スペーサの高さ方向の下端には下側連結部が形成されており、
前記スペーサは、前記下側連結部を、前記吊元の前記上側連結部に幅方向からスライドさせることで当該吊元に連結されている。
1つの態様では、前記上側連結部、前記下側連結部は湾曲状のインターロック連結部である。
1つの態様では、吊元、スペーサの高さ方向の上端、下端に夫々連結部(1つの態様ではインターロック連結部)が形成されている。
1つの態様では、前記スペーサは、前記吊元と同一断面形状を備えている。
1つの態様では、スペーサに対して、さらにスペーサを連結することで周方向に連続状に設けてもよい。
【0009】
1つの態様では、前記複数の吊元は、それぞれ螺子によって前記巻取シャフトの周面に固定されており、
前記巻取シャフトの周面の所定位置には、長さ方向に間隔を存して複数の雌螺子が設けてあり、
前記スペーサは、螺子によって前記巻取シャフトに固定されている。
1つの態様では、巻取シャフトの周面には、各吊元を固定するための複数の雌螺子が長さ方向に延びる第1の直線上に位置して形成されており、各スペーサを固定するための複数の雌螺子が長さ方向に延びる第2の直線上に位置して形成されている。
1つの態様では、スペーサ用の雌螺子は、吊元用の雌螺子に対して周方向に離間して位置している。
【0010】
本発明は、スラットの幅方向両端部にフック部を設けたシャッター装置において、
前記シャッターカーテンの上端のスラットの上端は、当該上端のスラットの幅方向に間隔を存して設けた複数の吊元の高さ方向の下端に連結されることで当該吊元を介して前記巻取シャフトに連結されており、
前記複数の吊元から選択された1つあるいは複数の吊元の高さ方向の上端には1つあるいは複数のスペーサが連結されており、前記1つあるいは複数のスペーサは、巻取シャフトの周方向に前記吊元を挟んで前記上端のスラットと反対側に位置して、前記巻取シャフトに固定されている、
シャッター装置、としても規定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、巻取シャフトの長さ方向の所定位置(座板が変形した下方に撓んでいる部位に対応する位置)にスペーサを設けることで、スラットの巻径ギャップを補正して、開口部全開状態における座板の変形(撓み)を抑制する。
本発明に係る巻径ギャップの補正、すなわち、開口部全開状態における座板の変形抑制は、シャッター装置設置後に、現場において開口部全開状態における座板の変形(撓み)の態様を見ながら調整して行うことができ、融通性に優れる。
本発明に係るスペーサは吊元に連結され、かつ、巻取シャフトに固定されるので、スペーサが脱落するリスクは極めて低い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】全閉状態にあるシャッター装置の正面図である。
【
図2】シャッターカーテンを巻き上げた状態を示すシャッター装置の正面図であり、座板の幅方向中央部位が下方に撓んだ状態(従来技術)を示している。
【
図3】
図2のA-A線縦断面図であり、シャッターカーテンの幅方向端部の巻取状態(従来技術、本願発明共通)を示している。
【
図4】
図2のB-B線縦断面図であり、シャッターカーテンの幅方向中央部位の巻取状態(従来技術)を示している。
【
図5】本願発明の実施形態に係るシャッターカーテンの幅方向中央部位の巻取状態を示す縦断面図であり、
図4に対応している。
【
図6】シャッターカーテンを巻き上げた状態を示すシャッター装置の正面図であり、座板のいわゆる片下がり状態(従来技術)を示している。
【
図7】本願発明の実施形態に係るスペーサを説明する図である。
【
図8】本願発明の実施形態に係るスペーサの取付を説明する図である。
【
図9】本願発明の実施形態に係るスペーサの取付態様を示す図である。
【
図10】本願発明の実施形態に係る巻取シャフトを示す図である。
【
図11】上図はスペーサ、下図は吊元を示す図である。
【
図12】シャッターカーテンのスラットの構成及び巻取時の重なり態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、全閉状態にあるシャッター装置の正面図であり、シャッター装置は、開口部を開閉するシャッターカーテン1と、開口部上方に設けられ、シャッターカーテン1の上端が取り付けられた巻取シャフト2(
図3~
図5等参照)と、開口部の幅方向両端に立設され、シャッターカーテンの幅方向両端部を受け入れて上下方向に案内するガイドレール3と、を備えている。開閉機Mによって巻取シャフト2を第1の方向に回転させることで、シャッターカーテン1が巻取シャフト2に巻き取られて開口部を開放し、開閉機Mによって巻取シャフト2を第2の方向に回転させることで、シャッターカーテン1が巻取シャフト2から繰り出されて開口部を閉鎖する。シャッターカーテン1は巻取シャフト2に巻き取られた状態でシャッターケース4内に収納される。
【0014】
スラット5は、開口幅に亘って延びる長さ寸法と所定の高さ寸法を備えた鋼製部材であり、シャッターカーテン1は、複数枚の長尺状のスラット5を高さ方向に連結することで形成されており、下端のスラット5の下端には座板6が連結されており(
図1、
図2、
図6)、上端のスラット5Aは巻取シャフト2に螺子9で固定された吊元7に連結されている(
図3~
図5、
図7、
図8)。本実施形態では、後に詳述するように、吊元7にはスペーサ8が取り付けられており、スペーサ8はさらに螺子(本実施形態ではボルト)9で巻取シャフト2に固定されている(
図5、
図7~
図9)。
【0015】
スラット5は、開口部全幅に亘って延びる板状(図示の態様では波板であるが、これには限定されない)の本体部50と、本体部50の上側でスラット幅方向に延びる湾曲状の上側連結部51と、下側でスラット幅方向に延びる湾曲状の下側連結部52を備え、上下に隣接する2枚のスラット5の上側のスラット5の下側連結部52に、下側のスラット5の上側連結部51を連結(いわゆるインターロック連結)させることで、シャッターカーテン1を形成しており、上下に隣接するスラット5は互いにある程度の回転が許容された状態で連結されている(
図7参照)。スラット5は、一方のスラット5の上側連結部51(下側連結部52)に他方のスラット下側連結部52(上側連結部51)をスラット5の側方からスライドさせて差し入れることで連結される。
【0016】
スラット5の幅方向両端部には鋼製の耐風フック10´と端金物11が高さ方向に交互に設けてある(
図12(A)参照)。耐風フック10´、端金物11は、スラット5の本体部50が形成する面に対して立ち上がり状に湾曲するフック部10を備えている。端金物11はいわばフック部10とスラット抜け止め手段が一体化された耐風フックである。耐風フック10´、端金物11のフック部10は、シャッターカーテン1の幅方向両端部がガイドレール3内に受け入れられた状態において、シャッターカーテン1に大きな面圧が作用した場合に、ガイドレール3内の被係止部に係止して面圧に対抗するようになっている。
【0017】
図11(B)に示すように、上端のスラット5Aに連結された吊元7は、スラット5Aに対して短尺で所定の高さを備えた板状の本体部70と、本体部70の上側で吊元7の幅方向に延びる湾曲状の上側連結部71と、下側で吊元7の幅方向に延びる湾曲状の下側連結部72を備えた鋼製部材である。なお、「上側」、「下側」は、吊元7を垂直姿勢とした時の高さ方向の上側、下側を意味し、巻取シャフト2の回転に伴う吊元7の姿勢に応じて、上側連結部71と下側連結部72が水平位置となったり、上側連結部71が下側連結部72よりも下側に位置したりすることに留意されたい。
【0018】
吊元7の本体部70には螺子を挿通させる孔700が形成されており、巻取シャフト2の周面20には、長さ方向に亘って所定間隔を存して雌螺子(本実施形態ではナット)21が設けてある。各吊元7は、孔700と雌螺子21を一致させた上で、螺子9によって巻取シャフト2の周面20に固定されている。次段落に述べるように、通常、吊元7は現場において巻取シャフト2に固定される。
【0019】
工場では、複数枚のスラット5を連結することでシャッターカーテン1の部分が形成され、スラット5はシャッターカーテン1の部分として現場に搬入される。シャッターカーテン1の上側部分は、上端のスラット5Aのスラットを含む複数枚のスラット5から形成されている。現場において、吊元7の下側連結部72を、シャッターカーテン1の上側部分の上端に連結させ(すなわち、上端のスラット5Aの上側連結部51に吊元7の下側連結部72を側方からスライドさせて差し入れることで連結させ)、吊元7からシャッターカーテン1の上側部分を吊った状態で、吊元7の本体部70を螺子9で巻取シャフト2の周面20に固定する。吊元7が巻取シャフト2の周面20に固定された状態において、本体部70の上側部位は周面20に当接しており、上側連結部71、下側連結部72は周面20から離間して浮いている(
図7参照)。
【0020】
このように構成されたシャッターカーテン1の巻取状態について説明する。シャッターカーテン1は巻取シャフト2の周面20に対して多層に巻き取られることになるが、スラット5の略全幅に亘って、隣接する巻を形成するスラット5は互いに接触した状態となる。
図12(C)では、スラット5の本体部50同士が近接離間し、上側連結部51同士、下側連結部52同士が接触している態様を示しているが、上側連結部51ないし下側連結部52が本体部50と接触する態様もある(
図4、
図5参照)。
【0021】
ここで、シャッターカーテン1の幅方向両端にはフック部10が設けてあるため、隣接する巻を形成するスラット5は、スラット5の幅方向両端部において、
図12(B)に示すように、立ち上がり状のフック部10同士が接触した状態となる場合があり、この時、巻取シャフト2の径方向に隣接するスラット5は、フック部10同士が接触し、スラット5の本体部50、上側連結部51、下側連結部52が離間した状態となる場合がある。シャッターカーテン1の幅方向両端部において、各巻層を形成するスラット5の間隔が大きくなることにより、巻取シャフト2の長さ方向に亘るシャッターカーテン1の巻径において、シャッターカーテン1の幅方向両端部の巻径が、幅方向における他の箇所の巻径に比べて大きくなる場合がある。
【0022】
なお、シャッターカーテン1の巻取状態において、同じ巻層であっても、周方向の位置によって径寸法(最外層の巻きを形成するスラット5と巻取シャフト2の中心との距離)が異なり得る。巻取時に、既に巻き取られたスラット5上に乗った時のスラット5の姿勢によって巻取中心からスラット5までの距離が異なり得る。例えば、スラット同士5が接触した場合でも、一方のスラット5に対して他方のスラット5が傾斜姿勢で接触する場合には、巻取シャフト2の中心から当該傾斜姿勢のスラット5までの距離が局所的に大きくなる。本明細書において、シャッターカーテン1の巻径は、各層の平均巻径(例えば、巻取中心と最外層の各スラットとの巻径の平均値)を意味するものとする。
【0023】
図3は、巻取状態にあるシャッターカーテン1の幅方向端部の縦断面図であり、
図4は、巻取状態にあるシャッターカーテン1の幅方向中央部位の縦断面図(従来技術)である。
図3、
図4において、スラット5Bは、シャッターカーテン1の下端近傍のスラットであり、下方には数枚のスラット(
図3、
図4では図示せず)及び座板(
図3、
図4では図示せず)が連結されている。
図3のスラット5Bと
図4のスラット5Bは同一のスラットである。スラット5の幅方向の端部では
図3に示すように全体として巻が膨らんで巻径が大きくなることから、スラット5Bの下端が第1水平レベルL1にあるが、スラット5の幅方向の中央部位では
図4に示すようにスラット5Bの下端が第1水平レベルL1よりも低い第2水平レベルL2にある。
【0024】
結果として、
図2に示すように、シャッターカーテン1を巻き上げた場合において、座板6が、幅方向の中央部位が下方に撓むように変形することになる。
図2では、説明の便宜上、開口部全開状態よりも少し前の巻き上げ状態を示しているが、
図2の状態からさらにシャッターカーテン1を座板6の下端がまぐさ部の下面の高さレベルLに略一致するように巻き上げると、シャッターカーテン1の幅方向の中央部位の撓み部がまぐさ部の下面の高さレベルL(いわゆるまぐさライン)から下方に膨出することになり、意匠上好ましくないという不具合がある。
【0025】
本実施形態では、巻取シャフト2の幅方向端部と中央部位との間の巻径ギャップを補正するように選択された所定の吊元7の高さ方向の上端にスペーサ8を連結し、このスペーサ8をさらに巻取シャフト2に固定する。
図11(A)に示すように、本実施形態に係るスペーサ8は、吊元7と同じ断面形状・寸法を有しており、吊元7に対して短尺で所定の高さを備えた板状の本体部80と、本体部80の上側で本体部80の幅方向に延びる湾曲状の上側連結部81と、下側で本体部80の幅方向に延びる湾曲状の下側連結部82を備えた鋼製部材である。なお、「上側」、「下側」は、スペーサ8を垂直姿勢とした時の高さ方向の上側、下側を意味し、巻取シャフト2の回転に伴うスペーサ8の姿勢に応じて、上側連結部81と下側連結部82が水平位置となったり、上側連結部81が下側連結部82よりも下側に位置したりすることに留意されたい。また、スペーサ8の断面形状・寸法(すなわち、高さ寸法や厚さ寸法)は必ずしも吊元7と同じである必要はなく、例えば、吊元7と異なる高さ寸法(巻取シャフト2の周方向に沿った長さ)、あるいは、厚さ寸法(巻取シャフト2の周面からの高さ)を備えていてもよい。また、スペーサ8の幅寸法は例えば吊元7の幅寸法と略同じであってもよいが、本実施形態のようにスペーサ8を吊元7の側方からスライドさせて連結する態様においては、スペーサ8の幅寸法は、少なくとも、隣接する吊元7間の間隔よりは小さい幅寸法である。
【0026】
各スペーサ8は、巻取シャフト2の周方向に吊元7を挟んで上端のスラット5Aと反対側に位置して、巻取シャフト2の周面20に螺子9で固定されている(
図5、
図7、
図8)。スペーサ8は、下側連結部82を吊元7の上側連結部71に側方からスライドさせて差し入れることで吊元7と連結される。スペーサ8の本体部80には螺子9を挿通させる孔800が形成されており、巻取シャフト2の周面20には、長さ方向に亘って所定間隔を存して雌螺子22が設けてある。各スペーサ8は、孔800と雌螺子22を一致させた上で、螺子9によって巻取シャフト2の周面20に固定されている。スペーサ8は現場において、選択された所定の吊元7に連結され、巻取シャフト2に固定される。
【0027】
図10に示すように、巻取シャフト2の周面20には、各吊元7を固定するための複数の雌螺子(本実施形態ではナット)21が長さ方向に延びる第1の仮想直線上に位置して形成されており、各スペーサ8を固定するための複数の雌螺子(本実施形態ではナット)22が長さ方向に延びる第2の仮想直線上に位置して形成されており、第1の仮想直線と第2の仮想直線は所定間隔を存して平行している。雌螺子22は、選択された雌螺子21(スペーサ8が取り付けられる可能性がある吊元7を固定する螺子9のための雌螺子21)に対して周方向に所定距離だけ離間した位置に設けてある。雌螺子(ナット)21、22は予め工場で取り付けられる。
【0028】
図2に示すように、シャッターカーテン1が巻き上げられた状態において、座板6の幅方向中央部位が下方に撓んだ状態においては、下方に撓んでいる部位に対応する選択された所定の複数の吊元7の高さ方向の上端にそれぞれスペーサ8を連結することで巻径ギャップを補正する。
図9に示す態様では、中央部位の隣接する2つの吊元7、これらの吊元7の2つ隣りの左右の吊元7の合計4つの吊元7にスペーサ8が連結されることを示しているが、これに限定されるものではない。
【0029】
図5は、本実施形態に係るスペーサ8を備えたシャッター装置において、巻取状態にあるシャッターカーテン1の幅方向中央部位の縦断面図であり、
図4(従来技術)に対応する図である。
図5において、スラット5Bは、シャッターカーテン1の下端近傍のスラットであり、
図3、
図4のスラット5Bと同一のスラットである。スラット5の幅方向の端部にはフック部10が設けてあるため、スラット5の幅方向の端部では、
図3に示すように巻径が大きくなることから、スラット5Bの下端が第1水平レベルL1にある。本実施形態では、座板6の中央部位の撓んだ部位に対応するように吊元7及び巻取シャフト2にスペーサ8を設けて巻取シャフト2の中央部位のスラット5の巻径を補正したことで(スペーサ8を追加した部位は、追加していない部位と比較して、スラット5が少し早く2周目、3周目と巻かれていくことで全体として見た時に巻径が大きくなる)、
図5に示すようにスラット5Bの下端が第1水平レベルL1と略同じレベルとなる。結果として、座板6の変形が抑制され、シャッターカーテン1を全開位置まで巻き上げた場合において、座板6の下面が全幅に亘ってまぐさラインと略一致するようになり、開口部全開時における座板6がスッキリとした納まりとなる。
【0030】
図6は、シャッターカーテン1を巻き上げた状態を示すシャッター装置の正面図であり、座板6が撓みを伴う片下がり状態(従来技術)となっている。このような場合には、
図9において、例えば、中央部位の隣接する2つの吊元7、これらの吊元7の2つ隣りの左右の吊元7の合計4つの吊元7に加えて右端から2番目の吊元7にスペーサ8(右端から2番目の吊元7に連結したスペーサ8は点線で示してある)を連結することで、片下がり部位の巻径を補正することができる。
図6の態様では、座板6は右片下がりに変形しているが、座板6が左片下がりに変形している場合には、
図9において、例えば、中央部位の隣接する2つの吊元7、これらの吊元7の2つ隣りの左右の吊元7の合計4つの吊元7に加えて左端から2番目の吊元7にスペーサ8(左端から2番目の吊元7に連結したスペーサ8は点線で示してある)を連結することで、片下がり部位の巻径を補正することができる。
【0031】
本実施形態に係るスペーサ8を用いた座板6の変形の抑制ないし巻径ギャップの補正の手順について説明する。シャッター装置は通常の手順で現場の開口部に取り付けられる。シャッター装置を設置した後に、開閉機Mを駆動してシャッターカーテン1を巻き上げて全開状態とした時に、座板6が変形して、座板6の撓みや片下がりが発生する場合には、座板6の変形態様(中央部位が下方に撓む、ないし、片下がりを伴って下方に撓む)に応じてスペーサ8を用いて巻径ギャップの調整を行う。
【0032】
先ず、座板6が変形して下がっている箇所に対応するシャッターケース4の正面点検口(図示せず)を外し、シャッターカーテン1を全閉姿勢として吊り下げた状態として、座板6が変形して下がっている箇所に対応する吊元7にアクセス可能な状態とする。なお、シャッターカーテン1を全閉姿勢とするタイミングは問わない。
【0033】
次いで、選択された吊元7の上側連結部71に、スペーサ8の下側連結部82を側方からスライドさせるようにして差し込むことで吊元7にスペーサ8を連結し、スペーサ8の本体部80の孔800と巻取シャフト2の周面20に設けられた雌螺子22を一致させて、螺子9でスペーサ8を巻取シャフト2に固定する。この時、スペーサ8は吊元7に連結(仮固定)された状態で、螺子止めすることができるので、施工性が良好である。
【0034】
所望の吊元7を選択してスペーサ8を取り付けた後にシャッターカーテン1を巻き上げて全開状態として、座板の変形(撓み)の度合いをチェックする。依然として無視できない座板の変形(撓み)が観察される場合には、さらに所望の吊元7にスペーサ8を追加したり、あるいは、スペーサ8を取り付ける吊元7を変更するなどして、巻径ギャップの再調整を行うことができる。
【0035】
本実施形態では、工場において、巻取シャフト2の周面20の所定箇所に雌螺子22を形成しておき、現場において、シャッター装置を設置した後に、開口部全開状態における座板6の変形(撓み)を確認しながら、必要な箇所にスペーサ8を設ける(所望の吊元7を選択してスペーサ8を連結し、このスペーサ8を巻取シャフト2に固定する)ことで巻径ギャップの調整を行えばよいので、座板の変形(撓み)の抑制作業が容易である。また、スペーサ8は吊元7に連結されると共に、さらに巻取シャフト2に螺子9で固定されるので、スペーサ8が脱落するリスクは極めて低い。
【符号の説明】
【0036】
1 シャッターカーテン
2 巻取シャフト
20 周面
21 雌螺子
22 雌螺子
5 スラット
5A 上端のスラット
6 座板
7 吊元
71 上側連結部
8 スペーサ
82 下側連結部
9 螺子