IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】自己回復又は自己修復膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221121BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20221121BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221121BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/40
A61K8/41
A61K8/55
A61K8/92
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018161327
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020033298
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼崎 友美
(72)【発明者】
【氏名】小池 徹
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02022482(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02022480(EP,A1)
【文献】特開昭63-035512(JP,A)
【文献】Peeling Mask (ID: 1868355),Mintel GNPD [online],2012年11月,[検索日;2022年5月25日], https://www.gnpd.com
【文献】2 Purifying Toner (ID: 1007859),Mintel GNPD [online],2008年11月,[検索日;2022年5月25日], https://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の、カチオン性セルロースポリマーから選択されるカチオン性多糖と、
(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)
(e)少なくとも1種の油又は少なくとも1種の有機UV遮蔽剤
を含む、組成物であって、
前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩が、フィチン酸又はその塩から選択され、
前記組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%であり、
前記組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%であり、
前記組成物中の前記(e)油又は有機UV遮蔽剤の量が、前記組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、10質量%未満であり、
面活性剤を、前記組成物の総質量に対して1質量%以下量で含む、エマルションの形態である、組成物。
【請求項2】
前記(a)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~15質量%ある、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して0.05質量%から10質量%ある、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(c)の量が、前記組成物の総質量に対して50質量%から99質量%ある、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(d)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記(e)又は有機UV遮蔽剤の量が、前記組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、5質量%未満ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
化粧用組成物ある、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ラチン基体のための美容方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン基体に塗布する工程と、
前記組成物を乾燥させて、前記ケラチン基体上に化粧膜を形成する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的イオン架橋(DIC)ゲルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自己回復ヒドロゲルについて多くの科学報告書が出されている(例えば、Adv. Mater. 2016、28、9060~9093、Daniele Lynne等、「Self-Healing Hydrogels」)。特に、高分子電解質(ポリアリルアミン)及び架橋剤(トリポリリン酸塩)で構成される自己回復ゲルが、「Self-assembly of stiff, adhesive and self-healing gels from common polyelectrolytes」、(Langmuir、2014、30、7771)で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】仏国特許第1492597号
【文献】米国特許第4,131,576号
【文献】EP-A-0750899
【文献】EP-A-1069172
【文献】EP-A-0173109
【文献】USP 5240975
【文献】EP-669,323
【文献】米国特許第2,463,264号
【文献】米国特許第5,237,071号
【文献】米国特許第5,166,355号
【文献】GB-2,303,549
【文献】DE-197,26,184
【文献】EP-893,119
【文献】WO 93/04665
【文献】DE-19855649
【非特許文献】
【0004】
【文献】Adv. Mater. 2016、28、9060~9093、Daniele Lynne等、「Self-Healing Hydrogels」
【文献】「Self-assembly of stiff, adhesive and self-healing gels from common polyelectrolytes」、(Langmuir、2014、30、7771)
【文献】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000、第33巻、第10号-3694~-3704
【文献】Cosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化粧料が自己回復性又は自己修復性を有する場合、化粧料によって調製される化粧膜が、例えば、引っかき等の理由で化粧膜が壊れても自動的に修復すると考えられ、したがって、化粧膜によってもたらされる美容効果の長時間にわたる持続性が劇的に改善されることが予測される。
【0006】
したがって、本発明の目的は、化粧用途に有用であると考えられる自己回復又は自己修復膜を生成することができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体と
を含む組成物であって、
任意選択により界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で含む、組成物によって達成することができる。
【0008】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択することができる。
【0009】
(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有してもよい。
【0010】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0011】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってよい。
【0012】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸及びそれらの塩から選択することができる。
【0013】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0014】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、アコニット酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトール五リン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0015】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってよい。
【0016】
本発明による組成物中の(c)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して50質量%から99質量%、好ましくは60質量%から98質量%、より好ましくは70質量%から97質量%であってよい。
【0017】
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含んでもよい。
【0018】
本発明による組成物は、少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を更に含んでもよい。本発明による組成物中の油及び/又は有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満であってよい。この場合、本発明による組成物はエマルションの形態とすることができる。
【0019】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物であってもよい。
【0020】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧膜を形成する工程とを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
鋭意検討の結果、本発明者らは、化粧用途に有用であると考えられる自己回復又は自己修復膜を生成することができる組成物を提供することが可能であることを発見した。したがって、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体と
を含み、
任意選択により界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で含む。
【0022】
本発明による組成物は、自己回復又は自己修復膜を生成することができる。言い換えれば、本発明による組成物によって生成された膜は、例えば、引っかき等の理由で膜が壊れても自動的に修復でき、したがって、膜によってもたらされる美容効果の長時間にわたる持続性を改善することができる。
【0023】
自己回復又は自己修復膜は、ゲル、好ましくはヒドロゲルで構成されていてもよい。ゲルは、動的イオン架橋されている。本発明による組成物によって調製される動的イオン架橋ゲルは、DICゲルと略される。
【0024】
DICゲルの動的イオン架橋は、破壊可能であるが再生可能であるため、永続的な共有結合とは異なる。動的イオン架橋は、例えば、切断等によって容易に壊れうるが、例えば、互いに接触させることによって容易に再生させることができ、それによって、自己回復又は自己修復の特性を示すことができる。例えば、ゲルを2片に切り分けた場合、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン相互作用は破壊する。しかし、2片が互いに接触すると、カチオン性ポリマーと架橋剤との間にイオン結合を再生することができ、互いに接着することができる。したがって、例えば亀裂がゲルに入ったとしても、それは消失させることができる。
【0025】
一実施形態において、本発明による組成物によって生成された自己回復又は自己修復ゲルは、充填剤として使用することができる。例えば、ゲルは、皮膚、特に顔の皺を充填することができる。皺を充填したゲルが、例えば、笑うことによる皺の動きによって粉々になったとしても、それは、互いに接着させることによって自動的に修復されうる。そのため、長時間の間、皺を目立たなくすることができる。
【0026】
本発明による組成物は、長期間安定であり、組成物を基体、好ましくは皮膚等のケラチン基体に塗布し、組成物を乾燥させることによって、自己回復又は自己修復の特性を有するゲルの膜を容易に調製するのに使用することができる。
【0027】
本発明による組成物によって調製される膜は、多様な美容機能を有することができる。
【0028】
例えば、本発明による組成物によって調製される膜は、それ自体、悪臭を吸収若しくは吸着する、皮膚等のケラチン基体の外観を変化させる、ケラチン基体の触感を変化させる、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン基体を保護する等の美容効果を有しうる。
【0029】
本発明による組成物によって調製される膜が、少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、膜は、その美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、及び/又は皮膚を美白することができる。例えば、本発明による組成物によって調製される膜がUV遮蔽剤を含む場合、膜は、長持ちできるUV遮蔽効果を示すことができる。
【0030】
本発明による組成物が、少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む場合、ゲルの弾性は、アニオン性ポリマーによりアニオン電荷を追加することによって合わせることができる。アニオン性ポリマーの投入は、ゲルをより強靭にすることができる。
【0031】
以下、本発明による組成物、方法等をより詳細に説明する。
【0032】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2つ以上の異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(a)カチオン性多糖、又は異なるタイプの(a)カチオン性多糖の組合せを使用することができる。
【0033】
(a)カチオン性多糖は、正の電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/gから20meq/g、好ましくは0.05から15meq/g、より好ましくは0.1から10meq/gであってよい。
【0034】
(a)カチオン性多糖の分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更により好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0035】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0036】
(a)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。本明細書における(第一級)「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0037】
(a)カチオン性多糖は、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、2種類超のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0038】
(a)カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0039】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい。カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0040】
(1)カチオン性セルロースポリマー、例えば「JR」(JR400、JR125、JR30M)又は「LR」(LR400、LR30M)の名称でDow Chemical社により販売されているポリマー等の、仏国特許第1492597号に記載されている、1つ以上の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されたエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0041】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば少なくとも1種の水溶性第四級アンモニウムモノマーでグラフト化された、例えば米国特許第4,131,576号に記載のセルロースコポリマー及びセルロース誘導体、例えばヒドロキシアルキルセルロース、例として、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム及びジメチルジアリルアンモニウムから選択される少なくとも1つでグラフト化されたヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロース。これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、「Celquat(登録商標)L200」及び「Celquat(登録商標)H100」の名称でAkzo Novel社により販売されている製品が挙げられる。
【0042】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基(例えば、少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリール基)を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基(例えば、少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリール基、又はそれらの混合物)で改質されている四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましいことがある。第四級アンモニウム基によって保持されているアルキル基は、好ましくは8~30個の炭素原子、特定すると10~30個の炭素原子を含有しうる。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリル基を意味する。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む第四級アンモニウム基を少なくとも1つ含んでもよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例には、Dow Chemical社により販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M及びSoftcat SK-H、並びにCroda社により販売されている製品Crodacel QM、Crodacel QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が挙げられる。
【0043】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0044】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であってよい。
【0045】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0046】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってよい。
【0047】
(架橋剤)
本発明による組成物は、(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩を含む。2つ以上の異なるタイプの(b)架橋剤又はそれらの塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(b)架橋剤若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)架橋剤若しくはそれらの塩の組合せが使用されてもよい。
【0048】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤の酸基のうちの少なくとも1つは、塩の形態であってもよい。(b)架橋剤の全ての酸基は、塩の形態であってもよい。
【0049】
本明細書における「塩」という用語は、(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤に好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤と塩基とを反応させることにより得ることができる。塩としては、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0050】
(b)架橋剤は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、より好ましくは3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸から選択することが好ましい。
【0051】
本明細書における「非ポリマー」という用語は、(b)架橋剤が、2つ以上のモノマーを重合することによって得られないことを意味する。したがって、非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸は、ポリカルボン酸等の2つ以上のモノマーを重合することによって得られる酸に相当しない。
【0052】
3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であることが好ましい。
【0053】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、親水性又は水溶性であってもよい。
【0054】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0055】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0056】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、アコニット酸、フィチン酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトール五リン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0057】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、フィチン酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい場合がある。
【0058】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0059】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0060】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってよい。
【0061】
(生理学的に許容される揮発性媒体)
本発明による組成物は、少なくとも1種の(c)生理学的に許容される揮発性媒体を含む。
【0062】
「生理学的に許容される」揮発性媒体という用語は、本発明による組成物をケラチン物質に塗布するのに特に好適である揮発性媒体を示すことが意図される。
【0063】
「揮発性」という用語は、(c)生理学的に許容される媒体が、標準大気圧、例えば1atm及び室温、例えば25℃で蒸発することができることを意味する。
【0064】
生理学的に許容される媒体は、一般的に、本発明による組成物が塗布される支持体の性質、更には本発明による組成物が包装される形態に適合される。
【0065】
(c)生理学的に許容される揮発性媒体は、少なくとも1種の親水性有機溶媒、水又はそれらの混合物を含んでもよい。(c)生理学的に許容される揮発性媒体は、水を含むことが好ましい。
【0066】
親水性有機溶媒として、例えば、エタノール又はイソプロパノール等、2~6個の炭素原子を含むモノアルコール;とりわけ、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコール等、2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、優先的には2~8個の炭素原子を含むポリオール;モノ、ジ又はトリプロピレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル、モノ、ジ又はトリエチレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル等、(とりわけ3~16個の炭素原子を含む)グリコールエーテル、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
本発明による組成物中の(c)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上でもよい。
【0068】
本発明による組成物中の(c)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下でもよい。
【0069】
本発明による組成物中の(c)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して50質量%から99質量%、好ましくは60質量%から98質量%、より好ましくは70質量%から97質量%であってよい。
【0070】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含んでもよい。2つ以上の異なるタイプの(d)アニオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(d)アニオン性ポリマー、又は異なるタイプの(d)アニオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0071】
アニオン性ポリマーは、負の電荷密度を有する。アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/gから20meq/g、好ましくは1から15meq/g、より好ましくは4から10meq/gであってよく、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1から3.0、好ましくは0.2から2.7、より好ましくは0.3から2.5であってよい。
【0072】
アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは100,000以上、更により好ましくは1,000,000以上であることが好ましい場合がある。
【0073】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基、及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してもよい。
【0074】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、2種類超のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0075】
アニオン性ポリマーは、天然及び合成のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0076】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい。
【0077】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよいアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa")から選択されるモノマー(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/或いはα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンと反応させることにより得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)との共重合によって得ることができる。
【0078】
したがって、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路によって、すなわち、
- モノマー(a')及び(c)、若しくは(a')、(b)及び(c)、若しくは(a")及び(c)、若しくは(a")、(b)及び(c)の共重合、又は
- モノマー(a')、若しくはモノマー(a')及び(b)、若しくは(a")及び(b)から形成されたコポリマーの、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンによる修飾(特に、エステル化若しくはアミド化)
のいずれかによって得ることができる。
【0079】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000、第33巻、第10号-3694~-3704」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されたものを挙げることができる。
【0080】
モノマー(a')の構成要素となるα,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、特にアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0081】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含むことができる。好ましいモノマーは、単独重合したときに水不溶性ポリマーを与えるものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸アルキル(C1~C4)、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特定して好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用することができる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性を持つ唯一の基であるものである。しかし、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを任意選択で使用することができる。
【0082】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンと反応させることによって得られる。
【0083】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンは周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般的に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般的に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールから構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分の構成要素となる。
【0084】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6から30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基及び8から30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1から4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1から150の範囲の平均数であり、mは、およそ0から50の範囲の平均数であり、ただし、nは、少なくともmと同等である)
を有する化合物である。
【0085】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12から26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1から25である。
【0086】
好ましい第一級及び第二級脂肪族アミンは、6から30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0087】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、非常に多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む任意の化合物を使用することができる。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0088】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0089】
本発明の特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物とモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0090】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0091】
アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー(例えば、セルロースガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、無水マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0092】
無水マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとを含んでもよい。
【0093】
したがって、「無水マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、無水マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0094】
1つ又は複数の無水マレイン酸単位の共重合によって得られるコポリマーを使用することが好ましい場合があり、その無水マレイン酸単位は、加水分解形態、より好ましくはアルカリ塩の形態、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩の形態である。
【0095】
本発明の有利な態様では、無水マレイン酸コポリマーは、無水マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってよい。
【0096】
無水マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってよい。
【0097】
無水マレイン酸コポリマーは、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/無水マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0098】
好ましくは、50/50比のスチレンと無水マレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0099】
例えば、Cray Valley社によって参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマー又はCray Valley社によって参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0100】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0101】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってよい。
【0102】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から20質量%、好ましくは0.01質量%から15質量%、より好ましくは0.1質量%から15質量%であってよい。
【0103】
(美容有効成分)
本発明による組成物は、少なくとも1種の美容有効成分を含んでもよい。美容有効成分には制限がない。2種以上の美容有効成分を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの美容有効成分、又は異なるタイプの美容有効成分の組合せを使用することができる。
【0104】
使用される美容有効成分のうち、UV遮蔽剤、抗酸化剤、クレンジング剤、フリーラジカル捕捉剤、保湿剤、美白剤、脂質調節剤(liporegulator)、抗ニキビ剤、抗フケ剤、抗老化剤、柔軟剤、抗しわ剤、角質溶解剤、抗炎症剤、フレッシュナー、ヒーリング剤、血管保護剤、抗菌剤、抗真菌剤、発汗抑制剤、デオドラント、皮膚コンディショナー、麻酔剤、免疫モジュレーター、栄養剤、及び皮脂吸収剤又は水分吸収剤を挙げることができる。
【0105】
(b)架橋剤は、美容活性剤として機能することができることが好ましい。(b)架橋剤が美容活性剤として機能しうる場合、本発明による組成物は、美容活性剤を含む必要がない場合がある。
【0106】
本発明による組成物は、美容有効成分を、組成物の総質量に対して0.01質量%から25質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%、更により好ましくは2質量%から10質量%の量で含んでもよい。
【0107】
UV遮蔽剤
本発明の好ましい実施形態によれば、美容有効成分は、UV遮蔽剤から選択することができる。
【0108】
UV遮蔽剤のタイプは限定されない。2つ以上のタイプのUV遮蔽剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのUV遮蔽剤、又は異なるタイプのUV遮蔽剤の組合せを使用することができる。UV遮蔽剤は、無機UV遮蔽剤、有機UV遮蔽剤、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0109】
無機UV遮蔽剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の無機UV遮蔽剤を含んでもよい。2種以上の無機UV遮蔽剤を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0110】
本発明に使用される無機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。無機UV遮蔽剤は、親水性及び/又は親油性であってもよい。無機UV遮蔽剤は、好ましくは、化粧品において一般に使用される水及びエタノール等の溶媒に不溶性である。
【0111】
無機UV遮蔽剤は、その平均(一次)粒径が1nmから50nm、好ましくは5nmから40nm、より好ましくは10nmから30nmの範囲であるような微粒子の形態であることが好ましい。本明細書における平均(一次)粒子サイズ又は平均(一次)粒径は、算術平均直径である。
【0112】
無機UV遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆されていてもいなくてもよい金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0113】
好ましくは、無機UV遮蔽剤は、金属酸化物で形成された顔料(平均一次粒径:一般的に5nmから50nm、好ましくは10nmから50nm)、例えば、酸化チタン(非晶質又はルチル及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された顔料等から選択することができ、これらは全て、それ自体が周知のUV光保護剤である。好ましくは、無機UV遮蔽剤は、酸化チタン、酸化亜鉛から選択することができ、より好ましくは酸化チタンである。
【0114】
無機UV遮蔽剤は、被覆されていてもいなくてもよい。無機UV遮蔽剤は、少なくとも1種のコーティングを有してもよい。コーティングは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコーン、シラン、脂肪酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、鉄塩又はアルミニウム塩等)、脂肪アルコール、レシチン、アミノ酸、多糖、タンパク質、アルカノールアミン、ビーズワックス等のワックス、(メタ)アクリルポリマー、有機UV遮蔽剤、及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0115】
コーティングが少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含むことが好ましい。コーティング中の有機UV遮蔽剤として、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)等のジベンゾイルメタン誘導体及びBASF社から「TINOSORB M」として市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェノール](メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)が好ましいことがある。
【0116】
公知のように、コーティング中のシリコーンは、様々な分子量の直鎖状又は環状及び分枝状又は架橋した構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであってよく、これは好適な官能性シランの重合及び/又は重縮合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに接合(シロキサン結合)され、任意選択で置換された炭化水素基が炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接接合されている、主要繰り返し単位から本質的に構成される。
【0117】
用語「シリコーン」は、その調製に必要なシラン、特にアルキルシランも包含する。
【0118】
コーティングのために使用されるシリコーンは、好ましくは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択することができる。更により好ましくは、シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される。
【0119】
当然ながら、金属酸化物で作製された無機UV遮蔽剤は、シリコーンでのその処理の前に、他の表面処理剤、具体的には、酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はこれらの混合物で処理されてもよい。
【0120】
被覆無機UV遮蔽剤は、無機UV遮蔽剤を、上記の化合物のいずれか、並びにポリエチレン、金属アルコキシド(チタン又はアルミニウムアルコキシド)、金属酸化物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及び例えばCosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁に示されたものによる化学的、電子的、機械化学的、及び/又は機械的性質の1つ又は複数の表面処理に供することによって調製されていてもよい。
【0121】
被覆無機UV遮蔽剤は、以下:
シリカで被覆された酸化チタン、例えばIkeda社製の製品「Sunveil」、
シリカ及び酸化鉄で被覆された酸化チタン、例えばIkeda社製の製品「Sunveil F」、
シリカ及びアルミナで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 500 SA」、Tioxide社製の製品「Tioveil」、及びRhodia社製の製品「Mirasun TiW 60」、
アルミナで被覆された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(B)」及び「Tipaque TTO-55(A)」、並びにKemira社製の「UVT 14/4」、
アルミナ及びステアリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 T、MT 100 TX、MT 100 Z若しくはMT-01」、Uniqema社製の製品「Solaveil CT-10 W」及び「Solaveil CT 100」、並びにMerck社製の製品「Eusolex T-AVO」、
アルミナ及びラウリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 S」、
酸化鉄及びステアリン酸鉄で被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 F」、
酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛で被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「BR351」、
シリカ及びアルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 600 SAS」、「Microtitanium Dioxide MT 500 SAS」、及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SAS」、
シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウムで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばTitan Kogyo社製の製品「STT-30-DS」、
シリカで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばKemira社製の製品「UV-Titan X 195」、
アルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(S)」若しくはKemira社製の製品「UV Titan M 262」、
トリエタノールアミンで被覆された酸化チタン、例えばTitan Kogyo社製の製品「STT-65-S」、
ステアリン酸で被覆された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(C)」、又は
ヘキサメタリン酸ナトリウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 150 W」
であってもよい。
【0122】
シリコーンで処理された他の酸化チタン顔料は、好ましくは、オクチルトリメチルシランで処理され、個々の粒子の平均粒径が25から40nmであるTiO2、例えばDegussa Silices社によって商標「T 805」で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が21nmであるTiO2、例えばCardre社によって商標「70250 Cardre UF TiO2Si3」で市販されているもの、及びポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2、例えばColor Techniques社によって商標「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」で市販されているものである。
【0123】
好ましくは、以下の被覆TiO2を被覆無機UV遮蔽剤として使用することができる:
平均一次粒径15nmの、ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 TV」、
平均一次粒径15nmの、ジメチコン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばMiyoshi Kasei社製の製品「SA-TTO-S4」、
平均一次粒径15nmの、シリカ(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 WP」、
平均一次粒径10nmの、ジメチコン(及び)シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-Y02」及び「MT-Y-110 M3S」、
平均一次粒径15nmの、ジメチコン(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばMiyoshi Kasei社製の製品「SA-TTO-S3」、
平均一次粒径15nmの、ジメチコン(及び)アルミナ(及び)TiO2、例えばSachtleben社製の製品「UV TITAN M170」、並びに
平均一次粒径15nmの、シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)アルギン酸(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 AQ」。
【0124】
UV遮蔽能の観点から、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤で被覆されたTiO2が、より好ましい。例えば、平均一次粒径15nmの、アボベンゾン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「HXMT-100ZA」を使用することができる。
【0125】
非被覆酸化チタン顔料は、例えば、Tayca社によって商標「Microtitanium Dioxide MT500B」又は「Microtitanium Dioxide MT600B」で、Degussa社によって商標「P 25」で、Wacker社によって商標「Oxyde de titane transparent PW」で、Miyoshi Kasei社によって商標「UFTR」で、Tomen社によって商標「ITS」で、及びTioxide社によって商標「Tioveil AQ」で市販されている。
【0126】
非被覆酸化亜鉛顔料としては、例えば、
Sunsmart社により商標「Z-cote」で市販されているもの、
Elementis社によって商標「Nanox」で市販されているもの;及び
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard WCD 2025」で市販されているものがある。
【0127】
被覆酸化亜鉛顔料としては、例えば、
Toshiba社によって商標「Oxide Zinc CS-5」で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたZnO)、
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard Zinc Oxide FN」で(Finsolv TN、安息香酸アルキル(C12~C15)中の40%分散体として)市販されているもの、
Daito社によって商標「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたナノ酸化亜鉛を30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン分散体)、
Daikin社によって商標「NFD Ultrafine ZnO」で市販されているもの(シクロペンタシロキサン分散体としての、ペルフルオロアルキルホスフェート及びペルフルオロアルキルエチルベースのコポリマーで被覆されたZnO)、
Shin-Etsu社によって商標「SPD-Z1」で市販されているもの(シクロジメチルシロキサン中に分散させた、シリコーングラフトアクリルポリマーで被覆されたZnO)、
ISP社によって商標「Escalol Z100」で市販されているもの(エチルヘキシルメトキシシンナメート/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコン混合物中に分散させたアルミナ処理ZnO)、
Fuji Pigment社によって商標「Fuji ZnO-SMS-10」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンで被覆されたZnO)、並びにElementis社によって商標「Nanox Gel TN」で市販されているもの[ヒドロキシステアリン酸重縮合物を含む安息香酸アルキル(C12~C15)中に55%で分散させたZnO]がある。
【0128】
非被覆酸化セリウム顔料は、例えば、Rhone-Poulenc社によって商標「Colloidal Cerium Oxide」で市販されている。
【0129】
非被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2002(FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」及び「Nanogard WCD 2006(FE 45R)」で、又はMitsubishi社によって商標「TY-220」で市販されている。
【0130】
被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2008(FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009(FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」及び「Nanogard FE 45 BL」で、又はBASF社によって商標「Oxyde de fer transparent」で市販されている。
【0131】
金属酸化物の混合物、具体的には二酸化チタンと二酸化セリウムとの混合物、例えばIkeda社によって商標「Sunveil A」で市販されているシリカで被覆された二酸化チタンとシリカで被覆された二酸化セリウムとの等質量混合物、更には二酸化チタンと、アルミナ、シリカ及びシリコーンで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 261」、又は二酸化チタンと、アルミナ、シリカ及びグリセロールで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 211」も挙げることができる。
【0132】
無機UV遮蔽剤のUV遮蔽効果を高めることができることから、被覆無機UV遮蔽剤が好ましい。加えて、コーティングは、本発明による組成物中にUV遮蔽剤を均一に又は均質に分散させるのに役立ちうる。
【0133】
有機UV遮蔽剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含んでもよい。2種以上の有機UV遮蔽剤を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0134】
本発明に使用される有機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。有機UV遮蔽剤は、親水性かつ/又は親油性のものでよい。
【0135】
有機UV遮蔽剤は、固体でも液体でもよい。用語「固体」及び「液体」は、それぞれ、1atm下、25℃での固体及び液体を意味する。
【0136】
有機UV遮蔽剤は、アントラニル酸化合物;ジベンゾイルメタン化合物;ケイ皮酸化合物;サリチル酸化合物;カンファー化合物;ベンゾフェノン化合物;β,β-ジフェニルアクリレート化合物;トリアジン化合物;ベンゾトリアゾール化合物;ベンザルマロネート化合物;ベンゾイミダゾール化合物;イミダゾリン化合物;ビス-ベンゾアゾリル化合物;p-アミノ安息香酸(PABA)化合物;メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物;ベンゾオキサゾール化合物;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレンに由来するダイマー;4,4-ジアリールブタジエン化合物;グアイアズレン及びその誘導体;ルチン及びその誘導体;並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0137】
有機UV遮蔽剤の例としては、下記にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0138】
- アントラニル化合物: Haarmann and Reimer社により「Neo Heliopan MA」の商標で市販されているアントラニル酸メンチル。
- ジベンゾイルメタン化合物: 具体的には商標「Parsol 1789」でHoffmann-La Roche社より市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
- ケイ皮酸化合物: 商標「Parsol MCX」でHoffmann-La Roche社より市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソプロポキシ、商標「Neo Heliopan E 1000」でHaarmann and Reimer社より市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル、シノキサート(4-メトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、メトキシケイ皮酸DEA、メチルケイ皮酸ジイソプロピル、及びエチルヘキサン酸ジメトキシケイ皮酸グリセリル。
- サリチル酸化合物: Rona/EM Industries社により「Eusolex HMS」の商標で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル);Haarmann and Reimer社により「Neo Heliopan OS」の商標で市販されているサリチル酸エチルヘキシル;サリチル酸グリコール;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;Scher社により「Dipsal」の商標で市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール;及びHaarmann and Reimer社により「Neo Heliopan TS」の商標で市販されているサリチル酸TEA。
- カンファー化合物、特にベンジリデンカンファー誘導体: Chimex社により「Mexoryl SD」の商標で製造されている3-ベンジリデンカンファー;Merck社により「Eusolex 6300」の商標で市販されている4-メチルベンジリデンカンファー;Chimex社により「Mexoryl SL」の商標で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸;Chimex社により「Mexoryl SO」の商標で製造されているメト硫酸カンファーベンザルコニウム;Chimex社により「Mexoryl SX」の商標で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸;及びChimex社により「Mexoryl SW」の商標で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー。
- ベンゾフェノン化合物: BASF社により「Uvinul 400」の商標で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);BASF社により「Uvinul D50」の商標で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);BASF社により「Uvinul M40」の商標で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;BASF社により「Uvinul MS40」の商標で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム);Norquay社により「Helisorb 11」の商標で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);American Cyanamid社により「Spectra-Sorb UV-24」の商標で市販されているベンゾフェノン-8;BASF社により「Uvinul DS-49」の商標で市販されているベンゾフェノン-9(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸二ナトリウム);ベンゾフェノン-12、及び安息香酸n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)(BASF社によるUVINUL A+)。
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物: 特にBASF社により「Uvinul N539」の商標で市販されているオクトクリレン;及び特にBASF社により「Uvinul N35」の商標で市販されているエトクリレン。
- トリアジン化合物: Sigma 3V社により「Uvasorb HEB」の商標で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン;2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、CIBA GEIGY社により<<TINOSORB S>>の商標で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びBASF社により<<UVINUL T150>>の商標で市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール化合物、特にフェニルベンゾトリアゾール誘導体: 分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ、及びUSP 5240975に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物: 4'-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えば、Hoffmann-LaRoche社によって「Parsol SLX」の商標で市販されているポリシリコーン-15。
- ベンゾイミダゾール化合物、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体: 特にMerck社により「Eusolex 232」の商標で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimer社により「Neo Heliopan AP」の商標で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム。
- イミダゾリン化合物: ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル。
- ビス-ベンゾアゾリル化合物: EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載の誘導体。
- パラアミノ安息香酸化合物: PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ペンチルジメチルPABA、特にISP社により「Escalol 507」の商標で市販されているエチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、及びBASF社により「Uvinul P25」の商標で市販されているPEG-25 PABA。
- メチレンビス-(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えばFairmount Chemical社により「Mixxim BB/200」の商標で、固体形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、BASF社により「Tinosorb M」の商標で、又はFairmount Chemical社により「MixximBB/100」の商標で、水性分散体中の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、及び米国特許第5,237,071号、同第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-197,26,184及びEP-893,119に記載されている誘導体、並びに
Rhodia Chimie社により「Silatrizole」の商標で、又はL'Oreal社により「Mexoryl XL」の商標で市販されている、下記に示すようなドロメトリゾールトリシロキサン。
【0139】
【化1】
【0140】
- ベンゾオキサゾール化合物: Sigma 3V社によりUvasorb K2Aの商標で市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン: WO 93/04665に記載のシリコーン。
- α-アルキルスチレン由来ダイマー: DE-19855649に記載のダイマー。
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物: 1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0141】
有機UV遮蔽剤は、以下からなる群から選択されることが好ましい:
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、4-メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリルオキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(ターフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンジルコニウムメトスルフェート及びそれらの混合物。
【0142】
本発明による組成物中の有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満であってよい。
【0143】
本発明による組成物中の有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0144】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3から9、好ましくは3.5から8、より好ましくは4から7であってよい。
【0145】
組成物のpHは、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0146】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用することができる。
【0147】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩(monohydrogenophosphate)、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0148】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0149】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びそれらの誘導体;ジアミン及びそれらの誘導体;ポリアミン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸とそれらの誘導体とのオリゴマー;塩基性アミノ酸とそれらの誘導体とのポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0150】
有機アルカリ剤の例として、モノ、ジ及びトリエタノールアミン並びにイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;リジン、オルニチン又はアルギニン等の塩基性アミノ酸;並びに下記の構造:
【0151】
【化2】
【0152】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基により任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を表す)
に記載されているもの等のジアミン(これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体により例示することができる)を挙げることができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0153】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0154】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用することができる。
【0155】
酸としては、化粧料において一般に使用される任意の無機又は有機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0156】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0157】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用することができる。
【0158】
緩衝剤としては、酢酸緩衝剤(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝剤(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝剤(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝剤[例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、及びHepes緩衝剤[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]を挙げることができる。
【0159】
(任意選択の添加剤)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて化粧品に典型的に用いられる成分、具体的には、例えば染料、粉末、油、増粘剤、有機不揮発性溶媒、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0160】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の量で含んでもよい。
【0161】
一実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの油、又は異なるタイプの油の組合せを使用することができる。本明細書において、「油」という用語は、室温(25℃)で液体である脂肪物質を意味すると理解される。油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0162】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満であってよい。
【0163】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0164】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用することを意図したものであってもよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書において、ケラチンを主要構成要素として含む材料を意味し、その例として、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等を含む。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用することが好ましい。
【0165】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、特にUV及び/又は空気中の汚染物質から皮膚を保護するための組成物であってもよい。
【0166】
本発明による組成物は、溶液、分散体、エマルション、ゲル、及びペースト等の任意の形態であってよい。本発明による組成物が少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む場合、本発明による組成物は、W/O、O/W、W/O/W及びO/W/O等のエマルション、好ましくはO/Wエマルションの形態であってよい。
【0167】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須及び任意選択の成分を混合することによって調製することができる。
【0168】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。しかし、本発明による組成物中の界面活性剤の量は、限定されることが好ましい。
【0169】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で、任意選択で含んでもよい。
【0170】
一実施形態において、本発明による組成物は、界面活性剤を実質的に含まない。「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、本発明による組成物が、界面活性剤を全く含まない又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量でしか含まないことを意味する。
【0171】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0172】
[膜]
本発明による組成物は、自己回復又は自己修復膜を容易に調製するために使用することができる。
【0173】
したがって、本発明はまた、膜、好ましくは化粧膜を調製するための方法であって、
本発明による組成物を基体、好ましくはケラチン基体、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法に関しうる。
【0174】
本発明による膜を調製するための方法は、本発明による組成物を基体、好ましくはケラチン基体、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、膜を容易に調製することが可能である。したがって、本発明による膜を調製するための方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに膜を調製することができる。
【0175】
膜は、薄くてよく、且つ/又は透明であってもよく、したがって容易に認識できない。したがって、膜は、好ましくは化粧膜として使用することができる。
【0176】
基体が皮膚等のケラチン基体でない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基体に塗布することができる。非ケラチン基体の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれにせよ、基体は、可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0177】
基体がケラチン基体でない場合、基体は、水溶性であることが好ましく、その理由は、基体を水で洗浄することによって膜を残すことが可能であるからである。水溶性材料の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0178】
非ケラチン基体がシートの形態である場合、これは、基体シートに付着した膜の取り扱いを容易にするために、本発明による膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基体シートの厚さは限定されないが、1μmから5mm、好ましくは10μmから1mm、より好ましくは50から500μmであってよい。
【0179】
膜は、非ケラチン基体から取り外し可能であることがより好ましい。取り外し方式は限定されない。したがって、膜は、非ケラチン基体から剥がしてもよく、又は基体シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0180】
本発明はまた、
(1)本発明による組成物を基体、好ましくはケラチン基体、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される膜、好ましくは化粧膜、及び
(2)少なくとも1種のカチオン性多糖と、3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
任意選択の少なくとも1種のアニオン性ポリマーと
を含む、膜、好ましくは化粧膜
に関しうる。
【0181】
本発明による組成物中の成分の上記説明は、上記のカチオン性多糖、上記の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩、及び上記のアニオン性ポリマーに適用することができる。
【0182】
上記のこうして得られた膜は、自立性とすることができる。本明細書における「自立性」という用語は、膜をシートの形態とすることができ、基体又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。したがって、「自立性」という用語は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0183】
膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。膜は、任意の形状又は形態であってよい。例えば、これは、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0184】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン基体のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン基体に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン基体上に化粧膜を形成する工程とを含む方法、及び
皮膚等のケラチン基体上に化粧膜を調製するための本発明による組成物の使用
に関する。
【0185】
本明細書における美容方法とは、皮膚等のケラチン基体の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容法を意味する。
【0186】
上記の化粧膜は、化粧膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、化粧膜中のポリイオンコンプレックス粒子の特性により、悪臭を吸収若しくは吸着する、皮膚等のケラチン基体の外観を変化させる、ケラチン基体の触感を変化させる、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン基体を保護する等の美容効果を有しうる。
【0187】
加えて、上記の化粧膜は、化粧膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧膜は、毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を覆い、皮膚をシールドすることによって皮膚を即座に保護することができる。
【0188】
上記の美容効果は、上記の化粧膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0189】
上記の化粧膜が、少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧膜は、その美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、及び/又は皮膚を美白することができる。
【0190】
例えば、化粧膜がUV遮蔽剤を含む場合、上記の化粧膜は、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、並びに/又は皮膚の老化を処置することが可能でありうる。
【0191】
本発明によって調製された化粧膜上にメイクアップ化粧用組成物を塗布することも可能でありうる。
【実施例
【0192】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明することにする。しかし、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0193】
(実施例1)
(3つの成分(CMC/PQ-67/フィチン酸)で構成されるDICゲルの調製)
ポリアニオンとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)の10wt%水溶液1.8g、ポリカチオンとしてのポリクオタニウム-67(PQ-67)0.79g、架橋剤としてのフィチン酸の50wt%水溶液0.50g、水酸化ナトリウム0.15g、及び水96.76gを、ホモジナイザーを使用して混合した。こうして、安定な半透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0194】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
DICゲルを2片に切り分け、これらを室温で空気に接触させた。1時間後、これらの2片は互いに接着した。
【0195】
また、1mlのDICゲル半透明分散体(水を蒸発させる前)を、ガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っかきの傷痕は消えていた。
【0196】
(ほうれい線を充填するためのDICゲルの適用)
濃縮DICゲルを小片に切り分け、ほうれい線に適用した。適用した断片は、ほうれい線において自己回復し、互いに同化した。最終的に、ほうれい線はDICゲルによって変化し、ほうれい線はあまり目立たなくなった。
【0197】
(実施例2)
(DICゲルエマルションの調製)
0.593gのポリクオタニウム-67及び0.135gのセルロースガムを67.4gの水(A1相)中に溶解し、0.11gの水酸化ナトリウム(A2相)をその混合物中に加えた。0.375gの50wt%フィチン酸水溶液を5gの水(A3相)で希釈し、このA3相を上記の混合物と混合してDICゲル溶液を調製した。このDICゲル溶液に、水(A4相)を添加した。調製は、ホモジナイザーを使用して実施した。油相(B)を、室温でDICゲル溶液で乳化し、DICゲルエマルションを調製した。
【0198】
実施例2によるDICゲルエマルションを調製するのに使用した材料を、表1に示す。表1に示した成分の量の数値は、全て「質量%」に基づく。
【0199】
【表1】
【0200】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
1mlのDICゲルエマルションをガラス上に適用し、室温で15紛間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかいた。かき傷痕の治癒過程を、共焦点顕微鏡法によって確認した。かき傷痕は、回復した。
【0201】
(実施例3)
(2つの成分(PQ-67/フィチン酸)で構成されるDICゲルの調製)
ポリカチオンとしてのポリクオタニウム-67(PQ-67)0.79g、架橋剤としてのフィチン酸の50wt%水溶液0.50g、水酸化ナトリウム0.15g、及び水98.56gを、ホモジナイザーを使用して混合した。こうして、安定な半透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0202】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
濃縮DICゲルを2片に切り分け、これらを室温で空気に接触させた。1時間後、これらの2片は互いに接着した。
【0203】
また、1mlのDICゲル半透明分散体(水を蒸発させる前)を、ガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っかきの傷痕は消えていた。
【0204】
(実施例4)
(2つの成分(PQ-10/フィチン酸)で構成されるDICゲルの調製)
0.5gのポリクオタニウム-10を99.1gの水に溶解し、0.4gの50wt%フィチン酸水溶液をその中で混合した。こうして、安定な透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0205】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
DICゲルを2片に切り分け、これらを室温で空気に接触させた。1時間後、これらの2片は互いに接着した。
【0206】
また、1mlのDICゲル半透明分散体(水を蒸発させる前)を、ガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っかきの傷痕は消えていた。
【0207】
(実施例5)
(2つの成分(PQ-67/クエン酸)で構成されるDICゲルの調製)
0.55gのポリクオタニウム-67、0.24gのクエン酸を95.79gの水と混合し、10%水酸化ナトリウム溶液でpHをpH7に調整した。こうして、安定な透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0208】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
1mlのDICゲル分散体(水を蒸発させる前)を、ガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っかきの傷痕は消えていた。
【0209】
(実施例6)
(2つの成分(PQ-10/クエン酸)で構成されるDICゲルの調製)
0.50gのポリクオタニウム-10、0.24gのクエン酸を95.79gの水と混合し、10%水酸化ナトリウム溶液でpHをpH7に調整した。こうして、安定な透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0210】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
1mlのDICゲル分散体(水を蒸発させる前)を、ガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っかきの傷痕は消えていた。
【0211】
(比較例1)
ポリクオタニウム-67又はポリクオタニウム-10は、上記の濃度で水に溶解した場合、本来ヒドロゲルである。ポリクオタニウム-67又はポリクオタニウム-10単独で構成されるヒドロゲルは、以下に示すような自己修復特性を示さなかった。
【0212】
ポリクオタニウム-67の濃縮ヒドロゲルを2片に切り分け、これらを室温で空気に接触させた。1時間後、これらの2片は互いに接着しなかった。
【0213】
また、1mlの0.79wt%ポリクオタニウム-67水溶液をガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、ポリクオタニウム-67ゲル膜を調製した。ポリクオタニウム-67ゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、ポリクオタニウム-67ゲル膜は部分的に水に溶解し、洗い流され、自己修復の特性は認識されなかった。
【0214】
(比較例2)
ポリアニオンとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)の10wt%水溶液1.8g、ポリカチオンとしてのポリクオタニウム-67(PQ-67)0.79g、架橋剤としてのフィチン酸の50wt%水溶液0.50g、水酸化ナトリウム0.15g、フェノキシエタノール0.50g、界面活性剤としての33wt%ココベタイン3.33g及び水96.26gを、ホモジナイザーを使用して混合した。こうして、安定な半透明分散体を成功裏に調製した。加熱を通して水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃縮物は、約10wt%であった。
【0215】
比較例2によるDICゲル分散体を調製するのに使用した材料を、表2に示す。便宜上、実施例1によるDICゲル分散体を調製するのに使用した材料も、表2に示す。表2に示した成分の量の数値は、全て「質量%」に基づく。
【0216】
【表2】
【0217】
比較例2による1mlのDICゲル半透明分散体(水を蒸発させる前)をガラス板上に適用し、室温で1日間乾燥して、DICゲル膜を調製した。界面活性剤を含むDICゲル膜の表面をつまようじで引っかき、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に一滴の水を注ぎ、30秒間放置した。水を除去した後、膜は部分的に水に溶解し、洗い流され、自己修復の特性は認識されなかった。