(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】油を含む発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221121BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20221121BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20221121BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/365
A61K8/41
A61K8/55
A61K8/891
A61Q5/12
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018161328
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】丸山 昌二
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0093348(US,A1)
【文献】国際公開第2013/069165(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0022799(US,A1)
【文献】Whip Cream Shampoo (ID: 5765605),Mintel GNPD [online],2018年06月,[検索日;2022年5月23日], https://www.gnpd.com
【文献】Neo for Men 3x1Multi-Functional Total Fresh Hair Body Beard Conditioning Shampoo (ID: 5083533),Mintel GNPD [online],2017年09月,[検索日;2022年5月23日], https://www.gnpd.com
【文献】Strengthening &Darkening Essence Oil Shampoo (ID: 3664321),Mintel GNPD[online],2015年12月,[検索日;2022年5月23日], https://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の油と、
(d)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体と
を含む発泡性組成物であって、
前記(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩が、フィチン酸、クエン酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記(c)油が、ポリジアルキルシロキサンから選択され、
組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%であり、
組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%から15質量%であり、
組成物中の
前記(c)油の量が、組成物の総質量に対して、10質量%
から50質量%未満である、発泡性組成物。
【請求項2】
組成物中の(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して
、0.1質量%から15質量%
である、請求項1
に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.5質量%から10質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、組成物の総質量に対して
、0.05質量%から10質量%
である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%から5質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して、
15質量%から45質量%未満
である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して、20質量%から40質量%未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の(d)生理学的に許容される揮発性媒体
の量が、組成物の総質量に対して、50質量%から90質量%
である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化粧用組成物である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種のガスを更に含み、泡の形態である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ケラチン基体のための美容方法であって、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の組成物を発泡させて、泡を調製する工程と、
泡をケラチン基体に塗布する工程と
を含む、美容方法。
【請求項13】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の組成物を含む少なくとも1つの容器と、
少なくとも1つのディスペンサーと
を含む発泡性製品であって、ディスペンサーが、組成物を泡の形態で吐出することが可能である、発泡性製品。
【請求項14】
容器が、少なくとも1種の噴射剤を更に含む、請求項
13に記載の発泡性製品。
【請求項15】
容器及びディスペンサーに接続された少なくとも1つのポンプを更に含み、ポンプが、組成物を少なくとも1種のガスと混合して、泡を調製すること、及び泡をディスペンサーに運搬することが可能である、請求項
13に記載の発泡性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的イオン架橋(dynamically and ionically-crosslinked)(DIC)ゲルと、油とを含む泡(状体)に関する。
【背景技術】
【0002】
泡は、多様な化粧品、例えばシャンプー、クレンザー及びヘアトリートメントに適用されている。泡は、例えば、化粧品が指の間から滴り落ちるのを防止又は低減できるため、取り扱いの観点から好ましい。
【0003】
近年、相当量の油を含むことができる泡を調製することが必要とされている。例として、湿潤及び乾燥条件下で毛髪に美容効果をもたらすことができるヘアコンディショナーは、毛髪の扱いやすさ等のために、相当量の油を含む泡を形成することが好ましい場合がある。
【0004】
しかしながら、油は消泡剤として機能しうることから、泡中に相当量の油を含むことは困難である。したがって、相当量の油を含む泡は不安定であるか又は泡中の気泡構造を容易に破壊する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】仏国特許第1492597号
【文献】米国特許第4,131,576号
【文献】EP-A-0750899
【文献】EP-A-1069172
【文献】EP-A-0173109
【文献】USP 5240975
【文献】EP-669,323
【文献】米国特許第2,463,264号
【文献】米国特許第5,237,071号
【文献】米国特許第5,166,355号
【文献】GB-2,303,549
【文献】DE-19,726,184
【文献】EP-893,119
【文献】WO 93/04665
【文献】DE-19855649
【非特許文献】
【0006】
【文献】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press社
【文献】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【文献】ASTM規格445付録C
【文献】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁
【文献】Cosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、相当量の油を含んでいても安定な泡を形成することができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の油と、
(d)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体と
を含む発泡性組成物であって、組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である、発泡性組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択することができる。
【0010】
(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有してもよい。
【0011】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0012】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってもよい。
【0013】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸及びその塩から選択することができる。
【0014】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0015】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、アコニット酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトールペンタキスリン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0016】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%から15質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってもよい。
【0017】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%未満、好ましくは45質量%未満、より好ましくは40質量%未満であってもよい。
【0018】
本発明による組成物中の(d)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%から90質量%、好ましくは55質量%から85質量%、より好ましくは60質量%から80質量%であってもよい。
【0019】
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含んでもよい。
【0020】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物であってもよい。
【0021】
本発明による組成物は、少なくとも1種のガスを更に含んでもよく、泡の形態であってもよい。
【0022】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物を発泡させる工程と、
泡をケラチン基体に塗布する工程と
を含む、美容方法に関する。
【0023】
本発明はまた、
本発明による組成物を含む少なくとも1つの容器と、
少なくとも1つのディスペンサーと
を含む発泡性製品であって、ディスペンサーが、組成物を泡の形態で吐出することが可能である、発泡性製品に関する。
【0024】
容器は、少なくとも1種の噴射剤を更に含んでもよい。
【0025】
本発明による発泡性製品は、容器及びディスペンサーに接続された少なくとも1つのポンプを更に含んでもよく、ポンプは、組成物を少なくとも1種のガスと混合して、泡を調製すること、及び泡をディスペンサーに運搬することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
鋭意検討の結果、本発明者等は、相当量の油を含んでいても安定な泡を形成することができる組成物を提供することが可能であることを発見した。したがって、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の油と、
(d)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体と
を含み、組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0027】
本発明による組成物は、発泡性組成物である。換言すれば、本発明による組成物は、泡を形成することが可能である。本発明による組成物は、経時的に又は長時間にわたって、例えば、数分を超えて、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上安定である泡を形成することができる。
【0028】
本発明による組成物は、ゲル、好ましくはヒドロゲルを調製することができる。ゲルは、動的にイオン架橋されている。本発明による組成物によって調製された動的イオン架橋ゲルは、DICゲルと略称される。
【0029】
DICゲル中の動的イオン架橋は、破壊可能であるが、再形成可能であることから、永久的な共有結合とは異なる。動的イオン架橋は、例えば、切断すること等によって容易に破壊されうるが、例えば、互いに接触させることによって容易に再形成されうる。例えば、ゲルが2つの断片に切断された場合、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン相互作用が破壊される。しかしながら、2つの断片が互いに接触した場合、それらは、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン結合を再形成することができ、互いに接着することができる。したがって、例えば、亀裂がゲル上に形成された場合でも、それらは消失することができる。
【0030】
(a)カチオン性多糖及び(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩によって調製されたゲルは、薄膜を形成することができる。
【0031】
いかなる理論にも拘泥するつもりはないが、薄膜は、泡中の気泡の表面に存在して、泡を安定化すると推定される。したがって、消泡剤として機能しうる相当量の油、例えばシリコーンが存在する場合でも、本発明による組成物によって形成された泡を維持することができ、したがって、泡は安定である。
【0032】
また、本発明による組成物は、毛髪等のケラチン繊維に対する優れた美容効果、例えば、コンディショニング効果をもたらすことができる。例えば、本発明による組成物で処置されたケラチン繊維は、より滑らかとなりうる。
【0033】
界面活性剤は、べたつく質感、皮膚刺激及び環境負荷等のいくつかの懸念事項を有するため、本発明による組成物は、泡を形成するために従来使用される界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。界面活性剤を一切用いなくとも、本発明による組成物は、安定な泡を調製することができる。
【0034】
以下、本発明による組成物、方法等をより詳細に説明する。
【0035】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2つ以上の異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの(a)カチオン性多糖、又は異なるタイプの(a)カチオン性多糖の組合せを使用することができる。
【0036】
(a)カチオン性多糖は、正の電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/gから20meq/g、好ましくは0.05から15meq/g、より好ましくは0.1から10meq/gであってもよい。
【0037】
(a)カチオン性多糖の分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0038】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0039】
(a)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。本明細書における(第一級)「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0040】
(a)カチオン性多糖は、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0041】
(a)カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0042】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい。カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0043】
(1)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号等に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばDow Chemical社によって名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されたエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0044】
(2)カチオン性セルロース誘導体、例えば少なくとも1つの水溶性の第四級アンモニウムモノマーをグラフトした、例えば米国特許第4,131,576号に記載されているセルロースコポリマー及びセルロース誘導体、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウムから選択される少なくとも1つ等をグラフトしたヒドロキシアルキルセルロース、例としてヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロース。これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、Akzo Novel社によって名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が含まれる。
【0045】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリール基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリール基、又はそれらの混合物を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基で修飾された四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましい場合がある。第四級アンモニウム基によって保持されるアルキル基は、好ましくは、8から30個の炭素原子、とりわけ10から30個の炭素原子を含有してもよい。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリル基を示す。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含んでもよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例には、Dow Chemical社によって販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M、及びSoftcat SK-H、並びにCroda社によって販売されている製品Crodacel QM、Crodacel、 QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が含まれる。
【0046】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0047】
いかなる理論にも拘泥するつもりはないが、(a)カチオン性多糖の半可撓性(semi-flexibility)又は比較的剛直なポリマー構造が、相当量の油を含む安定な泡に寄与する可能性があると推定される。また、(a)カチオン性多糖の半可撓性又は比較的剛直なポリマー構造は、ミクロゲルを作製するのに有利であることに留意されたい。
【0048】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であってもよい。
【0049】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0050】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってもよい。
【0051】
(架橋剤)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩を含む。2つ以上の異なるタイプの(b)架橋剤又はその塩を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの(b)架橋剤若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)架橋剤若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0052】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤の酸基の少なくとも1つは、塩の形態であってもよい。(b)架橋剤の全ての酸基が、塩の形態であってもよい。
【0053】
本明細書における「塩」という用語は、(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤に好適な塩基を添加することによって形成された塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤と塩基とを反応させることにより得ることができる。塩としては、金属塩、例えば、Na及びKa等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0054】
(b)架橋剤は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸から、より好ましくは3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸から選択されることが好ましい。
【0055】
本明細書における「非ポリマー」という用語は、(b)架橋剤が、2つ以上のモノマーを重合することによって得られないことを意味する。したがって、非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸は、ポリカルボン酸等の2つ以上のモノマーを重合することによって得られる酸に相当しない。
【0056】
3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であることが好ましい。
【0057】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤、又はその塩は、親水性又は水溶性であってもよい。
【0058】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0059】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0060】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、アコニット酸、フィチン酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトールペンタキスリン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0061】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、フィチン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0062】
いかなる理論にも拘泥するつもりはないが、フィチン酸等の3つ以上の酸基を有する架橋剤による動的イオン架橋は、泡の安定性に寄与する、泡中の気泡の周囲の強固な界面薄膜を作製しうると推定される。
【0063】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0064】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0065】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%から15質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってもよい。
【0066】
(油)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(c)油を使用する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
本明細書において、「油」は、大気圧(1atm)下、室温(25℃)で、液体又はペースト(非固体)の形態である、脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油としては、化粧品において一般に使用されるものを、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0068】
油は、非極性油、例えば炭化水素油、シリコーン油等;極性油、例えば植物若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油;又はそれらの混合物であってもよい。
【0069】
油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪アルコールからなる群から選択することができる。
【0070】
植物油の例としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、アブラナ種子油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナッツ油、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
動物油の例としては、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0072】
合成油の例としては、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0073】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族モノアルコール又はポリアルコールとの液体エステルであり、エステルの炭素原子の総数は、10以上である。
【0074】
好ましくは、モノアルコールのエステルについて、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中で少なくとも1つは分枝状である。
【0075】
一酸とモノアルコールとのモノエステルの中で、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0076】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた使用することができる。
【0077】
とりわけ、セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、三乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールを挙げることができる。
【0078】
エステル油としては、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有さず、いくつかのアルコール官能基を含有し、少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素保持炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖であってよい。
【0079】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにその誘導体、とりわけアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてメチルグルコースが含まれる。
【0080】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、先に記載した糖と、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択することができる。それらが不飽和である場合、これらの化合物は、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0081】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0082】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はそれらの混合物、例えば、とりわけオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0083】
より特定すると、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0084】
挙げることができる例は、Amerchol社によって名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品であり、これは、ジオレイン酸メチルグルコースである。
【0085】
好ましいエステル油の例としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
人工トリグリセリドの例としては、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0087】
シリコーン油の例としては、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等;環状オルガノポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等;及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0088】
好ましくは、シリコーン油は、液体ポリジアルキルシロキサン、とりわけ液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液体ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0089】
これらのシリコーン油はまた、有機修飾されていてもよい。本発明に従って使用することができる有機修飾シリコーンは、上記に定義したシリコーン油であり、その構造中に、炭化水素系基を介して付着した1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0090】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press社においてより詳細に定義されている。それらは、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0091】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より特定すると、60℃から260℃の間の沸点を有するものから、更に特定すると、以下から選択される:
(i)3から7個、好ましくは4から5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社によって名称Volatile Silicone(登録商標)7207で、又はRhodia社によって名称Silbione(登録商標)70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社によって名称Volatile Silicone(登録商標)7158で、Rhodia社によって名称Silbione(登録商標)70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社によって名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにそれらの混合物である。以下の式のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えばUnion Carbide社によって販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109も挙げることができる:
[式中、
【0092】
【0093】
である]。
【0094】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン及びテトラトリメチルシリルペンタエリスリトール(50/50)の混合物、並びにオクタメチルシクロテトラシロキサン及びオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンの混合物も挙げることができる;並びに
(ii)2から9個のケイ素原子を含有し、25℃で5×10-6m2/s以下の粘度を有する直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にトーレ・シリコーン株式会社によって名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この分類に属するシリコーンはまた、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsにおいて公表されている論文に記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃で測定される。
【0095】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンもまた使用することができる。これらの不揮発性シリコーンは、より特定すると、ポリジアルキルシロキサンから選択され、その中で、主として、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0096】
これらのポリジアルキルシロキサンの中で、非限定的に、以下の市販製品を挙げることができる:
- Rhodia社によって販売されている47及び70047シリーズのSilbione(登録商標)油又はMirasil(登録商標)油、例として油70047 V 500000、
- Rhodia社によって販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば60000mm2/sの粘度を有するDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズのある種の油(SF 96、SF 18)。
【0097】
名称ジメチコノール(CTFA)で公知のジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0098】
アリール基を含有するシリコーンの中で、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0099】
フェニルシリコーン油は、以下の式:
【0100】
【0101】
[式中、
R1からR10は、互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル又はブチル基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立して、0以上900以下、好ましくは0以上500以下、より好ましくは0以上100以下の整数であり、
ただし、和n+m+qは、0以外であることを条件とする]
のフェニルシリコーンから選択することができる。
【0102】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品が含まれる:
- Rhodia社製の70641シリーズのSilbione(登録商標)油、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20、
- General Electric社製のSFシリーズのある種の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0103】
フェニルシリコーン油としては、フェニルトリメチコン(上記の式中、R1からR10は、メチルであり、p、q、及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0104】
有機修飾された液体シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。したがって、信越化学工業株式会社によって提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油Silwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0105】
炭化水素油は、以下から選択することができる:
- 直鎖状又は分枝状の、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンが含まれる;並びに
- 16個を超える炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0106】
炭化水素油の好ましい例としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0107】
脂肪アルコールにおける「脂肪」という用語は、比較的多数の炭素原子を含むことを意味する。したがって、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールは、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0108】
脂肪アルコールは、構造R-OH[式中、Rは、4から40個の炭素原子、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは12から20個の炭素原子を含有する飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される]を有してもよい。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル及びC12~C20アルケニル基から選択することができる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されていても置換されていなくてもよい。
【0109】
脂肪アルコールの例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
脂肪アルコールは、飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0111】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖又は分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0112】
本明細書における「飽和脂肪アルコール」という用語は、長い脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールは、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30脂肪アルコールの中で、好ましくは、直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20脂肪アルコールを使用することができる。より好ましくは、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和C16~C20脂肪アルコールを使用することができる。更に好ましくは、分枝状C16~C20脂肪アルコールを使用することができる。
【0113】
飽和脂肪アルコールの例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はそれらの混合物(例えば、セテアリルアルコール)及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0114】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物において使用される脂肪アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びそれらの混合物から選択される。
【0115】
(c)油は、非極性油から、より好ましくはシリコーン油、炭化水素油、及びそれらの混合物、更に好ましくはシリコーン油、特に揮発性シリコーン油から選択されることが好ましい場合がある。
【0116】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、25質量%以上又は30質量%以上であってもよい。
【0117】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%未満、好ましくは45質量%未満、より好ましくは40質量%未満であってもよい。
【0118】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から50質量%未満、好ましくは15質量%から45質量%未満、より好ましくは20質量%から40質量%未満であってもよい。
【0119】
(生理学的に許容される揮発性媒体)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体を含む。
【0120】
「生理学的に許容される」揮発性媒体という用語は、本発明による組成物をケラチン物質に塗布するのに特に好適である揮発性媒体を示すことを意図している。
【0121】
「揮発性」という用語は、(d)生理学的に許容される媒体が、標準大気圧、例えば1atm及び室温、例えば25℃で蒸発することができることを意味する。
【0122】
生理学的に許容される媒体は、一般に、本発明による組成物が塗布される支持体の性質、更には本発明による組成物が包装される形態に適合される。
【0123】
(d)生理学的に許容される揮発性媒体は、少なくとも1種の親水性有機溶媒、水又はそれらの混合物を含んでもよい。(d)生理学的に許容される揮発性媒体は、水を含むことが好ましい。
【0124】
親水性有機溶媒としては、例えば、2から6個の炭素原子を含有するモノアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノール;とりわけ2から20個の炭素原子を含有する、好ましくは2から10個の炭素原子を含有する、優先的には2から8個の炭素原子を含有するポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコール;グリコールエーテル(とりわけ3から16個の炭素原子を含有する)、例えばモノ、ジ又はトリプロピレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル、モノ、ジ又はトリエチレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0125】
本発明による組成物中の(d)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であってもよい。
【0126】
本発明による組成物中の(d)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。
【0127】
本発明による組成物中の(d)生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%から90質量%、好ましくは55質量%から85質量%、より好ましくは60質量%から80質量%であってもよい。
【0128】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含んでもよい。2つ以上の異なるタイプの(e)アニオン性ポリマーを組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの(e)アニオン性ポリマー、又は異なるタイプの(e)アニオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0129】
アニオン性ポリマーは、負の電荷密度を有する。アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/gから20meq/g、好ましくは1から15meq/g、より好ましくは4から10meq/gであってもよく、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1から3.0、好ましくは0.2から2.7、より好ましくは0.3から2.5であってもよい。
【0130】
アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは100,000以上、更に好ましくは1,000,000以上であることが好ましい場合がある。
【0131】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基、及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してもよい。
【0132】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0133】
アニオン性ポリマーは、天然及び合成のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0134】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい。
【0135】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよいアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa")から選択されるモノマー(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/或いはα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の(monohydric)非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることにより得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)との共重合によって得ることができる。
【0136】
したがって、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路によって、すなわち、
- モノマー(a')及び(c)、若しくは(a')、(b)及び(c)、若しくは(a")及び(c)、若しくは(a")、(b)及び(c)の共重合、
- 又はモノマー(a')、若しくはモノマー(a')及び(b)、若しくは(a")及び(b)から形成されたコポリマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンで修飾(特に、エステル化若しくはアミド化)すること
のいずれかによって得ることができる。
【0137】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されているものを挙げることができる。
【0138】
モノマー(a')の構成要素となるα,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、特にアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0139】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含むことができる。好ましいモノマーは、単独重合したときに水不溶性ポリマーを与えるものである。それらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸アルキル(C1~C4)、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特に好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用することができる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性を持つ唯一の基であるものである。しかしながら、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを任意選択で使用することができる。
【0140】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることによって得られる。
【0141】
非イオン性モノマー(c)を生成するために使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンは周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールから構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分の構成要素となる。
【0142】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
[式中、Rは、6から30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基及び8から30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1から4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1から150の範囲の平均数であり、mは、およそ0から50の範囲の平均数であり、ただし、nは、少なくともmと同等であることを条件とする]
を有する化合物である。
【0143】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12から26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1から25である。
【0144】
好ましい第一級及び第二級脂肪アミンは、6から30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0145】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するために使用されるモノマーは、非常に多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む任意の化合物を使用することができる。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0146】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0147】
本発明の特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物とモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0148】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示されている40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0149】
アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー(例えば、セルロースガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、無水マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0150】
無水マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとを含んでもよい。
【0151】
したがって、「無水マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、無水マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち2g/l以上の水溶解度を有するポリマーが使用される。
【0152】
1つ又は複数の無水マレイン酸単位の共重合によって得られるコポリマーを使用することが好ましい場合があり、その無水マレイン酸単位は、加水分解形態、より好ましくはアルカリ塩の形態、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩の形態である。
【0153】
本発明の有利な態様では、無水マレイン酸コポリマーは、無水マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってもよい。
【0154】
無水マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってもよい。
【0155】
無水マレイン酸コポリマーは、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/無水マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0156】
好ましくは、50/50比のスチレンと無水マレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0157】
例えば、Cray Valley社によって参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマー又はCray Valley社によって参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0158】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0159】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってもよい。
【0160】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%から20質量%、好ましくは0.01質量%から15質量%、より好ましくは0.1質量%から15質量%であってもよい。
【0161】
(美容活性成分)
本発明による組成物は、少なくとも1種の美容活性成分を含んでもよい。美容活性成分は限定されない。2種以上の美容活性成分を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの美容活性成分、又は異なるタイプの美容活性成分の組合せを使用することができる。
【0162】
使用される美容活性成分の中で、UVフィルター、抗酸化剤、クレンジング剤、フリーラジカル捕捉剤、保湿剤、美白剤、脂質調節剤(liporegulator)、抗ニキビ剤、抗フケ剤、抗老化剤、軟化剤、抗しわ剤、角質溶解剤、抗炎症剤、フレッシュナー、ヒーリング剤、血管保護剤、抗細菌剤、抗真菌剤、制汗剤、デオドラント、皮膚コンディショナー、麻酔剤、免疫調節剤、栄養剤、及び皮脂吸収剤又は水分吸収剤を挙げることができる。
【0163】
(b)架橋剤は、美容活性剤として機能することができることが好ましい。(b)架橋剤が美容活性剤として機能しうる場合、本発明による組成物は、美容活性剤を含む必要がない場合がある。
【0164】
本発明による組成物は、美容活性成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%から25質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%、更に好ましくは2質量%から10質量%の量で含んでもよい。
【0165】
UVフィルター
本発明の好ましい実施形態によれば、美容活性成分は、UVフィルターから選択することができる。
【0166】
UVフィルターのタイプは限定されない。2つ以上のタイプのUVフィルターを組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプのUVフィルター、又は異なるタイプのUVフィルターの組合せを使用することができる。UVフィルターは、無機UVフィルター、有機UVフィルター、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0167】
無機UVフィルター
本発明による組成物は、少なくとも1種の無機UVフィルターを含んでもよい。2種以上の無機UVフィルターを使用する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0168】
本発明に使用される無機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。無機UVフィルターは、親水性及び/又は親油性であってよい。無機UVフィルターは、好ましくは、化粧品において一般的に使用される水及びエタノール等の溶媒に不溶性である。
【0169】
無機UVフィルターは、その平均(一次)粒子直径が1nmから50nm、好ましくは5nmから40nm、より好ましくは10nmから30nmの範囲であるような微粒子の形態であることが好ましい。本明細書における平均(一次)粒径又は平均(一次)粒子直径は、算術平均直径である。
【0170】
無機UVフィルターは、炭化ケイ素、被覆されていても被覆されていなくてもよい金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0171】
好ましくは、無機UVフィルターは、金属酸化物で形成された顔料(平均一次粒径:一般に5nmから50nm、好ましくは10nmから50nm)、例えば、酸化チタン(非晶質又はルチル及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された顔料等から選択することができ、これらは全て、それ自体が周知のUV光保護剤である。好ましくは、無機UVフィルターは、酸化チタン、酸化亜鉛から選択することができ、より好ましくは酸化チタンである。
【0172】
無機UVフィルターは、被覆されていても被覆されていなくてもよい。無機UVフィルターは、少なくとも1つのコーティングを有してもよい。コーティングは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコーン、シラン、脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、又はアルミニウム塩)、脂肪アルコール、レシチン、アミノ酸、多糖、タンパク質、アルカノールアミン、ワックス、例えばビーズワックス、(メタ)アクリルポリマー、有機UVフィルター、及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0173】
コーティングは、少なくとも1種の有機UVフィルターを含むことが好ましい。コーティング中の有機UVフィルターとしては、ジベンゾイルメタン誘導体、例えばブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)及びBASF社によって「TINOSORB M」として市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェノール](メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)が好ましい場合がある。
【0174】
公知のように、コーティング中のシリコーンは、様々な分子量の直鎖状又は環状及び分枝状又は架橋された構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであってよく、これは好適な官能性シランの重合及び/又は重縮合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに接合(シロキサン結合)され、任意選択で置換された炭化水素基が炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接接合されている、反復主要単位から本質的に構成される。
【0175】
「シリコーン」という用語はまた、その調製に必要なシラン、特にアルキルシランを包含する。
【0176】
コーティングに使用されるシリコーンは、好ましくは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン、及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択することができる。更により好ましくは、シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される。
【0177】
当然ながら、金属酸化物で作製された無機UVフィルターは、シリコーンによるその処理の前に、他の表面処理剤(surfacing agent)、特に、酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はそれらの混合物で処理されていてもよい。
【0178】
被覆無機UVフィルターは、無機UVフィルターを、上記の化合物のいずれか、並びにポリエチレン、金属アルコキシド(チタン又はアルミニウムアルコキシド)、金属酸化物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及び例えば、Cosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁に示されているものによる化学的、電子的、機械化学的、及び/又は機械的性質の1種又は複数の表面処理に供することによって調製されていてもよい。
【0179】
被覆無機UVフィルターは、以下であってもよい:
シリカで被覆された酸化チタン、例えば池田物産株式会社製の製品「Sunveil」、
シリカ及び酸化鉄で被覆された酸化チタン、例えば池田物産株式会社製の製品「Sunveil F」、
シリカ及びアルミナで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 500 SA」、Tioxide社製の製品「Tioveil」、及びRhodia社製の製品「Mirasun TiW 60」、
アルミナで被覆された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(B)」及び「Tipaque TTO-55(A)」、並びにKemira社製の「UVT 14/4」、
アルミナ及びステアリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 T、MT 100 TX、MT 100 Z若しくはMT-01」、Uniqema社製の製品「Solaveil CT-10 W」及び「Solaveil CT 100」、並びにMerck社製の製品「Eusolex T-AVO」、
アルミナ及びラウリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 S」、
酸化鉄及びステアリン酸鉄で被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 F」、
酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛で被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「BR351」、
シリカ及びアルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 600 SAS」、「Microtitanium Dioxide MT 500 SAS」、及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SAS」、
シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウムで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばチタン工業株式会社製の製品「STT-30-DS」、
シリカで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばKemira社製の製品「UV-Titan X 195」、
アルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(S)」若しくはKemira社製の製品「UV Titan M 262」、
トリエタノールアミンで被覆された酸化チタン、例えばチタン工業株式会社製の製品「STT-65-S」、
ステアリン酸で被覆された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(C)」、又は
ヘキサメタリン酸ナトリウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 150 W」。
【0180】
シリコーンで処理された他の酸化チタン顔料は、好ましくは、オクチルトリメチルシランで処理され、個々の粒子の平均粒径が25から40nmであるTiO2、例えばDegussa Silices社によって商標「T 805」で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が21nmであるTiO2、例えばCardre社によって商標「70250 Cardre UF TiO2Si3」で市販されているもの、及びポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2、例えばColor Techniques社によって商標「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」で市販されているものである。
【0181】
好ましくは、以下の被覆TiO2を被覆無機UVフィルターとして使用することができる:
ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばテイカ株式会社製の製品「MT-100 TV」、平均一次粒子直径15nm、
ジメチコン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば三好化成株式会社製の製品「SA-TTO-S4」、平均一次粒子直径15nm、
シリカ(及び)TiO2、例えばテイカ株式会社製の製品「MT-100 WP」、平均一次粒子直径15nm、
ジメチコン(及び)シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばテイカ株式会社製の製品「MT-Y02」及び「MT-Y-110 M3S」、平均一次粒子直径10nm、
ジメチコン(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば三好化成株式会社製の製品「SA-TTO-S3」、平均一次粒子直径15nm、
ジメチコン(及び)アルミナ(及び)TiO2、例えばSachtleben社製の製品「UV TITAN M170」、平均一次粒子直径15nm、並びに
シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)アルギン酸(及び)TiO2、例えばテイカ株式会社製の製品「MT-100 AQ」、平均一次粒子直径15nm。
【0182】
UVフィルタリング能力の観点から、少なくとも1種の有機UVフィルターで被覆されたTiO2がより好ましい。例えば、アボベンゾン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばテイカ株式会社製の製品「HXMT-100ZA」、平均一次粒子直径15nmを使用することができる。
【0183】
非被覆酸化チタン顔料は、例えば、テイカ株式会社によって商標「Microtitanium Dioxide MT500B」又は「Microtitanium Dioxide MT600B」で、Degussa社によって商標「P 25」で、Wacker社によって商標「Oxyde de titane transparent PW」で、三好化成株式会社によって商標「UFTR」で、Tomen社によって商標「ITS」で、及びTioxide社によって商標「Tioveil AQ」で市販されている。
【0184】
非被覆酸化亜鉛顔料は、例えば、以下である:
Sunsmart社によって商標「Z-cote」で市販されているもの、
Elementis社によって商標「Nanox」で市販されているもの、及び
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard WCD 2025」で市販されているもの。
【0185】
被覆酸化亜鉛顔料は、例えば、以下である:
Toshiba社によって商標「Oxide Zinc CS-5」で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたZnO)、
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard Zinc Oxide FN」で市販されている(Finsolv TN、安息香酸アルキル(C12~C15)中の40%分散体としての)もの、
大東化成工業株式会社によって商標「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたナノ酸化亜鉛を30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン中の分散体)、
ダイキン工業株式会社によって商標「NFD Ultrafine ZnO」で市販されているもの(シクロペンタシロキサン中の分散体としての、ペルフルオロアルキルホスフェート及びペルフルオロアルキルエチルベースのコポリマーで被覆されたZnO)、
信越化学工業株式会社によって商標「SPD-Z1」で市販されているもの(シクロジメチルシロキサン中に分散させた、シリコーングラフトアクリルポリマーで被覆されたZnO)、
ISP社によって商標「Escalol Z100」で市販されているもの(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコン混合物中に分散させたアルミナ処理ZnO)、
冨士色素株式会社によって商標「Fuji ZnO-SMS-10」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンで被覆されたZnO)、並びにElementis社によって商標「Nanox Gel TN」で市販されているもの(ヒドロキシステアリン酸重縮合物を含む安息香酸アルキル(C12~C15)中に55%で分散させたZnO)。
【0186】
非被覆酸化セリウム顔料は、例えば、Rhone-Poulenc社によって商標「Colloidal Cerium Oxide」で市販されている。
【0187】
非被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2002(FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」、及び「Nanogard WCD 2006(FE 45R)」で、又はMitsubishi社によって商標「TY-220」で市販されている。
【0188】
被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2008(FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009(FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」、及び「Nanogard FE 45 BL」で、又はBASF社によって商標「Oxyde de fer transparent」で市販されている。
【0189】
金属酸化物の混合物、特に、二酸化チタンと二酸化セリウムとの混合物、例えば池田物産株式会社によって商標「Sunveil A」で市販されているシリカで被覆された二酸化チタンとシリカで被覆された二酸化セリウムとの等質量混合物、更には二酸化チタンとアルミナ、シリカ及びシリコーンで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 261」、又は二酸化チタンとアルミナ、シリカ及びグリセロールで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 211」も挙げることができる。
【0190】
無機UVフィルターのUVフィルタリング効果を高めることができることから、被覆無機UVフィルターが好ましい。加えて、コーティングは、本発明による組成物中にUVフィルターを均一に又は均質に分散させるのに役立ちうる。
【0191】
有機UVフィルター
本発明による組成物は、少なくとも1種の有機UVフィルターを含んでもよい。2種以上の有機UVフィルターを使用する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0192】
本発明に使用される有機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。有機UVフィルターは、親水性及び/又は親油性であってよい。
【0193】
有機UVフィルターは、固体又は液体であってよい。「固体」及び「液体」という用語は、それぞれ、1atm下、25℃での固体及び液体を意味する。
【0194】
有機UVフィルターは、アントラニル酸化合物;ジベンゾイルメタン化合物;ケイ皮酸化合物;サリチル酸化合物;カンファー化合物;ベンゾフェノン化合物;β,β-ジフェニルアクリレート化合物;トリアジン化合物;ベンゾトリアゾール化合物;ベンザルマロネート化合物;ベンゾイミダゾール化合物;イミダゾリン化合物;ビス-ベンゾアゾリル化合物;p-アミノ安息香酸(PABA)化合物;メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物;ベンゾオキサゾール化合物;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレンに由来するダイマー;4,4-ジアリールブタジエン化合物;グアイアズレン及びその誘導体;ルチン及びその誘導体;並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0195】
有機UVフィルターの例としては、下記にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。
- アントラニル酸化合物:Haarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan MA」で市販されているアントラニル酸メンチル。
- ジベンゾイルメタン化合物:特にHoffmann-La Roche社によって商標「Parsol 1789」で市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン;及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
- ケイ皮酸化合物:特にHoffmann-La Roche社によって商標「Parsol MCX」で市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル;メトキシケイ皮酸イソプロピル;メトキシケイ皮酸イソプロポキシ;Haarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan E 1000」で市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル;シノキセート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート);メトキシケイ皮酸DEA;メチルケイ皮酸ジイソプロピル;及びジメトキシケイ皮酸エチルヘキサン酸グリセリル。
- サリチル酸化合物:Rona/EM Industries社によって商標「Eusolex HMS」で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル);Haarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan OS」で市販されているサリチル酸エチルヘキシル;サリチル酸グリコール;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;Scher社によって商標「Dipsal」で市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール;及びHaarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan TS」で市販されているサリチル酸TEA。
- カンファー化合物、特にベンジリデンカンファー誘導体:Chimex社によって商標「Mexoryl SD」で製造されている3-ベンジリデンカンファー;Merck社によって商標「Eusolex 6300」で市販されている4-メチルベンジリデンカンファー;Chimex社によって商標「Mexoryl SL」で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸;Chimex社によって商標「Mexoryl SO」で製造されているカンファーベンザルコニウムメトスルフェート;Chimex社によって商標「Mexoryl SX」で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸;及びChimex社によって商標「Mexoryl SW」で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー。
- ベンゾフェノン化合物:BASF社によって商標「Uvinul 400」で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);BASF社によって商標「Uvinul D50」で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);BASF社によって商標「Uvinul M40」で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;BASF社によって商標「Uvinul MS40」で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム);Norquay社によって商標「Helisorb 11」で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);American Cyanamid社によって商標「Spectra-Sorb UV-24」で市販されているベンゾフェノン-8;BASF社によって商標「Uvinul DS-49」で市販されているベンゾフェノン-9(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸二ナトリウム);ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(BASF社によるUVINUL A+)。
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物:特にBASF社によって商標「Uvinul N539」で市販されているオクトクリレン;及び特にBASF社によって商標「Uvinul N35」で市販されているエトクリレン。
- トリアジン化合物:Sigma 3V社によって商標「Uvasorb HEB」で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、CIBA GEIGY社によって商標「TINOSORB S」で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びBASF社によって商標「UVINUL T150」で市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール化合物、特にフェニルベンゾトリアゾール誘導体:分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ;並びにUSP 5240975に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物:ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えばHoffmann-LaRoche社によって商標「Parsol SLX」で市販されているポリシリコーン-15。
- ベンゾイミダゾール化合物、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体:特にMerck社によって商標「Eusolex 232」で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan AP」で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム。
- イミダゾリン化合物:エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート。
- ビス-ベンゾアゾリル化合物:EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載されている誘導体。
- パラ-アミノ安息香酸化合物:PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ジメチルPABAペンチル、特にISP社によって商標「Escalol 507」で市販されているジメチルPABAエチルヘキシル、グリセリルPABA、及びBASF社によって商標「Uvinul P25」で市販されているPEG-25 PABA。
- メチレンビス-(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えばFairmount Chemical社によって商標「Mixxim BB/200」で固体形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、BASF社によって商標「Tinosorb M」で、又はFairmount Chemical社によって商標「Mixxim BB/100」で水性分散体中の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、並びに米国特許第5,237,071号及び第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-19,726,184及びEP-893,119に記載されている誘導体、並びに
下記に表すような、Rhodia Chimie社によって商標「Silatrizole」で、又はChimex社によって商標「Mexoryl XL」で市販されているドロメトリゾールトリシロキサン。
【0196】
【0197】
- ベンゾオキサゾール化合物:Sigma 3V社によって商標Uvasorb K2Aで市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン:WO 93/04665に記載されているシリコーン。
- α-アルキルスチレンに由来するダイマー:DE-19855649に記載されているダイマー。
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物:1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0198】
有機UVフィルターは、以下からなる群から選択されることが好ましい:
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、4-メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリルオキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(ターフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート及びそれらの混合物。
【0199】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3から9、好ましくは3.5から8、より好ましくは4から7であってもよい。
【0200】
組成物のpHは、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0201】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用することができる。
【0202】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩(monohydrogenophosphate)、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0203】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0204】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体;塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0205】
有機アルカリ剤の例としては、アルカノールアミン、例えばモノ、ジ及びトリエタノールアミン、及びイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びその誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば下記の構造:
【0206】
【0207】
[式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されたプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す]
に記載されているものを挙げることができ、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0208】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0209】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用することができる。
【0210】
酸としては、化粧料において一般的に使用される任意の無機又は有機酸を挙げることができる。一価の(monovalent)酸及び/又は多価の酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0211】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0212】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用することができる。
【0213】
緩衝剤としては、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0214】
(任意選択の添加剤)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品において典型的に用いられる成分、具体的には、例えば染料、粉末、増粘剤、有機不揮発性溶媒、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0215】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の量で含んでもよい。
【0216】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることを意図したものであってもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への塗布を意図したものであってもよい。本明細書におけるケラチン物質は、ケラチンを主要構成要素として含有する材料を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が含まれる。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0217】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、特にUV光及び/又は空気中の汚染物質から皮膚を保護するための組成物であってもよい。
【0218】
本発明による組成物は、分散体、エマルション、ゲル、及びペースト等の任意の形態であってよい。本発明による組成物は、W/O、O/W、W/O/W及びO/W/O等のエマルション、好ましくはO/Wエマルションの形態であってもよい。
【0219】
一実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1種のガスを更に含み、泡の形態である。
【0220】
ガスのタイプは限定されない。したがって、単一のタイプのガスを使用することができる。例えば、酸素、窒素、二酸化炭素、炭化水素ガス、例えばLPGに由来するもの、及びジメチルエーテルガスを使用することができる。他方で、ガスの混合物をガスに使用することができる。したがって、酸素、窒素及び二酸化炭素の混合物を使用することができる。空気をガスとして使用することが好ましい場合がある。したがって、ガスは、空気を含む又は空気からなることが好ましい場合がある。
【0221】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須及び任意選択の成分を混合することによって調製することができる。
【0222】
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖、(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩、及び(d)少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体を混合して、DICゲル溶液を調製し、次いで、DICゲル溶液を(c)少なくとも1種の油と混合することが好ましい。
【0223】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。しかしながら、本発明による組成物中の界面活性剤の量は、限定的であることが好ましい。
【0224】
本発明による組成物は、任意選択で、少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で含んでもよい。
【0225】
本発明による組成物は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、本発明による組成物が、界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、4質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下の量で含むことを意味する。
【0226】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用することができる。したがって、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0227】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、皮膚等のケラチン基体のための美容方法であって、本発明による組成物を発泡させる工程と、泡をケラチン基体に塗布する工程とを含む、方法に関する。
【0228】
本明細書における美容方法は、皮膚等のケラチン基体の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容法を意味する。
【0229】
本発明はまた、安定な泡を調製するための、組成物における、(d)少なくとも1種の生理学的に許容される媒体中の(a)少なくとも1種のカチオン性多糖及び(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の使用であって、組成物が、(c)少なくとも1種の油を、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上の量で含む、使用に関する。
【0230】
本発明による組成物についての成分(a)から(d)に関する上記の説明は、上記の使用におけるそれらの成分に適用されうる。
【0231】
[発泡性製品]
本発明はまた、
本発明による組成物を含む少なくとも1つの容器と、
少なくとも1つのディスペンサーと
を含む発泡性製品であって、ディスペンサーが、組成物を泡の形態で吐出することが可能である、発泡性製品に関する。
【0232】
本発明による組成物は、化粧品業界において慣用されている容器、例えば、広口瓶、チューブ、ポンプディスペンサーボトル、フォーマー又はエアロゾル装置に包装することができる。
【0233】
容器の材料は、任意の従来の材料、例えば金属及び樹脂であってよい。材料は、容器が耐圧性であるように選択されることが好ましい場合がある。
【0234】
ディスペンサーの構造は、本発明による組成物を泡の形態で吐出することが可能である限り限定されない。
【0235】
ディスペンサーは、少なくとも1つのノズルと、容器からノズルへの本発明による組成物の流れを制御することができる少なくとも1つのバルブとを含んでもよい。バルブは、例えば、バルブを開放するボタン等を押すことによって開放することができる。バルブは、ノーマル位置で閉鎖され、例えば、バルブに連結されたボタン等を押すことによってディスペンサーを作動させたときに、開位置となることができることが好ましい。
【0236】
本発明による組成物は、エアロゾル装置に包装されることを意図している場合、1種又は複数の噴射剤ガスを含有することができる。噴射剤としては、任意の従来のものを使用することができる。噴射剤としては、液化ガス、例えばLPG及びジメチルエーテル、圧縮ガス、例えば窒素ガス及び二酸化炭素ガス、並びにそれらの混合物を挙げることができる。この実施形態では、本発明による発泡性製品によって調製された泡は、噴射剤に由来するガスの気泡を含む。
【0237】
液化ガスの量は、本発明による組成物及び液化ガスの総質量に対して、0.5~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~12質量%であってもよい。
【0238】
別の実施形態では、本発明による発泡性製品は、スクイズ可能な器壁又は組成物を容器からディスペンサーへと移送するためのポンプのいずれかを更に含んでもよい。ポンプは、容器及びディスペンサーに接続され、ポンプは、本発明による組成物を少なくとも1種のガスと混合して、泡を調製すること、及び泡をディスペンサーに運搬することが可能である。泡は、多孔性物質を含む材料、例えば焼結材料、プラスチック製若しくは金属製の濾過格子、又は類似の構造体に組成物を通過させることによって形成することができる。ポンプのタイプについては限定されない。例えば、手動で操作することができる機械式ポンプを使用することができる。この実施形態では、噴射剤は必要でない。空気をガスとして使用することが好ましい。
【実施例】
【0239】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0240】
(実施例1)
(調製)
実施例1による発泡性組成物を、表1に示す成分を混合することによって調製した。表1に示す成分の量についての数値は全て、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0241】
【0242】
最初に、ポリカチオンとしてのポリクオタニウム-67(PQ-67)0.53g及び水69.27gをビーカーに投入した。それらを70℃に加熱し、撹拌器により1時間混合して、溶液を調製した。次に、フィチン酸0.20gを溶液に添加して、DICゲル水溶液を調製した。
【0243】
次いで、ジメチコン(油)30gをDICゲル水溶液に添加し、ホモジナイザーにより6000rpmで20分間混合して、発泡性組成物を得た。
【0244】
(評価)
実施例1による発泡性組成物45g及び噴射剤としてのLPG(0.31MPa)5gを、ディスペンサーを備えたエアロゾルボトルに投入した。エアロゾルボトルをよく振盪した後に、ディスペンサーを作動させて、発泡性組成物を泡として吐出した。
【0245】
泡は、20分を超えて安定であった。
【0246】
(実施例2~4及び比較例1~2)
(調製)
実施例2~4及び比較例1~2による発泡性組成物を、表2に示す成分を混合することによって調製した。表2に示す成分の量についての数値は全て、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0247】
【0248】
(評価)
実施例2~4及び比較例1~2による発泡性組成物の各々45g並びに噴射剤としてのLPG(0.31MPa)5gを、ディスペンサーを備えたエアロゾルボトルに投入した。エアロゾルボトルをよく振盪した後に、ディスペンサーを作動させて、発泡性組成物を泡として吐出した。泡の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
安定:泡が1分を超えて維持された
不安定:泡が1分以内に破壊された
【0249】
評価の結果を表2に示す。
【0250】
DICゲルは、相当量の油を含む泡を安定化することができた(実施例2から4参照)のに対し、従来の界面活性剤は、相当量の油を含む泡を安定化することができなかった(比較例1及び2参照)ことが見出された。
【0251】
(実施例5)
(調製)
実施例5による発泡性組成物を、表3に示す成分を混合することによって調製した。表3に示す成分の量についての数値は全て、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0252】
【0253】
(評価)
実施例5による発泡性組成物45g及び噴射剤としてのLPG(0.31MPa)5gを、ディスペンサーを備えたエアロゾルボトルに投入した。エアロゾルボトルをよく振盪した後に、ディスペンサーを作動させて、発泡性組成物を泡として吐出した。
【0254】
泡についての官能試験を以下の通り実施した。
【0255】
毛髪見本の滑らかさを、5名のパネリストについて、下記に示す基準に従って評価し、平均した。結果を、表4中の「無処置の毛髪」の「シャンプーで洗浄する前」のセルに示す。
【0256】
実施例5による発泡性組成物によってこのようにして得られた泡を、上記の処置されていない毛髪見本に塗布した。処置された毛髪見本の滑らかさを、同じ5名のパネリストについて、下記に示す基準に従って評価し、平均した。結果を、表4中の「実施例5」の「シャンプーで洗浄する前」のセルに示す。
【0257】
従来のヘアトリートメント製品(L'Oreal Elseve Damage Care)を、上記の処置されていない毛髪見本に塗布した。処置された毛髪見本の滑らかさを、同じ5名のパネリストについて、下記に示す基準に従って評価し、平均した。結果を、表4中の「対照」の「シャンプーで洗浄する前」のセルに示す。
【0258】
基準
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:悪い
1:非常に悪い
【0259】
次に、上記の処置されていない毛髪見本をシャンプーし、次いで、洗浄された毛髪見本の滑らかさを同様に再評価した。結果を、表4中の「無処置の毛髪」の「シャンプーで洗浄した後」のセルに示す。
【0260】
実施例5による発泡性組成物によって得られた泡で処置された毛髪見本をシャンプーし、次いで、洗浄された毛髪見本の滑らかさを同様に再評価した。結果を、表4中の「実施例5」の「シャンプーで洗浄した後」のセルに示す。
【0261】
従来のヘアトリートメント製品(L'Oreal Elseve Damage Care)で処置された毛髪見本をシャンプーし、次いで、洗浄された毛髪の滑らかさを同様に再評価した。結果を、表4中の「対照」の「シャンプーで洗浄した後」のセルに示す。
【0262】
【0263】
表4は、本発明による泡が、毛髪等のケラチン繊維に滑らかさ等の美容効果をもたらすことができることを示す。
【0264】
表4はまた、本発明による泡が、ケラチン繊維に美容効果をもたらすことができ、かつ、ケラチン繊維を洗浄した後に美容効果を維持することができることを示す。他方で、表4は、従来の製品は、ケラチン繊維に美容効果をもたらすことができるが、ケラチン繊維を洗浄した後に美容効果が低減されることを示す。
【0265】
本発明による泡中のDICゲルは、油とDICゲルとの間の疎水性相互作用に起因して、油(コンディショニング成分)を毛髪上に維持することができると推定される。
【0266】
(実施例6~7及び比較例3~12)
(調製)
実施例6及び7による発泡性組成物を、実施例1について記載したのと同様に、表5に示す成分を混合することによって調製した。表5に示す成分の量についての数値は全て、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0267】
【0268】
(評価)
実施例6~7による発泡性組成物の各々45g及び噴射剤としてのLPG(0.31MPa)5gを、ディスペンサーを備えたエアロゾルボトルに投入した。エアロゾルボトルをよく振盪した後に、ディスペンサーを作動させて、発泡性組成物を泡として吐出した。泡の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
安定:泡が1分を超えて維持された
不安定:泡が1分以内に破壊された
【0269】
評価の結果を表5に示す。
【0270】
表5は、ポリクオタニウム-67又はポリクオタニウム-10を含むDICゲルが、相当量の油を含む泡を安定化することができた(実施例6及び7参照)ことを示す。したがって、カチオン性多糖の使用が、相当量の油を含む泡を安定化するために必要であることが理解できる。
【0271】
他方で、表5は、その他のカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-16、及びポリクオタニウム-70)の使用は、相当量の油を含む泡を安定化することができなかった(比較例3から6参照)ことを示す。これらのカチオン性ポリマーの可撓性の化学構造は、フィチン酸とのコアセルベートを容易に作製するが、コアセルベートは沈殿し、泡を安定化することができなかったと推定される。加えて、可撓性ポリマーは、ミクロゲルを作製することが困難である。
【0272】
また、表5は、カチオン性ポリマーのみの使用(フィチン酸等の架橋剤を一切用いない)は、安定な泡を形成することができない(比較例7から12参照)ことを示す。特に、実施例6及び7と、それぞれ比較例7及び8との比較に基づき、カチオン性多糖だけでなく、3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩もまた、安定な泡を提供するために必要であることが明らかである。