(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】高内油相エマルション組成物-ゲル
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221121BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20221121BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20221121BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/365
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/55
A61K8/89
A61Q1/02
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018161330
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】丸山 昌二
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113405(JP,A)
【文献】特開2006-273855(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012222771(DE,A1)
【文献】特開2010-285432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
O/Wエマルションの形態の組成物であって、
(a)少なくとも1種の
、カチオン性セルロースポリマーから選択されるカチオン性多糖と、
(b)
フィチン酸、クエン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の
、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及びこれらの混合物から選択される油と、
(d)水と、
を含み、
前記組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%であり、
前記組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%であり、
前記組成物中の前記(c)油の量が、前記組成物の総質量に対して、50質量%
から90質量%である組成物。
【請求項2】
前記(a)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、前記組成物の総質量に対して
、0.1質量%から15質量%
である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して
、0.01質量%から10質量%
である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(d)水の量が、前記組成物の総質量に対して、10質量%から50質量%未満
である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
化粧用組成物
である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物を含む、O/W/Oエマルションの形態の組成物。
【請求項10】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から
7のいずれか一項に記載のO/Wエマルションの形態の組成物、又は
請求項
9に記載のO/W/Oエマルションの形態の組成物を、
前記ケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の油及び動的イオン架橋(DIC)ゲルを含むO/Wエマルションの形態の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の油を含む内油相を含むエマルションを意味する、高内油相エマルション(HIOPE)は、既に公知である。
【0003】
しかし、内油相と典型的に水を含む外相との間の従来の低分子量界面活性剤によって形成された界面膜があまり強力でないため、従来の低分子量界面活性剤を用いて安定性HIOPEを調製することは困難である。
【0004】
その上、O/W/Oエマルションは、例えば、O/Wエマルションを、O/W/Oエマルションの外油相を構成することになる油と混合することによって調製することができる。しかし、従来の低分子量界面活性剤を有する従来のO/Wエマルションは、あまり堅牢ではない。したがって、O/W/O構造はあまり強力ではなく、そのため、O/W/Oエマルションの調製は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】仏国特許第1492597号
【文献】米国特許第4,131,576号
【文献】EP-A-0750899
【文献】EP-A-1069172
【文献】EP-A-0173109
【文献】USP 5240975
【文献】EP-669,323
【文献】米国特許第2,463,264号
【文献】米国特許第5,237,071号
【文献】米国特許第5,166,355号
【文献】GB-2,303,549
【文献】DE-197,26,184
【文献】EP-893,119
【文献】WO 93/04665
【文献】DE-19855649
【非特許文献】
【0006】
【文献】Walter Noll、「Chemistry and Technology of Silicones」(1968)、Academic Press
【文献】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【文献】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000、第33巻、第10号-3694~-3704
【文献】Cosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、多量の油を含むO/Wエマルションの形態の安定性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の油と、
(d)水と、
を含み、
組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である、O/Wエマルションの形態の組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択してもよい。
【0010】
(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有してもよい。
【0011】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0012】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってもよい。
【0013】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸及びこれらの塩から選択することができる。
【0014】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0015】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、アコニット酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトール五リン酸、トリポリリン酸塩、アデノシン三リン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0016】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%、好ましくは0.01質量%から10質量%、より好ましくは0.05質量%から5質量%であってもよい。
【0017】
(c)油は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0018】
本発明による組成物中の(d)の水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から50質量%未満、好ましくは15質量%から45質量%、より好ましくは20質量%から40質量%であってもよい。
【0019】
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含んでもよい。
【0020】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物であってもよい。
【0021】
本発明の別の目的は、O/W/Oエマルションの形態の組成物を容易に提供することである。この目的は、本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物によって達成することもできる。
【0022】
したがって、本発明はまた、本発明によるO/Wエマルションの形態の上記組成物を含むO/W/Oエマルションの形態の組成物に関する。
【0023】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物、又は
本発明によるO/W/Oエマルションの形態の組成物を、
ケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、多量の油を含むO/Wエマルションの形態の安定性組成物を提供することが可能であることを発見した。したがって、本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の油と、
(d)水と、
を含み、
組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0025】
本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物は、そのO/W微細構造を長期間、例えば1カ月以上維持することができるように安定である。これは、目に見える相分離なしで、その一様又は均一な態様によって視覚的に確認することができる。
【0026】
本発明による組成物は、ゲル、好ましくはヒドロゲルを調製することができる。ゲルは、動的イオン架橋されている。本発明による組成物によって調製された動的イオン架橋ゲルは、DICゲルと略される。
【0027】
DICゲルの動的イオン架橋は、壊れやすいが改質可能であるため、恒久的な共有結合とは異なる。動的イオン架橋は、例えば、切断等によって容易に破壊できるが、例えば、互いに接触させることによって容易に改質できる。例えば、ゲルを2つの断片に切断した場合、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン相互作用は破壊する。しかし、2つの断片が互いに接触すれば、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン結合を改質することができ、互いに接着させることができる。したがって、例えば、ゲルに亀裂が形成されたとしても、それは解消され得る。
【0028】
(a)カチオン性多糖及び(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩によって調製されたゲルは、膜を形成することができる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、油と水との間の界面に膜が存在し、内相が多量の油を含んでいても内油相を安定化すると仮定される。
【0029】
典型的な低分子量界面活性剤は、内相中の多量の油(例えば、50質量%超)を乳化できず、最終的には相分離が生じる。DICゲルによって形成された界面膜は、低分子量界面活性剤によって形成された薄膜より堅牢である。
【0030】
したがって、多量の油が内油相中に含まれていたとしても、内油相は維持され得、したがって本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物は安定性である。
【0031】
更に、本発明による組成物は、内油相中の油溶性美容有効成分の量を増やすことができるため、優れた美容効果を与えることができる。更に、O/Wエマルションの形態の組成物は、その外相が水を含むため、フレッシュな感触を与えることができる。
【0032】
また、興味深いことに、本発明によるO/Wエマルション(HIOPE)の形態の組成物は、新規のテクスチャ特性を有する弾性ゲルを形成することができる。これらのHIOPEゲルは、新規の種類の弾性カプセルであり、弾性は、DICゲル、例えばCMC等のアニオン性ポリマーの組成を制御することによって調整することができる。アニオン性ポリマーの添加は、DICゲルを強化することができる。
【0033】
また、例えば、本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物を、O/Wエマルションの内油相中の油と同じであっても異なっていてもよい油と混合することによって、O/W/Oエマルションを容易に調製することが可能である。
【0034】
本発明によるO/W/Oエマルションの形態の組成物は、O/W/Oエマルションの内油相中の油が、その外油相と統合しないため、そのO/W/O構造を維持することができるように安定性である。内油相は、DICゲルによって封入することができ、したがって、内油相中の油は、内油相から放出され得ない。
【0035】
界面活性剤は、粘着性のテクスチャ、皮膚への刺激、及び環境負荷等の幾つかの懸念があるため、本発明による組成物は、従来はO/Wエマルション又はO/W/Oエマルションを形成するために使用されていた界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。界面活性剤を一切含まなくても、本発明による組成物は、安定性のO/W又はO/W/Oエマルションを調製することができる。
【0036】
以下、本発明による組成物、プロセス等をより詳細に説明する。
【0037】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2つ以上の異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(a)カチオン性多糖を使用してもよく、又は異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
(a)カチオン性多糖は、正の電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/gから20meq/g、好ましくは0.05から15meq/g、より好ましくは0.1から10meq/gであってよい。
【0039】
(a)カチオン性多糖の分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更により好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0040】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0041】
(a)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。本明細書における(第一級)「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0042】
(a)カチオン性多糖は、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0043】
(a)カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0044】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい。カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0045】
(1)カチオン性セルロース誘導体、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ以上の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えば「JR」(JR400、JR125、JR30M)又は「LR」(LR400、LR30M)の名称でDow Chemical社により販売されているポリマー等。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されたエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0046】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば、第四級アンモニウムの少なくとも1種の水溶性モノマーでグラフト化された、例えば米国特許第4,131,576号に記載の、セルロースコポリマー及びセルロース誘導体等(例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウムから選択される少なくとも1つでグラフト化された、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロース等)。これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、「Celquat(登録商標)L200」及び「Celquat(登録商標)H100」の名称でAkzo Novel社により販売されている製品が挙げられる。
【0047】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基(例えば、少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリール基)を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基(例えば、少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリール基、又はこれらの混合物)で修飾されている四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましいことがある。第四級アンモニウム基によって保持されているアルキル基は、好ましくは8~30個の炭素原子、特に10~30個の炭素原子を含有しうる。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリル基を意味する。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む第四級アンモニウム基を少なくとも1つ含んでもよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例には、Dow Chemical社により販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M及びSoftcat SK-H、並びにCroda社により販売されている製品Crodacel QM、Crodacel QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が挙げられる。
【0048】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0049】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、(a)カチオン性多糖の半屈曲性又は比較的硬質のポリマー構造が、多量の油を含む安定性の内油相に貢献しうると仮定される。また、(a)カチオン性多糖の半屈曲性又は比較的硬質のポリマー構造は、ミクロゲルを作製する上で有利であることにも留意すべきである。
【0050】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であってもよい。
【0051】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0052】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.1質量%から15質量%、より好ましくは0.5質量%から10質量%であってもよい。
【0053】
(架橋剤)
本発明による組成物は、(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩を含む。2つ以上の異なるタイプの(b)架橋剤又はこれらの塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(b)架橋剤若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)架橋剤若しくはそれらの塩の組合せが使用されてもよい。
【0054】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤の酸基のうちの少なくとも1つは、塩の形態であってもよい。(b)架橋剤のすべての酸基が、塩の形態であってもよい。
【0055】
本明細書における「塩」という用語は、(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤に好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤と塩基とを反応させることにより得ることができる。塩としては、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0056】
(b)架橋剤は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸から、より好ましくは3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸から選択されることが好ましい。
【0057】
本明細書における「非ポリマー」という用語は、(b)架橋剤が、2つ以上のモノマーを重合することによって得られないことを意味する。したがって、非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸は、ポリカルボン酸等の2つ以上のモノマーを重合することによって得られる酸に相当しない。
【0058】
3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であることが好ましい。
【0059】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、親水性であっても水溶性であってもよい。
【0060】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0061】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0062】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、アコニット酸、フィチン酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトール五リン酸、トリポリリン酸塩、アデノシン三リン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、フィチン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましいことがある。
【0064】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、フィチン酸等の3つ以上の酸基を有する架橋剤による動的イオン架橋は、外水性相中の内油相周囲に堅牢な界面膜を作ることができ、これは、内油相の安定性に貢献すると考えられる。
【0065】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってもよい。
【0066】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0067】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から15質量%、好ましくは0.01質量%から10質量%、より好ましくは0.05質量%から5質量%であってもよい。
【0068】
(油)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(c)油が使用される場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
ここで、「油」とは、大気圧(1atm)下、室温(25℃)で、液体又はペースト(非固体)の形態である、脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧料に一般に使用されるものを、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は揮発性でも不揮発性でもよい。
【0070】
油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油、植物性油若しくは動物性油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はこれらの混合物であってもよい。
【0071】
油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪アルコールからなる群から選択することができる。
【0072】
植物油の例として、例えば、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、菜種油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0073】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0074】
合成油の例として、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0075】
エステル油は、好ましくは、飽和の又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸の液状エステル、及び飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0076】
好ましくは、モノアルコールのエステルの場合、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中で少なくとも1つは分枝状である。
【0077】
一酸のモノエステル、及びモノアルコールのモノエステルの中で、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル等のミリスチン酸アルキル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0078】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸、及びC1~C22アルコールのエステル、並びに、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸、及び非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールのエステルも使用できる。
【0079】
特に挙げることができるのは、セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0080】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22の脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用できる。「糖」という用語は、アルデヒド又はケトン官能基の有無にかかわらず、いくつかのアルコール官能基を含有し、少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素含有炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖であってよい。
【0081】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにこれらの誘導体、特にメチル誘導体等のアルキル誘導体、例えばメチルグルコースが含まれる。
【0082】
脂肪酸の糖エステルは、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22の脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から特に選択することができる。それらが不飽和である場合、これらの化合物は、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0083】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物からも選択することができる。
【0084】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば、特にオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってよい。
【0085】
より具体的には、モノエステル及びジエステル、特にスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、並びにオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0086】
挙げることができる一例は、Amerchol社によりGlucate(登録商標)DOの名称で販売されている製品であり、これはジオレイン酸メチルグルコースである。
【0087】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0088】
人工トリグリセリドの例としては、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0089】
シリコーン油の例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の直鎖状オルガノポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン;及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0090】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、特に液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0091】
これらのシリコーン油は、有機変性されていてもよい。本発明に従って使用することができる有機変性シリコーンは、上記に定義されるシリコーン油であり、これらの構造中に、炭素水素系基によって付着させた1つ又は複数の有機官能基を含むシリコーン油である。
【0092】
オルガノポリシロキサンは、Walter Nollの「Chemistry and Technology of Silicones」(1968)、Academic Pressに更に詳しく定義されている。オルガノポリシロキサンは、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0093】
これらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、沸点が60℃から260℃の間であるものから選択され、更に、より詳細には、以下のものから選択される:
(i)3個から7個、好ましくは4個から5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらには、例えば、特に、Union Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標)7207という名称で、又はRhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V2という名称で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標)7158という名称で、Rhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V5という名称で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社によりSilsoft 1217という名称で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物がある。次式のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのようなタイプのシクロコポリマー、例えばUnion Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109も挙げることもできる。
【0094】
【0095】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
(ii)2個から9個のケイ素原子を含有し、25℃で5×10-6m2/s以下の粘度を有する直鎖状揮発性ポリジアルキルシロキサン。例えば、特にToray Silicone社からSH 200の名称で販売されているデカメチルテトラシロキサンがある。この分類に属するシリコーンはまた、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsにおいて公表されている論文に記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃で測定する。
【0096】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンもまた使用することができる。より詳しくはこれらの不揮発性シリコーンはポリジアルキルシロキサンから選択され、その中では、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを主に挙げることができる。
【0097】
これらのポリジアルキルシロキサンの中では、非限定的に、以下の市販製品を挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ、Mirasil(登録商標)油、例えば70 047 V 500 000油;
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油;
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度が60 000mm2/sであるDC200;並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズのある種の油(SF 96、SF 18)。
【0098】
名称ジメチコノール(CTFA)で公知のジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0099】
アリール基を含有するシリコーンの中で、ポリジアリールシロキサン、特にポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0100】
フェニルシリコーン油は、以下の式:
【0101】
【0102】
[式中、
R1~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和で、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特に、メチル、エチル、プロピル、又はブチル基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立に、0~900(両端の値を含む)、好ましくは0~500(両端の値を含む)、より好ましくは0~100(両端の値を含む)の整数であり、
ただし、n+m+qの合計は0以外である]
のフェニルシリコーンから選択できる。
【0103】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品が含まれる:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製のDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluidの油、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
- General Electric社製のSFシリーズのある種の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0104】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上式中、R1~R10はメチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0105】
有機変性液状シリコーンは、特に、ポリエチレンオキシ基及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有していてもよい。そのため、Shin-Etsu社によって提案されているシリコーンKF-6017、及びUnion Carbide社製のSilwet(登録商標)L722油及びL77油を挙げることができる。
【0106】
炭化水素油は、以下から選択できる:
- 直鎖状又は分枝状の、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカン、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、液状ワセリン、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0107】
炭化水素油の好ましい例としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0108】
脂肪アルコールにおける「脂肪」という用語は、比較的多数の炭素原子が含まれるものを意味する。したがって、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールは、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和又は不飽和であってよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0109】
脂肪アルコールは、構造R-OH[式中、Rは、4から40個の炭素原子、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは12から20個の炭素原子を含有する飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される]を有してもよい。少なくとも一実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択され得る。Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されていてもいなくてもよい。
【0110】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0111】
脂肪アルコールは、飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0112】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、更に好ましくは、直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0113】
ここで、用語「飽和脂肪アルコール」とは、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールは、任意の直鎖状又は分岐状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分岐状の飽和C6~C30脂肪アルコールのうち、直鎖状又は分岐状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用され得る。任意の直鎖状又は分岐状の飽和C16~C20脂肪アルコールが、より好ましくは使用され得る。分岐状C16~C20脂肪アルコールが、より一層好ましくは使用され得る。
【0114】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えば、セテアリルアルコール)及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0115】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物から選択される。
【0116】
(c)油は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、及びこれらの混合物から選択されることが好ましいことがある。
【0117】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0118】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。
【0119】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して50質量%から90質量%、好ましくは60質量%から85質量%、より好ましくは70質量%から80質量%であってもよい。
【0120】
(水)
本発明による組成物は、(d)水を含む。
【0121】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってよい。
【0122】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%未満、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってよい。
【0123】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から50質量%未満、好ましくは15質量%から45質量%、より好ましくは20質量%から40質量%であってもよい。
【0124】
(生理学的に許容される揮発性媒体)
本発明による組成物は、水以外の少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体を含んでもよい。
【0125】
「生理学的に許容される」揮発性媒体という用語は、本発明による組成物をケラチン物質に塗布するのに特に好適である揮発性媒体を示すことが意図される。
【0126】
「揮発性」という用語は、(d)生理学的に許容される媒体が、標準大気圧、例えば1atm及び室温、例えば25℃で蒸発できることを意味する。
【0127】
生理学的に許容される媒体は、一般的に、本発明による組成物が塗布される支持体の性質、更には本発明による組成物が包装される形態に適合される。
【0128】
生理学的に許容される揮発性媒体は、少なくとも1種の親水性有機溶媒を含んでもよい。
【0129】
親水性有機溶媒として、例えば、エタノール又はイソプロパノール等、2~6個の炭素原子を含むモノアルコール;グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコール等、特に2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、優先的には2~8個の炭素原子を含むポリオール;モノ、ジ又はトリプロピレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル、モノ、ジ又はトリエチレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル等、(特に3~16個の炭素原子を含む)グリコールエーテル、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0130】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0131】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体の量は、組成物の総質量に対して30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下でありうる。
【0132】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から30質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から10質量%であってもよい。
【0133】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含んでもよい。2つ以上の異なるタイプの(e)アニオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(e)アニオン性ポリマー、又は異なるタイプの(e)アニオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0134】
アニオン性ポリマーは、負の電荷密度を有する。アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/gから20meq/g、好ましくは1から15meq/g、より好ましくは4から10meq/gであってよく、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1から3.0、好ましくは0.2から2.7、より好ましくは0.3から2.5であってよい。
【0135】
アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは100,000以上、更により好ましくは1,000,000以上であることが好ましいことがある。
【0136】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基、及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してもよい。
【0137】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0138】
アニオン性ポリマーは、天然及び合成のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0139】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい。
【0140】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよいアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa")から選択されるモノマー(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/或いはα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンと反応させることにより得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)との共重合によって得ることができる。
【0141】
したがって、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路によって、すなわち、
- モノマー(a')及び(c)、若しくは(a')、(b)及び(c)、若しくは(a")及び(c)、若しくは(a")、(b)及び(c)の共重合、又は
- モノマー(a')、若しくはモノマー(a')及び(b)、若しくは(a")及び(b)から形成されたコポリマーの、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンによる修飾(特に、エステル化若しくはアミド化)のいずれかによって得ることができる。
【0142】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000、第33巻、第10号-3694~-3704」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されたものを挙げることができる。
【0143】
モノマー(a')の構成要素となるα,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、特にアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0144】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含むことができる。好ましいモノマーは、単独重合したときに水不溶性ポリマーを与えるものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸C1~C4アルキル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特定して好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用することができる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性を持つ唯一の基であるものである。しかし、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを任意選択で使用することができる。
【0145】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンと反応させることによって得られる。
【0146】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪族アミンは周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般的に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般的に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールから構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分の構成要素となる。
【0147】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6から30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基及び8から30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1から4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1から150の範囲の平均数であり、mは、およそ0から50の範囲の平均数であり、ただし、nは、少なくともmと同等である)
を有する化合物である。
【0148】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12から26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1から25である。
【0149】
好ましい第一級及び第二級脂肪族アミンは、6から30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0150】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、非常に多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む任意の化合物を使用することができる。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0151】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0152】
本発明の特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物とモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0153】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0154】
アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー(例えば、セルロースガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチン、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、無水マレイン酸(コ)ポリマー、並びにこれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0155】
無水マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとを含んでもよい。
【0156】
したがって、「無水マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2から20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、無水マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0157】
1つ又は複数の無水マレイン酸単位の共重合によって得られるコポリマーを使用することが好ましい場合があり、その無水マレイン酸単位は、加水分解形態、より好ましくはアルカリ塩の形態、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩の形態である。
【0158】
本発明の有利な態様では、無水マレイン酸コポリマーは、無水マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってよい。
【0159】
無水マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってよい。
【0160】
無水マレイン酸コポリマーは、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/無水マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0161】
好ましくは、50/50比のスチレンと無水マレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0162】
例えば、Cray Valley社によって参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマー又はCray Valley社によって参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0163】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0164】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは15質量%以下でありうる。
【0165】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から20質量%、好ましくは0.01質量%から15質量%、より好ましくは0.1質量%から15質量%であってよい。
【0166】
(美容有効成分)
本発明による組成物は、少なくとも1種の美容有効成分を含んでもよい。美容有効成分には制限がない。2種以上の美容有効成分を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの美容有効成分、又は異なるタイプの美容有効成分の組合せを使用することができる。
【0167】
使用しようとする美容有効成分の中でも、UV遮蔽剤、酸化防止剤、洗浄剤、遊離基捕捉剤、保湿剤、美白剤、脂肪調節剤、抗アクネ剤、抗フケ剤、抗老化剤、柔軟剤、抗皺剤、角質溶解剤、抗炎症剤、フレッシュナー、ヒーリング剤、血管保護剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、デオドラント、皮膚コンディショナー、麻酔剤、免疫調節剤、栄養剤、及び皮脂吸収剤又は水分吸収剤を挙げることができる。
【0168】
(b)架橋剤は、美容有効成分として機能できることが好ましい。(b)架橋剤が美容活性剤として機能しうる場合、本発明による組成物は、美容活性剤を含む必要がない場合がある。
【0169】
美容有効成分は、油溶性であることが好ましい場合がある。
【0170】
本発明による組成物は、美容有効成分を、組成物の総質量に対して0.01質量%から25質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%、更により好ましくは2質量%から10質量%の量で含んでもよい。
【0171】
UV遮蔽剤
本発明の好ましい実施形態によれば、美容有効成分は、UV遮蔽剤から選択することができる。
【0172】
UV遮蔽剤のタイプは限定されない。2つ以上のタイプのUV遮蔽剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのUV遮蔽剤、又は異なるタイプのUV遮蔽剤の組合せを使用することができる。UV遮蔽剤は、無機UV遮蔽剤、有機UV遮蔽剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0173】
無機UV遮蔽剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の無機UV遮蔽剤を含んでもよい。2種以上の無機UV遮蔽剤を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0174】
本発明に使用される無機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。無機UV遮蔽剤は、親水性及び/又は親油性であってもよい。無機UV遮蔽剤は、好ましくは、化粧品において一般に使用される水及びエタノール等の溶媒に不溶性である。
【0175】
無機UV遮蔽剤は、その平均(一次)粒径が1nm~50nm、好ましくは5nm~40nm、より好ましくは10nm~30nmの範囲をとるような微粒子形態であることが好ましい。本明細書における平均(一次)粒子サイズ又は平均(一次)粒径は、算術平均直径である。
【0176】
無機UV遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆されていても被覆されていなくてもよい金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0177】
好ましくは、無機UV遮蔽剤は、金属酸化物で形成された顔料(平均一次粒径:一般的に5nmから50nm、好ましくは10nmから50nm)、例えば、酸化チタン(非晶質又はルチル及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された顔料等から選択することができ、これらは全て、それ自体が周知のUV光保護剤である。好ましくは、無機UV遮蔽剤は、酸化チタン、酸化亜鉛から選択してよく、より好ましくは酸化チタンである。
【0178】
無機UV遮蔽剤は、被覆されていてもよく、又は被覆されていなくてもよい。無機UV遮蔽剤は、少なくとも1つのコーティングを有していてもよい。コーティングは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコーン、シラン、脂肪酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、鉄塩又はアルミニウム塩等)、脂肪アルコール、レシチン、アミノ酸、多糖、タンパク質、アルカノールアミン、ビーズワックス等のワックス、(メタ)アクリルポリマー、有機UV遮蔽剤、及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0179】
コーティングが少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含むことが好ましい。コーティング中の有機UV遮蔽剤として、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)等のジベンゾイルメタン誘導体及びBASF社から「TINOSORB M」として市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェノール](メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)が好ましいことがある。
【0180】
公知のように、コーティング中のシリコーンは、様々な分子量の直鎖状又は環状及び分枝状又は架橋した構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであってよく、これは好適な官能性シランの重合及び/又は重縮合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに接合(シロキサン結合)され、任意選択で置換された炭化水素基が炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接接合されている、主要繰り返し単位から本質的に構成される。
【0181】
用語「シリコーン」は、その調製に必要なシラン、特にアルキルシランも包含する。
【0182】
コーティングのために使用されるシリコーンは、好ましくは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択することができる。更により好ましくは、シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される。
【0183】
当然ながら、金属酸化物で作製された無機UV遮蔽剤は、シリコーンでのその処理の前に、他の表面処理剤、具体的には、酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はこれらの混合物で処理されてもよい。
【0184】
被覆無機UV遮蔽剤は、無機UV遮蔽剤を、上記の化合物のいずれか、並びにポリエチレン、金属アルコキシド(チタン又はアルミニウムアルコキシド)、金属酸化物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及び例えばCosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁に示されたものによる化学的、電子的、機械化学的、及び/又は機械的性質の1種又は複数の表面処理に供することによって調製されていてもよい。
【0185】
被覆無機UV遮蔽剤は、以下:
シリカで被覆された酸化チタン、例えばIkeda社製の製品「Sunveil」、
シリカ及び酸化鉄で被覆された酸化チタン、例えばIkeda社製の製品「Sunveil F」、
シリカ及びアルミナで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 500 SA」、Tioxide社製の製品「Tioveil」、及びRhodia社製の製品「Mirasun TiW 60」、
アルミナで被覆された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(B)」及び「Tipaque TTO-55(A)」、並びにKemira社製の「UVT 14/4」、
アルミナ及びステアリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 T、MT 100 TX、MT 100 Z若しくはMT-01」、Uniqema社製の製品「Solaveil CT-10 W」及び「Solaveil CT 100」、並びにMerck社製の製品「Eusolex T-AVO」、
アルミナ及びラウリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 S」、
酸化鉄及びステアリン酸鉄で被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 F」、
酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛で被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「BR351」、
シリカ及びアルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 600 SAS」、「Microtitanium Dioxide MT 500 SAS」、及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SAS」、
シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウムで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばTitan Kogyo社製の製品「STT-30-DS」、
シリカで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばKemira社製の製品「UV-Titan X 195」、
アルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(S)」若しくはKemira社製の製品「UV Titan M 262」、
トリエタノールアミンで被覆された酸化チタン、例えばTitan Kogyo社製の製品「STT-65-S」、
ステアリン酸で被覆された酸化チタン、例えばIshihara社製の製品「Tipaque TTO-55(C)」、又は
ヘキサメタリン酸ナトリウムで被覆された酸化チタン、例えばTayca社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 150 W」
であってもよい。
【0186】
シリコーンで処理された他の酸化チタン顔料は、好ましくは、オクチルトリメチルシランで処理され、個々の粒子の平均粒径が25から40nmであるTiO2、例えばDegussa Silices社によって商標「T 805」で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が21nmであるTiO2、例えばCardre社によって商標「70250 Cardre UF TiO2Si3」で市販されているもの、及びポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2、例えばColor Techniques社によって商標「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」で市販されているものである。
【0187】
好ましくは、以下の被覆TiO2を被覆無機UV遮蔽剤として使用することができる:
平均一次粒子直径15nmの、ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 TV」、
平均一次粒子直径15nmの、ジメチコン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばMiyoshi Kasei社製の製品「SA-TTO-S4」、
平均一次粒子直径15nmの、シリカ(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 WP」、
平均一次粒子直径10nmの、ジメチコン(及び)シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-Y02」及び「MT-Y-110 M3S」、
平均一次粒子直径15nmの、ジメチコン(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばMiyoshi Kasei社製の製品「SA-TTO-S3」、
平均一次粒子直径15nmの、ジメチコン(及び)アルミナ(及び)TiO2、例えばSachtleben社製の製品「UV TITAN M170」、並びに
平均一次粒子直径15nmの、シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)アルギン酸(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「MT-100 AQ」。
【0188】
UV遮蔽能の観点から、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤で被覆されたTiO2が、より好ましい。例えば、平均一次粒子直径15nmの、アボベンゾン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えばTayca社製の製品「HXMT-100ZA」を使用することができる。
【0189】
非被覆酸化チタン顔料は、例えば、Tayca社によって商標「Microtitanium Dioxide MT500B」又は「Microtitanium Dioxide MT600B」で、Degussa社によって商標「P 25」で、Wacker社によって商標「Oxyde de titane transparent PW」で、Miyoshi Kasei社によって商標「UFTR」で、Tomen社によって商標「ITS」で、及びTioxide社によって商標「Tioveil AQ」で市販されている。
【0190】
非被覆酸化亜鉛顔料としては、例えば、
Sunsmart社により商標「Z-cote」で市販されているもの、
Elementis社により商標「Nanox」で市販されているもの;及び
Nanophase Technologies社により商標「Nanogard WCD 2025」で市販されているものがある。
【0191】
被覆酸化亜鉛としては、例えば、
Toshiba社により商標「Oxide Zinc CS-5」で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンで被覆されているZnO)、
Nanophase Technologies社により商標「Nanogard Zinc Oxide FN」で市販されているもの[Finsolv TN、安息香酸アルキル(C12~C15)中の40%分散体としてのもの]、
Daito社によって商標「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたナノ酸化亜鉛を30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン分散体)、
Daikin社によって商標「NFD Ultrafine ZnO」で市販されているもの(シクロペンタシロキサン分散体としての、ペルフルオロアルキルホスフェート及びペルフルオロアルキルエチルベースのコポリマーで被覆されたZnO)、
Shin-Etsu社によって商標「SPD-Z1」で市販されているもの(シクロジメチルシロキサン中に分散させた、シリコーングラフトアクリルポリマーで被覆されたZnO)、
ISP社によって商標「Escalol Z100」で市販されているもの(エチルヘキシルメトキシシンナメート/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコン混合物中に分散させたアルミナ処理ZnO)、
Fuji Pigment社によって商標「Fuji ZnO-SMS-10」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンで被覆されたZnO)、並びにElementis社によって商標「Nanox Gel TN」で市販されているもの[ヒドロキシステアリン酸重縮合物を含む安息香酸アルキル(C12~C15)中に55%で分散させたZnO]がある。
【0192】
非被覆酸化セリウム顔料は、例えば、Rhone-Poulenc社によって商標「Colloidal Cerium Oxide」で市販されている。
【0193】
非被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2002(FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」及び「Nanogard WCD 2006(FE 45R)」で、又はMitsubishi社によって商標「TY-220」で市販されている。
【0194】
被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2008(FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009(FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」及び「Nanogard FE 45 BL」で、又はBASF社によって商標「Oxyde de fer transparent」で市販されている。
【0195】
金属酸化物の混合物、具体的には二酸化チタンと二酸化セリウムとの混合物、例えばIkeda社によって商標「Sunveil A」で市販されているシリカで被覆された二酸化チタンとシリカで被覆された二酸化セリウムとの等質量混合物、更には二酸化チタンと、アルミナ、シリカ及びシリコーンで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 261」、又は二酸化チタンと、アルミナ、シリカ及びグリセロールで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 211」も挙げることができる。
【0196】
無機UV遮蔽剤のUV遮蔽効果を高めることができることから、被覆無機UV遮蔽剤が好ましい。加えて、コーティングは、本発明による組成物中にUV遮蔽剤を均一に又は均質に分散させるのに役立ちうる。
【0197】
有機UV遮蔽剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含んでもよい。2種以上の無機UV遮蔽剤を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。
【0198】
本発明に使用される有機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。有機UV遮蔽剤は、親水性及び/又は親油性であってもよい。
【0199】
有機UV遮蔽剤は、固体又は液体であってよい。用語「固体」及び「液体」は、それぞれ、1気圧下の25℃で固体及び液体を意味する。
【0200】
有機UV遮蔽剤は、アントラニル酸化合物;ジベンゾイルメタン化合物;ケイ皮酸化合物;サリチル酸化合物;カンファー化合物;ベンゾフェノン化合物;β,β-ジフェニルアクリレート化合物;トリアジン化合物;ベンゾトリアゾール化合物;ベンザルマロネート化合物;ベンゾイミダゾール化合物;イミダゾリン化合物;ビス-ベンゾアゾリル化合物;p-アミノ安息香酸(PABA)化合物;メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物;ベンゾオキサゾール化合物;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレンに由来するダイマー;4,4-ジアリールブタジエン化合物;グアイアズレン及びその誘導体;ルチン及びその誘導体;並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0201】
有機UV遮蔽剤の例としては、下記にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0202】
- アントラニル化合物: Haarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan MA」で市販されているアントラニル酸メンチル。
- ジベンゾイルメタン化合物: 具体的には商標「Parsol 1789」でHoffmann-La Roche社より市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
- ケイ皮化合物: 商標「Parsol MCX」でHoffmann-La Roche社より市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソプロポキシ;商標「Neo Heliopan E 1000」でHaarmann and Reimer社より市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル;シノキセート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート);メトキシケイ皮酸DEA;メチルケイ皮酸ジイソプロピル;及びグリセリルエチルヘキサノエートジメトキシシンナメート。
- サリチル酸化合物: Rona/EM Industries社により商標「Eusolex HMS」で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル);Haarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan OS」で市販されているサリチル酸エチルヘキシル;サリチル酸グリコール;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;Scher社により商標「Dipsal」で市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール;及びHaarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan TS」で市販されているサリチル酸TEA。
- カンファー化合物、特にベンジリデンカンファー誘導体: Chimex社により商標「Mexoryl SD」で製造されている3-ベンジリデンカンファー;Merck社により「Eusolex 6300」の商標で市販されている4-メチルベンジリデンカンファー;Chimex社により「Mexoryl SL」の商標で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸;Chimex社により「Mexoryl SO」の商標で製造されているメト硫酸カンファーベンザルコニウム;Chimex社により「Mexoryl SX」の商標で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸;及びChimex社により「Mexoryl SW」の商標で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー。
- ベンゾフェノン化合物: BASF社により商標「Uvinul 400」で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);BASF社により商標「Uvinul D50」で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);BASF社により商標「Uvinul M40」で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;BASF社により商標「Uvinul MS40」で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ナトリウムヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホネート);Norquay社により商標「Helisorb 11」で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);American Cyanamid社により商標「Spectra-Sorb UV-24」で市販されているベンゾフェノン-8;BASF社により商標「Uvinul DS-49」で市販されているベンゾフェノン-9(二ナトリウムジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホネート);ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(BASF社によるUVINUL A+)。
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物: 特にBASF社により商標「Uvinul N539」で市販されているオクトクリレン;及び特にBASF社により商標「Uvinul N35」で市販されているエトクリレン。
- トリアジン化合物: Sigma 3V社により商標「Uvasorb HEB」で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン;2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、CIBA GEIGY社により商標<<TINOSORB S>>で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びBASF社により商標<<UVINUL T150>>で市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール誘導体、特にフェニルベンゾトリアゾール誘導体: 分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ、及びUSP 5240975に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物: 4'-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えば、Hoffmann-LaRoche社によって「Parsol SLX」の商標で市販されているポリシリコーン-15。
- ベンゾイミダゾール化合物、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体: 特にMerck社により「Eusolex 232」の商標で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimer社により「Neo Heliopan AP」の商標で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム。
- イミダゾリン化合物: エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート。
- ビス-ベンゾアゾリル化合物: EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載されているような誘導体。
- パラアミノ安息香酸化合物: PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ペンチルジメチルPABA、特にISP社により「Escalol 507」の商標で市販されているエチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、及びBASF社により「Uvinul P25」の商標で市販されているPEG-25 PABA。
- メチレンビス-(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えばFairmount Chemical社により「Mixxim BB/200」の商標で、固体形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、BASF社により「Tinosorb M」の商標で、又はFairmount Chemical社により「MixximBB/100」の商標で、水性分散体の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、及び米国特許第5,237,071号、同第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-197,26,184及びEP-893,119に記載されている誘導体、並びに
Rhodia Chimie社により「Silatrizole」の商標で、又はL'Oreal社により「Mexoryl XL」の商標で市販されている、下記に示すようなドロメトリゾールトリシロキサン。
【0203】
【0204】
- ベンゾオキサゾール化合物: Sigma 3V社によりUvasorb K2Aの商標で市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン: WO 93/04665に記載のシリコーン。
- α-アルキルスチレン由来ダイマー: DE-19855649に記載のダイマー。
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物: 1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0205】
有機UV遮蔽剤は、以下からなる群から選択されることが好ましい:
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、4-メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリルオキシ]ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(ターフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンジルコニウムメトスルフェート及びそれらの混合物。
【0206】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3から9、好ましくは3.5から8、より好ましくは4から7であってよい。
【0207】
組成物のpHは、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0208】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用することができる。
【0209】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩(monohydrogenophosphate)、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0210】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0211】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びそれらの誘導体;ジアミン及びそれらの誘導体;ポリアミン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸とそれらの誘導体とのオリゴマー;塩基性アミノ酸とそれらの誘導体とのポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0212】
有機アルカリ剤の例として、モノ、ジ及びトリエタノールアミン並びにイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;リシン、オルニチン又はアルギニン等の塩基性アミノ酸;並びに下記の構造:
【0213】
【0214】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基により任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を表す)
に記載されているもの等のジアミン(これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体により例示することができる)を挙げることができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0215】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0216】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用することができる。
【0217】
酸としては、化粧料において一般に使用される任意の無機又は有機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0218】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0219】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一タイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用することができる。
【0220】
緩衝剤としては、酢酸緩衝剤(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝剤(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝剤(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝剤[例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、Hepes緩衝剤[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]を挙げることができる。
【0221】
(任意選択の添加剤)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて化粧品に典型的に用いられる成分、具体的には、例えば染料、粉末、増粘剤、有機不揮発性溶媒、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0222】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の量で含んでもよい。
【0223】
[組成物(O/W)]
本発明による組成物は、O/Wエマルションの形態にある。
【0224】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須及び任意選択の成分を混合することによって調製することができる。
【0225】
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖、(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩、及び(d)水を混合してDICゲル溶液を調製し、次いで、DICゲル溶液を(c)少なくとも1種の油と混合することが好ましい。
【0226】
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用することを意図したものであってもよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書において、ケラチンを主要構成要素として含む材料を意味し、その例として、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等を含む。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用することが好ましい。
【0227】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、特にUV光及び/又は空気中の汚染物質から皮膚を保護するための組成物であってもよい。
【0228】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。しかし、本発明による組成物中の界面活性剤の量は、限定されることが好ましい。
【0229】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で、任意選択で含んでもよい。
【0230】
本発明による組成物は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、本発明による組成物が、界面活性剤を全く含まない又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含むことを意味する。
【0231】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。このため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0232】
[組成物(O/W/O)]
本発明はまた、O/W/Oエマルションの形態の組成物に関する。
【0233】
本発明によるO/Wエマルションの形態の上記組成物を、O/Wエマルションの内油相中の油と同じであっても異なっていてもよい油と混合することによって、本発明によるO/W/Oエマルションの形態の組成物を調製することができる。混合する油は、O/W/Oエマルションの外油相を構成することになる。
【0234】
O/Wエマルションの内相を構成することになる、本発明によるO/Wエマルションの形態の上記組成物の(c)油についての上記説明は、O/Wエマルションの内油相中の油にも適用することができる。
【0235】
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用することを意図したものであってもよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書において、ケラチンを主要構成要素として含む材料を意味し、その例として、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等を含む。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用することが好ましい。
【0236】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、特にUV光及び/又は空気中の汚染物質から皮膚を保護するための組成物であってもよい。
【0237】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。しかし、本発明による組成物中の界面活性剤の量は、限定されることが好ましい。
【0238】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下の量で、任意選択で含んでもよい。
【0239】
本発明による組成物は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、本発明による組成物が、界面活性剤を全く含まない又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含むことを意味する。
【0240】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。このため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0241】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明によるO/Wエマルションの形態の組成物、又は
本発明によるO/W/Oエマルションの形態の組成物を、
ケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法に関する。
【0242】
本明細書における美容方法とは、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0243】
本発明はまた、安定性のO/Wエマルションを調製するための、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、(b)3つ以上の酸基を有する少なくとも1種の架橋剤又はその塩との、(d)水中での使用に関し、ここで組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0244】
本発明による組成物の成分(a)~(d)に関する上記説明は、上記使用において適用することができる。
【実施例】
【0245】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明することにする。しかし、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0246】
[実施例1~8及び比較例1~3]
(実施例1)
3つの成分(PQ-67、セルロースガム及びフィチン酸)で構成されるDICゲルによって調製されたHIOPE
(調製)
0.70gのポリクオタニウム-67及び0.11gのセルロースガムを38.45gの水に溶解して水性混合物を得、0.09gの水酸化ナトリウム及び0.50gのフェノキシエタノールを該混合物に添加した。次に、0.15gの50質量%のフィチン酸水溶液を上記混合物に添加して、DICゲル溶液を調製した。NaOHでpHを5.5に調整した。このDICゲルに、60gの鉱油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0247】
実施例1によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0248】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0249】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0250】
評価の結果を表1に示す。
【0251】
(実施例2~7)
2つの成分(PQ-67及びフィチン酸/クエン酸)で構成されるDICゲルによって調製されたHIOPE
(調製)
0.70gのポリクオタニウム-67を35.56gの水に溶解して水性混合物を得、0.09gの水酸化ナトリウム及び0.50gのフェノキシエタノールを該混合物に添加した。次に、0.15gの50質量%のフィチン酸水溶液又はクエン酸水溶液を上記混合物に添加して、DICゲル溶液を調製した。NaOHでpHを5.5に調整した。このDICゲルに、表1の各実施例2~6に示す特定量の特定の油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0252】
実施例2~7によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0253】
(評価)
各エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。各エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0254】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0255】
評価の結果を表1に示す。
【0256】
(実施例8)
2つの成分(PQ-10及びフィチン酸)で構成されるDICゲルによって調製されたHIOPE
(調製)
0.70gのポリクオタニウム-10を35.56gの水に溶解して水性混合物を得、0.09gの水酸化ナトリウム及び0.50gのフェノキシエタノールを該混合物に添加した。次に、0.15gの50質量%のフィチン酸水溶液を上記混合物に添加して、DICゲル溶液を調製した。NaOHでpHを5.5に調整した。このDICゲルに、51gの鉱油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0257】
実施例8によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0258】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0259】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0260】
評価の結果を表1に示す。
【0261】
(比較例1)
PQ-67のみ(フィチン酸なし)を使用した乳化
(調製)
0.70gのポリクオタニウム-10を47.8gの水に溶解し、0.50gのフェノキシエタノールを添加して水性混合物得た。次に、51gのジメチコン油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0262】
比較例1によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0263】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0264】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0265】
評価の結果を表1に示す。
【0266】
実際、比較例1によるエマルションは、調製から1日後、室温で油相分離が生じた。
【0267】
(比較例2)
従来の乳化剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を使用した乳化
(調製)
0.94gのラウレス硫酸ナトリウムを67.56gの水に溶解し、0.50gのフェノキシエタノールを添加して水性混合物得た。次に、51gのジメチコン油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0268】
比較例2によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0269】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0270】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0271】
評価の結果を表1に示す。
【0272】
実際、比較例2によるエマルションは、調製から1日後、室温で油相分離が生じた。
【0273】
(比較例3)
従来の乳化剤(ポリソルベート60)を使用した乳化
(調製)
1.05gのポリソルベート60を38.45gの水に溶解し、0.50gのフェノキシエタノールを添加して水性混合物得た。次に、60gの鉱油を添加し、乳化させた。ホモジナイザーを使用して調製を実施した。一様なエマルションを得た。
【0274】
比較例3によるエマルションの配合を表1に示す。表1に示す成分の量の数値は全て、活性原料として「質量%」に基づく。
【0275】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0276】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0277】
評価の結果を表1に示す。
【0278】
実際、比較例3によるエマルションは、調製から1日後、室温で油相分離が生じた。
【0279】
【0280】
表1は、HIOPEが実施例1~8で得られることを示す。実施例1~7によるHIOPEは、経時的に安定性であった。したがって、DICゲルは、連続水性相中の多量の不連続油相の安定化に貢献することが発見された。
【0281】
一方、表1は、カチオン性多糖のみの使用が、安定性HIOPE(比較例1参照)を調製できなかったことを示す。また、表1は、従来の乳化剤の使用が、安定性HIOPE(比較例2及び3参照)を調製できないことを示す。
【0282】
(実施例9)
HIOPEをベースとしたO/W/O乳化
(調製)
10gの実施例1によるHIOPEを90gの鉱油に添加して、O/W/Oエマルションを調製した。
【0283】
(評価)
エマルションを、室温で1カ月間、透明な容器中に保存しておいた。エマルションの安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0284】
安定(S): エマルションの一様性が維持されていた。
不安定(U): エマルションの一様性が維持されていなかった。
【0285】
このO/W/Oエマルションは、1カ月間安定性であった。
【0286】
したがって、実施例8は、O/W/Oエマルションが、HIOPEを使用することによって容易に調製できることを実証する。
【0287】
(実施例10)
着色HIOPEは、実施例1に従って調製したが、但し、微量の油溶性染料(UNICERT VIOLET K7116-J)を鉱油に混合した。この着色HIOPE(10g)を、90gの鉱油と混合した。
【0288】
(評価)
エマルションを室温で保存し、目視で観察した。
【0289】
O/W/Oエマルションの外油相は着色されておらず、これは、内部の着色された油が放出されていなかったことを意味する。これは、内油相が、DICゲルによって完全に封入されていたことを示す。