(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】樹脂層付き基板の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 38/10 20060101AFI20221121BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20221121BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B32B38/10
B41J2/16 503
B41J2/16 511
B41J2/16
B32B27/00 Z
(21)【出願番号】P 2018180584
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 智彦
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193166(JP,A)
【文献】特開2018-034482(JP,A)
【文献】特開2004-130715(JP,A)
【文献】特開2006-220886(JP,A)
【文献】特開2007-309995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0039676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0186293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/015-2/16;2/20
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体を形成するためのドライフィルムを支持体から基板に転写する工程を有する樹脂層付き基板の製造方法において、
前記基板の前記構造体を形成するための加工用の面に、前記支持体に支持されたドライフィルムを、該ドライフィルムの周縁が該加工用の面の周縁よりも外側に突出した突出部を形成して貼り合わせる工程と、
前記突出部の外縁と前記加工用の面の周縁との間の切断位置で該突出部を切断し、該切断位置よりも内側の部分を残存突出部として残す工程と、
前記残存突出部を開始位置として前記支持体を前記基板上から剥離するとともに、前記ドライフィルムを前記残存突出部の支持体に支持された第一の部分と前記加工用の面に貼り合わされた第二の部分とに分離し、前記第一の部分を前記支持体とともに前記基板上から除去し、前記第二の部分を前記加工用の面上に残す工程と
を有し、
前記突出部の切断位置が、前記ドライフィルムの前記第一の部分と前記第二の部分の分離を可能とする位置である
ことを特徴とする樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項2】
前記残存突出部における支持体とドライフィルムとの密着面における界面保持力と、前記加工用の面に貼り合わされたドライフィルムの凝集力に基づいて前記切断位置を設定する請求項1に記載に樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項3】
前記残存突出部における支持体とドライフィルムとの密着面における界面保持力が、前記加工用の面に貼り合わされたドライフィルムの凝集
力よりも大きくなるように前記切断位置を設定する請求項2に記載に樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記支持体の前記基板上からの剥離方向における前記切断位置と前記加工用の面の周縁との距離(X)が、該加工用の面の周縁の位置を0mmとしたときに、0mm<X<15mmである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記支持体の前記基板上からの剥離が、10℃以上100℃以下の温度で行われる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記支持体の剥離が、前記基板の第一の端部から該第一の端部と対応する位置にある第二の端部の方向に向かって直線的に行われる工程を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項7】
前記支持体の前記基板上からの剥離速度が、1mm/秒以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項8】
前記ドライフィルムが、感光性樹脂組成物からなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項9】
前記支持体の前記加工用の面に対する角度を30°以上90°以下の範囲として該支持体を剥離する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項10】
前記構造体が液体吐出ヘッドの流路形成部材の少なくとも一部である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の樹脂層付き基板の製造方法。
【請求項11】
液体吐出ヘッドの部分構造を形成するためのドライフィルムを支持体から基板に転写する工程を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記基板の前記部分構造を形成するための加工用の面に、前記支持体に支持されたドライフィルムを、該ドライフィルムの周縁が該加工用の面の周縁よりも外側に突出した突出部を形成して貼り合わせる工程と、
前記突出部の外縁と前記加工用の面の周縁との間の切断位置で該突出部を切断し、該切断位置よりも内側の部分を残存突出部として残す工程と、
前記残存突出部を開始位置として前記支持体を前記基板上から剥離するとともに、前記ドライフィルムを前記残存突出部の支持体に支持された第一の部分と前記加工用の面に貼り合わされた第二の部分とに分離し、前記第一の部分を前記支持体とともに前記基板上から除去し、前記第二の部分を前記加工用の面上に残す工程と
を有し、
前記突出部の切断位置が、前記ドライフィルムの前記第一の部分と前記第二の部分の分離を可能とする位置である
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記残存突出部における支持体とドライフィルムとの密着面における界面保持力と、前記加工用の面に貼り合わされたドライフィルムの凝集力に基づいて前記切断位置を設定する請求項11に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記残存突出部における支持体とドライフィルムとの密着面における界面保持力が、前記加工用の面に貼り合わされたドライフィルムの凝集
力よりも大きくなるように前記切断位置を設定する請求項12に記載に液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記支持体の前記基板上からの剥離方向における前記切断位置と前記加工用の面の周縁との距離(X)が、該加工用の面の周縁の位置を0mmとしたときに、0mm<X<15mmである請求項11乃至13のいずれか1項に記載に液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記支持体の前記基板上からの剥離が、10℃以上100℃以下の温度で行われる請求項11乃至14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記支持体の剥離が、前記基板の第一の端部から該第一の端部と対応する位置にある第二の端部の方向に向かって直線的に行われる工程を有する請求項11乃至15のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記支持体の前記基板上からの剥離速度が、1mm/秒以上である請求項11乃至16のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記ドライフィルムが、感光性樹脂組成物からなる請求項11乃至17のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記支持体の前記加工用の面に対する角度を30°以上90°以下の範囲として該支持体を剥離する請求項11乃至18のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記基板を共通基板として、前記加工用の面への前記ドライフィルムの転写工程を経て、複数の液体吐出ユニットを形成する工程と、各液体吐出ユニットを分割する工程とを有する請求項11乃至19のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記部分構造が、流路形成部材の少なくとも一部である請求項11乃至20のいずれか1項の記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂層付き基板の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドは液体吐出装置における液体を記録媒体や各種部材の表面に吐出する部分として利用される。液体吐出ヘッドの一例として、エネルギー発生素子よって付与されたエネルギーを利用して液体を吐出口から液滴として吐出するインクジェット記録ヘッドが挙げられる。
液体吐出ヘッドとしては、基板と基板上に設けられた流路形成部材とを有するものが知られている。流路形成部材は、液体の流路や、場合によっては吐出口を形成している。基板には、必要に応じて供給口が形成されており、供給口から流路に供給された液体は吐出口から吐出される。
液体吐出ヘッドの製造方法として、特許文献1には、基板に対してドライフィルムを転写し、転写したドライフィルムから流路形成部材を形成する方法が記載されている。基板に転写する前のドライフィルムは支持体で支持されており、基板へのドライフィルムの転写工程において支持体はドライフィルムから剥離される。このようにして基板の上にドライフィルムを残し、さらにドライフィルムをフォトリソグラフィー等によってパターニングすることにより、流路形成部材を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持体に支持されたドライフィルムを基板に転写することで流路形成部材を形成する場合、基板に貼り合わせたドライフィルムから支持体を除去する必要がある。ドライフィルムからの剥離によって支持体を除去するのが一般的であるが、支持体の剥離時にはドライフィルムの形状変形などの問題が発生する場合があり、剥離方法の最適化が必要となる。支持体の剥離方法の自由度を上げるために、基板に貼り合わせた支持体付きドライフィルムを基板周縁に沿う形で切断した後、支持体を剥離する方法がある。こうすることで、支持体の剥離工程までの基板搬送を容易にしたり、支持体の剥離時の挙動を基板領域内のみに限定したりすることが可能になり、剥離方法の最適化に対する効果が見込める。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、基板に貼り合わせた支持体付きドライフィルムを基板周縁に沿って切断してから支持体を剥離する工程において、
図3に示すようにドライフィルム6が基板2の表面領域より外側に残存することがあった。特に、端部にベベル形状を持つ基板2を用いる場合、ベベル部の上部に残存しやすい傾向が見受けられた。
基板の表面領域より外側に残存したドライフィルムは容易に脱離、飛散する状態であり、工程間で脱離、飛散して転写後のドライフィルム上に付着することで歩留り低下の原因となる。
従って、本発明は、基板に貼り合わせた支持体付きドライフィルムから支持体を剥離する際に、ドライフィルムを基板表面領域外に残存させず、歩留りの向上を達成できる樹脂層付き基板の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる樹脂層付き基板の製造方法は、構造体を形成するためのドライフィルムを支持体から基板に転写する工程を有する樹脂層付き基板の製造方法において、前記基板の前記構造体を形成するための加工用の面に、前記支持体に支持されたドライフィルムを、該ドライフィルムの周縁が該加工用の面の周縁よりも外側に突出した突出部を形成して貼り合わせる工程と、前記突出部の外縁と前記加工用の面の周縁との間の切断位置で該突出部を切断し、該切断位置よりも内側の部分を残存突出部として残す工程と、前記残存突出部を開始位置として前記支持体を前記基板上から剥離するとともに、前記ドライフィルムを前記残存突出部の支持体に支持された第一の部分と前記加工用の面に貼り合わされた第二の部分とに分離し、前記第一の部分を前記支持体とともに前記基板上から除去し、前記第二の部分を前記加工用の面上に残す工程とを有し、前記突出部の切断位置が、前記ドライフィルムの前記第一の部分と前記第二の部分の分離を可能とする位置であることを特徴とする。
また、本発明にかかる液体吐出ヘッドの製造方法は、液体吐出ヘッドの部分構造を形成するためのドライフィルムを支持体から基板に転写する工程を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、前記基板の前記部分構造を形成するための加工用の面に、前記支持体に支持されたドライフィルムを、該ドライフィルムの周縁が該加工用の面の周縁よりも外側に突出した突出部を形成して貼り合わせる工程と、前記突出部の外縁と前記加工用の面の周縁との間の切断位置で該突出部を切断し、該切断位置よりも内側の部分を残存突出部として残す工程と、前記残存突出部を開始位置として前記支持体を前記基板上から剥離するとともに、前記ドライフィルムを前記残存突出部の支持体に支持された第一の部分と前記加工用の面に貼り合わされた第二の部分とに分離し、前記第一の部分を前記支持体とともに前記基板上から除去し、前記第二の部分を前記加工用の面上に残す工程とを有し、前記突出部の切断位置が、前記ドライフィルムの前記第一の部分と前記第二の部分の分離を可能とする位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板に貼り合わせた支持体付きドライフィルムから支持体を剥離する際に、ドライフィルムを基板表面領域外に残存させず、高歩留りの向上を達成できる樹脂層付き基板の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】共通基板に多数の液体吐出ユニットを形成した状態の一例を示す図である。
【
図2】本発明にかかる液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す工程図である。
【
図3】液体吐出ヘッド用の基板に転写したドライフィルム端部の支持体剥離後の状態の一例を示す図である。
【
図4】シート状の支持体5で支持されたドライフィルムを平面形状が円形である基板に張り合わせた状態と、切断位置で切断した後の状態の一例を示す図である。
【
図5】支持体の基板上からの剥離方向の一例を示す図である。
【
図6】支持体の基板上からの剥離における剥離角度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明にかかる樹脂層付き基板の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法は、液体吐出ヘッドの構造の一部である部分構造を形成するためのドライフィルムを液体吐出ヘッド用の基板へ転写する工程を有する。
樹脂層付き基板を利用して基板上に形成する構造体としては、液体吐出ヘッドの構造の一部や、加速度センサー等のマイクロマシーンの構造の一部を挙げることができる。
液体吐出ヘッドの構造の一部、すなわち、部分構造としては、液体を吐出する吐出口へ液体を供給する流路を形成する流路形成部材の少なくとも一部を挙げることができる。目的とする液体吐出ヘッドの構造によっては、流路形成部材には流路と、流路と連通する吐出口が設けられる。ドライフィルムが転写される基板は、流路形成部材の土台として機能し、目的とする液体吐出ヘッドの構造によっては、エネルギー発生素子やこれを駆動するための配線が基板に設けられる。
基板へのドライフィルムの積層は、支持体に支持されたドライフィルムを基板表面に積層して張り合わせて転写した後、支持体を基板上のドライフィルムから剥離することにより行われる。
【0009】
ドライフィルムは、基板への貼り合せが可能な接着性を有し、構造体へ加工可能な材料からなる。ドライフィルムの形成材料としては、フォトリソグラフィーによる加工用としての各種の感光性材料等を挙げることができる。ドライフィルムは、ドライフィルムを形成する材料の凝集力によって支持体上で連続層の状態を維持している。
貼り合せ工程においては、支持体付きドライフィルムを、構造体を形成する基板の加工用の面をドライフィルムが覆い、かつ支持体付きドライフィルムの周縁が基板の加工用の面の周縁よりも突出した突出部を形成するように貼り合せる。
切断工程では、支持体付きドライフィルムの突出部が、その外縁と基板の加工用の面の周縁との間の切断位置で切断される。切断によって、基板への貼り合せ時に形成された突出部は、切断位置よりも外側の部分が除去され、切断位置よりも内側の部分が残存突出部として残される。この切断により生じた残存突出部の端面は、ドライフィルムと支持体の2層の端面からなる。
突出部の切断位置として、剥離工程におけるドライフィルムの上述した第一の部分と第二の部分の分離を可能とする位置が選択される。
剥離工程での基板上からの支持体の剥離は、支持体付きドライフィルムの残存突出部から開始される。その際、突出部の切断位置を上記の位置としたことによって、ドライフィルムの上述した第一の部分と第二の部分の分離が生じる。そして、第一の部分は支持体とともに基板上から除去され、第二の部分は基板の加工用の面を覆った状態で残存し、ドライフィルムの転写が完了する。
基板の加工用の面に転写されたドライフィルムに対して目的とする加工処理が行われ、液体吐出ヘッドの部分構造等の構造体が形成される。
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の一例を、樹脂層付き基板の製造方法を用いた液体吐出ヘッドの製造方法によって説明する。
<実施形態>
図1(a)及び
図1(b)に、本発明にかかる液体吐出ヘッドの製造方法を適用し得る液体吐出ヘッドの一例を示す。
液体吐出ユニット1は、各液体吐出ユニット1に対する共通基板である基板2にチップ状に形成されており、基板2から複数の液体吐出ヘッドとして分割されて切り出される。基板2内には多数の液体吐出ユニット1が配置されており、液体吐出ユニット1の個数や配置形態は特に限定されない。例えば、各液体吐出ユニットの形状や大きさ、基板2の利用効率、各液体吐出ユニットの切り出し効率などを考慮して、液体吐出ユニットの配置個数や配置形態を選択すればよい。
基板2はシリコンウエハ等で形成され、基板端部からのごみ発生を抑制するため、端部をベベル形状に加工するのが一般的である。このベベル形状は、基板の端部の角を面取りすることで加工して形成することができる。その方法としては、研磨やエッチングなどが挙げられる。
基板2の第一の面21には、エネルギー発生素子3が形成されている。エネルギー発生素子3としては発熱抵抗体や圧電素子が挙げられ、基板の第一の面21と接するように形成されていても、基板の第一の面21に対して一部中空状に形成されていてもよい。また、基板2の第一の面21側にはバンプ13が形成されており、バンプ13を介して基板2の外部から供給された電力によってエネルギー発生素子3が駆動する。基板2には、第一の面21とその裏面である第二の面22とを貫通する供給口4が形成されている。供給口4から供給された液体は、駆動したエネルギー発生素子3によってエネルギーを与えられ、流路形成部材12に形成された吐出口11から吐出される。
次に、本発明にかかる液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態について説明する。
図2は、
図1(a)及び
図1(b)に示す基板2の端部を含む液体吐出ユニット1のa-bで示す部分に対応した部分断面図である。
【0011】
まず、
図2(a)に示すように、流路形成部材の形成を行う加工用の面としての第一の面21側にエネルギー発生素子3を有する基板2を用意する。基板2の外縁からなる形状は特に限定されず、
図1(a)に示す円形でも、円形以外の形状をしていてもよい。端部23の形状も特に限定されない。ここではベベル形状になっているものを図示している。
基板の加工用の面は、平面状に形成された基板の第一の面21からなり、端部がベベル形状の基板の場合は、平面状の第一の面とベベル形状の曲面とが交差する部分が加工用の面としての第一の面の周縁となる。基板が端部として、平面状の第一の面と交差する方向の端面を有する場合は、これらの面が交差する角部が加工用の面としての第一の面の周縁となる。
エネルギー発生素子3は、SiNやSiO
2等で形成される保護膜(不図示)で覆われていてもよい。基板2には供給口4が形成されており、供給口4は基板2の第一の面21と第二の面22とを連通するように開口しており、供給口4によって第二の面22側から第一の面21側への液体の供給が可能となる。供給口4の形成方法としては、レーザー加工、反応性イオンエッチング、サンドブラスト、ウェットエッチング等が挙げられる。
次に、
図2(b)に示すように、支持体5で支持された支持体付きドライフィルム6を用意する。支持体5としては、各種材料からなるフィルム、ガラス板、シリコン板等が挙げられる。切断及び剥離における操作性からは、支持体はフィルムであることが好ましい。
支持体用のフィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタラート)やポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、テフロン(登録商標)、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー等の樹脂からなる支持体が挙げられる。なお、支持体5をドライフィルム6から剥離しやすくするために、支持体のドライフィルム形成面に離型処理を施してもよい。フィルムの厚さは特に限定されず、ドライフィルムの支持体として機能するように設定すればよい。
【0012】
支持体付きドライフィルム6は、感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層からなる。
感光性樹脂組成物の樹脂成分としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック型や脂環式のエポキシ樹脂、アクリル樹脂としてはポリメチルメタクリレート、ウレタン樹脂としてはポリウレタン等が挙げられる。
ドライフィルムの感光性はネガ型でもポジ型でもよく、流路形成部材の形成方法に応じて選択すればよい。また、ドライフィルムは、熱硬化性を有する化学増幅型であってもよい。
ドライフィルムとしては、市販の支持体付きドライフィルムや、感光性樹脂組成物を用いて支持体上に形成したドライフィルム等を用いることができる。
支持体上でのドライフィルムの形成方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。一例として、感光性樹脂組成物を溶媒に溶解して得た塗工液を支持体に塗工し、乾燥してドライフィルムを形成する方法を挙げることができる。塗工液調製用の溶媒としては、公知の溶媒を利用することができ、例えば、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン等が挙げられる。塗工液の支持体上への塗工には、スピンコート法やスリットコート法等を利用することができる。なお、支持体付きのドライフィルムの大きさは、流路形成部材を形成するための基板2の加工用の面を覆い、かつ、支持体剥離用の残存突出部を後述する工程により形成できるように選択される。
感光性樹脂組成物は、光酸発生剤を含んでもよい。光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩、オニウム塩等を用いることができる。これらは一種以上を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0013】
次に、
図2(c)に示すように、供給口4が形成された基板2の第一の面21に対して、支持体付きドライフィルム6を貼り合せて転写し、基板2上に流路形成部材12の一部を形成するためのドライフィルム層を形成する。支持体付きドライフィルム6と基板2との貼り合わせによって、第一の面21の周縁から外側へ突出する突出部51が形成される。ドライフィルム6と基板2との貼り合わせには、必要に応じて加圧処理及び/または加熱処理を利用しても良い。
次に、
図2(d)に示すように、支持体付きドライフィルム6を、基板2の流路形成部材を形成するための加工面としての第一の面21の周縁21aと突出部51の外縁51aとの間の切断位置24で切断する。基板2の第一の面21の周縁21aから切断位置24までの距離は、切断によって生じる残存突出部51cからの支持体5の剥離によってドライフィルム6が、第一の部分6aと第二の部分6bに分離可能となるように設定される。切断位置24でのドライフィルム6の支持体5ごとの切断によって、突出部51の切断位置24よりも外側の領域51bが取り除かれ、切断位置24よりも内側の残存突出部51cが残される。この残存突出部51cを開始位置として支持体5を基板2上から剥離すると、ドライフィルムの第一の部分6aと第二の部分6bが分離し、第一の部分6aは支持体5とともに基板2上から除去され、第二の部分6bは基板2の第一の面21上に残される。すなわち、上述のように切断位置24を設定することで、ドライフィルムの第一の部分6aと第二の部分6bの分離を、基板2の第一の面21の周縁21a上で行うことができる。
【0014】
切断位置24の基板2の第一の面21の周縁21aからの距離(最短距離)は、ドライフィルム6の材質や厚みによる自身の破れにくさによって決定することが好ましい。すなわち、凝集力(以下、ドライフィルム凝集力と記載)と、支持体5とドライフィルム6の界面の密着性や密着面積による保持力(以下、界面保持力と記載)によって決定することが好ましい。
ドライフィルムの厚さは、目的とする構造体の構造等に応じて選択すればよく、30μm以下の範囲から選択することができる。
ドライフィルムの凝集力や界面保持力は、試験用の試料を用意して、公知の方法で測定することができる。例えば、ドライフィルムの引張り試験等で、界面保持力はテープピール試験等で測定可能である。
凝集力及び界面保持力を測定しない場合は、切断位置を変えた試験用試料を必要数用意し、基板上からの支持体の除去におけるドライフィルムの基板領域外での残存の程度を予め確認して、基板領域以外でのドライフィルムの残存のない切断位置を採用してもよい。
後工程において支持体5を剥離する際、ドライフィルム凝集力が界面保持力よりも小さい場合は、
図2(e)に示すように基板2の第一の面21より外側のドライフィルムの第一の部分6aが支持体5側に密着した状態で剥がし取られる。ドライフィルム凝集力が界面保持力よりも大きい場合は、
図3に示すように基板2の第一の面21より外側のドライフィルムの部分が基板2側に残存する。この残存したドライフィルムは容易に脱離、飛散する状態であり、それが後工程において流路形成部材の表面に付着すると歩留り低下の原因になるため、
図2(e)に示すような剥離状態が得られるように切断位置24を設定する。
ここで、ドライフィルム6の材質や厚みは作製する液体吐出ヘッドの構造や特性により適宜選択されるものであり、また支持体5とドライフィルム6の密着性は、ドライフィルムの材質と支持体の種類等によって決まる。これに対し、支持体5とドライフィルム6の密着面積は切断する位置によって決めることができるため、切断する位置の調整により、界面保持力の大きさを変えることができる。剥離工程までの基板搬送への影響を考えると、切断位置24をX、基板2の第一の面21の周縁21aを0mm位置としたとき、0mm<X<15mmの範囲で、ドライフィルムの凝集力や界面保持力等の各種条件に応じて調整することが望ましい。15mmを超えた位置で切断する場合、後工程への基板搬送時に、搬送ユニットや基板の動線上にある各種ユニットと接触して基板の破損につながる恐れがある。
【0015】
支持体付きドライフィルム6からなる突出部51を切断位置24で切断する方法としては、カッターによる切断やレーザーによる溶解などが挙げられる。また、支持体5の種類によっては、熱をかけて切断する方法が好ましい。
シート状の支持体5で支持されたドライフィルムを平面形状が円形である基板2に張り合わせた状態と、切断位置で切断した後の状態の一例を
図4(a)及び
図4(b)に示す。
【0016】
その後、残存突出部51cを剥離の開始位置として支持体5を基板2上から剥離して、
図2(e)に示す状態を得る。支持体にフィルムを用いる場合、フィルムの粘弾性特性を考慮して適切な温度環境下で切断、もしくは剥離を行うことが望ましい。切断に際しては、基板外周の全領域でドライフィルムを残存させないため、全周を切断することが望ましい。
剥離方法としては、支持体の端部を保持して、保持した箇所を剥離開始位置としてテープを剥がすように剥離方向を一方向として剥離開始位置としての端部からこの端部に対向する端部の方向へ直線的に剥がし取る方法が一般的である。支持体の剥離方向の一例を
図5にAからBへの方向として示す。
図5におけるA地点が剥離開始位置であり、B地点が剥離終了位置である。剥離開始位置Aから矢印方向に直線状に支持体5を剥離すると、剥離開始位置において先に説明した基板2の第一の面21の周縁21aでのドライフィルムの分離が生じる。この剥離開始位置Aでの基板2の第一の面21の周縁21aにおける分離は、剥離の進行とともに矢印方向に対する基板2の側面側でも生じ、剥離終了位置Bにおいて終了する。こうして、基板2の第一の面21の周縁21aの全体において目的とする残存突出部6aの除去を達成することができる。
剥離する際の温度や角度、速度はドライフィルム凝集力と関係があり、それぞれの項目についてドライフィルム凝集力を小さく制御できるような値を選択することが望ましい。詳細には、支持体の剥離における環境の温度範囲は10℃以上100℃以下であること、剥離角度は30°以上90°以下であること、剥離速度は1mm/秒以上であることが望ましい。
なお、剥離角度は、
図6に示すように、基板2上の支持体5を剥離方向に引張る際における矢印で示す支持体5の折り返しの引張り方向と基板2の第一の面(平面)21aとの角度θをいう。
次に、
図2(f)に示すように、露光によりドライフィルム6bに流路となるパターン7の潜像を形成する。本実施形態では、ドライフィルム6bがネガ型の感光性を有し、パターン露光により、露光で硬化した硬化部6cと、露光されずに未硬化状態で残された流路となるパターン7が生じる。
【0017】
次に、
図2(g)に示すように、吐出口を形成する流路形成部材12の一部となる感光性樹脂層8を積層し、
図2(h)に示すように、露光により吐出口11となるパターン9の潜像を形成する。この感光性樹脂層8の形成にはドライフィルム6と同様の感光性樹脂組成物を用い、光酸発生剤などを加えることでドライフィルム6と感度を変えたり、感光波長領域を変える等調整したものを用いることが好ましい。本実施形態では、吐出口形成用の感光性樹脂層8がネガ型の感光性を有し、パターン露光により、露光で硬化した硬化部8aと、露光されずに未硬化状態で残された吐出口となるパターン9が生じる。
次に、
図2(i)に示すように、流路となるパターン7の潜像、吐出口となるパターン9の潜像を現像することで、流路14及び吐出口11を形成する。
最後に基板2から液体吐出ユニット1を切り出し、電気的接続等を行うことで液体吐出ヘッドが形成される。
図2に示した例では、予め供給口4を設けた基板2を用いて流路形成部材の形成を行っているが、基板2への供給口4の形成時期はこれに限定されず、流路形成部材の形成の途中や流路形成部材の形成完了後に行ってもよい。
以上、ドライフィルム6としてネガ型の感光性を有するドライフィルムを用いる場合について説明したが、ポジ型のドライフィルムを用いて、特開2018-83399号公報に記載される方法によって液体吐出ヘッドの部分構造を形成してもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明をより具体的に説明する。各実施例の結果について、表1及び表2にまとめた。表1及び表2における評価は以下の基準により行った。
×:ドライフィルム残存がベベルの外縁を超えた場合。
△:ドライフィルム残存があるものの、周縁と外縁の間の領域のみ。
○:ドライフィルム残存なし。
<実施例1>
まず、
図2(a)に示すように、第一の面21側にTaSiNからなるエネルギー発生素子3を有し、端部23がベベル形状になっている基板2を用意した。基板2としてはシリコンの(100)基板を用い、基板2はSiNで形成された保護膜(不図示)を有する。基板2には、供給口4が形成されており、供給口4は基板2の第一の面21に開口している。供給口4は、RIE(リアクティブイオンエッチング)方式にてボッシュプロセスで形成した。
次に、
図2(b)に示すように、支持体5と、支持体5に支持されたドライフィルム6(第一のドライフィルム)を用意した。支持体5は厚み100μmのPETフィルムを用い、ドライフィルム形成面には離型処理を施した。次に、支持体5のドライフィルム形成面上に、エポキシ樹脂(大日本インキ製、商品名;N-695)及び光酸発生剤(サンアプロ製、商品名;CPI-210S)をPGMEAに溶解させた溶液を塗布した。これを、オーブンによって100℃で乾燥させることでドライフィルム6を形成した。
次に、
図2(c)に示すように、供給口4が形成された基板2の第一の面21に対して、支持体5で支持されたドライフィルム6を貼り付けて転写し、流路形成部材12の一部となるドライフィルム層を形成した。貼り付けは、ロール式ラミネーター(タカトリ製、商品名;VTM-200)にて行った。貼り付け後のドライフィルム6の厚みは15μmであった。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板の第一の面の周縁21aから外側に10mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
【0019】
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境で、残存突出部51cを剥離開始位置として、ドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板の第一の面の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
次に、
図2(f)に示すように、露光装置(キヤノン製、商品名;FPA-3000i5+)を用い、露光波長365nmの光を5000J/m
2の露光量でドライフィルム6bに露光を行った。その後、50℃5分のベークを行うことで流路となるパターン7を形成した。
次に、
図2(g)に示すように、流路形成部材12の一部となる感光性樹脂層8を、ドライフィルム(第二のドライフィルム)を転写することにより形成した。第二のドライフィルムは、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名;157S70)と光酸発生剤(サンアプロ製、商品名;LW-S1)をPGMEAに溶解させ、ドライフィルム6と感度差を持たせた塗工液を第二の支持体に塗工し、乾燥させて製造した。このドライフィルムを、ロール式ラミネーターで、流路のパターン7と硬化部6cから形成される加工用の面に貼り付けた。貼り付け後の感光性樹脂層8の厚みは5μmであった。ここでも支持体とドライフィルムの切断時において、基板2の第一の面21の周縁21aから外側へ10mmの位置で切断を行い、支持体を剥離した。この時、基板2の第一の面の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
図2(h)に示す吐出口となるパターン9は露光装置(キヤノン製、商品名;FPA-3000i5+)を用いたパターン露光により形成した。その後90℃5分のベークを行うことにより、吐出口となるパターン9を形成した。
次に、
図2(i)に示すように、PGMEAに浸すことで、流路となるパターン7、吐出口となるパターン9の現像を行い、流路14及び吐出口11を有する流路形成部材を形成した。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察し不良がないことを確認した。
【0020】
<実施例2>
本実施例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面の周縁21aから外側に8mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察し不良がないことを確認した。
【0021】
<比較例1>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面の周縁21aから外側に7mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面の領域外に基板外周の約10%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0022】
<比較例2>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に5mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外に基板外周の約20%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0023】
<比較例3>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に1mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第1の面21の領域外に基板外周の約80%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0024】
<比較例4>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板の端部から外側に8mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、120℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板表面領域外に基板外周の約10%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0025】
<比較例5>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に8mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は120°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外に基板外周の約10%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0026】
<比較例6>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に8mmの位置で行った。切断には25℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、25℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で0.5mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外に基板外周の約10%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0027】
<実施例3>
まず、
図2(a)に示すように、第一の面21側にTaSiNからなるエネルギー発生素子3を有する基板2を用意した。基板2としてはシリコンの(100)基板を用い、基板2はSiNで形成された保護膜(不図示)を有する。基板2には、供給口4が形成されており、供給口4は基板2の第一の面21に開口している。供給口4は、RIE(リアクティブイオンエッチング)方式にてボッシュプロセスで形成した。
次に、
図2(b)に示すように、支持体5と、支持体5に支持されたドライフィルム6(第一のドライフィルム)を用意した。
支持体5には厚み100μmのポリイミドフィルムを用い、ドライフィルム形成面への離型処理は行わなかった。ドライフィルム6は、支持体5のドライフィルム形成面上に、エポキシ樹脂(大日本インキ製、商品名;N-695)及び光酸発生剤(サンアプロ製、商品名;CPI-210S)をPGMEAに溶解させた溶液を塗布した。その後、オーブンによって100℃で乾燥させることで形成した。
次に、
図2(c)に示すように、供給口4が形成された基板2の第一の面21に対して、支持体5で支持されたドライフィルム6を貼り付けて転写し、流路形成部材12の一部となるドライフィルム層を形成した。貼り付けは、ロール式ラミネーター(タカトリ製、商品名;VTM-200)にて行った。貼り付け後のドライフィルム6の厚みは5μmであった。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に5mmの位置で行った。切断には70℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、70℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
【0028】
次に、
図2(f)に示すように、露光装置(キヤノン製、商品名;FPA-3000i5+)を用い、露光波長365nmの光を5000J/m
2の露光量でドライフィルム6bに露光を行った。その後、50℃5分のベークを行うことで流路となるパターン7を形成した。
次に、
図2(g)に示すように、流路形成部材12の一部となる感光性樹脂層8を、ドライフィルム(第二のドライフィルム)を転写することにより形成した。第二のドライフィルムは、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名;157S70)と光酸発生剤(サンアプロ製、商品名;LW-S1)をPGMEAに溶解させ、ドライフィルム6と感度差を持たせた塗工液を第二の支持体に塗工し、乾燥させて製造した。このドライフィルムを、ロール式ラミネーターで流路パターン7と硬化部6cから形成される加工用の面に貼り付けた。貼り付け後の感光性樹脂層8の厚みは3μmであった。ここでも支持体とドライフィルムの切断時において、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に5mmの位置で切断を行い、支持体を剥離した。この時、基板2の第一の面21の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
図2(h)に示す吐出口となるパターン9は露光装置(キヤノン製、商品名;FPA-3000i5+)を用いたパターン露光により形成した。その後、90℃5分のベークを行うことにより、吐出口となるパターン9を形成した。
次に、
図2(i)に示すように、PGMEAに浸すことで、流路となるパターン7、吐出口となるパターン9の現像を行い、液体の流路14及び吐出口11を形成した。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察し不良がないことを確認した。
【0029】
<実施例4>
本実施例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例3と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に2mmの位置で行った。切断には70℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、70℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外にドライフィルムの残存はなかった。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察し不良がないことを確認した。
【0030】
<比較例7>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例3と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に1mmの位置で行った。切断には70℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、70℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外に基板外周の約30%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が少量確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0031】
<比較例8>
本比較例において、
図2(a)から
図2(c)までは実施例3と同様であるため、詳細の説明を省略する。
次に、
図2(d)に示すように、支持体5及びドライフィルム6を切断した。切断は、基板2の第一の面21の周縁21aから外側に0.5mmの位置で行った。切断には70℃の環境でステンレス製のカッターを用いた。
次に、
図2(e)に示すように、70℃の環境でドライフィルム6から支持体5を剥離した。剥離は30°の角度で10mm/秒にて実施した。この時、基板2の第一の面21の領域外に基板外周の約80%にあたる領域でドライフィルムの残存がみられた。
図2(f)から
図2(i)までは実施例1と同様であるため、詳細の説明を省略する。
最後に、基板2から液体吐出ユニットの形状に切断して電気的接続等を行い、液体吐出ヘッドを製造した。この液体吐出ヘッドを観察したところ、吐出口11付近に付着物が確認された。付着物について分析したところドライフィルム6と同じ成分が検出され、基板2の第一の面21の領域外に残存していたドライフィルムが脱離・飛散して付着したものと考えられる。
【0032】
【0033】
【符号の説明】
【0034】
1:液体吐出ユニット
2:基板
3:エネルギー発生素子
4:供給口
5:支持体
6:ドライフィルム(第一のドライフィルム)
7:流路となるパターン
8:感光性樹脂層(第二のドライフィルム)
9:吐出口となるパターン
11:吐出口
12:流路形成部材
13:バンプ
14:流路
21:第一の面
22:第二の面
23:基板の端部
24:支持体及びドライフィルムの切断位置