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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】消火栓装置点検システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/50 20060101AFI20221121BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20221121BHJP
   F16K 11/044 20060101ALI20221121BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A62C37/50
A62C35/20
F16K11/044 Z
F16K31/122
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018183119
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049035
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029968(JP,A)
【文献】特開2011-056108(JP,A)
【文献】特開2018-089211(JP,A)
【文献】特開2015-156322(JP,A)
【文献】特開2004-232821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16K 11/00-11/24
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースから放水する消火栓装置の機能点検を行う消火栓装置点検システムであって
前記ホスに至る配管に設けられ、遠隔操作機構を介した消火栓弁開閉レバーの操作により開閉される消火栓弁と、
前記消火栓弁に続いて設けられ、シリンダ室にピストンが設けられた駆動機構による弁体の移動により、流入口と流出口を連通すると共に前記流入口と排水口を切り離す放水切替位置と、前記流入口と前記流出口を切り離すと共に前記流入口と前記排水口を連通する排水切替位置とに切替える点検用切替弁と、
前記点検用切替弁の前記駆動機構に消火用水を供給する配管に設けられたパイロット電動弁と、
前記遠隔操作機構を介して前記消火栓弁を開閉駆動するアクチュエータと、
前記点検用切替弁の前記放水切替位置又は前記排水切替位置を検出する切替位置検出器と、
点検開始により、前記パイロット電動弁を開制御して前記点検用切替弁を前記排水切替位置に切替え、前記切替位置検出器で前記排水切替位置が検出された場合に前記アクチュエータの制御により前記消火栓弁を開駆動して前記点検用切替弁を介して消火用水を排水側に流して点検させる点検制御部と、
が設けられたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置点検システムに於いて、
前記遠隔操作機構と前記消火栓弁との間、及び前記遠隔操作機構と前記消火栓弁開閉レバーとの間に、又は前記遠隔操作機構と前記消火栓弁との間に、クラッチ機構を備えたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル付きのホースを引き出して消火するトンネル内に設置された消火栓装置を点検する消火栓装置点検システム関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備え、先端にノズルを装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置され、火災時に通行中の道路利用者を主な操作者として想定し、トンネル内で発生する比較的小規模の火災や初期段階での火災を消火するために設置されている。
【0004】
トンネル消火栓装置は道路トンネルにおいては、初期消火手段として極めて重要な設備であり、道路管理者は定期的に点検を行い、保守維持管理に務めている。
【0005】
しかしながら、道路供用後は、自動車が通行している中で点検を実施するなど、あるいは他の施設と合わせて実施する道路規制または道路通行止めの際に点検を実施するなど、時間的制約、また安全上の規制など、維持管理には課題が多い。
【0006】
さらに、近年、都市型の長大トンネルが出現するにあたり、消火栓装置一台当りの点検時間と設置台数を掛け合わせた最低必要時間を考えると、連日の点検が必要となることもあり、点検の質の維持、向上を実現することは、さらに難しくなってきている。また、今後、社会的には少子高齢化が進むことが確実であり、技術の承継だけでなく、そもそも人員不足により、点検要員が確保できなくなるという問題の解決も喫緊の課題である。
【0007】
このような課題を解決する方法として、特許文献1に示すトンネル消火栓装置の点検システムが提案されている。この点検システムでは、消火栓弁に並列して電動弁を設けると共と、これに続く自動調圧弁装置の二次側に三方切替電動弁を設け、自動点検を行う場合には、遠隔操作により三方切替電動弁をホースへの給水側から排水側に切替えた後に消火栓弁に並列した電動弁を開放して消火用水を排水側に流し、ノズル付きホースから放水したと同等な放水試験を行い、自動調圧弁により正常な放水圧力が得られるか否か点検している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-120717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の消火栓装置点検システムにあっては、消火栓弁の開閉動作、消火栓弁開閉レバーにより消火栓弁を開閉させるリンクワイヤーを用いた遠隔操作機構については点検ができておらず、自動調圧弁の設定値を中心とした点検となっているなど、またまだ点検者に依存する点検が残されているのが現状であり、より詳細に機能維持について点検ができ、省力化、高信頼性の確保をしたいという様々な要請に十分に応えられていない。
【0010】
本発明は、消火栓弁及びその遠隔操作機構を含む消火栓装置の重要な機能の点検を遠隔且つ自動で行うことを可能とし、点検時の消費電力を低減し、点検対象機器の異常を確実に検知可能とする消火栓装置点検システム提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(消火栓装置点検システム)
本発明はホースから放水する消火栓装置の点検を行う消火栓装置点検システムであって
スに至る配管に設けられ、遠隔操作機構を介した消火栓弁開閉レバーの操作により開閉される消火栓弁と、
消火栓弁続いて設けられ、シリンダ室にピストンが設けられた駆動機構による弁体の移動により、流入口と流出口を連通すると共に流入口と排水口を切り離す放水切替位置と、流入口と流出口を切り離す共に流入口と排水口を連通する排水切替位置とに切替える点検用切替弁と、
点検用切替弁の駆動機構に消火用水を供給する配管に設けられたパイロット電動弁と、
遠隔操作機構を介して消火栓弁を開閉駆動するアクチュエータと、
点検用切替弁の放水切替位置又は排水切替位置を検出する切替位置検出器と、
点検開始により、パイロット電動弁の開制御により点検用切替弁を排水切替位置に切替え、切替位置検出器で排水切替位置が検出された場合にアクチュエータの制御により消火栓弁を開駆動して点検用切替弁を介して消火用水を排水側に流して点検させる点検制御部
と、
が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(点検終了による復旧)
点検制御部は、点検終了により、アクチュエータにより消火栓弁を閉制御して復旧させた後に、パイロット電動弁を閉制御して点検用切替弁を放水切替位置へ切り替えて復旧させる。
【0013】
(自動調圧弁の動作監視)
点検用切替弁の排水側に圧力センサーが設けられ、
点検制御部は、圧力センサーの検出圧力に基づき自動調圧弁の設定圧力及び調圧機能の適否を判定して報知させる。
【0014】
(点検用切替弁の動作監視)
点検制御部は、切替位置検出器による位置検出に基づき点検用切替弁が正しく動作したか否かを判定して報知させる。
【0015】
(点検用切替弁の構造)
点検用切替弁は、
弁ボディの内部が隔壁により流入口が形成された流入室と流出口が形成された流出室とに区切られ、
隔壁に形成された弁穴の流入室側に第1の弁座が形成されると共に、弁穴に相対した外殻に同軸に排口が形成されると共に排口の流入室側に第1の弁座に相対して第2の弁座が形成され、
第1の弁座と第2の弁座の間に駆動機構により軸方向に移動される弁体が配置され、
駆動機構は、シリンダ室に収納されたピストンをスプリングにより弁体を第2の弁座に当接させる放水切替位置に保持しており、パイロット電動弁の開制御による消火用水の供給によりピストンを第1の弁座に当接させる排水切替位置に移動させ、更にシリンダ室が所定の排水量を規制するオリフィスを介して排水側に接続される。
【0016】
(切替位置検出器)
切替位置検出器は、
駆動機構による弁体の放水切替位置への移動を検出する放水切替位置検出器と、
駆動機構による弁体の排水切替位置への移動を検出する排水切替位置検出器と、
を備える。
【0017】
(歪センサー)
放水切替位置検出器、駆動機構により弁体を放水切替位置に移動させたときのピストンの押圧を受けて放水切替位置を検出する第1の歪センサーであり
排水切替位置検出器、駆動機構により弁体を排水切替位置に移動させたときのピストンの押圧を受けて排水切替位置を検出する第2の歪センサーである
【0018】
(電動アクチュエータ)
アクチュエータ、モータにより駆動される電動アクチュエータである
【0019】
(トルクリミッター
電動アクチュエータは駆動トルクが所定トルクを超えた場合に作動して駆動力を開放するトルクリミッターを備え、
点検制御部はトルクリミッターの作動を検出した場合にモータ駆動を停止して障害警報を出力させる。
【0020】
遠隔操作機構と消火栓弁との間、及び遠隔操作機構と消火栓弁開閉レバーとの間に、又は遠隔操作機構と消火栓弁との間に、クラッチ機構を備える。
【発明の効果】
【0021】
(基本的な効果)
本発明はホースから放水する消火栓装置の機能点検を行う消火栓装置点検システムであって、ホスに至る給水配管に設けられ、遠隔操作機構を介した消火栓弁開閉レバーの操作により開閉される消火栓弁と、消火栓弁続いて設けられ、シリンダ室にピストンが設けられた駆動機構による弁体の移動により、流入口と流出口を連通すると共に流入口と排水口を切り離す放水切替位置と、流入口と流出口を切り離す共に流入口と排水口を連通する排水切替位置とに切替える点検用切替弁と、点検用切替弁の駆動機構に消火用水を供給する配管に設けられたパイロット電動弁と、遠隔操作機構を介して消火栓弁を開閉駆動するアクチュエータと、点検用切替弁の放水切替位置又は排水切替位置を検出する切替位置検出器と、点検開始により、パイロット電動弁の開制御により点検用切替弁を排水切替位置に切替え、切替位置検出器で排水切替位置が検出された場合にアクチュエータの制御により消火栓弁を開駆動して点検用切替弁を介して消火用水を排水側に流して点検する点検制御部とが設けられたため、従来点検されていなかった消火栓弁及びその遠隔操作機構を含む消火栓装置の重要な機能の高度な点検を、トンネル内に設置された多数の消火栓装置について自動で連続的に行うことができる。
【0022】
また、点検時に放水側から排水側に切り替える点検用切替弁は、パイロット電動弁による駆動機構に対する消火用水の供給で切り替えられる水圧駆動型であり、パイロット電動弁は小さい口径のパイロット配管に設けられた小型の電動弁とすることができ、消費電力の低減、トンネル内に敷設するケーブルサイズの縮小、非常用電源の容量低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0023】
また、点検時には、ホースからの誤放水を防止するために、最初に点検用切替弁を排水側に切り替えた後に消火栓弁を開放する必要があるが、パイロット電動弁の開制御により点検用切替弁がホース側を閉鎖して排水側を開放する排水切替位置に切り替えられると、排水切替位置への切り替えを切替位置検出器で検出してアクチュエータの駆動により消火栓弁を開放しており、点検用切替弁の排水側への切替えを確認した後に消火栓弁が開放されることで、ホースからの誤放水を確実に防止することができる。
【0024】
(点検終了による復旧の効果)
また、点検制御部は、点検終了により、アクチュエータにより消火栓弁を閉制御して復旧させた後に、パイロット電動弁を閉制御して点検用切替弁を放水切替位置へ切り替えて復旧させるようにしたため、点検用消火栓弁を介して排水側に消火用水を流す点検が終了した場合には、まずアクチュエータにより消火栓弁を閉鎖して点検用切替弁を介して排水側に流している消火用水を止め、続いて、点検用切替弁を放水切替位置に繰り替えることで、ホース側に消火用水が流れ込んで滞留することを確実に防止する。
【0025】
また、消火栓弁の閉鎖により点検用切替弁に対する消火用水の供給を停止した状態で弁体を排水切替位置から放水切替位置に切り替えると、その途中で、流出口と排口が連通し、流出口はホースを介して大気に開放していることから、点検用切替弁の流入室及び1次側配管に滞留している消火用水は排水口から排出され、点検復旧に伴い確実に水抜きを行うことができる。
【0026】
(自動調圧弁の動作監視による効果)
また、点検用切替弁の排水側に圧力センサーが設けられ、点検制御部は、圧力センサーの検出圧力に基づき自動調圧弁の設定圧力及び調圧機能の適否を判定して報知させるようにしたため、消火栓装置の自動点検により点検用切替弁を介して排水側に流れる消火用水の圧力から放水設定圧力の設定ずれを知って再調整したり、自動調圧弁の故障を知って修理交換するといった適切な対応ができる。
【0027】
(点検用切替弁の動作監視による効果)
また、点検制御部は、切替位置検出器による位置検出に基づき点検用切替弁が正しく動作したか否かを判定して報知させるようにしたため、点検時に点検用切替弁が正しく切り替えられたか、異常を起こしたかを確実に検知して報知することができる。
【0028】
(点検用切替弁の構造による効果)
また、点検用切替弁は、弁ボディの内部が隔壁により流入口が形成された流入室と流出口が形成された流出室とに区切られ、隔壁に形成された弁穴の流入室側に第1の弁座が形成されると共に、弁穴に相対した外殻に同軸に排口が形成されると共に排口の流入室側に第1の弁座に相対して第2の弁座が形成され、第1の弁座と第2の弁座の間に駆動機構により軸方向に移動される弁体が配置され、駆動機構は、シリンダ室に収納されたピストンをスプリングにより弁体を第2の弁座に当接させる放水切替位置に保持しており、パイロット電動弁の開制御による消火用水の供給によりピストンを第1の弁座に当接させる排水切替位置に移動させ、更にシリンダ室が所定の排水量を規制するオリフィスを介して排水側に接続されるようにしたため、駆動機構の水圧駆動による弁体の直進移動でホース側に連通する放水切替位置から排水側に連通する排水切替位置に切り替える三方切替弁としての機能が実現でき、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁に比べ、弁体を第1又は第2の弁座に当接させることから、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁のような水漏れがなく、確実に流入口を流出口又は排口に選択的に切り替えることができる。
【0029】
また、点検用切替弁は、通常時は、スプリングの力で弁体を放水切替位置に保持してホース側に連通すると共に排水側を全閉としており、電源の喪失とは無関係に放水切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【0030】
また、点検切替弁を切替駆動する駆動機構のシリンダ室はオリフィスを介して排水側に接続されて常時排水状態にあり、パイロット電動弁の動作による消火用水の供給がない限り、放水切替位置を保持しており、点検用切替弁を設けていても、火災時の消火栓弁開閉操作により確実に消火用水をホース側に供給して放水させることができる。
【0031】
(排水口の継手による効果)
また、点検用切替弁は、排水口に着脱自在な継手を介して排水ホースを接続したため、例えば、町野式継手を設けることで排水ホースを着脱自在に設けており、消火栓装置の設置場所で手動点検する場合には、排水ホースを外して圧力計と試験ノズルが設けられた点検用ホースを排水口の継手に接続して点検放水を行うことができる。
【0032】
(切替位置検出器の効果)
また、切替位置検出器は、駆動機構による弁体の放水切替位置への移動を検出する放水切替位置検出器と、駆動機構による弁体の排水切替位置への移動を検出する排水切替位置検出器とを備え、例えば、放水切替位置検出器、駆動機構により弁体を放水切替位置に移動させたときのピストンの押圧を受けて放水切替位置を検出する第1の歪センサーであり、排水切替位置検出器、駆動機構により弁体を排水切替位置に移動させたときのピストンの押圧を受けて排水切替位置を検出する第2の歪センサーであるため、点検時に点検用切替弁が正常に動作したか異常を起こしたかを確実に監視して対応できる。
【0033】
また、切替位置検出器としてシリンダ内に歪センサーを設けたことで、ピストンの移動による力を検知して弁動作を確認することができ、また、リミットスイッチのようなスペースを取らず、機器の小型化を可能とする。更に、ピストンによる弁体そのものの動作が検知されることで、故障の有無の判別等、点検における信頼性が向上する。
【0034】
(電動アクチュエータのトルクリミッターによる効果)
また、消火栓弁を開閉するアクチュエータ、モータにより駆動される電動アクチュエータであり、電動アクチュエータは駆動トルクが所定トルクを超えた場合に作動して駆動力を開放するトルクリミッターを備え、点検制御部はトルクリミッターの作動を検出した場合にモータ駆動を停止して障害警報を出力させるようにしたため、消火栓弁を開閉駆動する電動アクチュエータに過大なトルクが加わるとトルクリミッターが作動して異常過熱等を未然に防止し、また、トルクリミッターの作動を検出して警報することで、アクチュエータの異常を知って適切に対処できる。
【0035】
(三方切替弁の効果)
本発明の別の形態にあっては、三方切替弁に於いて、弁ボディに流入口、第1の流出口及び第2の流出口を備え、シリンダ室にピストンが設けられた駆動機構による弁体の移動により、流入口と第1の流出口を連通すると共に流入口と第2の流出口を切り離す第1の切替位置と、流入口と第1の流出口を切り離す共に流入口と第2の流出口を連通する第2の切替位置とに切替えるように構成し、詳細には、弁ボディの内部が隔壁により流入口が形成された流入室と第1の流出口が形成された流出室とに区切られ、隔壁に形成された弁穴の流入室側に第1の弁座が形成されると共に、弁穴に相対した外殻に同軸に第2の流出口が形成されると共に第2の流出口の流入室側に第1の弁座に相対して第2の弁座が形成され、第1の弁座と第2の弁座の間に駆動機構により軸方向に移動される弁体が配置され、駆動機構は、シリンダ室に収納されたピストンをスプリングにより弁体を第2の弁座に当接させる第1の切替位置に保持しており、シリンダ室に対する消火用水の供給によりピストンを第1の弁座に当接させる第2の切替位置に移動させるようにしたため、駆動機構の水圧駆動による弁体の直進移動で流入口に対し第1又は第2の流出口を選択的に切り替える三方切替弁としての機能が実現でき、三方切替弁の切替動作は、小さい口径のパイロット配管に設けられた小型のパイロット電動弁により消火用水の供給で良いことから、消費電力の低減、ケーブルサイズの縮小、電源容量の低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0036】
また、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁に比べ、弁体を第1又は第2の弁座に当接させることから、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁のような水漏れがなく、確実に流入口を第1の流出口又は第2の流出口に選択的に切替えすることができる。
【0037】
更に、三方切替弁は、通常時は、スプリングの力で弁体を第1の切替位置に保持して第1の流出口側に連通すると共に第2の流出口側を全閉としており、電源の喪失とは無関係に第1の切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】消火栓装置の正面図。
図2】消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における平面図
図3】消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における側面図
図4】消火栓点検システムの概略を示した説明図
図5】消火栓点検システムを構成する機器構造の実施形態を示した説明図
図6】火災時に消火栓弁開閉レバーを開操作した場合の動作を示した説明図
図7】自動点検時の動作を示した説明図
図8】消火栓装置点検システムの自動点検制御を示したフローチャート
図9】水圧アクチュエータにより消火栓弁を開閉駆動する消火栓装置点検システムの他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
[消火栓装置の概要]
図1は消火栓装置の正面図、図2は消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における平面図、図3は消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における側面図である。
【0040】
図1乃至図3に示すように、消火栓装置10は、装置本体(筐体)12の前面右側の扉開口に、消火栓扉14と保守扉15が設けられており、その内部がホース収納空間及びバルブ類収納空間となっている。
【0041】
消火栓扉14は前倒し式の開閉扉であり、扉下側のヒンジを中心に上側にある扉ハンドル16を手前に引き出して前方下側に開放することができる。消火栓扉14の上には、上側のヒンジを中心に上向きに開閉する保守扉15が設けられており、点検時に消火栓扉14を開いた後上方向に持ち上げることで開くことができる。
【0042】
装置本体12の左側扉開口に設けられた消火器扉26の右側には通報装置扉18が設けられ、ここに押釦通報装置(発信機)20、赤色表示灯22が設けられている。押釦通報装置20は、透明な保護板の背後に押釦スイッチが配置されており、保護板を押し込むことで押釦スイッチがオンし、監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信して火災警報を出力させる。
【0043】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、押釦通報装置20を押して火災通報信号が監視センターの防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、赤色表示灯22が点滅される。
【0044】
通報装置扉18の左側には消火器扉26が設けられ、内部に2本の消火器28が収納されている。
【0045】
装置本体12の消火栓扉14の背後に形成されたホース収納空間にはホース38が内巻きして収納され、ホース38の先端には放水ノズル40が装着され、放水ノズル40は消火栓扉14の裏面に配置されたノズルホルダー42に着脱自在に保持されている。
【0046】
ホース収納空間の右側に配置したバルブ類収納空間には、ポンプ設備からの配管が接続される消火配管接続口30からホース接続口に至る配管系統に、給水弁32、消火栓弁を含む放水バルブ系統が設けられている。
【0047】
消火栓弁に対しては消火栓扉14の裏側に配置された消火栓弁開閉レバー36が設けられ、消火栓弁開閉レバー36を操作すると、平行リンクワイヤー機構を介して消火栓弁の開閉操作が行われる。
【0048】
[消火栓装置点検システムの概要]
図4は消火栓装置点検システムの概略を示した説明図である。図4に示すように、消火栓装置10に対しては、給水本管43から分岐された立上げ配管44が消火配管接続口30に接続され、消火配管接続口30からホース38の接続口に至る配管45に、給水弁32、消火栓弁46及び自動調圧弁48を含む放水バルブ系統が設けられている。
【0049】
これに加え本実施形態の消火栓装置点検システムにあっては、自動調圧弁48に続いて点検用切替弁50が設けられ、点検用切替弁50を水圧により開閉駆動するためパイロット電動弁52が設けられる。
【0050】
点検用切替弁50は、ピストン・シリンダ機構による弁体の移動により、自動調圧弁48の2次側となる流入口に対しホース38が接続される放水ラインと排水ホース58が接続される排水ラインを選択的に切り替える。点検用切替弁50のシリンダ室はオリフィス54及び逆止弁56を介して排水側に接続される。
【0051】
消火栓弁46は平行リンクワイヤー機構を備えた遠隔操作機構62を介して消火栓扉14の裏面に設置された消火栓弁開閉レバー36が連結されているが、本実施形態の消火栓装置点検システムにあっては、遠隔操作機構62を介して消火栓弁46を開閉駆動するための電動アクチュエータ60が設けられる。電動アクチュエータ60は消火栓弁46に対する駆動トルクが所定トルクを超えた場合に作動して駆動力を開放するトルクリミッターを備えている。
【0052】
消火栓装置10の機能点検における動作状態を検知するためのセンサーとして、点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構のシリンダ室に放水切替位置検出器として機能する第1の歪センサー64と排水切替位置検出器として機能する第2の歪センサー66が設けられ、点検用切替弁50に接続された排水ホース58には排水圧力を検出する圧力センサー68が設けられ、遠隔操作機構62には消火栓弁46の開閉を検出する開閉検出器70が設けられ、更に、電動アクチュエータ60にトルクリミッターの作動を検知するトルクリミッター作動センサ―61が設けられている。
【0053】
また、消火栓装置10には消防隊が使用するポンプ起動スイッチ72が設けられており、本実施形態の消火栓装置点検システムに対応して手動点検スイッチ74が設けられる。
【0054】
点検制御部75は、コンピュータ回路を用いた制御部と有線通信を行う通信部を備える。通信部による通信は無線通信としても良い。点検制御部75には、第1の歪センサー64、第2の歪センサー66、圧力センサー68、開閉検出器70、トルクリミッター作動センサー61からの信号線が入力され、また、ポンプ起動スイッチ72、手動点検スイッチ74からの信号線が入力され、更に、パイロット電動弁52と電動アクチュエータ60に対し信号線が出力される。また、点検制御部75に設けられた通信部からトンネルの監視室等に設置された防災受信盤に対し通信線が接続されている。
【0055】
点検制御部75は、自動点検に伴い防災受信盤から点検指示信号を受信した場合に、パイロット電動弁52の開制御により点検用切替弁50を排水切替位置に切り替え、第2の歪センサー66により排水切替位置が検出された場合に電動アクチュエータ60により消火栓弁46を開駆動し、点検用切替弁50を介して消火用水を排水ホース58に流して点検する制御を行う。
【0056】
[消火栓装置点検システムを構成する機器構造]
図5は消火栓点検システムを構成する機器構造の実施形態を示した説明図である。
【0057】
(点検用切替弁)
図5に示すように、点検用切替弁50は、ホ―スに至る配管45に消火栓弁46及び自動調圧弁48に続いて設けられる。点検用切替弁50の弁ボディ51には流入口76、流出口78及び排水口80が形成され、流入口76には自動調圧弁48の2次側からの配管が接続され、流出口78にはホースに対する配管47が接続され、排水口80にはホース継手として例えば町野式継手106が設けられ、町野式継手106により排水ホース58が着脱自在に接続されている。
【0058】
弁ボディ51の内部は隔壁83により流入口76が形成された流入室と流出口78が形成された流出室とに区切られ、隔壁83に形成された弁穴84の流入室側にシートパッキンを備えた第1の弁座85が形成されると共に、弁穴84に相対したホディ外殻に同軸に排水口80が形成されると共に排水口80の流入室側に第1の弁座85に相対してシートパッキンを備えた第2の弁座88が形成されている。
【0059】
第1の弁座85と第2の弁座88の間には、駆動機構として機能するピストン・シリンダ機構のピストン90のピストンロッド92に連結された軸方向に移動される弁体82が配置されている。
【0060】
点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構は、シリンダ室94に摺動自在に収納されたピストン90をスプリング96により弁体82を第2の弁座88に当接させて排水口80を閉鎖させる放水切替位置に保持している。
【0061】
シリンダ室94に対しては配管45から分岐されたパイロット配管53が接続され、パイロット配管53にはパイロット電動弁52が設けられ、通常状態でパイロット電動弁52は閉鎖されており、シリンダ室94に消火用水が供給されないことで、点検用切替弁50は図示の放水切替位置を保持している。
【0062】
ここで、消火栓弁46及び自動調圧弁48が設けられた配管45のサイズは例えば口径32~40mmであるのに対し、パイロット配管53のサイズは口径10~15mmであり、口径の大きな配管45に設けた電動弁の消費電力は数十ワットになるのに対し、口径の小さいパイロット配管53に設けるパイロット電動弁52は小型の電動弁とすることができ、消費電力の低減、トンネル内に敷設するケーブルサイズの縮小、非常用電源の容量低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0063】
また、点検用切替弁50のシリンダ室94はオリフィス54及び逆止弁56を介して排水側に接続されており、パイロット電動弁52が閉鎖された状態でシリンダ室94から消火用水を排水させてスプリング96によるピストン90の押圧で放水切替位置の保持を可能とする。また、逆止弁56は排水側からのシリンダ室94に対する消火用水の逆流を阻止し、点検用切替弁50を確実に放水切替位置に保持することを可能とする。
【0064】
このような構造の点検用切替弁50は、通常時は、パイロット電動弁52が閉鎖されてシリンダ室94に消火用水の供給がないことから、スプリング96によるピストン90の押圧で弁体82を第2の弁座88に当接させることにより、流入口76と流出口78を弁穴84を介して連通させると共に排水口80を閉鎖して流入口76と切り離す放水切替位置に保持されている。
【0065】
このように点検用切替弁50は、通常時、スプリング96の力で弁体82を放水切替位置に保持して流入口76をホース側の流出口78に連通すると共に排水口80を全閉としており、電源の喪失とは無関係に放水切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【0066】
点検用切替弁50のシリンダ室94には放水切替位置検出器として機能する第1の歪センサー64が配置され、また、スプリング96の収納側には排水切替位置検出器として機能する第2の歪センサー66が配置されている。
【0067】
第1の弁座85と第2の弁座88の間で弁体82が移動する軸方向の間隔をXとすると、第1の歪センサー64は、スプリング96により弁体82が第2の弁座88に当接して排水口80を閉鎖している放水切替位置にあるときの押圧力による歪に応じた歪検出信号を放水切替位置検出信号として出力している。
【0068】
また、シリンダ室94に対する消火用水の供給でピストン90がスプリング96を圧縮して間隔Xだけ移動した場合に第2の歪センサー66が押圧され、このときの押圧力による歪に応じた歪検出信号を排水切替位置検出信号として出力することになる。
【0069】
点検用切替弁50の排水口80には町野式継手106が設けられ、排水ホース58が着脱自在に接続されている。排水ホース58の途中には圧力計付きの圧力センサー68が設けられ、点検時に点検用切替弁50を介して排水ホース58に消火用水を排水して放水試験を行った場合の圧力を測定可能としている。なお、排水ホース58に流量センサーを設け、放水試験を行った場合の流量を測定しても良い。
【0070】
(電動アクチュエータ)
電動アクチュエータ60はモータにより消火栓弁46を開閉駆動させるアクチュエータであり、消火栓弁46の弁軸は遠隔操作機構62のプーリ98に連結されていることから、電動アクチュエータ60の出力を双方向クラッチ102を介してプーリ98に連結している。
【0071】
遠隔操作機構62のプーリ98に対応して消火栓扉側に設置された消火栓弁開閉レバー36側にはプーリ100が配置され、プーリ98,100の間をリンクワイヤー101で連結することにより、平行リンクワイヤー機構が構成され、消火栓弁開閉レバー36の操作により消火栓弁46を開閉する遠隔操作が行われる。消火栓弁開閉レバー36の操作軸とプーリ100の駆動軸との間には第2の双方向クラッチ104が配置されている。
【0072】
電動アクチュエータ60と消火栓弁46との間に設けられた双方向クラッチ102は、入力軸102aから出力軸102bへ回転を伝達するが、逆に、出力軸102bから入力軸102aへは回転を伝達せずに空回りとなる一方向にのみ回転を伝達するクラッチ機能を備える。
【0073】
この点は、消火栓弁開閉レバー36側に設けられた第2の双方向クラッチ104も同様であり、入力軸104aから出力軸104bへ回転を伝達するが、逆に、出力軸104bから入力軸104aへは回転を伝達せずに空回りとなる一方向にのみ回転を伝達するクラッチ機能を備える。
【0074】
電動アクチュエータ60を駆動した場合、電動アクチュエータ60の駆動軸の回転は双方向クラッチ102を介してプーリ98及び消火栓弁46の弁軸を回転させ、電動アクチュエータ60により消火栓弁46の開閉駆動ができる。
【0075】
このとき、プ―リ98の回転はリンクワイヤー101を介してプーリ100に伝達されて回転するが、第2の双方向クラッチ104は出力軸104bからの回転入力となるために入力軸104aは回転せずに空回りとなり、消火栓弁開閉レバー36が動くことはない。
【0076】
消火栓装置10の自動点検は、図1に示したように、消火栓装置10の消火栓扉14を閉鎖した状態で行うこととなり、消火栓扉14が閉鎖していると扉裏側に配置されている消火栓弁開閉レバー36は周辺の部材に当たって動くことができない状態にある。
【0077】
しかしながら、本実施形態の点検システムにあっては、第2の双方向クラッチ104を設けたことで、自動点検時に電動アクチュエータ60により消火栓弁46を開閉駆動しても消火栓弁開閉レバー36は動かず、問題なく自動点検ができる。
【0078】
一方、トンネル内での火災発生時には、道路利用者が消火栓扉14を開いて放水ノズル付きのホース38を引き出した後に消火栓弁開閉レバー36を開操作することになる。このとき消火栓弁開閉レバー36の開操作により第2の双方向クラッチ104を介してプーリ100が回転され、リンクワイヤー101を介してプーリ98が連動して回転され、消火栓弁46が開駆動される。
【0079】
しかしながら、プーリ98の回転は双方向クラッチ102の出力軸102bからの回転入力となるため、入力軸102aに回転が伝達されずに電動アクチュエータ60に対し空回りとなり、電動アクチュエータ60を設けていても消火栓弁開閉レバー36の操作には影響がなく、電動アクチュエータ60を設けていない場合と同様に、消火栓開閉レバー36の操作により消火栓弁46の開閉操作を行うことができる。
【0080】
なお、消火栓装置10の点検を消火栓扉を開いて行うこととした場合には、電動アクチュエータ60による開閉駆動で消火栓弁開閉レバー36が動いても良いことから、第2の双方向クラッチ104を設ける必要はない。
【0081】
消火栓弁46側のプーリ98の軸部には、消火栓弁46の開閉を検出する開閉検出器70が設けられている。開閉検出器70としては、例えば、消火栓弁46の開を検出するリミットスイッチと、消火栓弁46の閉を検出するリミットスイッチが設けられる。
【0082】
開閉検出器70は、消火栓装置10の点検時における消火栓弁46の開閉検出を行うと共に、消火栓開閉レバー36を操作した場合の開検出信号はポンプ起動信号として用いられる。
【0083】
なお、開閉検出器70は、消火栓弁開閉レバー36側のプーリ100の軸部に設けても良く、この場合には、電動アクチュエータ60による消火栓弁46の開閉検出に加えて、遠隔操作機構62による遠隔開閉機能を合わせて検出することができる。
【0084】
また、モータ駆動される電動アクチュエータ60にはトルクリミッターが内蔵されており、消火栓弁46に対する駆動トルクが所定値を超えるとトルクトルクリミッターが作動して駆動力を開放し、モータ過熱による損傷を未然に防止可能としている。電動アクチュエータ60のトルクリミッターが作動すると、例えばリミッターピンが突出することから、これをトルクリミッター作動センサー61で検出するようにしている。
【0085】
[消火栓装置の放水操作]
図6は火災時に消火栓弁開閉レバーを開操作した場合の動作を示した説明図である。トンネル内で車両事故等により火災が発生した場合、道路利用者は、トンネル内に設置された図1に示した消火栓装置10の消火栓扉14を図2及び図3に示すように開き、消火栓扉14の内側に保持されている放水ノズル40を取り出してホース38を引き出し、続いて、消火栓弁開閉レバー36の手前側の開位置に操作する。
【0086】
図6に示すように、消火栓弁開閉レバー36を開位置に操作すると、第2の双方向クラッチ104を介してプーリ100が回転され、リンクワイヤー101を介してプーリ98が連動回転され、これにより消火栓弁46が開駆動される。このとき双方向クラッチ102は出力軸102b側からの回転入力となるため、入力軸102aに回転は伝達されず、電動アクチュエータ60に影響されることなく消火栓弁46を開操作することができる。
【0087】
また、プーリ98の回転により開閉検出器70で消火栓弁46の開検出が行われ、これに基づきポンプ起動信号が防災受信盤側に送信されて消火ポンプ設備の運転が開始され、加圧された消火用水の継続的な供給が開始される。
【0088】
消火栓弁46が開放されると、消火用水が自動調圧弁48を介して点検用切替弁50に供給され、このとき点検用切替弁50はピストン90のスプリング96による押圧で弁体82を第2の弁座88に当接して排水口80を閉鎖させた放水切替位置に保持されており、消火用水は開放状態にある弁穴84から流出口78に流れ、配管47からホース側に供給され、放水ノズルから放水されることになる。
【0089】
火災が鎮火して放水を止める場合には、消火栓弁開閉レバー36を元の閉位置にもどすと、遠隔操作機構62を介して消火栓弁46が閉鎖位置に操作される。
【0090】
[消火栓装置の自動点検]
図7は自動点検時の動作を示した説明図である。消火栓装置10の自動点検は、防災受信盤側で点検開始操作が行われると、点検指示信号の送信により複数の消火栓装置10の点検が順番に行われる。
【0091】
図4に示した点検制御部75は、防災受信盤から点検指示信号を受信すると、図7に示すように、まずパイロット電動弁52を開制御し、パイロット配管53により点検用切替弁50のシリンダ室94に消火用水を供給する。
【0092】
シリンダ室94に消火用水が供給されるとピストン90がスプリング96を圧縮しながら移動し、第2の弁座88から弁体82を移動して離すことで排水口80を開き、間隔Xを移動すると第1の弁座85に当接して弁穴84を閉鎖することで、流入口76と流出口78を切り離し、放水切替位置から排水切替位置に切り替えられる。
【0093】
点検用切替弁50が排水切替位置に切り替えられると、ピストン90の間隔Xの移動により第2の歪センサ―66が押圧され、排水切替位置を示す歪検出信号が図4の点検制御部75に出力され、点検制御部75は点検用切替弁50が正常に排水切替位置に切り替わったことを判別し、続いて、電動アクチュエータ60を消火栓弁46を開放する方向に開駆動させ、双方向クラッチ102及びプーリ98を介して消火栓弁46を開駆動させる。
【0094】
消火栓弁46が開駆動されると、1次側からの消火用水が自動調圧弁48を介して点検用切替弁50に供給され、このとき点検用切替弁50は排水切替位置に切り替えられていることから、流入口76から供給された消火用水は排水口80から排水ホース58に流れ、ホース38の放水ノズル40からの実放水に相当する水量を排水する点検放水を行う。
【0095】
点検用切替弁50に接続した排水ホース58の圧力は圧力センサー68で検出されて図4の点検制御部75に出力されており、点検制御部75は自動調圧弁48に設定されている所定の設定圧力0.29MPaと比較し、設定圧力に対する所定の誤差範囲にあれば正常と判定し、誤差範囲を外れた場合は、設定ずれを判定して防災受信盤に障害信号を送信して設定圧力ずれを示す障害警報を出力させ、点検終了後に自動調圧弁48の設定圧力の再調整作業を行わせることになる。
【0096】
また、設定圧力を大きく下回ったり、逆に大きく上回った場合には、自動調圧弁48の故障と判定して故障警報を防災受信盤から出力させ、点検終了後に自動調圧弁48の修理交換を行わせることになる。
【0097】
なお、点検中に、点検用切替弁50のシリンダ室94に供給された消火用水は、オリフィス54及び逆止弁56を介して排水側に流れているが、排水量はオリフィス54により制限され、パイロット配管53からの消火用水の供給量が排水量を十分に上回ってシリンダ室94の水圧が維持され、ピストン90により弁体82を排水切替位置に保持できる。
【0098】
圧力センサー68による圧力判定が済むと、点検終了として点検復旧制御が行われる。点検復旧制御は防災受信盤からの指示で行っても良いし、点検制御部75の制御手順として自動的に行っても良い。
【0099】
点検復旧制御では、図4に示した点検制御部75は、まず電動アクチュエータ60を閉鎖方向に駆動して消火栓弁46を閉鎖駆動させる制御を行う。これにより消火栓弁46が閉鎖し、点検用切替弁50に対する消火用水の供給が停止し、排水ホース58に対する排水が停止される。
【0100】
消火栓弁46が閉鎖されると開閉検出器70の閉鎖を検出することから、これに基づき点検制御部75は続いてパイロット電動弁52の閉制御を行う。パイロット電動弁52が閉鎖されると点検用切替弁50のシリンダ室94に対する消火用水の供給が停止し、シリンダ室94の消火用水はオリフィス54で絞られた所定の水量で逆止弁56を介して排水され、シリンダ室94の圧力低下に伴いスプリング96に押されてピストン90が移動し、弁体82が第2の弁座88に当接して排水口80を閉鎖する放水切替位置に切り替えられる。
【0101】
このように点検用切替弁50が1次側からの消火用水の供給が停止された状態で排水切替位置から放水切替位置にオリフィス54で規制された排水でゆっくり切り替わる場合、その過程で流出口78と排水口80が弁穴84を介して連通した状態となり、流出口78はホース38を介して大気に開放されていることから、弁ボディ51の流入室側から閉鎖した消火栓弁46の2次側までの間に滞留している消火用水は排水ホース58から排出され、配管内に残ることはない。
【0102】
点検用切替弁50が放水切替位置に切り替わると、ピストン90の押圧を受けた第1の歪センサー64から放水切替位置の検出を示す歪検出信号が出力され、これにより点検制御部75は点検用切替弁50の復旧を知って点検終了を判定し、点検終了を防災受信盤に通知して次の消火栓装置の点検を行わせる。
【0103】
また、消火栓装置10の点検は、図4に示した手動点検スイッチ74を操作することで、前述した自動点検の場合と同様に、消火栓装置10の設置場所で点検を行うこともできる。
【0104】
[消火栓装置の点検制御]
図8は消火栓装置点検システムの点検制御を示したフローチャートであり、図4に示した点検制御部75による制御動作となる。
【0105】
図8に示すように、点検制御部75はステップS1で防災受信盤からの点検指示信号の受信を判別するとステップS2に進み、パイロット電動弁52を開制御し、点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構に消火用水を供給して図5に示した放水切替位置から図7に示した排水切替位置に切り替える切替駆動を行わせる。
【0106】
続いて、点検制御部75はステップS3で第2の歪センサーの歪検出信号から排水切替位置の検出を判別するとステップS4に進み、電動アクチュエータ60を開制御し、これにより消火栓弁46を開駆動して消火用水を自動調圧弁48を介して点検用切替弁50に供給し、排水切替位置に切り替わっている点検用切替弁50を介して排水ホース58に消火用水を流す点検放水状態とする。
【0107】
続いて、点検制御部75はステップS5に進み、排水ホース58に設けられた圧力センサー68により排水圧力を測定し、ステップS6で正常を判定するとステップS7で排水圧力正常信号を防災受信盤に送信し、一方、ステップS6で排水圧力の異常を判定した場合はステップS8で排水圧力異常信号を防災受信盤に送信する。
【0108】
続いて、点検制御部75はステップS9で防災受信盤から点検終了信号の受信を判別するとステップS10に進み、電動アクチュエータ60を閉制御して消火栓弁46を閉鎖して点検用切替弁50を経由して点検排水を停止させ、続いて、ステップS11でパイロット電動弁52を閉制御して点検用切替弁50を放水切替位置に切替え駆動させ、ステップS12で第1の歪センサー64の歪検出信号により放水切替位置の検出を判別するとステップS13に進み、防災受信盤に点検終了信号を送信して一連の点検制御を終了する。
【0109】
[水圧アクチュエータによる消火栓弁の開閉駆動]
図9は水圧アクチュエータにより消火栓弁を開閉駆動する消火栓装置点検システムの他の実施形態を示した説明図である。
【0110】
図5の実施形態にあっては、消火栓弁46の開閉駆動に電動アクチュエータ60を設けていたが、本実施形態にあっては、図9に示すように、消火栓弁46の開閉駆動に水圧アクチュエータ110を設けている。
【0111】
水圧アクチュエータ110は、第2の駆動機構として機能する水圧駆動機構110とラック・ピニオン機構で構成される。水圧駆動機構110は、シリンダ室114に摺動自在にピストン116が設けられ、ピストン116はスプリング118により初期位置に保持されている。シリンダ室114には配管45から分岐されたパイロット配管128が接続され、パイロット配管128には第2のパイロット電動弁130が設けられている。また、シリンダ室114はオリフィス115を介して排水側に接続される。
【0112】
水圧駆動機構絵110のピストン116からのピストンロッド120にはラックギア122が連結され、ラックギア122にはピニオンギア124が噛み合わされる。ラックギア122とピニオンギア124で構成されるラック・ピニオン機構は、水圧駆動機構112のピストン116による直線運動を回転運動に変換する。
【0113】
ピニオンギア124の回転軸は双方向クラッチ126を介して消火栓弁46の弁軸に連結されている。双方向クラッチ126は図5の双方向クラッチ102と同じものであり、入力軸126aから出力軸126bに回転を伝達するが、逆に、出力軸126bから入力軸126aには回転を伝達しない。
【0114】
それ以外の構成及び機能は図5の実施形態と同じになることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0115】
本実施形態にあっては、消火栓装置10の点検時に、パイロット電動弁52の開制御により点検用切替弁50が排水切替位置に切替駆動されると、続いて、水圧アクチュエータ110の第2のパイロット電動弁130が開制御される。
【0116】
第2のパイロット電動弁130が開制御されると、消火用水が水圧駆動機構112のシリンダ室114に供給され、ピストン116がスプリング118を圧縮しながら移動し、ラックギア122の直線移動によりピニオンギア114を回転させ、双方向クラッチ126を介して消火栓弁46を開駆動する。
【0117】
これにより開放された消火栓弁46から自動調圧弁48を介して点検用切替弁50に消火用水が供給され、排水ホース58に消火用水を流す点検放水が行われ、圧力センサー68により排水圧力が測定して判定される。
【0118】
なお、点検中に、水圧駆動機構110のシリンダ室114に供給された消火用水は、オリフィス115を介して排水側に流れているが、排水量はオリフィス115により制限され、パイロット配管128からの消火用水の供給量が排水量を十分に上回ってシリンダ室114の水圧が維持され、ピストン116によりラック・ピニオン機構を介して消火栓弁46を開放位置に保持できる。
【0119】
排水圧力を測定する点検放水が終了すると、まず、第2のパイロット電動弁130が閉制御され、水圧駆動機構112のシリンダ室114に対する消火用水の供給が停止され、シリンダ室114の消火用水はオリフィス115を介して排水されることで圧力が低下し、スプリング118によりピストン116が初期位置に押し戻され、ラックギア122によりピニオンギア124が逆方向に回転し、双方向クラッチ126を介して消火栓弁46が閉駆動されて閉じる。
【0120】
続いて、パイロット電動弁52の閉制御により点検用切替弁50が放水切替位置に復旧し、一連の点検動作が終了する。
【0121】
本実施形態の水圧アクチュエータ110にあっては、配管45のサイズは例えば口径40~45mmであるのに対し、パイロット配管128のサイズは口径10~15mmであり、配管45に設ける電動弁に比べ、また、図4のモータを備えた電動アクチュエータ60に比べ、パイロット配管128に設ける第2のパイロット電動弁130は小型の電動弁とすることができ、消費電力の低減、トンネル内に敷設するケーブルサイズの縮小、非常用電源の容量低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0122】
[三方切替弁]
上記の実施形態は、消火栓装置点検システムに用いる点検用切替弁50を示しているが、点検用切替弁50は、一般的には、三方切替弁として使用することができる。
【0123】
点検用切替弁50を一般的な三方切替弁とした場合には、図5に示すように、弁ボディ51に流入口76、第1の流出口78及び第2の流出口80(ここでは排水口80を第2の流出口80とする)を備え、ピストン・シリンダ機構による弁体82の移動により、流入口76と第1の流出口78を連通すると共に流入口76と第2の流出口80を切り離す第1の切替位置と、流入口76と第1の流出口78を切り離す共に流入口76と第2の流出口80を連通する第2の切替位置とに切替える構造を備える。
【0124】
また、弁ボディ51の内部が隔壁83により流入口76が形成された流入室と第1の流出口78が形成された流出室とに区切られ、隔壁83に形成された弁穴84の流入室側に第1の弁座85が形成されると共に、弁穴84に相対したボディ外殻に同軸に第2の流出口80が形成されると共に第2の流出口80の流入室側に第1の弁座85に相対して第2の弁座88が形成され、第1の弁座85と第2の弁座88の間にピストン・シリンダ機構により軸方向に移動される弁体82が配置され、ピストン・シリンダ機構は、シリンダ室94に収納されたピストン90をスプリング96により弁体82を第2の弁座88に当接させる第1の切替位置に保持しており、シリンダ室94に対する消火用水の供給によりピストン90を第1の弁座85に当接させる第2の切替位置に移動させるように構成している。
【0125】
このような構成により、ピストン・シリンダ機構の水圧駆動による弁体82の直進移動で流入口76に対し第1又は第2の流出口78,80を選択的に切り替える三方切替弁としての機能が実現でき、三方切替弁の切替動作は、小さい口径のパイロット配管に設けられた小型のパイロット電動弁により消火用水の供給で良いことから、消費電力の低減、ケーブルサイズの縮小、電源容量の低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0126】
また、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁に比べ、弁体82を第1又は第2の弁座85,88に当接させることから、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁のような水漏れがなく、確実に流入口76を第1の流出口78又は第2の流出口80に選択的に切替えすることができる。
【0127】
また、三方切替弁として機能する点検用切替弁50は、通常は、スプリング96の力で弁体82を第1の切替位置に保持して第1の流出口78側に連通すると共に第2の流出口80側を全閉としており、電源の喪失とは無関係に第1の切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【0128】
[本発明の変形例]
(弁体及び弁座の監視)
上記の実施形態にあっては、各種のセンサーにより弁の開閉を検出しているが、更に、弁体や弁座のシールに歪センサーや接触センサーを埋め込み、弁体の着座状態を監視できるようにしても良い。これにより弁体に対するゴミ詰まりの発見、弁体動作の異常等をいち早く検知して、障害の未然防止や予防保全が可能となる。
【0129】
(センサー電源)
上記の実施形態にあっては、各種センサーは外部からの電源供給により動作させているが、水流により振動が発生する位置に圧電式発電素子や磁歪式発電素子を配置して、センサー電源として利用しても良い。これにより外部からのセンサー電源の供給が不要となり、コストダウンとシステムの簡素化ができる。
【0130】
例えば、点検用切替弁50に設けられたスプリング96に圧電式発電素子をコーティングして、センサ―電源とする。具体的には、スプリング96の表面に、下側電極層、圧電層及び上側電極層を積層形成し、下側電極層と上側電極層から一対のリード線を外部に取り出す構造とする。
【0131】
その製造方法は、金属製のスプリング96の表面上に銀ペーストを塗布して下部電極層を形成し、その表面に圧電性溶剤をスプレーコートした後、熱風乾燥して膜を生成し、次に、膜の表面より所定距離だけ離間したコロナ電極から所定の高電圧を所定時間印加して分極して圧電層を生成し、圧電層の上面に銀ペースを塗布して上部電極層を形成し、最後に上部電極層と下部電極層に導電接着剤を用いてリード線を接着する。これによりスプリング96に圧電式発電素子を簡単且つ容易に設けることができ、圧電式発電素子を設けてもスプリング96としての機能を損なうことはない。
【0132】
(その他)
上記の実施形態では点検用切替弁50の前段に自動調圧弁48を設けているが、自動調圧弁48の代わりに定流量弁等の水流制御部を設けるようにしても良い。圧力センサー68はいずれにせよ点検用切替弁50から供給される消火用水の圧力を監視し、水流制御部の動作が正しいかどうかを確認可能とする。
【0133】
また、上記の実施形態では位置検出器として歪みセンサを用いたが、物理スイッチの組み合わせ等の適宜方法を使用しても良い。例えば、ピストンロッド92をピストン90及びシリンダ室94を貫通するように延伸させ、ピストンロッド先端に水平なスイッチ押圧部を設け、放水切替位置においてスイッチ押圧部に接触する放水切替位置検出スイッチと、排水切替位置においてスイッチ押圧部に接触する排水切替位置検出スイッチを設ける。このような構成とすることで、消火用水で満たされるシリンダ室94と異なる位置において位置検出が可能となり、配線等の自由度が増す。
【0134】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0135】
10:消火栓装置
12:装置本体
14:消火栓扉
15:保守扉
16:扉ハンドル
18:通報装置扉
20:押釦通報装置
22:赤色表示灯
24:スピーカ
25:ヒンジ
26:消火器扉
28:消火器
30:消火配管接続口
32:給水弁
36:消火栓弁開閉レバー
38:ホース
40:放水ノズル
42:ノズルホルダー
43:給水本管
44:立上げ配管
45,47:配管
46:消火栓弁
48:自動調圧弁
50:点検用切替弁
51:弁ボディ
52:パイロット電動弁
53,128:パイロット配管
54:オリフィス
56:逆止弁
58:排水ホース
60:電動アクチュエータ
61:トルクリミッター作動センサー
62:遠隔操作機構
64:第1の歪センサー
66:第2の歪センサー
68:圧力センサー
70:開閉検出器
72:ポンプ起動スイッチ
74:手動点検スイッチ
75:点検制御部
76:流入口
78:流出口
80:排水口
82:弁体
83:隔壁
84:弁穴
86:第1の弁座
88:第2の弁座
90:ピストン
92:ピストンロッド
94:シリンダ室
96:スプリング
98,100:プーリ
101:リンクワイヤー
102,104,126:双方向クラッチ
102a,104a,126a:入力軸
102b,104b,126b:出力軸
110:水圧アクチュエータ
112:水圧駆動機構
114:シリンダ室
116:ピストン
118:スプリング
120:ピストンロッド
122:ラックギア
124:ピニオンギア
130:第2のパイロット電動弁
図1
図2
図3
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図5
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図9