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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/063 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
G06K13/063 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018185035
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020057045
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伴也
(72)【発明者】
【氏名】見澤 守
【審査官】打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-150520(JP,A)
【文献】特開2011-204320(JP,A)
【文献】特開2002-157702(JP,A)
【文献】特開平06-044514(JP,A)
【文献】実開平02-096611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードが移動するカード移動路と、前記カード移動路を移動する前記カードの厚さ方向の一方側から前記カード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、前記カードの厚さ方向の他方側から前記カード移動路に臨むとともに前記第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、前記第2磁気ヘッドに向かって前記第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、前記第1磁気ヘッドに向かって前記第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、
前記第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、前記カード移動路を移動する前記カードの移動方向において、前記第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりも前記カード挿入口側に配置され、
前記第1付勢機構による前記第1磁気ヘッドの付勢力は、前記第2付勢機構による前記第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、
前記カードの移動方向を前後方向とすると、
前記カードは、後ろ側に向かって前記カード挿入口に挿入されるとともに、前側に向かって前記カード挿入口から抜き取られ、
前記カードが前記カードリーダに取り込まれて停止しているときに、前記カードの前端は、前記第2磁気ヘッドの前記磁気ギャップより後ろ側に配置されるとともに、前記カードの前端部は、前記第1磁気ヘッドと前記第2磁気ヘッドとの間に挟まれていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
カードが挿入されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードが移動するカード移動路と、前記カード移動路を移動する前記カードの厚さ方向の一方側から前記カード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、前記カードの厚さ方向の他方側から前記カード移動路に臨むとともに前記第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、前記第2磁気ヘッドに向かって前記第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、前記第1磁気ヘッドに向かって前記第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、
前記第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、前記カード移動路を移動する前記カードの移動方向において、前記第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりも前記カード挿入口側に配置され、
前記第1付勢機構による前記第1磁気ヘッドの付勢力は、前記第2付勢機構による前記第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、
前記第2磁気ヘッドの前記磁気ギャップの近傍にセラミックス製のヘッド摩耗抑制部が形成され、
前記第1磁気ヘッドの前記磁気ギャップは、前記カードの厚さ方向において、前記ヘッド摩耗抑制部と対向していることを特徴とするカードリーダ。
【請求項3】
カードが挿入されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードが移動するカード移動路と、前記カード移動路を移動する前記カードの厚さ方向の一方側から前記カード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、前記カードの厚さ方向の他方側から前記カード移動路に臨むとともに前記第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、前記第2磁気ヘッドに向かって前記第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、前記第1磁気ヘッドに向かって前記第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、
前記第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、前記カード移動路を移動する前記カードの移動方向において、前記第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりも前記カード挿入口側に配置され、
前記第1付勢機構による前記第1磁気ヘッドの付勢力は、前記第2付勢機構による前記第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、
前記第1磁気ヘッドの前記磁気ギャップの近傍にセラミックス製の第2ヘッド摩耗抑制部が形成され、
前記第2磁気ヘッドの前記磁気ギャップは、前記カードの厚さ方向において、前記第2ヘッド摩耗抑制部と対向していることを特徴とするカードリーダ。
【請求項4】
前記第1付勢機構は、前記第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、前記ヘッド固定部材を支持する支持部材と、前記ヘッド固定部材を付勢するバネ部材とを備え、
前記第1磁気ヘッドは、前記ヘッド固定部材を介して前記支持部材に片持ち支持されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記第1付勢機構は、前記第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、前記ヘッド固定部材を支持する支持部材と、前記ヘッド固定部材を付勢するバネ部材とを備え、
前記ヘッド固定部材は、前記第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部と、前記支持部材に支持されるとともに前記バネ部材に付勢される被支持部とを備え、
前記被支持部には、前記カードの厚さ方向への前記被支持部の変形を抑制する補強用のリブが形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された磁気データの読取りやカードへの磁気データの記録を行うカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録された磁気データを読み取るための手動式のカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、カード挿通溝と、カード挿通溝の両壁に対向して配置される2個の磁気ヘッドとを備えている。カード挿通溝を通過するカードの通過方向において、2個の磁気ヘッドは互いにずれた位置に配置されている。磁気ヘッドは、カード挿通溝の外側に配置される板バネに保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-190518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のカードリーダでは、カードの通過方向において、2個の磁気ヘッドが互いにずれた位置に配置されているため、カード挿通溝に挿入されて一方の磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、他方の磁気ヘッドに接触したときに、一方の磁気ヘッドがカードの厚さ方向に大きく動いて、カードの厚さ方向におけるカードの動きが不安定になるおそれがある。すなわち、特許文献1のカードリーダでは、カードの厚さ方向において、カード挿通溝に挿入されて移動するカードの動きが不安定になるおそれがある。また、カードの厚さ方向におけるカードの動きが不安定になると、カードに記録された磁気データの読取り性能が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、カード挿入口から挿入されてカード移動路を移動するカードの厚さ方向で対向配置される2個の磁気ヘッドを備えていても、カードの厚さ方向において、カード挿入口から挿入されて移動するカードの動きを安定させることが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードが挿入されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されたカードが移動するカード移動路と、カード移動路を移動するカードの厚さ方向の一方側からカード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、カードの厚さ方向の他方側からカード移動路に臨むとともに第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、第2磁気ヘッドに向かって第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、第1磁気ヘッドに向かって第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、カード移動路を移動するカードの移動方向において、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置され、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、カードの移動方向を前後方向とすると、カードは、後ろ側に向かってカード挿入口に挿入されるとともに、前側に向かってカード挿入口から抜き取られ、カードがカードリーダに取り込まれて停止しているときに、カードの前端は、第2磁気ヘッドの磁気ギャップより後ろ側に配置されるとともに、カードの前端部は、第1磁気ヘッドと第2磁気ヘッドとの間に挟まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明のカードリーダでは、カードの移動方向において、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置されており、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっている。そのため、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向の一方側への第1磁気ヘッドの動きを抑制することが可能になる。
【0008】
すなわち、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向において動きが抑制された第1磁気ヘッドに沿ってカードを移動させることが可能になる。したがって、本発明では、カードの厚さ方向で対向配置される2個の磁気ヘッドをカードリーダが備えていても、カードの厚さ方向において、カード挿入口から挿入されて移動するカードの動きを安定させることが可能になる。
【0009】
また、本発明では、カードがカードリーダに取り込まれて停止しているときに、カードの前端が第2磁気ヘッドの磁気ギャップより後ろ側に配置されているため、カードリーダに取り込まれて停止しているカードを前側に移動させるときに、まず、第2磁気ヘッドにカードの厚さ方向の他方側への力が作用するが、本発明では、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力が第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力よりも小さくなっているため、第2磁気ヘッドにカードの厚さ方向の他方側への力が作用したときに、第2磁気ヘッドがカードの厚さ方向の他方側へ動きやすくなる。したがって、カードリーダに取り込まれて停止しているカードを前側に移動させるときにカードを移動させやすくなる。
また、本発明では、カードがカードリーダに取り込まれて停止しているときにカードの前端部が第1磁気ヘッドと第2磁気ヘッドとの間に挟まれているため、カードがカードリーダに取り込まれて停止しているときに、第2磁気ヘッドは、カードリーダにカードが挿入されていない待機時よりもカードの厚さ方向の他方側に配置されている。したがって、カードリーダに取り込まれて停止しているカードを前側に移動させたときの、カードの厚さ方向の他方側への第2磁気ヘッドの移動量を小さくすることが可能になる。その結果、カードリーダに取り込まれて停止しているカードを前側に移動させて、たとえば、カードに記録された磁気データを第2磁気ヘッドで読み取るときの、カードの厚さ方向におけるカードの動きが不安定になりにくくなる。
【0010】
また、上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードが挿入されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されたカードが移動するカード移動路と、カード移動路を移動するカードの厚さ方向の一方側からカード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、カードの厚さ方向の他方側からカード移動路に臨むとともに第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、第2磁気ヘッドに向かって第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、第1磁気ヘッドに向かって第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、カード移動路を移動するカードの移動方向において、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置され、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、第2磁気ヘッドの磁気ギャップの近傍にセラミックス製のヘッド摩耗抑制部が形成され、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、カードの厚さ方向において、ヘッド摩耗抑制部と対向していることを特徴とする。
本発明のカードリーダでは、カードの移動方向において、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置されており、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっている。そのため、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向の一方側への第1磁気ヘッドの動きを抑制することが可能になる。
すなわち、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向において動きが抑制された第1磁気ヘッドに沿ってカードを移動させることが可能になる。したがって、本発明では、カードの厚さ方向で対向配置される2個の磁気ヘッドをカードリーダが備えていても、カードの厚さ方向において、カード挿入口から挿入されて移動するカードの動きを安定させることが可能になる。
また、本発明では、第2磁気ヘッドの磁気ギャップの近傍にセラミックス製のヘッド摩耗抑制部が形成され、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、カードの厚さ方向において、ヘッド摩耗抑制部と対向しているため、カードの厚さ方向で対向配置される第1磁気ヘッドと第2磁気ヘッドとが接触しても、第1磁気ヘッドで読み取られる磁気データにノイズが発生するのを抑制することが可能になる。
【0011】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードが挿入されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されたカードが移動するカード移動路と、カード移動路を移動するカードの厚さ方向の一方側からカード移動路に臨む第1磁気ヘッドと、カードの厚さ方向の他方側からカード移動路に臨むとともに第1磁気ヘッドに対向配置される第2磁気ヘッドと、第2磁気ヘッドに向かって第1磁気ヘッドを付勢する第1付勢機構と、第1磁気ヘッドに向かって第2磁気ヘッドを付勢する第2付勢機構とを備え、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、カード移動路を移動するカードの移動方向において、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置され、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっており、第1磁気ヘッドの磁気ギャップの近傍にセラミックス製の第2ヘッド摩耗抑制部が形成され、第2磁気ヘッドの磁気ギャップは、カードの厚さ方向において、第2ヘッド摩耗抑制部と対向していることを特徴とする。
本発明のカードリーダでは、カードの移動方向において、第1磁気ヘッドの磁気ギャップは、第2磁気ヘッドの磁気ギャップよりもカード挿入口側に配置されており、第1付勢機構による第1磁気ヘッドの付勢力は、第2付勢機構による第2磁気ヘッドの付勢力よりも大きくなっている。そのため、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向の一方側への第1磁気ヘッドの動きを抑制することが可能になる。
すなわち、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向において動きが抑制された第1磁気ヘッドに沿ってカードを移動させることが可能になる。したがって、本発明では、カードの厚さ方向で対向配置される2個の磁気ヘッドをカードリーダが備えていても、カードの厚さ方向において、カード挿入口から挿入されて移動するカードの動きを安定させることが可能になる。
また、本発明では、第1磁気ヘッドの磁気ギャップの近傍にセラミックス製の第2ヘッド摩耗抑制部が形成され、第2磁気ヘッドの磁気ギャップは、カードの厚さ方向において、第2ヘッド摩耗抑制部と対向しているため、カードの厚さ方向で対向配置される第1磁気ヘッドと第2磁気ヘッドとが接触しても、第2磁気ヘッドで読み取られる磁気データにノイズが発生するのを抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、第1付勢機構は、第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、ヘッド固定部材を支持する支持部材と、ヘッド固定部材を付勢するバネ部材とを備え、第1磁気ヘッドは、ヘッド固定部材を介して支持部材に片持ち支持されている。
【0013】
この場合には、カードの厚さ方向に第1磁気ヘッドが動いたときに、カードの移動方向において第1磁気ヘッドの磁気ギャップの位置がずれやすくなるが、本発明では、カード挿入口から挿入されて第1磁気ヘッドに接触したカードの先端部がその後、第2磁気ヘッドに接触しても、カードの厚さ方向の一方側への第1磁気ヘッドの動きを抑制することが可能になるため、第1磁気ヘッドが支持部材に片持ち支持されていても、カードの移動方向における第1磁気ヘッドの磁気ギャップの位置のずれを抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、第1付勢機構は、第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、ヘッド固定部材を支持する支持部材と、ヘッド固定部材を付勢するバネ部材とを備え、ヘッド固定部材は、第1磁気ヘッドが固定されるヘッド固定部と、支持部材に支持されるとともにバネ部材に付勢される被支持部とを備え、被支持部には、カードの厚さ方向への被支持部の変形を抑制する補強用のリブが形成されていることが好ましい。このように構成すると、補強用のリブによって、カードの厚さ方向の一方側への第1磁気ヘッドの動きを効果的に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のカードリーダでは、カード挿入口から挿入されてカード移動路を移動するカードの厚さ方向で対向配置される2個の磁気ヘッドを備えていても、カードの厚さ方向において、カード挿入口から挿入されて移動するカードの動きを安定させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの斜視図である。
図2図1に示すカードリーダを別の角度から示す斜視図である。
図3図1に示す第1磁気ヘッド、第1付勢機構および図2に示す第2磁気ヘッド、第2付勢機構の構成を説明するための側面図である。
図4図3に示す第1磁気ヘッドおよびヘッド固定部材の斜視図である。
図5図3に示す第2磁気ヘッドの平面図である。
図6図1に示すカードリーダにカードが取り込まれて停止している状態を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(カードリーダの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。図2は、図1に示すカードリーダ1を別の角度から示す斜視図である。図3は、図1図2に示す磁気ヘッド6、7および付勢機構8、9の構成を説明するための側面図である。
【0021】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りやカード2への磁気データの記録を行う装置である。具体的には、カードリーダ1は、カードリーダ1へのカード2の挿入とカードリーダ1からのカード2の抜取りとを手動で行って磁気データの読取りや記録を行ういわゆるディップ式のカードリーダである。すなわち、カードリーダ1は、手動式のカードリーダである。
【0022】
カード2は、たとえば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。カード2には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。具体的には、カード2の両面に磁気ストライプが形成されている。なお、カード2にICチップが内蔵されていても良い。また、カード2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0023】
カードリーダ1には、カード2が挿入されるカード挿入口3が形成されている(図1参照)。また、カードリーダ1には、カード挿入口3から挿入されたカード2が移動するカード移動路4が形成されている。カードリーダ1は、カード挿入口3およびカード移動路4が形成される本体フレーム5と、本体フレーム5を覆うケース体(図示省略)とを備えている。また、カードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りおよびカード2への磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う2個の磁気ヘッド6、7を備えている。本形態の磁気ヘッド6は、第1磁気ヘッドであり、磁気ヘッド7は、第2磁気ヘッドである。
【0024】
さらに、カードリーダ1は、磁気ヘッド6を付勢する第1付勢機構としての付勢機構8と、磁気ヘッド7を付勢する第2付勢機構としての付勢機構9と、カードリーダ1の制御回路が実装される回路基板10と、磁気ヘッド6、7と回路基板10とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板(FPC(Flexible printed circuits))11とを備えている。以下の説明では、フレキシブルプリント基板11を「FPC11」とする。
【0025】
本形態では、手動で操作されるカード2は、図1等に示すX方向に移動する。すなわち、X方向は、カード移動路4を移動するカード2の移動方向である。また、カード2は、X方向の一方側であるX1方向側に向かってカード挿入口3に挿入されるとともに、X方向の他方側であるX2方向側に向かってカード挿入口3から抜き取られる。また、X方向に直交する図1等のZ方向は、カード移動路4を移動するカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに直交する図1等のY方向は、カード移動路4を移動するカード2の幅方向(短手幅方向)である。
【0026】
以下の説明では、カード2の移動方向であるX方向を前後方向とする。また、Y方向を左右方向とし、Z方向を上下方向とする。また、カードリーダ1へのカード2の挿入方向側であるX1方向側を「後ろ」側とし、カードリーダ1からのカード2の抜取り方向側であるX2方向側を「前」側とする。また、左右方向の一方側であるY1方向側を「右」側とし、左右方向の他方側であるY2方向側を「左」側とし、上下方向の一方側であるZ1方向側を「上」側とし、上下方向の他方側であるZ2方向側を「下」側とする。
【0027】
本体フレーム5は、上下方向に分割される上フレーム15と下フレーム16とから構成されている。上フレーム15は、本体フレーム5の上側部分を構成し、下フレーム16は、本体フレーム5の下側部分を構成している。カード移動路4は、上フレーム15と下フレーム16との間に形成されている。上フレーム15および下フレーム16は、樹脂で形成されている。具体的には、上フレーム15は、導電性を有する導電性樹脂で形成され、下フレーム16は、導電性を有しない絶縁性の樹脂で形成されている。本形態では、上フレーム15は、本体フレーム5のフレームグランドになっている。
【0028】
また、本体フレーム5は、カードリーダ1に挿入されたカード2の後端側部分が収容されるカード収容部5aと、磁気ヘッド6、7が配置されるヘッド配置部5bと、カード挿入口3から挿入されたカード2を案内するためのカード案内部5cとを備えている。ヘッド配置部5bおよびカード案内部5cは、カード収容部5aよりも前側に配置されている。ヘッド配置部5bおよびカード案内部5cと、カード収容部5aとの間には、鍔状に広がる鍔部5dが形成されている。ヘッド配置部5bおよびカード案内部5cは、鍔部5dから前側へ突出している。ヘッド配置部5bとカード案内部5cとは、左右方向において間隔をあけた状態で形成されている。本形態では、ヘッド配置部5bが右側に配置され、カード案内部5cが左側に配置されている。
【0029】
磁気ヘッド6、7は、ヘッド配置部5bの前端側に取り付けられている。磁気ヘッド6は、上側からカード移動路4に臨むように配置されている。磁気ヘッド7は、下側からカード移動路4に臨むように配置されている。具体的には、磁気ヘッド6は、磁気データの読取り位置である磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aが上側からカード移動路4に臨むように配置され、磁気ヘッド7は、磁気データの読取り位置である磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aが下側からカード移動路4に臨むように配置されている。
【0030】
磁気ヘッド6と磁気ヘッド7とは、左右方向において略同じ位置に配置されており、上下方向で対向している。すなわち、磁気ヘッド7は、磁気ヘッド6に対向配置されている。図3に示すように、磁気ヘッド6と磁気ヘッド7とは、前後方向において互いにずれた位置に配置されている。具体的には、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aが、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aよりも前側に配置されている。すなわち、磁気ギャップ6aは、前後方向において、磁気ギャップ7aよりもカード挿入口3側に配置されている。磁気ヘッド6、7の具体的な構成については後述する。
【0031】
回路基板10は、略長方形の平板状に形成されたリジッド基板である。回路基板10は、上フレーム15の上面に固定されている。また、回路基板10は、カード収容部5aの上面に固定されている。上述のように、FPC11は、磁気ヘッド6、7と回路基板10とを電気的に接続している。すなわち、回路基板10には、FPC11を介して磁気ヘッド6、7が電気的に接続されている。また、回路基板10には、共通のFPC11を介して2個の磁気ヘッド6、7が電気的に接続されている。
【0032】
FPC11は、所定形状に折り曲げられた状態で本体フレーム5に沿って引き回されている。FPC11は、一端側が回路基板10に繋がる帯状の共通基板部11aと、一端側が磁気ヘッド6に繋がるとともに他端が共通基板部11aの他端に繋がる帯状の第1基板部11bと、一端側が磁気ヘッド7に繋がるとともに他端が共通基板部11aの他端に繋がる帯状の第2基板部11cとから構成されている。すなわち、FPC11は、共通基板部11aの他端から分岐する2個の第1基板部11bおよび第2基板部11cを備えている。共通基板部11aの一端部は、回路基板10に実装されるコネクタ17に差し込まれている(図1参照)。
【0033】
(磁気ヘッドおよび付勢機構の構成)
図4は、図3に示す磁気ヘッド6およびヘッド固定部材22の斜視図である。図5は、図3に示す磁気ヘッド7の平面図である。図6は、図1に示すカードリーダ1にカード2が取り込まれて停止している状態を説明するための側面図である。
【0034】
磁気ヘッド6は、磁気ギャップ6aが形成されるコアと、コアに巻回されるコイルと、コイルの端部が接続される棒状の端子6bと、コアおよびコイルが収容されるヘッドケース6cとを備えている。本形態の磁気ヘッド6は、2本の端子6bを備えている。上述のように、磁気ヘッド6は、磁気ギャップ6aが上側からカード移動路4に臨むように配置されており、端子6bは、磁気ヘッド6の上端側に配置されている。端子6bは、端子6bの長手方向と上下方向とが略一致するように配置されている。
【0035】
端子6bの大半部分は、ヘッドケース6cに収容されているが、端子6bの上端部は、ヘッドケース6cから上側に突出している。すなわち、端子6bの上端は、ヘッドケース6cの上端よりも上側に配置されている。端子6bには、第1基板部11bの一端側が接続されている。具体的には、第1基板部11bの一端側は、2本の端子6bに半田付けされて固定されており、端子6bに電気的に接続されている。
【0036】
端子6bは、樹脂封止部材18によって覆われている(図4参照)。樹脂封止部材18は、磁気ヘッド6の上面の全体を覆うように磁気ヘッド6の上面側に盛られており、第1基板部11bの一端側の、端子6bに半田付けされた部分も樹脂封止部材18によって覆われている。樹脂封止部材18は、たとえば、不透明なエポキシ樹脂である。なお、磁気ヘッド6の上面側に樹脂封止部材18が塗布された後に第1基板部11bの一部分が樹脂封止部材18の上側を覆うように、第1基板部11bの一端側は折り返されている。
【0037】
磁気ヘッド7は、磁気ヘッド6と同様に、磁気ギャップ7aが形成されるコアと、コアに巻回されるコイルと、コイルの端部が接続される棒状の端子と、コアおよびコイルが収容されるヘッドケース7cとを備えている。上述のように、磁気ヘッド7は、磁気ギャップ7aが下側からカード移動路4に臨むように配置されており、磁気ヘッド7の端子は、磁気ヘッド7の下端側に配置されている。磁気ヘッド7では、端子の全体がヘッドケース7cの中に収容されている。
【0038】
磁気ヘッド7の端子には、第2基板部11cの一端側が半田付けされて固定されており、第2基板部11cの一端側は、磁気ヘッド7の端子に電気的に接続されている。磁気ヘッド7の端子は、樹脂封止部材18と同様の樹脂封止部材によって覆われている。具体的には、ヘッドケース7cの内部に樹脂封止部材が充填されており、第2基板部11cの一端側の、磁気ヘッド7の端子に半田付けされた部分も樹脂封止部材によって覆われている。
【0039】
図5に示すように、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aの近傍には、磁気ヘッド7の摩耗を抑制するためのセラミックス製のヘッド摩耗抑制部7dが形成されている。具体的には、磁気ギャップ7aを前後方向で挟む2個のヘッド摩耗抑制部7dが磁気ヘッド7に形成されている。ヘッド摩耗抑制部7dは、左右方向を長手方向とする直線状に形成されている。磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aは、上下方向において、ヘッド摩耗抑制部7dと対向している。具体的には、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aは、磁気ギャップ7aの前側に配置されるヘッド摩耗抑制部7dと隙間を介して上下方向で対向している。
【0040】
付勢機構8は、下側に向かって磁気ヘッド6を付勢している。すなわち、付勢機構8は、下側から磁気ヘッド6に対向する磁気ヘッド7に向かって磁気ヘッド6を付勢している。付勢機構9は、上側に向かって磁気ヘッド7を付勢している。すなわち、付勢機構9は、上側から磁気ヘッド7に対向する磁気ヘッド6に向かって磁気ヘッド7を付勢している。
【0041】
付勢機構8は、磁気ヘッド6が固定されるヘッド固定部材22と、ヘッド固定部材22を支持する支持部材としての支持ピン23と、ヘッド固定部材22を付勢するバネ部材としての圧縮コイルバネ24とを備えている。本形態の付勢機構8は、2本の支持ピン23を備えている。ヘッド固定部材22は、薄鋼板を所定形状に折り曲げることで形成されている。本形態のヘッド固定部材22は、ステンレス鋼製の薄板で形成された板バネである。ヘッド固定部材22は、磁気ヘッド6が固定されるヘッド固定部22aと、支持ピン23に支持されるとともに圧縮コイルバネ24に付勢される被支持部22bとから構成されている。
【0042】
被支持部22bは、ヘッド固定部22aの後ろ側に配置されており、被支持部22bの前端は、ヘッド固定部22aの後端に繋がっている。図4に示すように、被支持部22bは、前後方向を長手方向とする長方形の平板状に形成される平板部22cを備えている。平板部22cは、平板部22cの厚さ方向と上下方向とが略一致するように配置されている。平板部22cには、支持ピン23の一部を構成する後述の軸部23aが挿通される2個の貫通穴22dが形成されている。貫通穴22dは、上下方向で平板部22cを貫通している。2個の貫通穴22dは、前後方向に間隔をあけた状態で形成されている。また、貫通穴22dは、平板部22cの左右の中心位置に形成されている。
【0043】
被支持部22bには、被支持部22bの上下方向の変形を抑制する補強用のリブ22eが形成されている。リブ22eは、左右方向における平板部22cの両端面から上側に向かって立ち上がっている。また、リブ22eは、前後方向を長手方向とする長方形の平板状に形成されており、リブ22eの厚さ方向と左右方向とが略一致するように配置されている。リブ22eは、前後方向における被支持部22bの全域に形成されている。
【0044】
ヘッド固定部22aは、長方形の枠状に形成されている。ヘッド固定部22aには、磁気ヘッド6の上端部が固定されている。ヘッド固定部22aは、磁気ヘッド6のヘッドケース6cに接触している。上述のように、磁気ヘッド6の上面側には、磁気ヘッド6の上面の全体を覆うように樹脂封止部材18が盛られている。ヘッド固定部22aには、樹脂封止部材18を囲む囲み部22fが形成されている。すなわち、ヘッド固定部材22には、樹脂封止部材18を囲む囲み部22fが形成されている。
【0045】
囲み部22fの上端は、ヘッドケース6cの上端よりも上側に配置されている。本形態では、ヘッド固定部22aの、ヘッドケース6cの上端よりも上側に配置される部分が囲み部22fとなっている。また、囲み部22fの上端は、端子6bの上端よりも上側に配置されている。なお、囲み部22fの上端は、上下方向において端子6bの上端と同じ位置に配置されていても良いし、端子6bの上端より下側に配置されていても良い。
【0046】
囲み部22fは、ヘッドケース6cの前側に配置される平板状の前面部22gと、ヘッドケース6cの後ろ側に配置される平板状の後面部22hと、ヘッドケース6cの左右の両側に配置される平板状の側面部22jとから構成されており、上下方向から見たときに、樹脂封止部材18を全周に亘って囲んでいる。前面部22gは、前面部22gの厚さ方向と前後方向とが略一致するように配置され、後面部22hは、後面部22hの厚さ方向と前後方向とが略一致するように配置されている。側面部22jは、側面部22jの厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。
【0047】
側面部22jは、リブ22eに繋がっており、左右方向においてリブ22eと同じ位置に配置されている。また、平板部22cの前端に繋がるとともに上側に向かって直角に折り曲げられた平板状の部分の上端側部分が後面部22hとなっている。また、図4(A)に示すように、たとえば、左側に配置される側面部22jの前端に繋がるとともに右側に向かって直角に折り曲げられた平板状の部分の上端側部分が前面部22gとなっている。
【0048】
なお、図4(B)に示すように、ヘッド固定部22aの左右の側面部の下端の先端部同士を繋ぐ平板状の接続部22kがヘッド固定部22aに形成されていて、接続部22kの後端に繋がるとともに上側に向かって直角に折り曲げられた平板状の部分の上端側部分が前面部22gとなっていても良い。接続部22kは、接続部22kの厚さ方向と前後方向とが略一致するように配置されている。
【0049】
囲み部22fの一部分は、磁気ヘッド6を本体フレーム5のフレームグランド(すなわち、上フレーム15)に接続するためのフレームグランド端子22p(以下、「FG端子22p」とする。)となっている。たとえば、右側に配置される側面部22jの一部分がFG端子22pとなっている。FG端子22pは、前後方向における側面部22jの略中心位置に配置されている。FG端子22pの前後の両側には、スリットが形成されている。
【0050】
なお、FG端子22pは、磁気ヘッド6の上面に向かって略直角に折り曲げられた後、FPC11の第1基板部11bの一端側に半田付けされて固定されている。FPC11には、フレームグランド用パターン配線が形成されており、FG端子22pは、FPC11のフレームグランド用パターン配線に電気的に接続されている。FPC11のフレームグランド用パターン配線は、上フレーム15に電気的に接続されている。また、樹脂封止部材18を磁気ヘッド6の上面に塗布するときには、硬化前の樹脂封止部材18が、FG端子22pが形成された箇所からヘッド固定部材22の外側に流れ出ないように、FG端子22pが形成された箇所はマスキングされている。
【0051】
支持ピン23は、上フレーム15に固定されている。2本の支持ピン23は、前後方向に間隔をあけた状態で配置されている。2本の支持ピン23は、ヘッド固定部材22を下側から支持している。支持ピン23は、ヘッド固定部材22の貫通穴22dに挿通される軸部23aと、被支持部22bを下側から支持する支持部23bとから構成されている。支持部23bの下端部は、上フレーム15に固定されている。
【0052】
2本の支持ピン23は、ヘッド固定部材22を介して磁気ヘッド6を支持している。上述のように、被支持部22bは、ヘッド固定部22aの後ろ側に配置されており、2本の支持ピン23は、磁気ヘッド6よりも後ろ側に配置されている。すなわち、本形態では、磁気ヘッド6は、ヘッド固定部材22を介して2本の支持ピン23に片持ち支持されている。磁気ヘッド6は、2本の支持ピン23に対して前後方向を揺動の軸方向とする揺動が可能となっている。
【0053】
圧縮コイルバネ24には、2本の支持ピン23のうちの前側に配置される支持ピン23の軸部23aが挿入されている。圧縮コイルバネ24の下端は、ヘッド固定部材22の平板部22cの上面に接触している。具体的には、圧縮コイルバネ24の下端は、前後方向におけるヘッド固定部材22の略中心位置で平板部22cの上面に接触している。圧縮コイルバネ24の上端は、上フレーム15に固定されるバネ保持部材25に接触している。圧縮コイルバネ24は、ヘッド固定部材22を下側に付勢している。すなわち、圧縮コイルバネ24は、ヘッド固定部材22をカード移動路4側に付勢している。
【0054】
本形態では、磁気ヘッド6とFPC11と樹脂封止部材18とヘッド固定部材22とによって磁気ヘッド機構27(図1参照)が構成されている。
【0055】
付勢機構9は、磁気ヘッド7が固定されるヘッド固定部材31と、ヘッド固定部材31を支持する支持ピン32と、ヘッド固定部材31を付勢する圧縮コイルバネ33とを備えている。本形態の付勢機構9は、2本の支持ピン32を備えている。ヘッド固定部材31は、ステンレス鋼板等の薄鋼板を所定形状に折り曲げることで形成された板バネである。ヘッド固定部材31は、磁気ヘッド7が固定されるヘッド固定部31aと、2本の支持ピン32のうちの一方の支持ピン32に支持されるとともに圧縮コイルバネ33に付勢される被支持部31bと、他方の支持ピン32に支持される被支持部31cとから構成されている。
【0056】
被支持部31bは、ヘッド固定部31aの前側に配置され、被支持部31cは、ヘッド固定部31aの後ろ側に配置されている。被支持部31b、31cは、平板状に形成されており、被支持部31b、31cの厚さ方向と上下方向とが略一致するように配置されている。ヘッド固定部31aには、磁気ヘッド7の下端部が固定されている。支持ピン32は、ピン固定板34に固定されている。ピン固定板34は、下フレーム16に固定されている。
【0057】
2本の支持ピン32は、ヘッド固定部材31を下側から支持している。支持ピン32は、被支持部31b、31cの左右方向の中心位置に形成された貫通穴に挿通される軸部32aと、被支持部31b、31cを下側から支持する支持部32bとから構成されている。支持部32bの下端部は、ピン固定板34に固定されている。2本の支持ピン32は、ヘッド固定部材31を介して磁気ヘッド7を支持している。すなわち、磁気ヘッド7は、ヘッド固定部材31を介して2本の支持ピン32に両持ち支持されている。磁気ヘッド7は、2本の支持ピン32に対して前後方向を揺動の軸方向とする揺動が可能となっている。
【0058】
圧縮コイルバネ33には、磁気ヘッド7の前側に配置される支持ピン32が挿通されている。圧縮コイルバネ33の下端は、ピン固定板34の上面に接触している。圧縮コイルバネ33の上端は、被支持部31bの下面に接触している。圧縮コイルバネ33は、ヘッド固定部材31を上側に付勢している。すなわち、圧縮コイルバネ33は、ヘッド固定部材31をカード移動路4側に付勢している。なお、本形態では、下フレーム16に形成または固定されるストッパ部材によってヘッド固定部材31の上側への移動が規制されており、カードリーダ1にカード2が挿入されていない待機時においても、上下方向で対向配置される磁気ヘッド6と磁気ヘッド7とは接触していない。
【0059】
付勢機構8による磁気ヘッド6の付勢力は、付勢機構9による磁気ヘッド7の付勢力よりも大きくなっている。そのため、カード挿入口3から挿入されたカード2が磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間を通過するときには、図3の二点鎖線で示すように、磁気ヘッド7は、付勢機構9の付勢力に抗して下側へ動くが、磁気ヘッド6は、上側へ動かない。
【0060】
また、本形態では、カード2がカードリーダ1に取り込まれて停止しているときに、図6に示すように、カード2の前端は、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aより後ろ側に配置されるとともに、カード2の前端部は、磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間に挟まれている。上述のように、付勢機構8による磁気ヘッド6の付勢力が付勢機構9による磁気ヘッド7の付勢力よりも大きくなっているため、このときには、磁気ヘッド7は、カードリーダ1にカード2が挿入されていない待機時よりも下側に移動している(図6の二点鎖線参照)。
【0061】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aは、前後方向において、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aよりもカード挿入口3側に配置されている。また、本形態では、付勢機構8による磁気ヘッド6の付勢力が付勢機構9による磁気ヘッド7の付勢力よりも大きくなっており、カード2が磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間を通過するときに、磁気ヘッド7は下側へ動くが、磁気ヘッド6は上側へ動かない。すなわち、本形態では、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド6に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド7に接触しても、磁気ヘッド6は上側へ動かない。
【0062】
そのため、本形態では、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド6に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド7に接触しても、上側に動かない磁気ヘッド6に沿ってカード2を移動させることが可能になる。したがって、本形態では、上下方向で対向配置される2個の磁気ヘッド6、7をカードリーダ1が備えていても、カード挿入口3から挿入されて移動するカード2の上下方向の動きを安定させることが可能になる。
【0063】
また、本形態では、ヘッド固定部材22の被支持部22bに、被支持部22bの上下方向の変形を抑制する補強用のリブ22eが形成されているため、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド6に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド7に接触したときの、磁気ヘッド6の上側への動きを確実に規制することが可能になる。したがって、本形態では、上下方向で対向配置される2個の磁気ヘッド6、7をカードリーダ1が備えていても、カード挿入口3から挿入されたカード2の上下方向の動きをより安定させることが可能になる。
【0064】
本形態では、カード2がカードリーダ1に取り込まれて停止しているときに、カード2の前端は、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aより後ろ側に配置されている。そのため、本形態では、カードリーダ1に取り込まれて停止しているカード2を前側に移動させるときに、まず、磁気ヘッド7に下側への力が作用するが、本形態では、付勢機構9による磁気ヘッド7の付勢力が付勢機構8による磁気ヘッド6の付勢力よりも小さくなっているため、磁気ヘッド7に下側への力が作用したときに、磁気ヘッド7が下側へ動きやすくなる。したがって、本形態では、カードリーダ1に取り込まれて停止しているカード2を前側に移動させるときにカード2を移動させやすくなる。
【0065】
また、本形態では、カード2がカードリーダ1に取り込まれて停止しているときに、カード2の前端は、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aより後ろ側に配置されるとともに、カード2の前端部は、磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間に挟まれており、磁気ヘッド7は、カードリーダ1にカード2が挿入されていない待機時よりも下側に移動している。そのため、本形態では、カードリーダ1に取り込まれて停止しているカード2を前側に移動させたときの、磁気ヘッド7の下側への移動量を小さくすることが可能になる。したがって、本形態では、カードリーダ1に取り込まれて停止しているカード2を前側に移動させて、たとえば、カード2に記録された磁気データを磁気ヘッド7で読み取るときの、上下方向におけるカード2の動きが不安定になりにくくなる。
【0066】
本形態では、磁気ヘッド6は、ヘッド固定部材22を介して2本の支持ピン23に片持ち支持されている。磁気ヘッド6が片持ち支持されていると、磁気ヘッド6が上側に動いたときに、前後方向において磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aの位置がずれやすくなるが、本形態では、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド6に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド7に接触しても、磁気ヘッド6は上側へ動かない。そのため、本形態では、磁気ヘッド6が片持ち支持されていても、前後方向における磁気ギャップ6aの位置のずれを抑制することが可能になる。
【0067】
本形態では、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aは、上下方向において、ヘッド摩耗抑制部7dと対向している。そのため、本形態では、上下方向で対向配置される磁気ヘッド6と磁気ヘッド7とが万が一接触しても、磁気ヘッド6で読み取られる磁気データにノイズが発生するのを抑制することが可能になる。
【0068】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0069】
上述した形態において、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aが、前後方向において、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aよりもカード挿入口3側に配置されていても良い。この場合には、付勢機構9による磁気ヘッド7の付勢力が付勢機構8による磁気ヘッド6の付勢力よりも大きくなっており、カード2が磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間を通過するときに、磁気ヘッド6は上側へ動くが、磁気ヘッド7は下側へ動かない。すなわち、この場合には、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド7に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド6に接触しても、磁気ヘッド7は下側へ動かない。
【0070】
そのため、この場合には、カード挿入口3から挿入されて磁気ヘッド7に接触したカード2の後端部がその後、磁気ヘッド6に接触しても、下側に動かない磁気ヘッド7に沿ってカード2を移動させることが可能になる。したがって、この場合には、上下方向で対向配置される2個の磁気ヘッド6、7をカードリーダ1が備えていても、カード挿入口3から挿入されたカード2の上下方向における動きを安定させることが可能になる。なお、この場合の磁気ヘッド7は第1磁気ヘッドであり、磁気ヘッド6は第2磁気ヘッドであり、付勢機構9は第1付勢機構であり、付勢機構8は第2付勢機構である。
【0071】
上述した形態において、磁気ヘッド6の磁気ギャップ6aの近傍に、磁気ヘッド6の摩耗を抑制するためのセラミックス製の第2ヘッド摩耗抑制部が形成されていても良い。具体的には、磁気ギャップ6aを前後方向で挟む2個の第2ヘッド摩耗抑制部が磁気ヘッド6に形成されていても良い。この場合には、磁気ヘッド7の磁気ギャップ7aは、上下方向において、第2ヘッド摩耗抑制部と対向している。具体的には、磁気ギャップ7aは、磁気ギャップ6aの後ろ側に配置される第2ヘッド摩耗抑制部と隙間を介して上下方向で対向している。
【0072】
この場合には、上下方向で対向配置される磁気ヘッド6と磁気ヘッド7とが万が一接触しても、磁気ヘッド7で読み取られる磁気データにノイズが発生するのを抑制することが可能になる。なお、上述した形態において、磁気ヘッド7にヘッド摩耗抑制部7dが形成されていなくても良い。
【0073】
上述した形態において、磁気ヘッド6は、ヘッド固定部材22を介して2本の支持ピン23に両持ち支持されていても良い。また、上述した形態において、磁気ヘッド7は、ヘッド固定部材31を介して2本の支持ピン32に片持ち支持されていても良い。また、上述した形態において、カード2がカードリーダ1に取り込まれて停止しているときに、カード2の前端部が磁気ヘッド6と磁気ヘッド7との間に挟まれていなくても良い。
【0074】
上述した形態において、FG端子22pに代えて、ヘッド固定部材22と別体で形成されたFG端子が磁気ヘッド6に固定されていても良い。また、上述した形態において、磁気ヘッド6の端子6bの全体がヘッドケース6cの中に収容されていても良い。この場合には、ヘッド固定部22aに囲み部22fが形成されていない。さらに、上述した形態において、リブ22eは、前後方向における被支持部22bの一部に形成されていても良い。また、被支持部22bにリブ22eが形成されていなくても良い。また、上述した形態において、カードリーダ1は、カード2を自動で搬送するカード搬送機構を有するカード搬送式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 カードリーダ
2 カード
3 カード挿入口
4 カード移動路
6 磁気ヘッド(第1磁気ヘッド)
6a 磁気ギャップ
7 磁気ヘッド(第2磁気ヘッド)
7a 磁気ギャップ
7d ヘッド摩耗抑制部
8 付勢機構(第1付勢機構)
9 付勢機構(第2付勢機構)
22 ヘッド固定部材
22a ヘッド固定部
22b 被支持部
22e リブ
23 支持ピン(支持部材)
24 圧縮コイルバネ(バネ部材)
X 前後方向、カードの移動方向
X1 後ろ側
X2 前側
Z カードの厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6