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  • 特許-位相調整器付単巻変圧器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】位相調整器付単巻変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/12 20060101AFI20221121BHJP
   H01F 29/02 20060101ALI20221121BHJP
   G05F 1/20 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H01F30/12 P
H01F29/02 N
G05F1/20 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018189510
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020061394
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】千切 健史
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩撫 直和
(72)【発明者】
【氏名】作山 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基博
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徹
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-044821(JP,A)
【文献】特開昭62-044819(JP,A)
【文献】特開昭63-106021(JP,A)
【文献】特開昭63-033804(JP,A)
【文献】特開昭62-044817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/12
H01F 29/02
G05F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧の三相交流電圧がそれぞれ入力される3つの入力端子と、
三相それぞれに対応して設けられた直列巻線、分路巻線、位相調整タップ巻線、電圧調整タップ巻線、三次巻線、および励磁巻線を備え、
各相の前記直列巻線のそれぞれは、直列第1端子と直列第2端子を備え、自相に対応する前記入力端子に前記直列第1端子が接続され、前記第1電圧の交流を前記第1電圧よりも低い第2電圧の交流に変換して前記直列第2端子に出力し、
各相の前記位相調整タップ巻線のそれぞれは、巻回数の調整が可能なものであり、位相調整第1端子と位相調整第2端子を備え、前記位相調整第1端子には自相に対応する前記直列第2端子が接続され、前記位相調整第1端子に入力された交流の位相を調整して前記位相調整第2端子に出力し、
各相の前記分路巻線のそれぞれは、分路第1端子と分路第2端子を備え、前記分路第1端子には自相に対応する前記位相調整第2端子が接続され、前記分路第1端子に入力された前記第2電圧の交流を前記第2電圧よりも低い第3電圧に変換して前記分路第2端子に出力し、
各相の前記電圧調整タップ巻線のそれぞれは、巻回数の調整が可能なものであり、電圧調整第1端子と電圧調整第2端子を備え、前記電圧調整第1端子は自相に対応する前記分路第2端子と接続されると共に、前記電圧調整第2端子は他相の前記電圧調整第2端子と接続されて接地され、
各相の前記励磁巻線のそれぞれは、励磁第1端子と励磁第2端子を備え、前記位相調整タップ巻線を励磁し、前記励磁第2端子は他相の前記励磁第2端子と接続され、
各相の前記三次巻線のそれぞれは、他相の前記三次巻線とデルタ結線されると共に、自相に対応する前記直列巻線および前記分路巻線と磁気結合され、
前記三次巻線における前記デルタ結線の接続点は、前記励磁第1端子に接続される、
を備える位相調整器付単巻変圧器。
【請求項2】
前記位相調整タップ巻線のタップを制御する制御部を更に備える、
請求項1に記載の位相調整器付単巻変圧器。
【請求項3】
各相の前記位相調整タップ巻線と前記励磁巻線とが、それぞれ第1鉄心に同心円状に巻回され、
各相の前記直列巻線、前記分路巻線、前記電圧調整タップ巻線、および前記三次巻線が、前記第1鉄心と異なる第2鉄心に同心円状に巻回されている、
請求項1または2に記載の位相調整器付単巻変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位相調整器付単巻変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
電源端と需要端の間を連系する電力系統は、2つ以上の異なるルートを持ち、かつ並列に接続された送電線路で構成されることがある。このとき各送電線に流れる潮流(電流の大きさと方向)は、電圧の位相差を変化させることで、制御することができる。ところで、一次側および二次側が共に有効接地系統に接続される変圧器は、小型軽量化の観点から単巻変圧器が用いられる場合がある。従来、電圧の位相差を調整する位相調整器(例えば、位相調整タップ巻線)と、電圧を変圧する単巻変圧器とが一体に構成された位相調整器付単巻変圧器に関する技術が知られている。
【0003】
過去に位相調整器付単巻変圧器として発明された構造では、単巻変圧器の分路巻線の中性点側に、直列に位相調整タップ巻線が接続される。このため、過去に位相調整器付単巻変圧器として発明された構造では、単巻変圧器の直列巻線に印加する電圧と、分路巻線に印加する電圧とのうち、一方の電圧について位相調整タップ巻線によって位相を調整すると、他方の電圧の位相も変化してしまう。また、位相の調整に伴い、単巻変圧器の直列巻線に印加する電圧と、分路巻線に印加する電圧の比率(変圧比)が変化するため、変圧比を所定の値にするためには、電圧タップ巻線によって電圧を調整(例えば、増幅、又は減衰)させることが求められる。ただし、電圧タップ巻線によって調整できる電圧の範囲は限られるため、過去に位相調整器付単巻変圧器として発明された構造では、直列巻線変圧前の電圧と分路巻線に印加する電圧との変圧比が大きく変わらないような範囲でしか位相角を調整することができない、つまり、位相角の調整範囲を広くとることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-106021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より広い調整範囲に亘って位相角を調整することができる位相調整器付単巻変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の位相調整器付単巻変圧器は、直列巻線と、分路巻線と、位相調整タップ巻線と、励磁巻線とを持つ。前記直列巻線は、第1端子に第1電圧の交流が印加され、前記第1電圧の交流を前記第1電圧よりも低い第2電圧の交流に変換する。前記分路巻線は、前記直列巻線の第2端子側に自身の第1端子が接続されると共に、自身の各相の第2端子が互いに接続される。前記位相調整タップ巻線は、自身の第1端子に前記第2電圧の交流が入力され、自身の第2端子が前記直列巻線の第2端子と接続され、前記第1電圧の交流と前記第2電圧の交流との位相差を調整する。前記励磁巻線は、前記位相調整タップ巻線が巻かれた鉄心を励磁する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の位相調整器付単巻変圧器1の構成の一例を示す図である。
図2図1に示される位相調整器付単巻変圧器1の相毎の接続関係の一例を示す図である。
図3】実施形態の位相調整器20による位相調整の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の位相調整器付単巻変圧器を、図面を参照して説明する。
【0009】
(実施形態)
[位相調整器付単巻変圧器1の構成]
図1は、実施形態の位相調整器付単巻変圧器1の構成の一例を示す図である。図1に示される通り、位相調整器付単巻変圧器1は、単巻変圧器10と、位相調整器20とを備える。本実施形態の単巻変圧器10は、三相の高圧交流電圧を三相の低圧交流電圧に変圧し、或いは三相の低圧交流電圧を三相の高圧交流電圧に変圧する変圧器である。
【0010】
以降の説明において、高圧交流電圧の第1相をU相と称し、第2相をV相と称し、第3相をW相と記載する。また、低圧交流電圧の第1相をu相と称し、第2相をv相と称し、第3相をw相と称する。また、u相およびU相に係る構成には、符号の末尾に「u」を付し、v相およびV相に係る構成には、符号の末尾に「v」を付し、w相およびW相に係る構成には、符号の末尾に「w」を付し、いずれの相の構成であるかを特に区別しない場合には、「u」、「v」、或いは「w」の符号を省略する。
【0011】
単巻変圧器10は、例えば、交流の相毎に同様の構成を有する。具体的には、単巻変圧器10は、U相に係る構成として、一次端子tmHuと、二次端子tmLuと、主巻線12uと、鉄心IR1u(不図示)とを備える。主巻線12uは、直列巻線122uと、分路巻線124uとを含む。単巻変圧器10は、V相に係る構成として、一次端子tmHvと、二次端子tmLvと、主巻線12vと、鉄心IR1v(不図示)とを備える。主巻線12vは、直列巻線122vと、分路巻線124vとを含む。単巻変圧器10は、W相に係る構成として、一次端子tmHwと、二次端子tmLwと、主巻線12wと、主巻線12wが巻き付けられる鉄心IR1w(不図示)とを備える。主巻線12wは、直列巻線122wと、分路巻線124wとを含む。また、単巻変圧器10は、三次巻線16を備える。一次端子tmHの電圧は、二次端子tmLの電圧よりも高い電圧である。
【0012】
各電圧調整タップ巻線14は、一端が互いに接続され、接地される。以降の説明において、電圧調整タップ巻線14の一端が接続される箇所を、中性点C1と称する。
【0013】
位相調整器20は、例えば、単巻変圧器10が変圧する交流の相毎に同様の構成を有する。具体的には、位相調整器20は、U相に係る構成として、位相調整タップ巻線22uと、位相調整タップ巻線22uを励磁する励磁巻線24uと、位相調整タップ巻線22uと励磁巻線24uとが巻き付けられる鉄心IR2u(不図示)とを備える。位相調整器20は、V相に係る構成として、位相調整タップ巻線22vと、位相調整タップ巻線22vを励磁する励磁巻線24vと、位相調整タップ巻線22vと励磁巻線24vとが巻き付けられる鉄心IR2v(不図示)とを備える。位相調整器20は、W相に係る構成として、位相調整タップ巻線22wと、位相調整タップ巻線22wを励磁する励磁巻線24wと、位相調整タップ巻線22wと励磁巻線24wとが巻き付けられる鉄心IR2w(不図示)とを備える。また、位相調整器20は、安定巻線26を備える。
【0014】
各励磁巻線24は、一端が互いに接続される。以降の説明において、励磁巻線24の一端が接続される箇所を、中性点C2と称する。
【0015】
[位相調整器付単巻変圧器1の接続関係]
以下、図2を参照し、相毎の接続関係について説明する。図2は、図1に示される位相調整器付単巻変圧器1の相毎の接続関係の一例を示す図である。図2に示される通り、位相調整器付単巻変圧器1は、直列巻線122と、分路巻線124と、電圧調整タップ巻線14と、三次巻線16と、位相調整タップ巻線22と、励磁巻線24と、安定巻線26とは、第1端子tm1と、第2端子tm2とを相ごとに備える。なお、電圧調整タップ巻線14の第1端子tm1および第2端子tm2は、電圧調整タップ巻線14が備えるタップ切換器の接点であり、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1および第2端子tm2は、位相調整タップ巻線22が備えるタップ切換器の接点である。
【0016】
単巻変圧器10の各相の巻線は、鉄心IR1を軸とし、鉄心IR1の径方向に、鉄心IR1に近い順から、電圧調整タップ巻線14、三次巻線16、分路巻線124、直列巻線122の順に巻き付けられる。位相調整器20の各相の巻線は、鉄心IR2を軸とし、鉄心IR2の径方向に、鉄心IR2に近い順から、安定巻線26、励磁巻線24、位相調整タップ巻線22の順に巻き付けられる。なお、これらの鉄心と巻線との構成は、一例であって、これに限られない。
【0017】
上述した順序によって各巻線が鉄心IRに巻き付けられることにより、対応する相の主巻線12と位相調整タップ巻線22とが、それぞれ一次側、二次側として機能する。
【0018】
直列巻線122の第1端子tm1には一次端子tmHが接続され、第2端子tm2には位相調整タップ巻線22の第1端子tm1が接続される。位相調整タップ巻線22の第2端子tm2には、二次端子tmLと、分路巻線124の第1端子tm1とが接続される。分路巻線124の第2端子tm2には、電圧調整タップ巻線14の第1端子tm1が接続される。上述したように、電圧調整タップ巻線14の一端(図示する第2端子tm2)は、中性点C1に接続される。
【0019】
三次巻線16の第1端子tm1は、励磁巻線24の第1端子tm1にそれぞれ接続され、第2端子tm2は、他の相の三次巻線16の第2端子tm2に接続される。図1に示される通り、各三次巻線16は、第1端子tm1が他の相の三次巻線16の第2端子tm2にそれぞれ接続され、デルタ結線される。また、図1に示される通り、各励磁巻線24の第2端子tm2は、中性点C2において互いに接続されることにより、スター結線される。また、デルタ結線される三次巻線16と、スター結線される励磁巻線24とは、デルタ・スター(Δ・Y)接続される。
【0020】
安定巻線26は、第1端子tm1が他の相の安定巻線26の第2端子tm2にそれぞれ接続され、デルタ結線される。デルタ結線された安定巻線26は、例えば、接地されてもよい。
【0021】
[位相調整器付単巻変圧器1が備える各部の機能]
以下、上述したように接続される場合の各部の機能について説明する。主巻線12は、直列巻線122と、分路巻線124との巻線比によって、主巻線12に印加される電圧を変圧する。具体的には、単巻変圧器10の一次端子tmHに印加される電圧は、直列巻線122と、分路巻線124との巻線比に応じて変圧され、変圧された電圧が二次端子tmLに生じる。また、単巻変圧器10の二次端子tmLに印加される電圧は、直列巻線122と、直列巻線122との巻線比に応じて変圧され、変圧された電圧が一次端子tmHに生じる。以降の説明において、一次端子tmHに印加される電圧(つまり、直列巻線122の第1端子tm1と、中性点C1との間に生じる電圧)を「第1電圧V1」と称する。また、二次端子tmLに印加される電圧(つまり、位相調整タップ巻線22の第2端子tm2および分路巻線124の第1端子tm1と、中性点C1との間に生じる電圧)を「第2電圧V2」と称する。
【0022】
電圧調整タップ巻線14は、位相調整器20によって位相が調整された後の当該電圧を調整(例えば、増幅、又は減衰)する。
【0023】
三次巻線16は、上述したように、デルタ結線されており、スター結線される励磁巻線24と、デルタ・スター接続される。また、位相調整タップ巻線22と、励磁巻線24とが有する巻線の中で、巻線22uおよび巻線24wと、巻線22vおよび巻線24uと、巻線22wおよび巻線24vとが、鉄心IR2が有する脚の中で同一の脚に巻かれる(つまり、巻線22uおよび巻線24wと、巻線22vおよび巻線24uと、巻線22wおよび巻線24vとの位相は、等しくなる)。この接続により、位相調整タップ巻線22は、単巻変圧器10に対し、電圧波形の位相を90[度]異ならせることができる。
【0024】
位相調整タップ巻線22は、励磁巻線24によって励磁されることにより、位相調整タップ巻線22自身の第1端子tm1と第2端子tm2との間に電圧を生じさせる。位相調整タップ巻線22は、例えば、不図示の制御装置によってタップ位置を調整(変更)されることにより、第1端子tm1と第2端子tm2との間の電圧の大きさが調整される。位相調整タップ巻線22と単巻変圧器10の電圧波形の位相は90[度]異なるため、第1端子tm1と第2端子tm2との間の電圧の大きさを調整することで、単巻変圧器10の電圧位相を調整することができる。以降の説明において、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1と第2端子tm2との間に生じる電圧を、「第3電圧V3」と称する。
【0025】
安定巻線26は、位相調整器付単巻変圧器1の励磁巻線24の励磁特性の非線形性に起因する高調波が、位相調整器付単巻変圧器1に印加される三相交流電圧に影響するのを抑制する。
【0026】
制御装置は、調整すべき電圧波形の位相角を算出する。制御装置は、算出した位相角に基づいて位相調整タップ巻線22のタップ位置を調整し、位相調整タップ巻線22自身の第1端子tm1と第2端子tm2との間に90[度]進み、または90[度]遅れの電圧を生じさせる。
【0027】
[位相調整器付単巻変圧器1の位相調整]
図3は、実施形態の位相調整器20による位相調整の一例を模式的に示す図である。図3に示されるベクトルVt1は、第1電圧V1の大きさと位相とを示し、ベクトルVt2は、第2電圧V2の大きさと位相とを示し、ベクトルVt3は、第3電圧V3の大きさと位相を示し、変換ベクトルVtt1は、位相調整タップ巻線22による位相調整後の第1電圧V1の大きさと位相とを示す。
【0028】
図3に示される通り、第1電圧V1は、303.1[kV](つまり、線間電圧525[kV])であり、第2電圧V2は、158.8[kV](つまり、線間電圧275[kV])である。また、上述したように、直列巻線122と分路巻線124とは、主巻線12として鉄心IR1に巻き付けられているため、位相調整タップ巻線22によって位相調整を行われていない場合、その位相差は0[度]である。したがって、ベクトルVt1とベクトルVt2との向きは、一致する。
【0029】
本実施形態における位相調整器付単巻変圧器1の接続関係では、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1と第2端子tm2との間に電圧が生じることによって、位相調整タップ巻線22の第2端子tm2側に対して第1端子tm1側の電位が変化する。したがって、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1と第2端子tm2との間に電圧が生じることによって、第1電圧V1の位相が変化し、第2電圧V2の位相が変化しない。
【0030】
図3に示される一例において、制御装置は、第1電圧V1の位相を10[度]調整することに伴い、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1と第2端子tm2との間に90[度]進み位相の92.6/√3[kV]の電圧を生じさせる。位相調整タップ巻線22によって位相が調整された後の第1電圧V1(つまり、変換ベクトルVtt1)の大きさは、ベクトルVt1とベクトルVt3とを合成した533.1/√3[kV]であり、変換ベクトルVtt1と、ベクトルVt1との位相差は、10[度]である。なお、これら電圧値および位相差は一例であって、これに限られない。
【0031】
上述したように、第1電圧V1の位相が調整された場合、ベクトルVt1の大きさ(つまり、第1電圧V1の大きさ)が変換ベクトルVtt1の大きさに変化する。電圧調整タップ巻線14は、例えば、制御装置によってタップ位置が調整(変更)されることにより、第1端子tm1と第2端子tm2との間に挿入される巻線の巻回数が調整される。これにより、第1電圧V1と第2電圧V2との変圧比が直列巻線122と分路巻線124との巻線比に応じた変圧比と一致するように、第1電圧V1、および第2電圧V2が調整(この一例では、減衰)される。制御装置は、電圧調整タップ巻線14のタップ位置を調整し、挿入する巻回数を調整することで、電圧調整タップ巻線14自身の第1端子tm1と第2端子tm2との間に電位差を生じさせる。
【0032】
なお、電圧調整タップ巻線14のタップ位置の調整は、位相調整タップ巻線22のタップ位置を調整する制御装置が行ってもよく、他の制御装置が行ってもよい。
【0033】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1は、直列巻線122と、分路巻線124と、位相調整タップ巻線22と、励磁巻線24とを持つ。直列巻線122は、第1端子tm1に第1電圧V1の交流が印加され、第1電圧V1の交流を第1電圧V1よりも低い第2電圧V2の交流に変換する。直列巻線122の第1端子tm1には、一次端子tmHが接続され、第2端子tm2には、位相調整タップ巻線22の第1端子tm1が接続される。位相調整タップ巻線22の第2端子tm2には、二次端子tmLと、分路巻線124の第1端子tm1とが接続される。分路巻線124の第2端子tm2には、電圧調整タップ巻線14の第1端子tm1が接続される。電圧調整タップ巻線14の一端は、中性点C1に接続される。位相調整タップ巻線22は、自身の第1端子tm1に第2電圧V2の交流が入力され、自身の第2端子tm2が直列巻線122の第2端子tm2と接続され、第1電圧V1の交流と第2電圧V2の交流とのうち少なくとも1つの位相を調整し、励磁巻線24は、位相調整タップ巻線22を励磁する。また、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1は、位相調整タップ巻線22の第2端子tm2と、分路巻線124の第1端子tm1とが接続される。また、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1は、三次巻線16を更に備える。三次巻線16は、直列巻線122と、分路巻線124と磁気結合する巻線であり、デルタ結線される。この場合、励磁巻線24は、スター結線され、三次巻線16と相毎に接続する。
【0034】
これにより、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1は、位相調整タップ巻線22によって第1電圧V1の位相のみが調整され、第2電圧V2の位相に影響を及ぼさないため、過去に位相調整器付単巻変圧器として発明された構造より広い調整範囲に亘って位相角を調整することができる。また、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1において、位相調整タップ巻線22には、直列巻線122に流れる電流のみが流れるため、位相調整タップ巻線22が備えるタップの電流容量を小さくすることができる。
【0035】
また、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1は、三次巻線16を位相調整器20の電源として使用することで、別途励磁用巻線を備える必要がなく、且つ三次巻線16と励磁巻線24とをデルタ・スター接続することにより、簡易な構成によって第1電圧V1および第2電圧V2と、第3電圧V3との位相差を90度にすることができる。また、本実施形態の位相調整器付単巻変圧器1の接続関係において、電圧調整タップ巻線14を中性点C1と分路巻線124との間に備えることにより、電圧調整タップ巻線14のタップに印加される電圧を低圧にすることができるため、タップの絶縁構成を簡易にすることができる。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1、1a…位相調整器付単巻変圧器、10…単巻変圧器、12、12u、12v、12w…主巻線、14…電圧調整タップ巻線、16…三次巻線、20…位相調整器、22、22u、22v、22w…位相調整タップ巻線、24、24u、24v、24w…励磁巻線、26…安定巻線、122、122u、122v、122w…直列巻線、124、124u、124v、124w…分路巻線、C1、C2…中性点、IR、IR1、IR1u、IR1v、IR1w、IR2、IR2u、IR2v、IR2w…鉄心、tmH、tmHu、tmHv、tmHw…一次端子、tmL、tmLu、tmLv、tmLw…二次端子
図1
図2
図3