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特許7179570ノイズ情報取得装置、ノイズ情報取得方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ノイズ情報取得装置、ノイズ情報取得方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20221121BHJP
【FI】
A61B5/346
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018192034
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058624
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏成
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526404(JP,A)
【文献】特開2018-83014(JP,A)
【文献】特開2017-104488(JP,A)
【文献】特開2003-10188(JP,A)
【文献】特開2012-5717(JP,A)
【文献】特開2013-172763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのバイタル信号をバイタルセンサから取得するバイタル信号取得部と、
前記バイタル信号において、前記バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第1ノイズ条件を満たす時間区間を第1ノイズ区間として検出する第1ノイズ推定部と、
前記バイタル信号に対して、ノイズの時間区間を除去することなくノイズを軽減するための信号処理を行うことによってノイズ軽減バイタル信号を生成するノイズ軽減処理部と、
前記ノイズ軽減バイタル信号において、前記ノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第2ノイズ条件を満たす時間区間を第2ノイズ区間として検出する第2ノイズ推定部と、
を備え
前記第1ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさは、前記第2ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさよりも大きい、ノイズ情報取得装置。
【請求項2】
前記バイタル信号又は前記ノイズ軽減バイタル信号のいずれかを用いて、前記第1ノイズ区間及び前記第2ノイズ区間の信号をノイズが発生している区間の信号として取り扱うことによってバイタル情報を取得するバイタル情報取得部をさらに備え
前記バイタル情報取得部は、ノイズが発生している区間の信号を用いること無く、ノイズが発生していない区間の信号のみに基づいて前記バイタル情報を取得する、請求項1に記載のノイズ情報取得装置。
【請求項3】
コンピュータが、ユーザのバイタル信号をバイタルセンサから取得するバイタル信号取得ステップと、
コンピュータが、前記バイタル信号において、前記バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第1ノイズ条件を満たす時間区間を第1ノイズ区間として検出する第1ノイズ推定ステップと、
コンピュータが、前記バイタル信号に対して、ノイズの時間区間を除去することなくノイズを軽減するための信号処理を行うことによってノイズ軽減バイタル信号を生成するノイズ軽減処理ステップと、
コンピュータが、前記ノイズ軽減バイタル信号において、前記ノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第2ノイズ条件を満たす時間区間を第2ノイズ区間として検出する第2ノイズ推定ステップと、
を有し、前記第1ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさは、前記第2ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさよりも大きい、ノイズ情報取得方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のノイズ情報取得装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイタル信号のノイズを推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間のバイタル情報をより簡易に取得できるようになってきている。バイタル情報は、人間の生命活動に関連する情報であり、例えば心拍や心電の情報を含む。例えば、繊維表面にコーティングを行うことで電極素材を生成する技術を用いて、着るだけでバイタル情報を取得することができるウェアラブルな技術が知られている。このような技術を用いることで、従来においては医療機器でしか取得できなかったバイタル情報を、日常生活においてリアルタイムに取得できるようになっている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-150102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バイタル情報が取得される環境によっては、取得されたバイタル情報にノイズが混入してしまう場合があった。例えば、ユーザの体の動きに応じてセンサの電極にズレが生じることによって、取得されるバイタル情報にノイズが混入してしまう場合があった。従来は、ユーザの体の動きとは異なる要因(例えば汗や呼吸の影響による接触インピーダンスの変動)に応じて生じるノイズの除去技術は提案されていたが、体の動きに応じて生じるノイズは適切に除去できていなかった。このようなノイズの混入により、得られるバイタル情報の精度が低下してしまうおそれがあった。
上記事情に鑑み、本発明は、バイタル情報の精度を向上させることができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ユーザのバイタル信号をバイタルセンサから取得するバイタル信号取得部と、前記バイタル信号において、前記バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第1ノイズ条件を満たす時間区間を第1ノイズ区間として検出する第1ノイズ推定部と、前記バイタル信号に対して、ノイズを軽減するための信号処理を行うことによってノイズ軽減バイタル信号を生成するノイズ軽減処理部と、前記ノイズ軽減バイタル信号において、前記ノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第2ノイズ条件を満たす時間区間を第2ノイズ区間として検出する第2ノイズ推定部と、を備えるノイズ情報取得装置である。
【0006】
本発明の一態様は、上記のノイズ情報取得装置であって、前記第1ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさは、前記第2ノイズ条件が示す振幅値の変化の大きさよりも大きい。
【0007】
本発明の一態様は、上記のノイズ情報取得装置であって、前記バイタル信号又は前記ノイズ軽減バイタル信号のいずれかを用いて、前記第1ノイズ区間及び前記第2ノイズ区間の信号をノイズが発生している区間の信号として取り扱うことによってバイタル情報を取得するバイタル情報取得部をさらに備える。
【0008】
本発明の一態様は、上記のノイズ情報取得装置であって、前記バイタル情報取得部は、ノイズが発生している区間の信号を用いること無く、ノイズが発生していない区間の信号のみに基づいて前記バイタル情報を取得する。
【0009】
本発明の一態様は、ユーザのバイタル信号をバイタルセンサから取得するバイタル信号取得ステップと、前記バイタル信号において、前記バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第1ノイズ条件を満たす時間区間を第1ノイズ区間として検出する第1ノイズ推定ステップと、前記バイタル信号に対して、ノイズを軽減するための信号処理を行うことによってノイズ軽減バイタル信号を生成するノイズ軽減処理ステップと、前記ノイズ軽減バイタル信号において、前記ノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である第2ノイズ条件を満たす時間区間を第2ノイズ区間として検出する第2ノイズ推定ステップと、を有するノイズ情報取得方法である。
【0010】
本発明の一態様は、上記のノイズ情報取得装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、バイタル情報の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のノイズ情報取得システムのシステム構成を示す概略ブロック図である。
図2】バイタル信号取得部によって取得されるバイタル信号の波形の具体例を示す図である。
図3】バイタル信号取得部によって取得されるバイタル信号の波形の拡大図である。
図4】ノイズ軽減処理部によって取得されるノイズ軽減バイタル信号の波形の具体例を示す図である。
図5】ノイズ情報取得装置の処理の概略を示す図である。
図6】バイタル情報取得部の処理の概略を示す図である。
図7】ノイズ情報取得装置の動作例を示すフローチャートである。
図8】ノイズ情報取得装置の第1の変形例の機能構成を示す図である。
図9】ノイズ情報取得装置の第2の変形例の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のノイズ情報取得システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。ノイズ情報取得システム100は、ノイズ情報取得装置10及びバイタルセンサ20を備える。ノイズ情報取得装置10と、バイタルセンサ20とは、通信を行うことによってデータを送受信する。ノイズ情報取得装置10と各センサとの間で行われる通信は、無線通信であってもよいし有線通信であってもよい。この通信は、例えば短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))であってもよい。
【0014】
ノイズ情報取得装置10は、例えばスマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器等を用いて構成される。ノイズ情報取得装置10は、バイタルセンサ20によって取得されたバイタル信号を無線通信又は有線通信によって取得する。ノイズ情報取得装置10は、バイタルセンサ20において取得されたバイタル信号におけるノイズの発生を推定する。ノイズ情報取得装置10は、ノイズの推定結果とバイタル信号とに基づいて、バイタル情報を取得する。ノイズ情報取得装置10は、例えばノイズが発生していると推定された区間のバイタル信号を用いずに、バイタル情報を取得してもよい。このような処理によって、ノイズ情報取得装置10は、より精度の高いバイタル情報を取得できる。
【0015】
バイタルセンサ20は、ユーザのバイタル信号を取得する。バイタル信号は、ユーザの体の生命活動に関連する情報を示す信号である。バイタル信号は、例えば心臓の活動電位、呼吸活動、血圧等の時系列の変化を示す信号である。本実施形態では、バイタルセンサ20は、ユーザの心臓の活動電位(心電のデータ)をバイタル信号として取得する。バイタルセンサ20は、取得されたバイタル信号に、バイタル信号が取得された日時を対応付けて無線通信又は有線通信によってノイズ情報取得装置10に送信する。バイタルセンサ20は、例えばウェアラブルに構成されてもよい。
【0016】
次に、ノイズ情報取得装置10の具体的な機能構成について説明する。ノイズ情報取得装置10は、通信部11、バイタル信号記憶部12、ノイズ情報記憶部13、ノイズ軽減バイタル信号記憶部14、バイタル情報記憶部15及び制御部16を備える。
【0017】
通信部11は、ネットワークインターフェースを用いて構成される。通信部11は、バイタルセンサ20との間でデータを送受信する。通信部11は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信を用いてバイタルセンサ20と通信してもよいし、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信を用いてバイタルセンサ20と通信してもよい。
【0018】
バイタル信号記憶部12は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。バイタル信号記憶部12は、制御部16によって取得されたバイタル信号を記憶する。バイタル信号記憶部12は、そのバイタル信号が取得された日時の情報とバイタル信号とを対応付けて記憶してもよい。
【0019】
ノイズ情報記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。ノイズ情報記憶部13は、制御部16によって推定されたノイズ情報を記憶する。ノイズ情報は、バイタル信号においてノイズが発生したと推定された区間を示す情報である。
【0020】
ノイズ軽減バイタル信号記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。ノイズ軽減バイタル信号記憶部14は、ノイズ軽減バイタル信号を記憶する。ノイズ軽減バイタル信号は、バイタルセンサ20から取得されたバイタル信号に対し、制御部16がノイズ軽減処理を行うことによって生成される信号である。ノイズ軽減バイタル信号は、バイタル信号に比べてノイズが軽減されている。
【0021】
バイタル情報記憶部15は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。バイタル情報記憶部15は、制御部16によってノイズ軽減バイタル信号から取得されたバイタル情報を記憶する。バイタル情報は、バイタル信号やノイズ軽減バイタル信号を解析することによって得られる情報である。バイタル情報は、例えば心拍数や、R波が検出された区間を示す情報や、R波に基づいて取得される情報(例えばR-R間隔)である。
【0022】
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部16は、プロセッサがノイズ情報取得プログラムを実行することによって、バイタル信号取得部161、第1ノイズ推定部162、ノイズ軽減処理部163、第2ノイズ推定部164及びバイタル情報取得部165として機能する。なお制御部16の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、ノイズ情報取得プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、ノイズ情報取得プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0023】
バイタル信号取得部161は、通信部11によって受信されたデータのうち、バイタルセンサ20から受信されたデータからバイタル信号を取得する。バイタル信号取得部161は、取得されたバイタル信号をバイタル信号記憶部12に書き込む。
【0024】
第1ノイズ推定部162は、第1ノイズ条件に基づいて、バイタル信号においてノイズが発生したか否か推定する。第1ノイズ条件は、バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である。第1ノイズ推定部162は、バイタル信号の時間区間のうち、第1ノイズ条件を満たす時間区間(以下「第1ノイズ区間」という。)について、ノイズが発生したと推定する。例えば、第1ノイズ条件は、所定の長さの時間区間においてバイタル信号の振幅値の変化幅が所定の閾値を超えることである。第1ノイズ推定部162は、第1ノイズ条件を満たした第1ノイズ区間を示す情報をノイズ情報記憶部13に記録する。
【0025】
ノイズ軽減処理部163は、バイタル信号記憶部12に記憶されているバイタル信号に対し、ノイズを軽減する処理を実行する。ノイズ軽減処理部163によって実行されるノイズ軽減処理は、バイタル信号からノイズを軽減することを目的として設計されたどのような処理が適用されてもよい。ノイズ軽減処理部163によって実行されるノイズ軽減処理には、既存の技術が適用されてもよい。例えば、ノイズ軽減処理の具体例として、バイタルセンサ20の周囲に存在する電気器具等から発生する電磁波を除去する処理や、バイタルセンサ20が装着された生体から発生する不要な電圧を除去する処理などがある。ノイズ軽減処理部163がノイズ軽減処理を実行することによって、ノイズ軽減バイタル信号が生成される。ノイズ軽減処理部163は、ノイズ軽減バイタル信号をノイズ軽減バイタル信号記憶部14に記録する。
【0026】
第2ノイズ推定部164は、第2ノイズ条件及びノイズ軽減バイタル信号に基づいて、バイタル信号においてノイズが発生したか否か推定する。第2ノイズ条件は、ノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化が所定の基準を超えて大きいことを示す条件である。第2ノイズ推定部164は、ノイズ軽減バイタル信号の時間区間のうち、第2ノイズ条件を満たす時間区間(以下「第2ノイズ区間」という。)について、ノイズが発生したと推定する。例えば、第2ノイズ条件は、所定の長さの時間区間においてノイズ軽減バイタル信号の振幅値の変化幅が所定の閾値を超えることである。第2ノイズ条件における振幅値に関する閾値は、第1ノイズ条件における振幅値に関する閾値よりも小さい。第2ノイズ推定部164は、第2ノイズ条件を満たした第2ノイズ区間を示す情報をノイズ情報記憶部13に記録する。
【0027】
バイタル情報取得部165は、ノイズ軽減バイタル信号記憶部14に記憶されているノイズ軽減バイタル信号を用いて、第1ノイズ区間及び第2ノイズ区間の信号をノイズが発生している区間の信号として取り扱うことによって、バイタル情報を取得する。バイタル情報取得部165は、ノイズが発生している区間の信号に対しては、ノイズが発生していない区間の信号とは異なる取り扱いを行う。例えば、バイタル情報取得部165は、ノイズが発生している区間の信号を用いること無く、ノイズが発生していない区間の信号のみに基づいてバイタル情報を取得してもよい。例えば、バイタル情報取得部165は、ノイズが発生している区間の信号を、ノイズが発生していない区間の信号に基づいて推定し、推定結果を用いてバイタル情報を取得してもよい。推定処理の具体例について説明する。例えば、バイタル情報取得部165は、ノイズが発生している区間の前後においてノイズが発生していない区間で検出されたR波(以下「正常R波」という。)に基づいて、ノイズが発生している区間におけるR波の発生タイミング及びその波形を推定してもよい。より具体的には、正常R波同士の時間間隔の中間値又は平均値に基づいて、ノイズが発生している区間のR波の発生タイミングが推定されてもよい。また、複数の正常R波の波形の中間値又は平均値に基づいて、ノイズが発生している区間のR波の波形が推定されてもよい。ノイズが発生している区間のR波の発生タイミング及びその波形の推定処理は、上述した具体例に限定される必要は無い。バイタル情報取得部165は、取得されたバイタル情報をバイタル情報記憶部15に記録する。
【0028】
図2は、バイタル信号取得部161によって取得されるバイタル信号の波形の具体例を示す図である。図2において、各点は、離散的に得られた各時刻におけるバイタル信号の振幅値を示す。バイタル信号の波形は、このような離散的に得られる各時刻の振幅値を繋ぐことによって得られる。
【0029】
図3は、バイタル信号取得部161によって取得されるバイタル信号の波形の拡大図である。図3では、各振幅値が得られた時刻をt1~t26という値で示している。第1ノイズ推定部162は、例えば隣接する各時刻の振幅値の差が所定の閾値を超えている場合に、第1ノイズ条件が満たされたと判定してもよい。図3の例では、例えば時刻t5における振幅値y_5と、時刻t6における振幅値y_6と、の差を示すY_5-6の値が所定の閾値を超えていることが第1ノイズ条件であってもよい。このような第1ノイズ条件が設定されている場合、第1ノイズ推定部162は、隣接する各時刻間の振幅値の差を算出し、その差が第1ノイズ条件の閾値を超えているか否か判定する。そして、第1ノイズ条件が満たされた場合、それらの振幅値が得られた各時刻の値を第1ノイズ区間としてノイズ情報記憶部13に記録する。第1ノイズ区間の時刻の値は、1つの時刻のみによって示されてもよいし、複数の時刻を用いて示されてもよい。例えば、上述したように時刻t5及び時刻t6の振幅値が第1ノイズ条件を満たしている場合、時刻t5のみが第1ノイズ区間を示す情報として記録されてもよいし、時刻t5及び時刻t6の組み合わせが第1ノイズ区間を示す情報として記録されてもよい。
【0030】
なお、第1ノイズ条件は、必ずしも隣接する時刻間の振幅値が閾値を超えていることである必要は無い。例えば、n(nは1以上の整数)離れた時刻の振幅値の差が閾値を超えていることであってもよい。図3の例では、n=4の場合には、例えば時刻t1の振幅値と時刻t4の振幅値との差が閾値を超えているか否かが判定されてもよい。このような判定が、各時刻において実行される。第1ノイズ条件は、n離れた時刻の間に得られた複数の振幅値の最大値と最小値との差が閾値を超えていることであってもよい。図3の例では、n=4の場合には、例えば時刻t1から時刻t4までの間に得られた各振幅値(すなわちt1,t2,t3及びt4の各振幅値)の最大値と最小値との差が閾値を超えているか否かが判定されてもよい。このような判定が、各時刻において実行される。第1ノイズ条件は、単位時間当たりの振幅値の変化量が閾値を超えていることであってもよい。図3の例では、例えば時刻t1の振幅値と時刻t4の振幅値との差を、時刻t4と時刻t1との間に経過した時間の長さで除算することによって、単位時間当たりの振幅値の変化量が算出されてもよい。
【0031】
第2ノイズ推定部164も、第1ノイズ推定部162と同様の処理を行う。ただし、第2ノイズ推定部164は、バイタル信号ではなくノイズ軽減バイタル信号に基づいて第2ノイズ条件が満たされたか否かを判定する。また、上述したように、第1ノイズ条件で用いられる閾値に比べて、第2ノイズ条件で用いられる閾値はより小さい値を有する。そのため、第1ノイズ条件ではノイズが発生していないと推定された波形であっても、第2ノイズ条件ではノイズが発生したと推定される場合がある。第2ノイズ条件で用いられる時間の区間を示すm(mは1以上の整数)は、第1ノイズ条件で用いられる時間の区間を示すnと一致する値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0032】
図4は、ノイズ軽減処理部163によって取得されるノイズ軽減バイタル信号の波形の具体例を示す図である。図4において、各点は、離散的に得られた各時刻におけるノイズ軽減バイタル信号の振幅値を示す。ノイズ軽減バイタル信号の波形は、このような離散的に得られる各時刻の振幅値を繋ぐことによって得られる。
【0033】
図5は、ノイズ情報取得装置10の処理の概略を示す図である。図5(A)は、第1ノイズ推定部162によって第1ノイズ区間と判定された区間の具体例を示す図である。図5(B)は、ノイズ軽減処理部163によって取得されたノイズ軽減バイタル信号の具体例を示す図である。図5(C)は、第2ノイズ推定部164によって第2ノイズ区間と判定された区間の具体例を示す図である。
【0034】
図5(A)において、矩形で囲まれた区間が第1ノイズ区間である。図5(A)に示されるように、符号90で示される極大値を含む区間は、第1ノイズ区間として推定されていない。図5(B)に示されるように、ノイズ軽減処理部163によってノイズ軽減処理がなされることによって、一部の区間の振幅値が小さくなっている。例えば、第1ノイズ区間として推定された各区間の極大値の値は、図5(A)に比べて図5(B)ではより小さい値になっている。図5(C)において、矩形で囲まれた区間が第2ノイズ区間である。図5(C)に示されるように、符号90で示される極大値を含む区間は、第1ノイズ区間としては推定されなかったが、第2ノイズ区間として推定される。図5(C)では、第1ノイズ区間又は第2ノイズ区間として推定された区間には“×”の印をつけている。これらの区間は、バイタル情報取得部165の処理では、ノイズの発生区間として取り扱われる。
【0035】
図6は、バイタル情報取得部165の処理の概略を示す図である。バイタル情報取得部165は、ノイズ軽減バイタル信号を解析することによってバイタル情報を取得する。その際に、バイタル情報取得部165は、ノイズ情報記憶部13に記憶されている第1ノイズ区間及び第2ノイズ区間の区間で得られた信号を処理に用いない。そのため、R波として符号91、92及び93で示される波形が取得される。実際には、第1ノイズ区間又は第2ノイズ区間として推定された区間の波形にも、R波として判定される条件を満たす波形があるが、この区間の信号はバイタル情報取得部165の処理に用いられないためR波として判定されない。また、R-R間隔(RRインターバル)の値は、解析に用いられる信号の区間に第1ノイズ区間及び第2ノイズ区間のいずれも含まれない区間を用いて得られてもよい。
【0036】
図7は、ノイズ情報取得装置10の動作例を示すフローチャートである。まず、ノイズ情報取得装置10のバイタル信号取得部161がバイタル信号のデータを取得する(ステップS101)。バイタル信号取得部161は、取得されたバイタル信号のデータをバイタル信号記憶部12に記録する。第1ノイズ推定部162は、バイタル信号記憶部12に記録されているバイタル信号と第1ノイズ条件に基づいて第1ノイズ区間を推定する(ステップS102)。第1ノイズ推定部162は、第1ノイズ区間を示す情報をノイズ情報記憶部13に記録する。
【0037】
ノイズ軽減処理部163は、バイタル信号に対してノイズ軽減処理を実行する(ステップS103)。ノイズ軽減処理部163は、ノイズ軽減処理の実行によって得られたノイズ軽減バイタル信号をノイズ軽減バイタル信号記憶部14に記録する。第2ノイズ推定部164は、ノイズ軽減バイタル信号記憶部14に記録されているノイズ軽減バイタル信号と第2ノイズ条件に基づいて第2ノイズ区間を推定する(ステップS104)。第2ノイズ推定部164は、第2ノイズ区間を示す情報をノイズ情報記憶部13に記録する。
【0038】
バイタル情報取得部165は、ノイズ軽減バイタル信号と、ノイズ情報記憶部に13に記録されているノイズ情報(第1ノイズ区間及び第2ノイズ区間)と、に基づいてバイタル情報を取得する(ステップS105)。そして、バイタル情報取得部165は、取得されたバイタル情報を出力する(ステップS106)。例えば、バイタル情報取得部165は、取得されたバイタル情報をバイタル情報記憶部15に記録する。
【0039】
このように構成されたノイズ情報取得装置10では、バイタル情報の精度を向上させることが可能となる。より具体的には以下のとおりである。従来は、ユーザの活動量が比較的小さい状態(安静時)にバイタル信号に対して生じるノイズについては、除去する技術がある程度提案されていた。一方で、ユーザの活動量が比較的大きな状態(活動時)にバイタル信号に対して生じるノイズについては、適切に除去する技術が提案されていなかった。このような問題に対し、ノイズ情報取得装置10では、バイタル信号及び第1ノイズ基準に基づいて第1ノイズ区間が推定され、ノイズ軽減バイタル信号及び第2ノイズ基準に基づいて第2ノイズ区間が推定される。このように、ノイズ軽減処理が行われる前の信号と、ノイズ軽減処理が行われた後の信号とでそれぞれノイズの発生が推定されることによって、より精度よくノイズの発生区間を推定することが可能となる。その結果、たとえユーザが活動中であったとしても、より精度よくバイタル信号やバイタル情報を取得することが可能となる。
【0040】
例えば、ノイズ軽減処理が行われる前はノイズとして推定可能なノイズ信号が、ノイズ軽減処理が行われることによって、ノイズとしての推定が困難となり、場合によってはR波として誤って検出されてしまうようなこともある。このような問題に対し、ノイズ情報取得装置10では、ノイズ軽減処理が行われる前のバイタル信号を用いてノイズが推定されるため、より精度よくノイズを推定することができる。
【0041】
(変形例)
図7に示される処理は、バイタル信号の全体が取得された後に実行されてもよいし、バイタル信号を取得する処理と並行して所定の周期で実行されてもよい。特に後者の場合、ステップS101の処理は、ステップS102以降の処理と並行して独立したタイミングで実行されてもよい。この場合ステップS102以降の処理は、所定の時間幅毎に実行されてもよい。
【0042】
図7に示される処理のうち、ステップS102の処理と、ステップS103及びステップS104の処理とは並行して実行されてもよい。また、ステップS102の処理がステップS103の後、又はステップS104の処理の後、に実行されてもよい。
【0043】
バイタル情報取得部165は、ノイズ軽減バイタル信号ではなく、ノイズが軽減される前のバイタル信号を用いてバイタル情報を取得してもよい。このように構成された場合であっても、第1ノイズ区間及び第2ノイズ区間の情報を用いてバイタル情報が取得されるため、精度の高いバイタル情報を取得することが可能となる。
【0044】
ノイズ情報取得装置10は、複数のコンピュータを用いて構成されてもよい。例えば、クラウドシステムを用いてノイズ情報取得装置10の機能が実装されてもよい。この場合、バイタルセンサ20とノイズ情報取得装置10との間は、インターネット等のネットワークを介して接続されてもよい。例えば、バイタルセンサ20を装着した者の近距離に設置又は装着された通信装置が存在し、バイタルセンサ20と通信装置とが通信可能に接続され、通信装置によってバイタル信号のデータがノイズ情報取得装置10に送信されてもよい。
【0045】
図8は、ノイズ情報取得装置10の第1の変形例(ノイズ情報取得装置10a)の機能構成を示す図である。ノイズ情報取得装置10aの制御部16aは、さらに情報提供部166としての機能を有してもよい。情報提供部166は、バイタル情報取得部165によって取得されたバイタル情報の全て又は一部を所定のユーザ端末に送信することによって、ユーザに情報を提供する。例えば、情報提供部166は、バイタルセンサ20を装着しているユーザが使用するユーザ端末に対し、そのユーザのバイタル信号から得られたバイタル情報を送信してもよい。例えば、情報提供部166は、バイタルセンサ20を装着しているユーザに関連する所定の人物(例えば管理者、上司)が使用するユーザ端末に対し、そのユーザのバイタル信号から得られたバイタル情報を送信してもよい。この場合、ノイズ情報取得装置10は、ネットワークを介してユーザ端末と通信するためのネットワークインターフェースとして第2通信部17を備えてもよい。
【0046】
図9は、ノイズ情報取得装置10の第2の変形例(ノイズ情報取得装置10b)の機能構成を示す図である。ノイズ情報取得装置10bの制御部16bは、バイタル情報取得部165の機能を有しないように構成されてもよい。この場合、制御部16bは、第1ノイズ推定部162及び第2ノイズ推定部164によって得られたノイズに関する情報を他の情報処理装置に提供するノイズ情報提供部167の機能を有してもよい。このように構成されることによって、バイタル情報を取得する機能を有する他の情報処理装置に対し、ノイズの情報を提供することが可能となる。この場合、他の情報処理装置におけるバイタル情報の取得の制度を向上させることが可能となる。なお、ノイズ情報の提供態様はどのようなものであってもよい。例えば、ノイズ情報そのものが提供されてもよいし、バイタル信号又はノイズ軽減バイタル信号に対して所定のフォーマットでノイズ情報が埋め込まれたデータが提供されてもよい。この場合、ノイズ情報取得装置10bは、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信するためのネットワークインターフェースとして第2通信部17を備えてもよい。
【0047】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100…ノイズ情報取得システム, 10…ノイズ情報取得装置, 20…バイタルセンサ, 11…通信部, 12…バイタル信号記憶部, 13…ノイズ情報記憶部, 14…ノイズ軽減バイタル信号記憶部, 15…バイタル情報記憶部, 16…制御部, 161…バイタル信号取得部, 162…第1ノイズ推定部, 163…ノイズ軽減処理部, 164…第2ノイズ推定部, 165…バイタル情報取得部, 166…情報提供部, 167…ノイズ情報提供部, 17…第2通信部
図1
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図8
図9