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特許7179576運行管理装置、運行管理システム及び運行管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】運行管理装置、運行管理システム及び運行管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/30 20120101AFI20221121BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20221121BHJP
   B61L 23/00 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
G06Q50/30
B61D19/02 T
B61D19/02 V
B61L23/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018197706
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020064570
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根尾 敦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 昭信
(72)【発明者】
【氏名】三谷 佳一
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278788(JP,A)
【文献】特開平10-203361(JP,A)
【文献】特開2013-052738(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01382506(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B61D 19/00 - 19/02
B61L 23/00 - 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理装置であって、
前記センサにより検出した対象物の情報に基づき、対象物の現在の状態として、位置と移動速度と移動方向を認識するセンサ情報認識部と、
前記センサ情報認識部が認識した前記対象物の現在の状態に基づき、前記対象物の未来の位置を予測する行動予測部と、
前記停留所ごとの前記輸送手段の既定の発車時刻と現在時刻の関係に基づいて、前記輸送手段の運行状況として、前記停留所ごとの前記輸送手段の既定の発車時刻を基準に、前記既定の発車時刻以前の第一の期間と、前記第一の期間の後でかつ既定の発車時刻前の第二の期間と、前記既定の発車時刻である第三の期間と、前記既定の発車時刻から遅れた第四の期間のいずれかであることを判断する運行情報管理部と、
前記行動予測部が予測した対象物の未来の位置と、前記運行情報管理部が判断する運行状況に基づき、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であり、かつ、前記輸送手段の扉を前記既定の発車時刻に支障なく閉めることが可能でない場合には、前記既定の発車時刻前であっても扉を閉めるように、前記輸送手段に具備される扉の開閉を制御する扉制御部と、
前記扉の開閉状態によって、前記輸送手段に具備される全ての扉が閉まっているわけではないと判断した場合には、前記輸送手段は発車不可と判断する発車可否判断部と、
を有することを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記行動予測部は、前記対象物が前記輸送手段に乗車する動作、および、前記対象物が前記輸送手段から降車する動作の少なくともひとつを予測する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記センサ情報認識部が認識した対象物の現在の状態あるいは前記行動予測部が予測する対象物の未来の位置によって、現在扉を安全に閉められるかどうかを判断する現時刻閉扉判断部を備え、
前記扉制御部は、前記運行情報管理部が判断する運行状況と、前記現時刻閉扉判断部の判断に基づいて、前記扉の開閉を制御する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記行動予測部が予測する対象物の未来の位置によって、前記停留所ごとの前記輸送手段の既定の発車時刻に扉を安全に閉められるかどうかを判断する発車時刻閉扉判断部を備え、
前記扉制御部は、前記運行情報管理部が判断する運行状況と、前記発車時刻閉扉判断部の判断に基づいて、前記扉の開閉を制御する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記センサ情報認識部が検出した対象物の現在の状態に基づいて、前記輸送手段内の混雑度を検出する混雑度計測部を備え、
前記扉制御部は検出した混雑度に基づき、前記扉の開閉を制御する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記センサ情報認識部が検出した対象物の現在の状態に基づいて、前記輸送手段の扉ごとの乗客の乗車数および降車数の少なくともひとつを駅ごとに学習する乗車統計学習推論部を備え、
前記扉制御部は、学習した乗客数および降車数の少なくともひとつに基づき、前記扉の開閉を制御する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記輸送手段の扉の閉扉時に前記対象物が扉に挟まっていないかを検出する異常検出部を有し、
前記異常検出部は、前記輸送手段の扉の閉扉時に前記対象物が扉に挟まっていること検出した場合、異常検出情報を前記扉制御部に出力し、
前記扉制御部は、前記異常検出部からの異常検出情報と、前記運行情報管理部が判断する運行状況に基づき、扉の開閉制御を実施する
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項8】
処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備える情報処理装置で実行され、センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理方法であって、
前記既定の運行情報に基づいて、前記停留所ごとの前記輸送手段の既定の発車時刻から所定の時間前までを、発車間際期間として判定する、運行情報管理ステップと、
前記センサにより検出した対象物の位置と移動速度と移動方向と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づき、未来において前記対象物が前記輸送手段に乗車するかどうかを予測する、行動予測ステップと、
前記対象物の位置と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づいて、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であるかを判断する、現時刻閉扉判断ステップと、
前記対象物の位置と移動速度と移動方向と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づいて、前記輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能であるかを判断する、発車時刻閉扉判断ステップと、を備え、
前記発車間際期間において前記対象物が前記輸送手段に乗車すると予測された場合、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であり、かつ、前記輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能で無い場合には、前記発車時刻前であっても扉を閉めることを特徴とする運行管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記発車間際期間は、前記既定の発車時刻までの時間が一定以下である期間である
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項10】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記発車間際期間は、前記発車時刻閉扉判断ステップにおいて、前記輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能であるかの判断が可能な期間である
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項11】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記発車間際期間において前記対象物が前記輸送手段に乗車すると予測されない場合、
前記発車時刻前であっても扉を閉める
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項12】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記発車間際期間において、前記扉が開いてから一定の時間は、無条件に扉を開状態に保つ
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項13】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記輸送手段の扉は一つあるいは複数であり、扉が複数ある場合には扉の開閉は個別に制御し、全ての扉が閉まったかどうかの判断に基づいて、発車の可否を判断する
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項14】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記運行情報管理ステップで、前記発車間際期間以前の所定期間を余裕有期間として判定し、
前記輸送手段内の混雑の有無を判定し、
前記輸送手段内が混雑有と判定され、かつ、前記余裕有期間において前記対象物が前記輸送手段に乗車すると予測された場合、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能である場合には、前記発車時刻前であっても扉を閉める
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項15】
請求項8に記載の運行管理方法であって、
前記運行情報管理ステップで、前記発車間際期間以前の所定期間を余裕有期間として判定し、
前記輸送手段の扉の乗車数の多少を判定し、
前記輸送手段の扉が乗車が少ないと判定され、かつ、前記余裕有期間において前記対象物が前記輸送手段に乗車すると予測された場合、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能である場合には、前記発車時刻前であっても扉を閉める
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項16】
請求項1に記載の運行管理装置を含む運行管理システムであって、
前記運行管理システムは前記センサを有することを特徴とする運行管理システム。
【請求項17】
請求項16に記載の運行管理システムであって、
前記センサは前記輸送手段の内外を検出可能な位置に設置される
ことを特徴とする運行管理システム。
【請求項18】
処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備える情報処理装置で構成され、センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理システムであって、
前記既定の運行情報に基づいて、前記停留所ごとの前記輸送手段の既定の発車時刻から所定の時間前までを、発車間際期間として判定する、運行情報管理部と、
前記センサにより検出した対象物の位置と移動速度と移動方向と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づき、未来において前記対象物が前記輸送手段に乗車するかどうかを予測する、行動予測部と、
前記対象物の位置と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づいて、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であるかを判断する、現時刻閉扉判断部と、
前記対象物の位置と移動速度と移動方向と前記輸送手段の扉の位置の情報に基づいて、前記輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能であるかを判断する、発車時刻閉扉判断部と、
前記発車間際期間において前記対象物が前記輸送手段に乗車すると予測された場合、前記輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であり、かつ、前記輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能で無い場合には、前記発車時刻前であっても扉を閉める制御を行なう扉制御部を備える
ことを特徴とする運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両などの運行管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平10-278788号公報(特許文献1)がある。当該公報には、「ドア制御部は、開閉操作部からドア閉指令が供給されると、ドア近傍に利用者がいないことを確認した後に、駆動装置を介してドアを閉じる。ドア制御部は、ドアへ向う利用者がいる場合は、ドア閉めを一時保留する。ドア制御部は、ドア周辺の混雑度合に応じてドア閉め時のドア閉め速度を通常よりもゆっくりにする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-278788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
東京都心を走る鉄道路線の多くは、多数の運行遅延が発生している。運行遅延時間が数十分以内の小規模な運行遅延の原因は、利用者による乗車時間の超過や、駆け込み乗車などによるドアの再開閉などである。上記特許文献1に記載された技術ではドア近傍に利用者がいる場合や、ドアへ向かう利用者がいる場合はドアを閉めることができず、運行遅延を悪化させる可能性が生じる。
【0005】
本発明の目的は、電車やバスなど、決められた運行情報に基づき、決められた停留所への停車を求められる輸送手段について、運行遅延を予防、あるいは発生した運行遅延を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい一側面は、センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理装置である。この装置は、センサにより検出した対象物の情報に基づき、対象物の現在の状態を認識するセンサ情報認識部と、センサ情報認識部が認識した対象物の現在の状態に基づき、対象物の未来の状態を予測する行動予測部と、輸送手段の運行状況を判断する運行情報管理部と、行動予測部が予測した対象物の未来の状態と、運行情報管理部が判断する運行状況に基づき、輸送手段に具備される扉の開閉を制御する扉制御部と、扉の開閉状態によって、輸送手段の発車可否を判断する発車可否判断部と、を有する。
【0007】
本発明の好ましい他の一側面は、処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備える情報処理装置で実行され、センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理方法である。この方法は、規定の運行情報に基づいて、停留所ごとの輸送手段の既定の発車時刻から所定の時間前までを、発車間際期間として判定する、運行情報管理ステップと、センサにより検出した対象物の情報に基づき、未来において対象物が輸送手段に乗車するかどうかを予測する、行動予測ステップと、輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であるかを判断する、現時刻閉扉判断ステップと、輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能であるかを判断する、発車時刻閉扉判断ステップと、を備える。そして、発車間際期間において対象物が輸送手段に乗車すると予測された場合、輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であり、かつ、輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能で無い場合には、発車時刻前であっても扉を閉めることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい他の一側面は、処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備える情報処理装置で構成され、センサにより検出した対象物の情報と既定の運行情報に基づき、既定の停留所に停車する輸送手段の運行を管理する運行管理システムである。このシステムは、規定の運行情報に基づいて、停留所ごとの輸送手段の既定の発車時刻から所定の時間前までを、発車間際期間として判定する、運行情報管理部と、センサにより検出した対象物の情報に基づき、未来において対象物が輸送手段に乗車するかどうかを予測する、行動予測部と、輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であるかを判断する、現時刻閉扉判断部と、輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能であるかを判断する、発車時刻閉扉判断部と、発車間際期間において対象物が輸送手段に乗車すると予測された場合、輸送手段の扉を現在支障なく閉めることが可能であり、かつ、輸送手段の扉を発車時刻に支障なく閉めることが可能で無い場合には、発車時刻前であっても扉を閉める制御を行なう扉制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電車やバスなど、決められた運行情報に基づき、決められた停留所への停車を求められる輸送手段について、運行遅延を予防、あるいは発生した運行遅延を解消することが可能な運行管理装置とその方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】運行管理装置の構成例を示す概略図
図2】運行情報管理部が管理する運行状況例を示す図
図3】遅延発生時の運行情報管理部が管理する運行状況例を示す図
図4】運行管理装置の動作フロー例を示す図
図5】個別扉制御部が扉を開閉制御する際の条件を示す図
図6】発車可否判断部が電車の発車可否を判断する際の条件を示す図
図7】運行管理装置の動作例を示す図
図8】センサの設置場所と動作例を示す図
図9】運行管理装置の動作例を示す図
図10】運行管理装置の構成例を示す概略図
図11】運行管理装置の構成例を示す概略図
図12】運行管理装置の動作フロー例を示す図
図13】個別扉制御部が扉を開閉制御する際の条件を示す図
図14】運行管理装置の構成例を示す概略図
図15】運行管理装置の動作フロー例を示す図
図16】個別扉制御部が扉を開閉制御する際の条件を示す図
図17】運行管理装置の構成例を示す概略図
図18】運行管理装置の動作フロー例を示す図
図19】個別扉制御部が扉を開閉制御する際の条件を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0012】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0013】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
以下で詳細に説明される実施例のひとつを例示する。この例は、ビデオカメラ等のセンサにより検出した対象物(例えば乗客やその持ち物)の情報と既定の運行情報(例えば鉄道ダイヤ)に基づき、既定の停留所(例えば鉄道駅)に停車する輸送手段(例えば鉄道車両)の運行を管理する運行管理装置である。この装置は、センサにより検出した対象物の情報に基づき、対象物の現在の動作(例えば対象物が乗客であれば、立ち止まっている、あるいは走っている等)を認識するセンサ情報認識部と、センサ情報認識部が認識した対象物の現在の動作に基づき、対象物の未来の行動(例えば対象物が乗客であれば、電車に乗ろうとする等)を予測する行動予測部とを備える。なお、本明細書では、人(乗客)や人の持ち物等を総称して「対象物」ということがある。対象物の例示としては、乗客、乗客の衣類や持ち物、付随するキャリーバックや車椅子、同行する介助犬等がある。また、対象物の動き、状態、動作、行動等を総称して「状態」ということがある。この装置はまた、輸送手段の運行状況(例えば発車時刻直前である、あるいは遅延している等)を判断する運行情報管理部と、行動予測部が予測した対象物の未来の状態と、運行情報管理部が判断する運行状況に基づき、輸送手段に具備される扉ごとに開閉を制御する個別扉制御部と、扉の開閉状態によって、輸送手段の発車可否を判断する発車可否判断部と、を有する。
【実施例1】
【0015】
第1の実施形態について説明する。本実施例は決められた運行情報に基づき、決められた停留所への停車を求められる輸送手段の運行管理装置として実施可能である。実施の形態を説明するにあたり、以降は輸送手段を電車、決められた停留所を駅として説明する。
【0016】
図1は本実施例に係る運行管理装置310のブロック構成図である。本実施例に係る運行管理装置310は、センサ300が検出したモノや人などの対象物の情報から現在の行動を認識するセンサ情報認識部301と、センサ情報認識部301が認識する対象物の現在の行動から未来の対象物の行動を予測する行動予測部303と、電車の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断する現時刻閉扉判断部302と、駅ごとの列車の発着時刻と現在時刻から現在の運行状況を判断する運行情報管理部304と、電車の個々の扉を発車時刻に安全に閉めることが可能であるかを判断する発車時刻閉扉判断部305と、電車の各扉を個々に開閉する個別扉制御部306と、電車の全ての扉が閉まっていることを判断する全扉閉扉判断部307と、電車が発車可能な状態にあるかを判断する発車可否判断部308とから構成される。
【0017】
運行情報管理部304には、外部の管理データベース320から、電車が駅を発着する時刻のデータ等が提供される。管理データベース320は、電車の運行ダイヤを管理するシステムで現状用いているものを想定している。また、運行情報管理部304には、別途ドアの開閉、あるいは開閉時刻を知らせる信号が入力される。これらの構成は、実施例2以降でも同様と考えてよいが、簡略化のため実施例2以降の図面では図示しないことがある。
【0018】
センサ300は検出した情報をセンサ情報認識部301に供給する。センサ情報認識部301は検出した対象物の情報から現在の行動を認識し、認識した結果を行動予測部303に供給する。行動予測部303はセンサ情報認識部301から供給される認識結果を基に、認識された対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車に乗車および降車のすくなくともひとつ(以降総称して乗車という)をするか否かを予測し、その乗車予測結果を現時刻閉扉判断部302と発車時刻閉扉判断部305に供給する。
【0019】
現時刻閉扉判断部302は行動予測部303から供給される予測結果を基に、電車の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断し、判断した結果を個別扉制御部306に供給する。発車時刻閉扉判断部305は行動予測部303から供給される予測結果を基に電車の個々の扉を発車時刻に安全に閉めることが可能であるかを判断し、その判断結果を個別扉制御部306に供給する。
【0020】
本実施例では、運行管理装置310は一般的な情報処理装置(サーバ等)で構成することを想定する。情報処理装置は、周知のように処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を備える。本実施例では計算や制御等の機能は、記憶装置に格納されたソフトウェアが処理装置によって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。情報処理装置が実行するソフトウェア、その機能、あるいはその機能を実現する手段を、「機能」、「手段」、「部」等と呼ぶ場合がある。本実施例中、ソフトウエアで構成した機能と同等の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウエアでも実現できる。
【0021】
センサ300と、センサ情報認識部301と、行動予測部303と、現時刻閉扉判断部302と、発車時刻閉扉判断部305との詳細な動作例を説明する。例えば、センサ300がイメージセンサ(例えばビデオカメラ)である場合に、センサ情報認識部301は予め学習した人や物等の対象物の有無や、動きや状態、向きの情報を元に、センサ300が出力する画像から対象物の有無や、動きや状態、向きを認識し、その認識結果を行動予測部303に供給する。行動予測部303は、センサ情報認識部301が任意の時間毎に供給する複数の認識結果に基づいて対象物の未来の動作を予測し、対象物が電車に乗車するか否かを予測し、その乗車予測結果を現時刻閉扉判断部302と発車時刻閉扉判断部305に供給する。
【0022】
現時刻閉扉判断部302は行動予測部303から供給される予測結果を基に電車の個々の扉を例えば乗車する乗客に接触することなく、現在、安全に閉扉可能であるかを判断し、判断した結果を個別扉制御部306に供給する。発車時刻閉扉判断部305は行動予測部303から供給される予測結果を基に電車の個々の扉を例えば乗車する乗客に接触することなく、発車時刻に、安全に閉扉可能であるかを判断し、判断した結果を個別扉制御部306に供給する。
【0023】
単純な構成例では、センサ情報認識部301は、対象物の位置と移動速度と移動方向を認識する。行動予測部303は、対象物の移動方向に扉がある場合、対象物が乗車(あるいは降車)すると予測する。また、対象物の移動速度と移動方向から、対象物の未来の位置を予測する。現時刻閉扉判断部302は、第1の時点である現時刻(厳密には近い未来、例えば1秒後)において、予測した対象物の位置と扉の位置関係を判定し、例えば両者が所定以上離れている場合、現時点支障なく扉を閉められると判断する。発車時刻閉扉判断部305は、第2の時点である発車時刻において、予測した対象物の位置と扉の位置関係を判定し、両者が所定以上離れている場合、発車時刻に支障なく扉を閉められると判断する。なお、現時刻閉扉判断部302は、行動予測部303が予測した対象物の位置の代わりに、センサ情報認識部301が認識した対象物の位置や、別途検出した情報を用いても良い。
【0024】
より複雑な例としては、センサ情報認識部301、行動予測部303、現時刻閉扉判断部302、発車時刻閉扉判断部305は、教師有り学習を施したディープニューラルネットワーク(DNN)で構成することができる。この場合、一つのDNNで構成してもよいし、別々のDNNで構成してもよい。
【0025】
例えば、センサ情報認識部301は、ビデオカメラ信号から得た特徴量を入力とし、人間が判定した対象物の有無や、動きや状態、向きを正解データとしてDNNを学習することができる。人の動きや状態としては、例えば歩いている、走っている、立ち止まっているなどがある。また、行動予測部303は、センサ情報認識部301の認識結果に基づいて、未来の第1の時点の対象物の状態と、さらに未来の第2の時点の対象物の状態を予測する。第1の時点の対象物の状態は、現時刻閉扉判断部302で扉との関係を判定され、第1の時点において安全に扉を閉じられるかを判断する。第1の時点とは現時刻、厳密には非常に近い未来(例えば1秒後)である。第2の時点の対象物の状態は、発車時刻閉扉判断部305で扉との関係を判定され、第2の時点において安全に扉を閉じられるかを判断する。扉との関係としては、例えば当該時点において、対象物が扉の閉塞を妨げるかどうかを判定する。第2の時点は予定された発車時刻であり、運行情報管理部304経由で提供される、運行ダイヤに従った時刻である。好ましい例では、行動予測部303は、上記第1の時点と第2の時点を含む、未来の複数の時点における対象物の行動を予測し、現時刻閉扉判断部302と発車時刻閉扉判断部305に提供する。
【0026】
ここで、センサ情報認識部301の対象物の認識は予め学習した結果に基づかなくても良く、例えば予め定めた行動をパターンマッチングにより認識する方法でもよく、その手法は限定されない。また行動予測部303の予測手法も複数の認識結果に基づかなくても良く、例えば対象物の行動を時系列に学習した結果に基づき予想しても良く、その手法は限定されない。また現時刻閉扉判断部302と発車時刻閉扉判断部305の扉の閉扉判断は、それぞれ乗客に接触しないことを条件としなくても良く、例えば、乗客に接触したとしても乗客が扉に挟まれないことを判断条件としても良い。扉が支障なく開閉できることが判定できればよく、その判断条件は限定されない。
【0027】
運行情報管理部304は駅ごとの電車の発着時刻と現在時刻から現在の運行状況を判断し、その判断結果を個別扉制御部306に供給する。個別扉制御部306は現時刻閉扉判断部302と、発車時刻閉扉判断部305と、運行情報管理部304から供給される情報を基に電車の各扉を個々に開閉し、各扉の開閉状態を全扉閉扉判断部307に供給する。
【0028】
全扉閉扉判断部307は個別扉制御部306から供給される各扉の開閉状態を基に全ての扉が閉まっているか否かを判断し、その判断結果を発車可否判断部308に供給する。発車可否判断部308は全扉閉扉判断部307の判断結果を基に、全ての扉が閉まっていることを確認して発車可能であることを運転手に知らせ、発車を促す。なお、電車の場合には扉が複数あるのが一般的であるが、本実施例は扉が一つの場合でも適用することができる。
【0029】
センサ300は、画像を検出する画像センサであっても、音声を検出する音声センサであっても、振動を検出する振動センサであってもよく、予測や判断が可能であればセンサの種類は限定されない。またセンサ300は運行管理装置310内に設置し、運行管理装置310の一部としても良い。また運行情報管理部304が管理する情報と判断の詳細は後述する。また個別扉制御部306が各扉を開閉する条件の詳細は後述する。また発車可否判断部308が発車可能であることを判断する条件の詳細は後述する。
【0030】
図2により、運行情報管理部304が管理する情報と運行状状況の判断の詳細を説明する。運行情報管理部304は、駅ごとの電車の発着時刻と現在時刻から現在の運行状況を、全扉開扉時刻t0、余裕有p0、発車間際p1、発車時刻t1、発車遅延p2、または停車必須p3と判断する。判断は、少なくとも電車の扉が開いている間行なわれる。
【0031】
電車が駅に到着し、乗客の乗車と降車のために電車の全ての扉を開ける時刻を全扉開扉時刻t0とする。時刻t0は、扉の開閉制御装置が扉を開ける制御を行なった時刻を検出して用いてもよいし、扉が開いたことを別途センサ300等で検出した時刻を用いても良い。また、電車の各駅の発車時刻を発車時刻t1とする。発車時刻t1は、管理データベース320が管理する電車の運行ダイヤに基づいた、規定の発車時刻である。
【0032】
発車時刻t1までに一定以上の期間があり、乗客が安全に乗車可能な期間を運行情報管理部304は余裕有p0と判断する。一つの例では、発車時刻t1までの期間が一定以下である期間を、運行情報管理部304は発車間際p1と判断する。発車時刻t1を超過した期間を運行情報管理部304は発車遅延p2と判断する。
【0033】
発車間際p1の期間においては、後に述べる扉の開閉制御のために、発車時刻t1において、扉を安全に閉めることができるかどうかを判定できる必要がある。一般的に、近い未来の予測は容易だが、遠い未来の予測は困難である。そのため、発車間際p1の他の決定例としては、行動予測部303から供給される乗車予測結果を基に、電車の個々の扉を発車時刻t1に安全に閉めることが可能であるかを発車時刻閉扉判断部305が判断可能な期間、としてもよい。この場合、発車間際p1の長さは、発車時刻閉扉判断部305の性能や、使用環境(例えば乗客数)により変動することがある。
【0034】
図3を用いて、各駅への電車の到着が既定の到着時刻より遅れた場合の運行情報管理部304の判断を説明する。図3(a)は電車の到着時刻に関係なく駅ごとの列車の発着時刻に従って、現在の運行状況を判断する例を示す。このため発車間際p1の期間中に電車が駅に到着した場合は、全扉開扉時刻t0から運行情報管理部304は現在の運行状況を発車間際p1と判断する。
【0035】
図3(a)の方法では、電車の到着時刻が遅延すると発車間際p1の期間が短縮される。このため、後に述べる扉の開閉制御によると、扉が開いている時間が短くなりすぎる場合が有る。図3(b)の例では、図に示す通り、電車の到着が既定の到着時刻より遅延した場合は、全扉開扉時刻t0から一定期間を駅ごとの電車の発着時刻に関係なく停車必須期間p3と判断し、停車必須期間p3の間は扉を開状態に保つことにしても良い。この方法では、扉が開いている時間が短くなりすぎることを防止できる。
【0036】
各駅への電車の到着が既定の到着時刻より遅れた場合の運行情報管理部304の判断は図3(a)(b)のどちらかに限定されるものではなく、駅ごとに定めても良いし、例えば天気や電車内の混雑度や、駅の混雑度に応じて切り替えても良い。
【0037】
図4は、運行管理装置310の動作フロー例を示す図である。電車は駅に到着すると(ステップS701)、全ての扉を開ける(ステップS702)。扉が開かれたという情報は、運行情報管理部304に入力される。運行情報管理部304は現在の運行状況を、管理データベースから得た駅ごとの電車の発着時刻と現在時刻から判断する(ステップS703)。ステップS703で現在の運行状況が余裕有p0もしくは停車必須p3と判断された場合は、ステップS703の処理を繰り返す。ステップS703で現在の運行状況が発車間際p1と判断された場合は、ステップS704の処理に進む。ステップS703で現在の運行状況が発車時刻t1と判断された場合は、ステップS709の処理に進む。ステップS703で現在の運行状況が発車遅延p2と判断された場合は、ステップS713の処理に進む。なお、ステップS709移行の処理とステップS713以降の処理では、現時刻の扉の開閉判断の条件が異なる。
【0038】
ステップS704では、行動予測部303がセンサ300で検出した対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車に乗車するか否かを扉ごとに予測する。乗客が電車に乗車しないと予測した場合には乗車予測無としてステップS705の処理に進み、乗客が電車に乗車すると予測した場合には乗車予測有としてステップS706の処理に進む。ステップS705では個別扉制御部306が乗車予測無と予測された電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。
【0039】
ステップS706では、現時刻閉扉判断部302が電車の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断する。現在安全に扉を閉められると判断した場合はステップS707の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS703の処理に進む。ステップS707では発車時刻閉扉判断部305が電車の個々の扉を発車時刻に安全に閉めることが可能であるかを判断する。発車時刻に安全に扉を閉められると判断した場合はステップS703の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS708の処理に進む。ステップS708では、個別扉制御部306が電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。
【0040】
発車間際p1の処理では、乗車が予測されない場合は、発車時刻前でも扉を閉めてしまう。また、乗車が予測される場合でも、発車時刻において扉を閉めるのが危険な場合は発車時刻前に扉を閉める。なお、扉を閉めるのは、安全に閉めることができる場合に限るのが前提である。
【0041】
ステップS709では、行動予測部303がセンサ300で検出した対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車に乗車するか否かを扉ごとに予測し、乗客が電車に乗車しないと予測した場合には乗車予測無としてステップS710の処理に進み、乗客が電車に乗車すると予測した場合には乗車予測有としてステップS711の処理に進む。ステップS710では個別扉制御部306が乗車予測無と予測された電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。ステップS711では、現時刻閉扉判断部302が電車の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断し、現在安全に扉を閉められると判断した場合はステップS712の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS703の処理に進む。ステップS712では個別扉制御部306が電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。
【0042】
ステップS713では、行動予測部303がセンサ300で検出した対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車に乗車するか否かを扉ごとに予測し、乗客が電車に乗車しないと予測した場合には乗車予測無としてステップS714の処理に進み、乗客が電車に乗車すると予測した場合には乗車予測有としてステップS715の処理に進む。ステップS714では個別扉制御部306が乗車予測無と予測された電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。ステップS715では、現時刻閉扉判断部302が電車の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断し、現在安全に扉を閉められると判断した場合はステップS716の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS703の処理に進む。ステップS716では個別扉制御部306が電車の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。
【0043】
ステップS717では、全扉閉扉判断部307が電車の全ての扉が閉まっているか否かを判断し、全ての扉が閉まっていると判断した場合にはステップS718の処理に進み、全ての扉は閉まっていないと判断した場合にはステップS703の処理に進む。ステップS718では、発車可否判断部308が発車可能であることを運転手に知らせ、発車を促す。
【0044】
図5に、個別扉制御部306が扉の開閉制御をする際の全ての条件を示す。
図6に、発車可否判断部308が発車可能であるか否かを判断する際の条件を示す。表中の「*」はいずれの判断結果でも良いことを示す。
【0045】
図5において、運行情報管理部304が停車必須p3と判断する場合は、その他のいずれの判断によらず個別扉制御部306は扉を開けた状態を保つ(番号1)。これにより、最低限必要な期間、扉開の状態を維持できる。
【0046】
運行情報管理部304が余裕有p0と判断する場合は、現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉を閉められると判断し、発車時刻閉扉判断部305は発車時刻に安全に扉を閉められると判断し、行動予測部303の判断によらず個別扉制御部306は扉を開けた状態を保つ(番号2)。
【0047】
運行情報管理部304が発車間際p1と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測無と予測する場合は、発車時刻まで乗客の乗車がないと予測されるため、現時刻と発車時刻に扉を閉めることは安全と判断された上で、個別扉制御部306は個別に扉を閉める(番号3)。発車時刻前ではあるが、これ以上の乗車が予想されないため、この時点で扉を閉めることが可能になる。
【0048】
運行情報管理部304が発車間際p1と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測有と予測する場合は、現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められると判断し、且つ発車時刻閉扉判断部305が発車時刻に安全に扉を閉められると判断した場合は、乗客の乗車を待って安全に扉を閉めれば良いので個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号4)。
【0049】
運行情報管理部304が発車間際p1と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測有と予測する場合は、現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められると判断し、且つ発車時刻閉扉判断部305が発車時刻に安全に扉を閉められないと判断した場合は、駆け込み乗車により扉の再開閉が起こり電車の遅延を発生させる可能性があるため、個別扉制御部306は扉を閉める(番号5)。発車時刻前ではあるが、この時点で扉を閉めることにより、無理な駆け込み乗車などを未然に防ぐことが可能になる。
【0050】
運行情報管理部304が発車間際p1と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測有と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められないと判断した場合には、発車時刻閉扉判断部305の判断によらず、個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号6)。基本的にいずれの実施例においても、現時刻閉扉判断部302あるいはその他の手段により、現在安全に扉を閉められないと判断した場合は、扉を閉めないのが原則である。
【0051】
運行情報管理部304が発車時刻t1と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められると判断した場合には、行動予測部303の判断によらず、個別扉制御部306は扉を閉める(番号7)。すなわち、乗車予測有であっても、現在安全に扉を閉められるのであれば、発車時刻のため閉扉する。なお、発車時刻t1では現時刻と発車時刻が同一になるため、現時刻閉扉判断部302と発車時刻閉扉判断部305は同一の判断を行う。
【0052】
運行情報管理部304が発車時刻t1と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測有と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められないと判断した場合には、個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号8)。
【0053】
運行情報管理部304が発車遅延p2と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められると判断した場合には、行動予測部303の判断によらず、個別扉制御部306は扉を閉める(番号9)。なお、発車遅延p2では発車時刻は過去にあたるため、個別扉制御部306の扉の開閉制御に発車時刻閉扉判断部305の判断は関係しない。
【0054】
運行情報管理部304が発車遅延p2と判断し、且つ行動予測部303が乗車予測有と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められないと判断した場合には、個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号10)。
【0055】
なお、図5に示した判断により扉を閉めた場合、再度扉を開けることは原則行なわない。もちろん、人や物が挟まるなど非常時に再度扉を開けることは必要であるが(例えば実施例5参照)、原則再開閉を行なわないことにより、電車の無用の遅延を防止することができる。
【0056】
図6に、発車可否判断部308が電車の発車可否を判断する際の全ての条件を示す。全扉閉扉判断部307が電車の全ての扉が閉まっているわけではないと判断した場合には、発車可否判断部308は発車不可と判断する。(番号12)。全扉閉扉判断部307が電車の全ての扉が閉まっていると判断した場合には、発車可否判断部308は発車可と判断する。(番号13)。なお、本実施例が扉を1つのみ持つ電車(車両)に適用された場合には、全扉を1つの扉と読み替えて発車可否を判断すればよい。
【0057】
図7は、運行管理装置310の動作の例を示す。電車100には窓101と窓103と窓105と、乗客の乗車と降車に使用される扉102と扉104と扉106と、センサ107とセンサ108とセンサ109が具備される。なお、センサ107とセンサ108とセンサ109は図1に示すセンサ300と同一の役割を果たす。また電車100には運行管理装置310が具備されている。なお、運行管理装置310の設置場所は電車100の屋根の上とは限定されず、車内や車体内に設置しても良く、設置場所は限定されない。また駅200には、乗客110と乗客111と乗客112と乗客113と乗客114がいる。なお運行管理装置310内に具備される運行情報管理部304は、図7の運行状況を発車間際p1と判断しているとする。
【0058】
図7では、乗客110は扉102より電車100に急いで乗車しようとしている。センサ107により検出された情報を基に、行動予測部303は乗客110の乗車予測を有と判断している。現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉102を閉められると判断しており、発車時刻閉扉判断部305も発車時刻に安全に扉を閉められると判断している。このため図5における番号4の条件に合致し、個別扉制御部306は扉102を開けた状態に保つ。
【0059】
乗客111は次に到着する電車を待っており、乗客112はカートを引きながら扉104を通してゆっくり乗車しようとしている。センサ108により検出された情報を基に行動予測部303は乗客111の乗車予測を無と判断する一方で、乗客112の乗車予測を有と判断している。このため扉104に対する乗車予測は有と判断する。現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉104を閉められると判断している一方で、発車時刻閉扉判断部305は発車時刻には安全に扉を閉められないと判断している。このため図5における番号5の条件に合致し、扉104の再開閉や乗客112が扉104に挟まれる危険があるため、個別扉制御部306は扉104を個別に閉める。
【0060】
乗客113と乗客114は扉106を通して乗車中である。センサ109により検出された情報を基に行動予測部303は乗客113と乗客114の乗車予測を有と判断している。現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉106を閉められないと判断している。このため図5における番号6の条件に合致し、個別扉制御部306は扉106を開けた状態に保つ。
【0061】
図8は、センサ300の設置場所と動作の例を示す。図8は駅200に電車100が到着している様子を電車100の進行方向から断面的に見た図である。電車100において、駅200に面している扉201は乗客の乗車と降車のために開けられている。電車100の車内には情報提供装置203が設置される。センサ300は車内外の状況を検出可能なように設置されている。
【0062】
情報提供装置203は運行情報や、次駅案内や、乗り換え案内や、到達時刻や、広告や、その他アナウンスなどを表示する。このため運行管理装置310に具備される運行情報管理部304は情報提供装置203の一部の機能で代用することが可能であり、情報提供装置203と運行情報管理部304を共通化しても良いし、情報提供装置203内部に運行管理装置310を実装しても良い。なお、情報提供装置203の数は単数もしくは、複数であっても良く、その数は限定されない。また設置場所も図8の位置に限定されない。
【0063】
センサ300は検出領域205を検出する。車内の扉201付近に上方から設置することで、車内外を検出可能であり、また車内外の検出のため電車100の筐体に検出領域を確保するための穴を開ける必要がない。センサ300の設置場所はこれに限定されるものではなく、例えば電車100の床や、車内の天上に設置しても良く、センサ300の設置場所は限定されない。
【0064】
以上、第一の実施形態によれば、現在の状況と乗客の乗車予測を基に、安全に扉を閉められると判断した場合に、個々に扉を閉め発車準備を促すことで、乗客の安全を確保しながら運行遅延を防ぐことが可能となる。また運行遅延が発生した場合においても、その運行遅延を解消することが可能となる。
【0065】
以上説明した第一の実施形態では、図1のシステム構成のうち、管理データベース320以外を電車100の中に実装しているが、実施例2以降で説明するように、その一部または全部を電車外、例えば駅200に設置することも可能である。また、運行管理装置310の一部または全部を、ネットワークで接続された複数の情報処理装置で構成することも可能である。
【実施例2】
【0066】
第二の実施形態に係る運行管理装置の動作について図9を用いて説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態に係る運行管理装置と基本的に同様であり、差異のある点を中心に説明する。おおむね、第二の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、第一の実施形態においては、運行管理装置におけるセンサは電車100に実装されるものであるのに対し、第二の実施形態においては、運行管理装置におけるセンサは電車100ではない場所、例えば駅200に設置される点である。
【0067】
図9は、第二の実施形態に係る運行管理装置310の動作例を示す。第二の実施形態において、センサ107とセンサ108とセンサ109は、電車100ではなく例えば駅200に設置される。またセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報を送信する情報発信運行管理装置120と情報発信運行管理装置121と情報発信運行管理装置122は各センサ付近に設置される。各情報発信運行管理装置から送信される情報を受信し、電車100の運行管理を実施する情報受信運行管理装置921は電車100に設置される。
【0068】
なお、各センサと各情報発信運行管理装置の設置場所は電車ではない場所であればよく、設置場所は限定されない。また情報受信運行管理装置921の設置場所は電車100の屋根の上には限定されず、車内や車体内に設置しても良く、設置場所は限定されない。各センサが検出する情報と、検出したセンサ情報を用いた電車100の運行管理方法は第一の実施形態と同様である。
【0069】
図10は第二の実施形態に係る運行管理装置310のブロック構成図である。第二の実施形態に係る運行管理装置310は、情報発信運行管理装置920と情報受信運行管理装置921から構成される。なお、図9におけるセンサ107とセンサ108とセンサ109は、図10におけるセンサ300と同様の機能を持ち、図9における情報発信運行管理装置120と情報発信運行管理装置121と情報発信運行管理装置122は、図10における情報発信運行管理装置920と同様の機能を持つ。
【0070】
情報発信運行管理装置920はセンサ情報認識部301と、センサ情報認識部301から供給される情報を送信する情報送信部901から構成される。
【0071】
情報受信運行管理装置921は情報送信部901から供給される情報を受信する情報受信部902と、現時刻閉扉判断部302と、行動予測部303と、運行情報管理部304と、発車時刻閉扉判断部305と、個別扉制御部306と、全扉閉扉判断部307と、発車可否判断部308から構成される。
【0072】
センサ300は検出した情報を情報発信運行管理装置920内部のセンサ情報認識部301に供給する。センサ情報認識部301は検出した対象物の情報から現在の行動を認識し、認識した結果を情報送信部901に供給する。情報送信部901は認識結果を、情報受信運行管理装置921内部の情報受信部902に供給する。情報受信部902は受信した認識結果を行動予測部303に供給する。
その他の構成要素は第一の実施形態に係る運行管理装置310と同様の機能を持つ。
【0073】
なお、センサ情報認識部301は情報受信運行管理装置921内部に具備されても良く、この場合、センサ300は検出した情報を情報送信部901に供給し、情報送信部901は供給された情報を情報受信運行管理装置921内部の情報受信部902に送信し、情報受信部902は受信した情報をセンサ情報認識部301に供給する。センサ情報認識部301は供給された情報から現在の行動を認識し、認識した結果を行動予測部303に供給する。センサ情報認識部301を情報受信運行管理装置921内部に具備することで、情報送信部901と情報受信部902が通信する情報量は増えるが、情報発信運行管理装置920を小型化することができる。
【0074】
以上、第二の実施形態によれば、センサを電車外に設置可能な構成にすることで、センサの設置の制限がなくなり、センサの検出範囲の拡大が見込め、またセンサ付近にセンサ情報認識部を設置することで、情報送信部と情報受信部との間の通信量を抑制した上で、乗客の安全を確保しながら運行遅延を防ぐことが可能となり、また運行遅延が発生した場合においても、その運行遅延を解消することが可能となる。
【実施例3】
【0075】
第三の実施形態に係る運行管理装置について図11を用いて説明する。第三の実施形態は、第一の実施形態に係る運行管理装置と基本的に同様であり、差異のある点を中心に説明する。おおむね、第三の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、運行管理装置310に混雑度計測部1001が設置された点である。この実施形態では、混雑度計測部1001により、より早く扉を閉める制御を行なうことが可能となる。実施例1では扉を開いた状態に維持すると判断していた余裕有・停車必須時間に、混雑度の条件で扉を閉じる制御を行なう。
【0076】
図11は第三の実施形態に係る運行管理装置310のブロック構成図である。第三の実施形態に係る運行管理装置310には混雑度計測部1001が具備される。センサ情報認識部301は検出した対象物の情報から現在の行動を認識し、認識した結果を行動予測部303と混雑度計測部1001に供給する。混雑度計測部1001は認識した結果を基に扉付近の混雑度を計測し、計測した混雑度を個別扉制御部306に供給する。個別扉制御部306は現時刻閉扉判断部302と、発車時刻閉扉判断部305と、運行情報管理部304と、混雑度計測部1001から供給される情報を基に電車100の各扉を個々に開閉し、各扉の開閉状態を全扉閉扉判断部307に供給する。
【0077】
図12は、第三の実施形態に係る運行管理装置310の動作フロー例を示す図である。第三の実施形態に係る運行管理装置310の動作が第一の実施形態に係る運行管理装置310の動作と異なる点は、ステップS1101と、ステップS1102と、ステップS1103と、ステップS1104の処理が追加された点である。
【0078】
ステップS703では、現在の運行状況が余裕有p0もしくは停車必須p3と判断された場合はステップS1101の処理に進む。ステップS1101では混雑度計測部1001が扉付近の車内の混雑度を計測し、混雑している場合にはステップS1102の処理に進み、混雑していない場合にはステップS703の処理に進む。ステップS1102では、行動予測部303がセンサ300で検出した対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車100に乗車するか否かを扉ごとに予測し、乗客が電車100に乗車しないと予測した場合には乗車予測無としてステップS1103の処理に進み、乗客が電車100に乗車すると予測した場合には乗車予測有としてステップS1104の処理に進む。ステップS1103では、個別扉制御部306が電車100の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。ステップS1104では、現時刻閉扉判断部302が電車100の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断し、現在安全に扉を閉められると判断した場合はステップS1103の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS703の処理に進む。
【0079】
図13に、第三の実施形態に係る個別扉制御部306が扉の開閉制御をする際の全ての条件を示す。第三の実施形態に係る個別扉制御部306の動作が第一の実施形態に係る個別扉制御部306の動作と異なる点は、番号30と、番号31と、番号32と、番号33が追加された点である。
【0080】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ混雑度計測部1001が混雑度小と判断した場合は、車内にまだ乗客が乗車する余裕があると判断され、個別扉制御部306は扉を開けた状態を保つ(番号30)。
【0081】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ混雑度計測部1001が混雑度大と判断し、行動予測部303が乗車予測無と判断した場合は、車内には乗客が乗車する余裕がないと判断され、乗客予測が無いことから現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉を閉められると判断し、個別扉制御部306は個別に扉を閉める(番号31)。
【0082】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ混雑度計測部1001が混雑度大と判断し、行動予測部303が乗車予測有と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉を閉められると判断した場合は、車内には乗客が乗車する余裕がないと判断され、個別扉制御部306は個別に扉を閉める(番号32)。
【0083】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ混雑度計測部1001が混雑度大と判断し、行動予測部303が乗車予測有と判断し、現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められないと判断した場合には、個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号33)。
【0084】
以上、第三の実施形態によれば、電車の扉の開閉制御の条件に電車内の混雑度を加えることで、混雑度の大きな車両の扉はいち早く閉められ、混雑度の低い車両への乗車を乗客に促すことが可能となるため、電車内の混雑度の均一化を図るとともに、乗客の安全を確保しながら運行遅延を防ぐことが可能となり、また運行遅延が発生した場合においても、その運行遅延を解消することが可能となる。
【実施例4】
【0085】
第四の実施形態に係る運行管理装置について図14を用いて説明する。第四の実施形態は、第一の実施形態に係る運行管理装置と基本的に同様であり、差異のある点を中心に説明する。おおむね、第四の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、運行管理装置310に乗車統計学習推論部1201が設置された点である。この実施形態では、乗車統計学習推論部1201により、より早く扉を閉める制御を行なうことが可能となる。実施例1では扉を開いた状態に維持すると判断していた余裕有・停車必須時間に、推定された乗車あるいは降車しようとする人の数(乗(降)車数)等に基づいて扉を閉じる制御を行なう。
【0086】
図14は第四の実施形態に係る運行管理装置310のブロック構成図である。第四の実施形態に係る運行管理装置310には乗車統計学習推論部1201が具備される。センサ情報認識部301は検出した対象物の情報から現在の行動を認識し、認識した結果を行動予測部303と乗車統計学習推論部1201に供給する。
【0087】
運行情報管理部304は駅ごとの電車の発着時刻と現在時刻から現在の運行状況を判断し、その判断結果と現在停車中の駅の情報を個別扉制御部306と乗車統計学習推論部1201に供給する。
【0088】
乗車統計学習推論部1201は、センサ情報認識部301と運行情報管理部304から供給される情報を基に、センサ情報認識部301が認識した現在の行動の内、扉ごとの乗客の乗車数を駅ごとに数え、数えた駅ごと且つ扉ごとの乗客数を個別扉制御部306に供給する。
【0089】
個別扉制御部306は現時刻閉扉判断部302と、発車時刻閉扉判断部305と、運行情報管理部304と、乗車統計学習推論部1201から供給される情報を基に電車100の各扉を個々に開閉し、各扉の開閉状態を全扉閉扉判断部307に供給する。
【0090】
図15は、第四の実施形態に係る運行管理装置310の動作フロー例を示す図である。第四の実施形態に係る運行管理装置310の動作が第一の実施形態に係る運行管理装置310の動作と異なる点は、ステップS1301と、ステップS1302と、ステップS1303と、ステップS1304の処理が追加された点である。
【0091】
ステップS703では、現在の運行状況が余裕有p0もしくは停車必須p3と判断された場合はステップS1301の処理に進む。ステップS1301では乗車統計学習推論部1201が駅ごと且つ扉ごとの乗車数を数えるとともに、既に数えた駅ごと且つ扉ごとの乗車数から、駅ごと且つ扉ごとの乗車数が少ないかを判断し、乗車数が少ない場合はS1302の処理に進み、乗車数が多い場合はS703の処理に進む。
【0092】
本実施例では、乗車統計学習推論部1201は駅毎に、乗車数を扉毎に学習し、その学習結果を駅毎、扉毎に適用する。例えば2018年9月18日の駅毎、扉毎の開閉制御は、2018年9月17日以前に学習した駅毎、扉毎の乗車数を元に推定した乗車数に基づいて実施する。更に詳細には、2018年9月18日の戸塚駅、東海道線、5両目、1番目のドアの開閉は、2018年9月17日以前に学習した戸塚駅、東海道線、5両目、1番目のドアの乗車数に基づいて制御される。なお、乗車数が多いか少ないかの判断は、例えば駅毎、扉毎に閾値を設定しておき判断すればよい。
【0093】
ステップS1302では、行動予測部303がセンサ300で検出した対象物の未来の行動を予測し、対象物が電車100に乗車するか否かを扉ごとに予測し、乗客が電車100に乗車しないと予測した場合には乗車予測無としてステップS1303の処理に進み、乗客が電車100に乗車すると予測した場合には乗車予測有としてステップS1304の処理に進む。ステップS1303では、個別扉制御部306が電車100の扉を個別に閉め、ステップS717の処理に進む。ステップS1304では、現時刻閉扉判断部302が電車100の個々の扉を現在安全に閉めることが可能であるかを判断し、現在安全に扉を閉められると判断した場合はステップS1303の処理に進み、現在は安全に扉を閉められないと判断した場合はステップS703の処理に進む。
【0094】
図16に、第四の実施形態に係る個別扉制御部306が扉の開閉制御をする際の全ての条件を示す。第四の実施形態に係る個別扉制御部306の動作が第一の実施形態に係る個別扉制御部306の動作と異なる点は、番号40と、番号41と、番号42と、番号43が追加された点である。
【0095】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ乗車統計学習推論部1201が乗車数は多いと判断した場合は、個別扉制御部306は扉を開けた状態を保つ(番号40)。
【0096】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ乗車統計学習推論部1201が乗車数は少ないと判断し、行動予測部303が乗車予測無と判断した場合は、現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉を閉められると判断し、個別扉制御部306は個別に扉を閉める(番号41)。
【0097】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ乗車統計学習推論部1201が乗車数は少ないと判断し、行動予測部303が乗車予測有と判断し、且つ現時刻閉扉判断部302は現在安全に扉を閉められると判断した場合は、個別扉制御部306は個別に扉を閉める(番号42)。
【0098】
運行情報管理部304が余裕有p0、もしくは停車必須p3と判断し、且つ乗車統計学習推論部1201が乗車数は少ないと判断し、行動予測部303が乗車予測有と判断し、現時刻閉扉判断部302が現在安全に扉を閉められないと判断した場合には、個別扉制御部306は扉を開けた状態に保つ(番号43)。
【0099】
以上、第四の実施形態によれば、電車の扉の開閉制御の条件にこれまでの駅ごとと扉ごとの乗車数を加えることで、乗車数の少ない扉はいち早く閉められ、乗客の安全を確保しながら運行遅延を防ぐことが可能となり、また運行遅延が発生した場合においても、その運行遅延を解消することが可能となる。
【0100】
なお、ここで、乗車数の少ない車両が同時に乗客数(乗っている人の数)が少ない車両である場合、上記の処理では混雑している車両へ乗客を誘導する可能性がある。この場合は、実施例3の処理を併用し、実施例3のステップS1101~S1103の処理を優先的に適用することにより、混雑車両への乗客の乗車を避けることができる。
【実施例5】
【0101】
第五の実施形態に係る運行管理装置について図17を用いて説明する。第五の実施形態は、第一の実施形態に係る運行管理装置と基本的に同様であり、差異のある点を中心に説明する。おおむね、第五の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、運行管理装置310に異常検出部1401が設置された点である。
【0102】
図17は第五の実施形態に係る運行管理装置310のブロック構成図である。第五の実施形態に係る運行管理装置310には異常検出部1401が具備される。センサ情報認識部301は検出した対象物の情報から現在の行動を認識し、認識した結果を行動予測部303と異常検出部1401に供給する。
【0103】
運行情報管理部304は駅ごとの電車の発着時刻と現在時刻から現在の運行状況を判断し、その判断結果と現在停車中の駅の情報を個別扉制御部306と異常検出部1401に供給する。
【0104】
異常検出部1401は、センサ情報認識部301と運行情報管理部304から供給される情報を基に、センサ情報認識部301が認識した現在の行動の内、モノや人などの対象物が個々の扉に挟まっていないかを確認し、その確認結果を個別扉制御部306に供給する。
【0105】
個別扉制御部306は現時刻閉扉判断部302と、発車時刻閉扉判断部305と、運行情報管理部304と、異常検出部1401から供給される情報を基に電車100の各扉を個々に開閉し、各扉の開閉状態を全扉閉扉判断部307に供給する。特に異常検出部1401が扉の異常を検出した場合には、運行情報管理部304が管理する現在の運行情報に応じて扉の開閉を実施する。例えば異常検出部1401が異常を検出し、その時に運行遅延が発生している場合には、扉を小さく短い時間で開閉することで、扉に挟まったモノや人を解消し、新たな乗客による乗車を防ぐことで電車遅延の影響を抑制する。
【0106】
図18は、第五の実施形態に係る運行管理装置310の動作フロー例を示す図である。第五の実施形態に係る運行管理装置310の動作が第一の実施形態に係る運行管理装置310の動作と異なる点は、ステップS1501と、ステップS1502と、ステップS1503と、ステップS1504の処理が追加された点である。
【0107】
電車100は駅に到着すると(ステップS701)、全ての扉を開け(ステップS702)、ステップS1501の処理に進む。
【0108】
ステップS1501では、異常検出部1401がモノや人などの対象物が個々の扉に挟まっていないかを確認し、対象物が挟まっていたら異常有として、ステップS1502の処理に進み、対象物が挟まっていなかったら異常無として、ステップS703の処理に進む。ステップS1502では、異常有の情報を受けて、個別扉制御部306が、運行情報管理部304から供給される現在の運行情報に応じて扉の開閉制御を異常が検知された扉に対して実施し、対象物が挟まっていることを解消し、ステップS703の処理に進む。
【0109】
ステップS717では、全扉閉扉判断部307が電車100の全ての扉が閉まっているか否かを判断し、全ての扉が閉まっていると判断した場合にはステップS1503の処理に進み、全ての扉は閉まっていないと判断した場合にはステップS703の処理に進む。
【0110】
ステップS1503では、異常検出部1401がモノや人などの対象物が個々の扉に挟まっていないかを確認し、対象物が挟まっていたら異常有として、ステップS1504の処理に進み、対象物が挟まっていなかったら異常無として、ステップS703の処理に進む。ステップS1504では、異常有の情報を受けて、個別扉制御部306が、運行情報管理部304から供給される現在の運行情報に応じて扉の開閉制御を、異常が検知された扉に対して実施し、対象物が挟まっていることを解消し、ステップS718の処理に進む。
【0111】
図19に、第五の実施形態に係る個別扉制御部306が扉の開閉制御をする際の全ての条件を示す。第五の実施形態に係る個別扉制御部306の動作が第一の実施形態に係る個別扉制御部306の動作と異なる点は、番号50が追加された点である。
【0112】
異常検出部1401が個々の扉に異常を検出した場合には、検出した異常を解消するため、個別扉制御部306は運行情報管理部304から提供される現在の運行情報に従って開閉制御を実施する(番号50)。
【0113】
以上、第五の実施形態によれば、電車の扉の開閉制御の条件に、モノや人などの対象物が扉に挟まるといった異常検出の有無を加えることで、乗客の安全を確保しながら運行遅延を防ぐことが可能となり、また運行遅延が発生した場合においても、その運行遅延を解消することが可能となる。
【実施例6】
【0114】
上記の実施例1~実施例5では、電車到着後ステップS702で扉を全部開放することにしている。ただし、車外気温が高温または低温で空調の効率を考慮する場合等には、扉を開けずにおき、必要な扉のみ開扉する運用も考えられる。
【0115】
この場合、例えば図4の動作フロー例で、電車到着後ステップS702を省略する。そして、発車間際p1以前の期間において、乗車予測がある扉について、安全に扉を開けるタイミングで開扉する。あるいは、現状実運用されているように、乗客がボタンを操作して扉を開ける方式でも良い。発車間際p1以降の期間においては、開いている扉について、図4等と同様のフローを適用すればよい。この場合、個別扉制御部306は図5等記載の条件に従って、扉が開いている間、扉の開閉制御を実施する。なお、発車間際p1以降の期間においては、閉じている扉は原則開けないものとする。
【0116】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0117】
また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば個別扉制御部306が制御する扉の設置場所は電車100に限定されず、例えば駅200に設置されるホームドアであっても良いし、電車100に設置される扉と駅200に設置されるホームドアの両方であっても良く、扉の設置場所は限定されない。
【0118】
また電車100は決められた運行情報に元づき、決められた停留所への停車を求められる輸送手段と置換することが可能であり、例えば電車100をバスや自動運転で制御される乗用車として良い。
【0119】
またセンサ情報認識部301や行動予測部303が認識したり、予想したりする行動は乗客の乗車だけではなく、降車であっても良く、あるいはその乗車と降車の両方であっても良い。
【0120】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムに応じて演算を実行するソフトウェア制御によって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納しておき、実行時にRAM(Random Access Memory)等に読み出され、CPU(Central Processing Unit)等により実行することができる。
【0121】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0122】
また、上記した各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば別の装置で実行してネットワークを介して統合処理する等により分散システムで実現してもよい。また、上記した実施形態の技術的要素は、単独で適用されてもよいし、プログラム部品とハードウェア部品のような複数の部分に分けられて適用されるようにしてもよい。また、センサ300を運行管理装置310内に含めても良い。
【符号の説明】
【0123】
100…電車、101…窓、102…扉、103…窓、104…扉、105…窓、106…扉、107…センサ、108…センサ、109…センサ、110…乗車予測有乗客、111…乗車予測無乗客、112…乗車予測有乗客、113…乗車予測有乗客、114…乗車予測有乗客、200…駅、201…扉、202…電車、203…情報提供装置、205…検出領域、206…レール、207…車輪、300…センサ、310…運行管理装置、300…センサ、301…センサ情報認識部、302…現時刻閉扉判断部、303…行動予測部、304…運行情報管理部、305…発車時刻閉扉判断部、306…個別扉制御部、307…全扉閉扉判断部、308…発車可否判断部、t0…全扉閉扉時刻、t1…発車時刻、p0…余裕有、p1…発車間際、p2…発車遅延、p3…停車必須、120…情報発信運行管理装置、121…情報発信運行管理装置、122…情報発信運行管理装置、921…情報受信運行管理装置、901…情報送信部、902…情報受信部、920…情報発信運行管理装置、921…情報受信運行管理装置、1001…混雑度計測部、1201…乗車統計学習推論部、1401…異常検出部
図1
図2
図3
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