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特許7179600アイソレーション管理装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】アイソレーション管理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20221121BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221121BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
H02J13/00 311R
G05B19/418 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018229852
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020091782
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 広樹
(72)【発明者】
【氏名】高倉 啓
【審査官】山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191725(JP,A)
【文献】特開2018-142060(JP,A)
【文献】特開2017-028448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
H02J 13/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気系回路を構成する機器の各々を識別する機器ID並びに電流が入る一端に接続される前記機器の取合番号及び前記電流が出る他端に接続される前記機器の取合番号で特定される給電ルートを識別するルートIDが含まれるデータシートを記憶する回路データ記憶部と、
隔離対象となる対象機器を識別する前記機器IDを指定する指定部と、
電源から前記対象機器電流が入るIN側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索し、前記対象機器から前記電源に電流が出るOUT側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索する検索部と、
前記検索された複数の前記機器IDのうち起点とする前記対象機器に対し前記電源から前記電流が入る前記IN側で前記検索されたものを一つ選択し、前記電源に前記電流が出る前記OUT側で前記検索されたものを一つ選択することで、前記対象機器を挟むよう位置する二つの前記機器を識別する前記機器IDのペアを選択する選択部と、を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアイソレーション管理装置において、
前記機器IDの各々に紐づけた通電設定(ON/OFF)を記載した設定リストを記憶する設定リスト記憶部と、
前記選択された前記機器IDのペアの各々に紐づけた前記通電設定をOFFにして前記設定リストを更新する更新部と、
前記設定リストに基づいて、前記機器の各々における給電状態をシミュレーションするシミュレータと、を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアイソレーション管理装置において、
複数の前記機器のうち前記給電状態が予め制約されている制約機器を前記機器IDに紐づけて登録した登録リストを記憶する登録リスト記憶部と、
前記更新後の前記設定リストに基づく前記シミュレーションで得られた前記制約機器の前記給電状態と前記登録リストに登録されている前記制約機器の前記給電状態とが一致するか成否判定する成否判定部と、を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のアイソレーション管理装置において、
前記設定リストを更新する前後で、前記給電状態に変化があった前記機器IDを認定する認定部を、備えるアイソレーション管理装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のアイソレーション管理装置において、
前記機器の機種情報に紐づけた前記通電設定の初期値(ON/OFF)を記録した初期リストを記憶する初期リスト記憶部と、
プラント運転のモード毎に、前記通電設定が前記初期値から変更される前記機器の前記機器IDが掲載される変更リストを記憶する変更リスト記憶部と、
前記初期リスト及び前記変更リストに基づいて前記設定リストを生成するリスト生成部と、を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアイソレーション管理装置において、
前記電気系回路のCADデータを変換して前記データシートを生成するデータ変換部を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアイソレーション管理装置において、
前記機器IDのペアに紐付けられ、人が認識可能な隔離情報を出力する出力部を備えるアイソレーション管理装置。
【請求項8】
電気系回路を構成する機器の各々を識別する機器ID並びに電流が入る一端に接続される前記機器の取合番号及び前記電流が出る他端に接続される前記機器の取合番号で特定される給電ルートを識別するルートIDが含まれるデータシートを記憶するステップと、
隔離対象となる対象機器を識別する前記機器IDを指定するステップと、
電源から前記対象機器電流が入るIN側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索し、前記対象機器から前記電源に電流が出るOUT側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索するステップと、
前記検索された複数の前記機器IDのうち起点とする前記対象機器に対し前記電源から前記電流が入る前記IN側で前記検索されたものを一つ選択し、前記電源に前記電流が出る前記OUT側で前記検索されたものを一つ選択することで、前記対象機器を挟むよう位置する二つの前記機器を識別する前記機器IDのペアを選択するステップと、を含むアイソレーション管理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
電気系回路を構成する機器の各々を識別する機器ID並びに電流が入る一端に接続される前記機器の取合番号及び前記電流が出る他端に接続される前記機器の取合番号で特定される給電ルートを識別するルートIDが含まれるデータシートを記憶するステップ、
隔離対象となる対象機器を識別する前記機器IDを指定するステップ、
電源から前記対象機器電流が入るIN側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索し、前記対象機器から前記電源に電流が出るOUT側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索するステップ、
前記検索された複数の前記機器IDのうち起点とする前記対象機器に対し前記電源から前記電流が入る前記IN側で前記検索されたものを一つ選択し、前記電源に前記電流が出る前記OUT側で前記検索されたものを一つ選択することで、前記対象機器を挟むよう位置する二つの前記機器を識別する機器IDのペアを選択するステップ、を実行させるアイソレーション管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はプラントの電気系統に対するアイソレーション管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や発電所等のプラントには、設備の運転や監視のために、電源や制御回路等の電気系統が広範囲にわたり膨大に存在する。このようなプラントで点検や工事をする時は、安全処置として、その対象区域をその他の区域から隔離(アイソレーション)しなければならない。従来、電気系統のアイソレーション(以下、電気系アイソレーションという)の実施計画は、専門のエンジニアが、各機器の電気的な接続関係を示す展開接続図(ECWD)等を参照し他の機器に対する影響を検討しながら、隔離項目を策定していた。
【0003】
このような電気系アイソレーションの実施計画を効率的に立てるために、隔離箇所に関連する制御ロジックのI/O情報を、展開接続図(ECWD:Elementary Control Wiring Diagram)に付加して可視化する技術が提供されている。また、過去の隔離実績として作成管理されているリスト等を参照し、隔離の対象の誤設定や範囲の誤設定を防止する技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-46528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、そのようなプラントの電気系統を表す展開接続図(ECWD)は、数千ページ以上にわたる膨大な量である。従来の電気系アイソレーションの実施計画は、このような膨大な紙図面に基づいて、経験者が関連回路を調査しながらの立案していた。そして、この実施計画を立案した後の確認作業は、紙図面上の回路をマーカーで塗りつぶす等して行っていた。
【0006】
このため、塗りつぶしミス、回路の通電状態の想定ミス、対象機器や回路の抽出ミス等を防止するため、前記した確認作業に二重三重のチェックを要していた。このように電気系アイソレーションの実施計画の立案は、作業員のスキルに依存するところが大きく、また安全性確保のためには多大な時間を要していた。
【0007】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、経験者のスキルに依存せずに安全な実施計画を効率的に立案することができ、計画内容を機械的に評価することができる電気系アイソレーション管理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るアイソレーション管理装置は、電気系回路を構成する機器の各々を識別する機器ID並びに電流が入る一端に接続される前記機器の取合番号及び前記電流が出る他端に接続される前記機器の取合番号で特定される給電ルートを識別するルートIDが含まれるデータシートを記憶する回路データ記憶部と、隔離対象となる対象機器を識別する前記機器IDを指定する指定部と、電源から前記対象機器電流が入るIN側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索し、前記対象機器から前記電源に電流が出るOUT側を構成する前記給電ルートに関連付けられる複数の前記ルートIDを取り合う前記機器IDを検索する検索部と、前記検索された複数の前記機器IDのうち起点とする前記対象機器に対し前記電源から前記電流が入る前記IN側で前記検索されたものを一つ選択し前記電源に前記電流が出る前記OUT側で前記検索されたものを一つ選択することで前記対象機器を挟むよう位置する二つの前記機器を識別する機器IDのペアを選択する選択部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、経験者のスキルに依存せずに安全な実施計画を効率的に立案することができ、計画内容を機械的に評価することができる電気系アイソレーション管理技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置のブロック図。
図2】各実施形態に適用される電気系回路の展開接続図。
図3】各実施形態に適用される電気系回路を構成する機器のデータシート。
図4】各実施形態に適用される電気系回路を構成する給電ルートのデータシート。
図5】給電ルート上で対象機器を挟むよう位置する機器ペアを出力した隔離情報テーブル。
図6】機器の機種毎の通電設定の初期値を記録した初期リスト。
図7】通電設定が初期値から変更される機器を、プラントの運転モード毎に掲載した変更リスト。
図8】電気系回路を構成する機器の各々に紐づけた通電設定を記載した設定リスト。
図9】給電状態が予め制約されている制約機器を登録した登録リスト。
図10】制約機器の給電状態シミュレーション結果と給電状態がOKからNGに変化した機器の数とを出力した隔離情報テーブル。
図11】制約機器の給電状態シミュレーション結果の適合性が成立したものを抽出した隔離情報テーブル。
図12】選択された隔離情報(機器ペア)の詳細を出力した帳票。
図13】第1実施形態に係る電気系アイソレーション管理方法及び電気系アイソレーション管理プログラムのフローチャート。
図14】第2実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置のブロック図。
図15】第3実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置のブロック図。
図16】第4実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置10A(10)「以下、管理装置10A(10)のように記す」のブロック図である。なお、実施形態では機器A1をアイソレーションの対象機器とする例として説明する。
【0012】
図1に示すように管理装置10A(10)は、電気系回路20(図2)を構成する機器(A1-A4,B1,C1,C2,D1-D4,E1-E4,F1,F4,G1,G4,H1,H4,J1,K1)の各々を識別する機器ID(図3)及びこれら機器間の給電ルート(R1-R13)を識別するルートID(図4)が含まれるデータシート11(11a,11b)を記憶する回路データ記憶部12と、隔離対象となる対象機器(実施形態において機器A1を指定)を識別する機器IDを指定する指定部15と、電源21(図2)から対象機器(機器A1)までの給電ルートR(R1,R3,R4,R6,R8;R9-R13)に関連付けられる複数のルートID(図4)を取り合う機器IDを検索する検索部16と、ここで検索された複数の機器IDのうち対象機器(機器A1)を挟むよう位置する二つの機器を識別する機器IDのペア(図5;機器ペア)を選択する選択部17と、を備えている。
【0013】
さらに管理装置10A(10)は、電気系回路20(図2)のCADデータ18を変換してデータシート11(11a,11b)を生成するデータ変換部19を備えている。
【0014】
図2は各実施形態に適用される電気系回路20の展開接続図である。プラントでは、点検や工事等の作業を実施する際に、機器への給電状態が制約される機器を予め登録したうえで、作業対象となる対象機器を隔離する隔離計画を作成する必要がある。管理装置10A(10)は、このような展開接続図等で表される電気系回路20を構成する機器のうち、点検や工事の対象となる盤や表示器や操作器や端子台等の機器を対象機器として指定して、給電ルートRの取り合い情報から隔離計画を作成するものである。
【0015】
図3は各実施形態に適用される電気系回路20を構成する機器のデータシート11a(以下、単に「シート11a」という)である。シート11aの「機器ID」の欄に記載されるコード記号は、電気系回路20(図2)を構成する機器の各々を指し示す符号に一致させているが、これら機器を互いに識別するための識別子である。シート11aの「機種」の欄に記載される名称は、各々の機器をパーツとして管理するための名称で、機器IDが異なっても同じ仕様の機種であれば同じ名称が付与されている。
【0016】
シート11aの「設置ID」の欄に記載されるコード名は、各々の機器が搭載されている共通のユニットU(U1,U3,U4)や共通のボードP(P1,P2,P3)である。電気系回路20(図2)においてこれらユニットUは破線で表され、ボードPは一点鎖線で表されている。シート11aの「図面番号」は、これら機器が表示される展開接続図の識別番号である。シート11aの「位置座標」は、各々の機器が表示される展開接続図上の位置座標の情報である。
【0017】
図4は各実施形態に適用される電気系回路20を構成する給電ルートRのデータシート11b(以下、単に「シート11b」という)である。シート11bの「ルートID」の欄に記載されるコード記号は、電気系回路20(図2)を構成する給電ルートRの各々を指し示す符号に一致させているが、これら給電ルートRを互いに識別するための識別子である。
【0018】
シート11bの「IN側の機器」の欄には、電源21からの電流が入る給電ルートRの一端に接続される機器IDが取合番号とともに記載されている。そしてシート11bの「OUT側の機器」の欄には、この電流が出る給電ルートRの他端に接続される機器IDが取合番号とともに記載されている。
【0019】
このシート11bにおいて、対象機器A1を起点にしてIN側のルートIDに接続されている機器IDを検索すると、D1,C1,F1,G1,J1が検索される。同様に対象機器A1を起点にしてOUT側のルートIDに接続されている機器IDを検索すると、B1,E1,C2,H1,K1が検索される。検索部16は、このようにルートIDを手繰って給電ルートR上で取り合う機器IDを検索する。
【0020】
図5は給電ルート上で対象機器である機器A1を挟むよう位置する機器ペアを出力した隔離情報テーブルである。選択部17は、検索部16で検索されたIN側の機器のうち一つを選択し、さらにOUT側の機器のうち一つを選択し、これらを組み合わせ機器IDのペアを作る。なお、図5の隔離情報テーブルに記載される機器IDのペアは、電気系回路20(図2)において対象機器(機器A1)を中心にそれぞれ対称に位置する端子台が選択されているが、これに限定されることはない。つまり、IN側の任意の機器IDとOUT側の任意の機器IDとにより機器IDのペアを組み合わせることができる。また図5の隔離情報テーブルには、フューズの機器F1のように機器IDのペアの組み合わせを取らないものも含めることができる。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。さらに管理装置10A(10)は、機器IDの各々に紐づけた通電設定(ON/OFF)を記載した設定リスト31(図8)を記憶する設定リスト記憶部32と、選択部17で選択された機器IDのペア(図5;機器ペア)の各々に紐づけた通電設定をOFFにして設定リスト31を更新する更新部35と、この設定リスト31に基づいて機器の各々における給電状態をシミュレーションするシミュレータ36と、を備えている。
【0022】
さらに管理装置10A(10)は、機器の機種情報に紐づけた通電設定の初期値(ON/OFF)を記録した初期リスト41(図6)を記憶する初期リスト記憶部42と、プラント運転のモード毎に通電設定が初期値から変更される機器の機器IDが掲載される変更リスト45(図7)を記憶する変更リスト記憶部46と、初期リスト41及び変更リスト45に基づいて設定リスト31を生成する生成部47と、を備えている。
【0023】
図6は機器の機種毎の通電設定の初期値を記録した初期リスト41である。このように電気系回路20(図2)を構成する機器は、機種毎に通電設定の初期値が決められている。ここで通電設定ONとは機器により電気的な閉回路が形成されることを指し、通電設定OFFとは機器により電気的な開回路が形成されることを指す。
【0024】
図7は通電設定が初期値から変更される機器の機器IDを、プラントの運転モード毎に掲載した変更リスト45である。図8は電気系回路を構成する機器の各々に紐づけた通電設定(ON/OFF)を記載した設定リスト31である。プラントにおいては、図8に示すように、運転モード毎に、各々の機器の通電設定(ON/OFF)がなされている。
【0025】
そして、図7に示すように、この通電設定が初期値から変更される機器のみについて、その機器IDが変更リスト45に掲載されている。具体的に、「停止状態」の運転モード1では、機器A1,B1、C1,C2の通電設定が初期値から変更することになっている。そして、図8に示すように、この機器A1,B1、C1,C2の通電設定のみが初期値のONからOFFへと変更されている。同様に、図7の「起動時準備完了状態」の運転モード2では、機器A2,A3の通電設定が初期値から変更することになっている。そして、図8に示すように、この機器A2,A3の通電設定のみが初期値のOFFからONへと変更されている。
【0026】
図1に戻って説明を続ける。さらに管理装置10A(10)は、複数の機器のうち給電状態が予め制約されている制約機器(図9)を機器IDに紐づけて登録した登録リスト51を記憶する登録リスト記憶部52と、更新部35で更新された後の設定リスト31に基づいてシミュレータ36で得られた制約機器の給電状態と登録リスト51に登録されている制約機器(図9)の給電状態とが一致するか成否判定する成否判定部53と、を備えている。
【0027】
図9は給電状態が予め制約されている制約機器を登録した登録リスト51である。ここで着目する機器の給電状態がOKとは、設定リスト31で設定された通りに全ての機器の通電設定がなされている状態で、電源21の電圧がこの着目する機器に印加されている状態を指す。また着目する機器の給電状態がNGとは、設定リスト31で設定された通りに全ての機器の通電設定がなされている状態で、電源21の電圧がこの着目する機器に印加されていない状態を指す。制約機器とは、隔離の対象機器(機器A1)以外の機器であって、点検や工事等で隔離作業を実施する際に、給電状態がNG又はOKのいずれかをとることが予め制約されている機器を指す。つまり、点検や工事等の作業要件の一部である。
【0028】
なお電気系回路20を構成する全ての機器の各々における給電状態は、シミュレータ36に、通電設定(ON/OFF)を記載した設定リスト31の情報を入力することによりシミュレーションすることができる。
【0029】
登録リスト51に、給電状態NGで登録されている機器があると、この機器の通電設定がOFFであるか、または通電設定がONであっても電源21の電圧が当該機器に印加されないことが、隔離計画の適合性が成立する条件となる。他方において給電状態OKで登録されている機器があると、この機器の通電設定がONであり、さらに電源21の電圧が当該機器に印加されていることが隔離計画の適合性が成立する条件となる。
【0030】
図10の隔離情報テーブルには、制約機器の給電状態シミュレーション結果が出力されている。この図10の隔離情報テーブルは、図5からの続きである。登録リスト(図9)に登録された制約機器の給電状態シミュレーション結果が、隔離情報テーブルの管理ID毎に、「一致〇」又は「不一致×」で判定される。そして、「不一致×」の制約機器が一つでもある管理IDは、隔離作業の適応性において「不成立」と認定され、該当する機器ペアは、隔離作業で採用することができない。そして、登録されている制約機器の全てが「一致〇」である管理IDは、隔離作業の適応性において「成立」と認定され、該当する機器ペアは、隔離作業に採用することができる。
【0031】
図1に戻って説明を続ける。さらに管理装置10A(10)は、設定リスト31を更新部35で更新する前後で給電状態に変化があった機器IDを認定する認定部55を備えている。さらに管理装置10A(10)は、機器IDのペアに紐付けられ人が認識可能な隔離情報を端末装置57に出力する出力部56を備えている。
【0032】
更新部35において、設定リスト31(図8)に記載された機器IDの通電設定が一部更新されたことにより、この更新前後において給電状態がNGからOKに変化したり逆にOKからNGに変化したりする機器が現れる。多くの機器の給電状態が変化することは、隔離作業による影響の範囲が大きいことを意味する。したがって、適応性が成立と認定された隔離作業の中では、給電状態が変化する機器が少ないほうが望ましい。
【0033】
図10の隔離情報テーブルには、給電状態がOKからNGに変化した機器の数が出力されている。なお隔離情報テーブルは、このように給電状態が変化した機器の数を出力する以外に、該当する機器IDを出力してもよい。
【0034】
図11は制約機器の給電状態シミュレーション結果の適合性が成立したものを抽出した隔離情報テーブルである。図11の隔離情報テーブルに記載されている管理IDは、全て、適合性が認定された隔離作業を示している。作業員は、この図11の隔離情報テーブルの中から、その他の作業要件を考慮しつつ、いずれか一つの管理IDを選択する。ここで、作業員がより望ましい隔離作業を選択しやすいように、給電状態が変化する機器数が少ない順に並び替える、機器状態が変化する機器数が少ないものを強調表示する、等の処理をして表示してもよい。
【0035】
図12は選択された隔離情報(機器ペア)の詳細を出力した帳票である。このような帳票を出力する端末装置57としては、プリンタやモニタ、携帯端末が例示される。また、端末装置57に出力される情報としては、図12の帳票に限定されることはなく、図3図10に表される、リストやテーブルも対象にすることができる。
【0036】
なお管理装置10A(10)は、データシート11(11a,11b)、CADデータ18、設定リスト31、初期リスト41、変更リスト45、登録リスト51等の情報を、データ入力装置13により外部入力することができる。
【0037】
また、管理装置10Aは隔離計画案(各隔離情報管理ID)についてのシミュレータ36による通電結果をCAD図面上に描画し、ディスプレイ等に表示することで作業員に視覚的に提示することができる。これにより、作業員は視覚的に隔離計画の評価をしやすくなる。帳票を端末装置57に出力する際に、この通電結果を描画したCAD図面を付加して出力してもよい。
【0038】
図13のフローチャートに基づいて第1実施形態に係る電気系アイソレーション管理方法及び電気系アイソレーション管理プログラムのフローを説明する(適宜、他の図面を参照)。電気系回路20(図2)を構成する機器のデータシート11a(図3)及び給電ルートのデータシート11b(図4)を記憶部12に記憶させる(S11)。
【0039】
電気系回路20の中から隔離対象となる対象機器A1をその機器IDにより指定する(S12)。そして、電源21から対象機器A1までの給電ルート上の機器をその機器IDにより検索する(S13)。さらに、検索した複数の機器IDのうち対象機器A1を挟む機器ペアをその機器IDの組み合わせとして選択し、隔離情報テーブル(図5)に出力する(S14、S15)。
【0040】
設定リスト31(図8)をダウンロードし、機器ペアの機器IDに紐づけられている通電設定をOFFにして更新する(S16)。そして、更新後の設定リスト31に基づいて機器の給電状態のシミュレーションを行う(S17)。
【0041】
ここで、登録リスト51(図9)に制約機器が登録されていれば(S18 Yes)、この制約機器のシミュレーション結果と登録されている給電状態との一致/不一致を判定する(S19)。この一致/不一致の判定結果を隔離情報テーブル(図10)に出力する(S20)。そして、隔離情報テーブル(図10)に掲載されている全ての機器ペアの管理IDに対し(S19)~(S20)のフローを繰り返す(S21 No Yes)。
【0042】
これにより、隔離情報テーブル(図10)における「適合性」の項目において「成立」「不成立」の情報が埋まる。なお、登録リスト51(図9)に制約機器が登録されていない場合は(S18 No)、(S22)にジャンプする。
【0043】
次に、(S17)で更新される前の設定リスト31に基づいてシミュレーションした給電状態と更新後にシミュレーションされた給電状態とを対比して、変化している機器を認定し、結果を隔離情報テーブル(図10)に出力する(S22,S23,S24)。そして、隔離情報テーブル(図10)に掲載されている全ての隔離情報の管理IDに対し(S23)~(S24)のフローを繰り返す(S25 No Yes)。そして、このようにして得られた給電状態の情報も鑑みて、最終的に隔離計画に採用する作業を選択し(図11)、帳票(図12)等に出力する(END)。
【0044】
(第2実施形態)
次に図14を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図14は第2実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置10Bのブロック図である。なお、図14において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。第2実施形態の管理装置10Bで出力される隔離情報テーブルは、図5に示すように、少なくとも機器ペアの情報が掲載されている。
【0045】
(第3実施形態)
次に図15を参照して本発明における第3実施形態について説明する。図15は第3実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置10Cのブロック図である。なお、図15において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。第3実施形態の管理装置10Cで出力される隔離情報テーブルは、図10のうちシミュレーション結果の「一致」「不一致」の結果と、適合性確認の「成立」「不成立」の結果が少なくとも掲載されている。
【0046】
(第4実施形態)
次に図16を参照して本発明における第4実施形態について説明する。図16は第4実施形態に係る電気系アイソレーション管理装置10Dのブロック図である。なお、図16において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。第4実施形態の管理装置10Dで出力される隔離情報テーブルは、図10のうち機器の給電状態に関する情報が少なくとも掲載されている。
【0047】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のアイソレーション管理装置によれば、電気系回路を構成する機器の識別情報とこれら機器間の給電ルートの識別情報を用いて、隔離計画の作成を効率化することができる。また、隔離作業をシミュレーションすることにより、経験者のスキルに依存せずに安全な実施計画を効率的に立案することができ、計画内容を機械的に評価することが可能となる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0049】
以上説明したアイソレーション管理装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。また、アイソレーション管理装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、アイソレーション管理プログラムにより動作させることが可能である。
【0050】
またアイソレーション管理装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0051】
また、アイソレーション管理装置で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、アイソレーション管理装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10(10A,10B,10C,10D)…電気系アイソレーション管理装置、11(11a,11b)…データシート、12…回路データ記憶部、15…指定部、16…検索部、17…選択部、18…CADデータ、19…データ変換部、20…電気系回路、21…電源、31…設定リスト、32…設定リスト記憶部、35…更新部、36…シミュレータ、41…初期リスト、42…初期リスト記憶部、45…変更リスト、46…変更リスト記憶部、47…生成部、51…登録リスト、52…登録リスト記憶部、53…成否判定部、55…認定部、56…出力部、57…端末装置。
図1
図2
図3
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